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2026年5月14日木曜日

読書リスト


図:これは違うテーマで作ってもらったイメージ(最近のChatGPTによる)


東大駒場で非平衡統計力学が専門の白石直人さんが,250冊ほどの大学新入生向け読書リストを公開していた。数学や物理の専門書ではなく,人文社会科学系を中心としたかなり重厚な本が並んでいる。ChatGPTに分析してもらう次のような特徴があるそうだ。

A(ChatGPT):

まず全体像から言うと、このリストは「教養としての社会科学・人文学を中核に据えた、かなり古典寄りで堅実なリベラルアーツ型カリキュラム」です。しかも単なる入門ではなく、政治哲学・制度論・歴史叙述にかなり深く踏み込む構成になっている。新入生向けとしては、やや野心的で「思考訓練」を強く意図した設計です。


このリストの中心には、次の三層構造があります


第一に、「民主主義と制度の再検討」です。

待鳥・レイプハルト・スタサヴェージなどが並び、さらにパーフィットや井上達夫まで接続されている。これは単なる政治制度の理解ではなく、「正当性とは何か」「民意とは何か」という規範的問いまで踏み込む構成です。


第二に、「資本主義と不平等の歴史的理解」です。

ミラノヴィッチ、ディートン、ボウルズ、バナジー=デュフロなどが配置されており、しかも成長史・格差・制度の相互作用を長期スパンで見せようとしている。ここはかなり現代的で、政策議論への接続を強く意識しています。


第三に、「歴史を通じた比較視座」です。

世界史・地域研究の量が非常に多く、しかも欧米だけでなく中東・インド・アフリカ・中国などを広くカバーしている。これは「単一文明中心史観を避ける」という明確な設計意図です。

特に重要なのは、このリストが新入生に対して、自然科学的な厳密性そのものではなく、制度・権力・歴史・価値判断・社会的意思決定を理解するための足場を与えようとしている点です。政治・法、国際政治、経済、地域情勢、日本史、世界史、宗教、倫理、科学哲学まで広く配されており、しかも民主主義・権威主義・市場・格差・国家・宗教・戦争・科学の正当性といった主題が反復されています。

したがって最終評価はこうです。これは、理系学生、とくに物理・数理系の学生に「世界を式だけで見ないための補助骨格」を与える、非常に優れた読書リストです。 


95%以上自分が読んでいない本のリストだったので,この中から,自分向けのお薦めをChatGPTに考えてもらった。このようにどんどん自分の考えが生成AIに依存していくのだ。SNSの年齢制限どころの話ではない。その結果が以下のとおり。



        1.ジューディア・パール『因果推論の科学』

これはほぼ必読です。あなたはすでに物理的因果(力学・統計)には親和性がありますが、社会やAIで問題になるのは「介入」「反事実」「観測バイアス」です。この本は、相関と因果の断絶,介入可能性,モデルの階層構造,を明示的に扱うため、あなたの思考を「物理モデル」から「因果モデル」へ拡張します。これは質的転換になります。


2.ダニエル・ヴァルデンストロム『資産格差の経済史』

あなたは抽象構造に強い一方、現実の分布(富・人口・制度)がどう動くかを軽視しやすい傾向がある。この本は、データと歴史を使って「構造が時間でどう変形するか」を示す。物理で言えば相転移やスケーリングに近い視点が得られます。


3.サミュエル・ボウルズ『モラル・エコノミー』

インセンティブ設計 vs 内発的動機という問題を扱う本ですが、これは実は「ハミルトニアンをどう定義するか」に近い問題です。人間を単純な最適化主体として扱うモデルがどこで破綻するかを理解できます。あなたの「モデル化癖」に対する重要な制動になります。


4.ジョシュア・グリーン『モラル・トライブズ』

これは倫理学ですが、実質は「複数エージェント系の衝突問題」です。異なる価値体系が共存する状況での意思決定という、あなたが今後必ず直面するテーマを扱っています。ゲーム理論・進化論的視点とも接続可能です。


5.エリオット・ソーバー『進化論の射程』

科学哲学の中でも、これはあなたに合うタイプです。進化論を題材にしながら、

説明とは何か,モデルの正当性とは何か,を厳密に問う。これは物理の理論構築のメタレベルに直接効きます。


6.デレク・パーフィット『理由と人格』

これは難物ですが、あなたが「構造的思考」を倫理にまで拡張するなら避けて通れません。自己同一性・合理性・時間をめぐる議論は、実は物理的時間概念とも深く響き合います。ただし、これは最後に回すべきです。


7.スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』

これは統計と歴史を結びつける典型例です。長期トレンドを見る目を養うという意味で有効。ただし議論には批判も多いので、無批判に受け取るべきではありません。


たぶん,このリストをみるだけで(あるいはせいぜいのところChatGPTに要約をもらうだけで)満足して終りそうだ。






2026年5月7日木曜日

砂の王国:萩原浩



図:砂の王国(上・下)の書影(講談社から引用)

最近は,読書というとKindleだ。Kindle Unlimited で0円の出物がときどきあるので,その場合はすぐに飛びついてしまう。萩原浩は読んだことがなかったが,結構年配の作家だった。明日の記憶が有名で映画化もされたらしいが,これもスルーしている。

砂の王国は,新興宗教がテーマだというので,ちょっと気になった。そのたぐいは,篠田節子仮想儀礼(テレビドラマ化された方も見ている)のほか何冊か読んだことがある。麻原彰晃を思い起させる主人公の話があったはずだが,文庫本を整理したときに処分したので,タイトルも著者名も思い出せない。まあその程度の話だ。

砂の王国は,ホームレスの生活とか競馬の記述がおもしろかった。それ以外は凡庸な物語が進行していく。最後が単純な悲喜劇になっていないのが良かったかも知れない。


P. S. 新興宗教がテーマの作品をChatGPTやGeminiに尋ねてみたが,いずれも途中にフェイクを発生させていた。砂の王国の著者を阿部和重だといいはるのはやめてほしい。朝井リョウのイン・ザ・メガ・チャーチを持ってくるのも。最近ちょっと調子が悪いのではないか。

2026年4月16日木曜日

殺人出産:村田沙耶香



図:殺人出産の書影(アマゾンから引用)

2016年の芥川賞作家の村田沙耶香(1979-)の「コンビニ人間」が Kindle unlimited に登場していたので,何だか得をしたような気になって早速ゲットした。そうこうしているうちに,他の作品も Kindle Unlimited にあがっていた。「殺人出産」もその一つだ。他に,「授乳」「マウス」「星が吸う水」なども入手した。中短編集の「星が吸う水」と「殺人出産」を読んだ。生殖SFだった。朝井リョウの「生殖記」と共鳴しているところもある。

「殺人出産」は,殺人出産,トリプル,清潔な結婚,余命の4つの作品を集めたものだ。それらの文体は軽いが,アイディアや設定はほとんどSFだ。10人出産すると1人を殺す権利が与えられるという100年後の世界を淡々と描いた表題作。サスペンス・ミステリーとして読むと,ちょっと拍子抜けかもしれない。より本格的な,SF(だとみえる),「消滅世界」「世界99」の方を速く読んでみたい。

2025年12月22日月曜日

生殖記:朝井リョウ

朝井リョウ(1989-)といえば,23歳で初の平成生まれ直木賞受賞者(2012年下半期)として知られる。映画化された正欲をテレビでみて面白かったが,最近日経朝刊に連載されたイン・ザ・メガチャーチはスルーしていた。

生殖記はどこかであらすじを見かけて,ちょっと興味があった。なにせ語り手が主人公のお○んち○なのだ。それが kindle unlimited に登場したので早速ゲットした。

語り口は独特だ。これは一人称なのか三人称なのか,どうなのか。非常にクールだけれども主人公の一人称的な気分をほぼ完全にトレースしている。
「尚成はいっつもこうなんです。幼体のころは・・・たくさんの個体で重いものを・・・成体になった今・・・自分が所属している共同体を,皆で"前へ"と運んでいるのが,私から見たヒトの毎日です。」
2022年に杉田水脈総務政務官が「子どもをつくらない同姓カップルは生産性がない」と書いて,総務大臣から撤回と謝罪を指示された。その前年にも簗和生衆議院議員が「性的マイノリティは生物学上『種の保存』に背く」という趣旨の発言をした。これらの事件が固有名詞抜きに示されていて物語の起点を与える。

同性愛個体が,共同体にとってその共同体存立原理である「均衡,維持,拡大,発展,成長」を疎外するものなのか,あるいは資本主義社会において金銭的利益の拡大につながらない個体はどうなのかというのが通底する基本テーマになっている。

重くない軽めの文章とエピソードを重ねながらも著者は一貫してこれらの基本テーマについての思考を繰り返していく。最後は,生殖医療の発展によって体外発生が可能になり,異性愛個体の特権意識が引き剥がされる未来を予感した幸せな主人公の意識で終る。

なかかな久しぶりに面白い本に出会った。イン・ザ・メガチャーチの方にもチャレンジしてみよう。


図:朝井リョウ 生殖記の表紙(小学館から引用)

2025年9月29日月曜日

大阪万博奮戦記:小松左京

太陽の塔からの続き

太陽の塔の中の生命の樹は小松左京がデザインしたと信じ切っていたが,肝腎の太陽の塔の中の展示にはどうもそれらしい説明がない。岡本太郎のデッサンはたくさん並んでいたのだけれど。細部の展示説明が全部見られていなかったのでどこかにはあったのかも知れない。

そこで,Kindleで新潮文庫版のやぶれかぶれ青春記・大阪万博奮戦記を入手した。前者のやぶれかぶれ青春記は旺文社文庫で読んてはちゃめちゃに面白いはずだった。が,どうも記憶の内容が違っているような気がする。いや面白いのだけど今読むともっとほろ苦いものだった。

さて,大阪万博奮戦記によれば,小松左京と万博のかかわりは次のようなものだ。
・1964年:梅棹忠夫,加藤秀俊らと「万国博を考える会」スタート
・1965年:大阪千里での万国博開催決定,「考える会」の総会開催,テーマ委員会
・1966年:サブテーマ委員会,上記メンバーとカナダ・アメリカ・メキシコ視察
・1967年:岡本太郎と個人契約によりテーマ展示サブブロデューサー(地下展示)
・1968-9年:地下展示のための海外民俗資料収集(後の国立民族学博物館へ)
あれ,肝腎の生命の樹のアイディアに関する具体的な話がない。

しかたがないので,古本の小松左京自伝を購入した。日本経済新聞社の私の履歴書に加筆したものだ。71ページに次の記述があった。「太陽の塔,つまりテーマ館の中の展示を岡本さんと考えた。DNAの一兆倍ぐらいの模型を作り,生物の進化の過程を見せることにした。映画の特撮も駆使してゴジラや恐竜なども現われ,最後に人間が登場する。高さ四十五メートル。「生命の樹」と名づけた」

若干違うような気もする。DNAの拡大模型はないのかもしれないし,ゴジラの映画もあったかどうか。それでも単細胞生物から人類が誕生するまでを,下から原生類時代,三葉虫時代,魚類時代,両生類時代,爬虫類時代,哺乳類時代にわけて,代表的な生物の模型によって表していた。


写真:現在の太陽の塔の中の生命の樹(2025.9.16撮影)


[2]第1回「万国博を考える会総会」開催60年(小松左京ライブラリ)

2025年9月7日日曜日

YL

暇な老人は,韓国ドラマとか映画とか面白い番組がない場合,バックグラウンドに放送大学番組を流している(フォアグラウンドはMakBook Air M1の画面)。ときどきおもしろいし,辰己先生や奈良先生や山田先生など知った顔もよくみかける。この前は大教大の(え〜っと)石橋正浩先生も出ていた。

その放送大学の特番で中南米文化の話(音の出る土器が5%もある)に驚いた後,YLがどうのこうのという話をしていた。どうやら英語の本の読みやすさのことらしい。調べてみると,
YL = Yomiyasusa Levels とは,SSS英語多読研究会(旧SSS英語学習法研究会)が定義する,
読解レベル(YL)は、2003年にSSSグループの古川昭夫によって創設された、英語書籍の読解レベルを測定する新たな方法である。SSSグループは日本エクステンシブ・リーディング協会と協力し、外国語としての英語学習者にアピールするため、100段階のYLシステムを開発した。
というものである。 よくわからないでしょ。ChatGPT-5に聞いたほうがはやい。
A(ChatGPT-5):
YL(Yomiyasusa Levels=読みやすさレベル) は、日本の英語多読教育に特化した難易度指標で、TOEIC や CEFR のような「試験基準」ではなく、日本人学習者にとってどれくらい“すらすら”読めるか を基準にしています

1.基本的な考え方
機械的な計算式(語数・語彙数だけ)で決めるものではない。
実際には、英語教育関係者や多読研究会の教師陣が、多数の日本人学習者に読ませて体感を集約し、段階化した経験的スケール です。
したがって「YL 2.5だから単語数○○語」という単純対応ではなく、語数・文法・文体・内容の分かりやすさ・文化的背景 などが総合的に加味されます。

2.主な評価要素
(a) 語彙のやさしさ
コア語彙中心か?(中学レベルの語彙か、それ以上の抽象的な語か)
例えば「dog」「house」はYL低め、「contemplate」「legislation」はYL高め。
(b) 文法構造
文の長さ・従属節の多さ・仮定法や関係代名詞の使用頻度など。
短文・単純文が多ければYLは低く、複文や学術的な表現が増えれば高くなる。
(c) 文体の読みやすさ
口語的でシンプルか、抽象的・比喩的か。
児童向け絵本は低YL、小説の叙述や詩的表現は高YL。
(d) 語数(総単語数)
多読教材カタログでは、1冊あたりの語数(word count)も並記される。
ただし YLは「語数の多さ」ではなく「難しさ」に対応。同じ10,000語でも YL2 と YL5 の本がありうる。
(e) 背景知識・文化的負荷
「英語の物語」として背景が理解しやすいもの(例:日常会話・冒険もの)はYL低め。
歴史的背景や文化的文脈が必要なもの(例:シェイクスピア、政治小説)はYL高め。

3.スケール例(おおよそ)
YL 0.0–0.9:絵本、英単語に絵が添えてあるレベル。
YL 1–2:Graded Readers 初級。語彙は中学英語レベル。
YL 3–4:Graded Readers 中級。文法も高校レベル程度。
YL 5–6:英語圏のYA小説ややさしめの一般書。
YL 7–9:英米文学原書。例えばハリーポッター(YL 6.5–7あたり)。

4.まとめ
YLは「数式で自動算出するスコア」ではなく、教育現場での経験と学習者のフィードバックに基づく「実践的・経験的な指標」。
語数・語彙レベル・文法・文体・文化的背景を総合的に見て、教育者が段階づけています。
したがって、同じ語数でも YL が異なることがあるのが特徴です。
さらに,テキストをいれると自動でYLレベルを推定するpython コードまで作ってくれたけれど,そもそもの定義がアバウトなので,これはもうさわらずにそっとしておこう。



図:英語多読学習法のイメージ(ChatGPT-5による)



2025年1月28日火曜日

新しい読書体験

 kindle unlimitedからの続き

人が本を読む速度は,1p/分のオーダーである。一日の読書時間は人によってマチマチだけれど,0〜10^3分の間には収まるはずだ。平均的な人の上限として100分を採用すると1日に読めるのは高々100pということになる。これが1年では3.6万pとなり,一生では300万ページになる。これが多くの人の読書量の上限だ。

本の平均ページ数を150ページだとすれば(Perplexity Proによれば250ページらしいが),普通の人は一生で最大2万冊までの本を読めることになる。たぶん実際には,その何割かということだろう。場合によってはもっとずっと少ないかもしれないし,積ん読本やチラミ本を含めればその程度になるかもしれない。

数学や物理の本は数ヶ月で1冊しか読めないだろうし,コミックや絵本ならば,一週間で100冊くらいクリアできるかもしれない。そんなわけで,2万冊というフェルミ推定は妥当なような微妙なような。いずれにしても,それからすると12万冊という kindle unlimited やaudible はそれなりに広い空間になる。


ところで,ChatGPTなどの生成AIを用いると,大量の文章のダイジェストを簡単に作成することができる。場合によっては,特徴のある部分を抽出したり,加工したり,深掘りしたりも可能だろう。これまでの直接の読書体験とは異なった超高速な間接的な読書体験ができる。

いや,単なるあらすじや概要だと,精妙な文学的表現や時間をともなった展開からくる効果をうまく受取ることはできないだろうから,ノウハウ本や知識伝達本以外では,この間接的読書体験は意味がないのかもしれない。audibleも元になるテキストさえ与えれば,任意の音声で実現されることになる。

そもそもあらすじだけだと心には残らないだろう。ところが,これを映像化作品として観賞するとどうだろうか。audibleで数百時間かかる物語の原作から数時間に圧縮した脚本を作成して仮想俳優による実写映画化する生成AIができれば,どうだろう。でもそれはもう読書とは言わないわな。



図:これ1万冊以上あると思いますが・・・(DALL-E3のイメージ)

2025年1月27日月曜日

kindle unlimited

audibleからの続き

audibleがいまいちだと思っていたところに,kindle unlimitedが目についた。こちらも2ヶ月99円キャンペーン。kindle unlimitedの方は200万冊(日本語12万冊)以上読み放題で通常の月額料金が980円だ。これまでも何度か検討したことはあるし,最近はこれ以上紙の本を増やしたくないので,kindleで代用できる軽めの本はkindle版を買うようにしているのでしきいは低い。

とりあえず,トライしてみよう。と,早速お薦めがでていた。岩波現代文庫で上野千鶴子の「家父長制と資本制」,講談社文庫で立花隆の「中核と革マル」だ。前者は菅野完の推薦図書,後者は外山恒一の教養強化合宿のテキストなので,もしかすると自分の過去の検索履歴から抽出されたものなのかもしれない。ダウンロードはしてみたものの,果たして2ヶ月で読み切れるだろうか。少し不安。

kindle unlimitedの方は,コミックや雑誌なども含めて,ほとんど無限に出てくるので,それはそれで死ぬ前に欲望の海に埋もれてしまうパターンだ。いいのか悪いのか。audibleのことを考えれば,980円は安く思えてしまう。まだ,日本中に本屋がたくさん溢れていて,通勤帰りに毎日のように本を買っていた日々のことを考えると,月に高々980円というのは圧倒的にお得なのだけれど,年金生活者はちょっとだけためらってしまう。

もし,50年前にこのサブスクシステムがあったら,自分の読書体験は全く違ったものになっていたのだろうか。大学時代は毎週1-2冊のペースで本を読んでいたが,古本屋めぐりで対応していたので,それほど負担ではなかった。読書能力もそれが限界だろう。kindle unlimitedで解放される上限は,たぶん,コミックや雑誌など,お金を払う気がしないような,あるいはつまらない本に費やされることになりそうな気がする。良いような悪いような。
図:kindle unlimitedのロゴ(amazonから引用)


2025年1月26日日曜日

audible

今はなき関心空間のソフトウェア開発を行ったのが,散財小説ドリキンの友達のバスケさん(サンフランシスコ在住)だとは知らなかった。そのバスケさんが,audibleがたいへん良いと言っていた。

ちょうど,audibleの2ヶ月間99円お試し期間の案内がきていたので試してみることにした。サブスク系は気をつけないと沼にハマりそうなので,来月には解約できるように心の準備をしておく必要がある。

audibleはアマゾンが運営しているオーディオブック,プロフェッショナルナレーターによる本の朗読コンテンツだ。一月1500円で12万冊が聞き放題だということだ。さっそくタイトルを検索してみたが,ちょっと微妙かもしれない。自己啓発本ばかりが目について,読みたそうな本がない。

いや,あるんですよ。これだけあれば,死ぬまでに読み切れないだけのオーディオブックがある。しかし,1倍速で0.7p/分ではちょっとした本だとすぐ5-10時間になってしまう。0.5-3.5倍速の可変速度でも対応できない。普通の紙の本の黙読速度は400-800字/分だ。新書本の1pの文字数は600字前後なので1p/分となる。audibleで1.4倍速にすれば黙読と同じ程度だということか。

試しに,岩波新書の「論理的思考とは何か」渡邊雅子を聞いてみたが,全然頭に入ってこなかった。しかも,視覚が使えないと数式や図がわからないので,理系の本には対応できない。これなら,インターネット上の無料の朗読コンテンツだけでも十分だ。

さて,現在の自分の情報インプットの大半を占めるPC/スマホコンテンツだが,これもYouTubeの音声情報が主になっている。なんだかんだいっても,視力と気力がさらに衰えたら音声情報だけがたよりの世界になるのかもしれない。


図:audibleのアイコン(Amazonから引用)


2024年11月28日木曜日

ロバート・オッペンハイマー:藤永茂


1984年に朝日選書から出版されたもの(1996)があったはずだと書棚を探したが見つからなかった。オッペンハイマーの映画をきっかけに,ちくま学芸文庫版(2024)を買い直したものを半年がかりでようやく読了した。

量子化学の藤永茂(1926-)さんは,岩波現代選書のおいぼれ犬と新しい芸(1984)というエッセイがかなり本音を書いていておもしろかった。九州大学からカナダのアルバータ大学に移り,ロスアラモス研究所の研究集会への参加をきっかけに,オッペンハイマーへの関心を深めた。

藤永さんは,量子力学や物理にも造詣が深く,オッペンハイマーの書簡集や多くの原文にあたって,この本を書いている。オッペンハイマーに添った観点から,悪魔に魂を売った科学者という単純な見方を退けている。彼はあくまでもひとりの愚者にしかすぎなかった。そして,それを戦争のために生産して配備したのは政治家や資本家 ≒ 愚者としての我々だった。

それにしても,ルイス・ストロース(1896-1974),レオ・シラード(1898-1964)やエドワード・テラー(1908-2003)は邪悪なのだった。


写真:ロバート・オッペンハイマーの書影(ちくま学芸文庫から引用)

[1]ベートーベン弦楽四重奏曲嬰ハ短調作品131(Jasper String Quartet,2013.11.24)

2024年11月20日水曜日

谷川俊太郎


11月13日,谷川俊太郎(1931-2024)が92歳で亡くなった。

最初に谷川俊太郎を意識したのは,世界SF全集の第35巻「日本のSF現代編」が配本された1969年4月なので高校1年になったばかりだった。と思う。この巻に採録されているのは「21世紀の教養」というものだ。内容はまったく覚えていない。そのとき,彼の最初の詩集のタイトルが「20億光年の孤独」であることを知ったのだろう。いつか読んでみたいと思っていた。

手元には,角川文庫の谷川俊太郎詩集(大岡信解説,1972年4月30日初版第七刷)と谷川俊太郎詩集Ⅱ(北川透解説,1985年10月30日再版)がある。前者は大学に入学してまもなく手に入れたもの。後者は古本の値段があるので,子どもが二人産まれた後に買ったのかもしれない。谷川の処女詩集,「20億光年の孤独」は20編の詩集として文庫の谷川俊太郎詩集のほうに採録されている。タイトルにもなっている本編自身はちょっと拍子抜けするような軽いものなのだ。

阪大のマンドリンクラブに入部して間もない合宿で,緑地公園かどこかのユースホステルに泊まったとき,二段ベッド寝そべって谷川俊太郎詩集を読んでいた。セロの先輩の近藤さんが顔をのぞかせ「何読んでるの」といって手に取りパラパラと頁をめくって「ソネットか,14行詩だね」と。ソネットが14行の定型詩だということもわからずにありがたがって谷川俊太郎を読んでいた一回生なのだった。

谷川俊太郎は「にほんご」で子育て時代に大変お世話になった。いまや孫のすーちゃんが,きっときってかってきて,きっときってかってはってきて,を小学校1年の国語の教科書で勉強する時代になった。


写真:本棚にあった谷川俊太郎詩集とそのⅡの書影を引用

P. S. 
2013年に,岩波書店から自選 谷川俊太郎詩集がでていた。全2千数百編から173編を厳選したというものだ。その目次には採録した詩集のリストがある。これを年代順に並べ替えて,手持ちの角川文庫に収録されている詩集を◎でチェックしたリストはつぎのとおり。

◎『二十億光年の孤独』 (創元社 1952)
◎『六十二のソネット』 (創元社 1953)
◎『愛について』 (東京創元社 1955)
◎『絵本』 (的場書房 1956)
◎『あなたに』 (東京創元社 1960)
◎『21』 (思潮社 1962)
◎『落首九十九』 (朝日新聞社 1964)
 『谷川俊太郎詩集』 (思潮社 1965)
 『谷川俊太郎詩集』 (河出書房 1968)
◎『旅』 (求龍堂 1968)
◎『谷川俊太郎詩集』 (角川文庫 1968)
 『谷川俊太郎詩集』 (現代詩文庫 1969)
◎『うつむく青年』 (山梨シルクセンター出版部 1971)
 『谷川俊太郎詩集』 (角川書店 1972)
 『ことばあそびうた』 (福音館書店 1973)
◎『空に小鳥がいなくなった日』 (サンリオ出版 1974)
◎『定義』 (思潮社 1975)
◎『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』 (青土社 1975)
 『タラマイカ偽書残闕』 (書肆山田 1978)
 『谷川俊太郎詩集 続』 (思潮社 1979)
◎『そのほかに』 (集英社 1979)
◎『コカコーラ・レッスン』 (思潮社 1980)
◎『ことばあそびうた また』 (福音館書店 1981)
◎『わらべうた』 (集英社 1981)
◎『わらべうた 続』 (集英社 1982)
◎『みみをすます』 (福音館書店 1982)
◎『日々の地図』 (集英社 1982)
◎『どきん』 (理論社 1983)
◎『対詩 1981.12.24~1983.3.7』 (書肆山田 1983)
 『手紙』 (集英社 1984)
 『日本語のカタログ』 (思潮社 1984)
 『詩めくり』 (マドラ出版 1984)
 『よしなしうた』 (青土社 1985)
 『いちねんせい』 (小学館 1988)
 『はだか』 (筑摩書房 1988)
 『メランコリーの川下り』 (思潮社 1988)
 『魂のいちばんおいしいところ』 (サンリオ 1990)
 『女に』 (マガジンハウス 1991)
 『詩を贈ろうとすることは』 (集英社 1991)
 『十八歳』 (東京書籍 1993)
 『子どもの肖像』 (紀伊國屋書店 1993)
 『世間知ラズ』 (思潮社 1993)
 『ふじさんとおひさま』 (童話屋 1994)
 『モーツァルトを聴く人』 (小学館 1995)
 『真っ白でいるよりも』 (集英社 1995)
 『クレーの絵本』 (講談社 1995)
 『谷川俊太郎詩集』 (ハルキ文庫 1998)
 『みんなやわらかい』 (大日本図書 1999)
 『クレーの天使』 (講談社 2000)
 『minimal』 (思潮社 2002)
 『夜のミッキーマウス』 (新潮社 2003)
 『シャガールと木の葉』 (集英社 2005)
 『すき』 (理論社 2006)
 『私』 (思潮社 2007)
 『62のソネット+36』 (集英社文庫 2009)
 『子どもたちの遺言』 (佼成出版社 2009)
 『トロムソコラージュ』 (新潮社 2009)
 『詩の本』 (集英社 2009)

2024年11月12日火曜日

八犬伝


12月まで有効の映画券をもらったのだけれど,なかなか面白そうな映画がみあたらない。消去法で残ったのが,八犬伝だ。テレビでも宣伝していたのでちょっと観たいと思った。原作は山田風太郎の「八犬傳」であり,なんのことはない自宅の本棚に収まっていた。

原作の八犬傳は,南総里見八犬伝の著者の曲亭馬琴葛飾北斎の対話が中心となる実の世界と,八犬伝の物語のダイジェストに相当する虚の世界が14章にわたって交互に描かれている。実の世界は,物語の中心部分をなす鶴屋南北との問答を含めてほぼ映画で再現されている。一方,虚の世界はそもそももとの八犬伝が長編なので,映画の時間では全く収まらず,ごく少数のエピソードとSFXだけで最後まで突っ走っていった。

江戸時代に二日がかりで,歌舞伎の東海道四谷怪談が上演されていたという場面があり,これは,仮名手本忠臣蔵の中に,東海道四谷怪談が埋め込まれるという構成になっていた。四谷怪談が忠臣蔵の外伝だということは知っていたけれど,上演方法がこんなことになっているとはビックリだ。

高校時代の教科書に載っていた,芥川龍之介戯作三昧はまさにこの滝沢馬琴だった。最後に八犬伝の口述筆記を行った滝沢家の嫁の土岐村路のくだりも,馬琴の誇張だったという説があったけれど,どうなのだろうか。路女日記を読んだらわかるのかもしれない。



写真:映画「八犬伝」のポスターを引用


2024年10月30日水曜日

安部公房伝:安部ねり

高校時代,先生がお休みで時間割が変更され早く終了することがあった(ような気もする)。それができない場合は,まれに図書館での自習となる。そんなとき本棚を漁って目についたのが,サルバドール・ダリの画集と安部公房(1924-1993)の短編集だった。

ダリは,中学校の美術の教科書に燃えるキリンが載っていた。山田雄治君と一緒に教科書に掲載されていた世界の名画を眺めながら作者当てをするのが楽しかった。

安部公房はどこから?世界SF全集の第32回配本(1971年5月)が,安部公房の第四間氷期他であり,それ以前から日本初の本格SF小説だとは耳にしていた。あるいは,現代国語の教科書に「赤い繭」か何かが掲載されていたのか?第四間氷期は残念ながら高校生の自分にはピンと来なかった。大学に入ってから読んだ砂の女他人の顔の方が圧倒的によかった。燃えつきた地図箱男密会方舟さくら丸では残念ながらそこまでのものは得られなかった。


その安部公房の伝記が,2011年3月に一人娘の安部ねり(1954-2018)によって出版された。安部公房全集全30巻をだしている新潮社によるこの本は,作家誕生,作家安部公房と人間科学,作家活動の周辺,インタビュー(安部ねりによる25名)の四部で構成されている。断片的な著者の思い出のコラージュという感じで,期待はずれだった。本人は,伝記部分と理論展開の部分から成り立っていると書いているが,ちょっと違う。肉親が故人の伝記を書くというのは難しいことだ。

この少し前に,Kindle版で山口果林(1947-)の「安部公房と私」を読んでいた。安部ねりの伝記では山口果林については一言も触れられていない。まあそんなものだ。山口果林の本も記憶のパッチワークかもしれないが,著者の自分史でもあって,より密度が高くて具体的だ(自分には,山口果林とミニスカートで巨泉・前武ゲバゲバ90分!に出ていた宮本信子のイメージが分離しにくくて困る)。

神奈川近代文学館が,安部公房の生誕100年を記念して「安部公房展−21世紀文学の基軸」を開催している(2024年10月12日〜12月8日)。この展示会公式図録本の方が安部公房の伝記としてふさわしいように思える。末尾には美術家として安部公房の舞台美術や本の装丁を担当した妻の安部真知(1926-1993)も少しだけ登場していて,安部ねりによる真知の略年譜もある。展示物の中にあった山口果林の大量の赤い大入袋はこの本には登場しない。


安部公房は,小説の著述にワードプロセッサを利用した最初期の1人だが,インターネットが商業化する前の1993年に亡くなっている。星新一(1926-1997)もそうだ。もちろんAIも。それにもかかわらず,彼らの小説の中にはほとんどそのイメージが予言されている。



写真:安部公房伝の書影(新潮社から引用,やたら上質の紙を使っている)

P. S.  1958年「世界」の座談会,荒正人,埴谷雄高,武田泰淳,安部公房でのイメージ
〈人工衛星・人工太陽・人工頭脳・人工生命〉 =〈宇宙開発・核融合・AI・バイオテク〉 そのままだ [7]。

[2]科学とフィクションそしてポストモダン(クリストファー・ボルトン)
[8]安部公房論(和田勉)

2024年10月13日日曜日

ピュア:小野美由紀

小野美由紀(1985-)のピュア。SFマガジン掲載時にnoteで公開され歴代一位20万PVをゲットした。という評判だったので早速トライして見た。ピュア,バースデー,To The Moon,幻胎,エイジ,身体を売ることの性科学SF 6編からなる短編集だ。

表題作のピュアは,恐竜のような身体を獲得して軌道上に生活するメスの人間が,蟷螂のように性交後のオスを食べてしまい,そのことによってのみ受胎が可能になった未来を描いている。オスは汚染された地球上で細々と生活している。捕食される側からみた物語がエイジであり,これらが対になっている。

どの作品も,ある種のディスとピアを表現しているのだけれど,そのディスとピアというのはいまだに夫婦別姓制度や同性婚制度に踏み切れない日本そのものに重なる。

巻末の水上文の解説から引用すると,その背景にあるのはこんなものである。
たとえば政治的意思決定の場,社会的に地位の高い職業の多くを占めるのは男性である。性暴力の被害者の大多数を占めるのは女性である。直接的な暴力がなくとも,社会に蔓延る性的対象化はその中で育つ人々の安全を損ない,尊厳を損ない,人生を狭め,また加害を正当化する。賃金格差と貧困,もちろん生殖を巡る問題もある。生殖は国家による管理の対象であり,2023年現在の日本では,明治時代につくられた刑法堕胎罪がいまだに存在し,人工中絶の配偶者同意要件は今も撤廃されないままである。



図:小野美由紀ピュアの書影(早川書房から引用)


2024年10月8日火曜日

AIとSF(2)


AIとSF(1)からの続き

1年4ヶ月ほどかかって,ようやくハヤカワ文庫JA 1551の「AIとSF」を読了した。頭も眼も霞む中,トリッキーなストーリのSF短編を読解するのは,なかなかに骨の折れる技である。この間,生成AIもかなり進歩しているが,この本の内容が時代遅れになっているほどではない。

最近は,テレビドラマをみても短編小説をよんでも,片っ端から記憶領域の外側に溢れ出てしまうので,印象に残ることが無くて困る。いや,困らないかもしれない。何度でも読み返せるのだから。前回の感想は,一編目の大阪・関西万博を扱った「準備がいつまで経っても終らない件」を読んだところまでだった。万博の方はそれらしく形が整ってきたので,始まってしまえば,マスコミの格好のオモチャになるだろう。行かないけど。

目次を見直しても,何が書いてあったかはあまりはっきりしない。津久井五月のナノマシンが東京の一部を汚染する様子とか,野崎まどの智慧錬糸がAI画像つきで笑えたとか,野尻抱介のサイドストーリーの核融合実現のインパクトは納得できるとか,麦原遼の感情を認識するAIの描写がよさげだとか,面白かった部分も。

それにしても,AIが自律的にネットワークにアクセスしてSNSに投稿するようになると,大変ややこしいことが起きるのは間違いない。ただでさえフェイクニュースが蔓延して困っている。そこに持ってきて,フェイクか否か,人間か否か,様々な意図に操られているか否か,がはっきり区別できない大量のテキストとイメージが満ちている情報空間というのはいったい・・・。

P. S. やっぱり円城塔は何度読んでもよくわからない。自分の読解力不足かなぁ。でもブッダ・コード 機械仏教史縁起 はちょっとトライして見たい。



図:AIとSF(ハヤカワ文庫JAから引用)

2024年10月2日水曜日

シュレーディンガーの少女:松崎有理

山手線が転生して加速器になりました。:松崎有理からの続き

先月発表された,文化庁による令和5年度「国語に関する世論調査」の結果は,読書離れの加速というニュースになってメディアを駆け回った。月に1冊も本を読まない人が6割を越えた,読書量が以前より減っているも7割だ,わぉう,というものだ。

この場合,電子書籍は読書した方にカウントされている。自分も正にその6割と7割に該当しているのであった。読書量が減っている理由は,1位:情報機器で時間がとられる(そのとおり),2位:仕事や勉強が忙しくて読む暇がない(これはあてはまらない),3位:視力などの健康上の理由(まあまあ,筋力かもしれない),4位:テレビの方が魅力的である(これも少しあてはまる)。

ただ,1位を選んでいるのはほとんど若者であって,70歳以上では,健康上の理由が1位でテレビの方が魅力的であるが2位なのだ。このあたりは自分と少し違うかもしれないが,確かにYouTubeやBlogと録画した韓国ドラマや映画で閑居老人の暇な時間が完全に溶けてしまう。

しかしながら,まだまだ読みたい本は沢山あって,かといって内容的にあるいは物理的に重い本を読み通すのは難しいので,軽い電子書籍からリハビリを始めることにした。

松崎有理の創元SF文庫の短編集,シュレーディンガーの少女は,6編のうちの2編(六十五歳デス,ペンローズの乙女)が無料でネット上に公開されていたので,ついでにKindle版を購入してしまった。

相変わらず,食へのこだわり(太っていたらだめですか?,秋刀魚,苦いかしょっぱいか)がみられたり,著者の出身の水戸第一高校のモデルが登場していたり(異世界数学),理系蘊蓄が適当に含まれている軽い読み物としては適当かもしれない。

シュレーディンガーの少女はいまひとつぴんとこなかったが,ペンローズの乙女の冒頭部分に,エミル・コノピンスキーの名前が出てきて,あれれと思って調べて見たら,昔,研究室の書棚にあったかもしれない The Theory of Beta Radioactivity の著者のEmil Konopinski だった。テラーと一緒に初期の水爆開発における検討をしていたのか。


図:読書離れの理由(上から16-19,20代,30代,40代,50代,60代,70- 文化庁から引用)

2024年9月10日火曜日

山手線が転生して加速器になりました。:松崎有理

松崎有理(1972-)の名前は,書店の本棚のシュレーディンガーの少女で見かけている。東北大学理学部(生命科学がバックグラウンドという話なのでたぶん生物学科?)の出身のエンタメ(SF)作家である。

タイトルが面白かったので,Kindleで入手してみた。短編集であり,6つの作品が収録されている。そのうち,山手線が加速器に転生する話は2編あるが,それぞれの話は独立だが,一つの仮想歴史世界線上(経済学者の目から見た人類史:行方ユクエ)に位置づけられている。

パンデミックによって,東京から人間が退避してしまった世界で,山手線が,周長34kmの自律運転ミューオンコライダーに,立川−三鷹−新宿の中央線が,全長13km+14kmの自律運転電子陽電子リニアコライダーに転用されたという話だ。これに,高度2000kmの地球周回軌道上の基線長100mのレーザー干渉計宇宙アンテナ自律型観測施設(宇宙重力波望遠鏡)が加わる。

この2編はちょっと状況設定の説明だけで話が空振りに終ってしまい消化不良だった。それ以外の話は軽いけれど,サイエンスの背景があればそこそこ楽しく読める。食べ物の描写と子どもへの視線が印象的だ。あとは,フェルミのパラドックスへの強い思い入れかな。仮想歴史中には,ChatGPTに相当するAIアシスタントが2025年に登場していて,その名称がモラベックである。ハンス・モラヴェックは実在の人物であり,モラヴェックのパラドックスで有名らしい。知らんかったわ。



写真:山手線が転生して加速器になりました。(光文社文庫の書影から引用)

[2]ハンス・モラヴェック(Wikipedia)

2024年8月26日月曜日

金星の蟲:酉島伝法

皆勤の徒からの続き

酉島伝法の短編集の2つ目をKindleで読了。

金星の蟲,環刑錮,痕の祀り,橡,ブロッコリー神殿,堕天の塔,彗星狩り,クリプトプラズムの8作品に,抄録 幻視百景と自作解題,大森望の解題と続いている。

金星の蟲は,著者の印刷工としての経験が膨らんだもの,環刑錮が,蚯蚓状の意識の葛藤が表現されたもので,この2作がメインディッシュかもしれない。なかなかに読みにくいのが楽しいが,皆勤の徒のような言語的なチャレンジは多くない。それでも,これだけの多様なイメージを紡ぎ出している。

痕の祀りは,バラードの溺れた巨人の話かとおもいきや,斉一顕現体と万状顕現体というウルトラマンと怪獣の戦いの後始末をする,加賀特掃会=科学特捜隊の話だった。



写真:金星の蟲(早川書房)の書影を引用


2024年8月24日土曜日

松岡正剛

松岡正剛(1944-2024)の訃報が流れた。アラン・ドロン(1935-2024),高石ともや(1941-2024),石川好(1947-2024)とこのところ続いている。

松岡正剛が設立した工作舎(1971-)は,雑誌「遊(1971-1982)」の編集チームとして発足している。ちょうど大学に入った頃,本屋の店頭で雑誌「遊」を見かけた。値段も張るし,自分で買う気にはならなかったが,なんとなく物理学科の学生の心を引きつける妖しい雑誌だった。亡くなった藤井常幸君(原研那珂研究所)が話題にしていたぼんやりした記憶がある。あの杉浦康平(1932-)デザインの赤っぽい表紙の雑誌を教室でひろげていたのだろうか。

松岡正剛が編集した本というと,自分で買ったのは「情報の歴史(1997)」なのだ。もう処分したかと思って本棚を探してみると残っていた。おまけに「情報の歴史を読む(1997)」という解説本まで買っていた。今度廃棄処分しよう。

いろいろと評判の別れる松岡正剛だが,千夜千冊はその守備範囲や知識の網目の精緻さに驚かされた。自然科学にも十分目配りされていて,読んでみたくなる本が多かった。その千夜千冊は結局1850夜まで達していた。



図:DALL-E3による千夜千冊+情報の歴史のイメージ


P. S.  「情報の歴史を読む」をパラパラ開いていると,NTTコミュニケーションズのチラシが入っていた。「このたびは,弊社 GOLD CLUB 会員用 WEB サイトでのイベントにご参加・プレゼントへのご応募ありがとうございました。ささやかではございますが,御礼の気持ちを込めてプレゼントをお送りさせていただきます。」本の定価は2,900円だった。

2024年7月15日月曜日

女帝 小池百合子:石井妙子

女帝 小池百合子(2)からの続き

4年前に出版されたときには立ち読みだった,石井妙子の「女帝 小池百合子」,都知事選挙中にkindle割引サービスがあったので,ポチってしまった。

立ち読みの記憶と,この本が様々なSNSに取上げられたときの派生情報から,過去の物語のおさらいのような読み方ができた。実際,石井は次のように考えている。
彼女がキャスターから政治家に転じ、東京都知事に上り詰めた平成という30年間を、小池氏という人物を通じて描けるのではないか。小池氏という政治家をここまで押し上げたのは、小池氏自身の罪なのか、この時代の私たちの罪なのか? そういう視点でなら本にできるという感じはしていました。
日本新党におけるポピュリスト政治家小池百合子の誕生から,前々回の都知事選を経て,希望の党騒動で日本の野党中核勢力を破壊して,2020年の都知事選直前までの歴史を,小池を軸としてなぞるという読書体験だった。その中で,謎のまま終っている水田昌宏の話だけが,微妙に浮いていた。韓国ドラマならば続編ができるやつだ。

また,石井の執筆のきっかけとなった,カイロ時代の同居人の北原百代さんや,小池によって足蹴にされたさまざまな人々への共感が,執筆動機の背景にあることは間違いないと思う。

問題は,斎藤美奈子香山リカ井戸正枝による,ルッキズム+性差別批判をどう受け止めるかだ。もちろん,文庫版=kindle版では,仮名だった早川玲子が北原百代という本名で登場し,彼女自身の語りはYouTubeで聞けるようになったという違いはあるが,彼女らはそれでも主張は変えないだろう。まあ,なんだか言い掛かりのようなコメントもあるのだけれど。

しかし,何をどう考えても,自分は彼女ら批判派の意見に共感することはできなかった。4年前には違和感が残った石井さん側の物語の紡ぎ方に肩入れしてしまう。この本は,小池百合子への悪意というよりむしろ,小池の凄さを浮かびあがらせる結果になっていると思うからだ。だって,ここまで政治的に生き延びている小池は,細川にも小沢にも小泉にも安倍にも勝っているのだから。そんな人いますか。

Q(koshix):
リベラルな論客だと思われていた斎藤美奈子が2020年に石井妙子の著書「女帝小池百合子」を痛烈に批判にした理由がよくわかりません。なにが彼女をそうさせたのでしょうか。また,逆に石井の著書を絶賛していたリベラル派の男性論客のどこに問題があるのでしょうか。小池百合子をどう捉えればよいのでしょうか。

A(Perplexity PRO):
プロサーチ
・リベラルな論客だと思われていた斎藤美奈子の背景を調べる
・石井妙子の著書「女帝小池百合子」の内容を調べる
・斎藤美奈子が石井妙子の著書を批判した理由を調べる
・石井妙子の著書を絶賛していたリベラル派の男性論客の見解を調べる
(回答は略)

Q(koshix):
政策や実績をみても,小池のやってきたことに問題が多いというのは,石井の著書をみるまでもなく,多くの事実が蓄積され,それを我々は目にしていると思います。小池は,カタカナ語を多用し,キャッチフレーズ政治にかまけ,マスコミを誘導し,広報戦略に長けているというのは,ネット上の様々な人物の証言をつなぎあわせてもでてきます。彼女の政策的キャッチフレーズの核をなす,情報公開についても,実際に東京都が行っていることは,その真逆であり,情報を隠蔽しながら,非民主的独断的な振舞いをしているのはあきらかではないでしょうか。あるいは,小池に踏みつけられ,欺かれた多くの市井の人々の声をきけば,どうしても小池を単にフェミニズムの観点だけから擁護する立場が理解できないのです。

A(Perplexity PRO):
プロサーチ
・小池百合子の政策や実績について問題点を検索する
・小池百合子のコミュニケーション手法について情報を検索する
・小池百合子の情報公開や透明性に関する問題点を検索する
・小池百合子に対する一般市民の声を検索する
(回答は略)

Q(koshix):
それらを踏まえて,斎藤美奈子の主張がなぜ発生しているかを分析してください。

A(Perplexity PRO):
プロサーチ
・斎藤美奈子の主張の背景を理解する
・斎藤美奈子の小池百合子に対する批判の内容を分析する
・齋藤の批判と小池の政策・実績との関連性を明らかにする
回答
斎藤美奈子の主張が生まれた背景には、以下のような要因があると分析できます:
ジェンダーバイアスへの敏感な視点
 斎藤は長年フェミニズム批評の第一人者として活動してきました。そのため、『女帝 小池百合子』の内容に潜むジェンダーバイアスや性差別的な表現に対して、特に敏感に反応したと考えられます。
リベラル派知識人の盲点の指摘
 斎藤は、自身もリベラル派として知られていますが、同じリベラル派の男性知識人たちが本書を無批判に絶賛していることに違和感を覚えました。これは、リベラル派内部にも存在するジェンダーバイアスや、政治的党派性による批評眼の曇りを指摘する意図があったと推測されます。
ステレオタイプな女性描写への批判
 斎藤は、本書が小池百合子を描く際に用いている「女を売りにしている」「媚びを売って地位を得た」といった表現が、能力のない男性が口にする典型的な悪口と同じであると指摘しています。これは、女性政治家を評価する際のステレオタイプな見方に対する批判です。
個人的な物語の過度な強調への懸念
 斎藤は、社会で活躍する女性を描く際に、個人的な動機や過去のトラウマなどを過度に強調することで、その人物を矮小化していると指摘しています。これは、女性リーダーの能力や業績よりも個人的な背景に注目してしまう傾向への警鐘です。
政策批判と人格批判の混同への警告
 斎藤の批判は、小池百合子の政策や実績に対する批判と、個人的な属性や背景に基づく批判を明確に区別する必要性を示唆しています。政策や実績に対する批判は正当であっても、それが性差別的な表現や個人攻撃に陥ってはならないという主張です。
メディアリテラシーの重要性の強調
 斎藤の主張は、ベストセラーとなった本書の内容を批判的に読み解く必要性を示しています。これは、メディアリテラシーの重要性を強調するものであり、特に政治的な文脈において重要な視点です。

斎藤美奈子の主張は、単に一冊の本を批判するだけでなく、社会に潜在するジェンダーバイアスや、政治的党派性によって曇らされた批評眼、そしてメディアリテラシーの重要性を広く問いかけるものだと言えます。
P. S. この答えに自分が納得できたかどうかは別にして,Perplexity PRO は何かを調べようとしたときには最適の生成AIだとおもう。事実に基づいたこのような整理は,他者の追随をゆるさない。Claude 3.5 Sonnet は言葉遣いは丁寧で,表現力にも優れているが,大きなテキストを読み込むことができない。それが添付できるのは,ChatGPT-4oであり,プロンプトをさぼるとワンパターンだけれど,DALL-E3のイメージも生成してくれる。