2024年11月20日水曜日

谷川俊太郎


11月13日,谷川俊太郎(1931-2024)が92歳で亡くなった。

最初に谷川俊太郎を意識したのは,世界SF全集の第35巻「日本のSF現代編」が配本された1969年4月なので高校1年になったばかりだった。と思う。この巻に採録されているのは「21世紀の教養」というものだ。内容はまったく覚えていない。そのとき,彼の最初の詩集のタイトルが「20億光年の孤独」であることを知ったのだろう。いつか読んでみたいと思っていた。

手元には,角川文庫の谷川俊太郎詩集(大岡信解説,1972年4月30日初版第七刷)と谷川俊太郎詩集Ⅱ(北川透解説,1985年10月30日再版)がある。前者は大学に入学してまもなく手に入れたもの。後者は古本の値段があるので,子どもが二人産まれた後に買ったのかもしれない。谷川の処女詩集,「20億光年の孤独」は20編の詩集として文庫の谷川俊太郎詩集のほうに採録されている。タイトルにもなっている本編自身はちょっと拍子抜けするような軽いものなのだ。

阪大のマンドリンクラブに入部して間もない合宿で,緑地公園かどこかのユースホステルに泊まったとき,二段ベッド寝そべって谷川俊太郎詩集を読んでいた。セロの先輩の近藤さんが顔をのぞかせ「何読んでるの」といって手に取りパラパラと頁をめくって「ソネットか,14行詩だね」と。ソネットが14行の定型詩だということもわからずにありがたがって谷川俊太郎を読んでいた一回生なのだった。

谷川俊太郎は「にほんご」で子育て時代に大変お世話になった。いまや孫のすーちゃんが,きっときってかってきて,きっときってかってはってきて,を小学校1年の国語の教科書で勉強する時代になった。


写真:本棚にあった谷川俊太郎詩集とそのⅡの書影を引用

P. S. 
2013年に,岩波書店から自選 谷川俊太郎詩集がでていた。全2千数百編から173編を厳選したというものだ。その目次には採録した詩集のリストがある。これを年代順に並べ替えて,手持ちの角川文庫に収録されている詩集を◎でチェックしたリストはつぎのとおり。

◎『二十億光年の孤独』 (創元社 1952)
◎『六十二のソネット』 (創元社 1953)
◎『愛について』 (東京創元社 1955)
◎『絵本』 (的場書房 1956)
◎『あなたに』 (東京創元社 1960)
◎『21』 (思潮社 1962)
◎『落首九十九』 (朝日新聞社 1964)
 『谷川俊太郎詩集』 (思潮社 1965)
 『谷川俊太郎詩集』 (河出書房 1968)
◎『旅』 (求龍堂 1968)
◎『谷川俊太郎詩集』 (角川文庫 1968)
 『谷川俊太郎詩集』 (現代詩文庫 1969)
◎『うつむく青年』 (山梨シルクセンター出版部 1971)
 『谷川俊太郎詩集』 (角川書店 1972)
 『ことばあそびうた』 (福音館書店 1973)
◎『空に小鳥がいなくなった日』 (サンリオ出版 1974)
◎『定義』 (思潮社 1975)
◎『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』 (青土社 1975)
 『タラマイカ偽書残闕』 (書肆山田 1978)
 『谷川俊太郎詩集 続』 (思潮社 1979)
◎『そのほかに』 (集英社 1979)
◎『コカコーラ・レッスン』 (思潮社 1980)
◎『ことばあそびうた また』 (福音館書店 1981)
◎『わらべうた』 (集英社 1981)
◎『わらべうた 続』 (集英社 1982)
◎『みみをすます』 (福音館書店 1982)
◎『日々の地図』 (集英社 1982)
◎『どきん』 (理論社 1983)
◎『対詩 1981.12.24~1983.3.7』 (書肆山田 1983)
 『手紙』 (集英社 1984)
 『日本語のカタログ』 (思潮社 1984)
 『詩めくり』 (マドラ出版 1984)
 『よしなしうた』 (青土社 1985)
 『いちねんせい』 (小学館 1988)
 『はだか』 (筑摩書房 1988)
 『メランコリーの川下り』 (思潮社 1988)
 『魂のいちばんおいしいところ』 (サンリオ 1990)
 『女に』 (マガジンハウス 1991)
 『詩を贈ろうとすることは』 (集英社 1991)
 『十八歳』 (東京書籍 1993)
 『子どもの肖像』 (紀伊國屋書店 1993)
 『世間知ラズ』 (思潮社 1993)
 『ふじさんとおひさま』 (童話屋 1994)
 『モーツァルトを聴く人』 (小学館 1995)
 『真っ白でいるよりも』 (集英社 1995)
 『クレーの絵本』 (講談社 1995)
 『谷川俊太郎詩集』 (ハルキ文庫 1998)
 『みんなやわらかい』 (大日本図書 1999)
 『クレーの天使』 (講談社 2000)
 『minimal』 (思潮社 2002)
 『夜のミッキーマウス』 (新潮社 2003)
 『シャガールと木の葉』 (集英社 2005)
 『すき』 (理論社 2006)
 『私』 (思潮社 2007)
 『62のソネット+36』 (集英社文庫 2009)
 『子どもたちの遺言』 (佼成出版社 2009)
 『トロムソコラージュ』 (新潮社 2009)
 『詩の本』 (集英社 2009)

2024年11月19日火曜日

仮名手本忠臣蔵(第二部)

仮名手本忠臣蔵(第一部)からの続き

国立文楽劇場の11月文楽公演で仮名手本忠臣蔵の大序から七段目まで上演しているのは,前回紹介した通りだ。第一部の大序から四段目まで見た日,いつもの幕見席以外に当日指定席というのを半額程度で設定しているのに気づいた。よほど客の入りが悪いのかもしれないという説が出たので,第二部も行こうとなった。ちょうど,先月の文楽の集いで織太夫から七段目の演出についての紹介があったところだ。正月には続きの八段目九段目もあり,全段コンプリートできる。それはそれでよし。

四時から始まった第二部の最初は靭猿だ。これは昼寝の時間に当てることにして,本編に集中する。山崎街道出会いの段は若手の竹本碩太夫(千歳太夫の弟子)と鶴澤寛太郎(寛治の孫)コンビでなかなか良かったのではないか。次の二つ玉の段は,御簾内から聞こえる胡弓とその後の三味線が哀愁をさそう。よく知らない鶴澤清方の担当だ。三味線の物悲しい音がほとんど動いていない団七の手元から響くのかとびっくりしたけどそうではなかった。勘市の与市兵衛と玉勢の斧定九郎もいい感じ。この二人は昔近鉄の仕立てた文楽電車で奈良の文楽名所巡りをしたときにいっしょに参加していたので親近感がある。

早野勘平腹切りの段は,錣太夫と宗助。あいかわらず宗助の三味線はうまい。予習であらすじを理解していたけれど,与市兵衛の死骸を誰が持ってくるのかとか,斧定九郎との関係をどうやって説明するのかとか,疑問点はスイスイと解決して結論に導かれていった。

いよいよ七段目の祇園一力茶屋の段。最初に昼寝したおかげで,今夜は全編ついていくことができた。寺坂平右衛門の竹本織太夫が,舞台下手で見台も床本もなしで語る理由を説明している。顔世御前から大星由良之助にあてた手紙を手鏡で見てしまったおかるだが,昭和30年の古いNHK録画DVDでは,梯子を降りる前後で吉田文五郎から桐竹亀松に交替していた。今回は吉田一輔が一人でがんばっている。おかるが兄の寺坂平右衛門に気づく前にしたためていた手紙の説明がないので,ChatGPTに聞いてみたところ,どうやら家族宛の文らしい。ほんとかな。
Q(koshix):
文楽の仮名手本忠臣蔵の七段目祇園一力茶屋の段で質問があります。
おかるが由良之助から身請け話を出された後で,由良之助が引っ込んだ後,なにやら書状に書き物をしています。そこに兄の寺坂平右衛門がくるのですが,おかるは誰宛に何を書いていたのですか。

A(CHatGPT-4o):
文楽『仮名手本忠臣蔵』七段目「祇園一力茶屋の段」において、おかるが由良之助から身請けの話をされた後のシーンについてお答えします。

おかるが書状を書いている場面は、彼女の心情や立場を表現する重要な場面です。この書状の内容と宛先は作品の解釈による部分もありますが、以下のように考えられています:

宛先:おかるが書いていた書状の宛先は、一般的な解釈では彼女の母親または家族であるとされています。これは、身請け話を受けて、家族に自分の気持ちや状況を伝えようとする意図があるからです。
内容:書状の内容については具体的な台詞で明かされるわけではありませんが、由良之助の身請けの提案についての自身の心情や、今後の自分の運命についての思いが書かれていると考えられます。また、家族への感謝や別れの言葉が含まれている可能性もあります。
この後、兄の寺坂平右衛門が登場することで、おかるが置かれた状況がさらに劇的になります。寺坂の登場により、忠臣蔵全体の筋書きにおける陰謀や義士の計画が絡み合い、この場面が一層緊張感を増す構造になっています。

作品の詳細な解釈については、上演時の演出や注釈書による違いがあるかもしれませんが、家族に宛てた書状という解釈が一般的です。
あと,今回気になった点三つ。

おかると由良之助のからみのところで,斧九太夫の主遣いの桐竹勘壽がこそこそと帰っていった。あれ,九太夫はまだ縁の下に潜んでいるはずなのにどうするのと思っていたら,最後に由良之助に刺されたあとは九太夫は二人遣いのままで,平右衛門に担がれて終幕となった。なかなか珍しいパターンだ。

もう一つは,おかるが斧九太夫を討取るのかと見ていたら,由良之助が自身で畳の下の九太夫を刀で刺していた。おかるはその横にいたのだろうか。由良之助が自分で刺したらまずくないか?となってしまった(昭和30年のビデオではおかるの刀を由良之助が添えるのがはっきりとわかる)。単に自分が見逃しているだけかもしれない。

最後に,兄の平右衛門がおかるに勘平の切腹を告げた後,動転して気を失うおかるにひしゃくで水を飲ませるのだけれど,平右衛門が一口目を自分で呑んでしまうというチャリ場的な演出が入っていて,それはそれでおもしろいのだけれど,ええっ!となってしまった。さすがに,昭和30年の吉田玉男はそうではなかった。



写真:国立文楽劇場のチラシから引用


2024年11月18日月曜日

ピタゴラスの定理(2)

ピタゴラスの定理(1)からの続き

新しいピタゴラスの定理を発見した女子高校生チームが,新論文を出していた。さらに5つの新しい証明方法を見つけたというものだ。さっそく確認してみる。


図:ピタゴラスの定理の証明


図の3つの三角形に正弦定理(この名前がすでに思い出せない)を当てはめると次の六つの関係式が得られる。
$\triangle {\rm ABC : \quad}  \dfrac{a}{\sin \alpha} = \dfrac{b}{\sin \beta} = \dfrac{c}{\sin \pi/2}$
$\triangle {\rm ADC : \quad}  \dfrac{a+d}{\sin 2 \alpha} = \dfrac{b}{\sin (\beta-\alpha)} = \dfrac{x}{\sin \pi/2}$
$\triangle {\rm ADB : \quad}  \dfrac{d}{\sin \alpha} = \dfrac{c}{\sin (\beta-\alpha)} = \dfrac{x}{\sin \beta}$
$x$の項は不要だとすれば四式が残る。これから,$\alpha,\ \beta,\ d\ $を消去すると $\ a,\ b,\ c\ $の関係式が得られる。すなわち,$(a+d)\sin (\beta-\alpha)  = b \sin 2 \alpha, \quad d \sin (\beta-\alpha)  = c \sin \alpha $ から$\ d\ $を消去して,$\sin \alpha = \dfrac{a}{c}, \ \sin \beta = \dfrac{b}{c},\ \cos \alpha = \dfrac{b}{c}, \ \cos \beta = \dfrac{a}{c} \ $を代入する。
$a \dfrac{b^2-a^2}{c^2} + c \dfrac{a}{c} = b \dfrac{2 a b}{c^2} $ となり,$a^2+b^2=c^2$ が導かれる。

2024年11月17日日曜日

4時10分前

家人から,最近の人は「四時十分前」というと,4:09 ごろと理解するらしいと聞いてたまげた。「四時十分前」ならば,3:50前後だろう。調べてみるとどうもそうらしい。仕方がないので,AI諸君に聞いてみて多数決をとることにした。

Q(koshix):
友達との待ち合わせの集合時間を「駅前に四時十分前頃に」と打ち合わせしました。 4時10分前とはだいたいどの範囲の時間を表しますか。


A(ChatGPT-4o):
「4時10分前」という表現は、日本語では「4時の10分前」、つまり3時50分頃を指します。友達との集合時間が「4時10分前頃に」と打ち合わせた場合、範囲としては少し幅をもたせて3時45分から3時55分くらいまでの時間帯を指すのが一般的です。
この表現が曖昧な場合、具体的に「3時50分頃」や「4時ちょうど前」など、もう少しはっきりと伝えておくと、誤解が避けられるでしょう。

A(Gemini):
「駅前に四時十分前頃に」という待ち合わせの集合時間ですね。この場合、4時10分前の範囲は人によって解釈が少し異なる可能性があります。
一般的な解釈
3時50分~4時9分頃 多くの場合、この範囲で解釈されることが多いでしょう。「4時10分」という明確な時間から少し前、というニュアンスで捉えられます。
3時55分~4時9分頃 もう少し厳密に時間を守りたい人や、時間に余裕を持って待ち合わせたい人は、この範囲で考えるかもしれません。
状況による解釈
待ち合わせの場所:人が多い場所や、電車の発着時刻が近い場所など、時間の正確さが求められる場所では、3時55分以降に来る人が多いかもしれません。
関係性:親しい友人同士であれば、少し遅れても問題ないという場合もあります。一方、初めて会う人や、仕事関係の待ち合わせであれば、時間に厳守したいと思う人もいるでしょう。
当日の状況:天候が悪かったり、交通機関が遅延したりする場合は、少し遅れても仕方ないという状況も考えられます。
より確実な確認
再度確認する:待ち合わせの直前に、「4時10分前頃って、だいたい何時くらいをイメージしてる?」と相手に確認するのが一番確実です。
余裕を持って行く:少し早めに行って、安心して待ち合わせ場所にいられるようにしましょう。
まとめ
「4時10分前頃」という表現は、あくまで目安です。状況に合わせて、柔軟に解釈することが大切です。相手に失礼のないように、そして、待ち合わせをスムーズに進めるために、事前に確認したり、余裕を持って行動したりすることがおすすめです。
その他
「頃」の意味: 「頃」という言葉は、ある時間の前後を漠然と表す言葉です。
「~くらい」との違い: 「~くらい」は、「頃」よりも範囲が少し広がる場合があります。
もし、他にも何か知りたいことがあれば、お気軽にご質問ください。


A(Claude 3.5 Sonnet)
この表現について考えてみましょう。
「四時十分前頃」は少しあいまいな表現で、日本語特有の曖昧さを含んでいます。
一般的な解釈としては:
「四時十分前」は3時50分を指します
「頃」が付くことで、その前後約5分程度の幅を持たせる意味になります
つまり、だいたい3時45分から3時55分くらいの範囲を示すと考えられます
ただし、これは待ち合わせの文脈なので、少し早めに着くことが望ましいとされる日本の文化も考慮に入れると、3時45分から3時50分くらいの間に到着することが望ましいでしょう。
より明確なコミュニケーションのためには、「3時50分」のように具体的な時刻を指定する方が誤解を避けられます。


A(Perplexity Pro):
「四時十分前頃」という表現は、正確な時間を指定するものではなく、ある程度の幅を持った時間帯を示しています。この場合、おおよそ次のような時間帯を指すと考えられます:
時間の範囲
「四時十分前頃」は、3時50分前後の時間帯を指すと解釈できます。具体的には:
中心時刻: 3時50分
前後の幅: 約5分程度
つまり、おおよそ3時45分から3時55分の間を指していると考えられます。
解釈の理由
「四時十分前」は文字通り解釈すると3時50分を指します。
「頃」という言葉が付いていることで、厳密な3時50分ではなく、その前後の時間帯を含むことを示しています。
一般的に、待ち合わせなどで「〜頃」と言う場合、5分程度の余裕を見ることが多いです。
注意点
この時間帯は厳密なものではなく、状況や個人の解釈によって多少前後する可能性があります。重要な約束の場合は、相手に確認を取るか、より具体的な時間を指定することをお勧めします。文化や個人の習慣によって、「〜頃」の解釈が異なる場合もあるので、相手との共通理解を持つことが大切です。

結論として、「四時十分前頃」は3時45分から3時55分の間を指す表現だと理解できますが、正確を期すためには、待ち合わせ相手と具体的な時間を確認することが望ましいでしょう。


A(PlaMo):
「四時十分前頃に」というのは、四時ジャストから数えて多少の時間が経過している状態を指すと思われ、具体的には「4時5分〜15分くらいの間」と考えるのが妥当ではないでしょうか。前後の時間も含めれば「4時前〜4時10分の間」と想定することもできますが、状況によって判断は変わる可能性があります。友人との待ち合わせの際は、相手の連絡先があるのであれば、今一度確認することをおすすめします。
3対2で,我々老人世代側の解釈が勝利した。ChatGPT-4oやClaude 3.5 Sonnetが簡潔な答えを返した。Perplexity Proは詳しすぎるけどまあいいか。Geminiはバカ丁寧に若者だったし,PlaMoはバカの若者だった。この多数決の結果も数年後には変わってしまうのだろうか。それまで生き延びていたら再検証してみたい。



図1:ChatGPT-4oに4時10分前を指示して描かせた結果・・・時計は苦手だ。


図2:OpenAI o1に4時10分前を指示してpythonプログラムにより描かせた結果

import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np

def draw_clock(hour, minute):
    fig, ax = plt.subplots(figsize=(6,6))
    # 時計の外枠を描画
    clock_face = plt.Circle((0,0), 1, fill=False, linewidth=2)
    ax.add_patch(clock_face)
    # 目盛りを描画
    for i in range(60):
        angle = np.deg2rad(90 - i * 6)
        x_start = np.cos(angle)
        y_start = np.sin(angle)
        if i % 5 == 0:
            # 5分ごとの長めの目盛り
            x_end = 0.85 * np.cos(angle)
            y_end = 0.85 * np.sin(angle)
            linewidth = 2
        else:
            # 1分ごとの短めの目盛り
            x_end = 0.9 * np.cos(angle)
            y_end = 0.9 * np.sin(angle)
            linewidth = 1
        ax.plot([x_start, x_end], [y_start, y_end], color='black', linewidth=linewidth)
    # 時間目盛りと数字を描画
    for i in range(1, 13):
        angle = np.deg2rad(90 - i * 30)
        x_text = 0.75 * np.cos(angle)
        y_text = 0.75 * np.sin(angle)
        ax.text(x_text, y_text, str(i), horizontalalignment='center', verticalalignment='center', fontsize=24)  # フォントサイズを大きく
    # 時針を描画(矢印)
    hour_angle = np.deg2rad(90 - (hour % 12 + minute / 60) * 30)
    hour_x = 0.5 * np.cos(hour_angle)
    hour_y = 0.5 * np.sin(hour_angle)
    ax.arrow(0, 0, hour_x, hour_y, width=0.025, head_width=0.07, head_length=0.14, fc='black', ec='black', length_includes_head=True)
    # 分針を描画(矢印)
    minute_angle = np.deg2rad(90 - minute * 6)
    minute_x = 0.8 * np.cos(minute_angle)
    minute_y = 0.8 * np.sin(minute_angle)
    ax.arrow(0, 0, minute_x, minute_y, width=0.015, head_width=0.06, head_length=0.12, fc='black', ec='black', length_includes_head=True)
    # プロットの設定
    ax.set_xlim(-1.1, 1.1)
    ax.set_ylim(-1.1, 1.1)
    ax.set_aspect('equal')
    ax.axis('off')
    plt.show()

draw_clock(3, 50)
自然言語で5回ほど修正指示を繰り返してたどり着いた結果のコード。これでも子ども全員向けのプログラミング教育は必要なのですか?むしろ,4時10分前の言語文化的な継続性を維持できるような日本語教育の方が重要だと思うのだけれど・・・。


[2]"9時10分前"は,何時何分?(NHK放送文化研究所,2020)

2024年11月16日土曜日

フェイクの時代

カモになるな維新的なものの勝利からの続き

兵庫県知事選挙の投票日を前にした11月14日,兵庫県市長会の有志(代表 蓬萊務 小野市長)からの記者会見案内が発出された。タイトルは「稲村和美さんを支持する表明について」であり,つぎのような内容だ。
兵庫県内の市長会有志21名は(後に22名)、県政の安定と発展を願い、稲村和美氏への支持を表明しました。稲村氏は尼崎市長時代に財政健全化を果たし、幅広い支持を得ています。特定の政党に依存せず、県民に寄り添った政策を掲げる姿勢が評価され、県政の混迷を収束させるリーダーとしての資質が期待されています。この動きは、自民党県議団の一部からの支持も含め、兵庫県の新たな出発に向けた重要な一歩です。
なぜ,このような異例の声明が出されたかというと,「兵庫県政は混乱、混迷し、現在行われている兵庫県知事選挙においても誹謗中傷が行われるなど、大変愛うべき状況です。」 だからである。

兵庫県の西播磨県民局長の内部告発文書を発端として,斎藤元彦兵庫県知事とその取り巻きによる追求や,維新の会議員による圧力によって,県民局長が亡くなられてしまった。その結果,兵庫県議会に百条委員会が設置されて,公益通報者保護に関する問題が焦点化,兵庫県議会で全員一致の知事不信任案が叩きつけられた。

普通は,兵庫県知事が責任を取って辞職することで話は終るのだが,今回はそうならずに,失職した斎藤元彦がしゃあしゃあと新たな知事選挙に出馬してきたわけだ。そこに,NHKから国民を守る党の立花孝志が参戦し,斎藤の応援に回ったことから風向きが変わった。

当初は,元尼崎市長の稲村和美が有利だと考えられていたはずが,立花とその取り巻きに,右翼イデオローグや,維新の会や,旧統一協会らしき有象無象が雪だるまのように加わって,広範なネット宣伝と,立ち会い演説聴衆動員(暴力付き)を図ってきたため,選挙情勢は微妙なところに来てしまった。彼らの言い分は,斎藤ははめられたのであり,マスコミと既得権者によって迫害されているというアンチフェイクデマの拡散と浸透である。

まあ,いつも判断を間違ってしまうというかあえて逆張りをするのが得意な自称リベラルの東浩紀が,(ぼくは兵庫県知事選については情報が錯綜していて判断できないという立場です)といいながら市長会有志のメッセージをディスるくらいである。最低ですね。

兵庫10区の自由民主党の衆議院議員,渡海紀三朗が,この状況を静観しておられず,「知事の資質」として斎藤の再選への危機感を率直に語る事態にまで至っているわけだ。兵庫県民どうするのよ。


問題は何かというと,斎藤支持グループが明らかなデマをSNS経由で広範に発信し,それがいとも簡単に浸透し,十分に否定できない状況が続いていることだ。それまでのテレビや新聞の報道をきいて冷静に判断すれば,デマの悪質性はわかりそうなものなのだが,マスコミ不信と既得権益批判と斎藤の巧妙な作戦にいとも簡単に騙されて,トランプが米国で勝利したように,フェイクが正義として受け入れられていくのだった。


AIによるフェイクが云々以前の問題なのである。いまこそ,水越先生のように,教科情報における学習のキモはプログラミングではなくてメディアリテラシーであると主張しなければならない時代がきたのかもしれない。

兵庫県市長会のうち有志22市長○のリスト(22/29)

_神戸市長 久元喜造
○姫路市長 清元秀泰
○尼崎市長 松本眞
_明石市長 丸谷聡子(泉・西村)
○西宮市長 石井登志郎
○洲本市長 上崎勝規
_芦屋市長 髙島崚輔(維新)
○伊丹市長 藤原保幸
○相生市長 谷口芳紀
_豊岡市長 関貫久仁郎
○加古川市長 岡田康裕
○赤穂市長 牟礼正稔
_西脇市長 片山象三
○宝塚市長 山﨑晴恵
○三木市長 仲田一彦
○高砂市長 都倉達殊
○川西市長 越田謙治郎
○小野市長 蓬萊務
_三田市長 田村克也(泉)
○加西市長 高橋晴彦
○丹波篠山市長 酒井隆明
_養父市長 大林賢一
○丹波市長 林時彦
○南あわじ市長 守本憲弘
○朝来市長 藤岡勇
○淡路市長 門康彦
○宍粟市長 福元晶三
○加東市長 岩根正
○たつの市長 山本実

P. S. どうやら,ことの本質西村康稔による旧来型の選挙手法によって動員された倫理法人会に統一協会や維新の会などが,立花孝志やネトウヨSNSの曇の中で活動しているものらしい。これによって,リアルとネットの両面からの攻撃が成功しているというパターンだ。石丸現象と同じ構造なのかもしれない。

[1]斎藤元彦さんは既得権益のオモチャでしかない(菅野完)

2024年11月15日金曜日

聴力チェック

AirPods Pro2にヒアリングチェックとヒアリング補助機能が追加されたというので試してみた。iOS17.7のままではだめだったので,夜中のうちにiOS18.1にアップグレードした。朝起きてiPhone SE2を立ち上げると無事に新機能が使えるようになっていた。

ヒアリングチェックしますかというので,OKして進んでいくと,まず音漏れチェックや周囲の騒音チェックがある。これをパスすると,左耳と右耳それぞれ5分づつのチェックが始まる。音の高さや大きさを変化させながら,ピー・ピー・ピーという三連音が発せられて,きこえると画面をタップする。いつもの人間ドックのアバウトな検査とはえらい違いだ。

最終結果は図のようになって,難聴ではなかった。ただし,4000Hzをこえると急に聞こえにくくってしまい,8000Hzはもうほとんどわからない。これは既に別の簡易テストでもわかっていたことだ。まあいいか。

ヒアリングチェックの結果,軽度から中程度の難聴が認められるとパーソナライズされた聴力プロファイルによるヒアリング補助機能が利用できる。もう高価な補聴器は不要の時代がやってきたのかもしれない。



写真:iPhoneのAirPods Pro設定画面から(2024.11.15早朝)


2024年11月14日木曜日

人工超知性

人工超知能(2)からの続き

10月4日のSoftBank World 2024における孫正義の特別講演が公開された。タイトルは「超知性は10年以内に実現する」。その内容をがんばって人力でまとめると次のようになる。

彼の定義によれば,AGI(Artificial General Intelligence)は人間と同等の知能をもつAIであり,2-3年後に実現する。ASI(Artificial Super Intelligence)は人間の1万倍の知能を持つAIであり,10年以内に実現する。そのASI(人工超知能)は,人工超知性へと進化するというのがそのビジョンである。下図の1-5はAGIの進化レベルを表しており,6-8はASIの進化レベルに対応している。

人間の脳にある神経細胞ニューロンは1000億個あり,それらが接続するシナプスは100兆個ある。しかしこれは20万年前から変化しておらず,また今後も増えることはない。一方,これに対応する大規模言語モデルのパラメタは数兆個のオーダに達しており,さらに増える可能性がある。

こうした前提のもとに,情報を検索する(Google)→知識として理解する(GPT)→知能により推論する(o1)→知性で調和させる(ASI+)という一連のAIの進化の流れを想定している。

まず,最近のo1が,複数の分野の博士レベルの能力を持つに至ったことを紹介し,AIが速さから深さ(Chain of Though)の段階に移行しているとする。その例として,o1-preveiwに「一千万円を一億円にするための戦略とメカニズムは?」と聞いて回答に75秒かかって感動したということを披露していた(自分でも同様に試してみたが,あっという間に答えが出てしまった。どうやら知識不足で設問の表現が単純すぎたようだ)。

次に,(広義の)強化学習が,並列に動作する数千エージェントの数十億回の試行によるQ関数(行動価値関数)の進化を促すことを示し,自分でモデルを考えることができるAIへの進化が鍵となることを説明した。

さらに,個人によりそったAI=パーソナルエージェント(PA)の時代が来ることを予測し,人や物に対応した人工知能エージェント同士がやりとりするA to Aの時代が来るとした。ソフトバンクがほぼ所有しているARMのチップは年間320億個出荷されていて,世界人口1人当たりにすれ4個になる。このようにすべての人や物(AoT = Agent of Things)にAIが行き渡る。

パーソナルエージェントとは,個人のライフログを分析するようになるが,そのためには,感情,重要度,時間帯等から評価される感情インデックスにあわせた情報の記憶が重要になってくる。高いスコアのものは動画や音声で,中程度は静止画で,低スコアならばテキストで保存されるというわけだ。大切な想い出や日常の記憶が長期に保存される。

こうして,人工知能は人間の感情を理解して長期記憶を持ち,最終的には,PAはパーソナルメンターに進んでいく。そして,人工知能は自らの意思を持つ人工知性の段階に到達する。その際のQ関数の最大の報酬は,自分の喜びファーストではなく,あなたの喜び,あなたの幸せ,家族の幸せ,社会の人々の幸せとなって,調和のとれた超知性が実現する。それをソフトバンクは目標にするというものだった。なかなかここまで大風呂敷を展開できる日本人の現実の経営者はいない。

小規模LLMや省電力LLMをディスりすぎているきらいはあり,ソフトバンク自身のLLMが3000億パラメタ程度しか実現できていないので,どうよとは思うけれど,各地にデータセンターを構築しながら,ロボティックスや自動運転も視野に入れながら着実に前進しているので目が離せない。



図:孫正義によるAIの進化のイメージ(SowfBank World 2024 から引用)


2024年11月13日水曜日

月面上の重力

月面上の重力加速度$\ g_{\rm m}\ $は,地表面上の重力加速度$\ g \ $の六分の一である。ロケットや人工衛星が開発される前の観測事実からこれを導けるかという話をみかけた。

次のような前提で考えてみよう。
ケプラーの第三法則とニュートンの万有引力の法則運動の法則は既知である。
・地球と月の距離 $\ D \ $ は三角測量によってわかっている。
・地球の半径$\ R \ $と月の半径$\ r \ $は緯度観測と三角測量からわかっている。
(直接不要だが,地球質量$\ M \ $,月質量$\ m \ $,万有引力定数を ${\  G \ }$とする。)

まず,$\displaystyle g = \dfrac{GM}{R^2}, \quad g_m = \dfrac{Gm }{r^3},  \quad \dfrac{g_m}{g} = \dfrac{m}{M} \Bigl( \dfrac{R}{r} \Bigr)^2 \ $が成り立つ。

また,地球−月系における万有引力の法則とケプラーの法則からは次式が得られる。
$\displaystyle \mu D \bigl( \dfrac{2\pi}{T} \bigr)^2 = \dfrac{G m M}{D^2}$
ただし,$\mu \ = \dfrac{m}{1+m/M} \ $は月の換算質量,$\ T\ $は月の公転周期である。
したがって,$\displaystyle \bigl( \dfrac{2\pi}{T} \bigr)^2 = \dfrac{GM (1+ m/M) }{D^3}  = \dfrac{g R^2 (1+ m/M) }{D^3}$

この式に,$T=27.32 {\ \rm d},\quad g=9.81 {\ \rm m/s^2}, \quad R = 6.37*10^6 {\ \rm m}, \quad D = 3.844 * 10^8 {\ \rm m}$を代入すると,$m/M = 0.0111$を得る(ちょっと足りないか,現在わかっている質量を入れると,$m/M = 7.35*10^22 {\ \rm kg} / 5.97*10^24 {\ \rm kg} = 0.0123 \ $である)。

この質量比の値と,地球と月の半径の比の値がわかれば,重力加速度の比が求まる。地球から月までの距離 $\ D \ $ を三角測量で求めたり,月の直径 $\ 2r \ $を逆三角測量で与えるためには,月の直径$\ 2r = 3470 {\ \rm km}$と,地球から月の距離 $D = 384400 {\ \rm km}$の比率の逆正接の値が必要となるが,その角度は 約 0.5度である。



図:月までの距離の三角測量(参考文献 [2]からの引用)




2024年11月12日火曜日

八犬伝


12月まで有効の映画券をもらったのだけれど,なかなか面白そうな映画がみあたらない。消去法で残ったのが,八犬伝だ。テレビでも宣伝していたのでちょっと観たいと思った。原作は山田風太郎の「八犬傳」であり,なんのことはない自宅の本棚に収まっていた。

原作の八犬傳は,南総里見八犬伝の著者の曲亭馬琴葛飾北斎の対話が中心となる実の世界と,八犬伝の物語のダイジェストに相当する虚の世界が14章にわたって交互に描かれている。実の世界は,物語の中心部分をなす鶴屋南北との問答を含めてほぼ映画で再現されている。一方,虚の世界はそもそももとの八犬伝が長編なので,映画の時間では全く収まらず,ごく少数のエピソードとSFXだけで最後まで突っ走っていった。

江戸時代に二日がかりで,歌舞伎の東海道四谷怪談が上演されていたという場面があり,これは,仮名手本忠臣蔵の中に,東海道四谷怪談が埋め込まれるという構成になっていた。四谷怪談が忠臣蔵の外伝だということは知っていたけれど,上演方法がこんなことになっているとはビックリだ。

高校時代の教科書に載っていた,芥川龍之介戯作三昧はまさにこの滝沢馬琴だった。最後に八犬伝の口述筆記を行った滝沢家の嫁の土岐村路のくだりも,馬琴の誇張だったという説があったけれど,どうなのだろうか。路女日記を読んだらわかるのかもしれない。



写真:映画「八犬伝」のポスターを引用


2024年11月11日月曜日

仮名手本忠臣蔵(第一部)


11月7日(木)吉田簑助が91歳で亡くなった日。そうとは知らないまま開場40周年記念11月文楽公演に行く。立冬の前日,急に寒くなったのだけれど晴れていれば大丈夫。国立文楽劇場の西側の入口で高校生の団体に遭遇する。聞いてみれば天王寺高校の2年生全員(360名)で,第1部(4時間!)を観るとのこと。文楽劇場の後半分と前半分のうち左1/3が高校生だった。皆さんおとなしく最後まで観劇していた。

今回2024年11月公演では忠臣蔵の大序から七段目までが2部にわけて上演される。来年2025年の1月公演で,8段目と9段目がかかり,ほぼ通し狂言となる。国立文楽劇場の前回の仮名手本忠臣蔵の通しは,2019年の春,夏,秋の3回に分割されたバージョンであり,2012年には1日通しの公演が行われた。いずれもすべてクリアしている。今回は,体力の関係で,第1部の大序から四段目までということで勘弁してもらう。

2012年/2019年/2024年の仮名手本忠臣蔵の通し狂言

大序
○○○鶴が岡兜改めの段(25分/24分/23分)
○○○恋歌の段(12分/13分/11分)

二段目
×○○桃井館力弥使者の段(_/23分/22分)
○○○本蔵松切の段(18分/18分/17分)

三段目
○○○下馬先進物の段(20分/20分/19分)
○○○腰元おかる文使いの段(14分/14分/14分)
○○○殿中刃傷の段(28分/28分/30分)
○○○裏門の段(16分/15分/14分)

四段目
○○○花籠の段(17分/17分/16分)
○○○塩谷判官切腹の段(53分/49分/46分)
○○○城明渡しの段(8分/7分/8分)

五段目
○○○山崎街道出合の段(15分/16分/15分)
○○○二つ玉の段(20分/17分/18分)

六段目
○○○身売りの段(27分/25分/26分)
○○○早野勘平腹切の段(47分/45分/41分)

七段目
○○○祇園一力茶屋の段(85分/93分/87分)

八段目
○○○道行旅路の嫁入(33分/34分/**分)

九段目
○○○雪転しの段(15分/14分/**分)
○○○山科閑居の段(96分/97分/**分)

十段目
×○×天河屋の段(_/68分/_)

十一段目・大詰
○××花水橋引揚の段(11分/_/_)
×○×花水橋引揚より光明寺焼香の段(_/23分/_)


写真:塩谷判官(国立文楽劇場第176回パンフレットから引用)

塩谷判官切腹の段(通さん場)は,前回2019年に観たときすごい緊張感があって良かったのだが,今回はそこまでではなかった。上演時間がこれまで3回の通しで,毎回減少している(53分→49分→46分)のがちょっと気になる。「遅(おそかり)し由良助」というセリフが出てくるのかと期待していたら,これは歌舞伎バージョンの浄瑠璃台本だけのようだ。

由良之助が到着した後「由良助。この九寸五分は汝へ形見。わが鬱憤を晴らさせよ。」として息絶えたところで,「御台を始め,並みゐる家中,目を閉ぢ息をつめ,歯を喰ひ縛り控ゆれば」とあるのだけれど,肝腎の顔世御前の人形は別室に隠れている。歌舞伎だと衣裳交換の時間稼ぎだとの説があるけれど,人形浄瑠璃ではどうなのよという疑問は残ったまま。

下馬先進物の段の豊竹亘太夫(大序鶴ケ岡兜改めの段も)と腰元お軽文使いの段の豊竹睦太夫(恋歌の段も)が今回の良かったでしょう。塩谷判官切腹の段の豊竹若太夫はちょっと声がでていなかったかなあ。

元禄十四年(1701年)の赤穂事件が,元禄十五年(1703)の吉良邸討ち入りに至る。この事件の47年後の寛延元年(1748年)に,二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳による人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」として上演され,それ以来「忠臣蔵」がこの事件の代名詞となった。

2024年11月10日日曜日

太陽光発電所

近所にある水上太陽光発電所の資本関係が変更されるということで,近隣住民向けの説明会の案内が届いた。暇なので,ちょっとどんなものか偵察に出かけてみた。

開始5分前に近所の住民会館に到着すると受付は一番乗り。20席ほどの一番前に座るように促された。説明側のテーブルには4名ほどならんでいる。開始時間になって参加者が5名ようやく集まったが,どうやら体裁を整えるために出席するよう市から依頼された近隣自治会役員といった風情である。

印刷されたPowerPoint資料(27p)に基づいて説明が始まった。マイクもプロジェクターもなし。事業計画概要,発電所概要,事業の影響と予防措置,変更事項(株主変更)がさらさらと読み上げられて15分で片づいてしまう。予定では1時間の説明会となっていたけど。最前列は自分だけだったので,穏やかな笑顔の座長からそっと質問を促された。「本題とは関係ないのですが,この規模の発電設備でどのくらい収入がありますか」と尋ねた。どうやら企業秘密だとのことでしばらくモゴモゴしていたけれど,結局3000万程度だという返事をいただいた。

さて,問題の水上太陽光発電所は,出力973kW,賃貸契約土地面積2万9千㎡,パネル3700枚,フロート10600式,産業廃棄物総計150t程度の規模である。そう言えば,現地の宣伝パネルに250世帯の1年分の電力をまかなえるとあったので,一世帯の年間電気代を12万円とすれば3000万円という推定ができる。まあそんなものだろう。株主総会ではないので財務諸表は出てこない。採算が取れているのものなのかどうかはよくわからない。

水上太陽光発電.comのため池でどれぐらい発電できるの?というページ等によれば,次のようなことがわかった。
・日本にあるため池の数は20万ヶ所,4481㎢である(1ヶ所平均2.2万㎡)。
・水上太陽光発電に使えるのは上記の10%,448㎢
・パネル出力は1㎡あたり0.08kWなので,1ヶ所1760kW,全国で38GW(計算では36GW?)。
・実際の太陽光発電所の出力合計は,70GW(Perplexity調べ)。ほんとかな。
・稼働可能な原子力発電所の出力合計は,全国33ヶ所33-36GW(ChatGPT調べ)。ほんとかな。

片道30分の散歩コース圏内には,ため池が20ほどあって,このうち太陽光発電所があるのが2ヶ所だ。この他に田んぼや空き地などに小規模な太陽光発電所が10ヶ所ほどあり,2つの水上太陽光発電所と同じくらいのパネル数になりそうである。したがって太陽光発電所の出力合計70GWの半分の36GWが水上太陽光発電所だというのは,妥当な推計のようにと思われる。



写真:ため池太陽光発電所の例(大和郡山市625kW,ため池ソーラ社から引用)


2024年11月9日土曜日

シンバル

NHKの探検ファクトリーはとても興味深い番組だ。バラエティー生活小百科の後番組で,定時の土曜日お昼時だけでなく再放送でもよくみかける。今日は大阪市平野区のシンバル工場だった。

小出製作所は,金属のヘラ絞り加工を専業とする10人ほどの小企業だが,従業員からの提案で,20年ほど前からシンバルの製造を行っている(シンバル部門は社長を含めて4名だけ)。日本でただ一つのシンバル製造メーカーで,小出シンバルのブランドで有名なのだった。

番組では,製造工程をていねいに紹介していた。気になったのは,同じ直径のシンバルでは,重いほうが音が高いというところだ。弦の固有振動の場合は,振動数は張力を線密度で割ったものの平方根に比例する。つまり重い弦の方が振動数は低くなるわけだ。円盤の振動では,そうなっていない。これは重いシンバルのほうが,その曲げ剛性が大きくなるからのようだ。たぶん。



写真:小出のクラシックシンバル(Amazonストアから引用,10万5千円)

2024年11月8日金曜日

火星19

弾道ミサイルの軌道(5)からの続き

ロイターが伝えた朝鮮中央通信のニュースによれば,10月31日に発射したのは大陸間弾道ミサイル「火星19」だとのこと。ICBMの最終完結形態で世界最強のミサイルをうたっている。知らんけど。飛行距離は1001.2km,飛行時間は5156秒,最高高度は7687.5km だ。

無意味なアラートを出すよりも,こういった基本的な情報がほしいところだ。しかし,防衛省が韓国軍や米軍からこれらの情報を入手してもことさらにマスコミに流す必要はないと考えているのだろう。日本政府にしてみれば,アラートを出すだけで危機意識の醸成という目的は達成される。

2年前の「火星17」については,同じロフテッド軌道で,飛行距離 999.2 km ,飛行時間 4135 秒,最高高度 6040.9 km だった。これに比べると,今回は飛行時間が1000秒伸びて,最高高度も1600kmほど高くなっている。

そこで,忘れかけていたMathematicaのコードを引っ張り出して再計算してみた。目の子でパラメータサーチをした。単純なモデルなので,そんなにピッタリ再現できるわけではないが,ほぼほぼ雰囲気は得られる。飛行時間を5156秒=86分あたりに固定すると,最高高度は170kmほど高くなって7850km(+2.1%)になってしまう。最高高度を7600km台にするためには,飛行時間を2分ほど減らして84分にする(-2.3%)必要がある。燃焼時加速度a,燃焼時間τ,燃料重量比pなどを変えても,飛行時間で制約がかかる範囲では,飛行高度を再現するには至らなかった。

これらのパラメタのままで,投射角度だけを45度にすれば(飛行時間Tは,地表に到達する点で調整する),大円到達距離は16500kmを越えてくる。

g = 0.0098; R = 6350; τ = 90.8; p = 0.75; a = 0.045; s = 86.7 Degree; T = 5160;
g = 0.0098; R = 6350; τ = 90.8; p = 0.75; a = 0.045; s = 45 Degree; T = 7050; 
(* g=0.0098; R=6350; τ=90.4; p=0.75; a=0.045;s=86.7Degree;T=5160-120; *)
(* g=0.0098; R=6350; τ=90.4; p=0.75; a=0.045;s=45 Degree;T=6850; *)

fr[t_, τ_] := a*Sin[s]*HeavisideTheta[τ - t]
ft[t_, τ_] := a*Cos[s]*r[t]*HeavisideTheta[τ - t]
fm[t_, τ_] := -p/(τ - p*t)*HeavisideTheta[τ - t]
sol = NDSolve[{r''[t] == -fm[t, τ]*r'[t] + h[t]^2/r[t]^3 - g R^2/r[t]^2 + fr[t, τ], 
r[0] == R, r'[0] == 0,  h'[t] == -fm[t, τ]*h[t] + ft[t, τ], h[0] == 0}, {r,  h}, {t, 0, T}]
f[t_] := r[t] /. sol[[1, 1]]
d[t_] := h[t] /. sol[[1, 2]]
Plot[{6350, f[t]}, {t, 0, T}]
Plot[{f[t + 1] - f[t], d[t]*R/f[t]^2, d[t]/f[t]}, {t, 0, T}, 
 PlotRange -> {-8, 8}]

{f[T/2] - 6350, tyx[T], v[T]/0.340}
→ {7851.42, {5160, -46.3658, 1007.58}, 24.5585}
g0 = ParametricPlot[{NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, tt}], f[tt] - R}, {tt, 0, T}]
→ {8231.43, {7050, 121.626, 16657.9}, 25.6423}
g9 = ParametricPlot[{NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, tt}], f[tt] - R}, {tt, 0, T}]



図:北朝鮮のミサイルの軌道(ロイター記事から引用)

2024年11月7日木曜日

世代効果

日経クロストレンドの「30年のデータで解析!生活者の変化潮流 第52回ポパイ・JJ世代が時代の節目?日本人の価値観変化をデータで検証」という記事が目に入った。自分にはあまり関係ない話かとチラチラみていると,どうやらポパイ・JJ世代のというのは私達の世代のことだった。

日経新聞の支払いを日経ID決済にしているので,1ヶ月のみの日経クロストレンド無料購読が可能になる。そこで全文を読んでみた。もっとも 3/4 くらいは無料部分で読めるのだが。

簡単に言うと,生活に関する長期時系列データに対して,ある集団に着目するコーホート分析をした結果,年齢効果,時代効果,世代効果を取り出すことができる。これから1952-1956年生まれの世代が価値観の境界にあるということがわかった,というものだ。

もう少し詳しく説明するために,ChatGPT-4oに全文ファイルを読み込ませて内容を要約させよう。
Q(koshix):
(第52回及び関連する第50回の2ファイルをアップロードした上で)
これらの内容をまとめて教えてください。

A(ChatGPT-4o):
以下に2つのレポート内容をまとめます。

1.「ポパイ・JJ世代が時代の節目? 日本人の価値観変化をデータで検証」
概要:このレポートは、日本人の価値観がどのように変遷してきたかを「生活定点」データを基にしたコウホート分析によって考察しています。博報堂生活総合研究所が1992年から定点観測を行ってきた長期時系列データを活用し、「年齢効果」「時代効果」「世代効果」の3つの要因を分離して、特定の世代が持つ特徴や時代の影響を解析しています。
主な発見
1952年から56年生まれの世代に、価値観の変わり目が見られるとされており、日本社会において「世代的な節目」を形成していると考えられます。
コウホート分析の結果により、消費や価値観の変化が進み、特に「消齢化」(年齢によるライフスタイルの固定化の希薄化)が進行していると指摘されています​(第52回)。

2.「人前でのキスに抵抗はない」は6% 調査で見えた若者の実像
概要:若者の価値観や行動が実際にどれほど変わったのか、30年間の「生活定点」データに基づき、コウホート分析を通じて若者の特徴が世代固有か、時代的な影響かを検証しています。
主な発見
若者に見られる行動や価値観のうち、約4割が「年齢効果」(年齢に基づく変化)で、世代固有のものは3割程度であると示唆されています。
特に「音楽や美容に対する関心」などは若者特有の特徴である一方、「人前でのキスに対する抵抗感」など、恋愛観に関しては世代を超えて一貫している要素もあるとされています​(第50回)。

これらのレポートから、長期間にわたるデータを基に日本人の価値観の変遷が年齢や時代、世代ごとにどのように影響されるかが詳細に分析されており、特定の世代における消費傾向や価値観の変化が明らかにされています。


Q(koshix):
1952年から56年生まれの世代に、価値観の変わり目=日本社会における「世代的な節目」だということですが,その前後でどんな価値観が変化しているのか複数の例をあげて説明してください。

A(ChatGPT-4o):
1952年から56年生まれの世代が日本社会における「価値観の節目」を形成している理由について、いくつかの具体例を挙げて説明します。この世代は「ポパイ・JJ世代」とも呼ばれ、従来の価値観から新たな価値観へとシフトする過程で、以下のような変化が見られました。

個人主義の台頭
戦前や戦中生まれの世代が保守的・伝統的な価値観を持っていたのに対し、1952年から56年生まれの世代では「個人の自由」が重要視されるようになりました。この世代は、家庭や組織への従属よりも、個人の自己実現を追求する傾向が強まり、特に家庭や職場での上下関係の在り方に対する意識が変わり始めました​。

食生活の変化
伝統的な魚料理が好まれていた世代から、次第に肉料理が一般化され、特に1970年代以降は肉が日常的な食材となっていきました。この変化は、価値観が個人の嗜好に寄り添う傾向へと移行したことを示しており、戦後の欧米文化の影響も加わった結果と考えられます​。

仕事と生活のバランス
1952年から56年生まれの世代以降、仕事中心の生き方から、家庭やプライベートを重視する価値観へのシフトが見られるようになりました。具体的には「予定があれば残業しない」「仕事よりも家庭が大事」といった意識が若い世代ほど顕著になり、組織よりも個人生活を重視する傾向が進んでいます​。

社会貢献意識の揺れ
「社会のために役立つことをしたい」という意識は、この世代で一旦上昇した後、後続世代では減少しつつも再び波打つような傾向を示しています。これは、個人の幸福追求と社会への貢献の間で揺れ動く日本人の価値観の変化を表しています​。

このように、1952年から56年生まれの世代は、個人の自由と多様な価値観が受け入れられる社会への移行期として重要な役割を果たし、従来の伝統的な価値観を一部保ちながらも、大きく社会が変容していく時代の礎となりました


図:各世代での世代効果の標準偏差(博報堂生活総研・日経XTRENDから引用)
(世代効果の谷間の部分(1952-1956年生まれ)が価値観の境界をなしている)