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2026年7月5日日曜日

日本国記憶保存計画(3)

日本国記憶保存計画(2)からの続き


図:未来の知識アーカイブ都市(ChatGPTによる)


修正版を読み返してみると中々よくできていると感心した。米国政府に止められていたClaude Fable 5 が再開し,7月7日まで使えるというので(それ以降は従量課金),ChatGPTの書いた日本国記憶保存計画(修正版)を投入してみた。

うーん,ダメ出しの嵐である。確かに冷静に考えてみると,Claude のいうとおりなのだ。危ういネーミング,自分が後で付け加えた「ただし歴史修正主義には組みしない」の問題性,予算規模とその吸収能力,人材育成の必要性の失念,帝国植民地の記憶に関する問題,などなど。

ただね,こういう与太話は,まじめにやろうとすればするほど,どんどんつまらなくなってしまうのよね。SFのテーマにしようかと考えていたのに。いちおう,Claude Fable 5の修正提案を披露しますが,このまますべては採用できないなぁ。


A(Claude + koshix):
日本列島記憶基盤(通称:列島アーカイブ)構想 第三版

前二版(Qwen版・ChatGPT版)に対する批判を踏まえた全面改訂である。本版の主要な変更は,(1) 神話的命名の放棄,(2) 「認定権」問題の手続き的解決,(3) 予算規模の百分の一への縮減と積算根拠の明示,(4) 恒久財源構造の導入,(5) 情報主権問題の対象拡張(旧植民地期資料・集合的プライバシー),の五点である。(注:がび〜〜ん)

0.本改訂の趣旨——第二版が解決できなかったもの

第二版(YASHIMA案)は,分散管理・複数の声・出典主義という設計によって「国家が単一の文化基準を強制する危険」に応答しようとした。しかしその応答は不完全であった。

第一に,分散化は編集権を消去しない。何を優先保存するか,どの説を「修正主義」として退けるか,という判断は依然として誰かが行わねばならず,第二版はその判断主体と手続きを曖昧にしたまま,「合議制」という言葉で覆っていた。

第二に,年10兆円・総額100兆円という規模は,現在の文化行政の吸収能力(文化庁予算約1千億円,国立国会図書館約2百億円)の百倍であり,執行不能な数字を掲げること自体が構想の信頼性を損なっていた。(注:ハイハイハイハイ)

第三に,「AMATERAS」「YASHIMA」という記紀神話由来の命名は,「単一の日本らしさを語らない」という構想の核心理念を命名レベルで裏切っていた。(注:ぐぬぬ)

第四に,「10年計画」でありながら11年目以降の財源が空白であり,デジタル保存の本質(永続的な媒体更新・電力・人件費)と矛盾していた。(注:これは異論あります)

第五に,情報主権の問題を国内の分散管理に矮小化し,日本のアーカイブに大量に含まれる旧植民地期資料の帰属問題と,匿名化しても集積されれば生じる集合的プライバシーの問題を看過していた。(注:おっしゃるとおりです)

本版は,これらすべてに制度設計で答えることを試みる。


1.名称——神話に依らない

本構想の正式名称を「日本列島記憶基盤」,通称を「Foundation-J」とする。正式英名は Japan Archipelago Memory Commons とする。対話型AIには固有名を与えない。その機能名を「公共司書」とする。(注:公共司書はちょっとイマイチだけど)

命名の原則は次の通りである。

第一に,記紀神話・皇室祭祀・特定宗教に由来する名称を用いない。本基盤はアイヌ,琉球,在日コミュニティ,移民社会を含む列島上のすべての記憶を対象とするのであり,特定の起源神話を冠した瞬間に,その神話体系の外にある記憶に対して包摂ではなく編入のシグナルを送ることになる。(注:ごもっともすぎる)

第二に,AIを擬人化・神格化する固有名を避ける。「司書」という機能名は,このAIが何であるか(資料への案内者)と何でないか(真理の語り手)を同時に示す。司書は蔵書の内容に責任を負わない。所蔵と来歴と探し方に責任を負う。本構想のAIの倫理的位置は,正確にそこである。(注:これには違和感あるけど)

第三に,通称は誰でも意味がわかる日常語とする。「列島アーカイブ」は美しくないかもしれないが,美しすぎる名前こそがこの種の構想の敵である。(注:ダサいと思います!)


2.基本理念——記憶の管理ではなく,来歴の管理

前版の理念「文化的継続性こそ最後の国土である」は維持する。ただし,その実現方法を一段具体化する。本基盤が管理するのは,記憶の「内容」ではなく「来歴」である。

すなわち本基盤は,ある資料・言説・記録について,「それが正しいか」を判定しない。「それが,いつ,誰によって,どのような根拠と方法で作られ,保存され,引用され,反論されてきたか」を記録する。真偽の判定は,学術と社会の通常のプロセス——史料批判,査読,反証,論争——に委ね,本基盤はそのプロセス自体を検証可能な形で保存する。

この転換により,第二版が抱えていた最大の理論的困難,すなわち「複数の見解を提示すると言いながら歴史修正主義は退けるという矛盾」は,次のように解消される(詳細は第6節)。修正主義的言説も,言説として存在した事実は保存される。ただしその来歴——一次史料との対応関係,学術的検証の履歴,反証の存在——も同時に,切り離せない形で表示される。基盤は説を選ばない。説の履歴書を添付する。(注:それで大丈夫なのだろうか?)


3.規模の適正化——100兆円から7兆円へ(注:ひぇ〜〜 つまんないやつだな!)

第二版のGDP比1.5%・総額100兆円という規模は撤回する。理由は倫理ではなく算術である。

現在の日本に,年間2兆円分のアーキビスト・学芸員・保存修復技術者・権利処理専門家は存在しない。日本アーカイブズ学会の登録アーキビスト制度による認定者は累計で数百人規模,学芸員資格保有者は多数いるが実務ポストは慢性的に不足しており,専門人材の年間供給力から逆算すれば,執行可能な事業規模はおのずと定まる。予算がついても使えない計画は,予算がつかない計画より有害である。失敗の実績が,次の試みの芽を摘むからである。
(注:アーキビストという専門家に限定する考え方自身がいいのかどうか?)

本版の規模は次の通りとする。

・10年間の事業費総額:約5兆円(初年度2,000億円から漸増し,第5年度以降は年6,000〜7,000億円で定常化)
・恒久基金への出資:約2兆円(第4節)
・合計:約7兆円(注:少なくないですか?ぜんぜんおもしろくないんですけど。)

初年度2,000億円は文化庁予算の約2倍であり,これでも文化行政史上最大の拡張である。だが国立大学法人運営費交付金(年約1.1兆円)や科学技術関係予算の規模と比較すれば,国家が本気を出せば執行可能な水準である。(注:まあ,それはそうかもしれないが,人件費も積算してますか?)

積算の考え方の例を示す。国立国会図書館のデジタル化実績では,書籍・雑誌のデジタル化単価は資料の状態により1冊数百円から数千円である。仮に平均2,000円として年1,000億円を投じれば年5,000万点,これはNDL全蔵書(約4,600万点)を1年で上回る速度であり,実際には撮影よりもメタデータ作成・権利処理・品質管理が律速となる。つまり本事業の予算の過半は「モノをスキャンする費用」ではなく「人が記述し,権利を確認し,地域と信頼を築く費用」であり,それは人材の頭数に制約される。ゆえに——

第1期(1〜3年目)の最大の投資対象は,資料ではなく人材養成である。大学院・専門職課程・現任者研修を通じ,アーキビスト・デジタル保存技術者・権利処理専門家を10年間で累計3万人規模で養成・配置する年間2兆円を使える体制は,10年かけて作るものであって,初年度に仮定するものではない

年間概算配分(定常期・年6,500億円想定):
・人材養成・全国配置(自治体・図書館・博物館・大学):2,000億円
・危機資料の保存・デジタル化・目録作成:1,800億円
・権利処理・同意管理・寄託制度・倫理審査:700億円
・長期保存ストレージ・分散データセンター・災害バックアップ:800億円
・検索・知識グラフ・公共司書AI・多言語化:600億円
・教育利用・地域還元・市民ツール:400億円
・監査・セキュリティ・国際連携(デジタル返還を含む):200億円


4.財政構造——金を出す者が笛を吹けない設計

第二版は「国は収奪者ではなく支援者であるべきだ」と述べたが,年10兆円を出す主体が統制を要求しないと期待するのは制度設計ではなく祈りである本版は財政構造そのものに防波堤を組み込む

(1) 恒久基金の造成:
国費出資2兆円により「列島記憶基金」を設置する。大学ファンド(10兆円規模の運用実績あり)と同型の長期運用を行い,実質運用益(目標年3%・約600億円)を基盤の経常運営費—媒体マイグレーション,電力,中核人件費,システム保守—に充てる。(注:これいいかも)
これにより,11年目以降,政府の毎年度予算査定から独立した最低限の生存費が保証される。10年間の事業費(第3節)は拡張のための投資であり,基金運用益は永続のための血液である。「次の100年,500年」を語る計画は,単年度予算の上に建ててはならない。

(2) 引き出し不能条項:
 基金は特別の法律により設置し,政府は追加出資できるが,取り崩し・目的外流用・運用方針への介入はできない旨を設置法に明記する。財政危機を理由とする例外規定を置かない。例外規定は必ず使われるからである。(注:こまかいな,でもダメなときはだめだけど)

(3) 財源根拠の再構成:
第二版は本構想を「広義の国家安全保障」と位置づけたが,安全保障の論理は必ず機密化・アクセス統制・国家目的への従属圧力を随伴する。(注:たしかに,しかしその考え方自身を変えさせようというのが元々の出発点だった。それによって防衛費を脱構築する。)
本版はこのフレーミングを次のように限定する。本構想は防衛費の枠でも安全保障関連予算でもなく,災害対策・国土強靭化および教育・学術の恒久投資として位置づける。安全保障「に資する」効果(第9節)は結果として述べるが,安全保障「のための」事業とはしない。この区別は言葉遊びではない。予算科目は統制系統を規定する。防衛予算で建てられたアーカイブは,防衛の論理で閉じられる。(注:自分の意図とは違うがとりあえず放置)


5.既存基盤からの成長——ジャパンサーチという出発点

本構想は白紙から始まらない。すでに国立国会図書館が運営するジャパンサーチ(2020年正式公開)が,分野横断の統合ポータルとして,共通メタデータ形式による分散接続——まさに本構想の技術的核心——を小規模に実装している。連携データベースは200を超え,数千万件のメタデータが検索可能である。(注:そのスコープは限定的でしょぼいからである。)

したがって本構想の実現可能性の議論は,「ジャパンサーチはなぜあるのに,なぜこの規模にとどまっているのか」の分析から始めなければならない。答えは技術ではない。(1) 連携する各機関側にデジタル化・メタデータ作成の予算と人員がない,(2) メタデータはあっても本体データの公開が権利処理の壁で進まない,(3) 市町村・地域資料館・個人所蔵のレベルまで手が届く現場人材がいない,(4) 運営体制が一図書館の一事業であり,国家的な恒久財源を持たない——の四つである。

本構想は,この四つの欠落を埋める事業として自らを定義する。すなわち列島アーカイブとは,新しい巨大システムの建設ではなく,ジャパンサーチ的な分散接続アーキテクチャに,人材・権利処理・地域到達力・恒久財源を注入し,国家的基盤の規模へ育てる計画である。技術的に新設が必要なのは,長期保存レイヤー,来歴管理(第6節),知識グラフ,公共司書AIの四つに限られる。(注:ジャパンサーチは,あくまでも図書館だよね)

七層のデータ構造(地理環境/生物生態/生活民俗/産業技術/知識制度/文化財芸術/個人生活史)は第二版のものを維持する。各層の記述は第二版に譲り,本版では重複を避ける。


6.編集権の手続き化——境界線を引く権威の問題

第二版への最も根本的な批判は,「取捨選択とカテゴリ化には必ず編集者の価値観が含まれ,それがオーソライズされる」という点に,分散化と合議制という言葉で答えたつもりになっていたことである。本版は,編集権を消去できないことを認めた上で,それを可視化し,分散し,異議に開くという方針をとる。編集判断は三箇所で発生する。それぞれに手続きを定める。

(1) 優先保存の選定(トリアージ):

有限予算下で「何から保存するか」の判断は不可避であり,これは価値判断である。(注:たしかに)ごまかさずに次の手続きに従う。

・明文化された危機度指標を公開する。媒体の物理的劣化速度(酸性紙・磁気テープ・初期デジタル媒体),継承者の年齢構成(技能・方言・祭礼),所在地域の災害リスク,複製の有無,の四軸で構成し,指標自体を定期的に外部評価にかける。
・選定は上からの指定と下からの申請の二本立てとする。地域・団体・個人は保存を申請でき,採否は理由を付して全件公開する。
・不採択に対する異議申立て手続きを置き,審査には申請地域の代表を加える。
「選ばれなかったものの目録」を保存する。*何を保存しなかったかの記録は,その時代の価値判断の一次史料であり,将来世代がこの事業自体を検証するための資料である。選定の偏りは必ず生じる。偏りを隠すことではなく,偏りを記録することが,本基盤にできる最大の誠実である。

(2) 歴史的言説の扱い——「認定しない」という設計:

第二版の「複数の見解を提示する。ただし歴史修正主義には組みしない」という条項は削除する。この条項は,誰がどの手続きで「修正主義」を認定するのかという問いに答えられず,認定権の設置はそれ自体が「異論を許さない強制的な文化基準」の再来だからである

代わりに次の原則を置く。

・基盤は言説の真偽を認定しない。言説の来歴を記録する。すなわち,その言説がいつ誰によって主張され,どの一次史料を根拠とし,学術的検証(査読・反証・学会での位置づけ)をどの程度経ており,どのような反論が存在するかを,構造化されたメタデータとして言説に添付する。
・公共司書AIは,来歴情報を欠いた言説を,来歴情報を持つ言説と同格には提示しない。これは内容による差別ではなく,方法による層別である。一次史料との対応関係を示せる言説と示せない言説の区別は,特定の歴史観の採用ではなく,史料批判という学術的手続きの採用である。手続きは公開され,どの言説にも同一に適用される。(注:なるほど)
・来歴の記述・更新は基盤の職員ではなく,学協会・大学・研究者コミュニティの通常の学術プロセスに接続して行い,基盤は記述の場と形式を提供する。政府は個別の来歴記述に関与できない。

この設計でもなお,「史料批判という方法自体が一つの価値観ではないか」という批判は可能である。その通りである。本構想はその点を否認しない。検証可能性という価値へのコミットメントだけは,本基盤の譲れない前提として明示的に引き受ける。すべての価値から自由な保存は存在しない。引き受ける価値を最小限にし,それを明文化することが,できることのすべてである。

(3) カテゴリ化とリンク化:

知識グラフにおける分類・関連づけも編集行為である。分類スキーマは公開し,バージョン管理し,旧スキーマでの検索を永続的に可能とする。単一の正規分類を強制せず,複数の分類体系(学術分野別・地域別・当事者コミュニティ自身による分類)の並存を許す設計とする。アイヌ・琉球等の資料については,当事者コミュニティが自らの分類語彙で自らの資料を記述する権利を保障する。


7.公共司書AI——名前のないインターフェース

対話型AIの原則は第二版の七原則を維持しつつ,二点を追加する。

第八に,公共司書は自らの限界を表示する。回答の根拠となった資料の範囲,未収録領域,来歴情報の欠落を明示し,「基盤にないこと」と「存在しないこと」を混同させない。
第九に,公共司書の応答ログは(利用者を匿名化した上で)それ自体を保存対象とする。将来世代は,2030年代の日本人が過去に何を問うたかを検証できる。問いの履歴もまた文化記憶である。

なお第二版の禁止事項「AIを天皇の代替・国家意思の代弁者・宗教的象徴として扱わないこと」は維持するが,本版ではこの禁止が命名と設計の水準で最初から満たされている。司書を崇拝する者はいない。それがこの機能名を選んだ理由である。(注:自分の背景意識には象徴としての代替が潜んでいる)


8.情報主権の拡張——列島の外にはみ出す記憶

第二版は情報主権の問題を国内の分散管理として処理したが,二つの重大な領域が残されていた。

(1) 旧植民地期資料と「帝国の記憶」:

日本のアーカイブには,朝鮮・台湾・樺太・南洋群島・満洲に関する行政文書・調査資料・写真・収集品が大量に含まれる。これらを「日本列島の記憶」として一括した瞬間に,その記憶の帰属をめぐる問いが捨象される。本版は次の原則を置く。

・対象の定義を「日本列島に所在する記憶資料」とし,所在と帰属を明確に区別する。所在が日本であることは,記述の権利や解釈の権威が日本に専属することを意味しない。
・旧植民地・占領地に関わる資料群については,関係国・関係コミュニティの研究機関との共同記述(メタデータの複数言語・複数視点での併記)を原則とする
・高精細デジタル化を完了した資料について,関係国・コミュニティへのデジタル返還(複製データと記述権限の提供)を制度化する。原資料の返還問題は本構想の権限外だが,デジタル返還はその議論を妨げず,むしろ資料の所在を可視化することで議論の前提を提供する。
・先住民族・少数者コミュニティの資料については,国際的に議論されている先住民データ・ガバナンスのCARE原則(集合的利益・統制権限・責任・倫理)を参照し,OCAP等の先行枠組みに学ぶ。FAIR原則(見つけやすく・アクセスしやすく)とCARE原則(当事者の統制)は緊張することがあり,緊張する場合はCAREを優先する。開かれたアーカイブの理念よりも,記憶の主体の意思が上位にある。

(2) 集合的プライバシーと再識別リスク:

第二版の第7層(個人・生活史層)は本人同意と匿名化を前提としたが,これでは足りない。個々人が同意し,個々のデータが匿名化されていても,地域・集団単位で集積されれば,その共同体のプロファイリング——信仰,政治傾向,健康傾向,経済状態——が可能になる。また匿名化データは外部データとの照合により再識別されうる。本版は次を追加する。

・個人単位の同意に加え,一定規模以上の地域・コミュニティ資料の集積には,当該共同体の合意手続き(自治会・コミュニティ組織等を通じた集合的同意)を要する。
(注:これはかなり相当面倒だと思います・・・現自治会役員より)
・集合的匿名性の定量評価(k-匿名性等の技術的指標)を公開の前提とし,第三者機関による再識別攻撃の定期監査を行う。
・地域・集団単位でのオプトアウト(集積からの離脱)を認める。離脱の記録もまた保存する。
・研究利用は目的別審査とし,共同体のプロファイリングを目的とする利用——商業マーケティング,信用評価,保険料率算定,捜査目的の一括照会——を禁止する


9.本構想がもたらすもの——「安全保障」と言わないための節(注:ここは自分とは意見が分かれる)

第二版は本構想を広義の安全保障と呼んだ。本版はその語を事業の定義から外す(第4節(3))。ただし,効果としての次の五点は維持する。災害復旧の基盤,文化的レジリエンス,情報戦への耐性(権威ではなく検証可能性による防衛),ソフトパワー,将来世代への責任である。内容は第二版第9節の通りであり,繰り返さない。

一点だけ言い換える。第二版は「検証可能性こそが防衛である」と書いた。正確にはこうである。検証可能性は防衛ですらない。それは防衛が失敗した後でも残る,共同体の再起動情報である。 防衛の語彙で語れば防衛の予算と統制が付いてくる。この基盤は,守るための施設ではなく,負けても失われないための施設である。


10.ガバナンス——任命拒否に耐える設計

第二版は合議制の「文化記憶基盤機構」を提案したが,独立の合議制組織が政治権力に対していかに脆弱かは,日本学術会議の任命拒否問題(2020年)が実証済みである。(注:まったくそのとおりである)本版は,独立性を組織の善意ではなく構造に置く。

・人事:
任命制を採らない。 機構の意思決定機関は,(a) 学協会・図書館協会・博物館協会・自治体・権利者団体・地域団体からの互選枠,(b) 無作為抽出による市民委員枠(裁判員制度と同型の抽選制),(c) 当事者コミュニティ(アイヌ・琉球・在日・障害者団体等)の指名枠,の三系統で構成し,政府の任命行為を介在させない。政府は諮問と予算執行の監査に関与するが,人事に関与しない。
・拒否権の分散:
 個人生活史層の運用変更には市民委員枠の,当事者コミュニティ資料の運用変更には当該指名枠の,それぞれ同意を要件とする。
・削除の不可能化:
 資料の削除・非公開化はすべて理由付きでログに残り,ログ自体は削除できない(追記専用の分散保存)。政治権力による「都合の悪い資料の静かな消失」を技術的に不可能にする。公文書改竄が現実に起きた国では,これは杞憂ではなく仕様要件である。
・十原則:
 第二版第10節の十原則は維持する。


11.ロードマップ——人材が先,データは後

第1期(1〜3年目):養成と棚卸し
 専門人材の養成課程整備と現任者研修を最優先とする。並行して全国所在調査(何が・どこに・誰の管理下に・どの権利状態で・どの程度の危機にあるか)。ジャパンサーチ連携機関を調査の骨格として活用。法制度整備(著作権法の拡張的権利制限,寄託制度,基金設置法,機構設置法)。
第2期(2〜5年目):危機資料の優先保存
 第6節(1)の公開手続きに基づくトリアージを開始。全国の図書館・博物館・自治体・学校への人材配置。
第3期(3〜7年目):来歴管理と知識グラフ
 来歴メタデータ基盤の構築,複数分類体系の実装,共同記述・デジタル返還の協定締結。
第4期(5〜8年目):公共司書の段階公開
 教育・研究・自治体利用から開始し,来歴表示・限界表示を検証した上で一般公開。
第5期(8〜10年目):恒久体制への移行
 基金運用益による経常運営への切り替えを完了し,事業費予算がゼロになっても基盤が死なない状態を作る。10年計画の成功の定義は,計画の完了ではなく,計画の終了後も続く制度が存在することである。(注:そんなことはわかっています,軌道に乗せるまで10年というイメージだった)


12.禁止事項

第二版第13節の禁止事項を維持し,次を追加する。

・政府が機構の人事に関与すること。
・基金を取り崩し,または目的外に流用すること。
本基盤のデータを,捜査・課税・信用評価・出入国管理・監視の目的で一括照会すること
特定の言説を「正史」として認定すること。および,来歴管理の手続きを個別言説について政治的に変更すること
・旧植民地期資料を,関係コミュニティとの協議なしに一方的な記述で公開すること。
・神話的・宗教的・皇室的固有名を基盤またはAIに付すこと。(注:きびしーっ)


13.結論——鏡ではなく,図書館

第二版は「AIは文化の鏡である。鏡は命令しない」と結んだ。美しい比喩だが,撤回する。鏡は一つの像しか映さず,映す角度を誰かが決める。鏡の比喩には,第二版が抱えていた問題——単一の反映像への欲望——がまだ残っていた。

本構想が作るのは鏡ではない。図書館である。図書館は像を結ばない。図書館は,無数の書き手が残した無数の記述を,来歴とともに棚に並べ,探しに来た者に開架する。司書は薦めることはあっても,読むべき一冊を命じない。そして良い図書館は,蔵書の偏りを知っており,欠けている棚の存在を利用者に告げる。

100兆円で建てる神殿より,7兆円で建てて1000年つづく図書館を。武器は現在の安全を守るかもしれない。だが,よく整理された書庫は,敗北と忘却の後でさえ,再建の最初の一冊になる。(注:そう,自分が求めていたのはファウンデーションだったのかも知れない)

列島アーカイブが未来世代に渡すのは,答えではない。検証する権利と,そのための資料と,「何が保存されなかったか」の記録である。あとは彼らが決める。それでよい。それしか,できない。


2024年9月8日日曜日

図書館めぐり

Napkin AI の評判がSNS空間を駆け回ったので,早速確認してみる。テキストを入力すると,選択編集可能なビジュアルイメージを生成してくれるものだ。例として「図書館めぐり」と入力しただけで,これに関する数ページ分相当の以下のプレゼンテーションが生成されてしまった。すごっ!
図書館めぐり
本ドキュメントでは、図書館めぐりの魅力や楽しみ方について探求します。図書館は単なる 本を借りる場所ではなく、知識の宝庫であり、文化やコミュニティの中心でもあります。さ まざまな図書館を訪れることで、新しい発見や出会いが待っています。この記事を通じて、 図書館めぐりの楽しさを感じていただければ幸いです。

図1:図書館体験の意味

図書館の魅力
   図書館には、静かな環境で読書や勉強ができるスペースがあり、また、さまざまなジャンル の本が揃っています。特に、地域の図書館では、その地域に特化した資料や歴史的な文献が 揃っていることも多く、訪れる価値があります。

図2:図書館? それとも 自宅?

 図書館めぐりの楽しみ方
1.テーマを決める
図書館めぐりをする際には、特定のテーマを決めると良いでしょう。例えば、「歴史 的な図書館を訪れる」「アートに関する本を探す」など、目的を持つことでより充実 した時間を過ごせます。
2.新しい図書館を発見する
自宅近くの図書館だけでなく、少し足を伸ばして新しい図書館を訪れてみましょう。 各図書館には独自の雰囲気や特色があり、訪れるたびに新しい発見があります。
3.イベントやワークショップに参加する
多くの図書館では、読書会やワークショップ、講演会などのイベントが開催されてい ます。参加することで、他の利用者との交流が生まれ、新たな知識や視点を得ること ができます。
4.図書館のカフェでリラックス
一部の図書館にはカフェが併設されているところもあります。お気に入りの本を手に 取り、コーヒーを飲みながらリラックスする時間は、図書館めぐりの醍醐味の一つです。

まとめ
図書館めぐりは、知識を深めるだけでなく、心を豊かにする素晴らしい体験です。ぜひ、あ なたも図書館を訪れて、その魅力を感じてみてください。新しい本との出会いや、素敵な人 々との交流が待っています。



2024年4月23日火曜日

日本古典文学大系

香炉峰の雪からの続き

枕草子原文がネット上にないかと調べてもなかなか適当なものがない。Wikisouceのテキストデータは不完全だ。枕草子三巻本のテキストデータが国語の先生の為のテキストファイル集にある。

国立国会図書館デジタルコレクションには,日本文学大系という活字化された古典文学の全集があった。ユーザ登録するだけで,このあたりは全部オンラインでイメージを見ることができる。
日本文学大系:校註 新訂版(風間書房,1955-)
第1巻 竹取物語,伊勢物語,大和物語,濱松中納言物語,無名草子,堤中納言物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668807
第2巻 土佐日記,和泉式部日記,更級日記,枕草子,方丈記,徒然草
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668808
第3巻 落窪物語,宇治拾遺物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668810
第4巻 源氏物語上巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668811
第5巻 源氏物語中巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668812
第6巻 源氏物語下巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668813
第7巻 住吉物語,古今著聞集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668814
第8巻 大鏡,増鏡
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668815
第9巻 平家物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668816
第10巻 万葉集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668817
第11巻 三十六人集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668818
第12巻 三十六人集,三十六人集補遣,六女集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668819
第13巻 古今和歌六帖,続詞花和歌集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668820
第14巻 八代集上巻,古今和歌集,後撰和歌集,詞花和歌集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668821
第15巻 八代集中巻,拾遺和歌集,後拾遺和歌集,金葉和歌集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668822
第16巻 八代集下巻,千載和歌集,新古今和歌集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1668823


日本文学大系:校註(国民図書,1927-)
第1巻 古事記,風土記,祝詞附壽詞,宣命,高橋氏文,日本書紀
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226487
第2巻 竹取物語,伊勢物語,大和物語,濱松中納言物語,無名草子,とりかへばや物語,堤中納言物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018047
第3巻 土佐日記,蜻蛉日記,和泉式部日記,紫式部日記,更級日記,東闢紀行,十六夜日記,清少納言枕草子,方丈記,徒然草
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018057
第4巻 宇津保物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226500
第5巻 落窪物語,狭衣,住吉物語,石清水物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226519
第6巻 源氏物語上巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018050
第7巻 源氏物語下巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226543
第8巻 今昔物語上巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1179377
第9巻 今昔物語下巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226561
第10巻 宇治拾遺物語,古今著聞集
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018049
第11巻 榮華物語。榮華物語系図
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018052
第12巻 水鏡,大鏡,今鏡,増鏡
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018078
第13巻 月のゆくへ,池の藻屑,豊鏡,義経記
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018085
第14巻 保元物語,平治物語,平家物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018053
第15巻 源平盛衰記上巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018055
第16巻 源平盛衰記下巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018065
第17巻 太平記上巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018054
第18巻 太平記下巻,吉野拾遺,神皇正統記
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018064
第19巻 お伽草子,鳴門中将物語,松帆浦物語,鳥部山物語,秋の夜の長物語,鴉鷺合戦物語
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018100
第20巻 謡曲上巻
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018058
第21巻 謡曲下巻,古曲拾遺,謡曲小引
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226577
第22巻 狂言記,続狂言記,狂言記拾遺,狂言記外篇
https://dl.ndl.go.jp/pid/1018059
第23巻 本朝文粋
https://dl.ndl.go.jp/pid/1226592
第24巻 懐風藻,凌雲集,文華秀麗集,経国集,本朝續文粋
https://dl.ndl.go.jp/pid/3430362
第25巻 国文学研究資料,国文学研究書目,和歌索引,本文索引,総目録
https://dl.ndl.go.jp/pid/1179389

より最近に出版されたものだと,岩波書店の日本古典文学大系(-1967)や新日本古典文学大系(-2005),がある。日本版の生成AIを開発するならば,すくなくともこれらの全文データは学習させておくべきだと思う。あと,日本思想大系(-1992)日本近代思想大系(-1992)も必須か。筑摩書房にもいろいろ(近代日本思想大系現代日本思想大系)ある。


話を戻して,古典文学の分かりやすい全集といえば,小学館の日本古典文学全集,新編日本古典文学全集がよいらしい。三段組で,註釈,本文,現代語訳が並んでいる。枕草子はどうかと思ってみると,残念ながら絶版なのでAmazonで古本が9000円以上の値がついている。定価の倍以上だ。

ジャパンナレッジは,小学館系なので,新編日本古典文学全集全巻にもアクセスできるのだが,年間サブスクリプションが 16,500円なので,それはそれで微妙だ。万博に数千億の無駄金(建設会社と広告会社は儲かる)を投じるくらいならば,日本の古典全てのデジタルアーカイブして(情報土木会社が儲かる),国民に無料開放するほうがよほどこれからのAI時代の役に立つような気がするけど。

2023年4月11日火曜日

大規模AI実験を停止せよ

フューチャーオブライフインスティテュート(FLI)は,人類が直面している地球規模の壊滅的かつ実存的なリスクを軽減するために活動する非営利団体である。例えば,人工知能,生命工学,核兵器,気候変動などに関してである。人工知能がもたらす利益とリスクについても詳細な資料が集まっている。

最近,ここから大規模AI実験を停止せよという公開書簡が出され,イーロン・マスク,スティーブ・ウォズニアク,ユバル・ハラリなどを含む3000人以上(4/3/2023)の賛同者が集まっている。その内容をGPT-4で500字程度の日本語に要約してもらったのち修正した。DeepLにかけるより,翻訳と要約が一気に片づくのでとても便利だ(こういうのが危険性の喚起につながるわけだ)。
AI技術が人類の知性に匹敵するようになると、社会や人類に深刻なリスクをもたらすことが研究で示されており、トップAI研究所も認識しています。 
しかし、現在のAI開発競争は抑制が効かず、制御不可能なデジタルマインドが次々と生み出されています。AIシステムが人間と競合するレベルになりつつある今、これらのリスクについて深く考えるべきです。強力なAIシステムは、その効果がポジティブなものであり、そのリスクが管理可能なものであると確信できた場合にのみ開発されるべきです。

そこで、私たちはすべてのAI研究所に対し、GPT-4よりも強力なAIシステムの訓練を少なくとも6ヶ月間停止することを求めます。この期間を利用し、AI研究所や専門家が共同で安全プロトコルを策定し、独立した専門家による厳密な監視を行うべきです。ただし、この要求はAI開発そのものの停止を意味するものではありません

同時に、AI開発者は政策立案者と協力し、AIガバナンスシステムの強化を目指すべきです。最低限、専門の規制機関、高性能AIシステムの監視、AIによる被害の責任追及、AI安全研究の公的資金、AIが引き起こす経済・政治的混乱への対処能力を備えた機関の設立が求められます。

人類はAIと共に繁栄する未来を享受できます。強力なAIシステムを開発した今こそ、「AIサマー」を迎え、これらのシステムを全人類の利益に活用し、社会が適応できる環境を整えるべきです。他の潜在的に危険な技術に対して一時停止をかけてきたように、ここでも同様に行動すべきです。準備が整わないうちに秋を迎えるのではなく、「AIサマー」を長く楽しみましょう。
まあ,どうなるかわわからないが,松岡聡さんや松尾豊さんが煽っているように,日本政府も早々に大金をつぎ込んで自前の大規模言語システムを開発しておくほうがよいのではないか。その際,ネット上のフリーテキストだけでなく,国立国会図書館に所蔵されている全てのテキストをぶち込んで,多少頑なでも根が真面目なLLMを作るのがよいのではないかと夢想する。

なお,公開書簡についての疑問や異議がいくつか出されているので,参考文献をあげる。不正確な情報とそれに対する反論が混入しているのかもしれない。


[1]Pause Giant AI Experiments: An Open Letter(Future of Life)

2022年12月23日金曜日

NDLデジタルコレクション

個人送信(2)からの続き

国立国会図書館(NDL)のデジタルコレクションが12月21日にリニューアルされた。

プレスリリースによれば次のような内容である。
(1)所蔵資料をデジタル化した 「デジタル化資料」約 311 万点と収集した「電子書籍・電子雑誌等」約 150 万点を検索・閲覧・視聴できる・・・下表との関係が不明・・・
(2)全文検索できる資料が5万点から247万点に増えた。
(3)閲覧画面の改善・・・改善余地がまだあるような・・・
(4)画像検索の実現
(5)シングルサインオンの実現

前回と比較してどのあたりが増えたのかがいま一つはっきりしない。ちゃんと内訳を記録しておけばよかった。全文検索の有り無しはこのデータのままではわからない。

表:NDLデジタルコレクションの内訳(公開,登録者限定,館内限定)
 公開登録者館内小計
電子書籍・電子雑誌1,228,0870218,1281,446,215
雑  誌16,901825,998525,0421,367,941
図  書362,523560,466387,6231,310,612
博士論文15,929125,420123,322264,671
日本占領関係資料70,805029,963100,768
古典籍資料82,10717,235799,349
録音・映像関係資料6,008048,43454,442
歴史的音源6,001042,73148,732
プランゲ文庫016,01728,45944,476
官  報20,9800020,980
憲政資料10,86501,72312,588
他機関デジタル化資料3251,0338832,241
地  図4101,3051,346
パッケージ系電子出版物00338338
特殊デジタルコレクション197045242
     
合  計1,820,7691,546,1691,408,0034,774,941



2022年12月15日木曜日

本は消えるか?

本屋が消えるからの続き

日本の書店数が減少を続け,2045年にはなくなりそうだという話だったが,それは本の購買ルートが書店からアマゾンなどのオンラインサービスに変わっているだけで,本自体はこれまでのように売れていると考えてよいのだろうか。

そこで,日本の出版物の販売額を調べてみた。出版科学研究所は,出版物の取り次ぎ商社大手のトーハン(旧名:東京出版販売株式会社)が1956年に設立し,その後,公共性を担保するために,社団法人全国出版協会に委譲されたものだ。日本の出版業界の売り上げは1996年まで上り調子できたが,消費税の5%への増税を契機に減少の一途をたどっている。それが,次の図の日本の出版販売額の推移でわかる。


図:日本の出版販売額の推移(出版科学研究所から引用)

この25年の雑誌と書籍の販売額の減少傾向を外挿すると(−580億円/年),シンギュラリティの2045年にゼロになる。もっとも,書籍だけをみればあと40年の猶予があるし,電子書籍が急に立ち上がっているので,心配することはないのかもしれない。このデータからも,従来のような書店が消えゆくことは間違いない。

では,図書館はどうなるのだろうか。あの忌まわしいCCC(ツタヤ)に侵食されない公共施設としての矜持を保つことができれば,これまでに蓄積された書籍のアーカイブとして,あるいは電子書籍に対応することで,さらには最新の仮想空間へのアクセスポイントとして生き延びてほしい。

2022年7月16日土曜日

石川県立図書館


7月16日13:00に新しい石川県立図書館がオープンする。

金沢は,谷口吉郎(金沢市名誉市民)と谷口吉生の親子共同作品である玉川図書館,日本海側初の国連寄託図書館である泉野図書館,世界で最も美しい公共図書館ベスト25や世界の魅力的な図書館ベスト20に選ばれている金沢海みらい図書館など,素晴らしい図書館の宝庫だが,これにまた一つ加わることになる。

閉架式だった本多町時代とはうってかわって,非常にオープンで様々な活動との融合にも配慮した設計になっている。円形空間に30万冊の本が見渡せるように配置されているので,一見蔦屋風味を感じるが,スロープで結ばれた各レベルの本棚の高さは手の届くものであり,本の配置についても基本部分はちゃんとNDCを守っている。

ウェブサイトやYouTubeチャンネルもいい感じに仕上がっている。ということで,国内の主な公立図書館のYouTubeチャンネル利用状況を調べてみた。括弧内は,チャンネル登録者数,延べ視聴回数,開設年月である。新図書館のオープン前でも,国立国会図書館,佐賀県立図書館,につづく3位ブループ(宮城,大阪,奈良,高知)のアクティビティが確認できる。


写真:石川県立図書館の閲覧室(同ホームページから引用)

[0]SHOSHO資料検索サイト(石川県立図書館)

P. S. 1950年に開館した平和町児童図書館(金沢市立図書館の分館)は2022年3月31日に閉館していた。

P. P. S. 石川県立図書館は,小立野台地にある金沢大学工学部の跡地に建設された。近所の金沢大学の医学部や薬学部に行ったことはあるが,工学部キャンパスや近くの金沢美術工芸大学キャンパスはなかった。

2022年6月6日月曜日

図書館API

国立国会図書館の実験的なサービスに関係した資料を探していると,図書館APIの記事が見つかった。国立情報学研究所教育研修事業 「大学図書館員のための IT 総合研修」2020 年度「Web API を使ったデータの入手とその整備講義資料で,東京大学情報システム部の前田朗さんによるものだ。

国立国会図書館カーリルCiNii,その他数多の例が挙げられている。例えば,国立国会図書館では,NDC Predictorだけでなく,検索用APIと書影APIがある。カーリルでは,蔵書検索APIと近隣の図書館情報APIが提供されている。ただし,その利用にはアプリケーションキーの取得が必要な場合もある。

 

写真:国立国会図書館の書影APIの見本(APIで埋め込み)

もう少し若かったら,卒業研究で学校APIを作ってもらっていたかもしれない。よく考えて設計を始めないと,単なる検索とどう違うのかという突っ込みだらけになりそうだ。

[1]図書館におけるAPIの公開 −PORTAの事例から−(中嶋晋平)

2022年6月5日日曜日

NDC Predictor

国立国会図書館NDLラボが提供している実験的サービスの一つに,NDC Predictorがある。これは,機械学習による日本十進分類の推測アプリであり,テキストエリアに貼り付けられた書誌情報から日本十進分類(NDC9版)を推測する。

日本十進分類法の最新版は,2014年に改訂された新訂10版である。書籍で2分冊800pからなるが,ネット上の関連資料としては,日本図書館協会NDC10による分類記号順標目表や国立国会図書館 の「日本十進分類法(NDC)新訂 10 版」 分類基準がある。

実際の分類には熟練の技が必要かもしれないので,タイトルや著者や出版者などのざっくりした書誌情報で他のテキストが混ざっていても,第一から第三候補まで推測してくれるのであれば,それはそれで有難そうだ。

さっそく,試してみるが,書名と著者名で検索したところ,「統計力学 著者」は,第一候補が90%以上の確率で421/理論物理学,第二候補が1%以内の確率で426/熱力学となった。各著者の第一候補の確率は,久保亮五が99.9%,鈴木増雄99.8%,田崎晴明99.5%,長岡洋介99.2%,北原和夫・杉山忠男98.8%,湯川諭92.3%となった。稲葉肇の統計力学の形成は,91.9%だった。

REST-APIもオープンになっているので,PCからコマンド入力によって結果を機械可読な形式で取り出すこともできる。早速試してみる。APIというとHTTP-APIのGETしか使ったことがない。4回生の2009年の卒業研究でGoogleMap-APIを使って,自然観察の理科ノートを地図上に貼り付けて時空間の変化を調べようというものだった。

今回は,HTTP-POSTを使うので普通のブラウザではアクセスできない。どうするのかと思ったら,curl コマンドを使えばよいということがわかった。具体的には次のようにする。

curl -XPOST "https://lab.ndl.go.jp/ndc/api/predict" --data "bib=統計力学 久保亮五" 

予測に使う文字列は,1000文字以内であり,bib=の後にいれればよい。出力は,JSON形式となり,[ { "value":"推測されたNDCの値, "label":"推測されたNDCのラベル", "score":"推測の確信度(0-1)" }, {第二候補}, {第三候補} ],のようになる。上の例ではつぎのとおり。

[{"value":"421","label":"理論物理学","score":0.9997790320037916},{"value":"426","label":"熱学","score":2.3498150212228626E-4},{"value":"429","label":"原子物理学","score":1.2803195946766326E-5}]

lynxコマンドでも大丈夫かを確かめたところ,標準入力からデータと終了記号をいれてOK。

lynx https://lab.ndl.go.jp/ndc/api/predict -post_data
bib=統計力学 久保亮五
---

[1]開発者のための日本十進分類法

[2]NDCデータ(日本図書館協会)

2022年6月4日土曜日

NDL Ngram Viewer

 NDLラボ国立国会図書館の実験的サービスを提供するサイトである。

そこで,NDL Ngram Viewerが5月から公開されている。国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されている資料のうち,著作権保護期間が満了した図書資料約28万点のOCRテキストデータから集計した,約8.3億種類の単語及びフレーズを使って,ある単語やフレーズが年代別にどのくらい使われているかを可視化するアプリケーションだ。

複数の単語を/で並べて入力すると1つのグラフでこれらを比較することができる。横軸は年代だが,著作権保護期間満了という条件があるため,明治から戦後しばらくまでの間は有効だが,それを外れると例外的な点しかでてこない。正規表現が使えるのでかなり凝った処理ができそうだ。

グラフの横軸が年代で,縦軸に単語の出現頻度あるいは出現確率が出てくる。出現確率は,総N-gram数を分母にと書いてあったので??となった。N-gramというと,昔,全文検索エンジンを勉強していたときにでてきた記憶がある。単語のかわりに文字を単位とし,N文字の並びの出現頻度を使って全文検索を実現するものだ。単語の区切りにとらわれず,すべての文字の並びを切り出して処理していた。総N-gram数というと膨大な数にならないか。

説明をよく読んでみると,「全文テキストデータに対して異体字等の丸め処理を行った後,NormalモードのKuromojiで形態素解析を行い,形態素gramで1gramから5gramまでの総出現頻度が4以上の単語及びフレーズを集計しています」とあった。そういうことね,文字ではなく形態素解析で品詞分解したものを使うのか,しかも 1≦N≦5 なので,これならば適当な数に収まる。

さっそく,「代数学/幾何学/解析学/統計学」や「宇宙/原子/原子核/素粒子」などで調べてみた。「力学/電磁気学/熱力学/統計力学」として力学は使えないことに気付く。なぜならば形態素解析では,熱力学も統計力学も熱+力学,統計+力学に分解されるので,ここからも力学のヒットが生じてしまうからだ。うーん・・・。これは仕方ないのかもしれない。




図:Ngram Viewerの出力(電磁気学/熱力学/統計力学/量子力学)
上段は総Ngram数に対する相対確率,下段は出現頻度の絶対値

2022年5月28日土曜日

個人送信(2)

個人送信(1)からの続き

5月19日から開始された国立国会図書館デジタルコレクションの「個人向けデジタル資料送信サービス(略称:個人送信)」について,申し込みシステムの不備についてさんだんディスっていたが,5月23日に申請受理の連絡メールが届き,無事に使えるようになった。

国立国会図書館が所蔵している資料数は4560万点,そのうちデジタル化されたものが279万点,これまでデジタルコレクションで公開されていたものが56万点,個人送信開始によってこれに153万点が新たに加わり209万点となる。特に,雑誌が2万点から84万点だ。なお,博士論文は13万点,図書が56万点。

本好きが激推し!無料で読める「国立国会図書館」のお宝本」というダイヤモンドオンラインの記事があり,次のようなものが紹介されている。

中央公論社の『世界の名著』シリーズ(1966年~)。『玉川児童百科大辞典』(誠文堂新光社,1967),講談社の『スクール図解百科事典』(1966)。『大辞典(縮刷版)』(平凡社、1953年~1954年)。『川柳大辞典』(日文社、1955年)。『現代短歌分類辞典』(イソラベラ社、1954~)。『寛政重修諸家譜』。全国の市町村史。

さっそく,個人登録番号でログインして「世界の名著」で図書館・個人送信に限定して検索してみた。164件の図書がヒットする。ポプラ社の児童向け「世界の名著」,偕成社の「少年少女世界の名著」,講談社の「少年少女世界の名著」に続いて,中央公論社の「世界の名著」がでてきた。ボンヤリしているとログアウトされて,著作権処理中となって読めないモードに切り替わっているので注意が必要だ。


写真:国立国会図書館のデジタル化作戦の最先端風景(NDLより引用)

[1]元司書が語る! 国立国会図書館の絶版本「読み放題解禁」がスゴい(読書猿・書物蔵)

[2]単なる「雑学好き」で終わる人と、本当の教養を手に入れる人の差(読書猿・書物蔵)


2022年5月19日木曜日

個人送信(1)

国立国会図書館の「個人向けデジタル資料送信サービス(略称:個人送信)」が5月19日から開始された。

国立国会図書館のデジタルコレクションは,約10年前に,「国立国会図書館デジタル化資料」として古典籍資料(貴重書等),図書,インターネット資料を提供開始したのが源流となっている。その後,博士論文,録音映像資料,や様々なタイプの資料が加わってきた。

著作権など権利関係に問題がないものは,すでにインターネット公開されている。著作権保護期間が満了していない資料や著作権の確認が完了していない資料のうち,絶版などで入手困難なものは,これまで図書館送信資料として,準備の調った最寄りの図書館で閲覧することができた。

今回は,このカテゴリーに個人向けデジタル化資料送信サービスとして加わる。国立国会図書館に登録した個人が,図書館を経由することなく,入手困難資料約153万点を直接見ることができるようになる。ただし,当面,PCやタブレットでの閲覧に限られており印刷することはできない。

条件として,日本国内に居住していることと面倒なハードルをつけていた。さらに,国立国会図書館の利用者登録が必要ときた。早速申し込んでみると,本人確認書類として免許証,保険証,マイナンバーカードなどから2点が要求された。なんとかクリアすると,分かりにくい登録番号が振られ,確認終了まで5営業日待てと。これだから日本の公共セクターのデジタル化は終わっている。

とりあえず仮登録したところで,アクセスできるよとの指示があるが,パスワードではねられてしまう残念な仕様になっているようだ。パスワードを変更してみたが(できた),やはりアクセスできない。「ダメなものはダメ(オーケー,グァン姉妹)」ならば初めからそう言って下さい。

[1]個人向けデジタル化資料送信サービス 利用規約

2021年7月15日木曜日

カレル大学

石橋や池田に住んでいたころ,あるいは天王寺に通っていたころは,仕事帰りに本屋に寄るのが日課だった。天理に引っ越してからも,大和八木にはかろうじて本屋らしきものがあったので,毎日新刊をチェックすることができた。

でも本屋の消滅が進み始めたころに定年となったたため,本屋にいくのは2,3ヶ月に1度のペースになってしまった。アマゾンやグーグルでは目的の本を探せるかもしれないが,目的としない本に出会うことができない。ネット上でこれを可能にするにはVRが次の段階まで進化して,アーサー・C・クラーク(1917-2008)のダイアスパーの世界が実現するのを待たなければならない。

そんなとき,YouTubeの読書系チャンネルが未知の本を探すための補完になるかもしれない。ヨビノリたくみと斎藤明里のほんタメをみていたら,【全10冊】小説1000冊読んだ私が最近読んだ本というタイトルで,アンナ・ツィマ(1991-)のシブヤで目覚めてを先月末に紹介していた。そうか,深緑野分によればコニー・ウィリス(1945-)なのか。ますます読んでみたくなる。

そのアンナ・ツィマと訳者の阿部賢一・須藤輝彦を招き,実践女子大学文学部准教授のブルナ・ルカーシュが司会をする特別トーク・イベントがあった。アンナ・ツィマとブルナ・ルカーシュが卒業しているのが,プラハにあるカレル大学だ。1348年創設のドイツ語圏最古の大学である。

カレル大学は知らなかったけれど,ヤン・フス,ニコラ・テスラ,カレル・チャペック,フランツ・カフカ,ミラン・クンデラや,多くのノーベル賞学者を輩出しているヨーロッパの主要大学のひとつだった。アルバート・アインシュタインやエルンスト・マッハもこの大学の教員だった。


写真:歴史地区にある旧校舎=チェコ国立図書館(Wikipediaから引用)

2021年5月31日月曜日

平和町児童図書館

社会教育センターからの続き

社会教育センターに併設されていた石川県立図書館は閉架で利用しなかったと書いたが,金沢で図書館といえば,小学生のころに平和町の児童図書館に通っていた。金沢市立図書館の分館の一つであり,現在も開館している。

小学校5年か6年のころに,政岡良一君か横谷富夫君あたりに連れていかれてからときどき通うようになった。寺町の家から歩いて20分くらいだろうか。小柄で無口なおじいさんが窓口を担当していて,利用者もほとんどいなかったが,子供むけの本を読んだり借りて帰ったりした。

夏目漱石の坊っちゃんを借りたのはこの児童図書館だったが,10回くらい繰り返して借りた気がする。あとは,当時発刊されたばかり国土社の発明発見物語全集(1964)だ。板倉聖宣さんらが編集していて,科学史の立場から科学の全分野をていねいに紹介するものだった。ほとんど読んだがいずれも名著だった。20年後に新しく編集されて17冊のシリーズとなっていた。そこには,大教大の理科教育研究室の鈴木善次先生も名を連ねているのだった。

国土社 発明発見物語全集(1964)
1.ピタゴラスから電子計算機まで:数学
板倉聖宣編
2.コロンブスから人工衛星まで:宇宙
板倉聖宣編
3.デモクリトスから素粒子まで:原子
板倉聖宣編
4.らしん盤からテレビジョンまで:電気
板倉聖宣編
5.時計からオートメーションまで:機械
板倉聖宣編
6.くるまから宇宙旅行まで:交通
岩城正夫編
7.酸素ガスからナイロンまで:化学
大沼正則編
8.鉄からプラスチックまで:物質
大沼正則編
9.家畜から人工生命まで:生物
道家達将編
10.おまじないから病気のない世界へ:医学
道家達将編


写真:国土社の発明発見物語全集(1964)の表紙(明倫館書店から引用)

2021年5月16日日曜日

社会教育センター

本多町に社会教育会館ができたのは中学1年のときだった。会館に設置された県立図書館は閉架だったこともあってほとんど利用しなかったが,社会教育センターの方は土曜日に教育映画教室を開いていたので,毎週のように通っていた。

子ども向けの内容も多く,まわりは小学生ばかりだったので,中学生の我々はちょっと浮いていたかもしれない。土曜日の午後になると畦地君,有坂君,出島君,横谷君のいつものメンバーで下菊橋を渡って往復した。

印象に残っているのは,NHKのドキュメンタリーの「カラコルムへの道(1963)」である。東京大学のカラコルム遠征隊(京大だと思っていた)によるバルトロ・カンリ初登頂の記録だ。国語の教科書にあった河口慧海の西蔵探検のイメージと重なって記憶に定着した。
・昭和三十八年(1963) 12月19日:県は下本多町の県営アパートを含む県有地3,300平方メートルに、来春から3年計画で社会教育センターを建設することになり、本年度建設費6,500万円を追加予算に計上、県議会の議決を得た。建物は5,490平方メートルの4階建、兼六園の県中央図書館もセンターに収容する。
・昭和三十九年(1964) 6月9日:本多町に建つ石川県社会教育センターの起工式がおこなわれた。
・昭和四十一年(1966) 5月1日:本多町3丁目に完成した石川県社会教育会館が開館した。同会館には社会教育センター県立図書館がはいった。地下1階、地上4階、延べ6,382平方メートル、総工費3億円(兼六園内の旧県立図書館は6月中に取りこわす)。
・昭和五十七年(1982) 12月4日:県社会教育会館の増改築工事が完了し、落成式が行われた。石川県立図書館開館70周年記念式典を挙行(12月9日)。
県立図書館は,明治12年(1897年)に前田家蔵書3万冊が石川県勧業館内に設置された図書室で公開されたものを起源として,明治45年(1912年)に石川県立図書館が開館した。平成28年(2016年)に新石川県立図書館基本構想が検討され,令和元年(2019)年に,小立野の金沢大学工学部跡地で,新石川県立図書館が着工された。


写真:石川県社会教育会館(パブリネットから引用)


2021年4月13日火曜日

蔦屋書店

 京阪枚方市駅前の商業施設,HIRAKATA T-SITEには蔦屋書店が入っている。最近は本屋がどんどん消滅しているが,その中で蔦屋書店だけが生息域を拡大している。春日原始林に蔓延るナンキンハゼみたいなもので,シカが食べないことから森林生態系の変化が危惧されている。まあそもそも春日原始林はアマゾン熱帯雨林で置き換えられてしまったのかもしれないが。

1983年に開業した蔦屋書店の1号店が蔦屋書店枚方市駅前なので,ここは大変由緒正しいTSUTAYAの聖地なのだった。レンタルCD・ビデオのTSUTAYAと併せて,1985年に設立されたカルチャ・コンビニエンス・クラブ(CCC)によって運営されている。このCCCの名前が知れ渡ったのが,図書館の委託管理事業への進出である。当時の樋渡啓祐市長によりCCCが初めて指定管理者となった武雄市図書館では,CCCの関連会社からゴミのような中古書籍を多数購入したり,貴重な地域の歴史資料資料を除籍・廃棄処分したり,改革の名の下に図書館機能をズタズタにしてしまった。

そんなわけで,CCCには悪い印象しか持っておらず,地元の図書館が浸食されないように祈るばかりであるが,蔦屋書店も自分の肌には合わないのだった。

(1) 選書がお洒落な本に偏っており,書店の規模に対して,理工書やしっかりした人文科学書の割合が少ない。本屋ではなくファッション系の小物のお店になってしまっている。あるいはファッションの一部としての見せかけの書籍群。その極限が大きな壁面に糊付けされている洋書の見掛け倒しである。本物の図書館では,一応アクセスは確保されている。大嫌いな安藤忠雄設計のこども本の森中之島も同じ発想だ。

(2) 書籍の配列がでたらめになっている。よくいえばテーマ別で新しい発見を促すともいえるが,あるべき場所に本がないので特定の意図を持って探すのが面倒である。端末で検索せよというならば,アマゾンとどこが違うのか。文庫本が著者のアイウエオ順なのはまだ許せるとして,場合によっては単行本と文庫本が混在し,恣意的な分類をしている。

そんなわけで,仮想空間で自分好みの本屋体験ができるアプリの出現を待っている。