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2024年7月16日火曜日

世界人口推計2024

人類減少からの続き

7月11日に,国連の世界人口推計の2024年版が公表されたので,まとめてみた。

最初に,ChatGPT-4oに全文を読ませて,世界人口と日本人口の2100年までの推移グラフを描くようお願いしたところ,残念ながら堂々巡りのループに落ち込んで,全く結果を出すことができなかった。

しかたがないので,自分で最初から目を通したところ(最初からそれしなさいってこと〜),それぞれのグラフは存在していたので,これを以下に添付する。それと,キーメッセージがあったので,これだけは,ChatGPT-4oにまとめてもらった。

Q(koshix):
国連の人口推計における上記ファイルのキーメッセージの内容を日本語でまとめてくだい。

A(ChatGPT-4o):
国連の2024年版「世界人口予測」の主なメッセージは以下の通りです。

世界人口のピーク
 世界人口は今後50~60年間成長を続け、2080年代半ばに約103億人に達すると予測されています。その後、世紀末までに約102億人に減少する見込みです。
21世紀内に人口がピークに達する確率は80%と非常に高いです。これは10年前の予測と比較して大きな変化であり、当時は21世紀中に人口成長が終了する確率は約30%でした。
2100年の世界人口は、10年前の予測よりも約6%少なくなると見込まれています。この変化の主な要因は、中国などの大国で予想以上に出生率が低下したことです。

既に人口がピークに達した国
 2024年時点で世界人口の28%を占める63か国・地域で、人口はすでにピークに達しています。これには中国、ドイツ、日本、ロシア連邦が含まれます。
これらの地域の人口は今後30年間で14%減少すると予測されています。
さらに48か国・地域(世界人口の10%)では、2025年から2054年の間に人口がピークに達すると予測されています。この中にはブラジル、イラン、トルコ、ベトナムが含まれます。
残りの126か国・地域では、2054年まで人口が増加し続け、世紀後半または2100年以降にピークに達する可能性があります。この中にはインド、インドネシア、ナイジェリア、パキスタン、アメリカ合衆国が含まれます。

出生率の低下
 現在の世界の平均出生率は女性1人当たり2.25人で、1990年の3.31人から大幅に減少しています。
世界の半数以上の国・地域で出生率は人口維持レベル(2.1人)を下回っています。特に、中国、イタリア、韓国、スペインなどでは「超低出生率」とされる1.4人未満となっています。

早婚と若年出産の影響
 現在、45%の国・地域で出生率が2.1人以上ですが、サハラ以南のアフリカでは4人以上の国も多くあります。2024年には、18歳未満の母親から約470万人の赤ちゃんが生まれ、そのうち約34万人は15歳未満の母親からです。
若年出産は母親と子供の健康に悪影響を及ぼします。教育への投資や結婚・初産年齢の引き上げは、女性の健康や労働力参加に良い影響を与えます。

COVID-19後の寿命の回復
 世界の平均寿命は2024年に73.3歳に達し、1995年から8.4年延びました。2054年には77.4歳に達すると予測されています。
COVID-19の影響で一時的に寿命が低下しましたが、2022年以降、ほぼすべての国・地域で回復しました。

移民の影響
 50か国・地域では、移民が低出生率と高齢化による人口減少を和らげると予測されています。
例えば、イタリア、ドイツ、ロシア連邦では、移民がなければ人口のピークは早まっていたでしょう。
移民は2054年までに52か国・地域、2100年までに62か国・地域で人口増加の主な要因となると予測されています。
これらのメッセージは、世界の人口動態の変化とその影響についての重要な洞察を提供しています​。



図:世界人口の推移と,日本など4カ国の人口の推移(WPP2024から引用)

2024年6月15日土曜日

ルート66

NHKの「映像の世紀 バタフライエフェクト」シリーズで放送された「ルート66:アメリカの夢と絶望を運んだ道」は,アメリカ社会の変遷を象徴し,大陸横断でシカゴとサンタモニカを結ぶ国道66号線(1926-1985)に焦点を当てたものである。

ルート66」(1960-1964)と聞くとテレビ番組を思い浮かべるような気がする。たぶん自分はその番組を見た記憶がない。小学校3年のころ半年NHKで放映していたはずなのに。それどころか,「サンセット77」(1958-1964,これも微かに記憶がある程度)と混線する始末だ。実際の「ルート66」は若者二人のロードムービーだそうだ。

映像の世紀は,1920年代のアメリカにおけるモータリゼーションの発展から始まる。1926年に大陸横断道路としてルート66が開通し,その記念として行われたマラソン大会が紹介される。この道が「夢を運んだ」とされる一方で,「絶望を運んだ」とはどのような意味なのか。

1933年,ルート66沿いのジョプリンで発生したボニーとクライドの事件が次に取り上げられる。アーサー・ペン(1922-2010)の映画「俺達に明日はない(1967)」では,フェイ・ダナウェイウォーレン・ビーティがこの二人を演じている。この映画の前に,「ボニーとクライドへの報い(1934)」という再現記録映画が紹介されたが,ネット上でそれがちょっと見当たらない。

1930年代に中西部のグレート・プレーンズを襲い続けた砂嵐,ダストボウルによって数十万人の人々が故郷を追われ,カリフォルニアに新たな生活を求めて移動する。しかし,そこには仕事がなく,彼らの絶望を運んだ道がまさにルート66であった。ジョン・スタインベックの「怒りの葡萄」がこの悲劇を描き,ジョン・フォード監督,ヘンリー・フォンダ主演で映画化されている。

第二次世界大戦中,カリフォルニアには軍需産業が立ち上がり,ダストボウル移民に仕事を提供する。その一方,日系人は収容所に送られることになる。戦後、ルート66沿いには新しいビジネスが立ち上がり,マクドナルドもその一つである。最初の工場製造式セルフサービスのハンバーガー店が1940年にスタートし,戦後に普及拡大した。

番組では,ルート66沿いのラスベガスで,100km離れたネバダ核実験場での原子爆弾実験を見物するアトミックパーティの様子も紹介された。さらに,ルート66にある日暮れの町(サンダウンタウン)についても触れられた。有色人種が日没までに町を出るよう指示する標識が立つ白人だけの地区である。公民権法が制定されるまで,黒人旅行者は「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」を頼りにルート66を旅する。これが映画「グリーンブック(2018)」の背景である。

テレビ番組のルート66は若者たちを旅に駆り立てた。1960年代末にルート66は,カリフォルニアに向かうヒッピーの道となる。映画「イージー・ライダー(1969)」ではカリフォルニアからニューオリンズを目指すヒッピー的な二人が描かれている。ピーター・フォンダとデニス・ホッパーが主演し、彼らはボニーとクライドのように最後には射殺される。

番組の最後には,現在のアメリカのワーキャンパーたちが紹介された。仕事や家を失い,日々車上生活を余儀なくされる人々の姿が描かれる。彼らはドナルド・トランプを支持するルート66沿いの貧しい人々の一部である。ルート66は現在,州間高速道路に取って代わられたが,歴史遺産として甦ろうとしている。



写真:近所の駐車場でみかけたお洒落なルート66

2023年9月22日金曜日

フィンランドの教育(2)

フィンランドの教育(1)からの続き

有馬さんが国立大学法人化にゴーを出した1998年の学習指導要領(「生きる力」と基礎基本)が,ゆとり教育のピークだった。

2000年,2003年,2006年のOECD生徒の学習到達度調査(PISA)では,日本の読解力が急速にランクを下げていた。2003年PISA調査の結果から,学習意識や学校外での学習時間が低水準であること,学習離れ,習熟度の低い層の増加,学力格差などの課題が浮き彫りになった(PISAショック)。

これによって,2008年の学習指導要領(「生きる力」と思考力・判断力・表現力の育成)では揺り戻しが発生し,授業時数が10%増やされた。

このころ,PISAの読解力,数学リテラシー,科学リテラシーで上位を占めていたフィンランドが日本の改革のモデルとされ,多くの教育関係者がフィンランドを訪問していた。フィンランドは,教員の質も高く,修士課程の修了が必要とされていたことも,後に民主党政権時の教職大学院の制度設計に影響を及ぼした。

当時の自分は,人口規模が500万人のフィンランドの制度をそのまま日本に適応するのは難しいのではないかとやや冷ややかに横目で眺めていた。

フィンランドと日本のPISA順位を並べてみたのが次の図だ。横軸の1-7は2000年から3年ごとに2018年までのPISA調査に対応している。


図:PISA国際順位の推移(2000-2018,フィンランドと日本)

東アジア地域の新規参入などで,両国とも順位を下げた部分もあるが。フィンランドの数学リテラシーが顕著にランクを落としているのが目に付く。また日本の読解力は一時盛り返したが,再びランクを落としている。まあ,ともにパッとしなくなったのだ。

フィンランド幻想が消えたとはいえ,そこまで貶さなくてもいいのにとは思う。

2023年9月21日木曜日

フィンランドの教育(1)

フィンランドの教育・文化省が, 現状をレビューした報告を2023年1月に出していて,その英文要約を見ることができる。これをChatGPTで更に要約して,DeepLで翻訳したものを次に示す。

フィンランドの教育・文化省は、フィンランドの教育・文化セクターの過去数十年の変遷に焦点を当てた初の「ビルドゥング・レビュー」を発表した。主なポイントは以下の通り:

歴史的概観: 1950年代から1990年代初頭にかけて、フィンランドの教育部門は大きな成長を遂げた。総合学校、高等教育の改革、高等教育の拡大により、より多くのフィンランド人が教育を受けられるようになった。1990年代初頭には、図書館や芸術機関のネットワークも充実した。

1990年代の課題1990年代には教育資金が削減され、若者の教育レベルの上昇が止まり、学習成果が低下した。図書館もまた、様々な芸術分野への助成が減少し、利用者の減少という課題に直面した。

最近の動き: 2010年代半ば以降、就学前義務教育が導入され、義務教育が延長された。特にコロナウイルス危機の際には、高等教育の機会も拡大した。2030年までに研究開発資金を増強する必要性についてはコンセンサスが得られている。

学習成果フィンランドでは2000年代前半、特に読解力と数学の学習成果が急速に低下した。しかし、国際比較では、フィンランドの学生の成績は依然として良好である。社会的背景や性別による学習成果の格差が拡大している。

教育レベル: フィンランド国民の教育レベルは低下しており、1978年生まれは最も教育水準が高い。しかし、最近の傾向では、より若い年齢層がこのレベルを上回る可能性がある。

教職: フィンランドの教職は年々尊敬を集めており、フィンランドの教育制度の学術的教育と国際的評価が重要な役割を果たしている。

研究開発: 研究者の数は、特に企業部門で急増している。大学も研究範囲を広げている。

公共図書館: 1990年代には公共図書館への資金援助が減少し、図書購入の減少や貸出者数の減少につながった。

文化・芸術: 文化分野は、雇用の減少など困難に直面している。しかし、映画など様々な芸術の観客は増加している。

スポーツ: 成人のスポーツ参加率は依然として高いが、学童の有酸素運動能力は低下している。自治体によるスポーツ施設の建設は、年々変動している。

学資援助: 学生支援:1990年代の不況以降、学生支援にかかる費用は減少している。

これが,いまさらながらネットで取り上げられて(フィンランド教育は失敗だったとフィンランド政府が公式に認めました), フィンランド教育をディスる輪が広がっている。まあ,こういう自己分析ができるだけよいと思う。日本の文部科学省や政府は自分の政策が間違っていたとは絶対に認めないだろう。

[1]OECD生徒の学習到達度調査(PISA)(国立教育政策研究所)

2023年9月8日金曜日

大ちゃん

8月31日が終わり,あと1年半 (≒580日) しかない大阪・関西万博がどうなるかの瀬戸際だ。

153カ国・地域と8国際機関が参加表明していて,そのうち敷地渡し方式のタイプAで60カ国56館が建設される予定だ。が,大阪市への建築許可申請がまだ一つも出されていない。その前段階である基本計画が提出されたのでさえ,韓国,チェコ,モナコ,サウジアラビア,ルクセンブルクの5カ国だ。また,タイプAの失速を防ぐ窮余の策であるプレハブ建設代行のタイプXに興味を示したのは5カ国に留まる。


9月7日,そんな大阪府が,この度高齢者向けに生成AIを使ったサービスをキックオフした。これまでも高齢者コミュニケーションサービスが存在していた。柴犬のキャラクター大ちゃんとのオンラインコミュニケーションにより,(1) 会話機会の創出(雑談チャット)による老人の孤独感の解消,(2) 外出機会の創出(イベント案内)による健康増進,(3) 個人の属性に合わせたサービス・情報提供などが目的だ。これを今回ChatGPTで強化したというものだ。

奈良県民だけれど,大阪府柏原市に勤務している体で,早速LINEから登録して試してみることにした。

最初に聞いたのは,「万博大丈夫」。答えは返ってこなくて,別の話題に転換されてしまった。次に聞いたのは,「万博はどこであるの」。答えは「万博は大阪府吹田市にありますよ!」違うやろ。さらに,「今度の万博はいつどこであるの」。答えは「ほんまや!興味津々やわ〜。大ちゃん,教えてもらってええ?」

最低やな。たぶん「万博」は禁止語に登録されているのだろう。大ちゃんはユーザの高齢者に合わせて,すでに認知症気味なのであった。



図:本当にAIで強化されたのか疑惑の大ちゃん(大阪府説明資料から引用)


[1]大阪・関西万博の最新の動向(内閣官房,経済産業省,2023年7月)

2023年7月10日月曜日

エアレボルーション

最近お薦めに上がってきたエアレボルーションは,島田雅彦(1961-)と白井聡(1977-)とジョー横溝(1968-)が毎週ゲストを招いて対談するチャンネルだ。

長い対談が月額770円で週3回配信されるが,そのうち前半の40分から120分ほど無料で公開されている。外山恒一,鈴木涼美,柄谷行人,鈴木エイト他,多彩なゲストが続いている。無料分だけを見ているが,1月に配信されていた金平茂紀(1953-)の回がおもしろかった。

金平さんは昨年秋まで報道特集のキャスターをしていて,ときどきみていたが,ソ連崩壊の1991-1994までJNNのモスクワ支局長として派遣されていた。島田雅彦は東京外国語大学のロシア語科出身で,白井聡は研究テーマがレーニン主義,社会思想,政治学だ。このベストメンバーがウクライナ=ロシア戦争について語っていた。

金平さんはこの正月に1週間ほどモスクワに観光客として旧知の人を訪ねており,現在のモスクワの様子を伝えていた。我々が目にする耳にするのは,西側のフィルターを通過して,日本のマスコミによって増幅された大政翼賛会的な情報だけなので,新鮮なものがあった。

ロシアは見かけ上ほとんど疲弊しておらず,このままだとウクライナ戦争がベトナム戦争化しそうだとのことだ。アメリカがクラスター爆弾を提供するというのも日本のテレビではシラッと何も問題がないかのように伝えられている。

昨年2月に始まったウクライナ戦争と7月の安倍首相殺人事件を奇貨として,防衛費が倍増され南西諸島へのミサイル配備が進むということになってしまった。

2023年5月5日金曜日

RRR

新ノ口のユナイテッド・シネマ橿原でインド映画「RRR」を観てきた。

近鉄橿原線の新ノ口駅を降りて東に進み,いつもは国道24号線に沿った表口から入っていた。ところが,連休中の人の流れは川沿いの裏道をアリさんのように列をなしていたため,それにつられてツインゲートの駐車場側の裏口からアプローチすることになった。

インド映画はテレビの断片的な紹介映像しか見たことがなくて,一度観たいと思っていた。たまたまユナイテッド・シネマ橿原で評判のRRRが上映中だったので,さっそくオンラインチケットを購入した。最近は,平日に映画館にいっても客席には2-3人からせいぜい10人というところだったが,祝日効果もあってか,コロナ自粛解除のためか,170人のシアターの1/5〜1/4くらいは埋っていた。

ストーリーは単純明快で,スローモーションを多用したアクションシーンとダンスシーンに加えて,特殊効果もフルに使われ,主人公の個性もはっきりしているので,3時間まったく眠くならずに画面に集中できた。素晴らしい。特に音響効果というか音楽というか主人公の歌声がよかった。

舞台は1920年のイギリスの植民地支配下にあるインドで,英国人に虐げられた2人の主人公が,友情を持ちつつ葛藤を抱えながら物語が展開するというものだ。英国人はサブヒロインの一人を除いて徹底的に悪役として描かれているので,ある種のインドナショナリズムかとも思えた。

実在のインド独立運動の活動家をモチーフとした主人公の二人が同時にインド神話の二人の神として無敵の戦いを(時々死にそうにはなるのだけど)進めるという勧善懲悪ストーリーなので,最後に超極悪に描かれた英国の総督と婦人がTNT火薬の大爆発で吹っ飛ぶ屋敷を背景として惨めに死んでいくところで,観客は溜飲を下げることになる。

これをナショナリズムと解釈してしまって,日本に置き換えると微妙なことになる。鬼畜米英相手に日の丸振り回す素戔嗚尊と日本武尊ですか。このアナロジーがうまくいかないのは日本が欧米によって植民地として侵略され人権を完全に剥奪されてはいなかったからだ。むしろ,日本はインドを支配した英国と同様に,アジア各国を(より巧妙な方法で)侵略した側だった。だから,日本では残念ながらRRRのような映画をつくることができない。


写真:ダンスシーンに用いられたキーウのマリア宮殿(Wikipedia 記事 から引用

2022年11月15日火曜日

80億人の日

世界人口デーからの続き

2022年11月15日に世界の推計人口が80億人を超えたというニュースが流れている。その内容は,7月11日の世界人口デーに公開された国連人口基金世界人口推計で示されていた。

11月15日は,「80億人の日」と命名されたらしい。そもそも世界人口をちゃんと数えられているかという問題もある。日本では国勢調査も行っているので,それなりの精度があるのではないかと昔は思っていた。が,昨今の政府の統計偽装か改竄からすれば,日本の公的なデータの信頼性も眉唾でかからないといけないような時代になった。

世界人口時計によれば,1日に34万人生まれ,17万人亡くなっているので,人口の有効桁数だけでなくゆらぎも考慮する必要があるかもしれない。11月15日とピンポイントで指定しているのは,動物園の1000万人目入場者おめでとうみたいな,象徴的な意味だけなのだろう。

国連は,世界人口の場合の○○億人目の節目の赤ちゃんを選んでいるらしい。まあ,エイヤっと決めるのだろうけれど。仮想世界で完全に世界の情報が把握できている場合は,すべての誕生アバターには,その誕生時刻における世界の総アバター数をリンクすることができる。そこで,総アバター数から逆リンクをたどれば,これに対応する誕生アバターの集合が得られる。つまり,○○億人目のアバターはゆらぎのせいで(あるいは単調増加関数でないため)一意的に定まらないということになる。


図:世界人口80億人のスクリーンショット


2022年7月20日水曜日

セクト

我々の世代でセクトというと, 学生運動を担った新左翼のセクトが想起されるが,このたび問題になっているのは,フランスのセクトである。このたびというのは,安倍元首相暗殺事件における「カルトと政治の関係」の件だ。「政治と金の関係」というバズワードに匹敵する微妙な用語かもしれない。

セクトとは,宗教社会学的な価値中立な用法の他に,日本語でのカルトとほぼ同義で,通俗的に犯罪や危険とともに用いられる用法があり,ここでは後者を問題にする。

人民寺院ブランチ・ダビディアン太陽寺院オウム真理教などの事件が続いた後,1995年にフランスの国民議会に「フランスのセクト」という報告書が提出された。これを受けて2001年に「反セクト法」が成立する。当初は「セクト的な団体」を対象にしたものだったが,その後「セクトの逸脱行為」を取り締まる姿勢へ転換した。

そのセクトの逸脱行為とは次のようなものである。
(1)精神的不安定化
(2)法外な金銭要求
(3)元の生活からの意図的な引き離し
(4)身体の完全性への加害
(5)児童の加入強要
(6)何らかの反社会的な言質
(7)公序への侵害
(8)多大な司法的闘争
(9)通常の経済流通経路からの逸脱
(10)公権力への浸透の企て
なるほど,統一教会の活動には十分にあてはまっている。

2022年7月19日火曜日

ライシテ

 何年か前に,フランスの学校で,イスラム系の女子生徒がスカーフを被ることを禁止されたというニュースが流れた。真面目に世界史や政治・経済・地理を勉強していないので,フランスといえばフランス革命であり自由と平等と博愛の国だと思っていた。だから,個人の宗教的な自由を制限するというこのフランスの政策が全く理解できずに吃驚した覚えがある。

それが,フランス共和国憲法の基本原則となっているライシテ(フランスにおける政教分離原則)と関係しているということが,このたびの暗殺事件におけるカルト問題から芋づる式に繋がって掘り出された。

ライシテとは,(国家の)宗教的中立性・無宗教性および(個人の)信教の自由の保障を表わしている。フランス共和国憲法(1958)の第1条(共和国の基本理念)の第1項は次のようになっている。

フランスは,不可分の,非宗教的,民主的かつ社会的な共和国である。フランスは,出自,人種あるいは宗教の区別なく,すべての市民の法の前の平等を保障する。フランスは,あらゆる信条を尊重する。フランスは,地方分権的に組織される。(岩波文庫世界憲法集第2版から引用)

一方,ライシテの具体的な中身を定める政教分離法(1905)[2] を見ると,

第1条 共和国は,良心の自由を確保する。共和国は,公の秩序のために以下に定める制限のもとでのみ,自由な礼拝を保障する。

第2条 共和国は,いかなる礼拝に対しても,公認をせず,給与を支払わず,補助金を交付しない。・・・

この原則から,スカーフ禁止に至る道は複雑である。イスラム移民の増加にともなう摩擦が,ライシテをナショナリズムの道具として持ち出すことつながった。そしてこれが政治的に利用されることによって,ブルカ禁止法のような右翼的な政策が実現してしまった [1] [3]。その理論的な根拠はつぎのようなものである。
人間は個人としては性,年齢,肌の色,職業,信仰などまちまちだが,公共空間ではすべての個人が出自や帰属に関係なく平等な存在として扱われ,すべての市民は法の前に平等である。この考え方は,「公的領域」と「私的領域」の分離という二元論に基づいており,すべての市民は,『私的領域』における 出自,人種,宗教等の差異に関係なく『公的領域』においては抽象的個人として同質であるがゆえに平等である。( [1] から要約)

このため,公的領域における過剰な宗教的プレゼンスが排除されることになるわけだ。フランスはやはりダイバーシティの国ではないような気がする。レ・ミゼラブルのジャべール警部が活躍する中央集権的な警察国家の側面がある。エッフェル塔や大統領府のまわりの小銃をもった軍/警察の威圧感にビビった記憶と共鳴する。

2022年7月14日木曜日

世界人口デー

人類減少からの続き

7月11日は国連が定めた世界人口デーだ。日経の夕刊と朝刊に渡って世界人口の記事が掲載されていた。ひとつは,今年の11月に世界人口が80億人に達するということ。もうひとつは,世界人口の増加率が1%を割り込んで(中国も2022年に人口減に転じている)おり,2086年には,ピークの104億人になってその後は減少に転ずるということだった。

1970年代に世界の人口爆発が問題だとされたときに,様々な刷り込みを受けた世代なので,感慨も一入だ。最近の世界人口の変化は,10億人(1804),20億人(1927),30億人(1960),40億人(1974),50億人(1987),60億人(1999),70億人(2011),80億人(2022),90億人(2040),104億人(2086* peak),となっている。自分が生まれてから死ぬまでに世界人口が約3倍になっているということか。

東アジアの人口増加が終って,南アジア(インド)が主役になる時代がきた。そして,その次にはアフリカが待っている。

[1]World Populaton Clock
[2]World Population by Year

2022年6月17日金曜日

実効為替レート

円安が進んでいる。Apple製品が高くなるだけならよいが(あんまりよくないけど),食糧・エネルギーなどから生活全体への更なる影響が心配だ。その一方で,他の国々とは異なり年金支給額は自公政権のおかげもあって,きっちり0.4%減額された。

NHKニュースでは20年ぶりの円安という表現になっているが,実質実効為替レートを考えると,50年ぶりの円の価値下落ではないかという記事があった。国際決済銀行(BIS)のサイトに1965年から現在までの主要国の実質実効為替レートの月次データがあったので,1970年から2021年までの1年間移動平均のグラフを作って見た。

実質実効為替レートは,貿易量などをもとにさまざまな国の通貨の価値を計算し、物価変動も加味して調整した数値である。高いほど対外的な購買力があり、海外製品を割安に購入できることを示す。


図:実質実効為替レート(1970-2021)

グラフ右端の最近の値は,アメリカ合衆国(青)>韓国>英国>EU>日本(赤)の順になっている。2010年を100としてそろえてあり,y軸の値が大きな方が通貨価値が高い。日本は1990年代中ごろをピークとして今では1970年代の水準にまで下がっている。韓国は2008-2009年の通貨危機で90ポイントまで下がったが,今では合衆国につぐ高い水準で推移している。


2022年6月14日火曜日

SDGs

 京阪奈三教育大学の連携が追求されていた10年前,奈良教育大学の特徴的な活動として,ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)という言葉を聞いたのが,SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への最初の接触だった。

その当時は,まったくピンと来なくて,この人達は何を目指しているのだろうか?状態だった。いまでも奈良教育大学の活動は続いている。2022年4月1日から,奈良教育大学ESD・SDGsセンターが設置され,6月26日には設立記念シンポジウムが開催される。

その後,SDGsという言葉をしばしば耳にするようになったがまじめに調べてはいなかった。3-4年前の日本経済新聞の正月版別刷にSDGsの17の目標が詳しく説明されているのを読んで,初めて得心が行った。なんだかいいこと書いてあるじゃないのというわけだ。

ところがその後,SDGsの旗ががあちらでもこちらでも振られるのに,微妙な違和感を感じるようになった。結局,資本主義の延命策を国連の名のもとで宣伝しているだけではないのか。その証拠に,投資会社が率先して,SDGsの双子の兄弟であるESG(Environmental, Social, and Corporate Governance)を売り込んでいる。

このSDGsの流行は実は日本固有の現象ではないのかと,萩原雅之さんが数日前にFacebookで指摘していた。Google Trendsを使って,あるキーワードの検索数を国別・年度別に傾向分析することができる。その結果,SDGsというキーワードは日本で突出して多く調べられていることがわかった。アフリカ諸国がそれに次ぐのだが,欧米ではかなり少ないのだった。


図:SDGsの検索傾向と国別比較

[1]マネジメントファッションにおけるマスメディアの役割 : SDGsを事例として(八塩圭子)

2022年4月17日日曜日

abc予想(1)

 NHKスペシャルの「数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明を巡る数奇な物語」の完全版(90分)が放映された。60分版にエピソードをいくつか加えて丁寧に編集していた。60分版を見た水野義之さんによれば,「素因数という言葉もさけて人間ドラマに仕立てた大失敗作だ」ということだが,そうでもないと思うけど。

Wikipediaのabc予想の記載は,現状をほぼ客観的に説明している。英語版のほうが淡白(冷淡)で,日本語版はややていねいに経緯を示している。NHKスペシャルでは,望月新一さん本人は取材を断っており,加藤文元さん,プリンストンでの望月の指導教官のファルティングス,批判派のピータ・ウォイトなどの話が中心となった。

番組でタイトルだけ紹介されたのが望月さんのブログからのキーワード「ノーと言える人間」であり,その説明はなかった。調べてみると,新一の「こころの一票」というブログの2017年11月21日に「心壁論」と,論理構造の解明・組合せ論的整理術を「心の基軸」 とすることの本質的重要性という記事があった。

abc予想を証明することができる宇宙際タイヒミュラー理論は,京大数理解析研究所のPRIMSで査読が完了して出版されたものの,世界の数学者の大勢は,その証明を認めていない。そんなこともあって,望月さんのこころの内がブログには表出されている。

望月さんは,5歳で日本を離れてからほぼ米国で生活し,16歳でプリンストンに入学し,23歳でPh. Dをとっている。そんな彼が欧米の大学のポストではなく日本の京大に職を得たことに理由に相当する,英語圏での生活における強い違和感が詳しく述べられている。

許容される表現のイメージ全体に一つの固定された「座標系」を敷き、表現のイメージ全体を通して 同一の「座標系」=「視点」=「声」=「神」=「心の基軸」しか認めないという姿勢を徹底することにはどうしても強い違和感を覚える

「ノーと言える人間」 というのは,例の盛田昭夫と石原慎太郎の1989年の著書「NO」と言える日本―新日米関係の方策」からきている。これが,欧米のメインストリームの数学者を権威主義的に敬う空気への強烈な拒否感として現れたものにほかならない。

P. S. 新一の「こころの一票」にNHKスペシャルについての評価に関する記事が掲載された。なかなかおもしろい(2022.5.3)。

2022年3月11日金曜日

ロシアの非友好国

 ロシアの非友好国,48カ国・地域のリストを眺めてみた。ロシアの債務者が「非友好国リスト」の債権者にドルなどの外貨ではなくルーブルで相当額を支払えば,債務を履行したとみなすとしている。ルーブルの価値はどんどん下がっているので,債権者はたいへんだ。

アメリカ合衆国,カナダ,※EU加盟全27カ国,英国,ウクライナ,モンテネグロ,スイス,アルバニア,アンドラ,アイスランド,リヒテンシュタインモナコ,ノルウェー,サンマリノ,北マケドニア,日本,韓国,オーストラリア,ミクロネシア,ニュージーランド,シンガポール,台湾。

(※EU加盟国:アイルランド,イタリアエストニア,オーストリア,オランダ,キプロス,ギリシャクロアチア,スウェーデン,スペインスロバキアスロベニアチェコデンマークドイツハンガリー,フィンランド,フランスブルガリアベルギーポーランドポルトガル,マルタ,ラトビアリトアニアルーマニアルクセンブルク

一方で,NATO(北大西洋条約機構)の加盟国(全30カ国)のリストは次の通りである。

アイスランド,アメリカ合衆国,イタリア,英国,オランダ,カナダ,デンマーク,ノルウェー,フランスベルギーポルトガルルクセンブルク(以上原加盟国),ギリシャ,トルコ(以上1952年2月),ドイツ(1955年5月当時「西ドイツ」),スペイン(1982年5月),チェコハンガリーポーランド(以上1999年3月),エストニアスロバキアスロベニアブルガリアラトビアリトアニアルーマニア(以上2004年3月),アルバニア,クロアチア(以上2009年4月),モンテネグロ(2017年6月)北マケドニア(2020年3月)

(1)NATO加盟国で,EU非加盟国(9):アイスランド,アメリカ合衆国,英国,カナダ,ノルウェー,トルコ,アルバニア,モンテネグロ,北マケドニア 

(2)EU加盟国で,NATO非加盟国(6):アイルランド,オーストリア,キプロス,スウェーデン,フィンランド,マルタ

(3)NATO加盟国またはEU加盟国以外の非友好国(12):スイス,アンドラ,リヒテンシュタイン,モナコ,サンマリノ,日本,韓国,オーストラリア,ミクロネシア,ニュージーランド,シンガポール,台湾

(4)NATO加盟国であり非友好国でない国(1):トルコ


図:EU加盟国一覧(Wikipediaから引用)

2022年3月6日日曜日

ルーシと日本

ウクライナからの続き

ウクライナを考えるときに,その地理的なサイズを日本と比べることで,イメージをつかみやすくなる。日本は人口1億2600万人,面積37万㎢ であり,一方ロシアは人口1億4600万人,面積1713万㎢ ,ウクライナは人口4400万人,面積60万㎢ ,ベラルーシは人口940万人,面積21万㎢ などである。

カスピ海やウラル山脈以東の広大な大地はとりあえずおいて,ロシアの中で,ベラルーシやウクライナと国境を接している中央連邦管区(首府モスクワ,人口3910万人,面積65㎢ )と南部連邦管区(首府ロストフ・ナ・ドヌ,人口1640万人,面積45万㎢ )だけを取り出してみる。この中南部ロシアとウクライナとベラルーシを加えた,旧キエフ大公国+αの部分(以下ルーシとよぶ)を日本と比べてみよう。

日本:人口1億2600万人,面積37万㎢ に対して,ルーシ:人口1億900万人,面積190万㎢ となる。面積はルーシが5倍だが人口はほぼ等しく,ともに半径1000kmの円内にほぼおさまる。さて,モスクワとキエフの距離が,仙台と大阪の距離にほぼ等しく800-900kmある。そこで,それぞれの中点を中心に半径500kmと半径1000kmの円を書いたものを図に示した。

ルーシにおけるウクライナは,人口が40%,面積が30%とかなりのウエイトを占めている。日本でこの割合を占める部分というと,九州+四国+中国+近畿(以下西日本とよぶ)であり,人口が4560万人(日本全体の36%),面積が12万㎢ (日本全体の32%)である。キエフの人口は,288万人でありウクライナの北端にある。大阪市の人口は,275万人であり,西日本の東端にある。いい感じでよく似た地理的集合が取り出せた。

図:ルーシの1000km圏内におけるウクライナと日本の1000km圏内における西日本

ようは,東京の人口を「仙台」に持ってくれば,西日本(大阪)/日本(「仙台」)≒ウクライナ(キエフ)/ルーシ(モスクワ)と考えて良いわけだ(人口密度だけルーシは日本の1/5なのだが)。で,次のような(顰蹙ものの)サイエンス・フィクションを想定することになる。

『第二次世界大戦後に,もとは同じ民族で言語もよく似た西日本と東日本は別の国になった。西日本では,これまでの親東日本的な政権が倒れて,中華帝国を中心とする西太平洋軍事同盟に加入したがる維新政権ができた。西太平洋軍事同盟は,北朝鮮,韓国,ベトナムとその領域を次第に南に拡大していた。東日本は,そんなことをされて核シェアリングされたミサイルが生駒山あたりに配備されるのはかなわないので,西日本を侵略する決断をした』

それでも侵略が一ミリたりとも正当化できないのは当然のことである。ただし,状況の多角的な視点からの理解は必要だと思われる。

[1]プーチンを無理筋の軍事的侵攻に踏み切らせた背景とは(videonewscom:河東哲夫)

2022年3月2日水曜日

クリミア

ロシアによる ウクライナ侵略問題の前にあったのが,ロシアによるクリミアの併合だった。高校のときに世界史を履修していたにも関わらず,世界史の常識に欠けているので,復習することに。

(1)ロシア帝国は1721年から1917年まで続き,その首都は,バルト海に面したサンクスペテルブルグ=ペトログラードだった。バルト海といえば,バルチック艦隊の母港は,かつては現在のラトビアにあるリバウ。現在は,リトアニアとポーランドに挟まれたロシアの飛び地であるカリーニングラードオイラーの橋の問題で有名なケーニヒスベルク)。なぜか,ロシア帝国の第8代皇帝のエカチェリーナ二世が,ポプラ社のコミック版世界の伝記にあって,小学生の人気ベスト10に入っている。どういうことなの?

(2)エカチェリーナ二世が1784年にクリミア半島をロシアに編入した。クリミア戦争は1853年から1856年にわたり,ロシア帝国とオスマン帝国の間でクリミア半島の周辺などで戦われた。黒海周辺をロシア帝国が支配することで,海軍力が増強されることに危惧をいだいたイギリスとフランスがオスマン帝国側に参戦する。クリミア半島南部の黒海艦隊の母港のセヴァストポリが陥落し,クリミア戦争はロシア帝国の敗北で終る。1905年のロシア第一革命が戦艦ポチョムキンの反乱につながる。

(3)1917年のロシア革命後,ボリシェヴィキがロシア帝国の各地の内戦を制圧する。その過程で誕生したクリミア・ソビエト社会主義共和国はロシア共和国に帰属するものとなり,1921年に,ロシア・ソビエト社会主義共和国(ロシア),ザカフカース社会主義連邦ソビエト共和国(アゼルバイジャン・アルメニア・グルジア),ウクライナ社会主義ソビエト共和国白ロシア・ソビエト社会主義共和国(ベラルーシ)の4ヵ国によってソビエト社会主義共和国連邦が成立した。1945年の国際連合の原加盟国51カ国には,ロシア連邦に加え,ベラルーシ,ウクライナが入っている。

(4)1954年,当時のフルシチョフソビエト連邦共産党中央委員会第一書記(1958年のソビエト連邦第4代閣僚会議議長=首相就任より前)は,ウクライナ融和策として,ペレヤスラフ協定300周年を記念し,ソ連の領土内の管轄変更としてクリミア半島をロシア・ソビエト連邦社会主義共和国からウクライナ・ソビエト社会主義共和国に移管させた。なお,フルシチョフはウクライナ人であり,ウクライナのとの国境付近のロシアで生まれ,その後,ウクライナに移住している。

(5)1991年のソビエト連邦の解体後,クリミア半島の帰属や国境線の確定を巡って,ロシア,ウクライナ,ベラルーシの協議が行われたが,ロシアは,ウクライナの核兵器廃棄の方を優先して,クリミア半島をウクライナの領土と認めた。ただし,セヴァストポリの黒海艦隊の母港としての租借権や,クリミア半島東部のケルチ海峡の自由航行権,海底資源の共同開発を条件とした。

(6)このような歴史的経緯から,クリミア半島にはロシア系住民が多いため,ウクライナ国内におけるクリミア自治共和国としての位置を確立する。これが,住民投票などを経て,ロシアへの帰属を決議することになるのが,2014年のクリミア危機である。ロシア軍の装備を持つ,リトル・グリーンメンとよばれる覆面の武装集団がこの過程で暗躍している。



写真:クリミア半島の周辺(世界史の窓より引用)

[1]ウクライナ情勢から見た地域と国家(塩川伸明,2014)

[2]クリミアの歴史(Wikipedia)


2022年2月28日月曜日

オデッサ

ウクライナからの続き

黒海沿岸の港湾都市オデッサは ,人口100万人のウクライナの第三の都市。ちなみに首都キエフは人口300万人弱なので,大阪と同じ規模だ。北130kmのところにチェルノブイリ原子力発電所があり,事故を起こしたチェルノブイリ4号炉への観光ツアーもあるらしい。

そのオデッサが出てくるのが,セルゲイ・エイゼンシュテイン(1898-1948)の映画「戦艦ポチョムキン(1925)」だ。大学に入って,休日には映画を見ることが多かったが,岩波新書の「映画の理論(岩崎昶)」などを読んでいると,モンタージュ理論を確立したエイゼンシュテインは必見ということだ。それで,戦艦ポチョムキンを見に行くことに。

1905年のポチョムキン号における水兵の反乱は歴史的な事件である。オデッサの階段での虐殺シーンは史実ではないらしいが,印象的だったし,全体のモノクロームのロシア革命前夜的なイメージはよかった。後に,1917年のロシア革命がテーマであり,「俺達に明日はない」のウォーレン・ベイティが監督主演した「レッズ」を見たけれど,エイゼンシュタインの迫力には及ばなかった。


写真:オデッサの階段(Wikipediaから引用)

2022年2月27日日曜日

ウクライナ

 ウクライナへロシアの侵略が起こったのは,ウクライナへのNATOの拡大にたいする強い拒否反応を誘導し,ドイツとロシアの間の天然ガスパイプライン,ノルドストリーム2を妨害するための米国の思惑による部分があるという話があった。事の真偽はわからないが,日本のメディアはアメリカからの情報だけでまわっている。いや,だからといって,プーチンの行動はまったく正当化できないが。ウクライナが,グルジアのようになるのか,クリミアのようになるのかはまだわからない。

ロシアとウクライナの前身が1つの国であった,キエフ大公国(882-1240)の時代から考えれば,キエフが京都でモスクワが鎌倉のようなものなのだ。ロシアという名称自体が,キエフ大公国の正式名称であるルーシから来ている。自分たちのルーツが奪われて敵側軍事同盟に参加することへの圧倒的な拒否感ということか。

ウクライナといえば,中学校の社会科の時間に学んだ,肥沃な大地(黒土)と小麦というイメージだった。また,京都市の姉妹都市のキエフといえば,ムソルグスキーの「展覧会の絵(1874)」の「キエフの大門」か。

それ以外で,記憶にあるのは,ビージーズが1969年に発表したアルバムの「オデッサ」だ。1899年に遭難した架空の船の物語というコンセプトアルバムで,当時はビートルズの「ホワイトアルバム(1968)」に相当するというイメージだった。オデッサの収録曲「若葉のころ」と「メロディフェア」が,それぞれ映画「小さな恋のメロディ(1971)」の音楽として少し流行った。なぜ,オデッサという名前だったのか,本当に黒海に面したオデッサのことなのかどうかも確かではなく,当時も謎のままだった。


図:ウクライナの地図(AFP通信記事から引用)

P. S. Wikipedia 大鵬幸喜の項目から引用:「1940年(昭和15年),ウクライナ人の元コサック騎兵将校、マルキャン・ボリシコの三男として,日本の領土である樺太の敷香町(ロシアの呼び名サハリン州ポロナイスク)に生まれた。マルキャンはロシア革命後に日本に亡命した,所謂白系ロシア人であった。」

[1]満州事変(1931年)・・・柳条湖事件後,関東軍による占領,傀儡国家樹立

[2]イラク戦争(2003年)・・・虚偽事実による米英豪軍の侵攻と政権の転覆

[3]南オセチア紛争(2008年)・・・グルジア(ジョージア)が2州の支配権を喪失

[4]クリミア危機(2014年)・・・クリミア共和国の一方的独立宣言後,ロシアによる併合


2021年12月6日月曜日

宣伝大臣ゲッベルス

NHK映像の世紀プレミアムの第18集が「ナチス狂気の集団」だった。国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)は1919年にその前身が,反ユダヤ主義・社会主義・右翼の性格を持ったミュンヘンの酒場の鉄道員の集まりから始まっている。ヒトラーはその年に入党し,1920年にナチスと改名してハーケンクロイツをシンボルにしたころには主要なメンバーとなり,1921年には党首(総統)になっている。

その後,クーデター未遂事件のミュンヘン一揆(1923.11.8-9)を経て,1928年には初めて12名の国会議員を送り出し,世界大恐慌の中で党勢を拡大し,1930年には107名が当選して第2党に躍進する。1932年には第1党の座を確保し,1933年1月にヒトラーが首相に就任する。

1933年2月にはドイツ国会議事堂放火事件が起こって共産主義者がスケープゴートとされ,同3月には全権委任法が成立して,立法権が国会から一党独裁のナチス政府に移ってしまう。あっというまですね。日本の改憲勢力もその類似物を目指していると疑われても仕方がない。

1934年の長いナイフの夜で,政敵である突撃隊のレームを粛清し,1938年の水晶の夜で,反ユダヤ主義暴動によるユダヤ人の迫害がピークに達して,その後ヒムラーが主導したホロコーストへの扉が開かれる。1939年9月には,ドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦の火蓋が切られた。

これらの流れをドイツ国民の多くは支持したが,そこには,1933年に設置された国民啓蒙・宣伝省を使って,知識人であったゲッベルス宣伝大臣(ではなくてだった)が繰り広げたプロパガンダ国民ラジオ)が非常に重要な役割を果たしている。

振り返って現在の日本では,宣伝省を作るまでもなく,電通とその傘下のマスメディアが,自ら進んで権力への忖度に勤しんでいる。発祥の地のミュンヘンならぬ大阪でもテレビ新聞が総動員で大阪維新を宣伝し,日本共産党をディスり,民族差別を煽るタレント(大阪府知事を含む)を重宝しているのであった。

そんなことは考えていなかったが,92歳まで生きると1945年8月15日から100周年ということになる。1941年12月8日だと88歳,1937年7月7日だと84歳,1931年9月18日だと78歳。歴史は繰り返すのか?
ヘルマン・ゲーリング(1893-1946.10.15)国家元帥
ルドルフ・ヘス(1894-1987.8.17)ナチス総統代理
エルンスト・レーム(1887-1934.7.1)突撃隊幕僚長
ヨーゼフ・ゲッベルス(1897-1945.5.1)宣伝大臣
アドルフ・ヒトラー(1889-1945.4.30)ドイツ国総統(指導者兼首相)
ハインリヒ・ヒムラー(1900-1945.5.23)親衛隊全国指導者・全ドイツ警察長官
アドルフ・アイヒマン(1906-1962.6.1)親衛隊・ゲシュタポユダヤ人移送長官