2024年12月16日月曜日

スーパーフレア


NHKの昼のニュースをみていた。真面目な顔のアナウンサーが,太陽型恒星では100年に1回の割合で大規模なスーパーフレアが起こると話している。ちょっと腰を抜かしそうになった。人類は大丈夫か。

NHK以外からはニュースがなかったので,掲載されたというサイエンスに当たってみた。
Sun-like stars produce superflares roughly once per century(2024.12.12)」というのが論文の表題だ。有料会員にならないと本文は読めないが,概要は次のようなものだ。
恒星のスーパーフレアは、太陽フレアに似た電磁波の爆発であるが、主系列星では10^36 erg(10^29 J)と、より大きなエネルギーを放出する。太陽がスーパーフレアを発生させることができるかどうか、また発生するとしたらどのくらいの頻度で発生するのかは不明である。我々は、ケプラー宇宙観測所の測光を用いて、太陽のような基本パラメータを持つ他の恒星のスーパーフレアを調査した。その結果、観測された56,450個の太陽のような恒星2527個のうち、2889個のスーパーフレアを発見した。この検出率から、太陽のような温度と変動を持つ恒星では、10^34 erg (10^27 J)以上のエネルギーを持つスーパーフレアがおよそ100年に1度発生していることがわかった。その結果、恒星のスーパーフレア頻度-エネルギー分布は、太陽のフレア分布の高エネルギーへの外挿と一致し、両者は同じ物理機構によって生成されていることが示唆された。
これまで観測された最大の太陽フレアは,1859年の太陽嵐(キャリントン・イベント)であり,その規模はX45〜10^25-26 J とされている( X10 = 10^32 erg = 10^25 J )。これより1-2桁大きいものが100年に1回だとまずいのではないか。昔と違って現代は繊細なエレクトロニクスの塊によって世界が成り立っているので,スーパーフレアの規模によっては,甚大な被害が発生する可能性がある。

歴史的な記録は他にはないのかと探していたら,太陽フレアからくる高エネルギー宇宙線(おもに陽子)により,大気中に生成する炭素やホウ素の放射性同位体,14Cや10Beの一時的な増大がそのシグナルになるとわかる。屋久杉の年輪の分析ではじめてわかったとか。

それは武蔵野美術大学の宮原ひろ子さんではなかったかと思いきや,彼女のは気候変動の文脈であり,スーパーフレアの話題は同じ名大出身の三宅芙沙さんだった。なんとこの宇宙線起源同位体の急増現象は,三宅イベントと命名されている。
樹木の年輪に含まれる放射性炭素同位体14Cや、氷床コアの10Be、36Clの濃度が急上昇することで示される。現在のところ、14Cのスパイクが非常に顕著な、すなわち2年間で1%以上の上昇を示す5つの重要な事象(前7176年、前5259年、前664-663年[1](歴史的には前660年と呼ばれる)、前774年、前993年)が知られて・・・(WIkipedia の Miyake Eventから引用)
これがスーパーフレアの効果だとすると,400-2400年に1度の頻度だと推定されるのだが。




図:太陽のSuperflare(DALL-E3による)

[3]10世紀における宇宙線イベントの発見(三宅芙沙,2013)
[4]太陽型星のスーパーフレア(前原裕之,2017)
[5]屋久杉に刻まれた過去の太陽活動(三宅芙沙,2018)一般向け解説
[7]歴史に刻まれた巨大宇宙天気現象(早川尚志・海老原祐輔,2020)


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