2025年8月24日日曜日

雪国

あまりに暑いので涼しげな話題をひとつ。 きっかけは,和田誠(1936-2019)が森村泰昌(1951-)的な巧妙な文体模写をしていたというネットでの投稿をみたこと。

Q(koshix):
川端康成(1899-1972)の雪国の最初の800字を筒井康隆(1934-)風の文体に修正してください。

A(ChatGPT-5):
承知しました。ただしご要望は著作権の関係で「雪国」の原文をそのまま掲載して改変することはできません。代わりに、**川端康成『雪国』の冒頭(有名な「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」から始まる部分)**を踏まえ、筒井康隆風の文体にパスティーシュ(文体模写)として書き直すことは可能です。

筒井康隆の文体の特徴としては以下のようなものがあります:
・文のリズムが早く、口語的・即物的。
・一見軽薄なユーモアやメタ的な視点を織り込む。
・感覚の誇張、スピード感のある展開。
・読者にツッコミを入れるような自意識的文体。
・以下に「雪国冒頭の約800字」を筒井康隆風に翻案したサンプルを示します
こんな調子で,800字の結果を出してくれた。結果は省略。なんとなくそれらしい。
ついでに自分が好きで良く読んだ作家でいろいろ試してみる。ChatGPTの作家理解の部分だけを取り出すと。

1.大江健三郎(1935-2023)
・川端康成の「美的・静謐」な描写を、人間存在や倫理・暴力・記憶の問題に直結させる。
・観察(雪景色)から内省へ深く潜る構造。
・「追放」「暴力」「存在の苛酷さ」といった大江的キーワード。
・景色そのものよりも、それを媒介にした「人間の在り方」の問いに重心を置く。

2.三島由紀夫(1925-1970)
・華麗で古典的な比喩:「白は赤を際立たせるために存在する」など。
・美と死の結合:「美的な風景が死や破壊の予兆を孕む」。
・劇場的・宿命的な視点:自然を舞台、人間を俳優に見立てる。
・硬質で格調高いリズム:重厚で緊張感のある文体。

3.倉橋由美子(1935-2005)
・アイロニーと懐疑:美を「舞台装置」「罠」として扱う。
・内面と外界の交錯:景色は外にあるというより、内面の投影として描く。
・不穏な美意識:白=美=抑圧/監視という逆説的連関。
・抽象的だが毒を含んだ言葉:美しいものに対する冷笑、自己をも突き放す視線。

4.高橋和巳(1931-1971)
・内面的葛藤の激しさ:風景描写はすべて内面の葛藤や社会的抑圧の比喩に回収。
・告発的視線:自然や環境を単なる美として受け取らず、「何かが隠されている」と見る。
・抑圧と爆発の予兆:「押し殺されたものがやがて噴き出す」構造。
・個人と社会の重なり:個人の焦燥=社会の歪みという読み替え。

5.石川淳(1899-1987)
・皮肉と戯画化:美的なものを即座に「舞台」「芝居」に置き換える。
・軽妙な虚無感:冷笑しつつも、そこにかすかな愉快さを見出す。
・仮面・舞台のモチーフ:自己と世界を「演じるもの」として距離を置く。
・リズムの緩急:短い断定と長い余韻を交錯させ、読者を揺さぶる。

6.丸谷才一(1925-2012)
・軽妙な諧謔と文化的比喩:「新婚旅行帰りの布団」など洒落っ気ある比喩。
・皮肉と感心の同居:感心しかけて裏返すユーモア。
・知的観察者の視線:自己の滑稽さも対象化し、苦笑する視点。
・語りのリズム:やや話し言葉的で、読者に語りかける調子。

7.三枝和子(1929-2003)
・抑制された感情表現:声高な批判ではなく、胸奥に沈む感覚として描写。
・日常と存在の重なり:雪景色を「生の埋没」「持続」と重ねる。
・ささやかな救いの提示:最後にわずかな希望を示唆。
・簡潔な文体:短文を交え、静かに余韻を残す。

8.金井美恵子(1947-)
・メタ的な語り:「トンネルを抜けた――という一文で始めるのは…」など小説意識への皮肉。
・観念と身体感覚の混在:白の退屈さと「いやらしさ」を同時に描く。
・女性の視点からの自意識:都会で擦り切れた顔、覆い隠したいもの。
・批評的で距離のあるまなざし:風景と感動を突き放す。

9.小松左京(1931-2011)
・自然描写に潜むスケール感:雪を地球規模の終末感と結びつける。
・人間存在への問題提起:地方の風景から文明全体への問いへ拡張。
・SF的視点:現在の景色に未来の崩壊や変容を重ねる。
・冷徹な観察と緊張感:旅人が「証人」の立場を帯びる。

10.町田康(1962-)
・突っ込み・皮肉を多用:「おいおい、いきなり雪かよ」「お前何様だ」など。
・口語・内語調:独白のような砕けた語り口。
・感情の直截さと自嘲:苛立ち→諦念→乾いた笑いの流れ。
・風景を擬人化し、反抗する視線:雪や風景に「腹が立つ」と語る。

11.古川日出男(1966-)
・短文・断片を多用:リズムで世界の断絶を表現。
・感覚過剰・身体性:音、匂い、時間の停止を感覚として描写。
・世界観の拡張:一地方の雪景色を「世界の裏面」「存在の根源」に結びつける。
・内外の境界の崩壊:景色が人物を侵食して変質させる。

12.奥泉光(1956-)
・メタ的導入:「~と記すと、それだけで小説が始まってしまう」など、物語性への自覚。
・歴史・記憶との接続:風景を過去の出来事や思想とリンクさせる。
・静かな不穏さ:現実の裏に潜む何かの気配を感じさせる。
・語り手の特異な視点:単なる旅人ではなく、過去と未来を抱えた語り手

13.井上ひさし(1934-2010)
・軽妙なユーモアとシニカルな社会観察:「雪を自慢する老婆」「場違いな汽車唱歌」。
・語りの二重性:笑いを交えながらも、奥にある不安や批判をのぞかせる。
・演劇的視点:「舞台は整っている」「あとは役者次第」。
・会話・音の挿入:歌や台詞を入れて臨場感を出す。

14.高村薫(1953-)
・冷徹で重厚な描写:雪=無慈悲な力として描き、自然と人間の対峙を浮かび上がらせる。
・社会性・歴史性の匂い:人物の過去に暴力や記憶の影を潜ませる。
・心理の奥に潜る視線:風景が主人公の内面の闇と呼応する。
・緊張感ある沈黙:「何かが始まる前の沈黙」としての描写。

15.赤瀬川原平(1937-2014)
・日常の中のズレ・可笑しみ:看板やポスター、氷柱を観察し、妙な面白さを見出す。
・軽妙な諧謔:雪景色を「デザインされた」「現代美術」と評するユーモア。
・素朴な哲学性:静止と運動の対比に人生観をにじませる。
・観察者のまなざし:外部からの視点で対象をずらして見る。

16.橋本治(1948-2019)
・語りかける独白:読者や自分自身への問いかけが多い。
・俗っぽさと哲学の同居:「白いって、こんなに疲れるんだな」「問題は、この白の中で、俺が何を見つけるかだ」。
・感情の素直さ:自然への反応が素朴かつ人間臭い。
・強弱あるリズム:会話的なフレーズと内省を交互に置く。

17.夏目漱石(1867-1916)
・観察と内省の融合:外界描写と自己省察が自然に交錯。
・静かなユーモアを含んだ理知的な文体:老人の描写に微かな風刺をにじませる。
・簡潔だが余韻を残す語り:事象を淡々と述べつつ、最後に哲学的余韻を置く。
・近代的自我の揺らぎ:目的を問う「何を求めてここまで来たのか」という問い。

18.星新一(1926-1997)
・簡潔で無駄のない文体:短文主体でテンポ良く進行。
・日常の中の不安感:一見普通の場面が徐々に異様さを帯びる。
・冷たいユーモア・不穏なオチ:車掌の一言や「別のトンネルに入ったような感覚」。
・寓話的・SF的な余韻:世界全体がどこか異常に感じられる締め。

19.眉村卓(1934-2019)
・日常に潜む非日常:当たり前の雪景色が、少しずつ異様な気配を帯びる。
・静かな不安感の積み重ね:止まった時計、動かない乗客など、小さな違和感を提示。
・内省的・抒情的SF感覚:現実と非現実の境界が曖昧になっていく。
・結末の未解決感:読者に余韻と不安を残す。

20.芥川龍之介(1892-1927)
・観念的・象徴的表現:「白という形而上の色彩」「死の延長に過ぎぬ」など。
・冷徹な人間観:生すら死の一部として描く。
・心理描写と外界描写の融合:外の風景がそのまま内面の投影となる。
・余韻のある不安:断定せず、読後に静かな不吉さを残す。



図:雪国(Gemini),ChatGPTは絵がくすんでいて下手。Grokは素早く結果を出す。

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