2021年5月23日日曜日

コロナワクチン接種率

 日本政府(各省庁等)の統計データの管理技術にはなかなか残念な綻びが散見される。コロナワクチン接種率もその一つだ。政権の見栄えのために厚生労働省から引き剥がして内閣府に設けた「新型コロナワクチンについて」のページには,医療従事者等と高齢者等の総ワクチン接種回数のデータが,日別と都道府県別で上がっている。しかし,データは必ずしも定時に定常的にアップロードされるわけではなく,目詰まりしながら間欠的に提示されている。都道府県別データに至っては,5月23日の時点で5月14日や16日のデータが最新という有様だ。

WHOの新型コロナウイルス感染者数と死亡者数でも多くの国では毎日更新データが提供されているが,スペインなど1週間で2回ほど更新される程度の国もある。なお,日本は,このデータについては毎日更新ができている。

この直近のワクチン接種回数の都道府県別データを,各都道府県の人口で除したものを医療従事者と高齢者を2つの要素として散布図にしてみた。juliaのグラフィックスのgadfly.jlを用いると簡単にできることがわかったので,それを使ってみた。

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using Gadfly
using Compose
using DataFrames
X = [4.0,4.2,5.2,4.1,4.8,4.8,4.4,4.0,4.1,4.2,3.5,3.2,3.6,3.0,4.3,5.0,5.0,6.3,3.6,4.3,4.3,3.7,3.9,4.6,4.0,4.0,3.4,3.4,4.6,5.4,5.6,5.3,4.8,4.6,5.8,6.8,4.8,5.6,6.7,4.0,7.1,5.9,6.0,5.9,5.3,5.7,4.6]
Y = [0.6,1.3,1.3,0.7,2.1,2.1,1.3,0.7,0.7,1.0,0.4,0.4,0.5,0.4,1.1,0.4,1.8,1.4,1.3,1.2,1.0,0.5,0.8,0.7,1.4,0.5,0.5,0.5,1.0,3.5,2.3,1.5,0.4,0.8,2.5,1.6,1.8,0.6,3.2,0.4,1.7,0.9,1.0,1.2,1.8,1.4,0.9]
Labels = ["北海道","青森","岩手","宮城","秋田","山形","福島","茨城","栃木","群馬","埼玉","千葉","東京","神奈川","新潟","富山","石川","福井","山梨","長野","岐阜","静岡","愛知","三重","滋賀","京都","大阪","兵庫","奈良","和歌山","鳥取","島根","岡山","広島","山口","徳島","香川","愛媛","高知","福岡","佐賀","長崎","熊本","大分","宮崎","鹿児島","沖縄"]

plot(x=X, y=Y, label=Labels, Geom.point, Geom.label, Theme(major_label_font="CMU Serif",minor_label_font="CMU Serif",major_label_font_size=12pt,minor_label_font_size=12pt))
#plot(x=X, y=Y, Guide.annotation(compose(context(), text(X, Y, Labels))))

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図 都道府県別コロナワクチン接種率(x: 医療従事者 %,y: 高齢者 %)

ラベルの重複処理ができているといえばできているのだけれど,欠落しているといえばそうなわけで,これを解決すると(#でコメントアウトしたcomposeによる方法)見にくくなってしまうので一長一短なのだった。

エビデンスベースの政策立案(EBPM)が鳴り物入りで喧伝されているが,公文書を堂々と改竄・隠蔽して憚らない文化の中で,恣意的なエビデンスのチェリーピッキングが横行することを考えれば,地味でも着実に正規化された標準データを蓄積して情報公開を進めることの方が,つまらないデジタル庁を設けるよりもまず最優先の課題だと思われる。

2021年5月22日土曜日

ラベル付き散布図

Rをjupyterでからの続き 

ラベル付き散布図と格闘している。

(1) Excel が一番簡単そうで,調べるとすぐに事例が見つかった。しかし,これはWindows版の場合であり,残念ながらMac版(Microsoft Office 2019 Home & Student)にはその機能がなかった。

(2) Rは統計グラフがお手の物のはずなので多分あるだろう。そこでRをjupyter上に持ってきた。これも簡単に事例が見つかった。見本通りにやってみると,

#今回使うライブラリ
library(maptools)
#データの準備
CC <- c("CAN","DNK","FIN","FRA","DEU","ITA","JPN","KOR","NLD","POL","SWE","GBR","USA")
PAR <- c(13.7,15.7,16.6,16.6,20.2,20.1,22.1,10.3,14.9,13.5,17.6,15.6,12.8)
SE <- c(3.8,7.4,8.6,11.5,8.5,12.2,9.3,1.9,5.4,8.9,9.4,6.2,5.5)
sample <- data.frame(PAR, SE)
rownames(sample) <- CC
以下のerrorが出て(これは例題に対しては実害はなかったが)日本語も化けてしまう。

Checking rgeos availability: FALSE
Note: when rgeos is not available, polygon geometry computations in maptools
depend on gpclib, which has a restricted licence. It is disabled by default;
to enable gpclib, type gpclibPermit()

ただ,日本語文字化けを避けるには(エラーは残るものの),次のようにすればよかった。
par(family= "HiraKakuProN-W3")
plot(sample$PAR, sample$SE, xlab="65歳以上人口比率(%)", ylab="対GDP比高齢者向け社会支出(%)")
pointLabel(x=sample$PAR, y=sample$SE, labels=rownames(sample))
図 R on jupyter のラベル付き散布図の例

(3) juliaではラベル付き散布図の例が探せなかったが,labelled scatter をキーワードとするといとも簡単に解が見つかってしまった。こちらは日本語もすんなり通ってくれる。

2021年5月21日金曜日

Rをjupyterで

 ラベル付き散布図を描きたいのだ。なかなかうまく探しきれず,Rが一番手っ取り早そうなので,Rをjupyterから使えるようにすることを試みた。

とりあえず,brewでRをインストールすると最新のarm版だった。

brew install R
R —version
R version 4.1.0 (2021-05-18)
次にコマンドラインでRを起動し,R環境の中で3つのコマンドを実行する[1]。
>install.package(“devtools”) … CRAN ダウンロードは Japan/Tokyo 47 から

1つ目のコマンド(上記)で次のエラーが出てしまった。

>1: install.packages("devtools") で:
> installation of package ‘gert’ had non-zero exit status
>2: install.packages("devtools") で:
> installation of package ‘usethis’ had non-zero exit status
>3: install.packages("devtools") で:
> installation of package ‘devtools’ had non-zero exit status
>> Configuration failed to find libgit2 library. Try installing:
> * brew: libgit2 (MacOS)

そこで,brewでlibgit2をインストールしてから再挑戦する。
brew install libgit2
R
> install.packages("devtools")
> devtools::install_github("IRkernel/IRkernel")
> IRkernel::installspec()
jupyter lab … これで OK!
これでうまくいった。

写真:jupyterlabの起動画面

2021年5月20日木曜日

MRSO

 MRSO(マーソ)は,防衛省・自衛隊による東京と大阪のコロナワクチンの大規模接種センターの予約システムのトラブルで話題の企業だ。7月中に65歳以上の高齢者3600万人の接種を完了させるという菅官邸のごり押し政策の象徴として,1日に1万人/5千人(東京/大阪)の集団接種を実施するセンターを設けるということで進められている。大阪では予約初日に25分で25,000人分の予約がいっぱいになってしまった。

この予約システムの不備が,朝日新聞出版アエラ,毎日新聞,日経クロステックなどによって検証報道された。東京会場の予約には,自治体番号,接種券番号(10桁),生年月日を入力して進むようになっているのだが,そのいずれもが出鱈目の番号で予約ができてしまうことや,対象期間外でも予約可能になっているという酷いシステムだったことが明らかになった。

これに対して,岸防衛相や兄の安倍元首相が,朝日新聞と毎日新聞に絞って非難する発言をしている。日経はいいのか。安倍のtwitterは岸の発言を引用しつつ「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」ときた。極めて悪質な国会審議妨害犯の言葉にあきれて口が塞がらない。

これに対してアエラは正当な反論をしている。一般論としてはセキュリティホールが見つかった場合にこれを報道する/しないの判断には慎重さが要求される。しかし,今回の事例はセキュリティホールですらなく,防衛省・自衛隊の発注仕様そのものが問題となっている。

MEROという小さな会社は竹中平蔵が経営顧問を務めているということで,これだけでもキナ臭い話だ。ただ,一月万冊の清水有高によれば,このベンチャー企業はこれまでも人間ドックやインフルエンザ予防接種システムを多くの自治体などに提供しており十分な実績があるところだった。

つまり,発注側の防衛省・自衛隊が,7月末という菅首相の無理難題な期限設定に合わせるために十分な検証なしにシステムを発注し納入させてしまったことが問題だった。こんないい加減な組織に日本の防衛を任せているという恐怖に慄く今日この頃である。

それにしても日本政府のシステム設計能力は低すぎる。厚生労働省の動きが悪いとみて西村経済再生相をコロナ対策にあて,さらに河野太郎をワクチン接種推進担当相とした。それでも不満で,総務省を使って地方自治体に圧力をかけて,7月中の高齢者接種が可能であると言わせた。その上で,たかだか全体の1%の寄与のために(1日100万件に対する1万件),従来のシステムと全く独立に防衛省・自衛隊を使うという有様だ。この状態でデジタル庁を作るととんでもない未来が待ち構えると予想されるのだった。

[1]「ワクチン予約システムに欠陥」~この報道は犯罪?不適切?~メディアへの抗議や批判を検証する(江川紹子,Yahoo News,2021.5.20)

[2]朝日新聞出版、毎日新聞の「架空予約」報道は「悪質な妨害愉快犯」なのか?(米山隆一,論座,2021.5.22)


2021年5月19日水曜日

田村正和

天牛書店からの続きか 

阪東妻三郎(1901-1953)の息子の田村正和(1943-2021)が77歳で亡くなった。兄の田村高廣(1928-2006)も77歳で亡くなっている。弟の田村亮(1946-)は存命だ。なお阪妻の命日は米島君の誕生日の1953年7月7日と同じだ。Wikipediaにある阪妻の写真は田村正和によく似ている。

田村正和といえば円月殺法の眠狂四郎であり,大阪出張の父と梅田コマ劇場の舞台を観た話は以前書いた。テレビの人気番組は全くみていない。テレビでは,西郷輝彦のどてらい男(1973-1975)に出ていた田村亮の方が記憶にある。

なお,どてらい男のモデルは山善山本猛夫(1921-1991)だが,豊中の蛍池に住んでいたのではないか。大学の通学路の途中に山本猛夫の表札がかかった大きな家があってこれがそれだと誰かに聞いたようなのだが,気のせいかもしれない。


2021年5月18日火曜日

MacBook Air M1(4)

 MacBook Air M1(3)からの続き

4月18日にMacBook Air M1 がやってきてからちょうど1ヶ月になる。このところCPU負荷がつねに30-40%を越えて,CPU温度が70-80℃となっていた。Apple シリコンのM1チップを搭載したMacは発熱が少ないのが特徴だったはずなのになぜだ。すべてのアプリを終了させてスリープした状態で一晩寝かせ,朝を迎えてもパームレスト部分が暖かいのである。

さすがにおかしいと思って,アクティビティモニタで調べてみると,なんとアンチウィルスのSophosが非常に大きなCPUタイム消費の原因だった。さっそくこれを取り除いた。ウィルス対策は,ClearnMyMacのアンチウィルス機能に頼ることにする。おかげで,CPU負荷は5%,温度は35℃前後まで下がった。やれやれ。

なお,MacBook Air M1(2)で書いていた「jupyterlabが動かない問題」はしばらく前に以下のようにして解決した。これで残ったのは pythonの機械学習ライブラリ scikit-learn が動かないことくらいである。

/opt/homebrew/opt/python@3.9/bin/python3.9 -m pip install --upgrade pip
pip3 install jupyterlab
jupyter lab -> error
jupyter lab build -> error
brew install node.js
jupyter lab build
jupyter lab

2021年5月17日月曜日

スクリーンタイム

アップルの macOS や iOS には,端末やアプリの使用時間 を記録したり制限したりするツールとしてスクリーンタイムが準備されている。NHKの朝の情報番組「あさイチ」のスマホ認知症特集で登場したのでチェックしてみた。

なお,司会の博多花丸大吉は好感がもてるけれど,「あさイチ」の生活の知恵的特集にはいまイチのものも散見される。「チコちゃんに叱られる」や「ガッテン」も同様で,眉唾で楽しむ必要がある(特に脳科学者などの肩書きででてくるものに注意)。

まあ,まじめな顔(疑似客観性や疑似中立性)を装いながら,著しく操作/加工された情報を流したり,重要な情報をシカトするNHKの報道番組よりは数段ましかもしれない。もっとひどいのは吉本芸人を使って大阪維新や菅政権の提灯持ちをする民放のニュースワイドショーなのだが。

話をもとに戻して,自分の端末のスクリーンタイムのデータ(5月1日〜5月16日)を確認したところ,iPhoneの利用時間は平均2時間10分ほどだった。利用アプリベストスリーは,Facebook,Twitter,LINEである。これに対して,MacBook Air の利用時間は平均11時間50分で,その内訳は,Safari 8時間,YouTube 3時間,twitter 1時間,blogger 30分,Wikipedia 30分といったところだ。いいようなわるいような。

なお,ほとんど信用できないスマホ認知症のチェックリストの点数は12点である。GIGAスクールが進めば,子どもの端末使用時間は12時間を軽く越えてくるのは間違いないので,もう少し科学的なメリット・デメリットの分析と評価が必要になるはずだ。現在のゲーム・スマホ有害論のほとんどはそれ自身が有害だと思われる。

2021年5月16日日曜日

社会教育センター

本多町に社会教育会館ができたのは中学1年のときだった。会館に設置された県立図書館は閉架だったこともあってほとんど利用しなかったが,社会教育センターの方は土曜日に教育映画教室を開いていたので,毎週のように通っていた。

子ども向けの内容も多く,まわりは小学生ばかりだったので,中学生の我々はちょっと浮いていたかもしれない。土曜日の午後になると畦地君,有坂君,出島君,横谷君のいつものメンバーで下菊橋を渡って往復した。

印象に残っているのは,NHKのドキュメンタリーの「カラコルムへの道(1963)」である。東京大学のカラコルム遠征隊(京大だと思っていた)によるバルトロ・カンリ初登頂の記録だ。国語の教科書にあった河口慧海の西蔵探検のイメージと重なって記憶に定着した。
・昭和三十八年(1963) 12月19日:県は下本多町の県営アパートを含む県有地3,300平方メートルに、来春から3年計画で社会教育センターを建設することになり、本年度建設費6,500万円を追加予算に計上、県議会の議決を得た。建物は5,490平方メートルの4階建、兼六園の県中央図書館もセンターに収容する。
・昭和三十九年(1964) 6月9日:本多町に建つ石川県社会教育センターの起工式がおこなわれた。
・昭和四十一年(1966) 5月1日:本多町3丁目に完成した石川県社会教育会館が開館した。同会館には社会教育センター県立図書館がはいった。地下1階、地上4階、延べ6,382平方メートル、総工費3億円(兼六園内の旧県立図書館は6月中に取りこわす)。
・昭和五十七年(1982) 12月4日:県社会教育会館の増改築工事が完了し、落成式が行われた。石川県立図書館開館70周年記念式典を挙行(12月9日)。
県立図書館は,明治12年(1897年)に前田家蔵書3万冊が石川県勧業館内に設置された図書室で公開されたものを起源として,明治45年(1912年)に石川県立図書館が開館した。平成28年(2016年)に新石川県立図書館基本構想が検討され,令和元年(2019)年に,小立野の金沢大学工学部跡地で,新石川県立図書館が着工された。


写真:石川県社会教育会館(パブリネットから引用)


2021年5月15日土曜日

闕野神社

金沢の 闕野神社(がけのじんじゃ)は,実家から歩いて5分の寺町通りにある神社。子どものころ,正月の初詣はここと決まっていた。母がお雑煮の準備をしている間に,父とこどもたちが初詣に向かう。後年,元旦には西金沢の八幡神社(はちまんじんじゃ)に母と何回か通うことになる。

小学校1年の絵日記で,闕野神社のお祭りの出店で5円のアイスクリームを買って食べたことを書いたら,おばあちゃんや両親にこっぴどく指導された。何が入っているかわからないのでそんなものは食べてはいけないとのこと。せっかく,近所の友達の宮崎君と10円玉にぎりしめて楽しみにいったのに,散々な結果であった。

お祭りといえば,おばあちゃんの家がテリトリーとなっている泉野桜木神社のほうが大きくて出店も多かったのであるが,何かを買ってもらった記憶はあまりないかもしれない。神社の祭りの出店ではなく,寺町通り終点あたりにでる夜店の方がにぎやかだった時期もあったけれど,それも長くはつづかなかった。

寺町通りの商店会も閉店が続き,横山酒店も松川金物店も北村の傘屋も新保の床屋も荒木自転車店も寺町終点の津田の靴屋もみんななくなってしまった。


写真:闕野神社(金沢徒然日記から引用)

P. S.  金沢徒然日記には「闕野神社 宵詣りの逸話が残る神社」として,

当社の境内では昔「宵詣り」という人に呪いをかけるものが流行し、本殿裏の欅の木には無数の藁人形が五寸釘で打ち込まれていたという

 とあるが,さすがにその記憶はありません。

2021年5月14日金曜日

城南公民館

 金沢の百年に,城南公民館の設置についての記事があった。1960年だから自分が小学校1年のときに寺町1丁目の銭湯桜湯と闕野(がけの)神社の間の筋を入ったところにできた。しかし,1977年には若草町に移転している。わずか17年のことだったのか。

城南公民館は,旧市民病院の跡地につくられたようだが,この病院については全く記憶がない。市史年表では以下のようになっている。なお,568坪がそのまま公民館になったとは思えない。こじんまりとした建物だった。横山別邸跡なので辻儀十郎さんの家の敷地になった部分も含まれていたのかもしれない。

・大正十五年・昭和元年(1926)3月30日:金沢市施療病院の敷地は野田寺町1丁目元横山章別邸跡(570坪)にきまった。市の買収価格は坪27円。 

・昭和二年(1927)5月19日市の施寮病院「金沢市民病院」の第1期工事が野田寺町1丁目旧横山別邸跡で着工された。敷地568坪、建坪291坪、収容人員60人。

・昭和三年(1928)4月1日低所得階級を対象にした市立金沢市民病院が、野田寺町1丁目に開院した。総工費4万5,000余円、被扶助階級と月収25円未満の単身者等は診察費無料となっている。

・昭和八年(1933)6月:野田寺町の市立金沢病院は一般市民に実費診療を実施して歓迎され、入院通院患者が激増、最近6ヵ月間の延べ受診人員は1万4,419人に達した。 

・昭和二十九年(1954)8月4日市は市民病院および同伝染病院が老朽化したので、30年度から伝染病院敷地に市立総合病院を建設する計画をきめ、準備として寺町通りから伝染病院に通ずる道路新設の測量を開始した。

・昭和三十四年(1959)8月12日昨年1月から長坂町に建設中のモデル総合病院、金沢市立病院の落成式がおこなわれた。(診療開始は17日)。新病院は現在市内に分散している市民病院、同付属病院、伝染病院を統合した施設となるもの。敷地1万2,019平方メートル、本館は地下1階、地上5階の延べ6,008平方メートル(このほか昨年完成した伝染病舎など1,310平方メートル)。総工費2億9,000万円。

・昭和三十五年(1960)1月10日十一屋、泉野両校下の公民総合センター「城南公民会館」が完成、落成式があげられた。十一屋公民館が中心となって野田寺町1丁目の旧市民病院の払下げ(421万円)を受け、改装設備費に150万をかけたもので、資金は簡易保険料の集金手数料の積み立てなどをあてた。館内には結婚式場、ホール等もある。

・昭和五十四年(1979)4月9日城南公民館(若草町)の開館式が行われた。(総事業費1億2,642万円余)

高校時代のクラブのコンパや卒業生を送る会は,公民館を借りて行うことが多かった。1970年3月の追い出しコンパは,城南公民館で開かれることになり,家が近所だったのでその手続きを任された記憶がある。公民館の使用料は格安だったので,お金のない高校生にはうってつけだった。2階に座敷があって,そこでおかしやジュースを持ち寄ってわいわいやっていた。

卒業生に宛てる色紙に何を書いてよいのかわからなくて困り果てていたとき,卒業する佐竹さん(金沢大医学部)が気楽にかけばいいよとアシストしてくれた。後は,陽気な森さん(上智大学)がいたのを覚えている。他の3年生はだれだったのだろうか。AFSの留学でアメリカから帰ってきた宮崎さん(国際基督教大学)もこのときだったかもしれない。しかし,自分が2年や3年のときのクラブの追い出しコンパの記憶はまったく欠落しているのであった。


2021年5月13日木曜日

金沢の映画館(4)

 金沢の映画館(3)からの続き

高校時代にみた洋画で思い出せるもののリスト(*は既出,年月は日本公開日順)を以下に。

アメリカン・ニューシネマの時代だったのである。ちょうど高校に入る前から学部生のころだ。アメリカン・ニューシネマ作品の隙間を埋めるように,過去の名画やその他のヒット作に足を運んだ。総合的に評価したマイベストワンは,デヴィッド・リーン監督のアラビアのロレンスで,これは今も変わっていない。

試験が終わってからみんなで見に行ったのが,屋根の上のバイオリン弾き小さな恋のメロディ。屋根の上のバイオリン弾きは,もっとよいかと思ったが,米島君のいうように似た話の繰り返しが感動をそいでしまっていた。

小さな恋のメロディは,ビージーズとCSNYが聴けるだけでよかったのだけれど,意外にもメロディをとりまくロンドンの中流下層の暮らしぶりのリアルな描写が印象的だった。ストーリーは基本的にお子様向けで役者もいまいちだったのだが。

エルビス・オン・ステージ愛の狩人を観たのは大学入試も終わった頃だった。米本君の感想は「エルビス・オン・ステージはものすごく良かった」だった。彼の映画評はだいたい正しい。ポピュラー音楽としてプレスリーの曲はちょっと敬遠していたが,このドキュメンタリーで復活したころは素直にかっこいいと思えた。亡くなるまであと6年だとはわからない。

愛の狩人は,監督が卒業やキャッチ22のマイク・ニコルズ。結構期待して,米島君,荒谷君の3人で駅前のロキシーにいった。しかし,ストーリーがさっぱり理解できないままに終わってしまった。米島君はよくわかったといっていたので,これは自分の力不足だった。

1 *誰がために鐘は鳴る 1952.10
2 旅情 1955.8
3 *エデンの東 1955.10
4 アラビアのロレンス 1963.2
5 野生のエルザ 1966.3
6 俺たちに明日はない 1968.2
7 卒業 1968.6
8 ロミオとジュリエット 1968.11
9 Ifもしも…. 1969.8
10 イージーライダー 1970.1
11 明日に向かって撃て! 1970.2
12 砂漠の冒険 1970.7
13 いちご白書 1970.9
14 *幸せはパリで 1970.10
15 *クリスマスキャロル 1970.11
16 エルビス・オン・ステージ 1971.2
17 罪と罰 1971.3
18 小さな恋のメロディ 1971.6
19 *アンドロメダ… 1971.8
20 屋根の上のバイオリン弾き 1971.12
21 愛の狩人 1972.1
ソ連映画の罪と罰は,北国新聞社の無料映画試写会のハガキが当選したもので,旧北国新聞社屋内ホールの北国講堂でみている。たぶん映画をみてから小説を読んだと思うが,罪と罰は名作でしたね。帰りに同じクラスの横川君が前の席から足早に帰っていくのが見えた。彼も当選していたのか。

金沢の旧作名画3本立ては,石引町のスタア劇場が代表的である。ここで,Ifもしも….と俺たちに明日はないとイージーライダーを250円くらいでみたような気がする。もしそうならばすごくお得な話である。


写真:スタア劇場1982(やけくぞじじいの写真展より引用)

2021年5月11日火曜日

寺町台100年

西村一朗さんの寺町の記憶からブラウズしていると,金沢の百年という市史年表にたどりついた。金沢市図書館のウェブサイトからリンクされている。そこから,100年前から50年前の出来事を抜粋してみた。市内電車の50年であった。

 加賀藩の時代に,一向宗からの防御のために(子どものときは一般に敵からの攻撃をふせぐためとならった)犀川南岸の台地に寺院が集められた。寺町寺院群である。金沢にはこのほかに,小立野寺院群や浅野川北岸の東山にある卯辰山山麓寺院群がある。したがって,これらの寺院は一向宗以外の禅宗や日蓮宗が中心となっていて,浄土真宗の寺院はほとんどない。

・大正十年(1921) 7月10日:街鉄市内電車の第2期線の寺町線が開通した。延長1マイル。
・大正十三年(1924) 6月19日:犀川の上菊橋から野田寺町1丁目に出る坂の拡張工事が完成したので不老坂と命名、落成式がおこなわれた。
・昭和十八年(1943) 8月24日:野田寺町松月寺の桜(大桜)と広坂通堂形のシイの木(県庁前)が文部省から天然記念物に指定された。
・昭和三十二年(1957) 11月20日:寺町終点─野田町間の道路舗装が完成、この舗装を公共事業(全額国庫資金)として実現するために、手をたずさえて努力した地元十一屋校下の母親たち約1,000人も参列して、寺町終点映画館でなごやかな完成祝賀式がおこなわれた。
・昭和三十五年(1960) 1月10日:十一屋、泉野両校下の公民総合センター城南公民会館」が完成、落成式があげられた。十一屋公民館が中心となって野田寺町1丁目の旧市民病院の払下げ(421万円)を受け、改装設備費に150万をかけたもので、資金は簡易保険料の集金手数料の積み立てなどをあてた。館内には結婚式場、ホール等もある。
・昭和三十五年(1960) 11月30日:寺町台に赤痢続発、11月16日野田寺町1丁目柱岩寺保育所に13人、27日野田町養護施設亨誠塾に13人発生した。本年にはいってからの市内赤痢患者130人のうち、寺町台の発生数は52人。
・昭和三十七年(1962) 4月29日:午前9時50分ごろ野田寺町1丁目桂岩寺から出火、同寺を全焼してさらに同寺裏の民家2戸と納屋1むねを全焼、2戸を半焼した。桂岩寺の有名な木仏五百羅漢(文政8年完成)は、数体を持出しただけであとは焼失した。
・昭和三十八年(1963) 2月7日:北鉄バス金沢市内線の金沢駅前ー寺町間が開通。これで市内バスの開通路線は、橋場町ー公園下ー香林坊間と、橋場町ー公園下ー香林坊ー金沢駅間とをあわせ3線。
・昭和三十八年(1963) 6月1日:金沢市最初の住居表示法にもとづく新住居表示が、寺町台一帯で実施され、44町が18町に統合された。新しい18町名は野田町、平和町1─3丁目、法島町、十一屋町、若草町、緑丘、寺町1─4丁目、泉野町1─6丁目で、対象は4,587戸。
・昭和三十九年(1964) 11月27日:赤痢の集団発生があい次ぐ金沢市内で、また弥生町の弥生小学校に児童15人(ほかに給食調理人1人、家族4人)が赤痢にかかった。ことしになってから本日までの金沢市の赤痢患者は579人、うち寺町台地の発生が約30%を占めている。
・昭和四十二年(1967) 2月2日:市内電車の全面廃止を記念する花電車が午前10時、北鉄本社車庫を出発、市民に別れを告げた(花電車は10日まで運転された)。
・昭和四十二年(1967) 2月10日:大正8年以来48年の歴史をもつ北鉄の市内電車が全面廃止された。
・昭和四十四年(1969) 12月22日:本多町と寺町台を結ぶ都市計画街路、新桜坂が完工、開通式が行われた。延長233メートル、幅9メートル、両側に1.5メートルの歩道。工費1億5,350万円。
・昭和五十年(1975) 2月23日:闕野神社(寺町)の菊桜(樹齢150年)が枯死した。
大日本帝国陸軍の第九師団が金沢に置かれたのが1898年である。ちょうど北陸本線の金沢までの延伸が完了して,金沢駅が設置された年だ。その兵舎が野村(現在の平和町)におかれたため,寺町もその恩恵を受けていたと思われる。

金沢の映画館(3)

 金沢の代表的な映画館といえば,並木町の北国第一劇場と北国会館であり,浅野川大橋のあたりの河畔に並んでいた。ともに洋画の封切館で,メジャーな作品が2本立てで上映される。残念ながら1975年には閉館してしまった。

これらの映画館で見たかもしれない映画といえば,小学校の時の101匹わんちゃん大行進(1962.7),素晴らしきヒコーキ野郎(1965.10)やミクロの決死圏(1966.9)がある。ディズニーのわんわん物語(1955.6)の方は,映画では見ていないが,絵本をもっていた。もしかすると,王様の剣(1964.7)も見ていたかもしれないが微妙なところ。白雪姫からはじまるディズニーのアニメーション長編映画でよかったのはこのころが最後かもしれない(くまのプーさんは別として)。

高校生になると,映画は一人(たまにはクラスの友達と)で行くようになった。エデンの東(1955.10)と誰がために鐘はなる(1952.10)のリバイバルとか,クリスマス・キャロル(1970.11)と幸せはパリで(1970.10)の初演などを北国第一会館か北国劇場でみている。米本良行くんが「エデンの東はよかったけど,誰がために鐘は鳴るはぜんぜんだった」といっていたが,まあそのとおりでイングリッド・バーグマンはいったいなんだったのか。

「クリスマス・キャロル(スクルージ)」は,泉丘高校の英語研究部(E.S.S)の英語劇で,1年生ながらスクルージの役をつとめたことから楽しみにしていたけれども,この作品も残念でしたの部類。しかし,併映でまったく期待していなかった「幸せはパリで(エイプリル・フール)」のほうが面白かったのだった。バート・バカラックディオンヌ・ワーウィックのおかげかもしれない。

1972年には大学進学で金沢を離れてしまったので,それ以来,これらの映画館に行くことがないまま閉館になってしまった。最後にここで観た映画は,アンドロメダ…(1971.8)だ。マイケル・クライトンアンドロメダ病原体(1970)が,早川書房からハヤカワ・ノヴェルズで出版されたときに,真っ先に買ってその現代的で斬新な構成に驚いたものだったことから,映画は必ず見に行こうと思った。ところが,大学入試直前の12月末には上映期間が終わってしまう。日曜日の昼過ぎに片町のうつのみや書店に行くといって,冬の雪空を寺町から浅野川大橋の映画館まで自転車で往復した。帰りにはもうあたりは真っ暗になっていたが,親にはなにもいわれなかった。まあ気づいていたのかもしれないけれど。


写真:ハヤカワノヴェルズのアンドロメダ病原体の書影

[1]石川県の映画館 消えた映画館

2021年5月10日月曜日

金沢の市電

 昔,金沢の街中を走っていた路面電車は,北陸鉄道金沢市内線であり,大正8年(1919年)に開業し昭和42年(1967年)には全線廃止された。当時中学2年,シネマパレスが閉館したころだ。

シネマパレスの情報を調べていたら,奈良女子大名誉教授の西村一朗先生のブログにたどり着いた。1941年金沢生まれ(寺町3丁目≒当時の桜畠)で自分よりちょうど一回り上だ。金沢学園幼稚園→十一屋小学校→野田中学校→金沢大学附属高等学校→京都大学工学部建築学科:大学院へと進まれたので,中学校の先輩ということになる。

西村先生のブログにある金沢の思い出には,当時の寺町界隈や学校に関する話題がいろいろあってとても興味深い。例えば,寺町2丁目の横山酒店の長男(我々の同級生は末っ子だった)が小学校の児童会長をしていたとか,協栄のパン屋と横山酒店の間の筋を入った右手にあった洋裁学校は,西村先生の母上が関係していたとか。

また,当時の市内電車が寺町終点で折り返す話が詳しく説明されていた。ポール型の四輪車とパンタグラフ型の八輪車があったが,寺町まで来ていたのは,朱色のボディとクリーム色の窓天井の2番(2系統)八輪車と,深緑色の5番四輪車だ。

1系統・・・金沢駅―武蔵が辻―橋場町―兼六園下―小立野
2系統・・・金沢駅―武蔵が辻―香林坊―野町広小路―寺町
3系統・・・小立野―兼六園下―香林坊―野町広小路―野町駅
4系統・・・野町駅―野町広小路―武蔵が辻―橋場町―鳴和
5系統・・・寺町―香林坊―兼六園下―橋場町―鳴和―東金沢駅
6系統・・・兼六園下―香林坊―武蔵が辻―金沢駅

百万石まつりのときなどは花電車としてデコレーションされていて,わくわくしたものだった。5歳で幼稚園に入るころに寺町(当時は泉野町)に金沢駅前の本町(当時は田丸町)から引っ越してきた。ご幼少のみぎりは田丸町から祖父母がいた寺町2丁目(洋裁学校の筋奥だ)まで,毎日市内電車で通っていたのだった。

そのころの記憶はほどんど残っていないが,ある日,田丸町への帰りが遅くなってあたりが暗い電車の中で,材木町の火事へ消防車が走っていくと祖母に説明されていた場面だけが刻まれている。たぶん,武蔵ヶ辻のあたりではなかったか。電車は一時停止していたのだろうか。あるいは模造記憶なのかもしれない。

P. S. 金沢市の百年史によれば,この火事は昭和31年(1956年)4月24日午後6時50分ごろの材木町小学校が全焼した大火だったようだ。当時2歳7ヶ月か。


写真・図:金沢の市電(Wikipedia/鉄道写真から引用)

[1]西村一朗の地域居住談義
[2]懐想「石川の鉄道」
[3]市史年表 金沢の百年

2021年5月9日日曜日

金沢の映画館(2)


金沢市内にまだ映画館がたくさん残っていたころの話。寺町の市電の終点の付近,五百羅漢で有名な桂岩寺の隣の宝集寺の隣にシネマパレスという小さな映画館があった。泉野小学校の映画教室で,白蛇伝(1958.10)や西遊記(1960.8)を小学校低学年のクラスでみにいった映画館だ。

映画が娯楽の中心だった時代,夕食後に父がシネマパレスにチャンバラ映画を観に行くことがときどきあった。仕事の電話がかかってくるのを取り次ぐ際は,母の旧姓である「中山」を使うということになっていた。本名だと目立ちすぎるからだろう。観客にあふれ紫煙が充満しているシネマパレスで,美空ひばりだか山城新伍だかの時代劇をみた微かな記憶がある。子どもにはよい環境ではありません。

中学校にはいるころには,シネマパレスは閉館してしまった。ただ,小学校高学年から中学生にかけても学年単位の映画教室は続いていた。サウンド・オブ・ミュージック(1965.6),ディズニーのファンタジア(1955.9),市川崑の東京オリンピック(1965.3),ミケランジェロの生涯を描いた華麗なる激情(1966.2)などを片町の金沢劇場で観ている。

その金沢劇場(きんげき)は,東宝系の封切館であり,ゴジラシリーズや戦記物でお世話になった。その一覧をあげてみる(参考のため,※で東映動画,大映特撮などを併記する)。その金劇も1998年には閉館してしまったようだ。
1 キングコング対ゴジラ 1962.8 (最初に観たゴジラ映画)
2 ※わんぱく王子の大蛇退治 1963.3
3 海底軍艦 1963.12 (これは大和劇場で)
4 ※わんわん忠臣蔵 1963.12
5 モスラ対ゴジラ 1964.4
6 宇宙大怪獣ドゴラ 1964.8
7 三大怪獣地球最大の決戦 1964.12
8 ※ガリバーの宇宙旅行 1965.3
9 ※頭上の脅威 1965.4 (父とアメリカ文化センターで)
10 戦場に流れる歌 1965.8
11 ※大怪獣ガメラ 1965.11
12 怪獣大戦争 1965.12 (子どものころ観た最後のゴジラ映画)
- - - - - - - - - - 
13※大魔神 1966.4
14 日本のいちばん長い日 1967.8(お盆休みに家族全員で)
15 日本海大海戦 1969.8(高校生になってから)
日本のいちばん長い日の終盤に,エキセントリックな横浜警備隊の大尉が終戦を阻止すべく東京に向かおうとするシーンがあるが,当時,千葉の四街道の通信隊にいた父の周りでも同様の状況があったらしい。戦争の話をゆっくり聞かせてもらう機会がなかったのが残念だ。


図 金沢の過去の映画館(金沢くらしの博物館から引用)

[1]石川県の映画館(消えた映画館の記憶)

2021年5月8日土曜日

新型コロナワクチン接種予約(4)

 新型コロナワクチン接種予約(3)からの続き

昨日(5/7),政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は,緊急事態宣言地域の拡大と期間の5/31(月)までの延長,ならびに,蔓延防止等重点措置地域の変更を決定した。そもそも最初の段階で連休末までと設定していたため,休日効果で正確な感染動向も把握できず,こうなることは目に見えていた。戦力の逐次投入や期間の暫時延長の連続が最も駄策なのだ。トップがまともに記者会見で答弁できず,内閣官房のメンバー首相動静で登場する人物達がグズグズなので,状況は悪化の一途をたどる。

菅首相は,ワクチンのみが頼りだと強調しつつ,100万回/日の接種を目指すとした。65歳以上の高齢者(3600万人)と医療従事者(470万人)と15歳未満の子ども(1500万人)を除いた国民の数は約7000万人である。高齢者と医療従事者の接種が7月末までに完了したと仮定して,その後140日で,対象とする国民全体への接種が完了する。つまり2021年12月末には完了というもくろみだ。

EUからは十分なワクチンが供給されている(5/6時点で7200万回が輸出許可済ロイター5/7では2800万回が国内到着済)にもかからわず,接種が進んでいないのはいったいなぜかという疑問が指摘されている。これに関しては,厚生労働省のウェブサイトに新型コロナワクチン供給の見通しが載っている。整理すると,

【第1クール】4/05 の週  100箱(各道府県2箱 東京・神奈川・大阪は4箱)
【第2クール】4/12 の週   500箱(各道府県10箱 東京・神奈川・大阪は20箱)
【第3クール】4/19 の週   500箱(各道府県10箱 東京・神奈川・大阪は20箱)
【第4クール】4/26 の週 1,741箱(全ての市区町村に1箱)
※5/9 までに 4,000箱 = 合計6,814箱 = 6,814 × 195 × 5 =664万回
【第5クール】5/10の週・5/17の週の合計 16,000箱
※第5クール以降では、1バイアルから6回接種が可能な注射器を配布します。
【第6クール】5/24 の週・5/31 の週 13,000 箱+調整枠
【第7クール】6/07 の週・6/14 の週 13,435 箱+調整枠
【第8クール】6/21 の週・6/28 の週13,434 箱+調整枠
※7/4までに 合計 55,869箱 = 55,869 × 195 × 6 = 6,536万回
 ※1-4クール + 5-8クール = 7,200万回 = 3,600万人分

次の4クール(8週)はこれまでの4クール(5週)の10倍量(一日あたりのワクチン接種量で6倍,19万回/日→117万回/日)のワクチンが供給がされるので,これが本当にうまくいけば7月中に 高齢者向け接種が完了するのだが・・・。実際にはこれまでの4クールで22万回(1万回/日)と供給量の1/20しか接種が完了していない(最も多い日でも2万回/日)。


2021年5月7日金曜日

金沢の映画館(1)

 昔は繁華街に映画館があったものだけれど,今では郊外の大型ショッピングモールのシネマコンプレックスに中心が移ってしまった。映画の最盛期には金沢の街中にも映画館がたくさんあった。そのころの話。

ジュール・ヴェルヌの小説には映画化されたものも多い。「地底旅行」も何度か映画化されているが,ヘンリー・レヴィン監督の1959年アメリカ映画「地底探検(1960.4)」を中学生のころに見ている。当時,夏休みに金沢市の小・中学生向けの映画教室があった。早朝8:00〜10:00の時間帯に市内の映画館で子供向けの映画を特別料金(1人10円)で上映するのだ。夏休みに入る前に映画館と上映番組や上映日の一覧が記された半紙が渡される。その中から自由に選んで子供だけで見に行く仕組みだ(中学生だけだったかもしれない)。

ジュール・ヴェルヌが原作だとは知らずに,「地底探検」が面白そうだということで,畦地・有坂・出島・横谷のいつものメンバーのうちの何人かで香林坊の映画館に行ったのではなかったか。地底世界には海があり恐竜が棲んでいたりして中々良かった。1967年当時の香林坊には,金沢東映劇場・金沢大映劇場・金沢日活劇場・金沢松竹座・金沢パリー菊水・金沢スカラ座など10軒近くの映画館が軒を連ねていた。どの劇場だったのかは定かでない。

香林坊で見た映画といえば,コスタ・ガブラス監督の1969年アルジェリア・フランス映画「」,イヴ・モンタンが主演の政治映画だ。なぜか,同じ泉丘高校に進んでいた小林小児科の小林君と鉢合わせるが,彼もこれを見に来ていたのかどうかはわからなかった。おたがいにちょっと恥ずかしかったのかもしれない。


写真:地底探検(1959)から

[1]石川県の映画館(消えた映画館の記憶)

2021年5月6日木曜日

ジュール・ヴェルヌ

 連休末日は,BBC 2019年のテレビドラマシリーズの宇宙戦争(原作 H. G. ウエルズ 1866-1946,全4回)を見て過ごした。手元には早川書房の世界SF全集2のウエルズ(タイム・マシン,透明人間,宇宙戦争)がある。ただし,これは最近入手したものなのだった。どれも子どものころにジュビナイル版で読んだような気がするが,当時は,ジュール・ヴェルヌ(1828-1905)の方が好きだった。

最初に読んだヴェルヌの小説は十五少年漂流記か月世界旅行だったのではないか。その後,学習研究社から少年少女ベルヌ科学名作全集が出て,これで何冊かを補完して読んだ。

少年少女ベルヌ科学名作全集(学習研究社 1964-1969)
  1 海底2万マイル ✓
  2 月世界旅行 ✓
  3 地底の探検 ○
  4 空飛ぶ戦艦 △
  5 アフリカ横断飛行 △
  6 十五少年漂流記 ✓
  7 八十日間世界一周 ✓
  8 難破船
  9 砂ばくの秘密都市
10 悪魔の発明 △
11 北極冒険旅行
12 動く島の秘密 ○
○はこのシリーズで読んだもの,△は記憶がはっきりしないもの,✓は別の本で読んだもの。

2021年5月5日水曜日

量子力学100年 

1925年の7月29日に受理されたハイゼンベルグの量子力学の第一論文,Über Quantentheoretische Umdeutung kinematischer und mechanischer Beziehungen. (運動学的および力学的関係の量子理論的再解釈について)は,Zeitschrift für Physik December 1925, Volume 33, Issue 1, pp. 879–893 に掲載された。

2025年にはちょうど100周年を迎えることになるので,量子力学誕生100周年のお祭りが催されると思われる。1926年の1月27日に受理され,Annalen der Physik, vol. 384, Issue 4, pp. 361-376に掲載された,シュレーディンガー方程式の第一論文 Quantisierung als Eigenwertproblem (固有値問題としての量子化)まで含めれば,2年にわたって様々な企画が登場するのではないか。

今日の日経1面は,「量子技術官民で研究 トヨタや東芝50社と協議会」で,「量子技術は特殊な物理法則である量子力学を高速計算や通信に利用するものだ。コンピュータの処理能力を飛躍的に向上させられる」とある。特殊な物理法則てなんやねん。

3面には「量子力学」という言葉の解説があり,「アインシュタインの相対性理論と双璧をなす現代物理学の土台の理論」まあ,こちらのほうがましか。量子力学の概要が次のようにまとめられている。
歴史:オーストリアのシュレーディンガーらにより20世紀前半に構築→ハイゼンベルクはどこへいった。 
特徴:電子や光子(光の粒)といった「量子」の不思議な振る舞いを説明
応用:20世紀に半導体,レーザーの技術の発展に貢献
   21世紀に入りコンピュータ,通信,暗号,センサーなどに革新をもたら   「第2次量子革命」が進行中
P. S. 昭和は1926年12月25日からはじまるので,昭和元年≒量子元年とアサインできる。昭和28年は量子28年だった。平成元年(1989)≒量子64年,令和元年(2019)≒量子94年となる。ということは,量子力学100年イベントは,昭和100年イベントと干渉してしまうのかもしれない。そのころに改憲国民投票が設定されるのだろうか・・・orz

2021年5月4日火曜日

溶姫

NHK「 チコちゃんに叱られる」の黒柳徹子バーションで,二八そばのセイロが話題になっていた。その語源や理由はちょっと置くとして,そこで登場した徳川11代将軍の徳川家斉(1787-1837)である。16人の妻妾を持ち53人の子をなしたが,そのうちで現在に続くのは血筋が続くのは,斉民・斉裕・溶姫の3人だけだという。その溶姫(ようひめ・やすひめ,1813-1868)が気になった。

溶姫は1827年に加賀藩前田家13代前田斉泰(1811-1884)の正室となり,その長男が前田家第14代(最後の藩主)の前田慶寧(よしやす,1830-1874)である。さらに慶寧の五女衍(えん,1869-1891)と六女貞(てい,1871-1955)が近衛篤麿(1863-1904)の室,継室となった。

近衛文麿(1891-1945)は,近衛篤麿の長男であり,細川護熙の祖父に当たる。こうして,溶姫から細川護熙までの系図が成立している。溶姫の墓所は金沢の野田山の前田家墓所にあり,偕:13代正室,徳川家斉の娘として斉泰の隣に眠っている。

溶姫(景徳院)は,加賀藩の上屋敷である江戸本郷邸に入輿し斉泰に嫁いだ。現在の東京大学赤門は,景徳院来嫁の時に加賀藩邸に建てられた溶姫御殿の正門である。


写真:東大赤門(Wikipediaの東京大学の建造物より引用)

2021年5月3日月曜日

寺内時計店

 長年愛用してきた腕時計が壊れたのは,4月10日の朝の散歩のときだった。ゼンマイを巻いても空回りしてしまう。早速,修理先を調べるために京都の寺内を検索していると,尼崎の寺内時計店が見つかった。以前,天理の商店街の時計店で一度修理してもらったことがある。そのときは何だったかちょっと忘れたが無事に直った。しかし,天理の商店街も寂れてしまって,時計店もやってるかどうかはっきりしない状況だったので,今回はこの寺内時計店に頼ることにした。

昭和43年に事業を継承された店主の高齢の母上が時計修理術技能士の資格を持って修理してくださるのかと若干不安と期待が入り混じった気持ちだったが,今見ると資格欄は別の女性名だった。しかし,53年前のSEIKOの21石防水腕時計の機種名がスカイライナーであり,故障がゼンマイとネジ1つであることを的確に把握して,きっちりと修理していただくことができた。SEIKOのオンライン修理受付もあったのだけれど,機種番号を入れると古すぎるからか対応不可となってしまったのだった。

スマートフォンやパソコンが非常に短いサイクルで消費されていく時代に,50年以上も同じ機械を使い続けることができるというのはなかなか有り難いことである。


写真:SEIKO スカイライナー1968年製(撮影 2021.4.10)


2021年5月2日日曜日

八十八夜

昨日の朝の散歩(東)のとき,急に「夏も近づく八十八夜とんとん」と頭の中に響いてきた。もうすぐ春も終わり,立夏なので,夏にはいってしまうと「夏も近づく」にはならないし,八十八夜というのは確か立春から数えての日数だったので約3ヶ月だから5月のはじめころになると思い至った。早速iPhoneのアプリ「六曜」で確認すると,今年は5月2日が八十八夜だった。このあたりでは,お茶ではなくて温室のイチゴ摘みの季節だ。

  茶 摘  文部省唱歌 

  1912年(明治45年)刊行 「尋常小学唱歌・第三学年用」

1.夏も近づく八十八夜 

  野にも山にも若葉が茂る 

  あれに見えるは茶摘ぢやないか 

  あかねだすきに菅(すげ)の笠 

2.日和つづきの今日此の頃を、 

  心のどかに摘みつつ歌ふ 

  摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ 

  摘まにや日本の茶にならぬ

[1]新茶商品のお届けについて 


写真:温室のイチゴ(撮影:2021.4.26)


2021年5月1日土曜日

物書堂

Macの定番ソフトとして,エルゴソフトの日本語入力システムEGBRIDGEやワードプロセッサEGWORDには長らくお世話になっていた。 iPhoneが登場した頃,2008年にはMacのパッケージソフト事業から撤退して,その後はどうしたらよいのかという事態に陥った。

これらのソフト開発を担っていた,廣瀬則仁さんと荒野健太さんが物書堂を創業して,日本語入力システムかわせみとワードプロセッサegbridge Universalに引き継いでくれたおかげで,過去のデータをそのまま利用できている。ありがたいことです。

物書堂は,日本語入力システムやワードプロセッサの技術の基盤の上でiOSやiPadOS上の辞書開発に乗り出した。その嚆矢となったのがウィズダム英和・和英辞典や大辞林である。さっそく使ってみて物書堂ファンになった。その後もさまざまな辞書を手掛け,いまでは「辞書」という統合アプリケーション上で各辞書にアクセスできるようになった。

最近,物書堂が,macOS上の「辞書 by 物書堂」をリリースした。なんと,これまで購入していたiOS/iPadOS 上の辞書がそのまま macOS で使えるのだ。神対応ですね。ありがたいことです。


図:物書堂の辞書.appアイコン

2021年4月30日金曜日

4路スイッチ

 電気工事士の実技試験の動画が面白いので見ていたら,難しい問題例として3路スイッチと4路スイッチの配線がでてきた。これは一体何かと調べてみたら,長年の疑問が解消された。

小学校4年のころ,教室で夏目君と一緒に回路部品をたくさんつなげて遊んでいたことがある。どういうシチュエーションだったのかよくわからない。豆電球やスイッチや電池ボックスの乾電池などをビニル線で結べば直列つなぎや並列つなぎができるが,その応用形だった。

それから時代が飛び,大学院時代の昼休みに3路スイッチを拡張する話題が出たことがある。その当時3路スイッチという言葉は知らなかったが,ようは電灯のON/OFFが2箇所それぞれの場所でトグルで可能になる配線のことである。これは普通のスイッチのイメージをちょっと拡張すれば簡単に理解できる。これをN箇所に拡張できないかというのが問題だった。頭を捻っているうちに,連動する3路スイッチを2のN乗個ピラミッド型に並べて配線も2のN乗+1本にするとできるという解を見つけた。これはすごいのだがまったく実用的でなくどうも収まりが悪い。

さらに,四苦八苦した結果2本の入力と2本の出力を並行で導通するか,クロスで導通するかを回転で切り替えることができるスイッチがあれば,その回転スイッチがN個と配線が3本だけで問題が解けることに思い至った。これまでの人生でもっともひらめいた時間だったかもしれない。ただ,そんなものがこの世の中に実際に存在しているかどうかまでは興味もなく調べることもなかった。

それが4路スイッチという名前で製造販売されていて,電気工事士の実技試験にも普通に出題される基本電気部品としてこの世界に存在していた。まあそれはそうですね。


写真:4路スイッチ(Amazon Panasonic ストアから引用)


2021年4月29日木曜日

大手町合同庁舎3号館

新型コロナ感染症ワクチンの話。 3600万人の高齢者接種などを進めるために,東京と大阪に1日1万人規模の大規模接種会場を設置するということだ。東京では大手町合同庁舎3号館を予定しているらしい。なんで,新国立競技場じゃないのだろうか。

高齢者分のワクチン接種はまだ100万回しか終了していないので,菅首相のにいうように7月末(当初は6月末といっていた)までに高齢者接種を終わらせるためには,90日で7100万回,全国で約80万回/日の割合で接種を進める必要がある。全国の接種ロジスティックスを1-2%改善すれば大規模接種会場は不要なレベルなので,政治的デモンストレーションのためという感じは否めない。大阪は維新行政がぼろぼろなので,そちらだけはテコ入れする必要があるのかもしれない。

さて,KKRホテル東京の向かいにある大手町合同庁舎3号館は1971年に竣工し,15階(地下1階)のうち現在1フロアだけが使用されていて99%は空いている。廃止された1号館,2号館も含めた建築延床面積が約60,000㎡である。3号館の面積やエレベータの設置基準がよくわからないが,3号館のみでも10基以上のエレベータはありそうだ。

1階を受付にして,2階から10階が接種会場に割り当てられる。10階部分だけで1000人の接種者があるとして,各階専用にエレベータを1台割り当てるとする。密集をさけて2人ずつのせて往復させるならば500往復は必要になる。1往復に1分とすると500分=約8時間なので,朝から夕方までかかる。各フロアの接種・観察時間を30分として,常時60人が各階に滞留する。また1階の総合受付での待機滞留も常時100人規模ということか。


写真:大手町合同庁舎3号館(食べログより引用)




2021年4月28日水曜日

免許証番号

免許証番号のルールについての記事が流れてみたので,自分の免許証の12桁を確認してみた。 公安委員会番号が使われていて標準の都道府県コードではないのだった。

(1) 1-2桁目:都道府県等の公安委員会番号 北海道10,函館11,旭川12,釧路13,北見14,青森20,岩手21,宮城22,秋田23,山形24,福島25,東京30,茨城40,栃木41,群馬42,埼玉43,千葉44,神奈川45,新潟46,山梨47,長野48,静岡49,富山50,石川51,福井52,岐阜53,愛知54,三重55,滋賀60,京都61,大阪62,兵庫63,奈良64,和歌山65,鳥取70,島根71,岡山72,広島73,山口74,徳島80,香川81,愛媛82,高知83,福岡90,佐賀91,長崎92,熊本93,大分94,宮崎95,鹿児島96,沖縄97

(2) 3-4桁目:最初に免許証を取得した西暦年度の下二桁

(3) 5-10桁目:公安委員会管理番号 6桁なので毎年各公安委員会で100万件まで扱える。

(4) 11桁目:チェックディジット

(5) 12桁:再発行回数

[1]免許証番号とは(Zurich)

2021年4月27日火曜日

近畿のコロナ

 NHKの新型コロナウイルス特設サイトには都道府県の新規感染数と死亡数の情報が集約されている。csvデータで昨年の1月から現在までの都道府県別の情報をみることができる。これから,近畿2府4県をあわせたコロナ新規感染数と死亡数のデータをグラフにしてみた。

第4波がそろそろピークアウトするのか,あるいは単に検査数が飽和しているだけなのかはこれだけではわからない。いずれにせよ,昨年かなり厳しい措置が出たときと比べると,圧倒的に感染数も死亡数も多いのだけれど,我々の対応はゆるくなっている。

行動変容の呼びかけだけで1年間何も手を講じてこなかった国や多くの都道府県の仕事のつけがいよいよ回ってきた。そして聖火リレーは暴走してパンデミックオリンピックへの扉を開こうとしている。


図 近畿2府4県の新規感染数と累計死亡数の推移


2021年4月26日月曜日

Processingをコマンドラインから

 プログラミング言語のProcessingはグラフックスの表現力が高いため,当初は芸術系などでも多用されていた。1.0が2008年,2.0が2013年,3.0が2015年,4.0が2021年以降(予定)のリリースだが,1.0の頃から使っていた。たぶん。マイクロプロセッサGainerの制御言語としても使われていたので,大阪教育大学大学院の理科教育専攻の授業でも取り上げたことがある。

適当なJava Depeloper Kitを用いることでMacBook Air M1にも導入することができた。これはこれで良いのだが,Processingというアプリを立ち上げた環境の中でしか実行できないのがちょっと気になる。調べてみると,UNIXのコマンドラインからでも実行できそうだ。早速,試してみた。

(1) Processingを起動して,適当なスケッチファイルを開く(空でも良い)。

(2) Processingのコマンドバーのメニューからツールを選び 「"processing-java"をインストール」を実行する。これで processing-java というコマンドライン命令がインストールされる。

(3) ユーザ名を koshi として,pdeファイルの場所を /Users/koshi/sample とする。sampleというフォルダの中には,sample.pde という processing ファイルが格納されている。

(4) processing-java --sketch=/Users/koshi/sample --output=/Users/koshi/sample --run とすればコマンドラインから実行できる。

(5)  processing-java --sketch=/Users/koshi/sample --output=/Users/koshi/sample --build とすれば sample.class が生成される。のだが,その先へは進めなかった。


2021年4月25日日曜日

吉田簑助

 大阪日本橋にある国立文楽劇場の4月文楽公演は,4月25日が千秋楽の予定だったが,新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が25日から東京,大阪,兵庫,京都で発出されたことにともない,千秋楽は4月24日土に変更された。

その結果,人間国宝の吉田簑助師匠が引退される最後の舞台が1日前倒しになってしまった。4月25日の舞台を予約していた人はどうなったのだろうか。YouTubeで引退の挨拶の様子を見ることができたが,弟子の桐竹勘十郎が言葉が不自由な師匠の挨拶を代読していた。吉田簑二郎が簑助を支えていたが,涙が止まらないという感じだ。花束贈呈は鶴澤精治師匠だった。

簑二郎が現在の一番弟子に当たるらしいが,なぜ簑一郎ではないのかと調べてみると,確かに入門が昭和53年と昭和56年で簑二郎が早い。どういうネーミングルールなのか。そうか,この時点では昭和42年に弟子入りした桐竹勘十郎が簑太郎として一番弟子の位置にあったため,簑二郎としたのか。それでは簑一郎の説明はどうする。なお,勘十郎の息子は以前簑次として簑助師匠に弟子入りしているが,今は簑太郎に改名している。


2021年4月24日土曜日

MacBook Air M1(3)

 MacBook Air M1(2)からの続き

前回,Processingが動かないと言ったが,正しいJDKが入っていなかったからなのかもしれない。arm対応のJDKが,AZULから入手できた。OpenJDK Runtime Environment Zulu16.28+11-CA (build 16+36) ということで,Processing 4.0α3をインストールしたところ無事に動作した。

その他は次のとおり

(1) Wolfram Engine 12の導入ができた。これをjupyterで実行したところ,無事にMathematicaが動作したが,バージョンが12.2かどうかはわからなかった。これが起動している状態では,カーネルの動作数が制限を越えたということで,元々インストールしていた Mathematica 12.0は動かなかった。

(2) iPad Proを sidecar で繋ぐことができた。ミラーリングでも別ディスプレイでも動くことは動くのだけれど,なぜか想像していた動作とは違うのと,本体の解像度が勝手に変わったりして微妙に使いにくい。macOSX用の GoodNotes 5 があるので,なんとかタブレット代わりには使えるとは思うが,AirDrop が優秀なのでつながなくても十分に使えてしまう。

(3) Time Capsuleのタイムマシンが動いた。無線でつながっている上に,2TBのハードディスクが遅いので,フルバックアップに10時間ほどかかるがそれでも一応の安心感は得られる。

(4) Apple USB スーバードライブがつながった。ドライブが空の状態ではデスクトップにアイコンが表示できないのでどうかと思ったが,ディスクを入れると無事に認識してアイコンが表示された。

(5) iPhone SE2 のバックアップができた。このためMacBook Air M1の1TBストレージの使用量は330GB,残量は700GBを切った。

(6) 環境設定のキーボードで指定した後も,標準の日本語入力で\と¥の入れ替えがうまくいかないような気がしたが,今日は正しく動作している。なんだったのか?



2021年4月23日金曜日

新型コロナワクチン接種予約(3)

 新型コロナワクチン接種予約(2)からの続き

4月12日から始まった全国の高齢者向けワクチン接種は当初の2000人/日から8000人/日の水準に増加したが,まだ全国で4万人しか1回目が終わっていない。優先すべき全国480万人の医療従事者向けは,1回目終了が150万人(31%),2回目終了が80万人(17%)にとどまっている。

さて,天理市の第2回目の予約(1000回分)に滑り込みで間にあったので,自分の集団接種会場(市内に2箇所)での接種予定日は6/5土と6/26土となった。第1回目と合わせて1375人(8%)が6月末にようやく完了の運びとなる。

本日,天理市の第3回コロナワクチン接種(高齢者)のお知らせが来て,第3回の予約受付は4/26月の午前8時半からとのこと。5/10から5/17の週に全国で1万6千箱(1560万回分)が発送される予定だ。単純平均すれば,天理市分は8500人分なので,前回分と合わせて高齢者の6割がカバーされる。ただし,これらが接種完了するのは7月末までかかる。この調子なら,高齢者接種は秋,さらに一般分の接種が行き渡るには来年度まで待つのだろうか。

(1) コールセンターの電話受付は,曜日ごとに年齢指定されるようになった。

(2) 第2回目の接種は自動的に接種1回目と同会場,3週間後の同時刻に割り当てられるようになった。

大阪などでは,まだワクチン接種予約案内すら送られていないとのことで,天理市のスムーズな対応はありがたい。

2021年4月22日木曜日

WHOのCOVID-19データ(4)

 WHOのCOVID-19データ(3)からの続き

WHOのCOVID-19統計のjsonデータの構造が変わったようで,scriptの出力に不具合が生じている。プログラミングが面倒である。これまでは,国・地域別のブロックの中に一連の時系列データが含まれていたところ,このたびは,時系列ブロックの中に一連の国・地域別データが並んでいる。前回よりもプログラムの構造が汚くなってしまった。日時データが通常の形式になっていたので,unix time を経由しなくても良いかと思ったが,そうは問屋が下さなかった。(注 \$ は $と読み替え)


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
#!/usr/bin/perl
# 4/24/2021 K. Koshigiri
# usage: json.pl 2021/04/24 3
# extract 3 day data from 2021/04/24
# original data = https://covid19.who.int/page-data/table/page-data.json

use Time::Local 'timelocal';

$tmp = "tmpx";
$in = "whox";
$out = "who-dat.csv";
$jsn = "https://covid19.who.int/page-data/table/page-data.json";
($sec, \$min, \$hour) = (0,0,0);
($year, \$month, \$day) = split '/', \$ARGV[0];
$epochtime = timelocal(\$sec, \$min, \$hour, \$day, \$month-1, \$year-1900)+32400;

system("lynx -source \$jsn | fsp -u > \$tmp");

open(OUT, ">\$in");
open(IN, "<\$tmp");
while(
) {
  s/],/],\n/g;
  print OUT;
}
close(IN);
close(OUT);

open(OUT,">\$out");
print OUT "Date, Country Code, Region Code, Deaths, Cumulative Deaths, Deaths Last 7 Days, Deaths Last 7 Days Change, Deaths Per 100k, Confirmed, Cumulative Confirmed, Cases Last 7 Days,Cases Last 7 Days Change, Cases Per 100k, WkCasePop, WkDeathPop\n";

for ($i=0; \$i<\$ARGV[1]; \$i++) {
  $ut=\$epochtime+86400*\$i;
  (sec, $min, \$hour, \$day, \$month, \$year) = gmtime(\$ut);
  year += 1900;
  month += 1;
  if($month < 10) {
    $ym = "\$year-0\$month";
  } else {
    $ym = "\$year-\$month";
  }
  if($day < 10) {
    $dt = "\$ym-0\$day";
  } else {
    $dt = "\$ym-\$day";
  }
  print "$dt\n";
  $sw=0;
  open(IN, "<$in");
    while(
) {
      s/\]//g;
      s/\[//g;
      s/"rows"://g;
      if(/"totals":/) {
        if(/$dt/) {
          $sw=1;
        } else {
          $sw=0;
        }
      }
      if($sw==1 && /"[A-Z][A-Z]","[A-Z]{4,5}"/ ) {
        print OUT "$dt,";
        print OUT;
      } elsif($sw==1 && /" ","[A-Z]{4,5}"/) {
        print OUT "$dt,";
        print OUT;
      }
    }
  close(IN);
}
close(OUT);


2021年4月21日水曜日

Apple Event 2021 April

 日本時間4月21日午前2時(米国時間 4月20日午前10時),Apple Event 2021 Aprilが開かれた。ここで発表されたものは,次の通りである。

(1) 24inch iMac:お買い得か。これまでに発表されたM1 MacBookやMac mini とほぼ同じCPU基板に,24inchの4.5Kレティナディスプレイをつけたようなもの。7色揃えて,リモートワーク用に1080pのフェイスタイムインカメラ。有線のギガビットイーサネットは電源アダプタのところに口を設けているのが良さげ。キーボードもTouch IDを備えていてカラーバリエーションあり。ポートは上位機種でThunderbolt/USB4 × 2とUSB3×2。

(2) M1 iPad Pro:高い。12.9inchの最上位モデルでは,279,800円(Cellular)に達する。新しいキーボードを加えると,321,380円だ。ただし,16GB/2TBで Thunderbolt/USB4ポートが付く。Liquid Retina XDRディスプレイ・ミニLEDバックライト・2,732 x 2,048ピクセル解像度はなかなか凄いので,MacBook Airより高くても仕方ないのかも。

(3) Air Tag:もっと安いものかと思っていたら,Bluetoothとスピーカーのため3800円。バッテリは市販のボタン電池で1年以上は持つらしい。ブランド物のキーホルダーの価格設定がえぐい。手持ちのiPhone SE2では残念ながらNFCによる近場の方向・距離案内が出ない。認知症老人用に使うと便利かもしれないので2セット買っておこうかしら。

(4) Apple TV 4K:これパスワード入力でのつまづきの解消方法はどうするのだろうか。最も旧型のAppleTVではこのユーザインターフェースのせいで四苦八苦しているのだけれど。

2021年4月20日火曜日

MacBook Air M1(2)

 MacBook Air M1(1)からの続き

新しいコンピュータが導入されると環境設定が大仕事になる。MacならばTimeMachineという強力な移行ツールがあるのだけれど,CPUアーキテクチャが Intel Core iX からAppleシリコン M1に替わり,OSもmacOS Catalina(10.15.x)からmacOS Big Sur (11.2.x)へとメジャーバージョンアップしたので,この際クリーンインストールをすることに。

(0) トラックパッドの設定(アクセシビリティの項目ONでタップ可能にする)

(1) ターミナルの設定(osaka等福14,ウインドウサイズは80x40,漢字コードはUTF8)これまではEUCだったが,もう大学のサーバのmnewsでメールを読まないので必要はないかも。

(2) EPSONプリンタドライバー(EP-805AW)一応BigSurには対応しているようだ。

(3) Xcode 2.4 & コマンドラインツール 2.4 の導入。

(4) homebrew 3.1.2 のインストール M1対応しているはずなのだけれど大丈夫か。

   /bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"

   sudoに対してmacbook airの自分のアカウントのパスワードを入れる

   - Add Homebrew to your PATH in /Users/koshi/.zprofile:

   echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> /Users/koshi/.zprofile

    eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"

(5) 必須コマンドの導入:nkf, wget, lynx, w3m, ffmpeg, gfortran この過程で依存関係からpython3も勝手に入ったようである。

(6) Office 2019 Home & Studentの導入。Parallelsはいらないかなぁ。

(7) Mathematica 12.0 のアクティベーションキーが使用済みなので,システム移行フォームでリセットしてもらう。最初は迷ったけれど結局とても簡単だった。

(8) iTunesの移行のためフォルダごとバックアップからコピーしてら動くかと思ったけれど,iTunesストアライセンスのものはPCの認証が必要で,5台を越えていたのでリセットした。

(9) MacTeX2014 4/1とTeXShop4.62の導入,これがM1 BigSur対応になっていて助かった。

(10) CyberDuck,GraphicConverter, JEdit, かわせみ3などの移行。

あとは細々したアプリやファイルを壊れる直前の状態のSSDからコピーした。古いMacBook Proには,Crucialの512GB SSDが入っていた。アップルストアの人に自分で入れ替えたのですねと聞かれたけれどすっかり忘れてしまっていて最初からSSDのモデルだと思い込んでいた。もしかしたらどこかのSHOPで入れ替えてもらったのだったかそれすら記憶が定かではない。この古いSATAのSSDを,YomttamasterのSATAケース に挿すだけで外付けSSDドライブの出来上がりだ。TimeMachine用にM.2 SSD 4TBの外付けドライブ 2-3Gb/sが欲しいけれどまだ高すぎる。

現在困っていること:Processingが動かない。jupyterlabが動かない。pythonの科学計算用モジュールのいくつかがインストールできない。

良かったこと:指紋認証がなにげにかなり便利。ポートは少ないけれど我慢できる。キーボードの感覚も全く問題なし。重さはそんな軽くはないけれどデザインと色は最高。

MacBookは既に身体の一部になっていて,なければ仕事にならないので,これが使えない時間を最小限に減らすために今回の判断になった。本当のところは,できるだけ旧機種を長く使ってからより性能の高い機種に移行したかったところだ。

2021年4月19日月曜日

非常勤講師2021前期授業開始

大阪教育大学の2021年度前期授業が 4月15日からスタートした。今年の大教大の非常勤は前期1コマ,後期3コマである。その初回が4月19日(月)である。大阪府では医療非常事態宣言が4/15から5/5にかけて発出されている。大阪府からは,大学等へのお願いとして「授業は、原則オンラインとし、困難な場合は、クラスを分割した授業や大教室の活用等により密を回避するようにしてください。(4月15日から要請)」となっていた。

一方,文部科学省からは対面授業実施についての強い圧力が加わっているようで,大学からの教員向けの様々な文書にもそれが滲み出している。そんなわけで,第1週目は必ず対面授業,第2週目以降で期限の5月5日までは,完全オンライン授業,その後は原則対面授業(一部の大人数指定科目だけは全てオンライン授業)として,対面授業の割合は50%以上確保し,教員の都合で勝手にオンライン授業にすることは禁止というなんだかわけのわからないがんじがらめになってしまっていた。

久しぶりの大学はエスカレータの天井や周辺が荒れ始めていたが,エスカレータ三号機だけは新調されていた。非常勤講師のための講師控え室(教務課職員が支援)は無人の印刷室に代わり,学内は消毒剤で溢れていた。教室の扉は開け放してあり,授業の中盤にはチャイムがなって換気を促していた。いくら対策していてもこれだけ若者の密度が高ければ,高齢者にとってはなかなか怖い空間となっているのであった。



写真:新調していない方のエスカレータ1号機(撮影 2021.4.19)

2021年4月18日日曜日

MacBook Air M1(1)

 天災は忘れた頃にやって来る。じゃなくて,昨日まで普通に使えていたものが,存在していたものが,ある日突然事故で消滅してしまう,というのはよくあることだ。53年使っていた腕時計が壊れ,8年使っていたMacBook Pro mid2012に,こぼしたお茶が浸水して電源が入らなくなってしまった。今後の教訓としては,(1) Apple Careには入れれば入る。(2) 電源ケーブルを抜き決して焦って電源ボタンは押さない。(3) 水はできるだけ吸い取るが,基盤の細部に染みたものは数日間乾かない可能性がある。(4) そもそも机の面とコンピュータの底面に段差を設ける。などなど。

そんなわけで,バッテリ交換から3週間で再びApple心斎橋に向かった。相変わらずの丁寧な対応の結論は,浸水による基盤交換等は一律8万数千円かかる。ということで,心が折れてしまった(というか当初の見込みは8万円以上は新品購入,5万円以下は修理というものだった)。早速,MacBook Air M1 16GB/1TBの在庫を確認してもらい,内蔵SSDを取り出して壊れた本体を引き取ってもらった。

この日は,4月22日は地球環境を考えるアースデイとのことで,アップルロゴのてっぺんの葉がグリーンになっていた。スタッフのTシャツもいつもの青から緑に変わっていた。Macを1980年台から使っていて,@mac.comのメールアドレスを使っているというと,販売担当のスタッフさんは驚いていた。また,技術担当のスタッフさんも,MacBookProの側面のCD/DVDドライブスロットや有線Ethernet Portには興味津々という感じだった。


写真:アースデイの心斎橋アップルロゴ(撮影 2021.4.18)


2021年4月17日土曜日

Antonia Brico

 録画してあった映画「レディ・マエストロ」を観た。英語タイトルは「The Conductor」だったので,この日本語タイトルはなんだかなあだったが直訳にならないのはやむを得ないかもしれない。アメリカ映画かと思ったが,マリア・ペーテルス監督の2018年オランダ映画だった。史実に基づいた伝記映画であり,最初期の女性指揮者であるオランダ系移民のアントニア・ブリコ(1902-1989)が主人公である。

上記の日本語版ウィキペディアに詳しいあらすじがあるので,これを読めばどんな物語かは正確にわかる。普通このような実録映画のエピローグでは,主人公が先駆者として道を切り拓いたおかげで,現在のその領域の隆盛があるということで,めでたしめでたしとなる。しかし,この映画では,アントニア・ブリコがベルリン・フィルを指揮した1930年から90年経っても,世界の主要な20のオーケストラの主席指揮者には女性はいないし,世界の指揮者ベスト50にも女性がいないという結果を示して終わっている。

指揮や音楽の場面は今ひとつ惜しかったが,ニューヨークの貧しい移民街や家庭の風景はハリウッド映画ではないオランダ映画的なリアリズムが見られたかもしれない。

2021年4月16日金曜日

新型コロナワクチン接種予約(2)

 新型コロナワクチン接種予約(1)からの続き

天理市では,4月中の高齢者向けワクチン接種数は375名であり,4/12から4/30の19日間に,2箇所の集団接種会場が設けられて実施される。平均約20名/日である。

奈良県の資料によれば,高齢者向けのファイザーのワクチンの第1クールでは,全国100箱のうち奈良県には2箱届いている。1箱には冷凍された195バイアルが入っており,解凍して希釈した1バイアルからは5-6回分の摂取ができる。したがって,奈良県の第1クールでは,2000回分のワクチンが届いている。

全国ではその50倍で10万回分であり,これを4月12日から接種開始するならば,全国の高齢者向けワクチンの1日平均の接種数は約5000回となるはずだ。ところが,首相官邸のコロナワクチンのページでは,4/12から4/15までの4日間でほぼ毎日1600回となっていた。大丈夫か。

そもそも,全国470万人の医療従事者への接種が185万回(1/5)しか済んでいないのに,アリバイ的に高齢者向け接種を始めたところに問題がある。これからは接種回数が加速するとはいえ,とても6月中に医療従事者と高齢者の接種が終わりそうにないのだけれど。

[1]新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種について(奈良県医療審議会報告資料)

[2]新型コロナワクチン(首相官邸)

[3]新型コロナワクチンの接種実績(厚生労働省)

2021年4月15日木曜日

ALPS処理水(1)

多核種除去設備等処理水からの続き

 経済産業省によると,風評被害防止のため「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました」とのこと。これまでの報道でも処理水=トリチウムだけを含んだ処理済み汚染水というニュアンスで伝えられていたが,さすがに自民党内の原発推進派からもクレームが来るようなことだったので,保管されているいわゆる処理水の7割には,規制基準を越えるトリチウム以外の放射性物質が含まれていることを明示せざるをえなくなったようだ。

今後は,「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称することとします,ということである。トリチウム($^3$H)だけでなく,放射性炭素($^{14}$C)もALPSでは除去できないが基準以下という説明だ。東電のスキームでは,放出前に希釈するといっているので,この表現ならば7割の基準を満たさない「処理水」も希釈後は「ALPS処理水」になってしまうのだが大丈夫なのか。普通は信頼関係でそんなとんでもないインチキはないと思うのだが,相手が東電や経産官僚なので疑心暗鬼にならざるを得ない。

反ニセ科学の人たちは,ここぞとばかりにトリチウムの安全性を強調しているが,その前にもう少し前提条件を疑っても良いのではないか。これ以上の保管が困難な理由は何か。トリチウム水 HTO を,水蒸気として大気中に放出するのではなく,液体の水として海へ放出するのでなければならない理由は何か。

(1) 福島第一原発の敷地は137万平方kmあって,5号機6号機の北や西のエリアには建物がない場所がたくさんある。もちろん,今後の廃炉計画上は一定の用途が割り当てられているが本当に見直す余地はないのだろうか。廃炉過程の廃棄物の受け入れ予定場所とはいえども,漁業風評被害と天秤にかければ全く議論の余地がないわけではないだろう。正常にALPSを経由した3割の「ALPS処理水」については40年保管すれば放射線量は1/8には減らすことができる(トリチウムの半減期は12.3年,毎年5.5%の割合で減少する)。複雑な構造の原子炉本体を60年動かそうとしているのに,単純なタンクが60年維持できないのはなぜなのか(最も,自宅マンションの貯水槽も30年目にして更新作業中なので何か理由があるのかもしれない)。

(2) 世界各国の正常に稼働している原子力発電所の場合は,トリチウムの液体(水)放出と気体(水蒸気)放出が同程度に行われている。福島第一原発は原発事故地という特別な環境にあるため,そもそもこれらの正常な原発のトリチウム放出と同等に考えて良いのかどうかは議論の余地があるが,それにしても漁業への影響のない水蒸気放出が困難である理由がほとんど具体的に示されていない。

(3) 正常に運転される原子力発電所では,原子炉周りの地下水の流入による汚染を防ぐためにサブドレンという名前の井戸を周囲に設けている。その水位を保つためにサブドレンの水を汲み上げて海に放出しているが,この水は一定の汚染レベルになることがある。その放出水に含まれるトリチウムが1500Bq/Lであり,今回のALPS処理水をこの水準まで希釈して放出するというのが東電の方針である。このためには平均500倍に希釈する必要がある。タンクのトリチウム汚染濃度平均が73万Bq/Lであるからだ(現時点の福島第一原発のトリチウム総量は860兆Bq)。これって海水で500倍に薄めるのよね。この論理が使えるならば,どんな物質でも海水で基準以下まで希釈してから海に放出できるのではないか。

[1]ALPS処理水について(経済産業省)

[2]廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議(第5回)(首相官邸)

[3]廃炉・汚染水・処理水対策ポータルサイト(経済産業省)

[4]処理水ポータルサイト(東京電力)

[5]Japan plans to release Fukushima’s wastewater into the ocean(Science)

2021年4月14日水曜日

国性爺合戦

 近松門左衛門(1653-1725)の国性爺合戦(1715)は,人形浄瑠璃の歴史物としては異色で中国が主な舞台となっている。なかなかナショナリズムを鼓舞する内容だった。主人公の和藤内は,明の役人であり日本に渡っていた老一官とその日本人妻の間の子供という設定だ。老一官と和藤内は,清朝からの明朝の復興運動を行った鄭芝龍(1604-1661)と鄭成功(1624-1662)=国姓爺をモデルとしている。老一官の妻は物語の中で中国に渡って重要な役割を果たすのだが名前が付いていない。何とかならなかったのか。17ヶ月連続興行の大ヒット作品だったわけだけれど,当時はどんなイメージで見られたのだろうか。

国立文楽劇場で国性爺合戦を見るのは2回目であり,前回は2016年の初春文楽公演だった。が,前回の記憶はほとんど飛んでいて,あらすじもよくわかっていなかった。しかも虎が出てきたのにはっきりと覚えていない。多分例によって寝ていたのだろうと思われる。今回も,呂勢太夫と清治による楼門の段はほとんど寝ていたので,いつの間にか老一官の妻が縛られて連れられていく始末だった。

久しぶりの4月文楽公演鑑賞は,大阪府のコロナ新規感染者が1000名を越えた日だった。公演記録のために撮影録音が行われていたが,観客の入りは間隔を開け定員の1/3から1/4程度だった。プログラムによれば太夫に新人2名が加わったようで,心強い限りであるが,この調子で大阪の感染拡大が続けば,7月公演はどうなることか心配だ。

1 大明御殿の段(17分)
2 大明御殿奥殿の段(23分)
3 芦辺の段(10分)
4 平戸浜伝いより唐土船の段(39分)
5 千里が竹虎狩りの段(23分)
6 楼門の段(47分)
7 甘輝館の段(49分)
8 紅流しより獅子が城の段(28分)

前回は,1段目から3段目(1-8)までだったが,今回は三部構成で時間が3時間半程度だったため,2段目と3段目(3-8)だけだった。虎は面白いのだけれど,ネズミと同じようなもので,文楽の子供向け演目以外で動物が出る場合は狐(桐竹勘十郎)が最も洗練されている。三味線は皆さん元気だったけれど,相変わらず呂太夫の声量が乏しく,その分は藤太夫の声量に回っていた。希太夫も今回は割と頑張っていた。


写真:国性爺合戦の和藤内と虎(文化デジタルライブラリより引用)

2021年4月13日火曜日

蔦屋書店

 京阪枚方市駅前の商業施設,HIRAKATA T-SITEには蔦屋書店が入っている。最近は本屋がどんどん消滅しているが,その中で蔦屋書店だけが生息域を拡大している。春日原始林に蔓延るナンキンハゼみたいなもので,シカが食べないことから森林生態系の変化が危惧されている。まあそもそも春日原始林はアマゾン熱帯雨林で置き換えられてしまったのかもしれないが。

1983年に開業した蔦屋書店の1号店が蔦屋書店枚方市駅前なので,ここは大変由緒正しいTSUTAYAの聖地なのだった。レンタルCD・ビデオのTSUTAYAと併せて,1985年に設立されたカルチャ・コンビニエンス・クラブ(CCC)によって運営されている。このCCCの名前が知れ渡ったのが,図書館の委託管理事業への進出である。当時の樋渡啓祐市長によりCCCが初めて指定管理者となった武雄市図書館では,CCCの関連会社からゴミのような中古書籍を多数購入したり,貴重な地域の歴史資料資料を除籍・廃棄処分したり,改革の名の下に図書館機能をズタズタにしてしまった。

そんなわけで,CCCには悪い印象しか持っておらず,地元の図書館が浸食されないように祈るばかりであるが,蔦屋書店も自分の肌には合わないのだった。

(1) 選書がお洒落な本に偏っており,書店の規模に対して,理工書やしっかりした人文科学書の割合が少ない。本屋ではなくファッション系の小物のお店になってしまっている。あるいはファッションの一部としての見せかけの書籍群。その極限が大きな壁面に糊付けされている洋書の見掛け倒しである。本物の図書館では,一応アクセスは確保されている。大嫌いな安藤忠雄設計のこども本の森中之島も同じ発想だ。

(2) 書籍の配列がでたらめになっている。よくいえばテーマ別で新しい発見を促すともいえるが,あるべき場所に本がないので特定の意図を持って探すのが面倒である。端末で検索せよというならば,アマゾンとどこが違うのか。文庫本が著者のアイウエオ順なのはまだ許せるとして,場合によっては単行本と文庫本が混在し,恣意的な分類をしている。

そんなわけで,仮想空間で自分好みの本屋体験ができるアプリの出現を待っている。

2021年4月12日月曜日

蔓延防止要請内容

 大阪府のまん延防止等重点措置を実施すべき区域における要請内容は,大阪府全域を対象として4月5日から5月5日まで発令されている。大阪府民ではないのでスルーしておけば良いのだが,〈大学等〉へのお願いでは次のようになっていた。

○ 学生に対し、4人以下でのマスク会食の徹底を求めること
○ 学生に対し、営業時間短縮を要請した時間以降、飲食店等にみだりに出入りをしないよう求めること
○ 学生に対し、歓送迎会、宴会を伴う花見を控えるよう求めること
○ 感染防止と面接授業・遠隔授業の効果的実施等により学修機会を確保すること
○ 部活動、課外活動、学生寮における感染防止策などについて、学生等に注意喚起を徹底すること
○ 年度当初に行われる行事(入学式等)は、人と人との間隔を十分に確保する等、適切な開催方法を検討すること
吉村知事によるあの悪評高い「マスク会食」が一番に入っている。そのため大阪府内の主な大学が4月8-9日に出している「大阪府の医療緊急事態宣言を受けて」のお知らせでは,軒並みこれに追随した表現が取られていた。近畿大学,大阪教育大学,大阪市立大学,大阪大学,摂南大学などである。

一方,よく考えている大学ではそのままではなく,むしろ会食自体を控えるような表現で注意喚起している。大阪府立大学,関西大学,立命館大学(大阪茨木キャンパスがある)などである。1月18日に発出された大阪市立大学・大阪府立大学・関西大学の学長共同メッセージにもマスク会食の表現はなかった(その後のバージョンでは見かけたような気もする)。

この言葉が他の地域にも,普通名詞であるかのように浸透しつつあり,西日本や東北の一部の大学では「マスク会食」というキーワードで注意喚起している。そんな中でも,まともな大学は次のように書いているのだった。
こうした調査報告を踏まえますと、学生さんには、久しぶりに会う友人、例えば2週間以上会っていないなどの友人との食事やお茶の場にはくれぐれも注意いただきたいと思います。食事やお茶などの飲み物を飲みながらの会話では、どうしてもマスクを外す機会が多くなります。「マスク会食」も勧められていますが、おしゃべりに一生懸命になると、マスクを外したまま会話を続ける時間が長くなってしまうかもしれません。(白百合女子大学学長室だよりから
それにしても去年の今頃より危険な状況なのに,対面授業を中心に授業を実施するという文部科学省=各大学の方針は揺らぎそうにない。

2021年4月11日日曜日

冷蔵箱

日本の高度経済成長期と自分の子供時代が重なっているので,小学生のころに耐久消費財の変遷を目の当たりにすることになる。また,大人になってからは情報技術革命の真っ只中で環境の激変を体験した。さらには日本の没落過程(後進国化)と自分の老年期が重なるという,なんとも不思議な巡り合わせだ。

炊飯:幼稚園のころはかまどで炊飯し,おひつに移して食べていた。その後,ジャーによる保温に変わり,小学校低学年のころには電気炊飯器がやってきた。炊飯後の電気炊飯器が熱いことを十分学習していなかったため,軽い火傷をすることになる。

暖房:小学校低学年までの掘りごたつには炭が入れられていた。炬燵の中にもぐって遊ぶことも多かったがよく一酸化炭素中毒しなかったものだ。足の裏がおこしたばかりの炭に当たって火傷して水膨れを作ることになる。火鉢もあってお好み焼きのヘラのような道具で灰を炭火に寄せていた。小学校中学年以降は,石油ストーブ・ガスストーブ・電気炬燵の組み合わせに変わった。

冷房(エアコン):寺町のおばあちゃんの家には1960年代中期からあったがうちには扇風機しかなかった。1980年代に帰省したときにようやくエアコンが設置されていた。なお,大学の研究室(職場)でエアコンの恩恵を受けるのは1992年に柏原キャンパスに移転してからである。

テレビ:幼稚園のころ(1958-1959年)には白黒テレビがあった。NHKのテストパターンで薔薇や撮影機のレンズがズームしていたのが印象深い。カラーテレビは小学校の高学年になったころから。ブラウン管に磁石を近づけると電子ビームが偏向して色むらを生ずるので注意してください。1964年の東京オリンピックか,1965年のジャングル大帝かどちらかをカラーでみた記憶にあるがこれもあまり当てにならない。

洗濯機:風呂場に洗濯板で洗濯していたような場面は覚えている。妹のオムツが庭に盛大に干してあったので,おむつだけ手洗いだったのだろうか。電気洗濯機は小学校低学年のころには風呂場の隣にあった。脱水はローラを手回しするやつだ。洗濯機の横に置いてあった粉洗剤に水を垂らすと水がどんどん粉の中に吸い込まれていく。楽しくなった小学生が止まらずやっているうちに大変なことになり,母親にこっぴどく叱られた。

冷蔵庫:冷蔵箱ともよばれる木製の氷冷蔵庫が家の台所にあったような気がする。小学校低学年のころに小さな電気冷蔵庫もやってきた。もちろん1ドア式で,製氷は可能だけれど冷凍庫なんてものはない時代。いたずら好きの小学生はコップに色々とややこしい材料(食べられないものを含む)を混ぜた魔女の薬のようなものを作って冷蔵庫に入れておいたら,母親が間違えて飲みそうになったということでこっぴどく叱られた。

小学校4年までは,金沢市泉野町が住所の平屋に住んでいたが,昭和38年から昭和40年ごろに行政合理化のため旧町名が一斉に整理統合され,金沢市寺町に変わった。ちょうどその頃古い家を壊して2階建の家を新築している。1963-1964年(小学校4年生から5年生)が時代の境目だった。1960年代後半にかかる中学生時代には,今とほぼ同様の家庭電化製品が揃うことになった。


写真:冷蔵箱=木製氷冷蔵庫のイメージ(千葉県立中央博物館大利根分館から引用)



2021年4月10日土曜日

ミューオンの異常磁気能率(3)

 ミューオンの異常磁気能率(2)の続き

英語版Wikipediaによれば,電子の異常磁気能率は,$a_e = \dfrac{g_e - 2}{2} $として以下のとおりであり標準模型(Standard Model)を用いた理論計算値と実験値に矛盾はなく,有効数字10桁の範囲で一致している。

\begin{equation} \begin{aligned} a_e^{SM} &= 0.\ 001\ 159\ 652\ 181\ 643 (764) \\ a_e^{exp} &= 0.\  001\ 159\ 652\ 180\ 73 (28) \end {aligned} \end{equation}

一方,Fermilabの最新データを加味したミューオンの異常磁気能率は,$a_\mu = \dfrac{g_\mu - 2}{2} $として次のようになっている。

\begin{equation} \begin{aligned} a_\mu^{SM} &= 0.\ 001\ 165\ 918\ 10(43) \\ a_\mu^{exp} &= 0.\  001\ 165\ 920\ 61(41) \end {aligned} \end{equation}

これは,理論値と実験値が $4.2\sigma$もずれていることを示しており,標準理論の綻びを示す重要な実験的データが明らかになったという論調が見られた。

しかし,質量の大きなミューオンの理論計算には,量子電磁力学による相互作用の計算方法が確定しているレプトンだけでなく,ハドロンを構成するクォークやグルーオンの粒子・反粒子対の効果が,不確定要素として現れてくる。これに対しては,最新の格子QCDの計算が,理論値と実験値の食い違いをかなり縮めるという議論もあるため,まだどうなるかわからない。

[1]ミュオン異常磁気能率 g–2 の超精密測定(三部勉)

[2]The anormalous magnetic moment of the muon in the Standard Model(arXiv:2006.04822v2 )

[3]First results from Fermilab's Muon g-2 experiment strengthen evidence of new physics (Fermilab)

[4]Leading hadronic contribution to the muon magnetic moment from lattice QCD(arXiv:2002.12347)

2021年4月9日金曜日

ミューオンの異常磁気能率(2)

 ミューオンの異常磁気能率(1)からの続き

微視的な粒子(電子,陽子など)の多くはそれぞれが小さな磁石の性質を持っている。この磁石の強さを粒子の磁気能率とよんでいる。粒子の磁気能率は粒子の持つ電荷(電磁相互作用の源)に由来し,古典物理学でいえば,電荷を持つ粒子が回転することにともなう円電流によって磁気能率が生ずるというアナロジーで考えるとわかりやすい。そこでは,粒子の回転運動における角運動量と磁気能率が比例することになる。この比例定数で単位を取り除いたものをg因子とよぶ。回転運動のうち粒子の自転に対応するものがスピン(スピン角運動量)である。

電子のスピンに対しては g ≒ 2 であることが理論的にわかっている。電子に対する相対論的な運動方程式である電磁場中のディラック方程式を非相対論的に近似して磁場に比例する項を見ると,スピン角運動量と磁気能率の間の関係が求まり,この場合は厳密に g = 2 となる。ところが,場の量子論では粒子の生成消滅を許すため,真空中に電子-陽電子などの仮想粒子のペアが絶えず発生したり消滅したりすることから,g = 2 から少しだけ値がずれることになる。これが,異常磁気能率とよばれる項であり,朝永振一郎の量子電磁力学で初めて理論的に説明された。

電子の異常磁気能率については実験値と理論値が非常に高い精度で一致したため,量子電磁気学の驚異的な成果として認められることになった。ところが,電子とほぼ同じ性質を持ち,質量だけが約200倍重い素粒子であるミューオンの異常磁気能率については,まだ決着していなかった。今日はここまで。


2021年4月8日木曜日

高野山町石道

 町石道(ちょういしみち)は,和歌山県九度山町(くどやまちょう)の慈尊院から高野山までの参詣道である。弘法大師が母のいる慈尊院に月に九度通ったことから九度山の名前が付いたということだけれど,往復に丸一日費やすことになりそうで,他の仕事に差し支えるのではないかと思う。

町石というのは一町(109m)ごとに置かれた道標のことであり,根本大塔から慈尊院までの22kmの道のりに180基,根本大塔から奥之院の弘法大師御廟まで4kmで36基と,あわせて216基あるとのこと。ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部を構成している。慈尊院から高野山までは6-7時間のコースだとのこと。

高野山町石道の途中に丹生都比売神社がある。空海の高野山開創の伝説を構成する紀伊國一宮なので,ちょっと期待していたのだけれど,周辺にへび出没注意の看板があるくらいで一般参詣者には見所もなく残念だった。せめて,弘法大師を高野山に案内した犬の子孫?の二匹の神犬を見ることができれば良かったのだけれど,公開日ではなかったのだ。



写真:慈尊院と丹生都比売神社(撮影:2021.4.7)


2021年4月7日水曜日

奥之院参道

 高野山の奥之院参道は,一の橋から弘法大師の御廟がある奥之院まで北西に2 km続いている。,杉木立の中に墓所や供養塔,慰霊碑などが20万基あまり並んでいる。織田信長,明智光秀,石田光成などの戦国大名や豊臣家,前田家などの大名家と,主に関西系の企業,パナソニック,クボタ,住友,南海,江崎グリコなどに普通の個人の墓が時間と空間を超えて入り混じる不思議な空間だった。

一の橋,中の橋をすぎて,休憩所の先の御廟ノ橋を渡ると撮影禁止の聖域に入る。高野山大学の新入生らしき一団が研修のためなのか,教員(僧侶)に引率されて奥之院についての説明を受けながら回っていたので,その後についていった。弘法大師の御廟に向かって般若心経の斉唱が始まったので,大人しく聞きながらお参りしていました。


写真:高野山奥之院参道(2021.4.6撮影)




2021年4月6日火曜日

ビビビ・ビ・バップ:奥泉光

奥泉光(1956-)の「ビビビ・ビ・バップ」 を読了。奥泉光は「石の来歴」で1994年の芥川賞を受賞している。受賞後に出版された文春文庫で読み今一つピンとこなかったが,どこか惹かれるものがあって結局あれこれと7冊買ってしまっていた。「葦と百合」,「ノヴァーリスの引用」,「バナールな現象」,「グランド・ミステリー」,「鳥類学者のファンタジア」,「モーダルな事象」,「神器」である。「雪の階」も読みたいけれどまだ買っていない。

彼は,ミステリーやSFの色彩の濃い作品も書いているが,特に「ビビビ・ビ・バップ」はSF+ミステリのど真ん中だった。大森望の解説から引用すれば,

AI,仮想現実,アンドロイド,テレロボティックス,人格のデジタル化,コンピュータ・ウィルスなど,いまどきのSFネタを全部盛りにした上に,古今東西の実在有名人をよりどりみどりにトッピングする,ぜいたくきわまりない近未来冒険SFエンターテインメント小説

というわけだ。また,これは「鳥類学者のファンタジア」 のフォギーの物語の続編にもなっている。

これまでに読んでいた7冊のうちで最も印象深かったのが,「鳥類学者のファンタジア」のおまけの部分である「終曲,ないしはニューヨーク・オプショナル・ツアー」の章だ。主人公達が時間を超えて1945年のニューヨーク,ハーレムでジャズセッションをするというものであり,ジャズでフルートを演奏する奥泉光の趣味が濃厚に反映されていた。そしてこの著者の気分が「ビビビ・ビ・バック」の主題に見事に引き継がれていた。

2021年4月5日月曜日

新型コロナワクチン接種予約(1)

天理市の新型コロナワクチン接種【高齢者】の第2回目(4/26-5/16,1000名分)の予約が4月5日の午前8時半から始まるというチラシが入っていた。第1回目(4/12-4/30,375名分)は3月29日に受付開始してすぐにいっぱいになったらしい。第1回目に予約サイトにアクセスしたが,そもそも登録ができずに終わってしまった。

天理市の人口は6万4千人あまり,その1/4の1万6千人が65歳以上の高齢者である。この調子で1ヶ月1000人のペースで接種していたら,高齢者だけで1年半かかってしまう計算なんですが。そもそも医療関係者などの接種は全員終わったのだろうか。

受付開始から1時間以上たっていたが,今日はどうかと試してみると辛うじて6月の予約を取ることができた。ただし,予約システム(複数の市町村に提供されているものらしい)のユーザインタフェース設計はあまりよくなかった。
予約方法
【接種会場を選択】ボタンを押して、接種会場を選んでください。
【接種日時を選択】ボタンを押して、予約日時を選んでください。
【予約登録に進む】ボタンを押して、予約を確定してください。
予約完了画面で予約票をダウンロードしてください。

となっているが,1回目と2回目がほぼ独立になっていて,3週間空けるはずの2回目の登録で混乱してしまい3週間後の日程が見当たらず,1回目の登録をキャンセルする羽目に落ち入ってしまった。予約票のダウンロードも1回だけできたが再出力できなかった。意味がよくわからないデジタル庁を作るとこのような混乱にさらに拍車をかけそうで怖い。

2021年4月4日日曜日

引き込み線

 引き込み線とは,鉄道の本線から分岐して車両基地や工場に引き込まれた専用の線路である。後者については,Wikipediaに専用鉄道として,全国の例が示されている。ほとんどが,機械・製紙・セメント・化学などの重化学工業を中心とする大規模な工場である。

金沢にも自分の記憶にある小規模な実例がある。今はなき,北陸鉄道石川線の野町-白菊町の終点白菊町駅と国鉄の西金沢駅である。いずれもインターネット上にも廃線跡としての記録が残っている。

白菊町駅は1970年に旅客の取り扱いがなくなり,1972年には貨物も含めて営業が終了し廃駅になったらしい(懐想石川の鉄道 北陸鉄道石川線1)。それまでは時々貨車が止まっているのを見かけた。乗車したことはない。

西金沢駅は1984年に貨物の取り扱いをやめており,そのときに引き込み線も廃線となった。工場には,当時の国鉄から(記念に?)貰い受けた貨車が1台残っていたけれど,いつの間にか処分されてしまったようだ。西金沢駅自体はまだ命運を保っており,2011年には駅舎もきれいになり東西に出口が整備された。

[1]廃線跡 北陸鉄道石川線 白菊町駅付近(vient49の日記,2015-12-9)

[2]羽二重豆腐専用線(廃鉄の処女Ⅱ,2015-8-21)

2021年4月3日土曜日

若い力

 若い力作詞:佐伯孝夫、作曲:高田信一)は,1947年10月の第2回国民体育大会(石川県)の際に国民体育大会歌として作られた。金沢が非戦災都市だったので戦後すぐの石川県単独での国体開催となった。開会式は10月30日に金沢市営陸上競技場(金澤市運動場)で行われている。

この国体で,金沢市の小学校6年生男女 4000名による若い力の集団演技が披露された。その振り付けは,石川師範学校男子部付属小学校の稲場四郎と野町小学校の勝尾信子,文部省職員の3名で創作されたものである。それ以来,金沢市の小学校6年生は若い力の発祥の地である金沢市営競技場で開催される金沢市立小学校連合体育大会で,若い力の集団演技をするのが伝統となった。

というわけで,自分の小学生時代も若い力の演技をさんざん練習したのである。小学校の運動会の出し物にもなっていた。ここから記憶が曖昧になるのだけれど,泉野小学校の若い力運動会バージョンは六年生の男子児童のみが上半身裸で演技するということになっていた。ある日,その練習を体育館でやっていたのだけれど,女子は周りに座ってお喋りしているのである。その声がだんだん大きくなってきたので「静かにしろ」と切れて大声を出したのは私です。一瞬だけしずまったが,ほとんど効果はありませんでした。結局,この年の運動会は雨のため上半身裸の若い力の演技は中止になってしまったのだった。

[1]「若い力」と金沢(金沢文化スポーツコミッション)

[2]若い力〜金沢の伝統演技〜(かなざわスポーツねっと)


2021年4月2日金曜日

生物季節観測

標本木からの続き

 桜の開花は天気予報で知らされる。気象庁はこれまで生物季節観測として,桜だけでなく動物23種目,植物34種目の生物季節現象を記録してきた。ところで,気象庁大気海洋部は,昨年の11月に「生物季節観測の種目・現象の変更について」として,令和3年1月からこれらの観測を植物6種類9現象(あじさいの開花,いちょうの黄葉・落葉 , うめの開花, かえでの紅葉・落葉 , さくらの開花・満開 , すすきの開花)のみに変更すると発表した。まあ,国が貧しくなるとリストラはどんどん進行するのだ。

ところが,3月30日には気象庁と環境庁が,「生物季節観測」の発展的な活用に向けた試行調査の開始について,ということで,国立環境研究所も含めて存続の方向で進められるようだ。朝の散歩で,奈良盆地中央部における四季折々の植物や動物を見る機会が増えていたのでちょっとホッとした。スマートフォンのアプリにも生物名を判定するものがあって,これを市民からの情報提供のツールとして役立てるとか,学校教育と連携するなどの手もあるだろう。そもそも日本人の感性は古来,これらの環境によって育まれ,俳句などの文芸に結実しているわけで,この根幹の部分の情報が欠落することの損失は計り知れなかったと思う。

[1]気象庁に問いたい。動物季節観測の完全廃止は、気象業務法の精神に反するのではないだろうか(森田正光)

[2]生物季節観測,廃止・縮小から一転存続へ 気象庁と環境省、国立環境研究所がタッグを組む(森田正光)

2021年4月1日木曜日

佐保川の桜並木

コロナ禍の中,先日は月ヶ瀬梅林に行ったが,昨日は佐保川の桜並木を見てきた。これまでも遠目には眺めていたかもしれないが,満開の時期に歩くのは初めてだ。

江戸時代末期,奈良の名奉行として現在でも尊敬を集める「川路聖謨(かわじとしあきら,1801-1868)」が山林の整備や東大寺周辺の植樹など,景観整備を行う一環で植えさせたものに端を発すると言われています。

ということで,奈良にしては珍しく江戸時代が起源のものらしい。休館日の奈良県立図書情報館にクルマを止めて,小一時間散策した。佐保川の両岸に桜の並木が連なり,北の上流側から下流に向かって左岸と右岸の桜樹に管理用の樹木台帳プレートが設置されている(小さな金属製の円版を釘止め)。左岸がL-xxx,右岸がR-xxxとなっていた。情報館あたりで300-400番台なので,延長5kmの両岸で1000本以上はありそうだ。残念ながらまだ川路桜は拝めていません。

そういえば,金沢の寺町通りに市電が走っていた頃,広小路の近くに大桜という停留所があった。今もその松月寺の大桜は残っているのだが,ちょうど咲いている時期に訪れる機会がない。小学生の頃,大桜あたりから市電と競争した記憶というのは真性の記憶だろうか。市電は寺町にあるいくつかの停留所で何度も止まるので全く荒唐無稽な競争というわけではないのだが,夢の記憶かもしれない。


図/写真 佐保川の桜並木(撮影 2021.3.31)