図:機械工学から細胞生物学への進化(ChatGPTによる)
Q(koshix):染色体はDNAの構造物から構成されます。そのうちの遺伝子以外の情報を含む部分も含めてゲノムと呼んでいるらしいのですが,染色体を構成するDNAのうちで,情報を担わない部分は存在しますか。それはゲノムの範囲には入らないという理解で良いですか。
A(Gemini):結論から申し上げますと、ご質問の後半部分の前提には明確な誤解があります。DNAの中に「情報を担わない部分(何の意味も持たない空白部分)」は存在しますが、それらの部分もすべて「ゲノム」の範囲に含まれます。「ゲノム」とは、ある生物が持つ「すべての遺伝情報(DNA配列の全全体)」を指す概念です(遺伝子:gene と 染色体:chromosome を組み合わせた造語)。重要なのは、ゲノムは「遺伝子(タンパク質を作る設計図)」の部分だけを指す言葉ではないという点です。(後略)
なるほどね。
Q(koshix):
ヒト遺伝子の数が20,000ということは,人間の多様な細胞の部品であるたんぱく質がたかだか2万種類しかないということですか。ジェット機やロケット・人工衛星の部品数でももっと多いような気がしますが。
A(ChatGPT):
結論から言うと、「遺伝子が約2万個だから、人体で使われるタンパク質も2万種類しかない」という理解は誤りです。
約2万というのは主として、タンパク質をコードする遺伝子座の数です。1つの遺伝子から複数のRNA、さらに複数のタンパク質分子種が作られます。その後の化学修飾まで含めれば、人体のタンパク質の状態は少なくとも数十万、数百万規模になり得ます。
1.1つの遺伝子は、1種類のタンパク質に対応しない
高校生物的な
> 1遺伝子 → 1タンパク質
は、原理を理解するための大幅な単純化です。実際には、
> 1遺伝子 → 複数のRNA → 複数のタンパク質アイソフォーム → 多数の修飾状態
となります。
中心的な仕組みが、選択的スプライシングです。遺伝子から最初に作られるRNAには、タンパク質の設計情報となるエクソンが複数含まれています。このエクソンの組み合わせを変えてつなぐことで、同じ遺伝子から異なるタンパク質を作れます。
たとえば、ある遺伝子がエクソン A、B、C、D、Eを持っている場合、
* A–B–C–E
* A–B–D–E
* A–C–D–E
という具合に、異なる完成品を作れます。これらをタンパク質アイソフォーム、つまり同一遺伝子に由来する構造の異なるタンパク質、と呼びます。
ただし、数学的に可能な全組合せが実際に作られるわけではありません。細胞種、発生段階、環境条件によって、使用される組合せが厳密に制御されています。
2.タンパク質は、合成後にも作り替えられる
翻訳によってアミノ酸鎖ができた後も、それで完成ではありません。タンパク質にはさまざまな翻訳後修飾が加えられます。
代表例は、リン酸化、糖鎖付加、アセチル化、メチル化、ユビキチン化、脂質付加、特定部分の切断、です。
同じアミノ酸配列でも、リン酸基が付く位置や数によって、活性、細胞内の位置、結合相手、寿命が変わります。そのため、「アミノ酸配列が異なるタンパク質の種類」と「機能状態まで区別したタンパク質分子種」の数は大きく違います。
後者はプロテオフォームと呼ばれます。プロテオフォームとは、スプライシング、遺伝的変異、翻訳後修飾などを含めた、実際に存在するタンパク質の個別形態です。
したがって、大まかには、
|数える対象---------------------------------|規模---------------------------------|
|タンパク質コード遺伝子 |約 2万 |
|主要なタンパク質アイソフォーム |数万〜 10万程度 |
|修飾状態まで含むプロテオフォーム|数十万〜数百万以上の可能性|
|瞬間ごとの分子配置・複合体 |事実上、さらに巨大 |
と考えるべきです。ただし、プロテオフォームの総数は定義と測定限界に左右され、確定した数字ではありません。
3.細胞の違いは「部品の種類」だけで決まらない
さらに重要なのは、人体の複雑さが部品の総種類数だけで決まるわけではないことです。
神経細胞、筋細胞、肝細胞、皮膚細胞は、原則としてほぼ同じ約2万個の遺伝子を持っています。違いは、どの遺伝子を使うか、いつ使うか、どれだけ使うか、どのアイソフォームを作るか、どの場所に配置するか、どのタンパク質と結合させるか、にあります。
これは、同じ部品箱からでも、組み方と制御プログラムによって別の機械を作れることに似ています。
遺伝子は単なる「部品の設計図」ではありません。酵素、構造材、センサー、信号伝達装置、転写制御因子などを作ります。そして、これらの部品が互いの生産量や動作状態を制御するネットワークを形成します。
4.ジェット機との比較で、何が違うのか
ジェット機や人工衛星の「部品数」と、遺伝子数を直接比較するのは、数えているものの階層が違います。ジェット機の部品数には、同じ規格のボルトが1万本あれば1万個として数えます。しかし遺伝子数は、同じタンパク質分子が細胞内に100万個存在しても、設計情報としては1遺伝子と数えるだけです。
比較するなら、
・遺伝子数 ≒ 部品の種類を規定する基本設計モジュール数
・タンパク質分子数 ≒ 実際に機体に取り付けられた全部品数
・遺伝子制御ネットワーク ≒ 制御コンピューターと配線
・発生過程 ≒ 自己組立式の製造工程
に近いでしょう。
人体には、およそ数十兆個の細胞があり、各細胞内には膨大な数のタンパク質分子があります。したがって「現物の部品数」で比較すれば、ジェット機よりはるかに多い。ただし、その基本設計モジュールが約2万個だということです。
5.むしろ驚くべきなのは、約2万で自己構築できること★
人間の複雑さは、部品リストの長さよりも、次の性質にあります。
(1) 部品が自分自身の生産を制御する
(2) 部品同士が多数の組合せで複合体を作る
(3) 細胞が周囲の信号に応答して状態を変える
(4) 発生過程で位置情報を読み、組織を自己形成する
(5) 神経系が経験に応じて結合を変える
人工衛星は、完成後に自分で部品を製造して成長したり、損傷を修復したり、別種類の機体へ分化したりしません。生物は「固定された機械」ではなく、部品を作る工場、制御プログラム、自己組立過程、修復機構が一体化した動的システムです。
したがって、約2万という数字は「人間は意外に単純だ」という意味ではありません。むしろ、
> 比較的少数の遺伝子を、組合せ、時間、場所、量、修飾、相互作用によって使い回し、巨大な複雑性を生成している
ということです。
なお、ここには非タンパク質コードRNAやDNA上の調節領域も重要な役割を持ちます。人間の複雑さを説明する設計情報は、約2万個のタンパク質コード領域だけに収まっているわけではありません。