2019年8月31日土曜日

龍雄先生の冒険

昨日注文した「龍雄先生の冒険 回想の内山龍雄:一般ゲージ場理論の創始者(窮理舎)」が早速到着した。1994年に私家版として発行され,25年後に内山研究室ゆかりのひとたちが加筆してできた新版だ。

前半が「先生と犬印の缶づめ」というタイトルで,1-2ページ以内のエピソード80話から成り立っている。後半は「耳に残る先生の怒鳴り声」というタイトルで,内山先生の書かれたいくつかの文章(未完のものを含む)があり,最後に砂川重信先生の「さようなら内山先生」という追悼文がきている。

内山研の人々が著者なので,だいたいはお顔が浮かぶか,お名前を耳にしている。斉藤武先生には3回生の量子力学を講義していただいたし,その演習は今回,直接登場されていない国正東作さんだった。細谷暁夫先生は助手か講師の時代で,声をかけられたこともある。先輩の重本和泰さんは隣の研究室の先輩として存在感を発揮されていた。

内山先生には4回生の時の相対論と素粒子論の授業を担当していただいた。大学院に進学して,自分がD1からD2(1978-1979年度)のときに理学部長を務められ,1980年の3月に停年退官されている。M1のときの修士論文発表会では,内山研のH先輩に大きな雷が落ちるのを目撃していたので,今年はどうなるのかとびくびくものだった。しかし,ちょうど理学部長になる直前でお忙しかったのか,自分の発表のときにはたまたまいらっしゃらなかった。伊達宗行先生のやさしい進行で無事に発表は終了したが,よかったのかわるかったのか。

内山先生の大音声はときどき聞こえてきたが,直接お話した機会はごくわずかである。1つは,大学院入試の時で,内山先生,村岡先生のチームの部屋だったか。村岡先生の14Nのスピンと統計の話はちゃんと答えられたが,内山先生の質問はゲージ変換についてだった。電磁場中のシュレーディンガー方程式を書かせ,ゲージ変換でこの方程式がどうなるかを述べよというものだった。ゲージ不変だとは思ったけれども,示すことはできなかった。

もう1回は,附属図書館のアルバイトをしていたときの事件と関係がある。D1のときだったろうか。時間外窓口の担当と図書目録カードの整理が仕事で,週2日ほど夕方2Fのデスクにすわっていた。ある日,係長がトイレに落書きがあるので確認してきてほしいといった。差別問題にかかわるようなものだが,あまり強い印象はない。ただ,不思議だったのが,この落書きをあなたが発見したことにしてほしいといわれたことだ。実際には自分は第一発見者ではなかったが,事情がよく飲み込めずハイハイと返事してそのままにしておいた。1週間ほどしてから,森田先生が学生部屋に来て,内山先生がお呼びだという。なんだろうと思って,内山先生の教授室へ行くとその話だった。なんだかよくわからず狐につままれたようなことで,こちらもハイハイと返事して退室した。

いや,当時はこういう差別落書きが大きな学内問題に発展することは多々あったので,関係者が敏感になっていることは分かっていた。自分は学部生のときにいろいろ騒いでいたので,危ないと思われたのかもしれない。

2019年8月30日金曜日

内山先生の相対論

手元にある岩波全書の「相対性理論(内山龍雄)」は,1977年の出版である。自分がM2の年だ。同じ著者で裳華房の物理学選書の「一般相対性理論」は,1978年だからD1の年。理学部物理学科4回生で受講した内山先生の「相対論」は,特殊相対性理論がテーマだった。毎時間,熟練秘書の辻芳子さん(池田市にあった大教大の官舎近くにお住まいで,後に家族でハワイへ行ったときにもお世話になった)が,教卓にお茶を運んでくる。その後,内山先生がやおら登場してお茶を飲みながらノートなしで,黒板にさらさらと流れるようにゆっくり式を書きながら説明される。一点のよどみもない明確な論理で貫かれた名講義で,聞いているだけで相対論が完全に理解できたような錯覚が得られた。

さて,岩波全書の相対性理論であるが,序の最後で内山龍雄先生は次のように語っている。
たびたび述べるように,説明は平易でも,重要事項はほとんどもれなくとりあげてあるから,本書を読破したなら,相対性理論を理解したという自身をもってさしつかえない。本書は力学(変分原理を含む)と電磁気学の基礎知識さえあれば,必ず理解できる。もし本書を読んでも,これが理解できないようなら,もはや相対性理論を学ぶことはあきらめるべきであろう。
このフレーズは度々あちらこちらで取り上げられ話題になるが,内山先生の講義の受講者としては宜なるかなと思っていた。

しかし今回,これまで未読だった岩波全書後半の一般相対論の部分を読み始めて,この意見を撤回する。内山先生,ちょっと,これだけだと難しくないですか。たぶん「君の勉強不足だろう,わはは」で終了する。122pの接続係数 Γ の定義で,計量テンソルの g の微分は誤植された x でなく,u だと気付くのにしばらく悩み,130pの計量テンソルの性質のところでひっかかった。裳華房の一般相対性理論をみると,ちゃんと導出方法が書いてあったので,問題なく理解できたが,全書版だけこれを推理するのは自分には難しかった。

P. S. 本日は内山先生(1916.8.28-1990.8.30)の命日であり,龍雄先生の冒険(窮理舎)の発売日だった。

2019年8月29日木曜日

arXiv

arXivは,コーネル大学図書館が運用する物理科学や数理科学のプレプリントアーカイブである。1991年にLANLロスアラモス国立研究所の物理学分野のプレプリントサーバとして始まった。かつては京都大学基礎物理学研究所にもミラーサーバが置かれており,日本国内のユーザはそちらを利用するように誘導されていたが,2015年には廃止されてしまった。現在の対象分野は,Physics,Mathematics,Computer Science,Quantitative Biology,Quantitative Finence,Statistics,Electrical Engineering and Systems Science,Economics

プレプリントといえば,昔は,IBMの電動タイプライターで打った原稿をもって,大坪先生と一緒に理学部の1階にあるたいへん調子の悪い印刷機と格闘していたことを思い出すが,arXivが普及してきた頃には,もう物理(原子核理論)の研究からからはほどんど足を洗っていた。したがって,arXivとのつき合いは論文などをダウンロードして読むだけだ。

そのarXivに関連した話題が2つ。
(1)arXivとは関係ないが,Center for Open Science が運用する教育学分野のEdArXivができた。arXivに教育分野ができたのかと勘違いしていたが,それは間違いだった。
(2)arXivの行動規範,arXiv Code of Conduct が示された。フィードバックを募集中。
著者に関連するポリシーとして,モデレーションプライバシー投稿条件オーサーシップポリシーなどもある。

2019年8月28日水曜日

ニューヨーク公共図書館

平日に妻と行く映画シリーズその2。制限時間30分で,梅田スカイビルから中津まで走り,阪急宝塚線一駅のって十三の第七芸術劇場に向う。開演5分前に到着し,整理番号は56と57。平日このテーマにもかかわらず,結構お客さんが入っている。12:00から15:35の長丁場なので途中に休憩が入る。

さて,タイトルは「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス(Ex Libris: The NewYork Public Library)」で,フレデリック・ワイズマン監督の2017年米国ドキュメンタリー映画(205分)である。3時間を越えるドキュメンタリーってどんなものかと思ったが,妻の予想だったシックでクラシックな建物を中心とした紹介などではまったくなかった。

ニューヨーク公共図書館(NYPL NewYork Public Library 1895-)は,国,州,市などの行政が設置した図書館ではなく,カーネギーの寄付などをもとにした私立(だがパブリック)の図書館であり,ニューヨーク市からの公的資金と民間からの寄付によって運営される。マンハッタン,ブロンクス,スタテンアイランドに92の分館を設置し,5300万冊の図書・資料を所蔵し,年間350万人が利用している。クイーンズとブルックリンには運営が別組織である公共図書館がそれぞれにある。

映画は,レファレンスサービスでの電話のやりとりから始まったが,1つのエピソードが長い。しかもほとんどが言葉や対話の積み重ねだ。図書館のプログラムで社会的な問題についての話をする講師や,芸術的な対話の数々。黒人文化に関するショーンバーグ研究図書館も大きなテーマとして,黒人差別の問題と関って取り上げられていた。また,NYPLの運営にかかわる委員会での議論がたびたび登場する。全編の3割以上を占めていたのではないか。予算獲得の問題。インターネットアクセスの問題。図書館の教育機能にかかわる問題。ホームレスへの対応の問題。などなど,多様な問題についての議論の様子が克明に記録されている。日本のオリンピック委員会も見習ってほしい。

予想とは異なっていたが,とても楽しく3時間半を過ごすことができた。さまざまな病巣をかかえる国であるにしろ,民主主義の基本となる言葉がしっかりと生きている場所がある安心感。翻って,日本の政治家やマスコミやTV知識人の細切れで歴史を無視した表層的な議論の数々を対比させたとき,なんともいえない虚脱感に襲われる。

あるいは,大阪では,児童図書館や公共的な文化施設が破壊されただけでなく,公共交通,病院,公園,大学が次々とターゲットとなり,公共から営利への流れができている。そして,それを推進する政治勢力がマスコミによって擁護され,さらに多くの市民・住民の支持を得ていくという,公共性の喪失の危機が進行している。

この映画は,民主主義の本質を支える言葉(Speech)の映画だった。

2019年8月27日火曜日

ディリリとパリの時間旅行

平日に妻と行く映画シリーズその1。梅田スカイビルイーストタワー3Fのシネ・リーブルに「ディリリとパリの時間旅行(Dilili a Paris)」を観に行った。日本経済新聞の文化欄か映画欄で紹介されていておもしろそうだったので。フランスアニメーションのミッシェル・オスロ監督による,2018年フランス・ベルギー・ドイツ合作の94分のアニメーション。

紙兎ロペ風の,平面的で対称的な構図を中心としたリアルなデザインと色彩の作品。パリ市街や室内装飾などの一部は実写写真を加工したものが使われている。19世紀末から20世紀初頭までのベル・エポック時代のパリの著名人,マリー・キュリーと娘たち,パスツールエッフェルツェッペリン,印象派の画家達,ルソーピカソロートレック(背が低かったのか),サティドビュッシーサラ・ベルナールエマ・カルヴェなどが登場する。

ストーリーは,ニューカレドニアから密航し,パリ万博の見せ物を演じつつ庇護者の下でしっかりしたフランスの教育を受けている,混血の少女ディリリが主人公だ。物語の発端から突如登場する副主人公の三輪車乗りの青年オレルとともにパリの観光スポットをめぐる冒険が始まる。パリの少女を狙った連続誘拐事件は,男性支配団(非常にストレートな女性差別構造の表現だ)のしわざであり,警視総監などパリ警察のトップもこれにつながっている。権力の腐敗,パリの貧困や差別構造にも目配りされている。

誘拐され,男性支配団によって四つ足椅子(江戸川乱歩を彷彿とさせる)にされていた少女たちを,ディリリと仲間たちがツェッペリンの飛行船で救出し,最後は大団円で終わる。


2019年8月26日月曜日

物理学会支部活動

佐々真一さんからメールが来て,なんだろうと思ったら,日本物理学会の京都支部総会の案内だった。なぜ,京都支部?これまでは,大阪教育大学の所属だったので,大阪支部に所属していたのだろうと思う。この3月に定年退職したので,大学との紐付けが切れて自宅住所との関係から連絡が来たということかもしれないが,支部活動には関与したことがないので,そのあたりの事情はよくわからない。なお,日本物理教育学会の近畿支部としては,日本物理学会の大阪支部とはいろいろ関係があった。

そこで,日本物理学会のホームページで支部活動がどうなっているかみた。やはり奈良県は,京都府や滋賀県と並んで京都支部のテリトリーである。大阪支部のテリトリーは,大阪府,兵庫県,和歌山県。名古屋支部は,愛知県,岐阜県,三重県。北陸支部は,福井県,石川県,富山県。新潟支部は新潟県単独で,これは,日本物理教育学会とおなじ構造になっている。なお,そこでは,京都支部+大阪支部の範囲が,近畿支部と定義されている。東京を中心とする巨大な範囲が支部ではなく本部直轄地の様相を呈していた。これも日本物理教育学会の構造に近いものがある。

さらに,支部に関する規程をみた。支部を構成する会員の条件は,各支部の支部規約で定義されることになっていた。なるほど。ところが,京都支部も大阪支部も支部規約がウェブでみられないのだった。うーん・・・。

支部には重複して所属することもできるのだろうか?本部から配分される支部の運営費用はどうやって算出しているのだろうか。などなど,謎は尽きない。

2019年8月25日日曜日

河野談話


1993年の宮澤内閣の内閣官房長官,河野洋平の談話の方が村山談話より先であった。

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慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話

平成5年8月4日

     いわゆる従軍慰安婦問題については,政府は,一昨年12月より,調査を進めて来たが,今般その結果がまとまったので発表することとした。
     今次調査の結果,長期に,かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され,数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は,当時の軍当局の要請により設営されたものであり,慰安所の設置,管理及び慰安婦の移送については,旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については,軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったがその場合も,甘言,強圧による等,本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり,更に,官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また,慰安所における生活は,強制的な状況の下での痛ましいものであった。
     なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については,日本を別とすれば,朝鮮半島が大きな比重を占めていたが,当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり,その募集,移送,管理等も,甘言,強圧による等,総じて本人たちの意思に反して行われた。
     いずれにしても,本件は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は,この機会に,改めて,その出身地のいかんを問わず,いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また,そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ,今後とも真剣に検討すべきものと考える。
     われわれはこのような歴史の真実を回避することなく,むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは,歴史研究,歴史教育を通じて,このような問題を永く記憶にとどめ,同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
     なお,本問題については,本邦において訴訟が提起されており,また,国際的にも関心が寄せられており,政府としても,今後とも,民間の研究を含め,十分に関心を払って参りたい。
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2019年8月24日土曜日

村山談話

日韓関係を考える上での原則的立場の一つ。1995年の村山富市首相の談話。

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村山内閣総理大臣談話

「戦後50周年の終戦記念日にあたって」
平成7年8月15日

 先の大戦が終わりを告げてから,50年の歳月が流れました。今,あらためて,あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき,万感胸に迫るものがあります。
 敗戦後,日本は,あの焼け野原から,幾多の困難を乗りこえて,今日の平和と繁栄を築いてまいりました。このことは私たちの誇りであり,そのために注がれた国民の皆様1人1人の英知とたゆみない努力に,私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで,米国をはじめ,世界の国々から寄せられた支援と協力に対し,あらためて深甚な謝意を表明いたします。また,アジア太平洋近隣諸国,米国,さらには欧州諸国との間に今日のような友好関係を築き上げるに至ったことを,心から喜びたいと思います。
 平和で豊かな日本となった今日,私たちはややもすればこの平和の尊さ,有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう,戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて,アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには,なによりも,これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は,この考えにもとづき,特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し,各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために,この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また,現在取り組んでいる戦後処理問題についても,わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため,私は,ひき続き誠実に対応してまいります。
 いま,戦後50周年の節目に当たり,われわれが銘記すべきことは,来し方を訪ねて歴史の教訓に学び,未来を望んで,人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。
 わが国は,遠くない過去の一時期,国策を誤り,戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ,植民地支配と侵略によって,多くの国々,とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は,未来に誤ち無からしめんとするが故に,疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め,ここにあらためて痛切な反省の意を表し,心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また,この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
 敗戦の日から50周年を迎えた今日,わが国は,深い反省に立ち,独善的なナショナリズムを排し,責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し,それを通じて,平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に,わが国は,唯一の被爆国としての体験を踏まえて,核兵器の究極の廃絶を目指し,核不拡散体制の強化など,国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ,過去に対するつぐないとなり,犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると,私は信じております。
 「杖るは信に如くは莫し」と申します。この記念すべき時に当たり,信義を施政の根幹とすることを内外に表明し,私の誓いの言葉といたします。
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あれから24年,遥か遠くまで来てしまった。御霊という言葉がここで1回使われている。

2019年8月23日金曜日

星稜高校

星稜高校といえば,中学3年の同級生の筒井君を思い出す。高校受験を控えて不安な気持ちがクラスに充満したとき,2人でギャグ漫画を書き始めた。カエルが主人公のくだらないギャグで満ちたノートだったが,彼が主に絵を描いていた。それを見て自分たちで笑い転げるというなんだかわからない日々が続いたが,受験前にはもう少し落ち着いて勉強に取り組むべきだった。で,かれは公立の普通高校の受験に失敗して星稜高校に進学した。

星稜高校は当時の金沢経済大学と同じ稲置学園の経営だったが,このあたりは複雑なことになっているようだ。金沢の代表的な私立高校だったが,当時はまだ野球部もそれほど有名でなく,大学への進学コースも充実してはいなかったので,今は様変わりしている。

筒井君は中学卒業のころに金沢市内から宇ノ気町に引っ越してしまった。一度だけ手紙をもらったので,自転車でその住所まで尋ねたことがあったが(それは高校時代のことだろうか),家にはたどり着かなかったような気もする。

その星稜高校の野球といえば,次の記憶がある。
1976年 夏の甲子園2回目の出場でベスト4,小松辰雄がすごかった(このときは友達と夏の信州合宿にきており,ラジオでニュースをききながら応援していた)。
1979年 夏の甲子園で和歌山の箕島高校と延長18回の大熱戦,大学から帰ってテレビをつけるとちょうどいいところで,そのまま釘付けになって応援していた。
1995年 夏の甲子園で帝京に2−1で破れて準優勝。このときの印象はない。
2019年 夏の甲子園で履正社に5−3で破れて準優勝。決勝戦はテレビでみていたが,疲れがでていたのか,攻めや守りの精度がやや足りなかった。いくつかの盗走塁失敗で,せっかくのヒットが無駄になっていた。それでも履正社を相手に良く頑張ったと思う。


2019年8月22日木曜日

multiplicative persistence

しばらく前,TwitterでUniversity of WashingtonのKeiko Toriiさんの12歳の娘さん(gifted class)の算数の自由課題が話題になっていた。任意の自然数の各桁の積を計算して新たな自然数を求める。答えの自然数に対してさらにこの計算を反復しする。これを繰り返すと最後には1桁の自然数が得られる。1桁の自然数に到達するまでの反復回数がなるべく大きくなるもとの自然数を探せというのが賞品付きの課題だ。8th grade にも関らず,pythonでプログラムを組んで反復数11の数を見つけたとのこと。

飛び級小学生(=中学生相当)には負けてられませんと,Brute Forceで計算してみた。残念ながら時間ばかりかかって反復数が10にしかとどかなかず老人は小学生に完敗だ。調べてみると,Persistence of a NumberというWikipediaの項目が見つかった。日本語版はない。自然数に一定のアルゴリズムでの操作を行って不変になるものを探すという問題群らしい。OEIS(On Line Encyclopedia of Integer Sequences )A003001 にもある。

さらに調べると,Rubyで効率的な探索をしている人がいたので,この方法を Juliaにあてはめてみた。考え方としては,2と3と7のベキからなる数の集合から,反復数が最も大きいものを探し,その数を構成する因子の2と3と7の数字が並んだ数が,反復数+1の数を与えるというものだ。反復回数11回の数が2つ見つかった。

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function pcount(n::Int128)
  local m::Int128
  println(n)
  c = 0
  while n >= 10
    m = 1
    while n>0 && m>0
      m *= n%10
      n ÷= 10
    end
    n = m
    c += 1
    println(n)
  end
end

function count(n::Int128)
  local m::Int128
  c = 0
  while n >= 10
    m = 1
    while n>0 && m>0
      m *= n%10
      n ÷= 10
    end
    n = m
    c += 1
  end
  return c
end

function search(n2,n3,n7)
  local n,m3,m7::Int128
  d = (0,0,0,0,0)
  max = 0
  for k in 1:n7
    m7 = 7^k
    for j in 1:n3
      m3 = 3^j
      for i in 1:n2
        n = 2^i*m3*m7
        c = count(n)
        if c > max
          d = (i,j,k,c,n)
          max = c
        end
      end
    end
  end
  println(d)
  return d
end

function next(p)
  s="23789"
  m=[0,0,0,0,0]
  m[1]=p[1]%3
  m[2]=p[2]%2
  m[3]=p[3]
  m[4]=p[1]÷3
  m[5]=p[2]÷2
  c=""
  for i in 1:5
    for j in 1:m[i]
      c=c*s[i]
    end
  end
  return parse(Int128,c)
end

a=search(20,10,10)
pcount(next(a))
b=search(10,20,10)
pcount(next(b))
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
(19, 4, 6, 10, 4996238671872)
277777788888899
4996238671872
438939648
4478976
338688
27648
2688
768
336
54
20
0
(4, 20, 5, 10, 937638166841712)
27777789999999999
937638166841712
438939648
4478976
338688
27648
2688
768
336
54
20
0


2019年8月21日水曜日

運転免許証の更新

昨日,66歳の誕生日を前に,豪雨の田原本地区を通過して雨の降っていない奈良県橿原市新ノ口の運転免許センターに免許証の更新に向った。思わず免許状更新講習と書いてしまいそうでこわい。午前中の受付時間は8:30〜9:30だがちょうど8:30に到着。雨模様だったので更新にくる人は少ないかと思っていたがそうでもなく,いつもと同じようだった。

違っていたのは受付と手続きのフローだ。これまでの数回の更新ではなかなかもっちゃりしていたが,今回かなり改善されていた。最初に並ぶ列が,70歳以上(高齢者講習が必要)と69歳以下の2つに分かれている。列の先の端末機に免許証を入れると,暗証番号を発券する。高齢者列は難渋していて,待ちきれない別の人が係の人を呼び出していた。ゲットした暗証番号を窓口に提示するために待っていると,受付順に申請書類が速やかに印刷されており,すぐ名前がよばれた。記入事項はあらかた印刷されており,電話番号を記入するだけだ。申請書と同時に体調チェックアンケートを渡され,記入して1番に向うよう指示される。

1番窓口。証紙発行窓口に1列に並ぶよう誘導される。窓口は6箇所あり,スムーズに列は進む。かつてはこの窓口に手書きの申請書を持って並列で窓口開始前から長時間並んでいたのだったが,かなり改善された。証紙代金の3,000円を払い込むと既に貼り付けも完了しているので,名前と生年月日を書いて2番に進めと指示される。

2番窓口。ここは視力検査だが,列に並ぶ前で書類に不備がないか簡単にチェックされて,やはり1列に並ぶ。なお,証紙をはった紙は色分けされていて,自分は優良講習のピンクだった。次回は70歳以上なのだがどうなるのだろう。検査機は2台だが,列も淡々と進む。視力検査は眼鏡ありでOKだった。眼鏡がないと小さいランドルト環は見えない。

3番窓口。ここでも列に並ぶ前に必要書類があるかを確認する係員が立っている。このように要所要所に人がいて,流れを円滑にしている。大変結構ですね。3番窓口では,免許証の申請書類の内容をデータベースに入力して次の関門に進むための書類と免許証だけが返ってくる。

5番窓口。4番がないのは,縁起担ぎか。いよいよ写真撮影だ。ここもかつてより円滑に流れているような気がする。書類と免許証を渡し,2台のうちの左側で撮影すると受領番号札パウチがもらえた。これも色分けされていて,優良講習は2Fの講習室に進めと指示された。問題が1つ。写真を撮るとき頭が少し右に傾く癖がある。それを指摘されて修正する過程で気が緩んでにやけてしまったのが失敗。今後5年間は,このニヤケタ免許証とつき合わなければならない。いつもの逮捕された犯人顔ではないのでよしとしよう。ここまでで,最初から30分経過している。

2F講習室。20分ほど待って,30分の講習が始まる。いよいよ自動運転時代を前にして,両手でハンドルを持ってしっかり操作してください,他の車とコミュニケーションしてくださいという,非常に本質的な注意を受ける。夜間はハイビームがデフォルトで,対向車があればこまめにロービームに変えて下さいということだった。もちろん,話題のあおり運転の話もあった。

次回は71歳の2024年です。




2019年8月19日月曜日

加藤恭子と田島道治

NHK特集の昭和天皇(1901-1989)に関するテーマは,夜7:00のニュースにまであふれ出して,国民に何らかの変化をもたらせようとしている。8月17日に放映された,NHKスペシャル「昭和天皇は何を語ったのか −初公開・秘録拝謁記」である。初代宮内庁長官を務めた田島道治(1885-1968)の昭和天皇とのやりとりを記録した手帳やノートが発見されたということで,昭和天皇のこれまで伝えられなかった考えを伺い知ることができる。

これに対してさっそく,昭和天皇と田島道治のことは既に知られていたとのコメントがあった。その内容は,フランス文学者で伝記著者である,加藤恭子(1929-)が不思議な因縁で田島家から受け取った資料の一部によって知られ,書籍としても出版されていた内容だということである。具体的には「近現代日本の政策史料収集と情報公開調査を踏まえた政策史研究の再構築」という科研費の報告書にある2003年の講演記録から分かる。

ただ,フランス文学者の加藤恭子は「田島メモ」を直接見てはおらず,それがゆえに,歴史学者である茶園義男(1925-)からその推論(天皇の謝罪詔書の草稿の位置づけ)を強く否定されていた。しかし,今回NHKが報道した田島メモが本当ならば,茶園のほうが誤っていたということなのだろう。

天皇の戦争責任と憲法改定と再軍備をめぐるいくつかの重層的なテーマが含まれており,NHKがこれを報じたのが,どのような意図のもとでなのか,あるいは安倍政権がどうやってこれを改憲スケジュールに編み込んでいくのか,不安で不確実な暗雲がただよっている。

そうこうしているうちにも,れいわ⊗韓国⊗あいちトリエンナーレ⊗N国をめがけて,杉田水脈,橋下徹,東国原英夫らが続々と右からの工作に励んでおり,マスコミは反韓国で一色の報道。それにしても,金正恩があれほど文在寅に対して敵意を表明するのはなぜなのだろうか。板門店でのトランプ+金正恩+文在寅(あるいは最初の段階の会談)からどうしてこんなに遠くに来てしまったのだろうか,どんな理や利があるのかよくわからない。

2019年8月18日日曜日

ひろしま

NHKが深夜に映画「ひろしま」を放送していた。日教組が関川秀雄の監督で製作し,1953年8月に完成しているので,誕生してからちょうど自分の年齢と同じだけの時を経ている。はっきりしたストーリーはなく,岡田英次と広島出身の月丘夢路が主人公かと思っていたら,そうでもなかった。様々なエピソードの積み重ねで原爆投下前後の悲惨な状況をリアルに描写しているが,現実の重みがそれらのエピソードを支えている。また,原爆投下後8年目に,地元広島市民の協力の下に製作されており,監督の視点ではなく市民や被爆者の呻きのような空気も感じられる。

広島大学の教育学者である長田新が原爆を体験した子どもたちの作文を編集した文集「原爆の子」がもととなっている。当初は,日教組が新藤兼人を監督として製作を進めるはずだったが,両者は意見があわなかった。新藤兼人は「ひろしま」とは別に「原爆の子」という映画を乙羽信子主演で製作し,1952年8月6日に公開した。こちらのほうは見たことがない

1953年9月には,国際物理学会が日本(東京・京都)で開催されている。海外からはノーベル賞学者17名を含む55名が参加しているが,そのうち8名がこの映画を見ているらしい。いつ誰が観たのかについての情報はみつからなかった。映画には仁科芳雄博士が原子爆弾であることを確認した話と,原爆であることを秘匿しようとする軍部とのやりとりが出てくる。

2019年8月17日土曜日

(夏休み7)

にんけんハあざないものであるからに
すゑのみちすじさらにわからん
(おふでさき通訳 芹澤茂 より)

2019年8月16日金曜日

(夏休み6)

どろうみのなかよりしゆごふをしへかけ
 それがたん〻さかんなるぞや 
(おふでさき通訳 芹澤茂 より)

2019年8月15日木曜日

(夏休み5)

 ほそみちをだん〻こせばをふみちや
これがたしかなほんみちである
(おふでさき通訳 芹澤茂 より)

大東亜戦争終結の詔書(裕仁)
3.1独立運動100年光復節記念演説(文在寅)

2019年8月14日水曜日

(夏休み4)

一れつにあしきとゆうてないけれど
一寸のほこりがついたゆへなり
(おふでさき通訳 芹澤茂 より)


2019年8月13日火曜日

(夏休み3)

よろずよにせかいのところみハたせど
あしきものハさらにないぞや
(おふでさき通訳 芹澤茂 より)


2019年8月12日月曜日

(夏休み2)

よろずよのせかいぢふうをみハたせバ
みちのしだいもいろ〻にある
(おふでさき通訳 芹澤茂 より)

2019年8月11日日曜日

(夏休み1)

このよふハりいでせめたるせかいなり
(おふでさき通訳 芹澤茂 より)

2019年8月10日土曜日

原発危機と「東大話法」:安富歩

(「安富歩さん」からの続き)

この本を買ったのはいつのことだったろうか。長いこと積ん読状態だったけれど,安富さんのれいわ新選組の参議院選比例区候補としての演説を聞いているうちに再読しようという気になった。

典型的な東大話法者として,池田信夫があげられている。彼は,福島第一原発災害の後,一瞬だけ正気になったブログ記事を書いたことがあったが,その後は安定の新自由主義反動路線の人で,安富をボロクソにけなしている。「京都生まれで東大卒で新左翼崩れでNHKで青木昌彦の下でドクターをとるとこんな結末を迎えるのか」という差別的な言辞を吐きたくさせる方である。

話がそれた。ブログ記事を再編集したものが中心になっているので,とりたてて新鮮な感想は持たなかったが,第4章の「役」と「立場」の日本社会というのは,自分もその考え方にどっぷりと染まっていたので,よくわかった。また,第5章の槌田敦のエントロピー論に立脚した議論も素直に納得できるものだ。

安富歩は,既存の学の枠組みに束縛されず自由に考えることができる希有の人だと思う。2011年の3月に発行された(たぶん東日本大震災以前の対談)京都大学大学院人間・環境科学研究科の雑誌人環フォーラムNo.28に,「<対談>生きるための経済学:安冨歩,間宮陽介, 司会 阪上雅昭」という記事が掲載されている。阪上君は阪大理学研究科で,森田研のとなりの内山研で3〜4学年下の院生だったが,その後,福井大学教育学部を経て京大人間・環境科学研究科の教授となっている。安富さんとは親しいようだった。

この対談では,間宮陽介が典型的な東大話法型の人間であることが透けてみえる。間宮は岩波文庫でケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」を翻訳しているが,山形浩生経済のトリセツボロクソに叩かれていた(まあ,山形のことなので,どこまで真剣に受け止めるべきかは留保したほうがよいのかもしれない)。間宮は物知りで引出をたくさん持っている人であり,安富の考えを正面から受け止めず,既存の知識で斜めにバンバン打ち返していた。その点,阪上君は安富さんを理解した上で対応している。

この続編が,「幻影からの脱出−原発危機と東大話法を越えて(明石書店,2012)」であり,上西充子さんの「呪いの言葉の解き方(晶文社,2019)」にも続いている。

2019年8月9日金曜日

中田敦彦のYouTube大学

ヨビノリが話題になっていると思っていたら,オリエンタルラジオ中田敦彦YouTube大学の話が飛んできた。チャンネル登録者は65万人を越え(277位),動画再生数は3700万回に達している。2019年4月から青山学院大学経営学部の客員講師に就任して,「エンターテインメントビジネス実践経営学」を担当するともに,教育系YouTuberとして,日本史,世界史,経済,政治,文学,などをテーマとした番組を配信している。タイトルは次のようなものであり,わりといい感じ。
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【政治】なぜ増え続ける?「消費税増税」〜裏に隠された歴史編〜①
25万 回視聴
【政治】消費税増税は本当に必要なのか!?〜不都合な真実編〜②
22万 回視聴
【政治】まだ解決していない「原発問題」〜原発の歴史編〜①
17万 回視聴
【政治】国家や大企業の利権が絡む「原発問題」〜真相追求編〜②
12万 回視聴
【政治】憲法改正問題を中田がわかりやすく解説!〜基礎知識編〜①
20万 回視聴
【政治】憲法改正問題(第9条)の本質に中田が切り込む!〜核心編〜②
19万 回視聴
【政治】投票に行かないと損する!?「選挙〜入門編〜①」
27万 回視聴
【政治】国家予算100兆円の使い道は!?「選挙〜入門編〜②」
17万 回視聴
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中田敦彦は,茂木健一郎の発言をめぐる議論で,松本人志を批判し,吉本興業から圧力が加わったとの話があった。中央や地方の政権との癒着でポストTV時代の延命を目指しているよしもとが差別の温床になっていることを考えると,中田敦彦には頑張ってもらいたい。が,一方でヨビノリや中田敦彦のYouTube大学の隆盛がはらむ危険性も少し感じる。ポピュリズムであるにしても,山本太郎のようなはっきりとした原理が必要なのだろうと思う。

追伸:結局中田敦彦のそれはチャンネル登録から外してしまった。

2019年8月8日木曜日

ヨビノリ(1)

ヨビノリは,予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」というYouTubeのチャンネルである。教育系ユーチューバのヨビノリたくみ(松本拓巳)さんが運営している。予備校講師の経験をもとに,大学院生であった2017年からYouTubeを用いたアウトリーチ活動として始め,2018年に大学院(あの沙川研だ)を中退してYouTuberとして専念しているらしい。

大阪教育大学で担当していた「科学のための数学」は,理科教育専攻の1回生を対象とした専攻専門の選択科目であり,60名程が受講している。大教大理科の個別学力検査では,数Ⅲが必須ではなく,理科の教員を目指すといっても,小学校,中学校,高等学校と幅広いスペクトルの学生が集まっていることから,数学の基礎知識や基本技能には大きな開きがある。

そこで,この授業は,微分積分入門(初等関数,関数の極限,微分法,積分法,偏微分,重積分)ということで,数Ⅲ+αの内容をカバーしている。高校時代の数Ⅲが未習の学生にはハードルが高く,既習の学生には物足りないという絶妙の内容で毎年苦労していた。

一昨年のある日,この授業の受講生が研究室に「先生,ヨビノリって知ってますか」といってきた。ウェブ上の様々な学習コンテンツは,ある程度リサーチしていたので,「知ってるけど」と答えると,「来年度から是非これを授業に取り入れたらどうでしょう」との提案があった。学習進度がまちまちなので,反転学習の教材として使えるかもしれなかったのだが,定年1年前でちょっと元気が足りなくて断念した。

2019年8月7日水曜日

戦時性暴力の問題(1)

サイゾーウーマン というのはウェブ版の女性週刊誌のようなものなのかな?
特集「慰安婦問題」を考える第1回として,「今さら聞けない「慰安婦」問題の基本を研究者に聞く――なぜ何度も「謝罪」しているのに火種となるのか」が取り上げられていた。
関東学院大学教授の林博史先生のたいへんていねいな解説である。いわゆる「慰安婦」問題は,日本における最近のすべての民族・歴史・性差別・表現問題の中心点だと思われる。

一番の戦犯は小林よしのりだろうか。そして,中川昭一と安倍晋三とNHKだ。安倍に重用される極右女性議員たちと安倍を支える日本会議とその周辺の文化人。橋下徹と維新グループや大都市の首長たち。気づかないふりでスルーを決め込むどころか,反韓気分の火に油を注ぐ勢いのマスメディア。それによって燃え上がるネトウヨ工作員。信じ込む高齢者たち小人閑居して不善をなす。

戦時性暴力の問題(2)に続く)

2019年8月6日火曜日

原爆のイメージ

小学校5年か6年のころに,教室にアサヒグラフ(だったのか?)の原爆写真がやってきたことがあった。先生が持ってきたのか,教室の誰かが持ってきたのかははっきり憶えていないが,一面に焼けただれた市街地の白黒のあらいホワイトノイズのようなイメージがぼんやりした恐怖とともに鮮明に印象づけられた。このとき被爆者の写真があったのかはよくわからない。

中学生になったころか,近所の会館で原爆資料映像の公開があって見に行った。たしか,社会党の市会議員か県会議員の方がお世話していたものだったと思う。その後,NHKでも同様の映像がはじめてテレビで放映されることになり,家族でみいった記憶がある。

広島平和記念資料館をはじめて訪れたのは,大学2年の夏休みのちょうど原爆記念日を前後するころだった。友達と巡った山陽・山陰・北陸の旅の途中に広島に立ち寄った。資料館の展示物の印象は強烈で声も出なかった。平和記念公園では中核派などのデモがあり,我々はそれを横目で見ながら,夕方の灯籠流しまで広島にとどまり,それから夜行で島根・鳥取に向った。

[1]原爆映像の経緯(日映映像)



2019年8月5日月曜日

表現の自由

日本国憲法

第二十一条 集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
○2 検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。
日本国憲法の下でも,表現行為が他者とのかかわりを前提としたものである以上,表現の自由には他人の利益や権利との関係で一定の内在的な制約が存在する。内在的制約とは,第一には人権の行使は他人の生命や健康を害するような態様や方法によるものでないこと,第二には人権の行使は他人の人間としての尊厳を傷つけるものであってはならないことを意味する。 (Wikipedia 日本語版「表現の自由」より)


2019年8月4日日曜日

あいちトリエンナーレ

あいちトリエンナーレ2019は,愛知県で開催される現代美術の国際芸術祭である。2010年から3年おきに開催されており,今回が4回目になる。芸術監督はツダるでおなじみの津田大介。2015年1月18日〜2月1日に東京練馬のギャラリー古藤で「表現の不自由展」という企画が開催された。これまで,組織的な検閲や忖度によって展示を拒否あるいは撤回された作品を集めたもので,澤地久枝さんのトークなどもあった。

あいちトリエンナーレ2019では,この「表現の不自由展」の続きとして,「表現の不自由展・その後」が企画された。慰安婦問題を契機とする少女像,昭和天皇の肖像を燃やす映像,安倍政権への警鐘を掲げるかまくら等を展示していた。これに対して抗議や脅迫が殺到するとともに,松井大阪市長に教唆された河村名古屋市長や,菅官房長官の企画に対する否定的発言が,抗議・脅迫側を支持して煽っために,企画は8月3日に中止に追い込まれてしまった

日本には,安倍政権の中核に存在する極右的(含むネトウヨ)な見解に反対する表現の自由(特に戦時の性暴力や徴用や虐殺等に関して)の余地が極めて乏しいことが改めてはっきりと可視化されてしまった。また,それを補完するように,脅迫側の存在や警察による不対応を所与の前提として出典企画側の非をとなえる江川紹子のような言論が幅をきかせている。表現の自由をあからさまに攻撃することはまずいと考える手合は,一定の集団に不快を催す企画を公金でまかなうことについて異を唱えるという作戦に出ている。

なお,表現の自由は無制限・無限定に認められるとは考えない。生存に関る人権と抵触する場合は認められるべきではないと思う。つまり,国際人権規約の次の条項が議論の出発点になるということ。その上で今回の抗議・脅迫・弾圧側にはなんの理も認められない。

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自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約 B規約)

第十九条
1 すべての者は,干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は,表現の自由についての権利を有する。この権利には,口頭,手書き若しくは印刷,芸術の形態又は自ら選択する他の方法により,国境とのかかわりなく,あらゆる種類の情報及び考えを求め,受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって,この権利の行使については,一定の制限を課すことができる。ただし,その制限は,法律によって定められ,かつ,次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全,公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

第二十条
1 戦争のためのいかなる宣伝も,法律で禁止する。
2 差別,敵意又は暴力の扇動となる国民的,人種的又は宗教的憎悪の唱道は,法律で禁止する。

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[1]自由権規約委員会 一般的意見34(仮訳)(日本弁護士連合会)
[2]あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」をめぐって起きたこと−事実関係と論点の整理(明戸隆浩)


2019年8月3日土曜日

ローレンツ条件

今年から非常勤で物理を教えることになり,はじめて電磁気学を担当した。45年前の自分が学部のときの電磁気学は伊達宗行先生が担当されており,授業はたんたんと進行していた。電磁気学演習はどなたが担当だったのだろう。はっきり覚えていない。

「理論電磁気学」の教科書で有名な砂川重信先生は当時の教養部の所属であり,大学院に入ってはじめて量子電磁力学の授業を3〜4人で受講するようになるまでは,ご尊顔も拝見したことがないくらいだった。大学院入試の面接で,森田正人先生,小谷恒之先生と砂川先生のチームが,物理以外の内容を質問する部屋があった。どんな物理の本を読みましたかという問に,マンドルの「場の量子論入門」と答えた。いまひとつピンとこなかったのか,他によかった本はありますかということで,砂川さんの「理論電磁気学」がとてもよかったですと,ご本人が目の前にいるとは知らずに答えていた。ただ,後半がちょっとわかりにくかったというと,それはあなたの勉強不足ではと森田先生からコメントがあり,みんな笑っていた。

さて,その電磁気学で,電場や磁場に対するマックスウェル方程式から,スカラーポテンシャルやベクトルポテンシャルの方程式を導出する際に,ローレンツ条件という,電磁ポテンシャル間の条件式を課すことがある。そのローレンツ(Ludvig Valentin Lorenz 1829-1891)は,デンマークの物理学者である。一方,電磁気学のローレンツ力でおなじみのローレンツ(Hendrik Antoon Lorentz 1853-1928)の方は,オランダのノーベル賞物理学者である。後者は,特殊相対性理論のローレンツ変換でも有名である。ところがローレンツ条件は相対論的に不変であり,電磁ポテンシャルの方程式を相対論的不変にするという特徴を持つ。ややこしいことこの上ない。

というわけで,これまでの多くの著名な電磁気学の教科書や事典は両者を混同しており,ローレンツ条件をLorentz条件と誤記している。理化学辞典,培風館の物理学事典,岩波の現代物理学の基礎,電磁気学の教科書では,パノフスキー・フィリップス,平川浩正,牟田泰三,そして砂川重信,ああ,全滅である(いずれも手元の旧版の場合)。

J. D. Jackson の Classical Electrodynamics 3edは大丈夫。Ohta-Wakamatsuの太田浩一さんは,Lorenzをローレンスと表記してLorentzと区別している。物理教育学会の大御所の霜田光一先生も正しく認識されており,注意を喚起していた。


[1]霜田光一:光速の原理と電荷保存則からマクスウェルの方程式を導く(物理教育第53巻第4号319-322,2005)
[2]霜田光一:光速の原理と電荷保存則からLorenz条件を導く(物理教育第54巻第4号286-287,2006)





















写真:Wikipediaより 左:ルードビィヒ・ローレンツ 右:ヘンドリック・ローレンツ


2019年8月2日金曜日

White List

暑い夏がさらに熱くなった日。

日本における安全保障貿易管理の枠組みの中で,大量破壊兵器及び通常兵器の開発等に使われる可能性のある貨物の輸出や技術の提供行為などを行う際,経済産業大臣への届け出およびその許可を受けることを義務付けた制度が「補完的輸出規制キャッチオール規制)」である。

その中の,グループA(輸出管理優遇措置対象国=27カ国)が,いわゆるホワイトリストに載っている国。韓国をこれから外してグループBにするというのが本日の日本政府の閣議決定の内容である。8月7日に公布,8月27日から施行予定。

自分の立場は,文在寅(ムン・ジェイン)支持,安倍内閣不支持である。経済産業省がコアになっている現政権は,どんなメリットを求めてこの措置へと踏み出したのだろうか。普通に考えると経済的なメリットは全くないので,政治的・軍事的な判断であるが,なにか不思議な気がする。

北朝鮮との緊張緩和路線を進める韓国への対抗。建前としても安全保障上の問題から今回の措置を取ったという説明をしている。今回の北朝鮮の短距離ミサイル実験にJアラートも出さずゴルフに勤しんでいた安倍だが,韓国と北朝鮮が主導し米国(トランプ)と中国とロシアが支持する朝鮮半島の緊張緩和は困るので,それを妨害するための一手と考えられる。

朝鮮半島の緊張状態は,拉致被害者を利用した国内世論の喚起や,軍事的脅威をあおって米国の軍事産業への協力の言い訳に使えることなどから,安倍にとってこれを維持することには価値がある。これはトランプに取っては困った日本の行動なのだが,ポンペオ国務長官の取り成しもいまいち迫力がなく,もしあったとしても日本はこれを蹴っている。反トランプの米国内対北朝鮮強硬派との繋がりや両者の力関係がなせる技かもしれない。

ホワイトリストからの削除は,韓国との間に軍事的な信頼関係はないと日本側が宣言したことと同じだから,日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)を韓国側が破棄しても,当然ということになる。この協定は,日本と韓国のどちらにとってよりメリットがあったのだろうか。最近の北朝鮮のミサイル実験については明らかに韓国側の情報が優位なので,今後,日本はそれが米国経由でしか得られないことになる。いずれにせよ,米軍が圧倒的な情報をもっているということであれば,日本にとってのデメリットは相対的に小さいかもしれないが・・・GSOMIA破棄は北朝鮮と韓国を接近させる方向に作用する。

10月の消費税増税を見越し,国民の関心をそらし,きたる衆議院議員選挙のための反韓気分を醸成することが目的なのだろうか。れいわ新選組の効果を無効化し,右寄りで排外主義的な気分を煽ることが,日本会議や維新をはじめとしたコアな安倍支持層を元気づけ,政権の浮揚や安倍4選あるいは憲法改正への道を開くという考えがあるのかもしれない。ハイテク産業やインバウンド需要などへの経済的なダメージがどれだけあろうが政権支持率にはほとんど影響ないという判断なのだろうか。

長期的に見て,日本の高度素材産業への影響がどうなるかは,正確な情報が読み切れない。数ヶ月で韓国は新しいサプライチェーンを構築できるという説と,日本の技術的な蓄積はそんな短期間では乗り越えられないという説がある。結局は時間スケールの問題なのであって,グローバルなハイテクサプライチェーンからの日本の剥落は進むだろう。あるいは,高度素材提供企業が倒産して,韓国企業に買収されるというオチなのかもしれないが。

[1]安全保障貿易管理(大学研究機関向け)…orz なんと生き苦しい世界なのか

2019年8月1日木曜日

暗黒通信団

書店で暗黒通信団の「円周率1000000桁表」や「自然対数の底100万桁表」などを見かけたことがあって名前は知っていた。偶然に,古典不変式論のpdfファイルをみかけたのがきっかけで,そのホームページにたどり着いた。なかなか面白そうなテキストがたくさん並んでいる。天羽優子氏や左巻健男氏がメンバーに入っているのか。教育大改革論もすべての議論を支持するわけではないが興味深い。