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2024年3月14日木曜日

春日祭

所用で春日大社に行くと,神事があるので午後1時頃まで本殿には参拝できないという。入口の手前のお宮参りの祈祷所あたりまではいけた。昼食をとって一回りして駐車場の前に戻ってくると,神官の行列が本殿からの階段を下りてきた。調べてみると,3月13日は春日祭の日だった。

春日祭は,藤原氏の祭祀を起源として平安時代に始まるが,明治時代に天皇の勅使が派遣される神社の祭祀である勅祭として再定義された。また,旧儀保存の目的で古式を参照した特殊な内容を持つものを特に三勅祭いう。これは,賀茂神社の賀茂祭(葵祭),石清水八幡宮の石清水祭,春日大社の春日祭の3つである。

春日大社によれば,「朝廷主催の祭であり、宮中より天皇陛下のご名代である勅使の参向を仰ぎ、国家の安泰と国民の繁栄を祈ります」とのこと。朝廷とは誰なのよ。この祭祀の本体は非公開なのだけれど,一連の主な行事が終った神官が,たぶん観光客向けにちょっとだけ顔見せ行列してくれたもののような気がする。

春日大社といえば,参道に鹿がたくさん遊んでいる。若くてひょろっとした鹿の二人組が観光客向けに模擬バトルを繰り広げている。件の行列の横にも近寄ってきてバタバタしていた。行列には,神馬も二頭参列していた。冷たい風の春の日で,本殿にも参拝できない時間帯だったが,あたりは外国人観光客でいっぱいだった。


写真:春日祭の行列(2024.3.13撮影)

2022年10月23日日曜日

宗教法人法

統一教会(世界平和統一家庭連合)の宗教法人としての解散命令は,宗教法人法に規定されている。宗教法人法は,宗教団体に宗教法人という種類の法人格を与えることが目的となっている。裁判所が宗教法人に対する解散命令を出せば,その宗教法人は再び法人格を持たない宗教団体に回帰する。以下,関連事項の抜粋を引用する。
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とする。
2 憲法で保障された信教の自由は、すべての国政において尊重されなければならない。従つて、この法律のいかなる規定も、個人、集団又は団体が、その保障された自由に基いて、教義をひろめ、儀式行事を行い、その他宗教上の行為を行うことを制限するものと解釈してはならない。
(宗教団体の定義)
第二条 この法律において「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体をいう。
一 礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体
二 前号に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体
(法人格)
第四条 宗教団体は、この法律により、法人となることができる。
2 この法律において「宗教法人」とは、この法律により法人となつた宗教団体をいう。
(公益事業その他の事業)
第六条 宗教法人は、公益事業を行うことができる。
2 宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。


第六章 解散
(解散の事由)
第四十三条 宗教法人は、任意に解散することができる。
2 宗教法人は、前項の場合のほか、次に掲げる事由によつて解散する。 
五 第八十一条第一項の規定による裁判所の解散命令


第八章 宗教法人審議会
(設置及び所掌事務)
第七十一条 文部科学省に宗教法人審議会を置く。
2 宗教法人審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。
3 宗教法人審議会は、所轄庁がこの法律の規定による権限(前項に規定する事項に係るものに限る。)を行使するに際し留意すべき事項に関し、文部科学大臣に意見を述べることができる。
4 宗教法人審議会は、宗教団体における信仰、規律、慣習等宗教上の事項について、いかなる形においても調停し、又は干渉してはならない。


第九章 補則
(報告及び質問)
第七十八条の二 所轄庁は、宗教法人について次の各号の一に該当する疑いがあると認めるときは、この法律を施行するため必要な限度において、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、当該宗教法人に対し報告を求め、又は当該職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる。この場合において、当該職員が質問するために当該宗教法人の施設に立ち入るときは、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者の同意を得なければならない。
一 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第六条第二項の規定に違反する事実があること。
・・・
三 当該宗教法人について第八十一条第一項第一号から第四号までの一に該当する事由があること。
2 前項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させようとする場合においては、所轄庁は、当該所轄庁が文部科学大臣であるときはあらかじめ宗教法人審議会に諮問してその意見を聞き、当該所轄庁が都道府県知事であるときはあらかじめ文部科学大臣を通じて宗教法人審議会の意見を聞かなければならない。
3 前項の場合においては、文部科学大臣は、報告を求め、又は当該職員に質問させる事項及び理由を宗教法人審議会に示して、その意見を聞かなければならない
4 所轄庁は、第一項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させる場合には、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。
5 第一項の規定により質問する当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に提示しなければならない。
6 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(解散命令)
第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。
・・・
3 第一項の規定による裁判には、理由を付さなければならない。
4 裁判所は、第一項の規定による裁判をするときは、あらかじめ当該宗教法人の代表役員若しくはその代務者又は当該宗教法人の代理人及び同項の規定による裁判の請求をした所轄庁、利害関係人又は検察官の陳述を求めなければならない。
5 第一項の規定による裁判に対しては、当該宗教法人又は同項の規定による裁判の請求をした所轄庁、利害関係人若しくは検察官に限り、即時抗告をすることができる。この場合において、当該即時抗告が当該宗教法人の解散を命ずる裁判に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。
6 裁判所は、第一項の規定による裁判が確定したときは、その解散した宗教法人の主たる事務所の所在地の登記所に解散の登記の嘱託をしなければならない。

   (平成8年1月30日,最高裁判所第一小法廷,決定,棄却)

2022年7月24日日曜日

キリスト教会

クリスマスからの続き

まわりが真宗大谷派で囲まれつつも,キリスト教とはいろいろ縁がある。出身の若草幼稚園日本基督教団若草教会に併設されていて,卒園してからは教会の日曜学校にしばらく通っていた。

親戚にも,立教大学とか青山学院大学とか神戸女学院大学とか関係者多数ありだ。そもそも大学院の指導教官だった森田正人先生の葬儀も聖イグナチオ教会(?)だった。

さて,金沢泉丘高校に入学して,クラブに入るつもりはなくブラブラしていたのだが,1年8組理数科のアイウエオ順の座席が近かった倉橋克人君が,上出誠君と私を誘い込んで,とりあえず,E. S. S. の一日見学に行くことになった。その結果,なんだか様子がよくわからないままに,いつのまにか入部することになってしまった。同じクラスの山口雄三君も野々市中学校繋がりの高橋裕之君とともに参戦した。

テキストは,アメリカ口語教本の入門編であり,付録(?)の英語の発音練習テープがあって,それをダビングして自宅のSONYのテープレコーダーで聞いていた。そうはいっても,秋の文化祭の英語劇の練習が最も重要な活動なのだった。

藤場俊基君の消息を見た後に,E. S. S. の我々の学年の部長だった倉橋克人君はいずこかと調べてみた。たぶん,この日本基督教団の玉島教会倉敷市の牧師の倉橋克人師なのではないだろうか。そうか,うちのクラブからは宗教者が2名輩出されたということなのか。

倉橋君は,上智大学(カトリック系)に進んだはずだ。大学1年のときに米島君を訪ねて文京区の茗荷谷にあった石川県学生寮を訪れた。今と違って連絡手段が少なく,米島君とはすれ違いなってしまった。そこでたまたま居合わせた同寮の倉橋君の部屋に泊めてもらったことがある。一方,先ほどの玉島教会の資料には,同志社大学(プロテスタント系)出身の牧師が代々受け継いでいるとあった。

[1]同志社大学人文科学研究所嘱託研究員としての論文など

[2]統一協会で被害に遭われた方々と現在関わりのある方々へ(日本基督教団)

2022年7月20日水曜日

セクト

我々の世代でセクトというと, 学生運動を担った新左翼のセクトが想起されるが,このたび問題になっているのは,フランスのセクトである。このたびというのは,安倍元首相暗殺事件における「カルトと政治の関係」の件だ。「政治と金の関係」というバズワードに匹敵する微妙な用語かもしれない。

セクトとは,宗教社会学的な価値中立な用法の他に,日本語でのカルトとほぼ同義で,通俗的に犯罪や危険とともに用いられる用法があり,ここでは後者を問題にする。

人民寺院ブランチ・ダビディアン太陽寺院オウム真理教などの事件が続いた後,1995年にフランスの国民議会に「フランスのセクト」という報告書が提出された。これを受けて2001年に「反セクト法」が成立する。当初は「セクト的な団体」を対象にしたものだったが,その後「セクトの逸脱行為」を取り締まる姿勢へ転換した。

そのセクトの逸脱行為とは次のようなものである。
(1)精神的不安定化
(2)法外な金銭要求
(3)元の生活からの意図的な引き離し
(4)身体の完全性への加害
(5)児童の加入強要
(6)何らかの反社会的な言質
(7)公序への侵害
(8)多大な司法的闘争
(9)通常の経済流通経路からの逸脱
(10)公権力への浸透の企て
なるほど,統一教会の活動には十分にあてはまっている。

2022年7月19日火曜日

ライシテ

 何年か前に,フランスの学校で,イスラム系の女子生徒がスカーフを被ることを禁止されたというニュースが流れた。真面目に世界史や政治・経済・地理を勉強していないので,フランスといえばフランス革命であり自由と平等と博愛の国だと思っていた。だから,個人の宗教的な自由を制限するというこのフランスの政策が全く理解できずに吃驚した覚えがある。

それが,フランス共和国憲法の基本原則となっているライシテ(フランスにおける政教分離原則)と関係しているということが,このたびの暗殺事件におけるカルト問題から芋づる式に繋がって掘り出された。

ライシテとは,(国家の)宗教的中立性・無宗教性および(個人の)信教の自由の保障を表わしている。フランス共和国憲法(1958)の第1条(共和国の基本理念)の第1項は次のようになっている。

フランスは,不可分の,非宗教的,民主的かつ社会的な共和国である。フランスは,出自,人種あるいは宗教の区別なく,すべての市民の法の前の平等を保障する。フランスは,あらゆる信条を尊重する。フランスは,地方分権的に組織される。(岩波文庫世界憲法集第2版から引用)

一方,ライシテの具体的な中身を定める政教分離法(1905)[2] を見ると,

第1条 共和国は,良心の自由を確保する。共和国は,公の秩序のために以下に定める制限のもとでのみ,自由な礼拝を保障する。

第2条 共和国は,いかなる礼拝に対しても,公認をせず,給与を支払わず,補助金を交付しない。・・・

この原則から,スカーフ禁止に至る道は複雑である。イスラム移民の増加にともなう摩擦が,ライシテをナショナリズムの道具として持ち出すことつながった。そしてこれが政治的に利用されることによって,ブルカ禁止法のような右翼的な政策が実現してしまった [1] [3]。その理論的な根拠はつぎのようなものである。
人間は個人としては性,年齢,肌の色,職業,信仰などまちまちだが,公共空間ではすべての個人が出自や帰属に関係なく平等な存在として扱われ,すべての市民は法の前に平等である。この考え方は,「公的領域」と「私的領域」の分離という二元論に基づいており,すべての市民は,『私的領域』における 出自,人種,宗教等の差異に関係なく『公的領域』においては抽象的個人として同質であるがゆえに平等である。( [1] から要約)

このため,公的領域における過剰な宗教的プレゼンスが排除されることになるわけだ。フランスはやはりダイバーシティの国ではないような気がする。レ・ミゼラブルのジャべール警部が活躍する中央集権的な警察国家の側面がある。エッフェル塔や大統領府のまわりの小銃をもった軍/警察の威圧感にビビった記憶と共鳴する。

2022年7月13日水曜日

カルト

NHKのニュースもひどいことになっているが,民放のテレビの情報番組では,コメンテーターが一斉に統一教会(世界平和統一家庭連合)と安倍あるいは自民党は関係がない(あるいはあっても問題がない)のだというデマゴーグを振りまいているらしい。相変わらずの政権与党翼賛しぐさを隠そうともしない。

7月11日の午後に,世界平和統一家庭連合(統一教会)会長の田中富広(1956-)が東京都内で記者会見した。これにより,警察発表やマスコミの報道で伝えられていた,安倍暗殺事件の引き金となった宗教団体というのが,統一教会であることが確定した。テレビでは落ち着いた丁寧な説明をそのまま流していたので,日本中がほとんど洗脳されそうになっていた。

これに対抗する言論はなかなか広がらない。唯一,弁護士の紀藤正樹(1960-,阪大法学部)が,統一教会の被害者などの救済に当たる全国霊感商法対策弁護士連絡会のメンバーとしてモーニングショーで熱弁を振るっていたらしい。その連絡会の記者会見の様子を見ることができる。昔は,各大学に統一教会傘下の原理研究会があって,これが非常に危険な存在であるということは常識だったが,いまはそうでない(反例はあるが)。

公安調査庁の年報に登場するのは,日本共産党とオウム真理教だ。オウム真理教のインパクトによって,統一教会の印象が薄れたのか。そうではない。自民党の宗教右派にしっかり食い込んだ統一教会は,政治的な影響力を発揮して,2015年,下村博文(1954-)が文部大臣(文化庁が宗教法人を管轄)のときに,その大きな被害から悪名が浸透してしまった宗教法人,統一教会(世界基督教統一神霊協会)の名称を,世界平和統一家庭連合に変えるのを認めてしまったことが大きな要素だ。

反社会的集団カルトとしての統一教会については,やや日刊カルト新聞主筆の鈴木エイトが古くから取材を進めている。その一部は,いまは無きハーバービジネスオンラインのアーカイブでみられる。(日本共産党以外で)国会で統一教会の問題を指摘した一人が,1998年に参議院議員となった中村敦夫(1940-)だったと当時政策担当秘書だった田中信一郎が話していた。

P. S. カルトの定義(菅野完):(構成員に強い影響を確立して)教団内外で人権の抑圧や犯罪行為をしている団体。∴統一教会はカルト。では,ヤクザとカルトの違いは何か。だから宗教学者たちは,カルトという言葉を学術用語としては忌避するわけか。