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2022年9月8日木曜日

教育データ利活用ロードマップ

学習eポータル & 教育ダッシュボード からの続き

2022年1月に,デジタル庁,総務省,文部科学省,経済産業省によって,教育データ利活用ロードマップがつくられた。公表時に炎上したらしく(もう忘れている),中室牧子が弁明していた。

あらためてロードマップを眺めてみると,どうもすっきりしないのだった。理念が明確でないままに,細かなことを書き込みすぎていてちょっと食傷気味となる。さらに,この大きな利権めがけて,総務省や経済産業省まで手を突っ込んできているので,これが混乱に更に拍車がかかる。

わかりやすかったのは,ロードマップの2022年迄の短期目標の部分だ。

・教育現場を対象にした調査や手続が原則オンライン化
・事務等の原則デジタル化など,校務のデジタル化を進め,学校の負担を軽減
・インフラ面での阻害要因(例:ネットワーク環境)の解消
・教育データの基本項目(全国共通の主体情報)が標準化

ここまではよい。その後はログ収集やPDS(Personal Data Service?)が中心テーマとなって,とにかくデータを標準化して蓄積すればよいという思いが先走りすぎている。この情報の網によって個人(児童・生徒・保護者・教員)はあるいは学校はがんじがらめに搦め捕られそうだ。あるいは,どうせ中途半端なシステムができるので,心配しなくていいということか。

2022年9月6日火曜日

学習eポータル

教育データ標準からの続き

教育データの標準化の具体的な活用イメージとして,文部科学省CBTシステム(MEXCBT: Computer Based Testing)を含む学習eポータル があげられている。

MEXCBTは,児童生徒がコンピュータからオンラインで問題演習ができるシステムだ。家庭からも学校からも使え,選択問題や短答式問題は自動採点される。システムの開発は文部科学省が事業者連合コンソーシアムに委託していてすでにプロトタイプが稼働している。

MEXCBT用の問題は,国や地方自治体などの公的機関が作成したものを使う。教師が指定した問題を児童生徒が解いて,その結果は自分と教師が確認できて,フィードバックする。子どもが自分で勝手に問題を選んで自由に学びを進めていくようにはできていないのかもしれない。

さて,その学習eポータルだ。日本の初等中等教育に適した共通の学習管理機能を備えたソフトウェアシステムであり,(1) 学習(学習リソース)の窓口機能,(2) 連携のハブ機能(シングルサインオン),(3) MEXCBTへのアクセス機能,の3つの機能を果たすことになる。

いまは亡きインターネットと教育(1996-2002)や教育情報ナショナルセンター(NICER: 2001-2011)の考え方をリニューアルして再現したものだ。前者は自分の個人的な取り組みを越えられなかったので仕方がないが,文部科学省が国立教育政策研究所を使って鳴り物入りで立ち上げた教育情報ナショナルセンターがあっという間につぶれてしまったのは残念だった(再立ち上げも失敗)。

そのデータは,GENES 全国学習情報データベース(学習ソフトウェア情報研究センター)と教育の情報化支援サイトNICER-DB(パナソニック教育財団検索システム研究会)に引き継がれることになっていたが,前者は廃虚と化し,後者に至ってはドメインがマイナー業者に乗っ取られてしまった。

さて,この度の学習eポータルはその轍を踏まずに離陸することができるのだろうか。昔,芳賀さんといっしょに活動していた内田洋行の伊藤博康さんがリーダーとなって,一般社団法人ICT CONNECT 21の学習eポータルSWGが取り組んでいるので,まあ前回よりはましなのかもしれない。

学習 e ポータルの仕様は、検討と実 証を繰り返しながら、学習 e ポータル標準モデルとしてまとめられる。MEXCBT は国が開発、 運営を担うのに対し、学習 e ポータルは複数の民間企業が標準モデルに基づいて開発、提供し、小中高校などの教育機関がその中から選択して利用することを想定している

なるほど,そういうことか。さらに,MEXCBTとの連携は必須要件だが,デジタル教科書やデジタル教材との連携は推奨となっている。しかしながら,LRS(Learning Record Store)学習履歴は必須とされているのだった。各社が開発して提供する学習eポータルはなんらかの形で認証されることになるのだろうか?

中央集権的なデータセンターモデルから,複数のポータルが統一規格のもとに連携するモデルに進化しているが,それでも話は面倒にみえる。やはり,パーソナルAIアシスタントを子ども・保護者・教師一人一人が所有して,必要な情報や協働はこのAIアシスタントが探し出して持ってくれるというシステムを目指したほうがいいのかもしれない。GIGAの次のステージだ。

[1]学習eポータル標準モデル(2022.2.22,Ver. 2.00,ICT CONNECT 21 学習 e ポータル サブワーキンググループ)
[2]文部科学省CBTシステム運用支援サイト(文部科学省)
[3]子どもの学び応援サイト−学習支援コンテンツポータルサイト(文部科学省)
[4]STEAM ライブラリー(経済産業省・未来の教室プロジェクト
[5]EdTEchライブラリー(経済産業省・未来の教室プロジェクト
[6]学習eポータルまとめサイト(ICT CONNECT 21)

2022年9月5日月曜日

教育データ標準

GIGAスクール構想からの続き 

まず復習。GIGAスクール構想とは,2019年から文部科学省が取り組んでいる施策である。GIGAはGlobal and Innovation Gateway for All の略であり,全国の児童・生徒に一人一台のコンピュータと高速ネットワークを整備しようというものである。2021年3月には,全自治体の96%以上で整備が終っており,いちおう小中学生一人一台という目的が完了したということらしい。

高等学校については,2022年度中に1学年は100%,2024年度までに高校生一人一台を実現する目標となっていて,すでに半数の府県では100%が達成されている。まあ,小中学校も含めてそれらがうまく機能しているかどうかはまた別の話。

これは25年前の100校プロジェクトを嚆矢とした学校へのインターネット導入の動きに匹敵する大きな変化には違いない。ようやくあのころの理想が具体化できる条件が整いつつあるということか。

ところで,この構想を支えるために,教育データの標準化が取り上げられている。教育データを,(1) 主体情報(児童生徒・教職員・学校の各属性等の基本情報),(2) 内容情報(学習内容の情報),(3) 活動情報(生活活動,学習活動,指導活動などの情報)に区分する。これらをすべて網羅的に扱うわけでなく,データの相互運用性を図るという観点で全国的に統一が必要なものに限り,その使用を強制せず,政策的に誘導するというものだ。

教育データ標準として,すでに次のようなものが定められている。学校コード,教育委員会コード,学習指導要領コード。学校は,位置情報(緯度・経度・標高)や時間情報(開設年月,統合年月,廃止年月)がほしいところだ。教育委員会には事務局の住所・連絡先すらない。学習指導要領コードは,NDCとの対応があれば・・・というか,知識を網羅的にコード化することはそもそも可能なのだろうか。普遍性に欠ける学習指導要領の文章を切り出してコード化するというのはどうにも気持ちが悪い話である。

[1]StuDX Style(文部科学省)GIGAスクール構想の実践事例

2022年7月27日水曜日

WEB5

Web3からの続き

前回はそもそものWeb3の説明を省いてしまったが,自分でもよくわからないし,調べてみてもまったくピンと来ない。なんとなくブロックチェーンのことかなと霧のかかった頭をひねるだけ。ところでTwitterでは次のような的確な説明があった。

@4niruddha:私からは今のWeb3界隈って,こんな風に見えているんですが,皆さんはどうでしょうか?

@shimy_net:Web2は情報技術屋が作ったものでWeb3は情報商材屋が作ろうとしているもの

@ito_yusaku:インターネットを検索すれば有益な情報が手に入ったのがWeb2.0の時代,インターネットで検索しても書籍を買ってもゴミのような情報しか手に入らくなった時代がWeb3

@AkioHoshi:
(1) 2014年版の延長のブロックチェーン技術文脈のWeb3
(2) 2021年版の投資文脈のWeb3
(3) 日本語圏の劣化版Web3ナラティブ
(4) ジャック・ドーシーのWeb5

@seagetch:Web3,というか分散技術は,既に社会の要請からして時代遅れだと思うんだよね…プラットフォーマーが居ない分散技術は1回ポストした情報を第3者が消すための(社会的活動を含む)コストが圧倒的に高くて,プロパガンダやフェイクがこれだけ蔓延っている時代にとても運用に耐えうると思えない

 

なお,ジャック・ドーシー(1976-)は2006年にTwitterを立ち上げた人であり,WEB5(=WEB2+WEB3)を提唱している。まあ,いずれにせよ,Building an extra decentralized web that puts you in control of your data and identityというスローガンで,政府や企業には対抗できたとしても,人間の悪意の群れにどう対応するかについては答えが出ていないような気もする。

そもそも,ティム・バーナーズ=リー(1955-)のセマンティック・ウェブはどこにいったのよ。


図:単なるスローガン(WEB5から引用)

2022年7月26日火曜日

Web3

今様の事どものめづらしきを,言ひひろめ,もてなすこそ,又うけられぬ。世にことふりたるまで知らぬ人は,心にくし。(徒然草 第78段の冒頭から)

というわけで,Web3(ウェブスリー)がバズっている。この流行り概念を解説するために,インプレスが出版した「いちばんやさしいWeb3の教本(第1章と2章が無料公開)」の内容があまりにもでたらめだったので,総スカン状態になって,ついに回収騒ぎまで発展した。

そもそものはじまりは,Web2.0(-2004-)であり,これが更にバージョンアップした概念として,Web3.0改めWeb3(小数点をつけないほうがモダンらしい)が喧伝されたということになる。このキーワードは,××2.0という表現の始まりであり,その後のSociety5.0などに続く悪癖の走りであった。

人のことはいえないもので,2006年から2008年にかけて「デジタル教材活用支援のための科学教育ポータルサイトのデザイン」で科研費を獲得した際のキャッチフレーズにWeb2.0を使わせてもらった。自分が書いた報告書によれば(記憶のかなただけれど)

科学教育におけるICT活用を推進するため,デジタル教材の学校教育現場での活用を促す「科学教育ポータルサイト」を開発する。このサイトは,Web2.0とよばれるウェブサービスの次世代技術(例えば,XMLを用いた利用者による情報分類,AJAXによるスムーズインターフェーズ,PageRank的なウェブページ評価,分散されたロングテール情報の収集,Wikipedia的な参加者信頼,RSS/ATOMによる情報通知システム,CMS/BLOGによるサイト管理の効率化)などの中から必要な技術を採用して,学校教員が利用しやすい,参加しやすい科学教育のためのポータルサイトのデザインを追求するものである。

という謳い文句だったが,Ploneベースのサイトにしたため,結局継続的に運用できなかった。


図:Web2.0のコンセプト群(Wikipediaから引用)

2022年7月9日土曜日

KCN 光1G

フレッツ光 vs eo光 からの続き

あっというまに,9ヶ月過ぎていた。マンションの春の理事会で,KCNのインターネットが光に 切り替わるというアナウンスがあり,5月ごろに受付が始まった。早速申し込んだところ,6月に訪問調査があり,7月8日に開通することになった。

これまでは,TVの共聴同軸ラインから分配したものをモデム経由で無線ルータ(AirMac)に繋いでいた。今回は,NTTの電話線の配管に光ファイバーを通して,電話線の出口あたりからONUに入って無線ルータに繋げることになる。そこで,AirMacの設置場所も電話機の位置に移動するわけで,やや面倒なことになったのだが,ONUはとてもコンパクトだったので,壁に取り付けるまでもなかった。

光ファイバーの引き込みとONUへの接続に1時間ほどかかって作業が終り,KCNさんの端末では接続が確認された。ただし,クレームを避けるためか,速度測定はしてくれなかった。

入線担当グループはMacの設定についてはちょっと不安があるようで,KCNの別担当が工事終了後にくることになっていた。それまでに,自分でAirMacに結線して確認したところ,特別な設定なしに問題なく繋がった。肝腎の回線速度だけれど,下りが150Mbps,上りが100Mbpsくらいだ。下りは多少改善された程度だが,上りは20倍程度になったので,zoom会議も安心だ。

KCNの設定担当者がきても特にすることはなく,専用端末を有線でつないで,下り180Mbpsと上り210Mbpsでていますということで終了した。AirMacもかなり古いWifiルーターなので,これを取り換えてもいいかと考えていたが,有線でこの程度ならばあまり御利益はない。

ベストエフォートだし,月々の回線料も安くなったので,まあよしとしよう。問題は夜間の混雑時にどうなるかだ。うちが,マンション内の光回線引き込み工事第1号だったので,今週くらいはまだましかも(P. S. とりあえず夜間のスピードダウンは解消された)。


図:メカニカルストライプの構造(FUJIKURAから引用)


P. S. (7/13/2022 10:00)  ONUから直接Ethernetで接続しようとしてうまくいかず。手動でIPアドレスなどを設定したが端末のネットワーク設定でグリーンランプまでいくがだめ。PPPoEで繋げとかあるけれど,PPPoEはサポートしていないという記述もあり,ONU側はそもそもルータが繋がることしか想定していないのか。そういえば,AirMacの有線ポートが3つあったので試してみると,下り450Mbps,上り380Mbpsを出していた。問題はAirMacの無線の規格が遅いということか。

P. P. S.  たぶん,手元のAirMac(TImeCapsule 802.11n 2nd)は,2009年の2TBモデルではないか。つまり,802.11 a/b/g/n に対応している。いまどきのWiFi-5 802.11acとかWiFi-6 802.11ax 対応にすればもう少し改善されるかもしれない。

2022年7月4日月曜日

KDDIの通信障害

 7月2日午前1時35分からau携帯電話などKDDIの回線に通信障害が発生して,最大3900万ユーザに影響が及んだ。障害発生から62時間後の7月4日午後15時00分ごろに全国でほぼ回復したが(輻輳制御を終了した),全面的復旧のアナウンスは7月5日の夕方になりそうだ。

2018年12月6日にソフトバンクの4GLTEで通信障害が発生したときは3000万ユーザに影響があり,障害継続時間は4時間半程度だった。だから,iPhoneがつながらなくて困ったという記憶があまりない(このblogを始める2日前のことだから記録がないだけか)。

KDDIの社長と専務による説明記者会見が,事象収束前の7月3日に実施され,2時間のYouTubeライブとしてアップロードされていた。高橋誠(1961-,横浜国立大工学部金属工学科)KDDI代表取締役社長,吉村和幸(1965-,東京工業大工学部情報工学科)KDDI取締役執行役員専務・技術統括本部長の二人が質問に回答していた。この会見における回答者の質の高さや誠実さについて,ネットでの評判は非常に良かった。

いくつか,気がついたこと

(1) NHK,朝日新聞など主要メディア記者の質問力回答理解力はかなり低い。
(2) 日経コンピュータ,日経BP,一部フリーランスの質問は非常に的確である。
(3) 音声通話用のVoLTE交換機に繋がれたルータを旧から新に切り替えたところ,音声通話に不具合が発生し(ソフトウェア上の問題),ルータを切り戻したが輻輳がはじまった。
(4) この輻輳が,加入者データベースの更新に影響してデータの不整合が生じた。
(5) VoLTE交換機/ルータは全国18台の1台に障害(→ 6台切り離し,9台で運用可能な容量)。協調運用しているので影響が広がったかもしれないが,詳細は分析中。
(6) iOSでは音声がつながらなくてもデータ通信はOKだったが,アンドロイドでは音声がつながらないとデータ通信も接続できない仕様のものが多かったようだ。
(7) 5GやIoTの設備導入が進行していることとは直接関係がない。

なお,データ通信ができても2段階認証でSMSからパスコードを入力しなければならないサービスが多く,VoLTE側が使えないことで結局ダメということが多々あったらしい。

日本ではこのような障害が,2年に1度程度発生しているけれど,公衆電話の撤去には歯止めが必要かもしれない。あるいは,このような障害時に,緊急番号だけは加入者データベースの認証なしでアクセスできる(ただしユーザのログは確保する)ということは可能なのだろうか。

P. S. 7月5日 15:00 24時間トラフィックが先週と同水準であり,完全復旧が宣言された。
P. P. S.  7月5日の2回目の技術担当責任者2名の記者会見では,ローミングの可能性についての質問が多かった。検討中とのこと。総務省はKDDI苛める前にその音頭をとったらどうか。

2022年5月31日火曜日

スターリンク

 Twitterに流れきた GIFアニメーションが人工衛星コンステレーション(星座)を表わしているという。何これ,イリジウムではなかったの,と調べてみると自分の知識が古いまま更新されていなかった。

イリジウムは,高度680kmの軌道に77個の衛星を投入して構成する衛星電話のシステムで(その後66個に),原子番号=電子数77個の元素イリジウムにちなんで命名された。1998年にサービスが開始しているが,2000年にはサービスが終っている。短命だったのだ。

2009年には,イリジウム衛星の一つがロシアの軍事通信衛星と衝突してスペースデブリをまき散らした。2015年には66個の衛星をすべて更新する計画であるイリジウムNEXTがスタートして,現在進行中らしい。

問題のGIFアニメーションの方は,イーロン・マスクスペースXが運用している衛星インターネットサービスのスターリンクだった。2020年に運用が開始しているが,高度650kmに1600基,高度1150kmに2800基,高度340kmに7500基を順次打ち上げ,総数12000基の人工衛星を2020年代中期までに展開する。日本でのサービスは2022年から提供される予定だ。

先週,5月24日が最初の打ち上げから3年目に当たり,49回の打ち上げで2651機が投入され246機が落下している。問題はスペースデブリと光害だ。彗星の長時間露光写真にたくさんの衛星の航跡が重なって写った画像があったけれどどうなのだろうか。


図:スターリンクのイメージ(agenaさんのtwitter記事から引用)

(注)元素イリジウム(iridium)の語源は,イリス(iris)だった。エリジウム(elysium)とは関係なかった。

2022年5月19日木曜日

個人送信(1)

国立国会図書館の「個人向けデジタル資料送信サービス(略称:個人送信)」が5月19日から開始された。

国立国会図書館のデジタルコレクションは,約10年前に,「国立国会図書館デジタル化資料」として古典籍資料(貴重書等),図書,インターネット資料を提供開始したのが源流となっている。その後,博士論文,録音映像資料,や様々なタイプの資料が加わってきた。

著作権など権利関係に問題がないものは,すでにインターネット公開されている。著作権保護期間が満了していない資料や著作権の確認が完了していない資料のうち,絶版などで入手困難なものは,これまで図書館送信資料として,準備の調った最寄りの図書館で閲覧することができた。

今回は,このカテゴリーに個人向けデジタル化資料送信サービスとして加わる。国立国会図書館に登録した個人が,図書館を経由することなく,入手困難資料約153万点を直接見ることができるようになる。ただし,当面,PCやタブレットでの閲覧に限られており印刷することはできない。

条件として,日本国内に居住していることと面倒なハードルをつけていた。さらに,国立国会図書館の利用者登録が必要ときた。早速申し込んでみると,本人確認書類として免許証,保険証,マイナンバーカードなどから2点が要求された。なんとかクリアすると,分かりにくい登録番号が振られ,確認終了まで5営業日待てと。これだから日本の公共セクターのデジタル化は終わっている。

とりあえず仮登録したところで,アクセスできるよとの指示があるが,パスワードではねられてしまう残念な仕様になっているようだ。パスワードを変更してみたが(できた),やはりアクセスできない。「ダメなものはダメ(オーケー,グァン姉妹)」ならば初めからそう言って下さい。

[1]個人向けデジタル化資料送信サービス 利用規約

2022年1月16日日曜日

Cityroam

 eduroamは,欧州の教育研究のためのネットワークコミュニティGEANTで開発された,高等教育機関や研究機関のための無線LAN相互利用のための仕組み(ローミングサービス)である。日本では,国立情報学研究所が運用している。

大阪教育大学もeduroamに参加していて(国内では323機関が参加),cc.osaka-kyoiku.ac.jpアカウントを持っている自分もその恩恵を受けることができる。といっても,他の大学や研究機関を訪問する機会はほとんどない。2016年からは初等中等教育機関にも対象が拡大され,大阪教育大学の附属学校10校が国内の最初の事例となった(尾崎先生と佐藤先生のおかげだ)。なお,初等中等教育機関については,学校無線LAN連携コンソーシアムによる実証実験という形で進んでいくことになる。

Cityroamとは,「プロバイダや電話会社,学校またはゲスト用のアカウントを用いて,各種施設や市街地において安全で自動接続可能な公衆無線LANサービスを実現する,無線LANローミング・フェデレーション(連合)です。利用者は,ひとつのアカウントを持つだけで,国内外の様々な場所でシームレスに,公衆無線LANを利用できます」というのが,その説明であり,eduroamもcityroamを構成する認証基盤の1つになっている。つまり,eduroamアカウント(自分の場合は,大阪教育大学のアカウント)があれば,cityroamの範囲で,自由に無線LANをつかえるようになる。

いまでも,FreeWifiのスポットは沢山あるのだが,そのたびにユーザ登録が必要であり,シームレスではない。また情報通信の安全性についても必ずしも保証されていない。おまけに,G4でつながっているときに,softbankのFreeWifiスポットに割り込まれて作業が中断したりするので困る。

さて,cityroamはどこまで使えるかというと,残念ながらまだまだだ。奈良県には0ヶ所,大阪府で3ヶ所しかないのだから。


図:大阪府の cityroam スポット(cityroamのgoogle mapから引用)

2021年12月5日日曜日

ヨビノリ(3)

ヨビノリ(2)からの続き 

教育系YouTuberにならない方がいい7つの理由」というタイトルで,東大駒場祭でヨビノリたくみの講演があった。2017年から教育系ユーチューバとして,予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」というチャンネルを公開し,4年半になった。現在までに83万人が登録し,動画本数は700本,総再生回数が1.5億回,1日平均20万回再生に達している。

その7つの理由だが,(1) 視聴者の母数が少ない,(2) ライバルが多い,(3) 撮影がシンプルにつらい,(4) ミスが許されない,(5)  誰かに嫌われる,(6) 生活できない,(7) 仕事とプライベートの境目がなくなる。というものだった。受験に役立つ教育系ユーチューバの主なチャンネルだけでも120あって,そのうち収益が上がって運営できているのは5本程度だとのこと。

YouTubeは既にレッド・オーシャンになっているが,VR(メタバース)はブルー・オーシャンなのだろうか。そこで教育系のVRチャンネルが成立するのだろうか。思い至ったのが,情報のストック(リソース)情報のフロー(コミュニケーション)の違いだ。1990年代半ばにインターネットの商業化が始まって,インターネットの教育利用が話題になったときに,このキーワードで説明することがよくあった。

YouTubeはその基本機能が動画コンテンツ(リソース)の蓄積と配信であり,VR Chatのようなメタバースの特徴はアバターを通じたコミュニケーションの場というところにあるのではないか。メタバースにおける講義を収録したものがメタバース上で簡単に使えるならば,現在のYouTubeコンテンツと同様に扱えるのかもしれない。しかし,それはYouTubeと本質的には違わないような気がする。


2021年10月12日火曜日

フレッツ光 vs eo光

 最近,自宅のネットワークが遅いというクレームが上がってきている。コロナによる在宅勤務が進んでいるからなのか,なんとなくトラフィックが混んでいるような気がする。より大きな問題は,現在利用しているKCNの集合住宅向けインターネットサービス「Kブロードマンションプレミアム320特割」が下り最大320Mbps,上り最大10Mbpsのベストエフォートサービスであることだ。非対称はいいとしても上りが遅すぎるので,まともなビデオ会議が成立しにくいのだ。

ところでマンションの玄関にはフレッツ光(プラン2)とeo光の案内が貼っている。これでFTTHを実現すれば,速くなるんじゃないかなと思ったがいくつか懸念事項がある。(1) ほんとに速くなるのか,(2) アクセスポイントの機器(ONU)はどこに設置されるのか,(3) KCNのメールは使えるのか,などなど。

(1) フレッツ光eo光遅いを組み合わせて検索すると,出るわ出るわ,こりゃダメだ。前者はユーザが多すぎて,分岐が多いことが理由として挙げられている。マンションの共用部の光スプリッタあたりは1Gbpsと書いてあるが,これもベストエフォートなのでどうだか微妙だ。eo光の方は電話してみると,VDSL上下100Mbpsとのこと。なーんだ,紛らわしい。

(2) アクセスポイントが,現在の同軸線(TV)と電話線(NTT)のどちらあたりになるのかを知りたくてフレッツ光(NTT)のサポートに問い合わせたが,対応の官僚的なこと甚だしで,何にもヒントを教えてくれなかった。ウェブサイトもeo光の方が断然親切なのである。これなら同じNTT回線でもソフトバンク光にしたほうがマシかも。

(3) KCNのメールであるが,KCN側にフレッツ光ネクスト対応プランがあるので,これを使えばなんとかなる。最悪は,別プロバイダ回線でもアクセスできるようにKCN側に問い合わせて設定すればいいはずだが面倒だ。KCNのTV共同視聴設備点検に来たお兄さんに聞いてみたが,弱小KCNではマンションのFTTHになかなか手が出せなさそうだ。

(4) 別の解はないかと,Nuro光を調べたが,残念ながら天理市はサービス対象外。ふと,SoftBank Air はどうかと思ったら,これが思いのほか良さげである。いちいち無線ルータを買わなくてこれ一つで済むし,中継機も使える。問題は,天理市のこの辺りが最大200Mbps程度までであり5Gも使えないこと(これだから田舎は悲しい)。ソフトバンクの5G次第でこれも今後の選択肢になりそうだ。

いずれにせよ,現在のKCNのインターネットは2年縛りで継続されているので,解約できるのは,オリンピック開催年(2000+4n)の7月から9月の間だけである。さもなければ,8800円の解約金が取られるという寸法だ。


図:現在のKCNのKブロードプレミアム320の回線速度(朝7:00)

2021年10月2日土曜日

iPhone

 携帯電話からの続き

まだMacWorldExpoがあったころ,2007年の1月9日にスティーブ・ジョブズが iPhone を発表した。これですけどね。ほとんど感動ものでした。

さて,当時の54歳の自分はこのころ何をしていたのだろう。インターネット狂想曲がおさまって5年たち,子供達も大きくなって写真もほとんど残っていない時期だ。研究室の分属学生も少なかった。過去の手帳をみてもほどんど白紙(手帳を失くして買い替えた年だろうか)。

日本では,孫正義のおかげでソフトバンクでiPhoneが買えるようになったのが,2007年6月の米国の発売から約1年後の2008年の7月11日であり,そのちょうど1ヶ月後の2008年8月11日に天理市役所近くのソフトバンクショップで購入したのが,iPhone3Gだ。

それまで使っていた携帯電話と最も違っていてよかったのが,GPS機能のついた地図だった。また,さまざまなセンサーを駆使して視覚・聴覚・触覚に訴えるアプリケーションが次々と登場するのも珍しくて,卒業生との飲み会で散々自慢したのだった。通勤時にはずっと手に持ったままだったので,平端駅で電車から降りるときに足を踏み外したくらいだ。

翌2009年にはiPhone3GSが発売され,ハードウェア機能が大幅に強化されたため,早速機種更新に走った。これでようやく実用的にも使えるマシンとなったような気がする。院生の市川君と「携帯情報端末の加速度センサーによる実感をともなった運動の理解」を書いたのもこのころだ。今では,誰もが当たり前のようにこれを使える環境が整っている。ただ,GIGAスクールの時代であっても,必ずしも体系的かつ全面的にこうした授業プランが展開されているわけではない。

2年後の2011年のiPhone4Sからはホワイトモデルを買うようになった。ここに至ってようやくiPhoneフィーバーがおさまってきたと同時に,電車で周りを見回すとみんなiPhoneを持っているという時代がやってきたのだった。そして,2015年末か年明けにiPhone6Sを買ってしばらくしたころには,必要な機能がほぼ充足されると同時に革新的な新機能の登場も少なくなり,自分の中のiPhone熱も冷めてしまった。新機種に対応しようという気分がなくなったのである。もう歳なのであった。

2020年にiPhone SE2に更新した話は既に書いている。あと何種類の端末と出会うことになるのだろうか。


写真:この頃が一番よかったのか?iPhone 4S(Wikipediaより引用)

2021年10月1日金曜日

携帯電話

 2008年8月11日に最初のiPhoneを手に入れるまでは,普通の携帯電話を使っていた。どの機種だったか既に記憶が薄らぎ始めているので,記録しておこうとしたが,必要な情報に辿り着くのがなかなか至難の技だった。

ケータイを買おうと決めたのは,i-Modeが始まったのがきっかけだった。これでi-Modeの教育コンテンツサイトを作れるならば価値があると思った。仕事帰りに,自転車で24号線沿いのドコモショップまで走ってパナソニックのP502iを入手した。ところがなぜかP502iの情報があまり見つからないのだ。

たぶん,2000年の3月ごろから関西で先行販売されていたようだが,しばらくたった2000年から2001年にかけての冬に購入したのではなかったか。モノクロディスプレイで,幅43mm×奥行き130mm×高さ16mm,重量は約69gのコンパクトなストレートタイプ。本体色はプレシャスブルー(紺色)を選んだ。


写真:P502i HYPER プレシャスブルー(インプレス ケータイWatchから引用)

2000年代の前半は,次々と新しい携帯が登場する新製品ラッシュの時期だった。カメラが搭載されディスプレイがカラー化されて,画面のタッチセンサーを除いて,今のスマートフォンのベースが出来上がった。

NTTドコモ向け端末では,NECのNシリーズがよくなってきたのでこれに乗り換えることになる。2年後の2002年11月に,N504iSが登場した。当時主流の折りたたみ式になり,31万画素のCMOSカメラが搭載され,2.5インチ163×216ドットのTFTカラー液晶画面になった。丸くてぽっちゃりしたボディだった。


写真:の1インチサブディスプレイ面(Wikipediaより引用)

これは,当時のほぼ必要な機能を備えていたので長く使った。次に機種変更したのは,5年後の2007年11月に発表されたN905iμである。薄型化を図るためにN905iよりは若干機能が絞られていたが,デザイン性からこれに決めた。残念ながらiPhoneが2008年夏に始まったので,これは娘に譲ることになった(のではなかったか・・・)。


写真:N905iμの全体像(インプレス ケータイWatchから引用)


2020年11月10日火曜日

デジタル庁創設の課題

 日本経済新聞に掲載されていた記事。前回掲載された(上)は東大の越塚登の論で毒にも薬にもならない話に見えたので読まなかった(ネットで読み直してもやはりスカだった)。本日の(下)は,明治大学の田中秀明廉宗淳の「問題解決の実行計画を」というもので,楠正憲も指摘していたように,日本が参考にすべきは同様の社会規模や制度を持つ韓国であるという線に沿った議論になっていた。韓国の電子政府関係組織なども丁寧に紹介されており,久しぶりに納得できて読みがいのある論説だった。

正確な状況分析ができていないにもかかわらず政権浮揚の手段としてデジタル庁を持ち出した菅義偉と利権にまみれたミーハーの平井卓也が進める政策がろくなものになるはずがないような気がする。科学的・合理的な思考から程遠いところで局所的な利権を組み込むために汲々として全てが進められている日本の状態では,とてもではないが韓国に太刀打ちできそうにない。コロナ対策もしかりである。安倍内閣ではこれにネトウヨフレーバーがトッピングされており,それは今も色濃く残ったままである。

日本の行政のオンライン利用率が先進国最低で国民が便利さを感じていない理由として3点があげられている。(1)戦略や施策の評価,問題と原因の分析がないこと,(2)システムに合わせて業務や法手続きを見直さず,現在の業務のまま進めようとすること(行政の無謬化),(3)組織が縦割り打破をできていないこと,出向2年しばりで職員の専門性が軽視されキャリア形成を阻害していること(博士号を持ったスタッフがどれだけいるのか)。

この本質的な問題や課題に立ち向かわないデジタル庁は,いまのガラクタの組織の上に覆いかぶさり,新たな利権の繋ぎ変えによってさらなるスパゲッティシステムを生み出すだけかもしれない。エストニアをモデルとして語っている限り話は始まらない。

2020年6月29日月曜日

iPhone SE(1)

なにかおかしいように思い,iPhone 6Sをバッテリケースからはずしてみると,おなかが割れていた。たぶん,内蔵バッテリが膨らんだのだと思う。1,2年前にも同様の症状があったような気がしたけれど,記憶の霧のかなたである。

そんなわけで,次の機種として iPhone SE (第二世代)をいろいろと調べてみた。CPUはA13 Bionicの6コア3GBでフロントカメラが7Mピクセルになっている。外側のカメラは12Mピクセルなので変わらないのか。画面サイズは4.7インチで1334×750のまま。サイズも0.1〜0.2mm程度大きくて,138.4×67.3×7.3mm,重量は5gふえて148g。TouchIDのボタンは残っているので,ほとんど現状と違和感ないのではと思われるがどうだろう。イアホンミニジャックはなくなったのだけれど,lightning端子のEarPodsはついてくる。

問題はアプリや環境の移行だけれど,クイックスタートが使えるとある。いままで,使えなかったApple Payに対応している。また,NFCにも対応している。このあたり,何かおもしろいことができそうな気もするけれど,どうかな。iPhone 6Sはかなり使ってきたような気がしたけれど,2016年の正月に何故か香里園のソフトバンクショップで買っているので,まだ4年半だった。MacBook Pro は2012年のモデルなので,こちらはもう8年経っている。新しいOSが走らないので,むしろこちらを何とかしたかったのだけれど,むむむ。


追伸写真:バッテリケース上のおなかが割れた iPhone 6s (2020.7.4撮影)

2019年12月15日日曜日

GIGAスクール構想

令和元年度の補正予算(第1号)は,Ⅰ 災害からの復旧・復興と安全・安心の確保(2兆3千億円),Ⅱ 経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援(9千億円),Ⅲ 未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上(1兆1千億円)のなかで,Ⅲ 2. Society5.0時代を担う人材投資、子育てしやすい生活環境の整備(3千億円)のなかに,GIGAスクール構想の実現(2,318億円=公立2,173億円+私立119億円+国立26億円)が盛り込まれた。校内LANと電源キャビネットと端末の費用であり,補助率は1/2だ。

小中学校における1人1台のPC導入とそれにかかわる高速大容量通信ネットワーク環境整備のための予算であり,2018年度からの教育ICT環境整備5年計画のなかに位置づけられるようだ。

一方で,令和2年度の概算要求には,GIGAスクールネットワーク構想3年計画の初年度として,375億円が計上されていた。全国3.6万校すべての学校に10Gbpsの無線LANを整備するため,1/2の補助を行うというもの。

うーん,日本の学校のICT活用度は世界最低水準ではあるけれど,この方向性でよいのかどうか。1人1台のPC導入形態は保留するとしても,ネットワーク整備はいずれにせよ必要なのかもしれない。

[1]GIGAスクール構想の実現について(文部科学省)
[2]教育の情報化に関する手引き(令和元年12月)(文部科学省)