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2024年11月13日水曜日

月面上の重力

月面上の重力加速度$\ g_{\rm m}\ $は,地表面上の重力加速度$\ g \ $の六分の一である。ロケットや人工衛星が開発される前の観測事実からこれを導けるかという話をみかけた。

次のような前提で考えてみよう。
ケプラーの第三法則とニュートンの万有引力の法則運動の法則は既知である。
・地球と月の距離 $\ D \ $ は三角測量によってわかっている。
・地球の半径$\ R \ $と月の半径$\ r \ $は緯度観測と三角測量からわかっている。
(直接不要だが,地球質量$\ M \ $,月質量$\ m \ $,万有引力定数を ${\  G \ }$とする。)

まず,$\displaystyle g = \dfrac{GM}{R^2}, \quad g_m = \dfrac{Gm }{r^3},  \quad \dfrac{g_m}{g} = \dfrac{m}{M} \Bigl( \dfrac{R}{r} \Bigr)^2 \ $が成り立つ。

また,地球−月系における万有引力の法則とケプラーの法則からは次式が得られる。
$\displaystyle \mu D \bigl( \dfrac{2\pi}{T} \bigr)^2 = \dfrac{G m M}{D^2}$
ただし,$\mu \ = \dfrac{m}{1+m/M} \ $は月の換算質量,$\ T\ $は月の公転周期である。
したがって,$\displaystyle \bigl( \dfrac{2\pi}{T} \bigr)^2 = \dfrac{GM (1+ m/M) }{D^3}  = \dfrac{g R^2 (1+ m/M) }{D^3}$

この式に,$T=27.32 {\ \rm d},\quad g=9.81 {\ \rm m/s^2}, \quad R = 6.37*10^6 {\ \rm m}, \quad D = 3.844 * 10^8 {\ \rm m}$を代入すると,$m/M = 0.0111$を得る(ちょっと足りないか,現在わかっている質量を入れると,$m/M = 7.35*10^22 {\ \rm kg} / 5.97*10^24 {\ \rm kg} = 0.0123 \ $である)。

この質量比の値と,地球と月の半径の比の値がわかれば,重力加速度の比が求まる。地球から月までの距離 $\ D \ $ を三角測量で求めたり,月の直径 $\ 2r \ $を逆三角測量で与えるためには,月の直径$\ 2r = 3470 {\ \rm km}$と,地球から月の距離 $D = 384400 {\ \rm km}$の比率の逆正接の値が必要となるが,その角度は 約 0.5度である。



図:月までの距離の三角測量(参考文献 [2]からの引用)




2024年9月27日金曜日

第2の月

準衛星からの続き

準衛星に似ているが,少し違う概念が一時衛星(Temporary Satellite)である。地球の回りを周回して離脱するものと,フライバイするものがある。これまでに4例知られていた。1991VG(フィライバイ),2006RH120(周回),2020CD3(周回),2022NX1(フライバイ)

もうすぐ,次の候補がやってくる。2024 PT5(フライバイ)で,7-13mの直径を持ち,2024年の9月29日から11月25日まで地球の周回軌道にあるらしい。

図をみると,地球から月の軌道の1.5-3倍程度の距離を通過するので,ヒル球の内側にある。ただ,地球からの距離だけが地球の周回軌道の条件ではないようだ。図でも周回軌道に入るの位置は,地球への最近接点よりも遠くなっている。

地心エネルギー(Geocentric Energy)= 地球中心においた座標系から見た,衛星の運動エネルギーと地球による重力の位置エネルギーの和が負になるという条件を満たすとき,周回軌道にあるというらしい。



図:2024PT5の軌道(sorae [1] から引用)


2024年9月20日金曜日

火星隕石

火星の石からの続き

火星の石がどの程度希少なものかを考えていたら,火星隕石というワードに遭遇した。地球で発見された数万個の隕石のうち,2016年の時点で172個が火星由来だとわかっているらしい。ところで,2000年6月の時点では,わずか15個(合計90kg,最大40kg)だった。

大阪万博の目玉として売り出し中の火星の石は,2000年に昭和基地の近くで発見された,13kgの世界最大級ということで,15個のリストの次に並ぶものだった。しかしながら,この火星の石は北海道の毛利衛さんの出身地である余市町に完成した宇宙記念館で,公開中なのだった。おまけに,検索すれば,ネット上で火星隕石はたくさん販売されている。うーん,目玉になりにくかった。


ちなみに,月隕石は,2013年2月の時点で,165個(合計45kg)見つかっている。これもネット販売されているよ。1982年に発見された南極隕石が月由来の隕石だと最初にわかった。その後,1979年に日本が発見していた南極隕石も月起源だと確認されたようで,これが1番目に発見された月隕石になる。

なお,月から人為的に持って帰った月の石は,アポロ11-17号の6回で382kg,ソ連のルナ計画3回で326g,中国の嫦娥計画2回で3.6kg となっている。



図:販売中の火星隕石(vec stone club から引用)

2024年9月19日木曜日

火星の石

2025年大阪・関西万博の明るいニュースが続いているような気がする。悪いニュースはもう出し切ったのかもしれない。パビリオンでの展示内容の紹介が続くと,思わず行って見たいかもという気持ちが頭をよぎる。だめ−ダメ−だめ。IR利権目当てで大阪維新がゴミ埋め立て地にゴリ押し,安倍や菅が後押しした万博なんか金輪際いくものか・・・

よく思い出して見ると,1970年の大阪万博も,高校生による初めての関西一人旅という点では面白かったけれど,万博の出展内容自身にはちょっとだけ残念な気分がただよっていた。期待していた小松左京による太陽の塔内の進化の樹は単なるハリボテだった。アメリカ館の月の石に感動したわけでもないし,ソ連館の長い行列と加速器の解説展示,フランス館は数学の歴史しか記憶にない。それ以外だと松下館のタイムカプセルとか日本館の巨大日本地図俯瞰模型くらいか。

三菱未来館など多くの企業館は映像展示のオンパレードだった。2025年の万博も映像とインタラクティブ端末の組み合わせだけで埋まりそうだ。ESSの後輩の藤場俊基君が,万博は人とのコミュニケーションを図るところに意義があるのだと,コンパニオンとの会話を楽しんできたことを自慢していたが,まあそんなものだ。EXPO2025もそれなりに見どころはあるかもしれないが,人混みの行列と熱暑に耐えた上で7500円を支払う価値があるかどうかは微妙。


そんなところに,火星の石というニュースが飛び込んできた。シンボル構造物の愛称募集(パクリングでいいよね)とかタイムリーな話題作りには事欠かない広報戦略だ。

地球に落下する隕石の多くが南極でみつかった南極隕石であるというのは周知の事実だ。大量発見の発端となったのは,日本の南極地域観測隊が1969年にやまと山脈付近で氷床の流れを観測していたときにみつけたものである。南極に落下して氷床中に留まった隕石が,氷床とともに移動して集積したものが氷床表面に現われて大量に採取されることになった。

その成分を分析すると,隕石がどの天体から由来しているかを判別できる。このへんのことを,OpenAI o1-mini に聞いてみると次のようなことだった。
Q(koshix):
日本の南極観測隊が発見した隕石が火星の石として万博で展示されるそうです。この隕石が火星から飛来したことはどのようにして推論されているのでしょうか。

A(OpenAI o1-mini / 数秒)
日本の南極観測隊が発見した隕石が火星からのものであると推論される理由は、主に以下のような科学的分析に基づいています:

1.組成分析
鉱物組成:火星隕石には特定の鉱物や化学成分が含まれており、これらが火星表面で採取されたデータや探査機による分析結果と一致します。例えば、火星特有の酸化鉄鉱物などが含まれていることがあります。
2.ガス同位体比の測定
閉じ込められたガス:隕石内部には火星大気に由来すると考えられるガスが閉じ込められています。これらのガスの同位体比(例えば、アルゴンやネオンの同位体比)が、火星探査機(例えば、ベンチ探査機・・・注:これは何だ??)のデータと一致していることが確認されています。
3.宇宙年代学
年代測定:隕石の形成年代や衝突年代が火星の地質活動と一致している場合があります。これにより、隕石が火星の地殻から放出された可能性が高まります。
4.微細構造や微磁性の解析
微細構造:火星の環境特有の微細な鉱物構造や磁性特性が見られることがあります。これらの特徴は地球や他の天体からの隕石とは異なるため、火星起源の証拠となります。
5.軌道解析(場合によっては)
軌道データ:発見された隕石の軌道データや飛来経路が火星からのものである可能性を示唆する場合もあります。ただし、南極で発見された隕石の場合、詳細な軌道解析が難しいこともあります。

これらの多角的な分析結果を総合的に評価することで、発見された隕石が火星から飛来したと強く推論されています。特にガス同位体比の一致や鉱物組成の特異性は、火星起源の隕石を識別する上で重要な指標となっています。
ちょっとあやしい部分もあるけれど,なんとなくもっともらしい。信頼度は,テレビの科学解説者と同程度のレベル。


写真:国立極地研究所にある火星の石(南極隕石)

2024年6月29日土曜日

月裏面サンプルリターン

嫦娥4号月裏面着陸からの続き

最近, マスコミの水準がかなり衰えているような気がする。老化する自分の理解力や思考力も衰えつつあるが,それを上回る勢いだ。NHKのニュースには毎日のように言葉の訂正のお詫びが入る。鋭い政治的なつっこみはほとんどみられず,公平を装いながら為政者へのステルス忖度を重ねている。威勢がいいのは,芸能スキャンダルや生け贄になる弱者を見つけたときだけだ。

マスコミ記者達の情報源が手軽なネット検索になってしまったため,SNSから情報をかき集めてそのまま右から左に紹介するような(自分のようなブロガーはそうなりがちだけれどさ)ことを繰り返している。深い分析や考察はマイナーなごく一部の番組だけだ。こうして,エコーチェンバーで増幅されたセンセーショナリズムが横行する。

さて,ニュース記事を書くのも生成AIに任せれば,記者は楽々仕事を済ませられる。政治家へのインタビューで俯いてパソコンに向かいボイスレコーダに頼る記者の行き着く先だ。ダブルチェックの替わりに複数の生成AIに書かせて平均をとればよい。それなら,新聞もテレビもいりませんよね。いや,生成AIがそれなりの答えを返すのは,リアルな情報源があるからのはずだ。なんだか面倒で鬱陶しい自己参照ループが発生しそうな予感。

そこで一つの見本を考えてみる。これにもう少し手を加えればニュースの出来上がりだ。

Q(koshix):
嫦娥6号と月面探査や月の裏面からのサンプルリターンに関する情報を,新聞のニュース記事のような形でまとめて,解説を加えてください。
Q(koshix):
月面の着陸日時と場所の情報がありません。月面探査ローバーの名称がありません。
Q(koshix):
ありがとうございます。普通日本語の新聞では,である調を用いますので,それに合わせた修正記事にしてください。

A(Perplexity PRO):
中国の無人月面探査機「嫦娥6号」、月の裏側からのサンプルリターンに成功

中国の無人月面探査機「嫦娥(じょうが)6号」が、世界で初めて月の裏側からサンプルを採取し、地球に帰還した。この歴史的なミッションは、2024年6月25日に完了し、月の裏側の謎に迫る重要な一歩となった。

ミッションの概要
嫦娥6号は2024年5月3日09:27 UTC(協定世界時)に中国海南島の文昌衛星発射センターから長征5号ロケットによって打ち上げられた。6月1日22:23 UTCに、月の南極付近の南極エイトケン盆地内のアポロクレーター南部(南緯41.6385度、西経153.9852度)に着陸した。
探査機は約2kgの土や岩石のサンプルを採取し、6月3日23:38 UTCにサンプルを搭載した上昇機が月面から打ち上げられた。6月6日06:48 UTCに上昇機が周回機(オービター)と月軌道上でドッキングし、07:24 UTCまでにサンプルが帰還機(リターナー)に移送された。
6月25日、サンプルを収めたカプセルが中国内陸部の内モンゴル自治区シリンゴル盟ドルノド旗の指定地点に無事着陸した。中国国家航天局(CNSA)の張克倹局長がミッションの成功を宣言し、習近平国家主席も「歴史的な成果」と称賛した。 
月面探査ローバー
今回のミッションには小型の月面探査ローバー「移動相机」(Yidong Xiangji)が搭載された。このローバーは月面で短距離を走行し、赤外分光法による月面の観測や嫦娥6号着陸機の撮影を行った。
月の裏側探査の意義
月の裏側は地球から見えず、クレーターが多く平坦な地形が少ないため、これまで探査が困難であった。中国は2019年に嫦娥4号で初めて月の裏側への着陸に成功しており、今回の嫦娥6号は裏側からのサンプルリターンという新たな挑戦であった。
月の裏側には希少元素や水を含む氷が存在する可能性があり、科学者たちの注目を集めている。今回のサンプル分析により、月や地球、太陽系の進化に関する新たな知見が得られると期待されている。
技術的課題と解決策
月の裏側は地球との直接通信が不可能なため、中国は2024年3月に中継衛星を打ち上げ、嫦娥6号と地球間の通信を確保した。この通信上の課題を克服したことで、高難度のミッションを成功させることができた。

この嫦娥6号のミッション成功は、中国の宇宙開発計画における重要な節目となり、月探査の新時代の幕開けを告げるものとなった。今後の分析結果が、月と地球の関係や太陽系の形成過程に新たな光を当てることが期待されている。


図:嫦娥6号のイメージ(NHKから引用)

Q(koshix):
中華人民共和国の月開発計画について,年代,プラン名,内容の一覧を作ってください。日本語でお願いします。

A(Claude 3.5 Sonnet):
承知しました。中華人民共和国の月開発計画について、年代、プラン名、内容の一覧を日本語で作成します。
年代 プラン名 内容
2004年 中国探月工程(嫦娥計画)開始長期的な月探査計画の立ち上げ
2007年 嫦娥1号 最初の中国製月周回衛星
2010年 嫦娥2号 改良型月周回衛星、小惑星フライバイも実施
2013年 嫦娥3号 最初の中国製月面軟着陸機と月面探査車(玉兎号)
2018年 嫦娥4号 月の裏側への世界初の軟着陸と探査
2020年 嫦娥5号 1976年以来初の月のサンプルリターン任務
2024年 嫦娥6号 月の裏側からのサンプルリターン計画
2026年 (予定)嫦娥7号 月の南極地域の資源探査
2028年 (予定)嫦娥8号 月面基地技術のテストと実証
2029-2030年(予定)有人月面着陸2名の宇宙飛行士による月面着陸計画
2030年代(予定)国際月面研究ステーション ロシアなど他国と協力して月面基地を建設する計画

この計画は、軌道周回(フェーズI)、着陸と探査(フェーズII)、サンプルリターン(フェーズIII)、そして月面基地の建設(フェーズIV)という段階的なアプローチを取っています。中国は着実に月探査の能力を向上させ、最終的には持続可能な月面プレゼンスの確立を目指しています。

これに相当する記事が,6月26日の日本経済新聞 朝刊3面に掲載されている。ところが,嫦娥計画の開始年や嫦娥4号の年代が誤っている。上記のClaude 3.5 Sonnetによるものは,英語版のWikipediaのChiniese Luna Exploration Program の内容のpdf出力を読み込ませてまとめたものであり,中国語版のWikipedia の中国探月工程 とも一致している。たぶん,日経の記者は日本語版wikipediaで確認しただけなのではないかという疑惑がある。まあ2019年の方は着陸したのが1月だからあながち間違いではないけれど。

それにしても,中国は着実に宇宙計画を進めている。日本が乏しい予算のなかででフラフラになりながら足掻いている(個人の主観です)のとは大きな違いである。

2024年6月5日水曜日

ビッグヒストリー

シンギュラリティサロン・オンライン松田卓也先生が言及していたので,ビッグヒストリーについて調べてみた。日本語版Wikipediaはだめだめなので,英語版Wikipediaの Big History のページをpdfに出力して,ChatGPT-4oに与えて要約させたものを読む。最近はこればっかりだ。

例えば,YouTubeの要約機能などもあるにはあるが,まだちょっと使いにくい。簡単に使えれば,YouTubeもそれに頼ることになるだろう。新聞,テレビ,映画,本,論文,雑誌,ブログ,YouTube,すべてが生成AI経由のダイジェスト視聴に化けてしまう時代がきている。そうならないのは音楽鑑賞と美術鑑賞と観劇くらいか,これらは解説アノテーションを使うことになる。
Q(koshix):
上の資料を詳しく説明してください。参考文献や註釈の部分は不要です。
説明が上記の要約の2倍程度になるように,詳しく教えてください。

A(GPT-4o):
ビッグヒストリーの詳細な説明

概要
ビッグヒストリーは、ビッグバンから現在までの広範な時間枠を対象とする学問分野です。この分野は、専門化を避け、普遍的なパターンやトレンドを探求し、科学と人文学の多くの分野を統合します。これにより、宇宙、地球、生命、人類の歴史を因果関係に基づいて探求し、人類の存在をより大きな文脈で理解することを目指しています。この分野は、大学や初等・中等教育機関で教えられており、しばしばウェブベースのインタラクティブなプレゼンテーションを使用して教育されています。

起源と発展
ビッグヒストリーという用語は、歴史学者デイビッド・クリスチャンによって初めて使用されました。彼は、オーストラリアのマッコーリー大学で最初のビッグヒストリーのコースを教えました。この学問は、ルネサンス以来、宇宙論や自然史との関係を追求してきた学者の仕事を引き継ぎ、現在に至っています。ビッグヒストリーは、ビッグバンから始まり、宇宙の形成、星や銀河の誕生、地球の形成、生命の進化、人類の出現と発展などの重要な出来事を取り上げます。

教育とアプローチ
ビッグヒストリーのコースは、従来の歴史コースとは異なり、書籍ではなくインタラクティブなプラットフォーム(例えばCourseraやYouTubeのCrash Courseなど)で教えられることが多いです。これにより、学生は視覚的かつ体験的に学ぶことができます。ビッグヒストリーは、特定の文明や戦争に焦点を当てるのではなく、宇宙全体を背景に人類の位置を探ります。このアプローチにより、人類の歴史を宇宙の歴史の一部として理解することができます。

主要なテーマ
1.ゴールディロックス条件:ビッグヒストリーの一つの重要なテーマは、ゴールディロックス条件(Goldilocks conditions)です。これは、生命や複雑なシステムが形成されるためには「適度な」条件が必要であることを指します。例えば、地球は太陽から適度な距離にあり、適度な温度やエネルギーを持つため、生命が存在できるのです。

2.エネルギーフローと複雑性:ビッグヒストリーでは、エネルギーフローが複雑なシステムの進化にどのように影響するかを強調します。エネルギーの利用が最適であるとき、システムは複雑性を増し、進化していきます。例えば、星の中での核融合反応により、重元素が生成され、それが惑星や生命の形成に寄与します。

3.宇宙進化:ビッグヒストリーは、ビッグバンから始まる宇宙進化の過程を探ります。これには、宇宙の誕生、星や銀河の形成、惑星の誕生、そして生命の進化が含まれます。ビッグヒストリーは、これらの過程を理解することで、人類の歴史をより広い文脈で捉えることができます。

批判と議論
ビッグヒストリーは、一部の歴史家や社会学者から批判を受けています。例えば、ビッグヒストリーが歴史のテキストの解釈を避け、純粋に科学的なアプローチに傾倒しているため、従来の歴史学と異なるとされています。また、一部の批評家は、ビッグヒストリーが神話的または宗教的なアプローチに近づきすぎていると指摘しています。これに対して、ビッグヒストリーの支持者は、従来の歴史学が人類の歴史のごく一部(例えば、過去5000年)のみを対象としているのに対し、ビッグヒストリーはより広範な時間枠を対象としていると主張しています。

教育的イニシアティブ
ビル・ゲイツが支援するプロジェクトにより、高校生向けの無料のオンラインコースが提供されています。このプロジェクトは、ビッグヒストリーの教育を広めることを目的としています。さらに、ドミニカン大学では全ての新入生にビッグヒストリーのコースを必修としています。これにより、学生は広範な時間枠と学際的なアプローチを通じて、人類の歴史を理解することができます。

結論
ビッグヒストリーは、ビッグバンから現在までの広範な時間枠と学際的なアプローチを用いて、人類の歴史を宇宙の歴史の中に位置づける学問分野です。これにより、人類の存在をより大きな文脈で理解することが可能となり、従来の歴史学と異なる視点を提供します。ビッグヒストリーは、科学と人文学を統合することで、過去の出来事を新しい視点から理解する手助けをします。


Q(koshix):
ビックヒストリーにおいて重要な画期となる事象に重点をおいて,もう少し詳しく説明してください。

A(GPT-4o):
ビッグヒストリーにおける重要な画期となる事象

ビッグヒストリーは、ビッグバンから現在までの広範な時間枠を対象とし、宇宙、地球、生命、人類の歴史を統合的に探求します。この分野では、いくつかの重要な画期的な事象が強調されており、これらの事象は複雑性の増加や新しい形態の出現を示します。以下に、ビッグヒストリーにおける主要な画期的事象について詳述します。

1.ビッグバン(約138億年前)
ビッグヒストリーの出発点は、宇宙が極めて高温・高密度の状態から急激に膨張し始めたビッグバンです。この瞬間に宇宙が誕生し、空間、時間、物質、エネルギーが生まれました。ビッグバンにより、宇宙は急速に冷却され、数分以内に軽元素(主に水素とヘリウム)が形成されました。

2.恒星の誕生(約127億年前)
宇宙が冷却されると、ガスとダストが重力によって集まり、最初の恒星が形成されました。恒星の内部での核融合反応により、重元素(例えば炭素、酸素、鉄など)が生成されました。これらの元素は、後に惑星や生命の構成要素となる重要な物質です。

3.銀河の形成(約100億年前)
恒星が集まって銀河が形成されました。銀河は、恒星、ガス、ダスト、ダークマターから構成される巨大な構造です。銀河の中で、恒星は集団で存在し、相互作用を通じて進化します。私たちの太陽系は、銀河系(ミルキーウェイ)内に位置しています。

4.太陽系と地球の形成(約46億年前)
太陽系は、原始太陽の周りに形成されたガスとダストの円盤から生まれました。これらの物質が集まり、原始惑星が形成され、その一つが地球です。地球は、その位置やサイズ、化学組成が生命の誕生に適していました。

5.生命の誕生(約38億年前)
地球上での生命の誕生は、化学的進化の結果として起こりました。最初の生命体は、単純な単細胞生物であり、海洋の熱水噴出孔や浅い潮溜まりで生まれたと考えられています。これらの原始生命体は、光合成や呼吸などの基本的な生命活動を行いました。

6.真核生物の出現(約20億年前)
単細胞生物の進化により、細胞内に核を持つ真核生物が出現しました。真核生物は、より複雑な細胞構造を持ち、多細胞生物の進化の基盤となりました。この進化は、生命の多様化と生態系の複雑化に大きな影響を与えました。

7.カンブリア爆発(約5億4100万年前)
カンブリア爆発は、地球上の生命が急速に多様化し、多くの動物門が出現した時期です。この期間に、多くの新しい形態の生物が進化し、現代の動物群の祖先が形成されました。これにより、海洋生態系が急速に複雑化しました。

8.陸上生命の進出(約4億年前)
植物と動物が海洋から陸上に進出しました。陸上植物は、光合成を通じて大気中の酸素濃度を上昇させ、動物が呼吸できる環境を作り出しました。最初の陸上動物は、両生類や昆虫などであり、これらの進出は生態系の多様化を促進しました。

9.哺乳類と鳥類の進化(約2億年前)
哺乳類と鳥類は、爬虫類から進化しました。哺乳類は、温血性、毛皮、哺乳行動などの特徴を持ち、様々な環境に適応しました。鳥類は、飛行能力を持ち、広範な生態系に進出しました。

10.人類の出現(約300万年前)
最初のヒト属(ホモ属)がアフリカで出現しました。これらの初期の人類は、道具の使用や火の利用、集団生活などの文化的進化を遂げました。現生人類(ホモ・サピエンス)は約30万年前に登場し、言語や高度な技術を発展させました。

11.農業革命(約1万2000年前)
農業革命により、人類は狩猟採集生活から農耕生活へと移行しました。これにより、定住生活が可能となり、村や都市が形成されました。農業革命は、人口増加や社会構造の複雑化をもたらし、文明の発展の基盤となりました。

12.産業革命(約250年前)
産業革命は、18世紀後半にイギリスで始まりました。蒸気機関や工場生産などの技術革新により、生産力が飛躍的に向上しました。これにより、都市化、経済成長、社会変革が進み、現代社会の基盤が形成されました。

13.デジタル革命(約50年前)
20世紀後半から始まったデジタル革命は、コンピュータやインターネットの普及により、情報の取得と共有が劇的に変化しました。この革命は、グローバル化、情報社会の発展、AI技術の進化などを促進し、現代の生活と社会構造に深い影響を与えています。

まとめ
ビッグヒストリーは、これらの重要な画期的事象を通じて、人類の歴史を宇宙の歴史の中に位置づけ、複雑性の増加と新しい形態の出現を理解する手助けをします。このアプローチにより、私たちは自身の存在をより広い文脈で捉え、過去から未来への連続性を認識することができます。


図:ビッグヒストリのスパイラル表現(Wikipediaから引用)

たぶん,2027-2029年あたりに松田先生のいうところのシンギュラリティがくるので,これが14.AI革命(5年後)として付け加わることに。

2024年5月23日木曜日

宇宙天気予報

太陽フレアからの続き

宇宙天気予報から,大規模太陽フレアに関する臨時情報が出されていた。5月8日から11日までに,最も大きなXクラスの太陽フレアが8回生じたというものだ。これによって,低緯度地方でもオーロラが観測されることになる。日本でも,5月11日10:23の最大規模X5.8の太陽フレアによって,夜23:30ごろに北海道や輪島で低緯度オーロラが見られた。

太陽表面の爆発現象によって,数分から数時間のスケールで多波長(電波〜X線・ガンマ線)の増光現象が起こる。これが太陽フレアであり,これにともなって,高エネルギー陽子やプラズマが太陽嵐として放出され,地球磁場に影響を及ぼすことになる。その結果が低緯度オーロラである。

太陽フレアは,太陽領域のプラズマ中の磁場が再結合(磁気リコネクション)することによって,磁場のエネルギーが荷電粒子の運動エネルギーに転化することで生ずる。そのエネルギーは,10^22〜10^25 Jである。事象継続時間の10^3〜10^4秒で割れば,10^19〜10^21 W のパワーが発生していることになる。

これを太陽から1.5億kmの距離にある地球軌道上でみると,パワー密度は,0.5〜50×10^-4 W/m^2 となる。太陽フレアのエネルギー等級としてよく用いられるのは,波長 100-800 pmのX線のエネルギー流束であり,これが10^-4 W/m^2 を越えるものが Xクラスということになる。X5.8は 大気圏外の観測点のパワー密度が5.8×10^-4 W/m^2 になるということだ。


図:人工衛星GOES(米国NOAA)によって観測された太陽X線強度

2024年2月19日月曜日

デブリ除去衛星


2月18日,ニュージーランドで,日本のベンチャー企業のアストロスケールが,商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」を打ち上げ軌道投入に成功した

どうしてニュースでは知りたいと思う肝腎の情報を伝えてくれないのだろうか。

(1) 日本にそんな会社があったのか? → 2013年に設立され本社は東京だが,世界各地の子会社で500名がグローバルに働いている。

(2) ニュージーランドは人工衛星を打ち上げられるのか? → 2006年にニュージーランドで設立された民間企業のロケット・ラボ(現在の本社はカリフルニア州ロングビーチ)が,ニュージーランドの北島東にあるマヒア半島にロケット発射施設をもっていて,そこから打ち上げたものだ。

打ち上げに用いられたのは,小型2段式液体燃料ロケットのエレクトロンで,750万ドル(12億円)で300kgの衛星を低軌道に打ち上げられる。2017年以来31回の打ち上げを行い,28回成功している。年に6-7回の打ち上げだから,日本のH3の2倍のペースだ。

このロケットエンジンは,ニュージーランド出身の物理学者アーネスト・ラザフォードにちなんで,ラザフォードエンジンと名付けられている。推力は小さいが,技術的には高度なものが採用されている。


デブリ除去衛星ADRAS-Jは,JAXAとの契約で低軌道にあるH2Aロケットの第2段にランデブーして,比較軌道離脱のための実証データを収集する。今回はデブリ=非協力物体に接近してその様子を観測撮影するだけのようだ。

遠距離では対象の地上観測とデブリ除去衛星のGPSを組み合わせて接近する。対象が見つかった後は,可視光・赤外光・LIDARの3種類で対象を捉えることになる。


写真:ADRAS-Jのイメージ図(アストロスケールのウェブサイトから引用)

2024年2月18日日曜日

H3ロケットとお気持ち主義

2月17日9時22分過ぎ,種子島宇宙センターからH3ロケット2号機(H3・TF2)が打ち上げられ,成功裏に2個の小型副衛星(CE-SAT-IE/TIRSAT)を軌道に投入することができた(ロケット打ち上げ計画書)。

前回2023年3月7日のH3ロケット1号機では,2段目のエンジンに点火することができず,陸域観測衛星大地3号の軌道投入に失敗していた

YouTubeを見ていると,JAXAからライブ映像が配信されていた。その段階ではすでに第2段への点火が完了し,説明を聞いているところで第2段の燃焼が終了して,衛星が分離されていた。

JAXA配信中の解説で新しくわかったことは,H3ロケットが従来のH2Aのコストを半分の50億圓にしたというだけでなく,第1段のエンジンを2または3基,固体燃料ブースターの数を0,2または4基と,様々な組み合わせで,ペイロードにあわせた最適化ができるというところだった。今回のは,第1段エンジンが2基,固体燃料ブースターが2基のH3-22Sである。最大の組み合わせH3-24Wでは,6.7tの衛星を静止トランスファ軌道に投入できる。



写真:H3ロケットの1/20模型(Wikipedia「H3ロケット」から引用)

JAXAの記者会見では,記者たちのクオリティの低さが目立つ。最後の南日本新聞の女性記者が,第1段のエンジンを3基(このとき固体燃料ブースターは使わない)にするのはいつになるかを聞いていた。まだ,検証が必要なので次回ではないという説明をうまく引きだしていた。このような事前学習がされている少数例を除くと,ほとんどみんなお気持ち主義なのである。曰く「○○のときはどんなお気持ちでしたか云々」。こればっかり。平安文学からの伝統が連綿と受け継がれている。

参考:
『栄花物語』では、文学的な興趣によって感覚的に歴史を把握しており、個々の歴史事象の背後に潜む歴史の真実を描くよりも、事件をめぐって生起する人々の心情や人の世の哀感を、事実を主観的に潤色したり、虚構を用いたり、さらには、『源氏物語』の文章を模倣するなどして描いていて、作り物語的性格が濃厚であり、冷徹な目で人間を直視し、その内面へ踏み込んで描く態度が希薄である。(Wikipedia「栄花物語」から引用)

2024年1月29日月曜日

SLIM(2)

SLIM(1)からの続き

SLIMは高度5mあたりで,当初予定(高度1.8m)されたように,LEV-1LEV-2(SORA-Q)という無人探査ロボットシステムを放出した。

LEV-1(2.1kg,26 × 40 × 60 cm)は,2.4m/sで月面に落ちる予定だったが,もし5mからの自由落下ならば,鉛直方向の速度は4m/sになる。自律的に跳躍移動しながら方位制御して地球との直接通信を確立する。

LEV-2(0.25kg,直径8cmの球状から変形可)は,月面のレゴリス上を移動して動作ログを保存し,着陸機SLIMの周辺を撮影して,画像データと動作ログをLEV-1経由で地球に送信する。その結果がSLIM(1)で示した画像である。途中にブロックノイズが入っていることや,解像度はもっと出ているのだが,通信上の制約で落として送信したらしい。

LEV-2別名SORA-Qは,タカラトミーとの共同開発である。この月面に行ったSORA-Qと同じサイズ,同じ変形機能,同じ走行機能・撮影カメラを持った 1/1スケールモデルを2万7千円で販売している。わぉ!思わず注文してしまいそうになる。


写真:SORA-Q実寸モデル(タカラトミーから引用)

2024年1月28日日曜日

SLIM(1)

SLIMは,JAXAの小型月着陸実証機だ。月周回衛星かぐやのデータと照らし合わせながら,月面の目的地にピンポイントで着陸し,無人小型ロボットシステムで月を探査しようというものだ。

2023年9月7日に種子島宇宙センターからH-IIAロケットで打ち上げられ,12月25日には近月点600km,遠月点2000kmの月周回軌道に投入された。1月20日に高度15kmから降下を開始し,世界で5番目の月着陸に成功した。太陽電池からの電源供給ができていないというニュースを聞いたとき,あーこれはちょっと残念かと思った。

1月25日にJAXAによる記者会見が行われた。そこで紹介されていた写真が次のものだ。


写真:LEV-2が撮影したSLIM本体が転倒している様子(JAXAから引用)

SLIMは航法カメラで月面を撮影しながら,自律的な航法誘導制御を行っている。50m上空に至ったところで,障害物を避けるモードに移行する。目標地点は,経度25.2°,緯度-13.3°の2つのクレーターの境界上の斜面である。

月面上50mまでは予定通り順調に飛行していて,この段階でのピンポイント着陸精度は3-4m程度と考えられる。従来の数キロメートルに比べて1/1000の精度である。ところが,2基搭載している500Nのメインエンジ


の1基が脱落して,推力が半分になってしまった。それでも,最終的に秒速1.4mと想定範囲よりゆっくり着陸することになる。

この異常により,横方向の速度が発生してしまい,結果的に55m東にズレた点に接地する。このため,2段階の受け身型の着陸条件を満足できずに機体はそのまま斜面に着陸した。この結果,メインエンジが上向きの転倒状態で静止した。太陽電池は正常な上向きではなく西向きになり,太陽光が当たらないため電源供給ができなくなった。


月の一日は約30日であり,今月の上弦が1月18日,満月が1月26日,下弦は2月3日である。着陸したのは1月20日で経度20°(1.5日相当)だから,下図において地球と緑の線で結ぶ位置の月面上に着地している。これは,月の一日でいえば午前9時に相当する。1月24日ごろにSLIM着地点は正午を迎え,2月1日には日没となる。月面上のSLIMに西日が差して,太陽電池が復活する可能性があるのは,2月1日までということか。



図:SLIMと太陽の位置関係(実際には経度20°の緑線まで回転)

追伸:1月29日に,ようやく西日で電源が復活したようだ。新しい画像も撮影している。

2024年1月27日土曜日

月の一日

2024年1月26日,今日は満月だ。非常勤の授業が終って平端の駅の1番ホームへ向かう午後3時半すぎ,乗客のかたまりがどんどんホームから階段を下りてきて引きも切らない。そうか,今日は天理教の春季大祭の日だった。夜は冷え込んでいるけれど空は曇っていて月は見えない。

SLIMの記事を書くためには,月の一日について調べておかなければならない。

(1)月の公転周期
ケプラーの第三法則というのか,ニュートンの運動方程式を解けば,公転周期は$T=\dfrac{2\pi}{\sqrt{GM}} a ^{3/2}$である。$G$は万有引力定数,$M$は地球の質量,$a$は月の軌道の長半径である。$\sqrt{GM}=g R$であり,重力加速度$\ g=9.82 {\rm m/s}^2$,地球半径$\ R= 6.37 \times 10^6 {\rm m}$を使えばよい。$a\ $の値は遠地点と近地点の平均値であり,$a=3.83\times 10^8 {\rm m}$。これらから,$T=27.3$日となる。

(2)月の一日の長さ
潮汐作用の結果,月の自転周期と公転周期$\ T\ $は一致し,地球から見える月は常に同じ面になる。月の周期の間に地球が太陽の回りを公転するため,月の一日,例えば日の出から次の日の出のまでの時間$\ t\ $は$\ T\ $ではなく,それよりも長くなる。地球の公転角速度を$\ \Omega$,月の公転角速度を$ \omega$ とすると,$\Omega t = \omega (t -T) $が成り立つ。これから $t=T/(1-\Omega/\omega) = 27.3/(1-27.3/365) = 29.5 $日が得られる。これを朔望月という。



図:月の一日(朔望月)

2023年12月22日金曜日

astropy

Pythonで太陽系の天体位置を描画してみる」というのを見つけた。python上の天文学統合データ処理環境であるastropyというライブラリを使うものだ。

jupyter lab を起動して,さっそく試してみると,いきなりmatplotlibが見つからないというところでつまづいた。以前に試したpythonのコードでは,matplotlibを読み込んでちゃんと作図がでてている。その古いコードでもエラーがでてきた。

macbook air の環境は,基本的にはhomebrew で更新しているので安心できるのだが,問題は,python環境である。python は3.9〜3.12までの複数のバージョンが同居することになっている。これは基幹ソフトなので,下手に古いものを消してしまうとややこしいのだ。そこで,一般には,python環境を指定するpyenvとかvenvで仮想環境を設定した上で,様々なライブラリを加えていくことになる。

が,ですね,それはそれで面倒なので,アドホックにバージョンアップを繰り返しながら,pip install ホゲホゲをつづけているために,わけわかめ状態になっている今日この頃なのだ。jupyterlabもバージョンが上がるたびに,見えなくなってしまうので,毎回 brew link jupyterlabを繰り返す始末だ。70歳になると,自分の体の中のDNA情報システムだけでなく,外の電子情報システムまで老化が進んでくるということだ。

まあ,macOSの場合は,機種更新の際に新規インストールすればそれなりに,なんとかなるかもしれないけれど,複雑な記録や認証情報を引き継ぐのは厄介だ。特に,iOSでは,指紋認証を含め,現金が動く認証アプリがウヨウヨいるので,次期機種更新のことを考えただけで気が遠くなりそうだ。


話を戻して,astropyについて。jupyter環境でpython kernelを立ち上げているところから,!エスケープで!pip listをやってみると,matplotlibは存在している。!pip install matplotlib でも致命的エラーはでない。ChatGPTに相談してみると,カーネルがどうなっているか確認せよとのこと。
 jupyter kernelspec list
  python3              /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec/lib/python3.12/site-packages/ipykernel/resources
  julia-1.9            /Users/koshi/Library/Jupyter/kernels/julia-1.9
  maxima               /Users/koshi/Library/Jupyter/kernels/maxima
  wolframlanguage12    /Users/koshi/Library/Jupyter/kernels/wolframlanguage12
はいはい,表に見えていたのは python3.11.6だったけれど,実は,python.12.1が使われており,ここにはmatplotlibが入っていませんでした。さっそく,このポイントで,matplotlibとかscipyとかastropyとかpytest-astropyとかをpipでインストールした。別の参考資料に指示があった,astropyが正しく導入できているかどうかのテストも,試行錯誤の後にOKとなった。

   cd /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec/bin

   ./pip install astropy

   ./pip install ephem

import astropy as ap
>>> ap.test()
platform darwin -- Python 3.12.1, pytest-7.4.3, pluggy-1.3.0

Running tests with Astropy version 6.0.0.
Running tests in lib/python3.12/site-packages/astropy.

Date: 2023-12-19T22:26:53
Platform: macOS-14.2-arm64-arm-64bit
Executable: /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec/bin/python
Full Python Version: 
3.12.1 (main, Dec  7 2023, 20:45:44) [Clang 15.0.0 (clang-1500.0.40.1)]
encodings: sys: utf-8, locale: UTF-8, filesystem: utf-8
byteorder: little
float info: dig: 15, mant_dig: 15

Package versions: 
Numpy: 1.26.2
Scipy: 1.11.4
Matplotlib: 3.8.2
h5py: not available
Pandas: not available
PyERFA: 2.0.1.1
Cython: not available
Scikit-image: not available
asdf-astropy: not available

Using Astropy options: remote_data: none.

rootdir: /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec
plugins: astropy-0.11.0, remotedata-0.4.1, hypothesis-6.92.1, cov-4.1.0, filter-subpackage-0.1.2, astropy-header-0.2.2, anyio-4.1.0, mock-3.12.0, doctestplus-1.1.0, arraydiff-0.6.1
collected 28085 items / 5 skipped  

-- Docs: https://docs.pytest.org/en/stable/how-to/capture-warnings.html
========== 27425 passed, 425 skipped, 240 xfailed, 80 warnings in 184.56s (0:03:04) ===========
<ExitCode.OK: 0>
ところが,やっぱりもとの太陽系の天体位置描画が動かない。最後に,Animation関数中のblit=False をblit=Trueにしてようやく何か表示されてほっとしたが,そこまでで内部にエラーがあるとのメッセージが出て異常終了してしまった。チーン。


図:ここまでは出たけれどアニメーションにはなっていなかった残念な図

astropyはイメージ処理やデータ処理を本業とした,プロ用の本格的なシステムだった。

2023年12月2日土曜日

円軌道はむずかしい

万里鏡1号弾道ミサイルの軌道(2)からの続き

北朝鮮の弾道ミサイルの簡単なシミュレーションコードをMathematicaで作っていた。これを少しアレンジすれば人工衛星を軌道に投入するところまでできそうな気がする。

早速,以前のコードを修正してみた。まずは通常の加速直後に角度方向だけに加速度を加えるようにしたがうまくいなかい。打ち上げ加速は投射角の方向になっているので,動径速度成分が大きく残っているうえ,加速すれば軌道は膨らむ。このため,離心率の大きな長円軌道になって地表にぶつかってしまうか,地球の重力圏から脱出してしまうのだ。

次に,打ち上げ加速の直後に空白時間をおいて,動径速度成分が小さくなったところで角度方向に加速できるようにした。それでもうまくいかない。簡単な試行錯誤では周回軌道にのせるのが難しい。そもそも角度方向に加速するということは面積速度すなわち角運動量をふやし,動径方向の微分方程式で軌道半径を膨らませる方向に作用してしまう。

そこで,後期加速では衛星をその速度ベクトルの方向に加速することにした。$t=0$で速度ベクトルをとりだすところに発散があったので,これを回避するため,地球の自転による2倍面積速度$h(t)$の初期値として,$h(0) = R^2\omega=R^2 \frac{2\pi}{24*3600}=2930$ km$^2/$sを与えた。初期加速度はこれまでの$\ a=0.0446$として$30$秒加速する。その後,800秒程度休止した後に,後期加速度$\ b=0.1445$(ここを微調整した)で$250$秒加速すると,なんとか軌道に投入することができた。投射角は$s=45$度,初期加速における燃料比は$p=0.85$であり,加速方向の角度には$0.3$をかけて動径成分を抑えた。

なかなか難易度の高いゲームである。衛星の軌道高度が1200km程度の準円軌道となっている。これを500kmにしなさいといわれても,こんな単純な2段階制御ではちょっと難しい。なお,プログラムの検証のため,$r=6850$kmの宇宙空間で第一宇宙速度に相当する$v=\sqrt{gr}=8.2$ km/sを角度方向の初速度として与えると,正確に円軌道を描くことが確かめられた。

g = 0.0098; R = 6350; τ = 30; τs = τ*27; τt = 250; p = 0.85;
 a = 0.0446; b = 0.1445 a; s = 45 Degree; T = 15400; 
fs[t_] := 0.3*ArcTan[r[t]*r'[t]/ h[t]]
fr[t_, τ_] :=  a*Sin[s]*HeavisideTheta[τ - t] + 
   b*Sin[fs[t]]*HeavisideTheta[t-τs-τ]
   *HeavisideTheta[τ+τs+τt-t]
ft[t_, τ_] :=  a*Cos[s]*r[t]*HeavisideTheta[τ - t] + 
   b*Cos[fs[t]]*r[t]*HeavisideTheta[t-τs-τ]
   * HeavisideTheta[τ+τs+τt-t]
fm[t_, τ_] := -p/(τ - p*t)*HeavisideTheta[τ - t]
sol = NDSolve[{r''[t] == -fm[t, τ]*r'[t] 
   +h[t]^2/r[t]^3 -g R^2/r[t]^2 +fr[t, τ],
   r[0] == R, r'[0] == 0, 
   h'[t] == -fm[t, τ]*h[t] + ft[t, τ], 
   h[0] == 2930 + 0*Sqrt[g] R^(3/2)}, {r, h}, {t, 0, T}]
f[t_] := r[t] /. sol[[1, 1]]
d[t_] := h[t] /. sol[[1, 2]]
Plot[{6350, f[t]}, {t, 0, T}]
Plot[{f[t + 1] - f[t], d[t]*R/f[t]^2, d[t]/f[t]},
 {t, 0, T}, PlotRange -> {-5, 15}]

 


図:苦労すると有難みがわかる衛星の準円軌道のグラフ

P. S. もう少しがんばると,軌道高度650km(r=6980km)の準円軌道まで達成できた。
g = 0.0098; R = 6350; τ = 25; τs = τ*15.3; τt = 350;  p = 0.85;
a = 0.0446; b = 0.1275 a; s = 45 Degree; T = 15400; 

2023年11月28日火曜日

妖星ゴラス

海底軍艦からの続き

11月のWOWOWで東宝の特撮SF映画シリーズをやっていた。地球防衛軍(1957),宇宙大戦争(1959),妖星ゴラス(1962.3),海底軍艦(1963),緯度0大作戦(1969)の五本だ。

このうち,1963年の海底軍艦だけ映画館で見ているのは以前書いた通り。妖星ゴラスは小学校2-3年の時で,近所に映画のポスターも貼ってあった(そんな時代)。ストーリーも薄々わかって,とても見たかったのだけれど,当時は"大人の映画"につれていってほしいと言い出せるとは思っていなかった。まもなく,最初に体験することになる東宝の特撮怪獣映画は,キングコング対ゴジラ(1962.8)で,それ以後,夏休みのゴジラシリーズ等には連れて行ってもらえた。


その妖星ゴラスは,本多猪四郎(いしろう)と円谷英二のコンビ作品のうちの怪獣物でないSF作品の一つであり,今回のWOWOWの特集もそうしたSFものから変身人間シリーズなどを除いた5作が選ばれている。ただし,世界大戦争(1961)は含まれていない。

妖星ゴラスは,地球の0.75倍の大きさだが,重力が6000倍近い"黒色矮星"という設定で,地球に向かってくる。この星の接近による地球の破壊を避けるために南極にロケット噴射装置を設置して,地球をその公転軌道からずらすというものだ。$10^{-6}$Gを100日かけて40万km移動する。加速終了後も等速運動を続けるのはどうするのかと思ったけれど,映画の中では,北極に装置を再設置して逆に動かすような説明をしていた。

このため,南極におけるロケット噴射を表現するガスバーナーの炎のシーンが延々と続くのだった。ただ,説明では重水素と水素による核エネルギー(核融合とか水爆というキーワードは表立って出てこない)的なものが示唆されている。そのわりにはガスバーナーなのであるが。アポロ11号を打ち上げたサタン5号程度の推力ならば,1万セットで$10^{-12}$Gを短時間加えられるかもしれないけれど,ちょっとかなり厳しい。

おもしろかったのは,久保明がゴラスの再調査に向かったときに危機的状況になって記憶喪失になるシーン。ところどころ,2001年宇宙の旅(1968)のボーマン船長を思わせるようなシーンや宇宙ステーションへの回収のカットが出てくるのだ。キューブリックがこの映画を観ていることはないと思うが・・・。ところが検索してみると,同様の意見が散見された。もしかすると影響しているのだろうか。

なお,毛色が異なるので今回は含まれていない第三次世界大戦ものである世界大戦争を検索していたら,第二東映の第三次世界大戦 四十一時間の恐怖(1960)というドキュメンタリータッチのモノクロ映画も見つかった。当時は相当世界危機的な認識が広まっていた状況だったのだろう。



写真:妖星ゴラスの一場面([1]から引用)

[1]映画 妖星ゴラス(サブロジーの日々是ずく出し)

2023年11月26日日曜日

万里鏡1号

11月21日の22時42分に,朝鮮民主主義人民共和国東倉里の西海衛星発射場から,新型ロケットチョルリマ(千里馬)1型が発射され,軍事偵察衛星マルリギョン(万里鏡)1号が衛星軌道に投入された。

これに関するNHKニュースを時系列に並べると次のようになる。
・11月21日 22時46分 Jアラート発令「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難して下さい。(対象都道府県:沖縄県)」(Jアラート)
・11月21日 23時15分 Jアラート発令「ミサイル通過。ミサイル通過。先程のミサイルは22時55分頃、太平洋へ通過したものとみられます。避難の呼びかけを解除します。不審な物には決して近寄らず直ちに警察や消防などに連絡して下さい。(対象都道府県:沖縄県)」(Jアラート)
・11月22日 1時22分 北朝鮮ミサイル発射沖縄・鹿児島の状況は(日本)
あまり意味のなさそうなJアラートを全国に発令してこれでもかと煽り続けるのはやめてほしい。そのぶん客観的で正確な情報を流してね。弾道ミサイル実験の場合と違って,10分ほどで高度500kmに到達し,衛星軌道への投入に切り替わる。この段階でレーダーによる追跡ができなくなったようだ。

少しフライングしているものの,人工衛星としての打ち上げ予告をしているのに,弾道ミサイル実験だと言い募るのもどうにかならないのか。軍事偵察衛星の実験はそれはそれで困るし,ミサイル技術の前進があるのは確かだけれど,弾道ミサイルとしての実験ではないだろう。

韓国が衛星打ち上げに成功したと確認したあとでも,「何らかの物体が地球の周回軌道に」とディスっても仕方ないだろうに。機能していなくても地球を周回していれば初の人工衛星の打ち上げ成功には違いない。万里鏡1号はNORADにも登録されていて,高度が遠地点519km,近地点499.6kmのきれいな太陽同期円軌道になっている。もちろん,カメラが正常で十分に機能しているかどうかは別問題だけれど。

1970年2月11日の,日本初の人工衛星おおすみの場合は,非軍事目的ということで誘導制御ができなかったこともあるが,遠地点5151km,近地点337kmの楕円軌道で,15時間で電池が熱やられて通信は途絶している。それでも光学観測で軌道は確認できたようだ。おおすみは,2003年8月2まで33年間地球周回軌道にあった。


図:万里鏡1号の軌道の例(NOY2.comから引用)


2023年11月25日土曜日

アマテラス粒子

観測史上2番目にエネルギーの高い宇宙線が見つかったというニュース。11月24日のサイエンスオンラインに論文が掲載されるはずだけれど,まだ見当たらない。

実験史上最大というプレスリリースになっているのは,米国ユタ州のテレスコープアレイ実験(2008-,760㎢に1.2km間隔で507台の大気チェレンコフカウンターを並べた装置)においてという意味だ。これまでに観測された史上最大エネルギーの宇宙線は,同じユタ州のダグウェイ実験場で1991年に見つかった,オーマイゴッド粒子だ。そのエネルギーは,3.2±0.9 × 10^20 eV = 320 EeV(エクサ電子ボルト)= 51 J(ジュール)である。

今回,大阪公立大学や東京大学宇宙線研究所などのメンバーを含む国際共同実験チームが見つけた宇宙線は,アマテラス粒子と命名され,そのエネルギーは 244 EeV = 38 J である。これがマスコミに報道されるとき,40Wの電球を1秒点灯させるだけのエネルギーというのはOKだけれど,1gで地球を破壊するほどのエネルギーだという例えに引っかかった。

この宇宙線の正体となる粒子が何であるか(粒子1個の質量)がわからなければ,1gに相当する粒子数が定まらない。とりあえず,銀河宇宙線の大半を占める陽子だとすると,質量は,1.67 × 10^-27 kg なので,6 × 10^23 個分にあたる。1g 分のアマテラス粒子群全体の持つエネルギーは,2.4 × 10^25 J なのだけれど,これで地球は破壊できるのだろうか。

広島に投下されたリトルボーイのエネルギーは,7 × 10^16 J らしいので,3億個の広島型原爆を落とされたことになる。また,チクシュルーブ・クレーターを作って恐竜を絶滅させたといわれる直径10km,速度20km/sの小惑星は,リトルボーイの1億倍のエネルギーに相当するので,この小惑星衝突の3個分のエネルギーに相当する。この表現のほうがわかりやすかっただろうか?

宇宙線研究所のプレスリリースには共同実験代表者の荻尾彰一さんの写真が大きく載っていた。彼は,大阪市立大学時代には物理教育学会近畿支部長を務められ,いろいろとお世話になったのだった。


図:大阪公立大学のプレスリリースから引用(©Ryuunosuke Takeshige)


2023年11月13日月曜日

昼夜時間(3)

昼夜時間(2)からの続き

昼夜時間の式はできたものの,現実の天理市(緯度:34.6°,経度:135.8°)の日の出,日の入りとは差がある。日本標準時との違いは,0.8°だから3分程度になるが,それだけでは足りないような気もする。

そもそも,冬至(12月22日)に向けて,日の出が最も遅くなる日(1月8日ごろ)と日の入りが最も早くなる日(12月6日ごろ)が違うのは,単純な円軌道モデルでは説明できないのではないか。

とりあえず,国立天文台計算室のこよみの計算によって,天理市の日の出時刻(7:04〜4:43),日の入り時刻(16:46〜19:14)を求めてみた。±2時間半くらいは変化する。この結果,昼時間は9時間50分から14時間30分までかわる。南中時刻はこんなにフラフラするものだったのか。


図:天理市の日の出時刻,日の入り時刻,昼時間,南中時刻

[1]こよみの計算(国立天文台計算室)

2023年11月10日金曜日

昼夜時間(2)

昼夜時間(1)からの続き

早速これを使ってグラフを描いてみる。Mathematicaで次のコードを打ち込んだ。純粋な三角関数との違いを調べるために,ピーク値を採寸して,そのコサインを比較のために描かせてみた。
In[1] = f[τ_] := ArcSin[Cos[τ]*Sin[-23.4/180*Pi]]
In[2] = t[τ_, θ_] :=  12 (1.0 - 2.0/Pi*
ArcTan[(Tan[f[τ]]*Tan[θ])/Sqrt[1 - (Tan[f[τ]]*Tan[θ])^2]])
In[3] =  (12 - t[0, 34.58/180*Pi])/2
Out[3] = -1.15705
In[4] = g1 = Plot[t[τ, 34.58/180*Pi], {τ, 0, 2 Pi}, 
  PlotStyle -> {Blue}]
In[5] = g2 = Plot[{12 + 2*1.15705 Cos[t]}, {t, 0, 2 Pi}, PlotStyle -> {Red}]
In[6] = g3 = Plot[
  10*(t[τ, 34.58/180*Pi] - (12 + 2*1.15705 Cos[τ])) + 
   12, {τ, 0, 2 Pi}, PlotStyle -> {Green}]
In[7] =Show[{g1, g2, g3}]
図:地球の夜時間(冬至〜夏至〜冬至)

グラフの縦軸は夜時間で,中心値が12時間になっている。横軸は1年を位相2πに換算したもので,冬至−春分−夏至−秋分−冬至に対応する。違いがわかりにくいが,青が今回の結果,赤が三角関数,緑が(青−赤)の10倍である。つまり,純粋な三角関数からの ズレは,たかだか10分程度ではあるが,少しモジュレーションがかかったような関数になっていた。


2023年11月9日木曜日

昼夜時間(1)

11月8日は立冬。朝の散歩で,日の出がしだいに遅くなっていく。

日の出から日没までの昼時間の一年における変化は,三角関数になっているはずだと思い込んでいた。秋分から冬至にかけての位相はπ//2で立冬がπ/4だ。そうならば今ごろの日の出時間は午前6時(秋分)と午前7時(当時)の間の1/√2の午前6時40分ごろになるはずだが,実際には午前6時20分ごろ。もしかして,三角関数ではない?

小学校のころ緯度と太陽高度の関係ははさんざん勉強したはずだ。小学校5年生の理科では,春夏秋冬の良く晴れた一日が太陽高度の観察日にあてられた。授業中でも1時間毎に運動場に出て,画用紙をおいた画板に立てた棒の影の長さを記録するのだ。それでも昼の時間が1年でどう変わるかの定量的議論には至らなかった。小学生には計算できません。


図:昼夜時間計算のための座標

地球の自転軸を$z$軸とする$xyz$座標系を考える。$x$軸$\phi$方向すなわち$\bm{s} = (\cos\phi, 0, \sin \phi)_{xyz}$から太陽光線がくるものとする。ただし,公転面に対する自転軸の傾き$\phi_0=23.4^\circ$として,$-\phi_0 \le \phi \le \phi_0$の範囲で振れることになる。

この角度$\phi$は,地球の公転面を$XY$平面とした座標系において,自転軸の方向ベクトル$\bm{a}=(\sin \phi_0, 0, \cos \phi_0)_{XYZ}$と,太陽から見た公転軌道上の地球への方向ベクトル$\bm{t}=(\cos \tau, \sin \tau, 0)_{XYZ}$の内積の角度を$\pi/2$から引いたものになる。つまり,$\sin \phi = \sin \phi_0 \cos \tau$となる。


昼夜時間を求めるために,半径を1とした地球の$xyz$座標系で考える。

太陽入射光線の方向ベクトル$\bm{s}=(\cos\phi,0,\sin\phi)$に垂直な平面と地表面が交わる大円を考えると,大円上の点$(x,y,z)$は$x\cos\phi + z \sin \phi = 0$を満たす。なお,この大円より$x$軸負方向側が夜である。

緯度$\theta$の観測点は,$z=\sin\theta$なので,$x^2+y^2=\cos\theta^2$の小円上にある。さきほどの大円との交点が昼夜分界点となるので,これらの連立方程式を解いて,$(x_b,y_b)$を求めればよい。その結果,$x_b = -\tan\phi \sin\theta,\ \  y_b=\pm \sqrt{\cos^2 \theta-\tan^2 \phi \sin^2 \theta\ \ }$となる。

昼夜分境界点までの角度$\alpha$は,$\tan\alpha = \dfrac{x_b}{y_b} = \dfrac{\tan\phi \tan \theta}{\sqrt{1-\tan^2 \phi \tan^2 \theta\ \ }}$となる。
$\alpha$はラジアン単位なので,$\alpha \cdot \frac{180}{\pi}$で度になおし,さらに $\frac{24}{360}$をかけて,$\alpha \cdot \frac{12}{\pi}$が時間単位の値だ。この2倍が12時間からの夜時間の余剰部分に相当する。
これから夜時間の長さは,$T= 12\Biggl\{1 - \dfrac{2}{\pi} \tan^{-1}\Bigl( \dfrac{\tan\phi \tan \theta}{\sqrt{1-\tan^2 \phi \tan^2 \theta\ }} \Bigr) \Biggr\}$で与えられる。