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2020年1月19日日曜日

科学者の墓

京都の八坂神社円山公園の南に,親鸞聖人の墓所(東本願寺)がある大谷祖廟とそれに隣接する東大谷墓地が続いている。朝永振一郎の墓もその一角にある。湯川秀樹の墓は知恩院の裏山らしい仁科芳雄の墓は東京都府中市の多摩霊園だが,その横にも朝永振一郎の墓碑があるようだ。

[1]科学者の墓(世界恩人巡礼大写真館)
[2]物理学者の墓を訪ねる(山口栄一)
[3]科学者の魂を探して(日経xTECH)
   自由な研究風土が開いた物理学大国への道
   日本の物理学と技術イノベーションのルーツ
[4]ウエストミンスター寺院(ロンドン)
[5]パンテオン(パリ)
[6]ヴァルハラ神殿
[7]ガリレオの墓(全優石)
[8]ドイツの切手に現れた技術者科学者たち(関東化学)
   (2)グーテンベルグ
   (3)コペルニクス
   (5)ケプラー
   (6)ゲーリケ
   (8)ライプニッツ
   (9)オイラー
  (10)カント
  (14)ガウス
  (21)フラウンホーへル
  (22)キルヒホッフ
  (24)ヘルムホルツ
  (25)レントゲン
  (26)ツァイス・アッベ・ショット
  (29)ハーン
  (31)プランク
  (34)アインシュタイン



(写真:東大谷墓地にて 2020.1.18撮影)

2018年12月17日月曜日

ジョン・ウィリアム・ニコルソン

2018-12-16 原子モデルとプランク定数の続き

「20世紀の物理学(L. M. Brown, A. Pais, B. Pippard:丸善)」の 第2章「原子と原子核の導入(A. Pais)」の85pには,ハースに続いてニコルソン(英国出身 John William Nicholson 1881-1955 )の1912年の論文が紹介されている。この論文は,ボーアの1913年の論文でも引用されている。

ニコルソンは質量$m$の$n$個の粒子からなる半径$a$のリングのエネルギー$E$と回転振動数$\omega$の比が角運動量$L$に等しいことに気付き,これがプランク定数$h$に比例する,すなわち角運動量が量子化されることを初めて示唆した。
\begin{equation*}
h=\dfrac{E}{\omega} = \dfrac{m n a^2 (2\pi\omega)^2}{\omega} = m n a^2 (2\pi \omega) \cdot 2\pi = L \cdot 2\pi
\end{equation*}
ニコルソンは,彼の原子モデルを使って星のスペクトルの説明を試みていたが,その過程で上の関係を考えたようだ。ボーアモデルまでの経緯については,森川亮の「量子論の歴史 − 原子の物理学へ − 量子論へのプレリュード −」が詳しいかも。また,角運動量の量子化については,J. H. O. Sales, A. T. Suzuki の "The Old Quantization of Angular Momentumfrom Planck's Perspective" を参照する。

2018年12月16日日曜日

原子モデルとプランク定数

2018-12-14「アルトゥル・エーリヒ・ハース」からの続き


 1913年にボーアの原子モデルが発表される以前。1910年にハースがプランク定数と原子半径を結びつける正しい式を提案していた。両者の違いについて整理してみる。

ハースは,プランクの作用量子$h$の物理的意味を原子の構造に求め,$h$を原子の大きさによって根拠づけようとした。トムソンの原子モデルから出発すると,電子が半径$a$の一様に分布した正電荷の表面を回転しているときが全エネルギーが最大である。このときの原子(振動子)のエネルギーがプランクの$h\nu$であるとして,初めてボーア半径の正しい式を導いた(対応するエネルギーの表式は正しくない)。

ボーアは,ラザフォードの原子モデルに対して,その大きさを決める特徴的な長さを与えると同時に線スペクトルを説明しようとした。プランクの振動子のエネルギー$nh\nu$に現れる振動数$\nu$と原子の回転振動数$\omega$を結びつける複数の仮定が共にボーア半径の式とリッツの結合則を与えることを示した。原子には定常状態(及び安定な基底状態)が存在するとして,状態間の遷移によって光子の放出吸収を理解したことが革新的であった。

\begin{equation*}
\begin{array}{ccc}
\hline
 & Haas & Bohr \\
\hline
モデル & トムソン原子モデル  &  ラザフォード原子モデル\\
電子に働く力 & F=-\dfrac{e^2 r}{a^3} & F = -\dfrac{e^2}{r^2}\\
ポテンシャル & V=\dfrac{e^2 r^2}{2 a^3} & V=-\dfrac{e^2}{r}\\
エネルギー基準点  & r=0 & r=\infty\\
運動エネルギー & T=\dfrac{1}{2}m v^2 &  T=\dfrac{1}{2}m v^2\\
速度vと振動数\omega^{1)} & v=2\pi r \omega &  v=2\pi r \omega\\ 
古典運動方程式^{2)} & ma(2\pi\omega)^2=\dfrac{e^2}{a^2} &  mr(2\pi\omega)^2=\dfrac{e^2}{r^2}\\
振動子(原子)の振動数 & \omega=\dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{e^2}{m a^3}} 
& \omega=\dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{e^2}{m r^3}}\\
全エネルギー(T+V) & E=\dfrac{e^2}{a} & E=-\dfrac{e^2}{2 r}\\
プランク定数との関係^{3)} &  E=h\omega & E=-\dfrac{n}{2} h \omega\\
\\
プランク定数の表式 & h=2\pi e\sqrt{ma}  &  h=\dfrac{2\pi e}{n}\sqrt{m r_n}\\
原子半径の表式 & a=\dfrac{h^2}{4\pi^2 me^2} & r_n=\dfrac{n^2h^2}{4\pi^2 me^2} \\
エネルギーの表式 & E=\dfrac{4\pi^2me^4}{h^2} & E_n=-\dfrac{2\pi^2me^4}{n^2 h^2} \\
\hline
\end{array}
\end{equation*}
1) 電子の回転振動数を$\omega$ とした。角振動数ではない。
2) Haasでは以下$r=a$の正電荷表面の軌道で考える。
3) ボーアは放出される光の振動数$\nu$が電子の基底状態の回転振動数$\omega$の1/2であると仮定して,光子のエネルギー$nh\nu$と原子の全エネルギー$E$を等置した。


2018-12-17「ジョン・ウィリアム・ニコルソン」に続く

2018年12月14日金曜日

アルトゥル・エーリヒ・ハース

大学院の授業で「20世紀の物理学(L. M. Brown, A. Pais, B. Pippard:丸善)」の 第2章「原子と原子核の導入」を読んでいたら,''アーサー・ハースというウィーンの物理学者(チェコ出身の Arthur Erich Haas 1884-1941)がボーアより前の1910年に原子の量子仮説を導入した'' とあった。東欧なので,Wikipediaロシア語版の記述が最も詳しいようだ。

東海大学出版会から刊行されている,物理学古典論文叢書10「原子構造論」にハースの「プランクの輻射法則の電気力学的な意義および電気素量と水素原子の大きさに関する新しい決定について」という論文が採録されていた。長岡半太郎やボーアばかりに気をとられていたので,すっかり見落としていた。

あとでもう少し勉強してみよう(2018-12-16「原子モデルとプランク定数」に続く)。

P. S. この第2章はパイスが書いており,わかっている人が読むといろいろおもしろそうなことが書いてあるのだが,背景知識の少ない初心者が読むと,なにがなんだかわからない雑木林を彷徨っているような状態になりそうなので,授業で使うには対象者とのマッチングに注意したほうがよいかもしれない。


写真:A. E. ハース(Ceder Grove Cemetery から引用)


2018年12月9日日曜日

木村栄の孫

日本経済新聞の私の履歴書,今月は茅陽一。物理学者の茅誠司の妻が,天文学者の木村栄(ひさし)の娘の伊登子であるとのこと。つまり,茅陽一は木村栄の孫になる。金沢市立泉野小学校では(校区内に木村栄の育った家があった),かつて,地球の緯度観測でZ項を発見し,第1回の文化勲章を受賞した木村栄の業績をたたえる行事を毎年行っていたのだけれど(そういえば木村博士の歌もあった),残念なことに泉野小学校の現在のホームページには木村栄についての記載はない。金沢市郊外の野田山にある大乗寺の山門参道前には,木村栄の養父の木村民衛(私塾の教師)の大きな碑があったのだが,これも何年か前に撤去されてしまっていた。