2021年11月30日火曜日

防災省

 NHK午前の「みみより暮らし解説」で,富士山噴火における火山灰被害が取り上げられていた。首都圏の人にとっては非常に重要なテーマだ。調べてみると,NHKではしばらく前から,富士山噴火のリスクについての番組が多くなっている。どんな意図なのかわからないが(改憲時の緊急事態条項がらみか)キャンペーンを繰り広げている。

2001年の中央省庁再編の際に,運輸省,建設省,北海道開発庁,国土庁が統合して国土交通省ができたが,このときに国土庁にあった防災局が内閣府に移管されている。その内閣府の防災情報の火山対策のページの中に,2020年3月まで設けられていた大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループの資料がある。

これによれば,風向きにもよるが首都圏では最大10cmの降灰が数日でおこる。桜島の近くの鹿児島市の場合でもここ10年間の1月あたりの最大値が1650g/m^2なので(火山灰の平均密度を1g/cm^3として)高々1 mmの降灰である。その100倍のオーダーの火山灰が首都圏の4000万人に降りかかることになる。

その結果,(1) 電力網の漏電,(2) 火力発電所のエアフィルタ詰まり,(3) 上水道の汚染,(4) 下水道の詰まり,(5) 電車・列車運行の停止,(6) 自動車交通の渋滞・停止,(7) 航空機の停止,(8) 呼吸器などへの健康被害,(9) 火山性ガスによる金属腐食 などなど,社会生活への致命的ダメージが懸念される。沖縄などの軽石被害もたいへんだが,その比ではない。

どう考えても,防衛省の5兆や6兆の防衛費は,災害防衛費(感染症対策含む)に統合(組織も含めて)したほうが,日本の国土とそこに住む人々を守るにふさわしいような気がして,防災省で検索したところ,関西広域連合や石破茂によってそんな話題がすでに出ているのだった。


写真:1707年の宝永噴火絵図(NHK 富士山噴火降灰シミュレーションから引用)

2021年11月29日月曜日

スマートヘルメット

NHKスペシャル「中国新世紀(3)実験都市深圳 メイドインチャイナの行方」を見た。流通用AIロボットの会社である,Dorabot(ドラえもんにインスパイアされている)もすごかったけれど,びっくりしたのはスマートヘルメットだった。

スマートフォンの次に来る新しいイノベーションツールは何かとずっと考えていた。時代はズレるがストリンガーに潰されたSONYの旧AIBO(1999-2005)や,電脳コイル(2007)の電脳メガネが実体化したようなGoogleグラス(2013-2015)はその候補だった。けれど,いまだに登場していない。

いや,ドローンバーチャルリアリティヘッドセットのように,それは既に登場しているのかもしれない。しかし,スマートウォッチは,それだけでは完結しないものなので違うような気がする。やはり,スマートフォンを代替する単一のウェラブルデバイスが必要だ。

視覚や聴覚へのアクセスと常時身に付けられるという条件で思い浮かんだのが帽子である。スマートキャップ ,これならば常時装着することが可能だ。バイザーのところを工夫すればディスプレイにもなるし,将来的には脳インターフェースをとることもできる。

表面に可塑性を持つ太陽電池をコートすれば,充電もより容易になる。計算すると太陽定数から数Wというオーダーになったが,晴れた日に外にいる時間は短いだろうから現実的ではなかった。そもそも事故の時のスマートキャップのバッテリー破損の問題をクリアするほうが大変だろうか。それはスマートフォンでも同じか。

そんなところに,スマートヘルメットがでてきたので,先を越されたかと思った次第。紹介されていた自転車用のものはたいした機能はなかったが,バイク用は,日本製のCROSS HELMETもオーストラリア製のForciteも,それなりのポテンシャルを秘めているように見える。ヘッドアップディスプレイには,速度やルート,さらには後方の映像などの補助情報を準視線上に投影でき,外音取り込み可能なインナーイアーヘッドセットも使える。


写真:NSウェスト&SHOEIのスマートヘルメット(NSウェスト株式会社から引用)

2021年11月28日日曜日

中村歌右衛門

人間国宝の歌舞伎の中村歌右衛門(六代目:1917-2001)といえば,文化勲章受章者でもあり女形の最高峰として過去の映像をみるくらいなのだが,初代の中村歌右衛門(1714-1791)は,医師の子として金沢に生まれた。そんなわけで,屋号は加賀屋だったのが,四代目のときに成駒屋にかえている。

その初代中村歌右衛門の墓所が金沢にある。知りませんでした。東山寺院群の一角にある日蓮宗の真成寺(しんじょうじ)は,鬼子母神が祀られていることで有名とのこと。寺町寺院群にも浄土真宗の寺はなかったが,このあたりもそうなのか。


写真:金沢東山の真成寺(@19960912_maruさんのtwitterから引用)

2021年11月27日土曜日

21世紀への旅行

1960年代前半,自分が子供のころは日本の高度経済成長の時代と重なっていて,未来への夢や希望が色濃く感じられたものだ。やがて,万博が終わりオイルショックや不況を迎える1970年代にはその反動からか「モーレツからビューティフルへ」というCMが流れ,地球の寒冷化が話題になる短調の時代だった。

1962年(小学校3年のころ)に刊行された読売新聞科学報道本部と手塚治虫による「21世紀への旅行」は,鉄腕アトムのノンフィクション版のような趣があって,むさぼるように読んだものだ。

リアルな社会予想に基づく未来の世界のイメージは,小学館の科学図説シリーズの「未来の世界」でも読むことができた。まあ,台風の進路をコントロールするとか,原爆で運河を掘るとか,ベーリング海峡をつないでダムにするというたいそうな話も満載。

その科学図説シリーズは,ちょっと大人びたデザインで文字による情報量の多い図鑑であり,これも何冊か買ってもらって愛読した。たぶん太字のものは持っていたはずだがこの記憶にも若干微妙なところがある。

1) 動物の世界 (科学図説シリーズ ; 1) / 高島春雄, 今泉吉典 著[他] (小学館, 1960)
2) 昆虫と植物 (科学図説シリーズ ; 2) / 古川晴男, 矢島稔 著[] (小学館, 1962)
3) 生命のふしぎ (科学図説シリーズ ; 3) / 八杉竜一, 大滝哲也, 日高敏隆 著[他] (小学館, 1961)
4) 人類の誕生 (科学図説シリーズ ; 4) / 石田英一郎, 寺田和夫 著[他] (小学館, 1960)
5) 人体のすべて (科学図説シリーズ ; 5) / 岡本彰祐, 岡本歌子 著[他] (小学館, 1964)
6) 宇宙のすがた (科学図説シリーズ ; 6) / 畑中武夫 等著[他] (小学館, 1960)
7) 地球の科学 (科学図説シリーズ ; 7) / 畠山久尚 等著[他] (小学館, 1962)
8) 宇宙旅行 (科学図説シリーズ ; 8) / 原田三夫 著[他] (小学館, 1961)
9) 数の世界 (科学図説シリーズ ; 9) / 矢野健太郎 著[他] (小学館, 1963)
10) エネルギーと原子力 (科学図説シリーズ ; 10) / 崎川範行, 遠藤一夫, 島田豊治 著[他] (小学館, 1962)
11) 科学の歴史 (科学図説シリーズ ; 11) / 菅井準一 等著[他] (小学館, 1961)
12) 未来の世界 (科学図説シリーズ ; 12) / 高木純一, 岸田純之助 著[他] (小学館, 1963)


写真:21世紀への旅行の書影(復刻版しかみつからなかった)

2021年11月26日金曜日

世界の都市総合力ランキング

 最初に竹中平蔵の顔写真が出てきて辟易するのだが,森記念財団 都市戦略研究所が出している世界の都市総合力ランキング(GPCI)の2021年度版が公開された。

ここで注目したいのが,大阪維新に牛耳られるようになった大阪市の凋落ぶりである。橋下徹が2008年から2011年まで大阪府知事,2011年から2015年まではスイッチした大阪市長として君臨し,松井や吉村に引き継がれた時代である。世界の他の都市には類を見ないようなランキングの低下(2012年の17位から2021年の36位までの19ランクダウン)が認められる。

大阪のマスコミは完全に維新と一体化しているため,こうした状況やコロナの死亡数対人口比が全国でダントツであることは報じられず,吉村知事礼賛に終始するのであった。

2012->2021
1->1 London
2->2 New York
4->3 Tokyo
3->4 Paris
5->5 Singapore

7->6 Amsterdam
8->7 Berlin
6->8 Seoul
22->9 Madrid(+13)
14->10 Shanghai

xx->11 Melbourne
15->12 Sydney
9->13 Hong Kong
xx->14 Dubai
20->15 Copenhagen

23->16 Los Angels
11->17 Beijing
13->18 Barcelona
10->19 Vienna(-9)
21->20 Toront

18->21 Zurich
16->22 Stockholm
31->23 San Francisco
19->24 Brussels
12->25 Frankfurt(-13)

28->26 Chicago
27->27 Boston
xx->28 Dublin
24->29 Vancouver
xx->30 Helsinki

26->31 Geneva
37->32 Moscow
29->33 Mikan
25->34 Istanbul(+9)
35->35 Bangkok

17->36 Osaka(-19)
30->37 Washington, DC
32->38 Taipei
34->39 Kuaka Lumpur
xx->40 Buenos Aires

2021年11月25日木曜日

六人部暉峰

 日本経済新聞朝刊の文化欄に六人部暉峰(1879-1956)の話があった。他に情報がないかと探してみると,京大人文科学研究所の論文で「六人部暉峰について --竹内栖鳳門の女性画家--(2021)」が見つかった。著者は向日市文化資料館の里見徳太郎さんで,何のことはない日経文化欄の記事を書いた本人だった。

六人部暉峰は,京都の向日神社の神職の娘であり,10代前半に竹内栖鳳(1862-1942)に弟子入りして本格的に日本画を学び始めた。15歳から各種展覧会に出品し,パリ万博に出展された京都の女性画家の3名に,上村松園(1875-1949)と並んで選ばれるほど高い評価を得ていた。1898年から7人の竹内栖鳳の子供を産み,20代半ばにはその活動を終息させている。

栖鳳は,1942年に湯河原で最期を迎えるが,暉峰は晩年まで湯河原の栖鳳のそばで彼を支えていたようだ(京都の本邸には本妻の奈美がいる)。熱海の保善院には,栖鳳の筆塚や爪塚があり,暉峰の代表作である「白川殿攻落」が所蔵されている。


写真:六人部暉峰白川殿攻落」(向日市文化資料館ポスターより引用)

2021年11月24日水曜日

天狗刺し

 NHKの新人落語大賞NHK新人演芸大賞から派生している。今年は奇数年なので,大阪のNHKホールで開催された。東西107名の参加者から勝ち抜いた6名のファイナリストの中に,笑福亭松鶴(六代目)の弟子の笑福亭松喬(六代目)の弟子の笑福亭生喬の弟子の笑福亭生寿が出るというので珍しく落語の録画を見ていた。

抽選で最後になった,桂米朝(三代目)の弟子の桂米二の弟子の桂二葉が「天狗刺し」で大賞を獲得した。5名の審査員の評価は納得のいくもので,二葉は全員から満点の10点を得て,女性初の大賞となった。なお,笑福亭生寿は第2位の得点だった。

主人公が,新しい商売としててんすき屋(天狗のすき焼き屋)を始めるといって,材料の天狗を捕獲する(刺す)ために鞍馬山へ行く。奥の院の坊さんを天狗と間違えて捕まえた主人公は,京都の町に下りてくる。

さて,米朝の話では次のような下げになる。向うから大きな青竹を10本ばかり担いで来る奴がある。男はもう真似する奴が現れて天狗を捕まえに行くとのかと思い,商売仇を呼び止める。男「お前も鞍馬の天狗さしか」竹を持った男「いやあ、わしは五条の念仏ざしじゃ」

念仏尺(ねんぶつざし)とは,「近江の伊吹山から念仏塔婆が掘り出され,それに精確な尺度が刻んであったので,これを模して念仏尺と名づけた」あるいは「西本願寺大谷本廟のあたりで採れる竹を使っていたことから「念仏」の名称になったという。精密、精巧であったため、緒方洪庵もメートル法を尺貫法に換算する際、基準として用いた」という竹の物差しのことだ。しかし,今では誰も知らないので,これでは落ちない。そこで,二葉は,坊主の衣と天ぷらの衣をかけた下げにうまくアレンジしていた。


写真:鞍馬の天狗像(京都旅屋のページから引用)

2021年11月23日火曜日

三角関数の積

その鈴木貫太郎の問題で次の式の値を求めよというのがあった。

$\cos{\dfrac{\pi}{33}}\cos{\dfrac{2\pi}{33}}\cos{\dfrac{4\pi}{33}}\cos{\dfrac{8\pi}{33}}\cos{\dfrac{16\pi}{33}}$

三角関数の積和の式を繰り返し使うのか,それにしても面倒だろう,どうするのかなあと解答を見ると,$\sin{\dfrac{\pi}{33}}$をかけて倍角の公式からドミノ倒しのようにしてあっという間に解けてしまった。なるほどね。

そこでMathematicaで一般化してみた。

f1[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n + 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g1[j_] := Table[f1[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g1[5]
{1/32, -(1/1024), 1/32768, -(1/1048576)}

f2[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n - 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g2[j_] := Table[f2[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g2[5]
{-(1/32), -(1/1024), -(1/32768), -(1/1048576)}


2021年11月22日月曜日

フェルマーの小定理

フェルマーの小定理は,素数を$p$とし,$p$とは互いに素な整数を$a$として,$a^{p-1} \equiv 1 \quad (\mod p \ ) $というものである。

頭の体操のためによく見ている鈴木貫太郎の YouTubeチャンネルでは,ちょっと目には解きにくそうな整数問題に,縦横無尽にmodを使って条件を絞り込んでいくというパターンがよく見られる。自分が,高校生のときには,こんなふうにしてmodを活用するということがなかったので,新鮮な感じがしている。ここまで自由に使えれば便利には違いない。

そんなわけで,フェルマーの小定理あるいは,その他のmod問題の勘を養成するための1行コードをMathematicaで書いてみた。

f[n_] := Table[ Table[Mod[i^k, Prime[n]], {i, 1, Prime[n]}], {k, 1, Prime[n] - 1}]
g[n_] := Table[Table[Mod[i^k, n], {i, 1, n}], {k, 1, n - 1}]

Do[{Print[g[i], " "]}, {i, 2, 7}]
{{1,0}}
{{1,2,0},{1,1,0}}
{{1,2,3,0},{1,0,1,0},{1,0,3,0}}
{{1,2,3,4,0},{1,4,4,1,0},{1,3,2,4,0},{1,1,1,1,0}}
{{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0}}
{{1,2,3,4,5,6,0},{1,4,2,2,4,1,0},{1,1,6,1,6,6,0},{1,2,4,4,2,1,0},{1,4,5,2,3,6,0},{1,1,1,1,1,1,0}} 


2021年11月21日日曜日

安倍晴明

安倍晴明(921-1005)といえば,先日はライバルの道魔法師(蘆屋道満)が活躍する芦屋道満大内鑑を国立文楽劇場で見たところだ。桜井市にある安倍文殊院を訪ねたとき,お堂の中に安倍晴明の坐像があったので,ここが出身地かと思っていたがそうではなかったようだ。

阪堺電車に乗って,大阪阿倍野の北畠あたりに散歩に行った帰りに,安倍晴明神社を発見した。それによると,出身地には諸説あるが(大和は含まれていない),大阪説が一番有力と主張している。その根拠は「葛の葉伝説」なのだが,それでいいのか。なお,京都の晴明神社は,安倍晴明の没後に邸跡に御霊を鎮めるために設けられたので,生誕地とは関係ない。

日曜午後の安倍晴明神社は,お参りの人や学習ツアーの団体などでかなり賑わっていた。よくわからないが,社務所の横にちょっと怪しい占いコーナというのがあって日替わりで相談に応じていた。

P. S. 神社の近所には,The MARKET Grocery というお店がオープンしたばかりで,美味しいリンゴとミカンを試食させてもらった。ミカンを買ってしまったのは,もしかすると葛の葉の狐に化かされたからかもしれない。


写真:安倍晴明神社の石碑(撮影 2021.11.21)


2021年11月20日土曜日

ギリシャ文字の斜体

統計力学のテキストつながりで,冨田博之先生のウェブサイトを見ていると,2021年度の大学入試共通テストの「物理」「物理基礎」の話題が出てきた。

数年前の阪大・京大の個別学力検査の物理で,波動(音)の問題の出題ミスが話題になった。その当時,日本物理教育学会の近畿支部長だったので,あれやこれやの対応に追われたような,それほどでもなかったような。

その出題ミスを指摘した人の一人が予備校講師の吉田弘幸さんであり,これが契機となって,入試制度や社会問題などにも関わって広く発言されている。

その吉田さんが,2021年度の共通テストの物理の問題の問題点を指摘した。特に,薄膜干渉の問題が出題ミスであると指摘しているのだが,これに対して冨田さんが反論している。これは,冨田さんの方に分があるわ。

ところで,吉田さんの些細な指摘の方が気になった。「数学や物理では変数 $X$ の変化を $\varDelta X$ で表します。$\varDelta$ はギリシャ文字の $\Delta$ を斜体で表したものです。ところが,この問題(第1日程)では斜体でない $\Delta$ を使っています」

これまで,自分がLaTeXで $\Delta$を出力する際は,斜体かどうかなんて気にしていなかったのだ。この点は吉田さんが正しいかもしれない。ということで,確かめてみると,ちょっと面倒なことになっていた。

\begin{equation} \alpha \ \beta \ \gamma \ \delta \ \epsilon (\varepsilon) \ \zeta \ \eta \ \theta (\vartheta) \ \iota \ \kappa \ \lambda \ \mu (\umu) \ \nu \ \xi \ o \ \pi \ \rho (\varrho) \ \sigma (\varsigma) \ \tau \ \upsilon \ \phi (\varphi) \ \chi \ \psi \ \omega (\varpi)\end{equation}

\begin{equation} {\rm A} \ {\rm B} \ \Gamma \ \Delta (\varDelta) \ {\rm E} \ {\rm Z} \ {\rm H} \ \Theta \ {\rm I} \ {\rm K} \ \Lambda \ {\rm M} \ {\rm N} \ \Xi \ {\rm O} \ \Pi \ {\rm P} \ \Sigma \ {\rm T} \ \Upsilon \ \Phi \ {\rm X} \ \Psi \ \Omega \end{equation}

\begin{equation} A \ B \ \mathit{\Gamma} \ \ \mathit{\Delta} \ \ E \ Z \ H \ \mathit{\Theta} \ \ I \ K \ \mathit{\Lambda} \ \ M \ N \ \mathit{\Xi} \ \ O \ \mathit{\Pi} \ \ P \ \mathit{\Sigma} \ \ T \ \mathit{\Upsilon} \ \ \mathit{\Phi} \ \ X \ \mathit{\Psi} \ \ \mathit{\Omega} \end{equation}

P. S. \umu は,単位のミクロン(μ)で使うための立体のミュー(オイラーフォント)であるが,blogspotの環境では出力できない。

2021年11月19日金曜日

少年少女ものがたり百科

偕成社の「少年少女ものがたり百科」のシリーズは,子供の頃に何冊か買ってもらった。調べてみると次のリストのようなタイトルが並んでいる。出版されたのが,1961年から1963年ということは,自分が小学校2年から4年のころにかけてだ。

当時は,夕方になると毎日のように父親に本屋(十一屋のヨコノ書店)に連れて行ってもらったので,本を買ってもらう機会も多かった。太字の本は家にあって読んだ記憶がある。下線の本は,もしかしたらあったかもしれないし,なかったかもしれない,というわけで60年前の記憶のほぼ50%くらいは不確かで怪しいのだった。

三石巌さんの「発明とくふうの光」はアマゾンの中古書で 12,990円もする。


写真:発明とくふうの光の書影(amazonから引用)

1) 日本のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 1) / 宮下正美 著[他] (偕成社, 1961)
2) 世界のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 2) / 中山光義 著[他] (偕成社, 1961)
3) 発明とくふうの光 (少年少女ものがたり百科 ; 3) / 三石巌 著[他] (偕成社, 1961)
4) 十二人の探検家 (少年少女ものがたり百科 ; 4) / 野田開作 著[他] (偕成社, 1961)
5) 星と伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 5) / 野尻抱影 著[他] (偕成社, 1961)
6) 日本の英雄 (少年少女ものがたり百科 ; 6) / 中沢巠夫 著[他] (偕成社, 1961)
7) 世界の英雄 (少年少女ものがたり百科 ; 7) / 浅野晃 著[他] (偕成社, 1961)
8) 偉人の光 (少年少女ものがたり百科 ; 8) / 久保喬 著[他] (偕成社, 1961)
9) 宇宙のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 9) / 日下実男 著[他] (偕成社, 1962)
10) 数のふしぎ・形のなぞ (少年少女ものがたり百科 ; 10) / 宮下正美 著[他] (偕成社, 1962)
11) 日本の伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 11) / 山本和夫 著[他] (偕成社, 1962)
12) 世界の伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 12) / 小出正吾 著[他] (偕成社, 1962)
13) 偉人の少年時代 (少年少女ものがたり百科 ; 13) / 二反長半 著[他] (偕成社, 1962)
14) 日本一・世界一 (少年少女ものがたり百科 ; 14) / 中山光義 著[他] (偕成社, 1962)
15) 動物のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 15) / 小林清之介 著[他] (偕成社, 1962)
16) 植物のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 16) / 真船和夫 著[他] (偕成社, 1962)
17) 日本歴史のひかり (少年少女ものがたり百科 ; 17) / 中沢巠夫 著[他] (偕成社, 1962)
18) 世界歴史のひかり (少年少女ものがたり百科 ; 18) / 浅野晃 著[他] (偕成社, 1962)
19) 理科のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 19) / 三石巌 著[他] (偕成社, 1963)
20) 世界のオリンピック (少年少女ものがたり百科 ; 20) / 大島鎌吉 著[他] (偕成社, 1963)
21) 日本をめぐる (少年少女ものがたり百科 ; 21) / 本木修次 著[他] (偕成社, 1963)
22) 世界をめぐる (少年少女ものがたり百科 ; 22) / 飛田正夫 著[他] (偕成社, 1963)

2021年11月18日木曜日

お化け煙突

 NHKの映像の世紀プレミアムの再放送,第15回の「東京 夢と幻想の1964年」では,オリンピック前後の東京の様子が映し出されていた。もちろんオリンピックの話題が中心なのが,その前後には意外な都市の表情があった。

1つは,当時の東京が非常に汚かったということだ。家庭のゴミはその辺の道路や川に無造作に捨てられて,街中に腐臭が漂っているようだ。また,血液銀行という名の売血制度があった時代でもあり,日銭を稼ぐための建設労働者が行列していた。その中で,首都高速道路が建設され,東海道新幹線が開業している。

エピソードの一つにお化け煙突の解体というのがあった。隅田川沿いの足立区にあった東京電力の千住火力発電所の4本の煙突のことだ。もちろん現物を見たことはないが,子供のころから知っていた。

それは,偕成社の少年少女ものがたり百科(10)「数のふしぎ・形のなぞ」で取り上げられていたからだ。お化け煙突は,4本の煙突が2本づつ平行に配置されていて,見る方向によって,1本,2本,3本,4本に見えるというものだ。

この他にも,曽呂利新左衛門の褒美の話(等比数列の和),地球の鉢巻の話(円周と半径の関係),一億まで数えるのにかかる時間の話,ガウスのレンガ積みの話(等差数列の和),アルキメデスの原理の話,パスカルの三角形の内角の和の話などが印象深かった。

1962年の出版で,小学校低学年で買ってもらったお気に入りの本の一つで何度も何度も繰り返して読んでいた。


写真:「数のふしぎ・形のなぞ」の書影(日本の古本屋から引用)

2021年11月17日水曜日

オカジマサエ

 非常勤の授業からの帰り。今日はたまたま家人の用務先が大学の近くだったので,車でピックアップしてもらい,どこかで昼食をとることになった。

選んだのが,広陵町のCafe OMO屋。着いてみれば,田んぼの中にある昔の紡績工場の跡を改装した渋い建物だった。平日にも関わらず駐車場はほぼ満杯であり,店の入口で20分くらい待ってからようやく席につくと周りは若い人ばかりだ。

ランチの牛すじ煮込みカレーを食べながら隣の席の女性グループを見ると,いつの間にかワークショップが始まっていた。そういえば,待ち席の壁に,ひらがな絵本の原画が並んでいたのを思い出した。その作者本人が,絵本のイラストの切り抜きを小さなフレームにコラージュするコツを指導しているのだった。

食後のコーヒーを飲み終わって帰ろうとしたら,出口のあたりでオカジマサエさんが描いた絵本「いいもんみーつけた」を販売している。著者のサインがもらえるとあったので,早速,ワークショップの手を止めてお願いしてみたところ,快く孫のすーちゃん宛のサインをしていただいた。

オカジマサエさんの,声がとびだすひらがな絵本「あいうえお」は,現在た行まできている。帰って,Cafe OMO屋のことを調べていたら,今年の12月26日で閉店になるようだ。残念。


写真:オカジマサエの絵本「いいもんみーつけた」の書影(2021.11.17撮影)

2021年11月16日火曜日

taknal

 NHKの夕方の定番,ニュースほっと関西を見ていたら,大阪ガスの人が開発したスマホ用アプリが紹介されていた。taknalというものだ。「ユーザー同士がすれ違うことで,お互いがオススメする本が交換されるアプリです」ということだが,SNS機能はあえてつけていない。

本屋がまだ健在だったころ,しかもその本屋に通うことができていたころは,新しい本との出会いは毎日のようにあった。今では,インターネットで検索できるとはいうものの,残念ながら,インターネットの検索では思いがけない出会いを得ることが難しい。あくまでも自分の関心空間の近傍でしか探索が進まない。

そこで,スマートフォンの位置情報と,ユーザーのおすすめ情報を掛け合わせて,偶然の出会いを演出したのがこのアプリである。ユーザの情報は100字以内の感想文しか交換されないので(もちろんソーシャルセキュリティホールは色々と作れるだろう),比較的安心して利用できそうだ。

が,残念ながらアプリのバク出しが不十分なのか,iPhone SE2(iOS 14.8)では,自分のおすすめ本を登録できなかった。また,自宅に閉じこもっていると,位置情報による発見の確率も低いままで止まってしまうのも仕方がない。


図:taknalアプリアイコンのイメージ(taknalホームページから引用)

P. S. なお,taknalという名称は「読みたくなる」からきている。やっぱり使えなかった

2021年11月15日月曜日

ピクミンブルーム

日本でテレビ放送が始まった 1953年の生まれなので,テレビ環境には十分適応している。ラジオはどうかというと,遅ればせながら高校生から大学生にかけて深夜放送を聞いて育った。もちろん小学生時代の貸本屋から始まって漫画雑誌も大丈夫。コンピュータが登場するのは大人になってからだったが,これもなんとかクリアできた。

ところが,残念ながら自分が適応できなかった種目がある。コンピュータゲームだ。そのはしりのアーケードゲームは1979年に大流行したスペースインベーダー。柳田さん夫妻が新婚旅行でハマったやつだ。喫茶店のようなところで何回か遊んだことはあるが,はまるにはほど遠かった。

やがて,1983年の任天堂ファミリーコンピュータを嚆矢に,次々と家庭用ゲーム機が登場する。残念ながら,結婚してそろそろ子供ができようかという頃であり,全く興味も関心もなかった。子供たちが成長する過程でも,ゲーム機の類を買い与える機会はなかった。1996年のたまごっちをのぞいては。自宅には,PC-9801があり,後にはMacBookなども使えたのだけれど,ポストペットで遊ぶ程度だった。

やがて,スマートフォンの時代になり,子供から強く勧められて,コロプラ(コロニーな生活☆プラス)を始めた。位置情報ゲームとよばれるジャンルのはしりだ。これは10年経った今も愛用している。その後,ギークの間で流行るイングレスを生み出したNIANTICが2016年にポケモンGOを産み出し,これは1〜2年楽しんだ。

この間,ジャンルとしてのアクションゲーム,ロールプレイングゲーム,シミュレーションゲーム,アドベンチャーゲーム,スポーツゲーム,レースゲーム,音楽ゲームなどは全くの未踏の地として残ってしまった。残念なことである。

PC-9801が登場したころに,ASCIIかOhPCに掲載されていたフライトシュミレータの機械語のプログラムを2ページびっしり必死で打ち込んだ。モノクロ線画で,5MHzの8086(128kBRAM)上で動作するコックピットがすぐクラッシュしていた時代から,はや40年になる。

さて,最近ピクミンブルーム(NIANTIC 任天堂)の宣伝に騙されて,これをiPhoneにインストールした。11月1日公開のところを11月6日にスタートしたので,珍しく早い対応だった。散歩の歩数がゲームのポイントに直結するスマートフォン向けARアプリなので,老人には相応しいものかもしれない。


写真:ピクミンブルームのスナップショット

2021年11月14日日曜日

ゆきだるさん

 「ゆきだるさん」で検索しても,その語源や出典が判然としない。ワンピースに「雪だるさん」が出てきているようだが,これなのか。自分が子供のころはなかったので,最近発明されたような気もする。

プログラミングの練習として,「ゆきだるさん」を描画するProcessingのコードが落ちていたので,写経してみた。

size(600, 600);
background(200, 200, 200);

strokeWeight(4);
stroke(60, 60, 60);
ellipse(300, 200, 150, 150);
ellipse(300, 380, 240, 240);
rect(-10, 480, 610, 480);

fill(0, 0, 0);
arc(270, 200, 20, 30, -0.6, 5);
arc(330, 200, 20, 30, -0.6, 5);

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quad(280, 130, 370, 170, 390, 90, 320, 60);

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stroke(144, 64, 36);
line(220, 330, 160, 240);
line(380, 330, 450, 240);


図:Processingによる「ゆきだるさん」

2021年11月13日土曜日

準衛星

準衛星とは,小惑星のうち,ある惑星を周回している衛星のように見えるもの。衛星と準衛星の区別は,惑星の重力圏にあるかどうかで判定され,ヒル圏の内側ならば衛星であり,外側ならば準衛星となる。

ヒル圏(ヒル半径)は,質量の大きな天体$M_1$と小さな天体$M_2$が,距離$r$で周回している時に,非常に軽い天体$m$が天体$M_2$からヒル半径$a (a \ll r)$の距離にあるとして,この$a$に対する条件から決まるものだ。

そのヒル半径 $a$ の位置にある小天体$m$には,天体$M_2$からの重力と,$M_2$に固定された$M_1$の周りの回転系における遠心力が$m$に加わるとして足したものが,天体$M_1$からの重力と釣り合うという条件から求める。

$\dfrac{G M_1 m}{(r-a)^2} = \dfrac{G M_2 m}{a^2}  + m (r-a) \omega^2 , \ \ \ \omega = \sqrt{\dfrac{G M_1}{r^3}}$

この式で,$\dfrac{1}{(r-a)^2} \simeq \dfrac{1}{r^2}(1+\dfrac{2 a}{r})$と近似すれば,$\dfrac{3 a^3}{r^3} = \dfrac{M_2}{M_1}$が得られ,ヒル半径は,$a=r \sqrt[3]{\dfrac{M_2}{3 M_1}}$と求まる。

大陽質量を $M_1=2 \times 10^{30} {\rm kg}$,地球質量を $M_2=6 \times 10^{24} {\rm kg}$,地球の公転軌道半径を $r = 1.5 \times 10^{11} {\rm m}$ とすると,ヒル半径は $a=1.5 \times 10^9 {\rm m}$となり,月の公転半径の約4倍になる。

地球の準衛星の1つ((469219) 2016 HO3)が月のかけらではないかというアリゾナ大学の論文のが今日のポイントだ。2024年の打ち上げが計画されている中国の小惑星探査機鄭和がサンプルリターンに成功すればこの問題を検証することができるかもしれない。


図:2016HO3 の軌道(NASAから引用)

2021年11月12日金曜日

神戸:西東三鬼

対面授業が始まってくれたおかげで,電車の中で読書する時間が戻ってきた。

西東三鬼(1900-1962)の神戸・続神戸を読了。これは,昔,NHKのドラマ人間模様で見た「冬の桃」(1977,脚本:早坂暁,演出:深町幸男,全7回)の原作である。早坂=深町コンビといえば,夢千代日記(1981)も新婚当時よく見ていたが,それと同じフレーバーの名作だった。

冬の桃は1977年の放送だったが,M2の頃に見ていたのではないかもしれない。とすると総合テレビで夜9:00に再放送された1990年だろうか。小林桂樹の渋い演技や,時々挟まる西東三鬼の俳句が,戦時中の神戸の怪しいホテル人々の様子と相まってとても印象的だった。

小説(著者はフィクションではないと書いている)の方も,小説より奇なりのエピソードが積み重ねられる。歯科医の著者が,弾圧によって俳句から距離を置いた,戦中戦後の生活模様が描かれる。

その後,1948年には山口誓子(1901-1994)を主宰とする雑誌「天狼」の編集にあたる。名前は耳にしたことがある雑誌だが,創刊時は奈良県丹波市町(現天理市)の養徳社から出版されている。西東三鬼が編集に携わっていた頃は先鋭的だったのが,後に微温的な雑誌になってしまったとのこと。

養徳社は,天理時報社の出版部門が1944年に株式会社として独立したもので,現在は,天理教関係の一般雑誌などを出版している(天理時報社=印刷会社には,個人の名刺を印刷してもらったことがある)。天理教の出版物といえば,天理道友社だが,こちらは宗教法人格を持っている。


写真:西東三鬼(津山市西東三鬼賞のページより引用)

[1]第三俳句集 今日(西東三鬼,青空文庫)
[2]西東三鬼賞(津山市)

2021年11月11日木曜日

接種済証ケース

 天理市から新型コロナウイルスワクチンの接種済証ケースを送ってきた。色々と気がつく市長さんである。もちろん,本来ならば接種済証明アプリがあれば良いのだけれど,COCOAで懲りたのか,新たな利権構造ができていないのか。地域独自のものはあるようだが全国版がない模様で,厚生労働省もやる気なし。

調べてみると,民間ベースのワクパスというのがある。いいのだけれど,これが乱立したら真正性をどうやって保証するのだろうか?ちょっと試してみると,登録がうまく進行しない。アイコンのデザインもイマイチなのでもう少し様子を見たほうがいい。


写真:天理市の接種済証ケース(2021.11.11撮影)

2021年11月10日水曜日

忌日

 11月10日は特異日だ。母と祖母二人(父の義母と実母)の命日が重なっている。したがって,我が家の女性陣は,特に注意して過ごさなければならない日になっている。

朝の散歩で,らじるらじるから今日は何の日というのが流れてくる。それによると,11月10日は,2009年に森繁久彌,2012年に森光子,2014年に高倉健が亡くなった日らしい。まあ,それはどうでもいいのだけれど・・・


2021年11月9日火曜日

フェルミ分布

 $N$個の粒子系の全エネルギーを$E$とする。$i$番目の箱には,$g_i$個の 区別できない状態 があり,1粒子エネルギー$u_i$を持つ$n_i$個の粒子がこれらの状態に配置されている。ただし,$i=(1,...,M)$とする。各粒子は区別できず,$g_i$個の状態には 1個まで入ることができる。Maxwell=Boltzmann分布の場合と同様の式で,このエネルギー分配の場合の数の対数$\log W$の極値問題を考えればよい。

粒子の区別がないので,その個数だけに着目しなければならない。$i$番目の箱に,$g_i$通りの状態があって,$n_i$個の粒子を配置する場合の数$W_i$を考える。

$n_i$個の粒子とスリットをセットにしたものと,残りの$g_i-n_i$個の状態のスリットを混ぜて並べ,区別できない同種のパターンの数で割ることにすると,$W_i=C_{n_i}^{n_i+g_i-1}=\frac{g_i!}{n_i! (g_i-n_i)!}$とすればよい。

スターリングの公式を適用すると,$\log W = \sum_{i=1}^M \log W_i = \sum_{i=1}^M (g_i\log g_i-g_i -n_i \log n_i +n_i -(g_i-n_i) \log (g_i-n_i) +g_i -n_i)$。これから,$\delta \log W = (\log(g_i-n_i) -\log n_i ) dn_i$となる。

また,粒子数とエネルギーの制約条件をラグランジュ未定乗数法で取り込めば,

$\delta \{ \log W +\alpha (N-\sum_{i=1}^M n_i) + \beta (E - \sum_{i=1}^M u_i n_i) \} = 0$より,$\sum_{i=1}^M(\log(g_i-n_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i)dn_i = 0$。したがって,$\log(g_i-n_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i = 0$

より,$\frac{g_i-n_i}{n_i}=e^{\alpha + \beta u_i}$であり,状態の占有率は$f_i=\dfrac{n_i}{g_i}= \dfrac{1}{e^{\alpha + \beta u_i}+1} = \dfrac{1}{e^{\frac{u_i-\mu}{k_B T}}+1}$となる。

2021年11月8日月曜日

伝書鳩

 日曜日の朝,ベランダにハトがいた。ヒヨドリやその仲間はときどきやってきて手すりに留まっているが,人の気配がするとすぐに逃げてしまう。家の近所はスズメやカラスだけでなく,セキレイやツグミ,池や田んぼにシロサギ,アオサギ,カモなどをたくさん見かける環境だ。

マンションには時々厄介なカワラバト(ドバト)が増える年があって,捕獲駆除サービスをお願いすることもある。ところが,このハトは逃げないのである。よく見ると赤と白の脚輪が左右にあり,何やら文字や数字が書かれている。近寄って写真を撮っても平気で餌になる金木犀の花びらをついばんでいた。

調べてみると,伝書鳩(レース鳩)のようだ。日本伝書鳩協会日本鳩レース協会があって,それぞれ固有の番号をつけている。家に来たハトはどうやら伝書鳩協会山口県周南支部の所属らしい。白い脚輪には連絡先が書いてあるのだけれど,汚れが固着している上にハトが逃げるので読み取れない。

伝書鳩協会のページには,迷い鳩の対処方法が書いてあった。どうしましょうどうしましょうと困っているうちに,夕方にはどこかに行ってしまったので,めでたしめでたしとなった。

月曜日の朝,ベランダにハトが帰ってきた。流石に居付かれると困るので,東京の伝書鳩協会本部に電話してみた。どうやらハトを捕獲してその番号を確認しないことには次の手順に進めないらしい。ハトは賢いし素早いので,カメのような爺さんには簡単に捕まらないのである。

何度も失敗を重ねた末に,ベランダに落ちている草の実などを食べているところを背後から掴むことに成功した。早速,脚輪の番号を確認してもらうと,山口県の飼い主の電話番号が判明したので連絡してみた。滋賀県琵琶湖畔からのレースで迷ったものらしい。調べてみると今年の春にも坂本発の400kmレースがあった。平均分速300mで,20-21時間かけて400km離れた自宅まで帰るものらしく,36羽放って2羽しか帰還していない。おいおい。

どうやら京都の支部(都クラブ)の人が取りに来てくれるらしいが,それまで米粒でもやっといてくださいとのリクエストだった。

P. S. 道に迷ったとかで,夜7時過ぎに取りに来られた。協会の規約ということで,お礼をいただく。やはり長距離のレースでは多くのハトが戻ってこないようで,こういうのはレアケースとのこと。山口県までは郵便局のハト専用パッケージで返送されるらしい。


写真:日曜日のハト(赤が協会脚輪,白が個人脚輪)

2021年11月7日日曜日

ボース分布

ボルツマン分布からの続き 

$N$個の粒子系の全エネルギーを$E$とする。$i$番目の箱には,$g_i$個の区別できない状態があり,1粒子エネルギー$u_i$を持つ$n_i$個の粒子がこれらの状態に配置されている。ただし,$i=(1,...,M)$とする。各粒子は区別できず,$g_i$個の状態には何個でも入ることができる。Maxwell=Boltzmann分布の場合と同様の式で,このエネルギー分配の場合の数の対数$\log W$の極値問題を考えればよい。

粒子の区別がないので,その個数だけに着目しなければならない。$i$番目の箱に,$g_i$通りの状態があって,$n_i$個の粒子を配置する場合の数$W_i$を考える。

$g_i-1$個の状態のスリットと$n_i$個の粒子を混ぜて並べ,区別できない同種のパターンの数で割ることにすると,$W_i=C_{n_i}^{n_i+g_i-1}=\frac{(n_i+g_i-1)!}{n_i! (g_i-1)!}$とすればよい。

スターリングの公式を適用すると,$\log W = \sum_{i=1}^M \log W_i = \sum_{i=1}^M ((n_i+g_i)\log (n_i+g_i)-(n_i+g_i) -n_i \log n_i +n_i -g_i \log g_i +g_i)$。これから,$\delta \log W = (\log(n_i+g_i) -\log n_i ) dn_i$となる。\\

また,粒子数とエネルギーの制約条件をラグランジュ未定乗数法で取り込めば,

$\delta \{ \log W +\alpha (N-\sum_{i=1}^M n_i) + \beta (E - \sum_{i=1}^M u_i n_i) \} = 0$より,$\sum_{i=1}^M(\log(n_i+g_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i)dn_i = 0$。したがって,$\log(n_i+g_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i = 0$

より,$\frac{n_i+g_i}{n_i}=e^{\alpha + \beta u_i}$であり,状態の占有率は$f_i=\dfrac{n_i}{g_i}= \dfrac{1}{e^{\alpha + \beta u_i}-1} = \dfrac{1}{e^{\frac{u_i-\mu}{k_B T}}-1}$となる。

2021年11月6日土曜日

白骨の御文

本願寺第八代の 蓮如上人(1415-1499)が,布教のために教義を手紙の形で書いたものが御文(御文章)である。小学校6年の修学旅行は東尋坊へのバス旅行だった。その途中で蓮如の北陸布教の中心地であった吉崎御坊に立ち寄っている。金沢も浄土真宗(一向宗)の重要な活動地域の一つだったので,蓮如に関わる事跡には事欠かない。

さて,法事では,終盤に御文の中でも有名な白骨の御文を読み上げられることが多い。なんだかよくわからないお経(阿弥陀経,無量寿経,観無量寿経)や正信偈の後にこれが来ると,何回も耳にしているうちになんとなく意味というか雰囲気がわかってくる。

真宗大谷派では,以下のような文節の区切りの最後の一字を下げて読み上げることになっていた(浄土真宗本願寺派の御文章のyoutubeを見るとやはりちょっと違うようだ)。

夫(それ),人間の浮生(ふしょう)なる相をつらつら観ずるに↓,おほよそ,はかなきものはこの世の始中終(しちゅうじゅう)↓,まぼろしのごとくなる一期(いちご)なり↓。

さればいまだ萬歳(まんざい)の人身(にんじん)ノうけたりとゆう事をきかず↓。一生すぎやすし↓。いまにいたツてたれか百年の形躰(ぎょうたい)をたもつべきや↓。我やさき人やさき↓,きょうともしらずあすともしらず↓,おくれさきだつ人は↓,もとのしずく,すえの露よりもしげしといえり↓。

されば朝(あした)には紅顔あツて↓夕(ゆうべ)には白骨となれる身なり↓。すでに,無常の風きたりぬれば↓,すなわちふたつのまなこたちまちにとじ↓,ひとつのいきながくたえぬれば↓,紅顔むなしく変じて↓,桃李(とうり)のよそおいをうしないぬるときは↓,六親眷属(ろくしんけんぞく)あつまツてなげきかなしめども↓,更にその甲斐あるべからず↓。

さてしもあるべき事ならねばとて↓,野外(やがい)に送ツて夜半(よわ)のけむりとなしはてぬれば↓,ただ白骨のみぞのこれり↓。あわれといふも中々おろかなり↓。されば,人間のはかなき事は↓,老少不定(ろうしょうふじょう)のさかいなれば↓,たれの人も早く後生(ごしょう)の一大事を心にかけて↓,阿弥陀佛トふかくたのみまいらせて↓,念彿もうすべきーものなり。 あなかしこ,あなかしこ。

2021年11月5日金曜日

ボルツマン分布

図:ボルツマン分布のイメージ

$N$個の粒子系の全エネルギーを$E$とする。$i$番目の箱には,$g_i$個の区別できる状態があり,1粒子エネルギー$u_i$を持つ$n_i$個の粒子がこれらの状態に配置されている。ただし,$i=(1,...,M)$とする。各粒子は区別できるとして,$g_i$個の状態には粒子がいくつでも入ることができる。このエネルギー分配の場合の数$W$($W$自身は非常に大きな数なので,その対数$\log W$で考える)が最大になるのはどのような粒子配置$\{ n_i / g_i \}$のときかという問題を考える。この条件を式で表すと,

$\displaystyle \delta \log W = \sum_{i=1}^M \frac{\partial \log W}{\partial n_i} \delta n_i = 0, \ \  \sum_{i=1}^M n_i = N\  (\sum_{i=1}^M \delta n_i = 0), \ \  \sum_{i=1}^M u_i n_i=E\ (\sum_{i=1}^M u_i \delta n_i = 0)$

1番目の箱に$N$個の粒子から取り出した$n_1$個の粒子を入れて,$g_1$個の状態に配置する場合の数は,$W_1=C_{n_1}^N g_1^{n_1}$である。続いて,2番目の箱に残りの$N-n_1$個の粒子から取り出した$n_2$個の粒子を入れて,$g_2$個の状態に配置する場合の数は,$W_2=C_{n_2}^{N-n_1} g_2^{n_2}$となる。従って,$i$番目の箱$g_i$に$n_i$個の粒子を入れて配置する場合の数は,$W_i=C_{n_i}^{N-\sum_{k=1}^{i-1}n_k} g_i^{n_i}$となる。これを続けると,最終的な場合の数は,各箱の場合の数$W_i$の積で,$W=\prod_{i=1}^M W_i = \dfrac{N!g_1^{n_1} g_2^{n_2} \cdots g_M^{n_M}}{n_1! n_2! \cdots n_M!}$となる。

自然数$n$の階乗$n!$の対数$\log n!$についてのスターリングの公式は,$n!=n \log n -n \ (n \gg 1)$であるから,これを用いて $\log W$を表すと,$\log W = N \log N - N +\sum_{i=1}^M (n_i \log g_i - n_i \log n_i - n_i )$。そこで,$\delta \log n_i = \frac{1}{n_i} \delta n_i$を用いると,$\delta \log W = \sum_{i=1}^M (\log g_i - \log n_i)\ \delta n_i$となる。

ところで,$n_i$は独立ではなくて制約条件がついている。これを簡単に処理するためにラグランジュの未定乗数法を用いれば,$n_i$を独立変数のように扱うことができる。$\alpha$と$\beta$を,それぞれ粒子数一定,エネルギー一定の制約条件に対応する2つの未定乗数として,

$\delta \{ \log W + \alpha (N-\sum_{i=1}^M n_i) + \beta (E-\sum_{i=1}^M u_i n_i) \}=0$, $\sum_{i=1}^M (\log g_i -\log n_i - \alpha - \beta u_i) \delta n_i = 0$。$\delta n_i$は独立にとってよいので,$\log g_i-\log n_i - \alpha - \beta u_i=0$であり,$n_i = g_i e^{-\alpha} e^{-\beta u_i}$となる。

ここで,状態の占有率$f_i$は,$f_i=\frac{n_i}{g_i}=\frac{1}{e^{\alpha + \beta u_i}}$となる。この$\alpha,\ \beta$は,統計力学的なエントロピーと熱力学的なエントロピーの関係式から定まる。すなわち,$S=k_B \log W, dS = k_B\ d\log W = k_B \sum_{i=1}^M \log \frac{g_i}{n_i} d n_i = k_B  \sum_{i=1}^M (\alpha + \beta u_i) d n_i$

$\therefore dS= k_B (\alpha dN + \beta dU) = -\mu \frac{dN}{T} + \frac{dU}{T}$から,$\alpha = -\frac{\mu}{k_B T},\ \beta = \frac{1}{k_B T}$であり,$f_i = e^{-\frac{u_i - \mu}{k_B T}}$となる。

2021年11月4日木曜日

TikZの反復と分岐

数理的なモデルと関連した 図を書くのにPowerPointはちょっと使いにくい。MathematicaJuliaでも表現力の自由度が足りない。そこで,PGF/TikZの登場となる。その機能を十分に生かそうとすると,TikZ環境でのプログラミングが必要であり,変数の処理や反復・分岐などが求められる。

PGF/TikZについては,Tantauの1300pを超えるマニュアルがあるのだけれど,これがまた詳しすぎて読みにくい。そんなわけで,日本語の適当な解説書を探すのだけれどこれがまたないのだった。そんなわけで,ボルツマン分布の概念図を作図しようとしていきなりつまづいた。

反復の方は\foreachを使うというところまではいいのだが,これに条件分岐を入れるとなんだかやヤコしい。しかも,堪え性のない老人は,最近の大学生のように真面目に調べずにネット情報を漁ってつまみ食いしようとするものだから,訳がわからない状態になるのであった。

小学生からのプログラミング教育は,いっそのことLaTeX+PGF/TikZにしたらいいのではないかとしみじみ思う今日この頃です。Pictogrammingと合体できないものか。まあグダグダ言いながらなんとか,解決方法の1つが見つかった。

/begin{tikzpicture}
\draw[step=2, dotted] (0,0) grid (13,2);
\foreach \x [count=\i]in {1,3,...,13}
{
\draw (\x,-0.5) node{\$(n_\i,u_\i)\$};
\foreach \y in {1,...,8}
\pgfmathsetmacro{\col}{ifthenelse(rnd*8 > \y,"white",ifthenelse(rnd*8 <\y,"gray","white"))}
\draw[fill,\col] (\x+rnd*1.6-0.8, rnd*1.6+0.2) circle(0.05);
}
\end{tikzpicture}

少し違うタイプの問題が出ても対応できる自信はまったくない,勉強不足なのであった。


図:TikZの例,\foreachとifthenelseとrndを組み合わせたもの


2021年11月3日水曜日

平均自由行程(3)

平均自由行程(2)からの続き

2種類の気体分子A(密度$\rho_{\rm A}$,質量  $m_{\rm A}$,速度 $\bm{v}_{\rm A}$)と気体分子B(密度$\rho_{\rm B}$,質量$m_{\rm B}$,速度 $\bm{v}_{\rm B}$)からなる温度$T$の気体中の分子の平均自由行程を考える。両分子の衝突断面積を$\sigma_{\rm AB}$とし,それぞれはマクスウエル分布$F_{\rm A}(\bm{v}_{\rm A}),\  F_{\rm B}(\bm{v}_{\rm B}) $に従って運動しているとする。

つまり,単位体積中で,速度$\bm{v}_{\rm K} \sim \bm{v}_{\rm K}+d\bm{v}_{\rm K}$にある${\rm K}$種の分子の数は,$dn_{\bm K}= \rho_{\rm K} F(\bm{v}_{\rm K}) d\bm{v}_{\rm K} = \rho_{\rm K} \Bigl( \frac{m_{\rm K}}{2\pi k_B T} \Bigr)^{3/2} \exp (-\frac{m_{\rm K} \bm{v}_{\rm K}^2}{2 k_B T}) d\bm{v}_{\rm K} $となる。

そこで,上記の速度空間にある分子の衝突回数は,相対速度を$\bm{u}=\bm{v}_{\rm A}-\bm{v}_{\rm B}$として,$dZ_{\rm AB} = \sigma_{\rm AB} |\bm{u}| dn_{\bm A} dn_{\bm B}$となる。そこで,単位体積,単位時間当たりの全衝突回数は,$Z_{\rm AB} = \int d n_{\rm A}  \int d n_{\rm B}  \ \sigma_{\rm AB} |\bm{u}| $となる。

次に,衝突する各分子の速度$\bm{v}_{\rm A},\ \bm{v}_{\rm B}$を相対速度$\bm{u}$と重心速度$\bm{V}$で表す。重心速度は,$\bm{V}=\frac{m_{\rm A} \bm{v}_{\rm A}+ m_{\rm B} \bm{v}_{\rm B}}{m_{\rm A}+m_{\rm B}}= \frac{m_{\rm A} \bm{v}_{\rm A}+ m_{\rm B} \bm{v}_{\rm B}}{M}$であり,$\bm{v}_{\rm A}=\bm{V}+\frac{m_{\rm B}}{M}\bm{u},\ \bm{v}_{\rm B}=\bm{V}-\frac{m_{\rm A}}{M}\bm{u}$となる。ただし衝突する2分子の全質量は,$M=m_{\rm A}+m_{\rm B}$であり,換算質量 を$\mu = \frac{m_{\rm A} m_{\rm B}}{M}$とする。

このとき,速度空間での積分は,$\int d \bm{v}_{\rm A} \int d \bm{v}_{\rm B} = \int d \bm{V} \int d \bm{u}$であり,衝突する2分子の運動エネルギーの和も重心運動と相対運動に分離される,$\frac{1}{2}(m_{\rm A}\bm{v}_{\rm A}^2 + m_{\rm B}\bm{v}_{\rm B}^2) = \frac{1}{2}( M\bm{V}^2 + \mu \bm{u}^2)$

そこで,単位体積・単位時間当たりの2種の分子の全衝突回数を,重心・相対座標で表すと,$z_{\rm AB} = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \Bigl( \frac{m_{\rm A}}{2\pi k_B T} \cdot \frac{m_{\rm B}}{2\pi k_B T} \Bigr)^{3/2} \int d\bm{V} \int d\bm{u}  |\bm{u}| \exp (-\frac{M \bm{V}^2}{2 k_B T}) \exp (-\frac{\mu \bm{u}^2}{2 k_B T})  \\ = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \Bigl( \frac{M}{2\pi k_B T}  \Bigr)^{3/2}  \int  d\bm{V} \exp (-\frac{\mu \bm{V}^2}{2 k_B T}) \cdot \Bigl( \frac{\mu}{2\pi k_B T}  \Bigr)^{3/2}  \int d\bm{u}  |\bm{u}|  \exp (-\frac{\mu \bm{u}^2}{2 k_B T})$ となる。

$\therefore z_{\rm AB} = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \Bigl( \frac{\mu}{2\pi k_B T}  \Bigr)^{3/2} 4\pi \int_0^\infty u^3 \exp (-\frac{\mu \bm{u}^2}{2 k_B T}) du = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \sqrt{\frac{8 k_B T}{\mu \pi}} $

そこで,ある1つのA分子がB分子と単位時間に衝突する回数は,$z_{\rm A(\rm B)}=n_{\rm B} \sigma_{AB} \sqrt{\dfrac{8 k_B T}{\pi \mu}}$

また,A分子=B分子として,ある1つのA分子が他のA分子と単位時間に衝突する回数は,換算質量が $\mu = m_{\rm A}/2$となって,$z_{\rm A}= \rho_{\rm A} \sigma_{AA} \sqrt{\dfrac{16 k_B T}{\pi m_{\rm A}}} = \rho_{\rm A} \sigma_{AA} \sqrt{2} \Bigl( \dfrac{2}{\sqrt{\pi}} \sqrt{\dfrac{2 k_B T}{m_{\rm A}}} \Bigr) = \rho_{\rm A} \sigma_{AA} \sqrt{2} \langle v_{\rm A} \rangle$

したがって,平均自由行程は$\lambda=\dfrac{\langle v_{\rm A} \rangle}{z_A} = \dfrac{1}{\sqrt{2} \rho_{\rm A} \sigma_{\rm AA}}$となり,$\sqrt{2}$が現れる。


2021年11月2日火曜日

錦秋文楽公演2021(2)

 錦秋文楽公演2021(1)からの続き

久しぶりに1日3部通して観劇の日(11:00-20:00)。10月31日が初日で,2日目の月曜日は平日なのでお客さんは少ない。二,三割くらいの入りだろうか。それにしては座席の割り振りがよろしくなく疎密のアンバランスが気になる。ウェブ上の予約システムを改修するだけの予算がないのだろう。

定年後は以前のように国立文楽劇場の定期公演をぜんぶ見るということは無くなったが,コロナのせいでさらに足が遠のいていた。今回は,まだ見ていない段のある蘆屋道満大内鑑ひらかな盛衰記の組み合わせが良かったので,早速予約したのだ。しかし,三分の一くらいは夢うつつだった。

第一部:「葛の葉子別れの段」の咲寿太夫は高音の発声で言葉もはっきりしていて聞きやすい。奥の竹澤宗助の三味線は丁寧な音がすごいなあ,安心して聞いていられる。道行の「蘭菊の乱れの段」は,狐の葛の葉が踊っているのだけれど,もう一つピンとこないのであった。これもできれば通しに近い構成で見たい。

第二部:ひらかな盛衰記の「逆櫓の段」は何度か見ているけれど,「大津宿屋の段」と「笹引きの段」から「松右衛門内の段」とつながることで,ようやく物語の意味とイメージがわかってきた。子どもの取り違えが起因する話だったのね。靖太夫は残念ながら声が出ていなかった。あるいはそうでなかったのかもしれないけれど,そのころは既にこちらが夢の中だった。一方,呂太夫は今日はよく声が出ていたし,清介の力強いバチ捌きとあいまって,感情表現がなかなか良かった。なお,睦太夫と清志郎も頑張っていたのではないでしょうか。

第三部:「辻法院の段」のようなチャリ場が藤太夫には似合う。さて,「神崎揚屋の段」は今回が初めてだった。千歳太夫と富助という安定したペアのおかげで,勘十郎の梅ヶ枝が苦悩するストーリーに没入することができたけれど,これは大変良かったですね。梶原源太の困ったちゃんの男性像との対比も今風で面白いし。そういえば,「神崎揚屋の段」は橋本治プロデュースの竹本駒之助のDVDを持っていたのだった。


写真:国立文楽劇場錦秋文楽公演2021のポスター



2021年11月1日月曜日

錦秋文楽公演2021(1)

   寝る前のNHK開票速報では,自民党過半数割れか?だったはずなのに,朝起きて11月になると,自民党安定多数,維新4倍に,立憲共産惨敗ということだった。野党共闘は1:1の選挙区では確かに効果を発揮したが,1:1:1の場合はそうではなかった。

維新的なムードは洗脳TVが支配する大阪や関西エリアだけではなく,全国にジワリと浸透している。おまけに国民民主と維新の合同会派話が持ち上がり,こうなると改憲勢力は自民261+公明32+維新41+国民11=345であり,楽々と2/3=315を超えているのだった(もちろん国民民主がなくてもだけれど)。こうなると,立憲民主からぼろぼろと崩れ落ちる層が出てくる。維新のような右翼ポピュリズムに対抗するには,れいわのような左翼ポピュリズムを持ってくるしかないのかも。

制度疲労による日本の没落を埋めるのが,一億総非正規化や,公共資産・サービスの民間・外資への切り売り,これが,改憲後に力をさらに増す差別的な右翼イデオロギーと戦争準備経済に支えながら進行するという目も当てらない状況が出現しそうだ。戦後蓄積してきた経済・文化資産はあっという間に消尽されていく。

金木犀香る晩秋の晴れの日,気落ちしながら,久々に維新政権の下でまだかろうじて開かれている文楽公演へと向かうのだった。街は賑わっており,横断歩道は剥げていなかったがペイントされた幅は狭くなっていたかもしれない。