骨太方針2026(2)からの続き
図:未来の変革への道(ChatGPTによる)
Q(koshix):
高市政権の17分野の成長戦略というのは焦点がぼやけすぎていると日経新聞がボロクソに書いています。現実問題として,日本の強みとしてテコ入れ(政府による投資という意味ではなく,規制緩和などで競争環境を整備誘導すること)が必要な分野とその根拠をしぼって提案してみてください。なお,経済の重軍事化は長期的に見てメリットはないと思います。
A(ChatGPT):
結論
日経の批判は概ね妥当です。ただし、問題は「17という数が多い」こと以上に、成長産業、経済安全保障、基礎研究、防災公共事業、軍需を同じ棚に並べていることです。
政府案は17分野をさらに62品目に分け、2040年度までの官民投資を370兆円超としています。しかし、その金額は政府予算ではなく、企業への聞き取り、既存の投資計画、市場成長率からの推計を積み上げたもので、今後さらに対象を追加するとしています。これは「選択と集中」というより、各省庁と業界団体の要望を収納する巨大な陳列棚です。
私なら、次のように「3つの輸出エンジン+2つの国内変革市場」に絞ります。
輸出エンジン
(1) 知能化された製造・現場自動化
(2) 半導体製造装置・先端材料・精密部品
(3) コンテンツ・知的財産・体験輸出
国内変革市場
(4) 健康長寿・医療介護テクノロジー
(5) 省エネルギー・電化・分散型エネルギーシステム
AI、デジタル、サイバーセキュリティーは独立した「産業分野」ではなく、以上の全分野を支える横断的な汎用技術として扱うべきです。
選定基準
絞り込みには、少なくとも次の条件が必要です。
・日本企業がすでに輸出、市場占有率、技術蓄積のいずれかを持つ
・人口減少下で、労働生産性を直接引き上げる
・規制、標準、データ制度、競争政策を変えることで民間投資が出てくる
・特定企業への補助金ではなく、多数の新規参入企業が競争できる
・10年程度で成果検証でき、失敗したら撤退できる
OECDは2026年の対日審査で、日本の時間当たり労働生産性の伸びが2000~08年の年平均1.2%から、2019~24年には0.3%へ低下したと指摘しています。企業の参入・退出率は米国の半分程度で、サービス業の規制、低生産性企業の退出の遅れ、中小企業のデジタル化不足が成長を阻んでいます。したがって、日本に必要なのは巨大投資額の宣言より、新陳代謝と技術普及を妨げる制度の除去です。
1.知能化された製造・現場自動化
これは最優先です。
対象は人型ロボットに限定せず、産業ロボット、工作機械、センサー、画像認識、制御装置、物流機器、建設機械、農業機械、介護支援機器を統合した「現場システム」です。
日本は2023年時点で世界の産業ロボット生産の38%を占め、輸出比率は78%でした。2024年にも国内導入台数は世界第2位です。これは政府がこれから作る「夢の産業」ではなく、すでに企業、部品供給網、技能者、海外販売網が存在する分野です。
必要なのはロボットメーカーへの補助金ではありません。
・自動走行機械、無人倉庫、配送ロボットなどの安全規制を、機械の形式指定から性能基準へ変える
・事故時のメーカー、運用者、AI提供者の責任分界を法定する
・工場データ、ロボット制御API、デジタルツインの相互運用規格を整える
・実証特区で成功した技術を全国展開できる制度を設ける
・介護、建設、物流などで「人が行うこと」を暗黙に前提とした配置基準や業務規制を見直す
政府案の「フィジカルAI」は方向として間違っていません。ただし、人型ロボットという派手な完成品に焦点を当てすぎると、中国や米国との資本力競争になります。日本の勝ち筋は、モーター、減速機、センサー、制御、工作機械、保守サービスまで含む現場実装能力です。
2.半導体製造装置・先端材料・精密部品
「半導体」を一括して重点産業にするのは粗雑です。
日本が集中すべきなのは、先端ロジック半導体の大量生産そのものより、
・半導体製造・検査装置
・フォトレジスト、シリコンウエハー、特殊ガスなどの材料
・先端パッケージ
・センサー、アナログ半導体、パワー半導体
・精密加工部品
・磁石、炭素材料、セラミックス、機能性化学品
・回収・分離・再精製技術
です。
経産省資料でも、日本企業は半導体製造装置で世界市場の約3割、主要な半導体材料では約半分のシェアを持つとされています。ここには長期間の工程知識、顧客との共同開発、品質保証という模倣しにくい蓄積があります。
制度改革としては、
・工場、化学設備、リサイクル設備の許認可を一元化し、審査期限を明確にする
・環境基準を緩めるのではなく、重複審査と自治体ごとの不統一をなくする
・部素材の国際認証、品質評価、顧客認定を共同化する
・大企業内に埋もれた技術のスピンオフ、事業売却、M&Aを容易にする
・研究者・技術者の競業避止義務を限定し、労働移動を促する
べきです。
Rapidus型の先端工場は、経済安全保障上の保険として議論する余地はあります。しかし、それを日本の主要な「成長産業」と呼ぶのは別問題です。巨大な設備費と継続的補助を必要とする事業は、競争政策というより国家管理事業に近くなります。
3.コンテンツ・知的財産・体験輸出
ゲーム、アニメ、マンガ、音楽、映像は、政府の17分野の中で数少ない、すでに海外需要が実証されている消費者向け産業です。
経産省によれば、日本発コンテンツの海外売上は2023年に約5.8兆円に達しています。経産省は鉄鋼や半導体の輸出額を上回る規模と説明していますが、「海外売上」と「輸出額」は統計概念が完全には同じではないので、比較には留保が必要です。それでも既存需要の大きさは明白です。
ここで必要なのも「クールジャパン施設」ではありません。
・制作会社とクリエーターの契約内容、権利帰属、収益分配を透明化する
・二次利用権を一括処理できる権利情報データベースを整える
・制作委員会、放送局、出版社、配信プラットフォームによる買いたたきを競争政策の対象にする
・海外共同制作の契約、査証、送金、税務手続きを簡素化する
・博物館、歴史遺産、食文化、工芸、観光とコンテンツIPを結び付ける
・地方自治体が夜間文化、撮影、イベント開催を妨げている用途規制や騒音規制を合理化する
必要があります。
日本の弱点は作品を作る能力ではなく、権利処理、国際配信、資金調達、制作従事者への利益還元です。政府目標の海外売上20兆円はかなり野心的ですが、補助金を投入するより、制作側が利益を再投資できる契約・流通構造を作る方が先です。
4.健康長寿・医療介護テクノロジー
これは現時点で圧倒的な輸出競争力がある分野というより、日本が世界に先行する巨大な実証市場です。
厚労省推計では、介護職員は2022年度の約215万人から、2040年度には約272万人が必要になります。57万人を純増させるという前提は、人口動態から見てかなり厳しい。したがって、人手を増やすだけでなく、一人当たりが提供できる介護の質と量を高める必要があります。
優先対象は、万能薬的な「創薬」全般ではなく、
・内視鏡、診断・手術支援機器
・在宅モニタリング
・リハビリテーション機器
・認知症支援
・服薬・転倒・褥瘡予防
・介護記録の自動化
・遠隔診療・遠隔介護支援
・医療介護データ解析
です。
制度面では、
・電子カルテ、介護記録、健診、薬剤情報の共通規格化
・患者本人によるデータ移転権
・匿名化したデータの研究・製品評価への二次利用
・医療機関・介護事業者ごとの成果や効率の比較可能化
・診療報酬・介護報酬を「機器を導入したか」ではなく、再入院減少、職員時間削減、生活・機能改善などの成果に連動させる
・医師、看護師、薬剤師、介護職の業務範囲を合理的に組み替える
ことが重要です。
OECDも、日本の医療・介護では、事業者間を比較できるデータ基盤と、デジタル化による支出効率化が必要だと指摘しています。
5.省エネルギー・電化・分散型エネルギー
「GX」を何でも入る袋にしてはいけません。水素、洋上風力、原子力、ペロブスカイト、核融合を同列に並べると、政策評価不能になります。
重点は発電方式の選択より、
・送電網・地域間連系
・蓄電・需要調整
・高効率モーター、インバーター、パワー半導体
・ヒートポンプ
・建物断熱
・工場廃熱利用
・電池・金属のリサイクル
・地熱・分散電源
に置くべきです。
日本の2024年度エネルギー自給率は16.4%にすぎません。エネルギー効率の改善は、新産業を作るだけでなく、輸入代金、円安リスク、企業の製造コストを同時に下げます。
必要な改革は、
・系統接続待ちの容量、順番、費用を完全公開する
・地域間送電容量を拡大し、地域独占による接続差別を防ぐ
・時間帯・地域ごとの電力価格を需要家に伝える
・蓄電池や需要調整事業者が発電所と対等に市場参加できるようにする
・建築物の断熱・エネルギー性能基準を段階的に強化する
・賃貸住宅で、大家が設備費を負担し入居者が光熱費削減を受ける「分離インセンティブ」を制度的に解消する
・炭素価格を予見可能で技術中立的なものにする
ことです。
核融合や革新炉は研究対象として残してよい。しかし、2030年代の産業成長を担うと見込んで通常の成長戦略に算入するのは、成功確率を無視した会計です。
軍需産業を成長戦略から外すべき理由
あなたの見方に基本的に同意します。
防衛力をどの水準にするかは、安全保障政策として判断すべきです。しかし、防衛産業を経済成長政策として正当化するのは危険です。
軍需には、
・顧客がほぼ政府一者である
・需要が安全保障情勢と予算に依存する
・秘密性と輸出規制によって技術波及が制限される
・随意契約、原価積み上げ、国内調達保護が競争を弱めやすい
・人材、素材、研究費を民生産業から奪う
・生産額が増えても、国民の消費可能性や生活水準を直接高めない
という構造があります。
軍事研究から民生技術が生まれる例はありますが、これは副産物であって、軍需拡大の費用を一般的に回収できるという証明にはなりません。防衛産業は17分野の一つではなく、必要性と費用を別勘定で審査する安全保障支出として扱うべきです。
最も重要なのは分野選定より共通制度
実際には、五分野を選んでも、次の改革がなければ成果は出ません。
・低生産性企業を補助金と信用保証で永久保存しない
・個人保証、倒産時の過大な社会的制裁を緩和する
・転職による退職金・企業年金・賃金の不利益を小さくする
・外国企業、外国人専門人材、海外大学との参入障壁を下げる
・行政手続を「一度提出した情報は再提出させない」方式にする
・公共調達を企業名や国籍ではなく、性能、価格、相互運用性で競争させる
・政策ごとに3~5年の達成指標と打切り条件を設定する
要するに、日本が目指すべきなのは「政府が17頭の馬券を全部買うこと」ではありません。
すでに脚力のある3分野を世界市場へ伸ばし、人口減少とエネルギー制約という国内問題を2つの先行市場に変える。その競争を妨げる規制と既得権を除去する。
これが、補助金中心の370兆円構想より、はるかに地味ですが成長戦略としては筋が通っています。

















