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2024年2月27日火曜日

人民の敵

今日,YouTubeのお奨めに現れたのは,外山恒一のチャンネル「人民の敵」だった。

外山恒一のYouTubeというと,我々団ものがあったはずだ。今回のはプロの手が入ったのか,標準的できれいな仕上げになっておりたいへん見やすい。

2007年春の東京都知事選における外山恒一の政見放送は生テレビで見て,いたく感動したのを覚えている。これまでも,東郷健とかありましたが,外山のそれは群を抜いた仕上がりだった。彼の新しいYouTubeチャンネルではその制作裏話を聞くことができた。

(1) あの原稿は,外山が最初に鹿児島県隼人町議会議員選挙に立候補したときに原付街宣用に制作したもので,ほとんどその内容が都知事選で使われることになった。
(2) 都知事選でその原稿を政見放送に使うということは,当初は考えていなかったが後で思いついたことだった。
(3) 原稿の読み方は,カラオケボックスで一文一文周到に吟味しながら,もっとも笑える表現をつなぎあわせたものだった。ものすごい回数練習している。
(4) 政見放送の収録は,NHKと民放1社(2007年はテレビ朝日)の2つ行われ,それぞれ放送される。NHKバージョンとテレビ朝日バージョンは微妙に違うところがある。
(5) 両バージョンの前に東京で行った選挙出馬を模索する集会で試行版のVHSビデオを放映している。それによってようやく供託金の目処がつき始めた。
(6) 政見放送のインパクトは大きかったが,これによって彼の狙っていた対話が拡がることはなかった。ミーハーが集まっただけ。しかし後の教養強化合宿には繋がっていく。

久しぶりに,教養強化合宿の募集案内を眺めていた。過去の学生さん達の体験記が沢山掲載されていて,それらを眺めているとなんだか懐かしい気持ちになってくる。9泊10日正味8日×8時間=64時間講義(+2-3時間/日のメディア視聴)のテキストは,外山恒一『マルクス主義入門』,立花隆の『中核vs革マル』(上),笠井潔の『ユートピアの冒険』,絓秀実の『1968年』である。

外山恒一の政見放送におけるあのような表現が公共の電波に乗せられることが,日本の民主主義の健全性の現れだという言説がよくみられる。ファシストを自称する外山恒一にいわせれば,それはまったく逆だ。今や,日本では選挙制度の中(内側)でしか自由な言論や表現は保障されていない。日常的な活動においてある特定の組織がちょっとビラ撒きをしただけで,選択的に検挙される時代だ。もちろん選挙演説で外からやじるだけでも警察権力によって排除されてしまうのだ。

2024年2月24日土曜日

東京株式市場

2024年2月21日,東京株式市場で日経平均株価が 39,098.68円(終値)となって,1989年12月29日に記録したこれまでの最高値 38,915.87円(終値) を34年ぶりに更新した。翌日の日経朝刊の一面はたいへん興奮した紙面になっていた。

さっそく,Geminiにおうかがいをたててみた(太字はGemini自身による強調部分)。

Q(koshi):東京株式市場での株価指標が最高値を記録しましたが,同じ期間で他国では株価指標が数倍から十数倍になっています。現在の日本の経済は必ずしも社会の全ての階層にとってプラスの方向にあるとはみえません。今後の日本社会はどのようになるでしょうか。

A(Gemini):東京株式市場の株価指標が最高値を更新している一方で、他国の株価指標との比較で、日本の経済状況が必ずしも全ての階層にとってプラスの方向にあるとは言い切れない状況ですね。確かに、一部の指標は過去最高値を更新していますが、日本社会全体が豊かになっているとは言い難い現状は、多くの方が感じていることでしょう。

 今後、日本社会がどのように変化していくのか、いくつかの観点から考察してみましょう。

 1. 人口減少と高齢化社会

 日本は世界でもトップクラスの人口減少と高齢化社会に直面しており、労働力人口の減少は経済成長の大きな阻害要因となります。このまま何も対策を講じなければ、社会保障制度の崩壊や経済の停滞など、様々な問題が発生する可能性が高いです。

 2. イノベーションの加速

 一方、AIやロボットなどの技術革新は、労働力不足を補うだけでなく、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。これらの技術を積極的に活用することで、日本の経済活性化に繋がる可能性があります。

 3. 格差拡大

 近年、日本社会では所得格差や富の格差が拡大しており、社会の不安定化を招く懸念があります。格差拡大を抑制するためには、教育や社会保障制度の改革など、様々な取り組みが必要となります。

 4. グローバル化

 グローバル化が進む現代において、日本は国際社会における競争力を強化していく必要があります。そのためには、規制緩和や外国企業の誘致など、経済活性化に向けた政策が必要となります。

 5. 地方創生

 人口減少が進む地方では、地域経済の活性化が喫緊の課題となっています。地方創生に向けた取り組みとしては、観光業の振興や新規事業の創出などが挙げられます。

 これらの課題を克服し、持続可能な社会を実現するためには、政府、企業、そして国民が一体となって取り組んでいくことが必要不可欠です。

 今後の日本社会は、様々な課題を乗り越え、より良い方向へ変化していく可能性を秘めています。

 以下、いくつかの可能性を挙げます。

・AIやロボットなどの技術革新により、労働力不足を補い、経済成長を実現する。
・格差拡大を抑制し、全ての人が豊かさを享受できる社会を目指す。
・国際社会における競争力を強化し、世界に貢献する国となる。
・地方創生により、地方と都市の格差を縮小し、活気ある地域社会を実現する。
 これらの課題は決して簡単ではありませんが、解決に向けて努力することで、より良い未来を築くことが可能となるでしょう。

 未来は私たちの手で創り出すものです。

 一人一人が積極的に社会に関心を持ち、行動していくことが、日本社会の未来を形作る重要な鍵となるのです。

昔,眉村卓の短編SFで,インチキ未来予測師の話があったような気がする。本棚を探しても見つからない。未来が予測できますという触れ込みで,核戦争で世界が終るというニセビデオを見せる商売をしているうちに,社会全体にその意識が浸透してしまい,本物の核戦争が到来しそうになるというものだ。もしかすると著者名も概要も若干?間違っているかもしれないのだが,自分の記憶の中ではそのように格納されている。

なにをいいたいかというと,上のGeminiの回答における太字の調子がそれを想起させてしまったということ。みんながAIに頼るようになると,自分たちの無意識の集合が危険なフィードバックループを作ってしまうかもしれないということ。テレビや週刊誌などのマスメディアやSNSなどのネットメディアだってそれに負けない作用をしているのだろうが,必ずしも具体的で十分な検証はされていないような気がする。

2023年7月10日月曜日

エアレボルーション

最近お薦めに上がってきたエアレボルーションは,島田雅彦(1961-)と白井聡(1977-)とジョー横溝(1968-)が毎週ゲストを招いて対談するチャンネルだ。

長い対談が月額770円で週3回配信されるが,そのうち前半の40分から120分ほど無料で公開されている。外山恒一,鈴木涼美,柄谷行人,鈴木エイト他,多彩なゲストが続いている。無料分だけを見ているが,1月に配信されていた金平茂紀(1953-)の回がおもしろかった。

金平さんは昨年秋まで報道特集のキャスターをしていて,ときどきみていたが,ソ連崩壊の1991-1994までJNNのモスクワ支局長として派遣されていた。島田雅彦は東京外国語大学のロシア語科出身で,白井聡は研究テーマがレーニン主義,社会思想,政治学だ。このベストメンバーがウクライナ=ロシア戦争について語っていた。

金平さんはこの正月に1週間ほどモスクワに観光客として旧知の人を訪ねており,現在のモスクワの様子を伝えていた。我々が目にする耳にするのは,西側のフィルターを通過して,日本のマスコミによって増幅された大政翼賛会的な情報だけなので,新鮮なものがあった。

ロシアは見かけ上ほとんど疲弊しておらず,このままだとウクライナ戦争がベトナム戦争化しそうだとのことだ。アメリカがクラスター爆弾を提供するというのも日本のテレビではシラッと何も問題がないかのように伝えられている。

昨年2月に始まったウクライナ戦争と7月の安倍首相殺人事件を奇貨として,防衛費が倍増され南西諸島へのミサイル配備が進むということになってしまった。

2023年7月9日日曜日

警告メッセージ

7月7日七夕に遭遇した怖い話。

Blogspot(google)から警告がとどいた。最初は,投稿したページになにやら警告マークが出てきて何が何だかよくわからずに焦った。ログアウトして再アクセスしてみると,警告付ではあるもののワンクッションおけば一応は見える最低限のレベルものだった。

YouTube(これもgoogleだ)で収益化できなくなった哲学系ユーチューバ−じゅんちゃんが遭遇した理不尽な話などを散々聞いていたので,これはまずいことになったと思った。あらためて自分の記事を読み返してみて,話題のイーロンマスクとTwitterの話がまずかったのか,最後のBlueskyの招待枠の話がまずかったのか,表現に過激なところがあったのか,誰かに刺されたのか・・・わからない。気になるところをすべて無難なものに修正して再投稿したが,同じ警告がついてしまった。がーん。

少し頭を冷やしていると,googleアカウントにBlogspot運営側からメールが届いていたのに気がついた。引用すると次のようなものだった。
 ご存知のこととは存じますが、Blogger のコミュニティ ガイドライン では、Blogger で許可されるコンテンツと禁止されているコンテンツについて概説されています。Blogger では、お客様の「 Bluesky(2)」というタイトルの投稿について審査の必要があるとの報告を受けました。審査の結果、この投稿には慎重に扱うべきコンテンツが含まれていると判断し、投稿を閲覧しようとした読者に警告メッセージが表示されるようにいたしました (投稿の URL: 略)。読者がこの投稿とブログを閲覧するには、この警告を承諾する必要があります。

さらに,

お客様のブログ投稿に警告メッセージが表示されるようになった理由:この投稿のコンテンツが、アダルト コンテンツに関する Blogger のポリシーに違反していることが判明いたしました。

 えーっ,それはないわ。修正して再審査を申し込めということだけれど,どこがアダルトなのかさっぱりわからない。さらに熟考してみると,どうやら参考コードのなかの英文字列がやや微妙だったことに気付いた。これを直して再審査を申し込んだがなしのつぶてである。

しかたがないので,新しく微修正版(アルファベット3文字×2箇所修正)を投稿したところ無事にパスした。

教訓:言論や表現の自由は,その手段をAIでブラックボックス化されたビッグビジネスに握られている限り,常に風前のともしびであり,相当なコストを費やすことなしに説明責任など果たされることは期待できない。分散IDと分散SNSの普及が待たれる。

2023年6月21日水曜日

メディアリテラシー教育の原理

法政大学の坂本旬さんが,アメリカの National Association for Media Literacy Education (NAMLE)が出している,Core Principles of Media Literacy (2023) 和訳して紹介していた。

そこで,自分でも試してみる。もちろん下請け(DeepLとかChatGPTとか)に任せるわけだけれど。結局,両者をミックスして人間の手を入れないとだめだった。
1. メディアリテラシーの概念を拡大する。それは全てのメディア形態を含み,意識的なメディアの消費者と創作者を育成するために複数のリテラシーを統合するものである。

2. すべての人が,自分の背景,知識,スキル,信念を用いてメディア体験から意味を創り出すことができる学習者であると想定する。

3. 好奇心,柔軟な思考,自己反省的な探求を優先する教育方法を推進する。ただし,理性,論理,証拠を重視することを踏まえながら。

4. 学習者が,絶えず変化するメディアの風景を通じて体験,創造,共有するメッセージについて,積極的な問い掛け,反省,批判的思考を行うことを奨励する。

5. 学習者に対して,統合的で,学際的で,対話的で,年齢と発達段階に適したスキル向上の機会が継続的に必要であるようにする。

6. 個々の人々がメディアを作成し共有する際に多くの倫理的責任を果たす,参加型のメディア文化の発展を支援する。

7. メディア機関は社会化,商業,変化の担い手として機能する文化的および商業的な存在であると認識する。

8. 公共の福祉のための健全なメディア環境は,メディアおよび技術関連企業,政府,市民間での共有の責任であると主張する。

9. メディア産業の社会における役割についての批判的な探求を重視する。メディア産業が,権力の仕組みにどのように影響を与え,また影響を受けているかを含め,公平性,包括性,社会正義,持続可能性に影響を与えるものだから。

10. 個人が,民主主義社会の中で,情報を得,反省し,関与し,社会的責任を負う参加者となるよう支援する。




2023年6月8日木曜日

会話行動に関する調査


シンセティック・メディアについて考えるための,人の情報環境について考えていた。情報通新メディアの利用時間のデータは見つかったので,対面コミュニケーションの時間のデータがないか探してみた。国立国語研究所日常会話コーパスプロジェクトの中に,「一日の会話行動に関する調査報告(2017)」が見つかった。

243人の調査対象に平日2日,休日1日のすべての会話を記録してもらった結果,1日平均の会話数 12.7回,会話時間長 6.2時間,1回の会話時間 29分という結果になった。会話時間の約6時間というのは,情報通信メディアの利用時間約6時間とほぼ同じであった。


図:一日の平均会話の特徴

会話相手の人数がN人の時,自分の発話割合は,1/(N+1)である仮定する。上記の相手人数の割合の加重平均をとれば,(38.3/2+17.9/3+12.5/4+6.6/5+4.3/6+3.2/7+1.9/8+1.5/9+1.1/10+12.7/20)%=32%となる。
したがって,一日の平均会話時間の1/3の2時間は自分が話し,残りの4時間は相手の話を聞いているということになる。

2023年6月7日水曜日

社会生活基本調査

情報通信メディアの利用時間からの続き

さらに,ブラウズしていたら,社会生活基本調査というものに行き着いた。
社会生活基本調査は,統計法に基づく基幹統計調査として,生活時間の配分や余暇時間における主な活動(学習・自己啓発・訓練,ボランティア活動,スポーツ,趣味・娯楽及び旅行・行楽)を調査し,国民の社会生活の実態を明らかにするための基礎資料を得ることを目的として5年ごとに実施しています。

というもので,直近は令和3年(2021年)版だ。詳細行動分類による生活時間に関する結果が昨年の12月に公表されている。ここにスマートフォン・パソコンの使用時間があった。使用者率が65%,平均使用時間(使用者についての)が4.29時間である。この調査は,10歳から75歳以上を対象としているため,情報通信メディアの利用時間(6時間)に比べれば,値が小さくなるのはしかたがない。14歳以下や65歳以上をのぞけば,使用者率78.9%,平均使用時間4.89時間程度にはなるので,6時間にはとどかないがまあ同じオーダにはなっている。

使用者率が78.9%というのは低すぎるような気がするのだけれど・・・。


図:令和3年度社会生活基本調査から


2023年6月6日火曜日

情報通信メディアの利用時間

シンセティック・メディア(2)からの続き

視聴覚メディアからの影響と実体験や対面コミュニケーションによる影響を考えるための基本情報は何かと考えた。とりあえず,視聴覚メディアに接している時間ならばデータがあるかもしれないと思って,調べたところ,総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」というのが見つかった。

とりあえず分かったことは次の通り。
(1) 対象は,全国の125地点の13歳から69歳までの1500人
(2) メディア視聴時間の合計は平均6時間程度であり,年代とともに微増するがほぼ一定
(3) 一日平均のTV(リアル+録画)視聴時間は3時間,ネット視聴時間も3時間(1 : 1)
(4) 20代の場合は,TV視聴時間が1.5時間,ネット視聴時間が4.5時間(1 : 3)

睡眠時間や自分だけの時間の和が12時間とすれば,他者とともにある時間が6時間,メディア視聴時間が6時間という配分になる。他者とともにある時間のうちコミュニケーションに費やされるのがどのくらいかは,人によってかなり違うだろうし,測定も難しそうに思える(ノンバーバルコミュニケーションとかやぎさん郵便状態をどうやって評価するのだろう)。


図:年代別のメディア視聴時間(縦軸 分,横軸 ×10代)

追伸:総務省のICT活用のためのリテラシー向上に関する検討会資料
各セグメントにおけるメディアの利用状況に関する調査」にもネットメディア接触時間のデータがある。全体平均では200分であり,上記の結果と矛盾しないが,10代では450-500分となっていて,図の結果とはかなり様子が違う。

2023年6月5日月曜日

シンセティック・メディア(2)

 シンセティック・メディア(1)からの続き

シンセティック・メディアが普及すると,世界の様々な事象の真偽が不確実になる。とはいうものの,今だって状況はそれほどかわらないかもしれない。(1) 商業的なマスコミュニケーションの登場(新聞?雑誌?テレビ?)により,大衆迎合的な偏向が生じていること。(2) インターネットの登場(SNS?)により,情報発信の閾が下がるとともに,政治的な宣伝工作等も要因とするネトウヨ的言説の拡散がエコーチェンバーで増幅されること。などなど。

人は,家庭や周囲の人々との対話,学校や職場での組織における活動,マスメディア等を通じた報道や文化の情報伝達によって,世界認識の枠組みが形成される。そのうち実体験や対面のコミュニケーションではない,視聴覚メディアを媒介する寄与分はどの程度だと推定されるのだろうか。この視聴覚メディアの媒介する部分を,シンセティック・メディアが覆いはじめることになる。

その視聴覚メディアについて,大学に入ってからの自分で考えてみる。1972年から1997年までは,新聞・テレビ・ラジオ・雑誌・本が情報源だった。1997年以降はメーリングリスト・ネットニュース(fj)・ウェブから始まり今では,ブログ・ネット記事・YouTubeが主要な情報源になっている。紙でできた本や雑誌はほとんど買わなくなってしまった。2022年以降は,それらがさらに,AIに媒介されるテキスト,シンセティック・メディアに媒介される情報に置き換わることになる。

そのような環境の中で育つとき,ものごとの真偽を判定する能力を獲得することが可能なのだろうか。これは,結局フランシス・ベーコンの4つのイドラの話にまで戻るということなのか。


図:人間を形成する情報はどこからくるのか

2023年6月4日日曜日

シンセティック・メディア(1)

昨日,国立情報学研究所のオープンハウス(6/2-6/3)の様子がYouTubeで中継されていた。生成系AIの話題にはそれほど目新しいものはなかったが,後半の「フェイクメディア研究の最前線」が印象的だった。

AIの普及で当面大きな問題になるのは,レポートの代筆でも,著作権侵害でも,機密情報漏洩でもなく,シンセティック・メディアかもしれない。シンセティック・メディアの定義は次のようなものだった。
シンセティック・メディアとは、リアルな音声付き動画をAIによって作り出す動画合成技術である。事前に用意したテキストと人(映像、音声)のデータからAIが学習し、その人が本当に話しているような動画の生成が可能である。

深層学習に基づく生成系AIブームのはじまりは,OpenAIのDALL-Eだったけれど,半年前のChatGPT(2ヶ月半前のGPT-4)の登場によって話題は,対話型文書生成AIのほうに集中してしまった。そうこうしているうちに,並行して,AIによるリアルタイムボイスチェンジャーが我々の手元にまできている。

AI革命の第1段階である対話型文書生成AIの応用範囲と実用性は非常に高い。オフィスワークの中で,単純作業よりはむしろデータ分析やクリエーションなどの高い技術を必要とされる分野でのインパクトが大きい。対話型文書生成AIは, (1) 自然言語によるUIインターフェイスを提供するものであることが,プラグインの登場によりますます明らかになると同時に,(2) 汎用的なテキスト処理ツール としての役割が認識され,企業にはすでに浸透しはじめている。

第2段階が,対話型文書生成AIのマルチモーダル化であり(GPT-4は既に実現しているのかもしれないが),その進化系としてのシンセティック・メディアの普及になる。NHKのAIによる音声ニュースが,2018年からはじまった中国の新華通訊社のAIアナウンサーに追いつくのはいつのことだろう。ChatGPTで議論されていることの多くが,MR環境のもとでシンセティック・メディアに進化することになるのだろうか?AppleのWWDCで高くて無駄に高機能だといわれるゴーグルが発表されるのも間近らしいけど。

2019年にNHKのAI美空ひばりが一時話題になったとはいえ,シンセティック・メディアの話題はいまのところ,フェイクニュースが中心となっている。さきほどあげた国立情報学研究所のYouTubeでも,フェイク映像をディープラーニングによってどうやって見破るかという話が中心だった。

2023年5月19日金曜日

生成 AI と報道

5月17日に日本新聞協会が,「生成 AI による報道コンテンツ利用をめぐる見解」を公表した。新聞協会とはいうものの,新聞社だけではなく放送局や通信社も構成社に含まれている。定款によれば,「新聞、通信および放送の倫理水準の向上に資する事業を行い、共通の利益を擁護することにより、健全な民主主義の発展に寄与することを目的とする」とのこと。

生成AIに関する見解は次の項目から成り立っている。
(1)生成 AI による報道コンテンツ利用をめぐる見解
(2)言論空間の混乱と社会の動揺
(3)個人情報保護上の懸念
(4)現行著作権法や法改正に至る過程の問題点
(5)報道機関の著作物等をめぐる課題
(6)不透明な運用実態、権利者への不十分な情報開示
結論は「権利者の権利の実効性を確保するためにも、 AI による報道コンテンツの無断・無秩序な利用が既成事実化される前に、政府等により 適切な対応が検討されることを強く望む」だった。

言論空間が混乱しているというか疲弊しているのは,十分は取材力や批判力を喪失し,安易にインターネット空間上の情報に依存しながら,肝腎の権力批判は避けながら思い込みでストーリーを組み立てている既存メディア"ジャーナリスト"の側に真の原因があるようにも思う。

著作権法の成立過程に,あまり正当でない言いがかりをつけているのはどうかと思うが,国産検索エンジンだけのためにこの項が設けられたわけではない。
著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
政府や行政や企業の発表を端末に入力しながら質問もせずにまとめて報じるのは生成AIにまかせて,その先の地に足のついた取材が必要だと誰かが言っていた。


2023年5月1日月曜日

ChatGPTの認知度

4月に入ると毎日のように生成系AIのニュースが新聞やテレビで流れている。テレビ東京がサム・アルトマンの独占インタビューを最初に流したのを別にすれば,玉石混交というかあいかわらずネットからつまみ食いしてフィルターをかけたものばかりだ。

3月中旬のGPT-4が登場した頃の各種調査では,2/3が知らない,1/4は聞いたことがあり,1割弱が使っているというような傾向だった。そこで,先週(4/17)の3回生中心の授業の際に生成AIに関するアンケートをMoodleのアンケートシステムを使って実施してみた。

ところで,学生さん達の情報源は新聞でもテレビでもなかった。それを伝えるネット上のニュース記事やSNSのようだ。各分野の専門家やブロガーのネット上の記事を大手マスコミの記者がとりあげてマスメディアのニュースにする。それがネット上のニュース記事となって拡散していくというルートができあがっているような気がする。

さて「ChatGPT/Bing chatのような最近のAI対話システムを知っていますか」という問いに対して,結果は,聞いたことがないが1/6弱,聞いたことはあるが使ったことはないが2/3強,使ったことがあるが1/6という結果になった。


図:ChatGPT認知度アンケートの結果

なお,問2では,画像生成AIについても聞いているが,こちらのほうは,聞いたことがないと聞いたことはあるが使ったことはないが半々だった。また,DeepLやGrammeryは半数以上が使ったことがあるかよく使っている。

なお,生成AIの教育利用の問題点としては,次のような認識だった。
(1) レポートや課題を自分の代わりに書かせてしまえること。 6
(4) ニセの情報や不正確な情報が正しいとして拡散すること。 6
(3) 個人情報や組織情報等をうっかりと提供してしまうこと。 4
(5) 特定の考え方に無意識に染まってしまう危険があること。 1
(2) AIとの対話にはまってしまいひきこもりが発生すること。 0

 まあこんなものかもしれない。

2023年1月12日木曜日

量子の冬 

いつものことだけれど,日経は美味しいトピックが見つかると,正月からぶっ込んでくる。今回のそれは,量子コンピュータだ。

1月3日のルイ・ビトン=草間彌生につつまれた日経朝刊の第一面トップ記事が,量子計算機と「富岳」連携 理研実用化25年に前倒し だった。スーパーコンピュータ富岳と理研の量子コンピュータのハイブリッドシステムを和光市の理化学研究所キャンパスに設置するらしい。「ハイブリッド型量子計算機」は世界の潮流になっていると煽っている。

arxivで調べても,hybrid quantum computing をタイトルに持つ論文は16編(全フィールドでも42編)しか見つからないんですけど・・・。富士通の2022年11月のプレスリリースを読んでみた。単に量子化学計算の所与の問題からHPC向けアルゴリズムと量子アルゴリズムのプログラムを生成して,適当に振り分けて使うだけのシステムに過ぎないように見える。8086に8087を付加して数値計算の高速化を図るというようなイメージでまったくない。

量子コンピュータの研究が中国や米国や欧州などで,日本を大きくしのぐ水準で進められているのは確かだとしても,追いつけ追い越せのためにありもしない幻想を振りまいて煽るのは道かと思う。もちろん,これは日経新聞などメディアだけの責任ではなく,怪しげな旗を振っている経済産業省や文部科学省にも問題があると思う。

こうなると,逆張りする人々も現れる。2022年12月に,CNET Japannでは,量子コンピューティングの今--「量子の冬」への警戒と実用化に向けた着実な進化という記事が出ていた。最もここで取り上げていたのは,YouTubeでお馴染の物理学者,あのSabine Hossenfelder なので,これはこれで適当に割り引いて見ておく必要がある。どっちもどっちでなんだかなぁ案件。


図:Image of Quantum Winter by DiffusionBee

[1]The Quantum Hype Bubble is About to Burst(Sabine Hossenfelder)

2023年1月6日金曜日

新聞も消える

本屋が消えるからの続き

本屋の話題では,比較のため新聞発行部数のグラフを示した。12月に日本新聞協会が最新データを出したことでこれがまた記事になっていた。例えば,「1年で200万部減「新聞離れ」は止まらず 「一般紙」は15年後に消える勢い」などだ。

外岡秀俊(1953-2021)は同じ1953年生まれだ。札幌南高校から東大法学部に進み朝日新聞に入社した。在学中に書いた北帰行は石川啄木をテーマとした小説で文藝賞を受賞した。出版早々に読了して強い印象を受けた小説だ。てっきり彼は作家の道へ進むのものと思ったところ,朝日新聞に入社して編集局長までなったことに二度驚いたものだ。

彼が残した最後の論考が,「敗因」から探る新聞の未来,縮小か大胆なDXで再生か(Journalism 2022年1月号)だ。そこで指摘されていたのは日本の新聞社の敗因だ。それは,成功体験からの脱却ができなかったということにつきる。2000年に入ってからのDXに転換する最後のチャンス(当時はDXというキーワードはなかった)をみすみすと逃してしまった。

新聞やテレビの報道機能が縮小していくとして(すでにジャーナリズムの崩壊は進んでいる),外岡秀俊が最後に述べていたメディアの機能は誰がどのようにして維持していくのだろうか。あるいは民主主義が既存メディアと一蓮托生で終焉を迎えるのかもしれない。
SNSの時代が,この先どう変容するか,予見することはできない。だが,埋もれた事実を果断・公正に報道し,誤りがあればお詫(わ)びと訂正を出して品質を担保し,分断の時代に広い言論のフォーラムを提供するというこれまでのメディアの機能と役割は,どのような時代でも,欠かせない民主主義のインフラであり続けるだろう。


図:日本新聞協会のデータから(亀松太郎氏の作図を引用)


2022年12月17日土曜日

外される安全装置

新聞やテレビのニュースは,ほとんど国の広報のようになっていて,旧世代の我々はゆっくりと確実に洗脳され続けている。これらの古いメディアではニュースを見ないという若者達もインターネット空間の空気によって間接的にその影響を受けている。場合によっては,エコーチェンバー効果によって増幅されているかもしれない。その結果,世論調査では2/3が防衛力強化賛成となる。

2020年の10月に前菅政権が日本学術会議会員の任命拒否問題が引き起こしてからもう2年以上になる。学術会議会員は3年ごとに半期改選だから,そろそろ次の選考プロセスが始まる。このタイミングで12月6日に内閣府は,日本学術会議の在り方についての方針を打ち出してきた。その肝は問題となった会員選考過程に手を突っ込むことだ。
会員等以外による推薦などの第三者の参画など,高い透明性の下で厳格 な選考プロセスが運用されるよう改革を進めるとともに,国の機関である ことも踏まえ,選考・推薦及び内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行 われるよう必要な措置を講じる

という素性の解らない第三者機関を使って,アカデミーの独立性を露骨に侵害しようとしている。津田大介ポリタスTVのゲストとして呼ばれた隠岐さや香は,なぜここまでこだわるのかがわからないといっていた。そうなのである。軍事研究を進めることがねらいだとしても,日本学術会議などは別に大きな支障にはならない。内閣府に別に拵えた総合科学技術・イノベーション会議を使えば,なんでもできるはずである。

あえていえば,安倍晋三=清和会右翼の思い込みによる学者に対するルサンチマンぐらいしか考えられない。日本学術会議に手を突っ込みたがっていたのは清和会的な右派勢力だ。それが,防衛費倍増の財源を巡る清和会と岸田政権の綱引きにからんで話がややこしくなっている。

隠岐さや香が,日本社会のいろいろな分野で安全装置が外されつつあるといっていた。その一番が,ロシアのウクライナ侵攻を奇貨とした防衛費のGDP1%枠の撤廃であり,集団的安全保障の名のもと米国の軍事システムに完全に組み込まれることだった。

社会保障制度を守るために導入するといわれた消費税は,法人税減税のために使われた。さらに, 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が惜しげもなく株に資金を投じはじめ,株価の上昇を支えて,日本の階層分化を推し進めてきた。

一方,電通にしっぽを握られて機能不全に陥ったマスコミは沈黙を続け,泥まみれの東京五輪や大阪万博の後押しをしてきた。それらの総仕上げが,安倍殺傷事件による統一教会の悪行の再確認だったかもしれないが,それすらも押し流すように軍拡の合唱が始まっている。そう,統一教会の資金還流が疑われる北朝鮮ミサイル開発の脅威は既に十分に宣伝していて,世論形成に大きく寄与することになる。

[1]日本学術会議改革問題をめぐって(ポリタスTV)

2022年12月14日水曜日

本屋が消える

日経の夕刊の社会面に,「書店のない市町村26%に 店舗10年で3割減 文化発信の場,消失に懸念」という記事があった。出版文化産業振興財団の調査なのだが,そのもとになっているのは,日本出版インフラセンターのデータらしい。

書店ゼロの市町村の割合のワースト3は,沖縄県(56.1%),長野県(51.9%),奈良県(51.3%)だ。確かにまわりの書店がどんどん減っているという実感と一致している。近くに残された書店の一つ,近鉄八木店6階の丸善ジュンク堂が最近改装されてかなり広くなったという話だった。しかし実際には,従来の書店の主要部が拡張された文房具コーナーに置き換わってしまい,児童書部分が少し広くなっただけ。なお,人口1万人当たりの書店数ベスト3は,石川県(1.34),福井県(1.30),香川県(1.16)だ(全国平均は,0.78)。

その日本出版インフラセンターのデータによれば,日本の書店の総店舗数は,2011年に17,000あったものが,2021年に12,000と10年で5000軒減った。このペースが続けば,2045年に日本の書店数は0になる。なお,新聞の発行部数は1997年に5770万部でピークアウトし,つるべ落としの勢いで減少中である。こちらも2045年には0になりそうだ。自分の娘達も紙の新聞は購読していない。そんなわけで,2045年のシンギュラリティは,活字文化の消滅を包含することになる。


図1:書店数と総坪数(ガベージニュースから引用)
店舗当たりの坪数は増加し新設店舗の大型化が進む


図2:新聞発行部数(ガーベージニュースから引用)

2022年12月10日土曜日

衝撃のAI

ChatGPT(6)・ Whisper からの続き

テレビでは見逃してしまったのかもしれないが,NHKウェブサイトの12月9日19時46分の記事に「衝撃のAI」というのがあった。もちろん,今話題のChatGPTの話だ。

最近の報道や情報番組の多くがネットでの話題に頼ってニュースを作っている。記者やスタッフが,自分の足で検証取材をすることなしに,ネットの周辺情報だけを漁ってストーリーを編んでいるように見える場合がある。今回のニュースもそれに近く見えてしまうが,そもそもこれはインターネット空間内の出来事だから仕方ないかもしれない。

その内容な次のようなものだ。

(1)ChatGPTとは何か,たった5日間で100万人のユーザを集めた話(ちなみに,Netflixで3.5年,Facebookで10ヶ月,Spotifyで5ヶ月,Instagramで2.5ヶ月かかって100万人集めている)
(2)結城浩が,自己言及的な質問での会話を追求した話(対話の可能性を最も追求している一人が @hyuki だ)
(3)きしだなおきが小説「AIの王国(400字)」を書かせた話(デジタルハリウッド大学の橋本大也も,人工知能が地球を滅亡する小説1300字+挿絵5章分+BGM+朗読を,全てAI支援によって創作している )
(4)岩田雅光(シーラーカンス専門家)いわく,シーラカンスは蟹でない
(5)楠正憲は,これが大学のレポート作成に使われることについてコメント(プログラミングの課題で,ChatGPTなどのAI支援を認めた例がすでにある)
(6)NIIの佐藤一郎(AIが専門ではない)は無難な答えに終始した(希少情報のフェイク化を増幅する件=Stack Overflow問題,多くの知的労働者を失業させる件等への言及なし)

・ChatGPT(≒情報生成)は,新たなGoogle(情報検索)である件
・アプリケーションにサポートアドインを付加した件(ブレンダー)
・画像生成(StableDiffusion)や画像分析(Detic)とChatGPTが結びついた件

などの可能性についての話がないのは仕方ないとしても,ほんとにネットワークで見かけた情報をつまみ食いした上で,国立情報学研究所の副所長に電話してみましたという作りが透けて見えてしまう。


図:StableDiffusionが出力したボッシュ風のイメージ

2022年10月8日土曜日

Jアラート

Jアラートとは,全国瞬時警報システムのことである。総務省消防庁が運用しており,弾道ミサイル情報,緊急地震速報,津波警報など,対処に時間的余裕のない事態に関する情報を,携帯電話等に配信される緊急速報メール,市町村防災行政無線等により,国から住民まで瞬時に伝達するシステムだ。

10月4日の朝,NHKの7時のニュースを見ていたら,Jアラート発出にともない画面が急に変わって,北朝鮮からのミサイル発射にかかわるニュースが延々と長時間垂れ流された。午前7時27分には,北海道と東京都の諸島部(都道府県名なしの町村名表記だけ)にアラートが出され,午前7時28分には,北海道が消えて,青森県と東京都の諸島部になった。

北朝鮮から一発のミサイルが飛んでくると仮定して,NHKは東北・北海道と東京諸島部に同時に警報が出されているという事態をおかしいと考えないのか。十分に吟味されていない情報がコメントもなしにそのまま右から左へと提供されている。案の定,警戒不要の東京諸島部には誤ってJアラートが発出されていたとの説明が後日あった。

そもそも,Jアラートが発出された時刻は,丁度ミサイルが津軽海峡の約800km(国際宇宙ステーションの軌道高度400kmの2倍)上を数km/sで通過している時間だ。このタイミングでアラートを発出する必然性がほとんどないにもかかわらず(防衛省も内閣府もわかっているはずだろう),安全な場所に避難して下さいとさんざん煽っていた。いったいどういうこと。これでは,内閣支持率が下がって国会で問題が発生したときにいつも都合よくミサイルが飛んでくるとか,軍備増強・憲法改正の環境作りのための過剰宣撫といわれても仕方がない。
発射時刻・場所 7時22分,北朝鮮慈江道舞坪里
通過時刻・場所 7時29分,青森県津軽海峡
落下時刻・場所 7時44分,釜石市の東3200kmの太平洋
飛距離 4600km,到達高度 1000km,速度マッハ17
J-アラート 午前7時27分 北海道+東京都諸島部
J-アラート 午前7時29分 青森県+東京都諸島部
水平方向の平均速度vx0は,vx0 = 4600/(22*60) = 3.5 km/sなので,津軽海峡上空までは,6−7分,1360±100 kmとなる。4600-1360=3140 kmだから,残りの距離が日本から落下地点までの距離3200kmとほぼ一致する。

一方,到達高度hが1000km,飛行時間Tが 1320sである。一様重力場における斜方投射モデルを採用して,鉛直方向の初速度をvy0,有効重力加速度をg とする。h = vy0 (T/2) -g/2 (T/2)^2 = g/2 (T/2)^2 が成り立つので,g = 2h/660^2 = 0.0046 km/s^2,vy0 = 2h/660 = 3.0 km/s となる。初速度v0が v0^2=vx0^2+vy0^2 を満たすので,v0 = 4.6 km/s (マッハ13.5)だ。この単純なモデルでは,マッハ17=5.8 km/s はうまく再現できなかったし,有効重力加速度gの値がもっともらしいのかどうかも微妙である。


2022年5月16日月曜日

AI自動音声合成

 夜のNHKニュースで,AI自動音声合成によるというキャプションが出るものが登場した。これは,VOICEPEAKを使っているのかと調べると,NHK放送技術研究所が開発した独自の日本語音声合成システムらしい。

今回の開発では、「漢字仮名交じり文」から「仮名文字と韻律記号」を自動的に生成し、それを「系列変換モデル」の入力データとすることで大量のデータを効率的に学習させ、日本語の合成音声の品質を向上させることに成功しました。

また、仮名文字と韻律記号を簡単に編集できるユーザーインターフェースや、口調をニュース調や会話調などに切り替えられる技術も開発し、さまざまな番組の演出要件への対応も可能にしました。

ということで違和感なく聞くことができるレベルになって,NHKの朝のニュースにも採用されはじめた。VRのアバターによるニュースが始まるまであと一歩だ。アナウンサーは放送局のかかえるタレント的存在になっているが,その傾向に拍車がかかる。

なお,VOICEPEAKは29,800円くらいで購入できて商用利用も可能だが,VOICEVOXという無料の中品質音声合成ソフトウェアも登場していた。

[1]音声合成ソフトの進化がすごい!(PC Watch 2022.4.16)

2022年3月17日木曜日

メディア・ポートフォリオ(4)

 メディア・ポートフォリオ(3)からの続き

話を元に戻して,昨今の世界情勢や社会情勢を理解するためのメディア選択における自分の現下の偏ったメディア・ポートフォリオについて振り返りながら反省する。

(1)旧メディアの新聞・テレビ:日本経済新聞はほぼ惰性で購読しているけれど,政治欄はあまり信用しない。NHKのニュースや報道番組は眉に唾をつけながら見続けているが,キッチリ洗脳されている。民放には,報道特集とサンデーモーニングくらいしかないが,後者はかなり微妙でおかしい場合も多い。

(2)YouTubeチャンネル:外国特派員協会(*)・日本記者クラブ(話を聞いてみたい人がときどきでてくる),一月万冊(同じネタを同じメロディーで繰り返しているので最近見なくなりつつある),菅野完(かなりバイアスがかかっているが,ときどき必要な視点を提供してくれる),じゅんちゃん(菅野完のパクリ的要素が見られるが,専門家に果敢にアクセスしている),横川圭希(DELIさんの番組で話がきける),町山智弘(バークレー在住,ほぼ納得できる)。

(3)Twitter,ブログ:コロラド先生(情報分析はまじめにやっている),なすこ(話題になる事象を的確にとらえて表現している),外山恒一(まともなことを話している場合が多い),小田嶋隆(文章の技術はすごいかも),孫崎享(外務省OBで金沢大学附属高出身)。

問題ごとに最適化された専門家を探して,プッシュ型で更新情報を取り入れる仕組みができればいいが,それを自動化するのは難しそうだ。本来はそれがマスメディアの機能なのだが,日本では壊滅状態かもしれない。ニュース番組は,自力での取材能力が欠如して思いの外ネット情報に依存してしまっている。だから怪しい専門家も平気で登場させている。となると,BBCやCNNなどの記事リストが一番ということになるのだろうか。

そういう意味で,ソーシャルニュースサイトのRedditには関心があるが,日本語コミュニティが形成されているのかどうか。いずれにせよ,インターネットの情報チャンネルは英米圏に極端に偏ってしまうのが難点だ。

P. S.  3月17日11:00-12:00,ウクライナでの核使用可能性(Ukraine and the Scourge of Nuclear Weapons)に関して,元広島市長の秋葉忠利(1942-)さんが,外国特派員協会に招かれて非常に流暢な英語で質疑応答に対応していた。MITの大学院で数学を学び,アメリカの大学で20年近く教鞭をとっていたのか。