ラベル 心理 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 心理 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2024年7月19日金曜日

エゴグラム

エニアグラムからの続き

エニアグラムを見ていたら,昔,似たような性格診断があったことを思い出した。このブログに書いたような気がしたけれど見あたらない。検索すると,どうやらエゴグラムのようだった。

エリック・バーン(1910-1970)の交流分析におけるP(親),A(大人),C(子ども)の「3つの自我状態」をもとに,弟子のジョン・M・デュセイがより細かくCP(critical parent 支配性),N
(nurturing parent 寛容性),A(adult 論理性),FC(free child 奔放性),AC(adopted child 順応性)に分類し,人の性格を診断する方法としてエゴグラムを考案した(英語版WikipediaにはEgogramは存在しない・・・怪しいな)。

またまた試してみた。結果は以下の通り。

図1:自分のエゴグラムの診断結果その1

AとACが高いN型Ⅲらしい。

 長所:知性的,理性的,生産性が高い。気配りができる
 注意点:自分をないがしろにしがち,楽しみ下手
 向いている仕事:御用聞きビジネス,お客様窓口,総務課,社長補佐

なんとなくあたっているような・・・そうでもないような・・・
念のためにもう一ヶ所試してみた。青のラインがそれで,ほぼ同じ結果だ。なお,赤は自分がこうなりたいという性格だ。子ども成分をへらして親成分を増やしたがっているのか。


図2:自分のエゴグラムの診断結果その2

2024年7月18日木曜日

エニアグラム

しばらく前のこと,エニアグラム性格診断のページを見つけたので,早速やってみた。たいていこのような性格診断ページは怪しい有料部分に誘導される。無料診断とあったので,一か八か,試してみた。

エニアグラムというのは,ChatGPT-4oやClaude 3.5 Sonnetによれば,
エニアグラム(Enneagram)は、個人の性格を9つのタイプに分類する人格モデルです。それぞれのタイプは、異なる動機や特性、行動パターンを持ち、人々が自分自身や他者を理解するためのツールとして利用されています。エニアグラムは古代の知恵と現代の心理学を組み合わせたもので、個人の成長や自己理解、対人関係の改善に役立つとされています。

1.完璧主義者(Perfectionist),2.援助者(Helper),3.達成者(Archiever),4.個性派(Individualist),5.観察者(Investigator),6.忠実者(Loyalist),7.楽天家(Enthusiast),8.指導者(Challenger),9.調停者(Peacemaker)
というものだ。International Enneagram Association はじめ,ネット上には有象無象のサイトがてんこもりで,どれもこれも怪しげに見えてしまう。まあそんなものかもしれない。


図:エニアグラム性格診断(hoyme.jpから引用)

自分は,血液型診断,星座占い,高島暦,姓名判断など,どれもこれも簡単に信じてしまう情弱なので(だから反ニセ科学論者とはあまり肌が合わないのよ),このエニアグラムもすっかり信じてしまいそうになる。まあ,一応,心理アンケートされているので,少しはましなのではないか。

90問に答えた結果は次の通り,
1回目:6. 堅実家
性格特徴=安全を求め,慎重に行動する人,キーワード=組織・ルール・規則・誠実・忠実・責任感,長所=期待に応えようと誠心誠意尽くす・仲間思い,短所=疑い深い・頼れる人がいないと不安になる
2回目:5. 研究者
性格特徴=人と距離をとり,静かに観察する人,キーワード=知識・情報・蓄積・分析・解析力・節約,長所=いつでも冷静な判断ができる・洞察力が鋭い,短所=自己表現が苦手・自分の世界に没頭しすぎる

まあまあ合ってるような気がする。というか,アンケートに答えなくても,9つの類型を睨むと,その他のタイプには属さないというのがわかってしまうような気がした。

2024年6月3日月曜日

心の社会:ミンスキー

ChatGPT-4oを使ってファスト読書ができるかどうか実験してみた。
題材として,人工知能を理解するための古典文献中の第一である,人工知能の父マービン・ミンスキー(1927-2016)の「心の社会」を選んだ。安西祐一郎(1946-)訳の1990年の初版574ページは,自分の本棚で積ん読状態で冬眠されていらっしゃった。

Q(koshix):
マーヴィン・ミンスキーの「心の社会」で主張されていることを詳しく説明してください。

A(GPT-4o)
マーヴィン・ミンスキーの著書「心の社会」(The Society of Mind)は、人工知能と人間の認知科学に関する彼の理論を述べた重要な作品です。この本では、心がどのように機能するのか、特に知能がどのように生じるのかについての革新的な視点が提供されています。ミンスキーは、心を一つの単一のエンティティとして見るのではなく、複数の小さなエージェントの集合体として捉えます。以下に、彼の主張を詳しく説明します。

1.心はエージェントの社会である
ミンスキーは、心は多数の簡単なエージェント(彼はこれを「エージェント」と呼びます)の集まりであると主張します。各エージェントは単純な機能を持っており、それ自体は知能を持たないが、これらが連携して働くことで複雑な知的行動が生まれるとします。この考え方は、心を理解するためにそれを分解し、各部分の相互作用を研究するというアプローチを示唆しています。

2.レイヤード構造と階層的な制御
ミンスキーは、心の構造を複数のレイヤーに分けて説明します。各レイヤーは異なる種類のエージェントで構成されており、それぞれが特定のタスクを担当しています。これにより、単純なタスクから複雑な認知タスクまでを処理する能力が生まれます。例えば、低レベルのエージェントは基本的な感覚処理を行い、高レベルのエージェントは抽象的な思考や計画を担当します。

3.エージェント間の競争と協力
ミンスキーは、エージェント間の関係が重要であると強調します。エージェントは時には競争し、時には協力することで最適な解決策を見つけ出します。この競争と協力のダイナミクスが、柔軟で適応的な知能を生み出す鍵とされています。

4.学習と適応
エージェントは静的な存在ではなく、経験を通じて学習し、適応します。ミンスキーは、知識の獲得と使用がどのようにエージェントの行動に影響を与えるかを詳細に述べています。特に、問題解決や新しい状況に対応するための適応メカニズムが強調されています。

5.心の社会モデルの応用
ミンスキーの理論は、人工知能の設計や人間の知能の理解に幅広く応用されています。このモデルは、知能が単一のアルゴリズムやプロセスではなく、複数の相互作用するプロセスの結果であることを示しています。これにより、より複雑で柔軟なAIシステムの開発が可能になります。

6.批判と影響
「心の社会」モデルは、その独創性と包括性から大きな影響を与えましたが、同時に批判も受けました。一部の批評家は、エージェント間の相互作用の具体的なメカニズムや、どのようにして統一された意識や自己が生じるのかについての説明が不足していると指摘しました。それでも、この理論は人工知能研究における重要な枠組みとなっています。

ミンスキーの「心の社会」は、人間の知能と人工知能の両方を理解するための新しい視点を提供するものであり、現代の認知科学やAI研究においてもなお重要な影響を持ち続けています。 
 
Q(koshix):
心を構成するエージェントにどんなものがあるか,またその相互関係がどうなっているかをできるだけ分かりやすく全て列挙してください。

A(GPT-4o):
マーヴィン・ミンスキーの「心の社会」において、心を構成するエージェントは非常に多様で、各エージェントが特定の機能を果たすために存在しています。以下に、いくつかの主要なエージェントの種類とその相互関係をわかりやすく説明します。

エージェントの種類

感覚エージェント (Sensory Agents)
役割: 外部環境からの情報を収集し、それを処理して内部に伝える。
例: 視覚エージェント、聴覚エージェント、触覚エージェントなど。

運動エージェント (Motor Agents)
役割: 行動を実行し、身体の動きを制御する。
例: 手を動かすエージェント、歩くエージェント、話すエージェントなど。

記憶エージェント (Memory Agents)
役割: 経験や知識を保存し、それを必要に応じて取り出す。
例: 短期記憶エージェント、長期記憶エージェント、エピソード記憶エージェントなど。

感情エージェント (Emotion Agents)
役割: 感情を生成し、他のエージェントの活動に影響を与える。
例: 喜びエージェント、悲しみエージェント、恐怖エージェントなど。

思考エージェント (Thinking Agents)
役割: 問題解決、意思決定、推論を行う。
例: 論理エージェント、計画エージェント、推論エージェントなど。

社会的エージェント (Social Agents)
役割: 他者との相互作用を管理し、社会的な行動を制御する。
例: 共感エージェント、コミュニケーションエージェント、協力エージェントなど。

エージェント間の相互関係

協力 (Cooperation)
例: 感覚エージェントが視覚情報を収集し、それを記憶エージェントに送って過去の経験と照らし合わせ、運動エージェントに適切な行動を指示する。

競争 (Competition)
例: 異なる解決策を提案する思考エージェントが競い合い、最も適切な解決策が選ばれるプロセス。

連携 (Coordination)
例: 感情エージェントが恐怖を感じると、運動エージェントに逃走行動を起こすように指示し、同時に思考エージェントが危険の評価を行う。

抑制と強化 (Inhibition and Facilitation)
例: 感情エージェントが怒りを感じると、抑制エージェントがその感情を制御し、社会的エージェントが適切な反応を見つける。

フィードバックループ (Feedback Loops)
例: 運動エージェントが行動を実行し、その結果が感覚エージェントを通じてフィードバックされ、記憶エージェントと思考エージェントがその情報を使って次の行動を調整する。

具体的な例

コップを持ち上げる動作:
視覚エージェントがコップを見つける。
記憶エージェントが過去の経験を基に最適な持ち上げ方を提供する。
運動エージェントが手を動かし、コップを持ち上げる。
フィードバックループにより、感覚エージェントが持ち上げた後の重さやバランスを確認し、必要なら運動エージェントに調整を指示する。

会話をする:
聴覚エージェントが相手の言葉を聞き取る。
思考エージェントがその意味を解釈し、適切な応答を考える。
記憶エージェントが過去の会話や知識を参考にする。
社会的エージェントが応答のトーンや態度を決定する。
運動エージェントが言葉を発し、顔の表情を制御する。

ミンスキーの理論は、これらのエージェントが相互に作用し合うことで、人間の心の複雑な機能を生み出すというものです。この視点は、AIやロボティクスの設計においても有益であり、複雑なシステムをより効率的に設計するための基盤となっています。

 

Q(koshix):
意識を担うエージェントはありますか

A(GPT-4o):
マーヴィン・ミンスキーの「心の社会」において、意識そのものを単独で担う特定のエージェントが存在するという考え方はされていません。むしろ、意識は複数のエージェントの相互作用と協調から生じる現象であるとされています。以下に、意識に関連するエージェントの役割やその相互関係をわかりやすく説明します。

意識に関連するエージェント

注意エージェント (Attention Agents)
役割: 特定の情報や出来事に対して注意を集中させる。意識の焦点を決定し、重要な情報を他のエージェントに伝える。
例: 視覚注意エージェント、聴覚注意エージェント。

記憶エージェント (Memory Agents)
役割: 過去の経験や知識を保存し、必要に応じて取り出す。意識に関連する情報の背景知識を提供する。
例: 短期記憶エージェント、長期記憶エージェント。

自己モニタリングエージェント (Self-Monitoring Agents)
役割: 自己の状態や行動を監視し、自己認識を持つ。意識の一部として、自己と他者の区別を行う。
例: 身体感覚モニタリングエージェント、感情モニタリングエージェント。

意思決定エージェント (Decision-Making Agents)
役割: 得られた情報を基に行動を決定する。意識的な選択と行動を支える。
例: 計画エージェント、選択エージェント。

社会的エージェント (Social Agents)
役割: 他者との相互作用を管理し、社会的な意識を形成する。共感やコミュニケーションに関連する。
例: 共感エージェント、コミュニケーションエージェント。 
 
エージェント間の相互関係
意識はこれらのエージェントの複雑な相互作用によって形成されます。以下に、その具体的なプロセスを説明します。

注意の集中と情報の選別
注意エージェントが特定の刺激や情報に集中し、それを他のエージェントに伝達します。これにより、意識の焦点が決まります。

記憶との連携
記憶エージェントが関連する過去の経験や知識を提供し、現在の状況を理解するための背景情報を提供します。

自己モニタリングと自己認識
自己モニタリングエージェントが現在の状態や行動を監視し、自己の一貫性を保つ役割を果たします。これにより、自己と他者の区別がつけられます。

意思決定と行動選択
意思決定エージェントが得られた情報を基に、意識的な選択と行動を行います。このプロセスは、意識的な意思決定の核心部分となります。

社会的相互作用
社会的エージェントが他者との相互作用を管理し、社会的な意識を形成します。これにより、意識は個人的なものだけでなく、社会的な文脈でも機能します。

結論
ミンスキーの理論によれば、意識は単一のエージェントによって生じるものではなく、複数のエージェントが協力し合い、相互に作用することで生まれる現象です。これらのエージェントが連携し、情報を交換し合うことで、複雑で高度な意識が形成されるのです。この視点は、意識を理解するための新しい枠組みを提供し、人工知能の研究にも大きな影響を与えています。

なかなかもっともらしい答えが得られた。ところで,ここで安心してはいけない。この結果を,正確性が売りの生成AIであるPerplexityに与えて,正しいかどうか聞いてみたところ,テキストが大きすぎではねられた。仕方がないので,次に評判が良いGemini 1.5Proに入れてみる。こちらは,入力トークンバッファに十分余裕がある。


Q(koshi):
以下の対話で事実とは異なっている部分や不正確な部分を指摘してください

A(Gemini 1.5Pro):
全体的に、ミンスキーの「心の社会」の要約としては悪くないですが、いくつか事実と異なる部分や不正確な部分があります。

事実と異なる部分・不正確な部分

エージェントの種類と役割
対話では、感覚、運動、記憶、感情、思考、社会など、エージェントの種類を具体的に列挙していますが、ミンスキー自身は著書で、特定の種類のエージェントを定義していません。ミンスキーは、エージェントは多種多様で、その機能は状況や組み合わせによって変化すると述べています。
エージェント間の関係
協力、競争、連携、抑制と強化、フィードバックループといった関係性は、ミンスキーの理論と一致しています。しかし、対話ではこれらの関係が固定的なものとして説明されている印象を受けます。実際には、エージェント間の関係はより流動的で、状況に応じて動的に変化します。
意識に関する説明
ミンスキーは特定のエージェントが意識を担うとは述べていません。意識は、エージェントの相互作用から創発的に生まれるものとして捉えられています。
対話では、注意、自己モニタリング、意思決定といった機能を持つエージェントが意識に関連するとされていますが、ミンスキー自身は、これらの機能を実現するエージェントの具体的な構造については深く言及していません。

ミンスキーは、「心の社会」の中で意識の問題を取り上げていますが、完全な解答を与えているわけではありません。

改善点

・エージェントの種類を具体的に列挙するのではなく、「ミンスキーは特定の種類のエージェントを定義せず、多種多様なエージェントが存在すると述べています」と説明する方が正確です。
・エージェント間の関係は、固定的なものではなく、状況に応じて動的に変化することを強調する必要があります。
・意識については、「ミンスキーは、意識は特定のエージェントが担うのではなく、エージェントの相互作用から創発的に生まれると考えている」と説明し、具体的なエージェントの構造や機能に言及することは避けるべきです。

その他

対話では、ミンスキーの「心の社会」をかなり簡略化して説明しています。より深く理解するためには、実際に著書を読むことをお勧めします。

さらにこれをChatGPT-4oに入れてみたが,まあ,それで喧嘩に発展するようなことはなかった。一方,実際の本を書棚から取り出してきて目次を眺めてみると,GPT-4oの説明とはかなり違った印象を持ったのも事実である。そこで,GPT-4oは目次を知っているのかどうか聞いてみた。

Q(koshix):
マーヴィン・ミンスキーの「心の社会」の目次を列挙することはできますか?日本語に直してください

A(GPT-4o):
マーヴィン・ミンスキーの「心の社会」(The Society of Mind)は270の独立したエッセイで構成されており、それらは30の章に分かれています。以下は、その目次の日本語訳です:

1.心の社会
2.エージェントとエージェンシー
3.K-ライン
4.エージェントの原則
5.心と脳
6.常識
7.思考の言語
8.見ることと想像すること
9.学習と記憶
10.心の構築
11.意識
12.反省的思考
13.問題解決
14.自己認識
15.考えることと説明すること
16.感情
17.動機と目標
18.否定的思考の力
19.自己
20.成長
21.幼児期
22.子供の心
23.学習と理解
24.知識の本質
25.創造的思考
26.高次の思考
27.脳の専門化
28.心の統一
29.心の限界
30.心の未来

この目次は、ミンスキーが心を「エージェント」という単純な部分の相互作用から成り立つ複雑な社会として描いた方法を反映しています。彼のアプローチは、知能の多様性と複雑さを強調し、単一の原理や単純なシステムではなく、多様なプロセスと目的を持つエージェントの集まりが心を形成するという考え方を示しています​​​​。

この目次は完全なハルシネーションである。30章と270のエッセイというのはほぼあっている。なぜ,こうなったかというと,GPT-4oがインターネット上で検索して得られた資料に問題がある。一つは,Internet Archiveの該当部分であり,ここにはオープンな本文テキストはない。もう一つは,Tom Rochetteというひとの読書メモである。そこには原本の目次はない。たぶんこれを用いたので誤った結果が出てきたのだ。

なお,元慶応義塾長の安西先生訳の「心の社会」の正しい目次は次のとおりです。
1.心の社会
2.全体と部分
3.争いと妥協
4.自己(以下,自己が太字になっている)
5.個性
6.洞察と内省(ここにB-脳がでてくる)
7.問題と目標
8.記憶の理論(ここにK-ラインがでてくる)
9.要約すること
10.パパートの原理
11.空間の形
12.意味の学習
13.見ることと信じること
14.定式化のし直し
15.意識と記憶
16.感情
17.発達
18.推論
19.言葉と考え
20.文脈とあいまいさ
21.トランスフレーム(以下トランスが太字に)
22.表現
23.比較
24.フレーム
25.フレームアレイ
26.言語フレーム
27.検閲エージェントと冗談
28.心と世界
29.思考の領域
30.心の中のモデル



図:マーヴィン・ミンスキーの「心の社会」を適確に表現するイメージ


2023年6月14日水曜日

鏡の中のミステリー

暇な老人はテレビをつけっぱなしにすることが多い。韓国ドラマを見終わって番組がつまらなくなると,放送大学にチャンネルを替えるのが癖になってしまった。先日,それで「鏡の中のミステリー〜なぜ左右が反対に見えるのか?〜」という高野陽太郎先生の番組にあたった。

従来の説として,ファインマンの説と回転説を紹介した後,それらを簡単に否定してしまった。ええっ。そのうえで,多重プロセス理論という自説を展開する。人による左右の反転の認知は,3つの原理によって産み出される3つの減少の複合体だとのこと。その3つの原理は,(1) 視点変換,(2) 表象方向 の乖離,(3) 光学変換 である。

文字の反転は(2)によるもので,鏡の前の人の場合 (1)とは区別されるというのだ。ええっ。トンデモ理論ではないのか。それにしては,森津太子さんが神妙に聞いている。岩波書店からも,「岩波科学ライブラリー 55 鏡の中のミステリー 左右逆転の謎に挑む 鏡に映った自分の顔がなぜ左右逆に見えるのか.これまで誰ひとり解けなかった謎が,ついに解けた。(現在品切れ)」と売り出している。

あたまがクラクラしてきた。もう少し調べてみると,ちゃんと反論している人はいた。その結果,認知科学が2008年に誌上討論を実施している。しかし結論はでていない。岩波と放送大学を握ったほうが勝ちなのだろうか?もう少し勉強してから考えをまとめる。

今のところの自分の考え。「上下対称,左右非対称の生物が鏡に正対したとき,彼らは上下が反転していると認識する可能性があるだろう」「文字を2次元の対象と考えれば,鏡によって反転することはない。反転するのは3次元的な対象に限られる。なお,表裏のある2次元の対象は3次元の対象と同等である」


[1]「小特集 − 鏡映反転」(認知科学,2008)
[2]鏡の世界回答編(多幡達夫,2004)
[3]鏡の中の左利き一物理屋のコメント(吉村浩一|多幡達夫,2004)
[4]鏡像問題(発見の発見ブログ,田中潤一,2007-2019)

2023年2月5日日曜日

スライムハンド

NHKの朝のニュースで名古屋市立大学芸術工学部小鷹研究室が紹介されていた。小鷹研理准教授は,もともとロボットの研究をしていたが,鏡に映った身体感覚の錯覚におどろいて,その分野の研究にシフトした。

テレビで紹介されていたのは,スライムハンドという錯覚だ。実験者と被験者がテーブルに向かいあって座っている。被験者は右手をテーブルに載せ,鏡を挟んで左手の位置にはスライムだけが置かれている。被験者は鏡を左からのぞき込み,右手の位置に映ったスライムだけを見ている。

実験者が被験者の左手と右手側のスライムを同時に触ったり放したりする。やがて,左手の甲の皮膚をつまみながら,スライムをつまんで引き伸ばすというものだ。動画を見ていただいたほうが話が早い。このとき,被験者は自分の手の甲の皮膚が伸びていくような錯覚を感じる。

NHKの番組では実演までやっていた。研究室のホームページにはこのほかにも楽しそうな錯覚実験がたくさんのっていた。昨年にはあちこちのメディアで取り上げられていたらしい。


写真:スライムハンドの実験の様子(小鷹研YouTubeから引用)


2022年11月30日水曜日

なぜ歳を取ると時が速く流れるのか?

タイパからの続き

歳を取ると時間が速く流れるように感じることが多い(少年易老学難成)。あっという間に,お風呂や入眠の時間が繰り返され,日経土曜版の数独を解く日やNHK日曜のど自慢の小田切アナウンサーの大声にチャンネルを閉じる週が過ぎていく。このような意識における時間の感じ方の件について,次のようなことではないかと考えている。

子供や若者のころには,日々新しい経験が待っている。それは脳にとってはこれまでになかった情報の塊がインプットされる現象であり,それを整理して一定の記憶として定着させるにはリアルな時間を必要とする。

ところが,似たような経験が繰り返される場合,脳はそれを新しく処理する必要はなくなる。記憶にある過去の経験リストにリンクしたうえで,従来の経験との差分だけを処理すればよい。このように類似した経験はまとめて記憶の塊として憶えればよい。脳は面倒くさがりやだし,記憶容量や処理能力も無限ではないので,なんらかの効率化を図っているに違いないと踏んでいる。

話は少しそれるのだが,その結果面倒なことが起こる。例えば,類似した人の名前や言葉は共通部分を節約するため,近傍にまとめて記憶されているわけだ。これがどんどんたまってきて,記憶が古くなってしまうとリンクがぼやけてきて分離がむずかしくなる。これを記憶の縮退と名付けることにしよう。

えーっとあれあれ・・・,似たような名前がなかなか思い出せないのだ。経験の場合も類似したものが固着,融合してしまい,自分の記憶と家人の記憶がだいぶ別の模造記憶になってしまっている場合がある。親戚でたまに集まって互いの記憶を確認すると,あっと驚く発見がある。まあ,各人の立場の違いによる経験の差も影響しているかもしれない。

話を元に戻す。物理学の時間を定義するためには,周期的な物理現象の存在が必要だったように,意識における時間間隔は,自分の経験量によって刻まれるのではないか。その経験量とは物理的なものではなく,脳で情報処理される認知科学的な経験量=脳内処理時間に比例する量だと推察できる。

この結果,歳を取れば,経験が増えた分,多くの経験は単なる繰り返しや過去のそれの派生的経験になる。そこで,情報処理時間はリンクだけですんでしまい,意識時計の目盛りは実時間に比べてあまり進まなくなってしまう。もしかすると認知科学の論文でこれを実証するような研究があるのかもしれない。

ネットでは,このテーマについて,ジャネーの法則というちょっと怪しい理論を持ち出して論じている場合がある。これは単なる現象論なので,あまり説明にはなっていない。


図:DiffusionBeeによる少年易老学難成のイメージ(抽象語の羅列には弱いと思われる)

2021年8月9日月曜日

性格診断テスト

 16Personalities性格診断テスト というちょっとお洒落な性格診断テストを見つけた。

だいたいこういうのは,血液型占い星座占い九星気学と同じように当たる。たぶん,すべての性格診断テストはなんとなく当たっているように感じることが多い。人間のパーソナリティ(人格でなくて性格)は複雑で多面的なものなので,ある性格特徴キーワードが与えられれば,わずかでも重なっているとマッチしたと解釈してしまうのだろう。

この16Personalites性格診断テストは,英国のNERIS Analytics Limited という会社が運営しているようで,無料診断の上にビジネスモデルが展開されているような雰囲気。これはマイヤーズ・ブリッグスタイプ指標(MBTI)というものの亜流らしい。MBTIの界隈には怪しい社団法人や任意団体が跋扈している

さて,3回試してみると次の結果となった。

“仲介者”型の性格(INFP-A)

仲介者型気質の人は,真の理想主義者で,極悪人や最悪の出来事の中にさえも,常にわずかな善を見い出し,物事をより良くするための方法を模索しています。落ち着きがあり控えめで、内気にさえも見られますが,内には激情と情熱があり,まさに光を放つ可能性を秘めています・・・

“建築家”型の性格(INTJ-A)

この上なく孤独,そして最も希少で戦略に長けている性格タイプのひとつで,建築家型の人達自身,これをすべて痛いほど感じています・・・。想像力が豊かな一方で決断力があり,野心に溢れている反面,引っ込み思案で、驚くほど好奇心がありますが,エネルギーを浪費しません。

“提唱者”型の性格(INFJ-A)

提唱者型の人達は非常に希少で,その数は全人口のわずか1%未満ですが,それにもかかわらず,世界にその足跡を残しています・・・生まれながらに理想主義者で道徳感覚がありますが,提唱者型の人達を際立たせているのは,付随する計画型の気質です・・・

うーん,残念ながらあまり当たっていないのかもしれない。 

2020年6月10日水曜日

カイロ大学同窓会

昨日は,在日エジプト大使館の Facebook (ページの作成日は2018年1月9日)で,小池百合子が卒業生であることを証明するというカイロ大学からの文書が公開されていた。なお,こちらは,在日エジプト大使館文化・教育・科学局のページ

一昨日あたりから,Wikipediaのカイロ大学同窓会(英語版)のページが編集されている。発端の3件のIPアドレスによる編集が日本人が発信源であろうと思われるのは,当初,カイロ大学が Kairo とスペリングされていたからである。カイロ・アメリカン大学の同窓会には小池の記述があるのに,カイロ大学にないのはどうしてだという声があったので,それに対応してあわてて繕おうとしたようだ。
なお,amazonで検索すれば,カイロ大学の同窓会名簿的なもので小池百合子が載っていそうな情報がある。

- -
- -

清水有高と安富歩は,さらに次の段階に議論を進めていた。アリス・ミラーによる幼児虐待とその社会への影響という文脈である。小池を支持する我々の側が問題とされている。

2019年9月21日土曜日

ハイパーソニック・エフェクト

BSで放送大学大学院の授業をやっていた。2017年の音楽・情報・脳で,国際科学振興財団上級研究員の河合徳枝先生が,インドネシアバリ島のケチャを題材に話を進めた。ハイパーソニック・エフェクトは非常に興味深いテーマであり,脳の報酬系やトランスの話も含め,SFの材料がごろごろところがっていた。

8 共同体を支える音楽
   音楽・共同体・インターメディア性・全員参加可能性
9 人類の遺伝子に約束された快感の情報
   脳の階層性・報酬系・快感誘起性情報要素・威嚇のシグナル
10 音楽による共同体の自己組織化
   自己組織化・報酬系・ガムラン・ケチャ
11 トランスの脳科学~感性情報は人類をどこまで飛翔させるか
   祝祭・トランスフィールド計測・脳波

大橋力(芸能山城組の山城祥二)が芸能山城組のサイトにハイパーソニック・エフェクトの解説文を載せている。大橋力,仁科エミ,河合徳枝らは,1994年に放送大学学園の紀要に「可聴域上限をこえる高周波の生理的・心理的効果(ハイパーソニック・エフェクト)について」という論文を書いており,このころから研究が進んでおり,バリ島のケチャもその格好の材料となっていた。