NHKが深夜に映画「ひろしま」を放送していた。日教組が関川秀雄の監督で製作し,1953年8月に完成しているので,誕生してからちょうど自分の年齢と同じだけの時を経ている。はっきりしたストーリーはなく,岡田英次と広島出身の月丘夢路が主人公かと思っていたら,そうでもなかった。様々なエピソードの積み重ねで原爆投下前後の悲惨な状況をリアルに描写しているが,現実の重みがそれらのエピソードを支えている。また,原爆投下後8年目に,地元広島市民の協力の下に製作されており,監督の視点ではなく市民や被爆者の呻きのような空気も感じられる。
広島大学の教育学者である長田新が原爆を体験した子どもたちの作文を編集した文集「原爆の子」がもととなっている。当初は,日教組が新藤兼人を監督として製作を進めるはずだったが,両者は意見があわなかった。新藤兼人は「ひろしま」とは別に「原爆の子」という映画を乙羽信子主演で製作し,1952年8月6日に公開した。こちらのほうは見たことがない。
1953年9月には,国際物理学会が日本(東京・京都)で開催されている。海外からはノーベル賞学者17名を含む55名が参加しているが,そのうち8名がこの映画を見ているらしい。いつ誰が観たのかについての情報はみつからなかった。映画には仁科芳雄博士が原子爆弾であることを確認した話と,原爆であることを秘匿しようとする軍部とのやりとりが出てくる。
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