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2025年5月26日月曜日

のぞき坂

NHKのドキュメント72時間,今日は東京の目白通につながるのぞき坂がテーマだった。坂を上る人々にも様々なドラマがあった。坂の下の小学校の先生が登場していたので,どこの小学校なのかを調べてみることに。

(1) 新登場したClaude 4.0 がすごいという評判だったが,無料で使えるClaude 4.0 Sonnet は全然だめだめ。もしかして有料版のClaude 4.0 Proに限った話なのか?その回答は「申し訳ございませんが、具体的な学校名を正確にお答えすることができません。」

(2) DeepSeek V3 もだめ。新宿区立愛日小学校だという。

(3) Qwen 2.5 もちょっとだめ。豊島区立目白台小学校 はやや近いが坂の下ではない。

(4) Gemini2.5 Flash もだめ。成城学園初等学校と東京都市大学附属小学校をあげてきた。
  Gemini 2.5 Proのほうは正しい。豊島区立高南小学校。ただし,答えだけで愛想なし。

(5) ChatGPT 4o は正しく,回答にまつわる情報も多い。参考リンクもOK。
A(ChatGPT 4o):
東京・豊島区にある「のぞき坂」の下に位置する小学校は、豊島区立高南小学校です。

1.学校情報
名称:豊島区立高南小学校
所在地:東京都豊島区高田2丁目12-7
特徴:のぞき坂の西側に隣接し(誤り)、急勾配の坂道に面しています。 
2.周辺環境
のぞき坂は、最大勾配13度(23%)を誇る東京都内でも有数の急坂であり、自動車通行が可能な道路としては最も急な部類に入ります。 
この坂は、東京メトロ副都心線「雑司が谷駅」や都電荒川線「鬼子母神前停留場」から徒歩数分の位置にあり、アクセスも良好です。
3.のぞき坂の風景
のぞき坂は、その急勾配から坂の上から下を覗き込まないと見通せないことが名前の由来とされています。
また、アニメ映画『天気の子』や『冴えない彼女の育てかた Fine』などの作品にも登場し、ファンの間では聖地としても知られています。

のぞき坂周辺は、歴史ある街並みと現代的な都市景観が融合した魅力的なエリアです。
(6) Perplexity も正しい。が,回答はややそっけない。参考リンクはちゃんとしている。
A(Perplexity):
東京の目白通りにつながる「のぞき坂」の下にある小学校の名前は「豊島区立高南小学校」です。
のぞき坂は東京都豊島区高田2丁目に位置し、その坂の西側すぐに(誤り)高南小学校があります。また、坂下から少し進んだ場所に高南小学校があることも複数の情報で確認できます。
したがって、ご質問の小学校名は「豊島区立高南小学校」です。



写真:のぞき坂(Wikipediaから引用)

P. S. 高南小学校の西に隣接するのぞき坂=のぞき坂の東にある高南小学校が正解。まだ位置関係の理解ができていないのかもしれない。

2025年5月13日火曜日

スイッチインタビュー


NHKのスイッチインタビューは,異なった分野の二人のスペシャリストが2回に分けて攻守を交替して互いをインタビューする番組だ。5月2日と9日に放映された「角野隼斗×山下真由子」では,東大工学部計数工学科の同級生だったピアニストの角野隼斗 と 代数トポロジーの山下真由子 の対話で,なかなか見ごたえがあった。

第二回で,この宇宙に別の知性体が存在したときに人類と同じ数学をつくりだすかどうかという話になった。角野はそうなると考えて質問していたのに対し,山下は違うものになるのが当然だと強く考えているところがちょっと驚いた。自分は,この宇宙に共通する自然法則に内在されている数学性がなんらかの形で表現されるのだから,たぶん理解可能な対応関係はあるに違いないと思っている。

黒板で山下の仕事を説明する部分のノーカット版が,30分ほどのスペシャルコンテンツとして番組のホームページに上がっている。これにおおむね対応するプレゼンテーションがあったので,Gemini 2.5 Proに与えて日本語の解説文を作ってみた。

Q(koshix):
(Topological Modular Forms and heterotic string theory の29pのプレゼンファイルを添付)
このプレゼンテーションの内容を,文脈を補完しながら,日本語でできるだけわかりやすく,ていねいに,説明してください。読者対象は,理工系の大学院修士課程の学生です。

A(Gemini 2.5 Pro):
(回答略)


Q(koshix):
ありがとうございました。対象を理工系の学部学生レベルにして,高度な専門用語については,簡単な解説をしながら,雑誌の丁寧な解説のような形でもう一度まとめてください。(以下,要約の真正性は保証されていないことに注意

A(Gemini 2.5 Pro):
数学と物理学の架け橋:位相的モジュラー形式と弦理論の不思議な関係

私たちの宇宙は、どのような法則で成り立っているのでしょうか?この根源的な問いに、物理学者は「弦理論」という革新的な理論で迫ろうとしています。弦理論は、物質の最小単位を点ではなく振動する「弦」と考えることで、自然界の基本的な力を統一的に記述しようとする壮大な試みです。

一方、数学の世界には「ホモトピー論」という分野があります。これは、図形を連続的に変形させたときに保たれる性質を研究する、いわば「やわらかい幾何学」です。一見すると、弦理論とホモトピー論は全く異なる世界の探求のように思えるかもしれません。

しかし、京都大学の山下真由子氏らの研究は、これら二つの分野が驚くほど深く結びついている可能性を示唆しています。本稿では、山下氏のプレゼンテーションに基づき、そのエキサイティングな研究の一端を、理工系の学部生の皆さんにも分かりやすく解説します。

発端は「シーガル・シュトルツ・タイヒナー(SST)予想」
今回の物語の中心となるのは、「シーガル・シュトルツ・タイヒナー(SST)予想」と呼ばれる、数学と物理学の接点に関する大胆なアイデアです。この予想は、大まかに言うと、ある種の物理学の理論(専門的には「2次元N=(0,1)超対称性を持つユニタリ場の量子論(SQFT)」と呼ばれます)が、数学の特殊な対象である「位相的モジュラー形式(TMF)」というものと、本質的に同じものであると主張しています。

少し言葉を補足しましょう。

場の量子論 (Quantum Field Theory, QFT):素粒子や力を「場」(空間の各点に物理的な量が対応するもの)の言葉で記述し、量子力学のルールを適用する理論です。私たちの世界の基本的な法則を記述する上で非常に成功しています。
超対称性 (Supersymmetry, SUSY):自然界に存在する粒子(フェルミ粒子とボーズ粒子)の間になりたつかもしれない対称性です。この対称性があると、理論が扱いやすくなったり、未発見の粒子を予言したりします。N=(0,1)というのは、超対称性の「量」を表す添え字です。
位相的モジュラー形式 (Topological Modular Forms, TMF):これは高度な数学の対象で、「モジュラー形式」という数学の重要な関数の「位相的」なバージョン、つまり図形の変形に強い性質を持つように一般化したものです。モジュラー形式自体、数論や幾何学、そして弦理論にも現れる重要な対象です。

SST予想がもし正しければ、物理学の問題をTMFという数学の言葉で考えたり、逆にTMFから物理学の新しいアイデアを得たりすることができるようになります。まさに、数学と物理学の間に新しい橋を架けるようなものです。

SST予想の使い道:物理の問題を数学で解く
山下氏らの研究は、このSST予想を実際に使って、物理学の難問に取り組んでいます。その一つが、「ヘテロティック弦理論のアノマリーの消失」という問題です。

ヘテロティック弦理論:弦理論にはいくつかのバージョンがありますが、その中でも特に現実世界を記述する候補として注目されているものの一つです。
アノマリー (Anomaly):物理学の理論を構築する際、古典的な理論では保たれているはずの対称性が、量子効果(ミクロな世界で重要になる効果)を考慮すると破れてしまうことがあります。これをアノマリーと呼びます。アノマリーがあると、理論が自己矛盾を起こしてしまうため、物理学的に意味のある理論であるためには、アノマリーがうまく打ち消されている(「消失する」と言います)必要があります。

山下氏らは、SST予想と、それに関連する「Freed-Hopkinsの予想」という数学と物理学を結びつける別の予想を駆使しました。これらを用いることで、ヘテロティック弦理論のアノマリーの問題を、TMFという数学の対象に関する問題に「翻訳」し、数学的な手法で見事に解決できることを示したのです。つまり、「ヘテロティック弦理論はアノマリーを持たず、矛盾のない理論である」ということを、数学の力で裏付けたことになります。

SST予想から物理へ:TMFが持つ不思議な周期性
SST予想は、物理から数学への視点だけでなく、数学から物理への新たな洞察ももたらします。TMFは、そのホモトピー群(TMFの「穴」の構造を調べる数学的な道具)に「576周期性」という顕著な性質を持つことが知られています。これは、ある種の計算結果が576番ごとに同じパターンを繰り返す、という不思議な性質です。

山下氏らは、このTMFの周期性が、超対称場の量子論(SQFT)にも対応する現象として現れることを、TMFを使わずに(つまり、より直接的な物理的考察から)証明することにも取り組んでいます。  これは、数学の世界で見つかった抽象的な性質が、実は物理現象の背後に隠された法則を示唆している可能性を示しており、非常に興味深いアプローチと言えるでしょう。

副次的アノマリーとTMFの自己双対性
さらに進んで、[TY '23]の研究では、「副次的アノマリー」という、より精密なアノマリーの概念と、TMFの「アンダーソン自己双対性」という数学的な性質との間に深いつながりがあることを見出しました。  これは、TMFが弦理論のアノマリー構造を驚くほど詳細に捉えていることを示唆しています。また、この研究は「頂点作用素代数(VOA)」という、2次元の場の量子論や弦理論で中心的な役割を果たす代数構造とTMFとの間の具体的な関係性にも光を当てています。

まとめ:数学と物理学の対話が拓く新しい地平
山下氏らの研究は、位相的モジュラー形式(TMF)という、一見すると非常に抽象的な数学の対象が、ヘテロティック弦理論のアノマリーという物理学の具体的な問題を解く鍵となったり、さらには場の量子論の新たな性質を予見したりすることを示しています。

SST予想という大胆なアイデアを羅針盤として、数学と物理学という二つの広大な知の海を探求することで、これまで見えなかった新しい景色が広がりつつあります。理工系の学部生の皆さんも、専門分野の垣根を越えたこのような研究に触れることで、科学の奥深さと、異なる分野が協力することで生まれる新しい発見の可能性を感じていただければ幸いです。


Q(koshix):
読者対象を理論物理学を専攻する学部学生のレベルまであげて,その知的好奇心を刺激するようなレベルの丁寧で詳しくわかりやすい解説にしてください。必要な専門用語は省略せず,さらに進んだ学ぶためには,なにをどのように学ぶかのヒントもあるとよいです。
A(Gemini 2.5 Pro):



写真:スイッチインタビューのおまけ画像(NHKから引用)


2025年5月12日月曜日

ホッジ予想への道

テレビで数学がテーマとして取上げられることは多くない。NHKの教育テレビを除いて,昔,一番ワクワクしたのは,ディズニーのテレビシリーズにあったドナルドダックの算数教室(1962年=小学校3年)だった。火星だとか宇宙や未来社会などのテーマもよかったが,数学は珍しかったので印象深い。円周率や黄金分割が取り扱われていた。

自然科学ならば,宇宙,物質,生命,人体,脳などそれなりの絵になるトピックが豊富にあるのだけれど,抽象的なテーマは番組の構成,製作段階で知恵が必要だ。まあ,リーマン予想とかABC予想など,たまにNHK特集がないわけでもない。

それを真正面からシリーズ番組としたのがNHK総合の「笑わない数学」だ。パンサー尾形の進行で,難解なテーマにも意欲的に取り組んできた。その割には自分はあまり視ていない。連休中のスペシャルが,番組史上最難解のホッジ予想ミレニアム検証問題の一つ)という,耳にはするけどなんのことは全くわからないテーマだったので,思わず録画してしまった。なかなかおもしろかった。Gemini 2.5 ProでNHKのストーリーに添って復習してみよう。


写真:「笑わない数学」の一場面(NHKから引用)

Q(koshix):
ホッジ予想を,理系の学部生がわかるように,かみ砕いて説明してほしいのです。多様体の分類をするために,オイラー数,ベッチ数,コホモロジーと進化してきたというストーリーの元で,個々の定義をあまりぼやかさず,具体的なイメージがもしっかりつかめるように,物語を組み立ててください。

A(Gemini 2.5 Pro):

ホッジ予想への道:多様体の形を探る冒険

「形」を数学的に捉え、分類したい──これは数学の大きなテーマの一つです。風船とドーナツは明らかに形が違いますが、粘土でできたドーナツをぐにゃぐにゃ変形させても、穴の数は変わりませんよね?このように、連続的な変形で変わらない性質(トポロジー的性質)を手がかりに、多様体と呼ばれる図形を分類しようというのがここでの目標です。この壮大な物語のクライマックスの一つが「ホッジ予想」です。さあ、その道のりを一緒に辿ってみましょう。

1.最初のヒント:オイラー数

まず、身近な多面体を考えてみましょう。

頂点の数 ($V$)
辺の数 ($E$)
面の数 ($F$)
これらの間には、驚くべき関係があります。例えば、

立方体:$V=8, E=12, F=6 → V - E + F = 8 - 12 + 6 = 2$
正四面体:$V=4, E=6, F=4 → V - E + F = 4 - 6 + 4 = 2$
正八面体:$V=6, E=12, F=8 → V - E + F = 6 - 12 + 8 = 2$
この $V−E+F$ という値は、同じトポロジー的な形(例えば、どれも連続的に変形すれば球になる)を持つ多面体では常に同じ値を取ります。これをオイラー数 (Euler characteristic) といい、$\chi$ で表します。これは、図形を分類するための最初の強力な「ものさし」です。

球面(風船のような形)のオイラー標数は2です。では、ドーナツの形(トーラス)はどうでしょうか?トーラスの表面を三角形で分割してオイラー数を計算すると、0になります。

ポイント:オイラー数は、連続的な変形で変わらない「トポロジー不変量」である

しかし、オイラー数だけでは不十分です。例えば、『ドーナツと、真ん中に穴が二つ空いたプレッツェルのような図形は、どちらもオイラー標数が0になる場合がありますが、』明らかに形が異なります。もっと精密な「ものさし」が必要です。

2.より鋭い視点:ベッチ数と「穴」の概念

オイラー数は、実は図形の「穴」の数と関係しています。ここで登場するのがベッチ数 (Betti number) です。

$b_0$​:図形がいくつの連結な部分に分かれているか(連結成分の数)
・球やトーラスなら1つなので、$b_0 = 1$
・2つの離れた球なら、$b_0 = 2$
$b_1$:1次元的な「穴」の数。輪っかのような穴です
・球面には輪っかの穴はないので、$b_1 = 0$
・トーラスには、縦方向と横方向にそれぞれ独立な輪っかが1つずつあると考えられ、$b_1 = 2$
$b_2$:2次元的な「穴」の数。内部が空洞になっているような穴です
・球面は内部が空洞なので、$b_2 = 1$
・トーラスも内部が空洞なので、$b_2 = 1$(トーラスの表面だけを考えている場合は、$b_2 = 1$ ですが、中身が詰まっているトーラスの「表面」の穴は $b_1$ で数えられます。ここでは、多様体そのものの次元に応じた「最高次元の穴」を考えています。)
$b_k$:一般に、k次元的な「穴」の数
オイラー数とベッチ数の間には、次のような美しい関係があります(オイラー=ポアンカレの公式):
$\chi = b_0 − b_1 + b_2 − b_3 + \cdots + (−1)^n b_n$

ここで、$n$ は考えている多様体の次元です。

例:
球面 $S^2$ (2次元):$b_0 =1$ (連結), $b_1 = 0$ (輪っか無し), $b_2 =1$ (空洞)。 $\chi = 1 − 0 + 1 = 2$。これは先の計算と一致します。
トーラス $T^2$ (2次元):$b_0 =1$ (連結), $b_1 = 2$ (2つの独立な輪っか), $b_2 = 1$ (空洞)。 $\chi = 1 − 2 + 1 = 0$。これも一致します。
ベッチ数はオイラー数よりも多くの情報を持っており、図形をより細かく分類できます。

3.穴を代数的に捉える:ホモロジー群とコホモロジー群

ベッチ数は「穴の数」という直観的なアイデアですが、これを数学的に厳密に定義し、計算可能にするためにホモロジー群 (Homology group) $H_k (X)$ という代数的な対象が導入されます。

サイクル (Cycle): $k$次元の「閉じた」部分図形。例えば1次元ならループ、2次元なら閉曲面。
バウンダリ (Boundary): $(k+1)$次元の図形の「境界」となっている$k$次元の図形。例えば、円盤の境界は円周です。

直観的には、k次元ホモロジー群 $H_k (X)$ は、「境界にならない$k$次元サイクル」を「$k$次元バウンダリで潰したときに残るもの」として定義されます。つまり、「真の$k$次元の穴」を捉える群です。そして、$k$番目のベッチ数 $b_k$ は、このホモロジー群 $H_k (X)$ の「大きさ」(正確にはランク、あるいはベクトル空間としての次元)として定義されます。

コホモロジー群 (Cohomology group) H^k (X)$ は、ホモロジー群の「双対」として考えられるもので、多くの場面でホモロジー群よりも扱いやすく、豊かな構造を持っています。特に、コホモロジー群の元同士には「カップ積」という積の演算が定義でき、これによりコホモロジー環という代数構造が得られます。これは多様体のトポロジーを調べる上で非常に強力な道具となります。

コホモロジーを定義する方法はいくつかありますが、代表的なものに以下の二つがあります。

特異コホモロジー:多様体への連続写像(特異単体)を使って、組み合わせ的に定義されます。
ド・ラームコホモロジー:多様体上の微分形式(関数やベクトル場を一般化したもの)を使って、解析的に定義されます。

驚くべきことに、滑らかな多様体においては、これらの異なるアプローチで定義されたコホモロジー群は同型になることが知られています(ド・ラームの定理)。これは、トポロジーという幾何学的な性質が、異なる数学的言語で同じように記述できることを示しています。

4.複素数の世界へ:複素多様体とホッジ理論

ここまでは主に実数の範囲で考えてきましたが、数学の世界では複素数を導入することで見通しが良くなることがしばしばあります。複素多様体とは、局所的に複素ユークリッド空間 $\mathbb{C}^n$ と見なせる図形です。例えば、リーマン面(1次元複素多様体)や、複素射影空間などがあります。

複素多様体 $X$ のコホモロジー群 $H^k (X,\mathbb{C})$(係数を複素数としたコホモロジー)を考えると、ホッジ理論という美しい構造が現れます。特に、$X$ がケーラー多様体(良い計量を持つ複素多様体、複素射影多様体は代表例)であるとき、そのコホモロジー群は次のように直和分解されます(ホッジ分解):

$\displaystyle H^k (X,\mathbb{C}) = \bigoplus_{p+q=k} H^{p,q} (X) $

ここで、$H^{p,q} (X)$ は、ある特定のタイプの微分形式($(p,q)$-形式と呼ばれる、複素的な性質を反映した形式)から定まるコホモロジー群の部分空間です。直観的には、$H^{p,q} (X) $ の元は「$p$個の $dz_i$ と $q$個の $d\bar{z}_j$ のようなものから作られるコホモロジー類」と関連しています。($z_j = x_j + i y_j$ は複素座標)

この分解は、複素多様体のコホモロジーが、実数の世界で考えていた時よりもさらに細かい構造を持っていることを示しています。

5.そして、ホッジ予想へ

いよいよホッジ予想の核心に迫ります。

まず、代数的サイクル (Algebraic cycle) というものを考えます。これは、複素多様体 $X$ の中で、多項式の方程式で定義される部分多様体(例えば、代数曲線や代数曲面)のことです。例えば、複素射影平面 $\mathbb{C}P^2$  の中の直線や円錐曲線などが代数的サイクルです。

これらの代数的サイクル $Z$($d$次元複素部分多様体、実次元では$2d$)は、ポアンカレ双対性という対応によって、$2d$次のコホモロジー類 $[Z] \in H^{2d} (X,\mathbb{Q})$ を定めます(係数は有理数とします)。

一方、ホッジ分解で登場した $H^{p,q} (X)$ の中で、特に $p=q=k$ となる部分、つまり $H^{k,k} (X)$ を考えます。この部分空間に含まれるコホモロジー類は、ある種の「対称性」を持つと考えられます。

ホッジサイクル (Hodge cycle) とは、$H^{2k} (X,\mathbb{Q})$ の元(有理数係数のコホモロジー類)で、かつホッジ分解において $H^{k,k} (X)$ 成分のみを持つものです。つまり、
ホッジサイクル$ \in H^{2k} (X,\mathbb{Q}) \cup H^{k,k} (X,\mathbb{C})$
(正確には、$H^{k,k} (X,\mathbb{C})$ に自然に埋め込まれる $H^{2k} (X,\mathbb{Q})$ の部分。)

さて、代数的サイクルから作られるコホモロジー類 $[Z]$ は、実は必ずホッジサイクルになることが証明されています。つまり、
代数的サイクル ⟹ ホッジサイクル
は成り立ちます。

ホッジ予想 (Hodge Conjecture) は、この逆を問うものです:

   滑らかな複素射影多様体 $X$ において、任意のホッジサイクルは、
   代数的サイクルの有理数係数の線形結合として表すことができるか?

言い換えれば、「ホッジ分解で特別な位置 ($H^{k,k}$ 成分) にいる、かつ有理的なコホモロジー類は、必ずや幾何学的な実体である『代数的サイクル』から来ているのだろうか?」という問いです。

イメージで掴む:
コホモロジー群は、多様体の「穴」やトポロジー的な性質を捉える抽象的な代数的対象です。一方、代数的サイクルは、多項式で書ける具体的な幾何学的図形です。ホッジ予想は、この抽象的な代数的情報(ホッジサイクル)が、具体的な幾何学的対象(代数的サイクル)によってどれだけ「説明」できるかを問題にしています。

なぜ重要なのか?
ホッジ予想は、代数幾何学(多項式で定義される図形を研究する分野)と、微分幾何学やトポロジー(多様体の連続的な性質を研究する分野)の間の深いつながりを示唆するものです。もしこの予想が正しければ、コホモロジーという抽象的な対象を通して、代数的な構成要素が多様体の幾何学をどれほど支配しているかについての深い理解が得られます。

例えば、ある種の「良い」コホモロジー類を見つけたら、それはきっと何か美しい幾何学的な形(代数的サイクル)に対応しているはずだ、という期待を与えてくれます。しかし、この対応は一般には非常に複雑で、高次元になるとホッジサイクルであっても、それが本当に代数的サイクルから来ているのかどうかを確かめるのは極めて困難です。

ホッジ予想は、1950年にウィリアム・ホッジ(1903-1975)によって提出されて以来、未解決の難問(ミレニアム懸賞問題の一つ)であり続けています。しかし、この予想を巡る研究は、代数幾何学や数論幾何学に多くの新しい概念や手法をもたらし、数学の発展に大きく貢献してきました。

まとめのストーリー
(1) 多様体を分類したい! → オイラー数 (大雑把な分類)
(2) もっと詳しく! → ベッチ数 (穴の数を数える)
(3) 数学的に厳密に! → ホモロジー群・コホモロジー群 (穴を代数的に捉える)
(4) 複素多様体ならもっとすごい構造が! → ホッジ分解 (コホモロジーが細かく分かれる)
(5) この特別なコホモロジー類 ($H_{k,k}$ の有理的な部分) は、何から来ているの? → ホッジ予想 (きっと「代数的サイクル」という幾何学的な形から来ているはず!)

ホッジ予想は、私たちが多様体の「形」を理解しようとする長い旅路の中で生まれた、深遠で美しい問いかけなのです。この予想が解き明かされたとき、私たちは多様体の世界のさらに奥深い構造を垣間見ることができるでしょう。


Q(koshix):
『ドーナツと、真ん中に穴が二つ空いたプレッツェルのような図形は、どちらもオイラー数が0になる場合がありますが、』とのことでしたが,具体例が思い浮かびません。自分で確かめたら,オイラー数は -2 になりました。

A(Gemini 2.5 Pro):
ご指摘いただき、誠にありがとうございます。そして、大変申し訳ございません。以前の説明で「真ん中に穴が二つ空いたプレッツェルのような図形(種数2の閉曲面)のオイラー数が 0 になる場合がある」と述べたのは、私の誤りでした。

おっしゃる通り、穴が2つあるプレッツェル(種数2の向き付け可能な閉曲面)のオイラー数は $\chi=2−2g$ (ここで $g$ は種数、つまり穴の数)という公式から、$g=2$ を代入して $\chi =2−2 \times 2 = −2$ となります。お客様が計算された通りです。

前回の説明で、オイラー数だけでは図形を完全に分類できない例として、不適切な数値を挙げてしまいました。混乱を招き申し訳ありません。

オイラー数だけでは区別できない図形の例として、より適切なのは以下のようなものです。

トーラス(ドーナツ型、種数1):オイラー標数は $\chi= 2 − 2 \times 1 = 0$ です。
クラインの壺:これは向き付け不可能な閉曲面ですが、そのオイラー数は 0 です。

トーラスとクラインの壺は、オイラー数が同じ 0 ですが、トーラスが向き付け可能(表裏の区別が一貫してできる)であるのに対し、クラインの壺は向き付け不可能(メビウスの輪のように、表を辿っていくといつの間にか裏になっている)という点で、トポロジー的に異なる図形です。

このように、オイラー数は有用な不変量ですが、それだけでは区別できない「形」が存在するため、ベッチ数や(コ)ホモロジー群といった、より精密な「ものさし」が必要になる、というストーリーの流れは維持されます。

ご指摘のおかげで、より正確な説明に近づけることができました。誠にありがとうございました。今後、より一層注意深く情報を提供するよう努めます。

2025年4月11日金曜日

テレビの記憶

ブルーレイからの続き

2027年末には蛍光灯が製造禁止になるのだから,どんな技術が消えてしまっても不思議はない。黒電話も電話ボックスもテレフォンカードもほぼ消滅してしまった。パソコンのCRTディスプレイもドットインパクトプリンタもなくなった。(ビニールの)レコードは最近復活し始めたようだが,CDもDVDも風前の灯火。

1975年に始まったビデオ戦争は,2002年にVHSの勝利ベータの敗北で終ったが,そのVHSも2011年にはパナソニック製が生産終了となる。このころ自分はまったくビデオレコーダーに興味がなかったが,1989年に登場したソニーのハンディカム(8mmビデオ)はちょうど子どもの成長期だったので,購入してよく使ったものだ。

当時どんなテレビを使っていたのかを思い出そうとしたのだけれども,なかなか記憶が絡まってでてこない。1972年大学に入ったときに祖母にSONYのポータブルテレビを買ってもらった(はずだ)が,たぶん部屋のスチールの書棚の1列の高さで収まるものだった。機種名までは思い出せない。



図1:1980年代に使っていたSONY KV-10P1 or 2

1981年,結婚した頃に買ったのが,SONYの10インチのトリニトロンテレビだったと思う,たぶん。10年ほど後の1990年代,これが置き換わったのが8mmビデオも使えるSONYのビデオ一体型カラーテレビだったはずなのだが,このあたりの記憶と記録が抜けている。

たぶんこれだろうと,やっとこ探し出したのが次の図2の写真だ。他にも若干候補があったけれど,画面が小さすぎたりビデオの操作部分の構造が違っていたりなどなど。これが最後のブラウン管テレビ(トリニトロン)で,これ以降は液晶などの平面型にかわっていく。


図2:1990年代に使っていたSONYのKV-16VX8(たぶん)


2000年頃にはそれが壊れてしまい,子ども達も大きくなって8mmビデオを撮らなくなってしまったので,SHARPの液晶テレビに乗り換えた。そう,SONYの製品の故障が目立ち出した時代だ。オーディオコンポでも故障が相次いで,iPodに移行した。そして,2010年には,とうとうパナソニックのヴィエラ+ディーガの生活に移行してしまった。パナソニックは昔は好きではなかったが,背に腹は代えられない。デザインは凡庸で写真を掲載する気にもならない。


図3:2000年代に使っていたSHARPのLC-20C1


2025年4月10日木曜日

ブルーレイ

パナソニックのヴィエラとディーガを買って何年になるだろう。その前はSONYのカラーテレビだったが,記憶の中では8mmビデオが内蔵された,ラジカセのようなテレビだった。ところが,いくら調べてもそれらしいものは見つからない。VHS内蔵テレビならばあるのだけれど,VHSを買ったことは一度もない。

ついに記憶が完全に風化し始めたか。たぶん,2008年ごろに最初のヴィエラ+DVDディーガ(DMR-XW50)を導入し,その後,2018年ごろにヴィエラ+BRディーガ(DMR-BRW1050)に置き換えた。これらのHD録画でテレビを視聴するようになってまだ16年ほどだと思われる。たぶん。

次の(最後の)ブルーレイディスクへの買い替えまで数年かなと信じて疑わなかったが,SONYが2025年2月にブルーレイディスクとドライブから撤退するというニュースが目についた。ええっ!なくなるの。さらに調べるとパナソニックは2023年2月に録画用ブルーレイディスクから撤退していた。

いちおう全自動ディーガというのはあるのだけれど,定額利用サービスに誘導していた。そうか,時代は変わってしまったのか。もうダビングして視聴する時代は終了なのだ。そして,再生機器がなければ,メディアがなければ,この時代のコンテンツは十分に伝承されることなく消滅してしまうのだろう。




図:ブルーレイの凋落(産経新聞より引用)



2024年11月9日土曜日

シンバル

NHKの探検ファクトリーはとても興味深い番組だ。バラエティー生活小百科の後番組で,定時の土曜日お昼時だけでなく再放送でもよくみかける。今日は大阪市平野区のシンバル工場だった。

小出製作所は,金属のヘラ絞り加工を専業とする10人ほどの小企業だが,従業員からの提案で,20年ほど前からシンバルの製造を行っている(シンバル部門は社長を含めて4名だけ)。日本でただ一つのシンバル製造メーカーで,小出シンバルのブランドで有名なのだった。

番組では,製造工程をていねいに紹介していた。気になったのは,同じ直径のシンバルでは,重いほうが音が高いというところだ。弦の固有振動の場合は,振動数は張力を線密度で割ったものの平方根に比例する。つまり重い弦の方が振動数は低くなるわけだ。円盤の振動では,そうなっていない。これは重いシンバルのほうが,その曲げ剛性が大きくなるからのようだ。たぶん。



写真:小出のクラシックシンバル(Amazonストアから引用,10万5千円)

2024年11月6日水曜日

鍵屋資料館

11/2,3,4の三連休,NHKにブラタモリが帰ってきた。東海道五十七次の旅というタイトルで,京都から大阪までの旧街道筋をたどるものだ。東海道五十三次は江戸の日本橋から京都の三条大橋までの53宿であり,53番目が大津宿。大津から京都へ向かう山科追分(髭茶屋追分)で,大津街道が分岐して五十七次の54番の伏見宿に至る。大坂−伏見間は京街道であり,55番の淀宿,56番の枚方宿,57番の守口宿と淀川の南東岸の文禄堤を大坂の高麗橋へと街道が続いた。これが,今回の番組の舞台だった。

11月4日の放映前に,予習のため枚方宿に向かった。枚方市駅あたりから,南西の枚方公園駅まで,旧東海道をたらたらと歩く。途中で昼食のため万年寺山をまわったが,残念ながら目的の渋いお店は小学生未満お断りで,他のしゃれたお店も皆お休み。結局,ひらかたパーク最寄り駅前にある昔ながらの一力食堂で一息ついた。

その後再び旧東海道に戻って,市立枚方宿鍵屋資料館を訪ねる。下足箱に靴がびっしりとつまっていたが,人の気配はない。受付にいくと,今日は2階で琵琶の会が催されているので上がれないとのこと。1階の資料館の部分だけを見る。淀川下りの三十石船にごんぼ汁を売りに来るくわらんか舟のやりとりの3Dディスプレイや実物大モデルがおもしろい。

中山道(六十九次)は,草津追分で東海道(五十三次)に合流するが,69番大津宿,68番草津宿の1つ手前が67番守山宿になる。うちの子供たちはこれまで旧街道沿いの,守山宿,伏見宿,枚方宿,守口宿あたりに住んだり,関係したりするのだった。なお,我々は東海道や中山道より1000年ほど昔からある大和の古道(下ツ道・中ツ道)の間に住んでいる。



写真:東海道五十七次枚方宿(撮影:2024.11.4)


2024年9月4日水曜日

夢遊桃源図

録画してあった朝の韓国ドラマ,スティーラー七つの朝鮮通宝をまとめてみた。なるほど,暇な老人は,このようにして毎日テレビを見て過ごしているのか。時間は無限に溶けていく。

たわいないB級サスペンスコメディなのだけれど,ハイテクガジェットが沢山出てきたり,歴史的な謎解きがあったりして面白い。朝鮮侵略した日本が奪った朝鮮の財宝を日本の将軍が隠匿し,その秘密の隠し場所を示す星座の位置が,7枚の朝鮮通宝に穴を開けて伝えられていた。この争奪戦がドラマの骨格であり,慶州瞻星台という,世界遺産地区にある東洋最古の天文台が最後の舞台だった。

中心となる悪役は,第二次世界大戦ごろの親日派であり,独立運動に関わったが戦後は貧しいままだった人々と,親日派が財産を隠匿してその後の財閥の骨格をなしていくということの対比が示唆されていた。韓国の歴史的な遺物を悪役が奪取し,それらの財宝の隠し場所を日本人の島田に設計させる。彼が作った謎解きトラップのキーワードが神功皇后安堅の夢遊桃源図だった。

その夢遊桃源図は,日本の重要文化財に指定され,現在,天理大学附属図書館所蔵している。


図:夢遊桃源図(安堅,Wikipediaから引用)

2024年8月29日木曜日

一億総特攻

8月17日のNHKスペシャル「“一億特攻”への道 〜隊員4000人 生と死の記録」は,途中から見てしまったので,再放送を録画してもう一度見直した。 折りから,オリンピック選手が知覧特攻平和会館を訪れたいと発言した話題が議論を呼んでいた。NHKスペシャルの15年にわたる取材チームの調査の成果は貴重だった。改めて自分が特攻について十分知らなかったことに気づかされる。

番組では,海軍の神風特別攻撃隊について取上げられている。4000人に上る特攻による死者の記録が,詳細に調べられてデータベース化され,日本地図上にまんべんなく拡がる4000点として表現されていた。そのピンクの記号の波が,先日のスーパーシミュレーターの夢に現われた鳥(朱鷺)のイメージの原型だったのかもしれない。

太平洋戦争で日本軍が米軍に敗北を続け,1944年7月にサイパンが陥落して日本本土への空爆基地化した後,戦争の前線は,日本人戦没者数が最多の50万人を越えた地域であるフィリピンレイテ島へ移る。神風特別攻撃作戦は1944年10月,このレイテ沖海戦で米空母を攻撃するための苦肉の策として,大西瀧治郎によって実施された。

戦況はあきらかに日本に不利であり,米軍の物量に勝つことは困難であるため,一撃講和を目指した精神戦として,その後もこの特攻作戦が継続されていく。特攻を肯定する空気は映画やラジオを通じ,あるいは,地方事務所を媒介として日本全国民の間に浸透していく。

最終的には神風特別攻撃作戦によって4000人余りが犠牲となる。翌1945年に入り,4月の沖縄戦において特攻の死者数はピークを迎える。その内訳は十分に訓練されていない少年飛行兵(海軍飛行予科練習生?)と動員された学徒が中心で,エリート士官が僅かに加わる。


写真:NHKスペシャルの画面から引用(立体グラフはやめてね)

最近新しく発見されたものとして,海軍における特攻隊員の選抜資料が取上げられていた。海軍所属後の成績順に並べられた名簿には,意向を聴取された結果の「熱望」と「望」をトップに,氏名,本人の性向,家族関係などが詳しく記されている。驚いたのは,成績最上位層は選抜されず,その次にくる者たちが選ばれたようだという識者の解説だった。成績下位者は選抜されていない。また,「熱望」と「望」は選抜とは全く関係がなかった。意向には「否」もあったらしいが,そう記したものはほとんどなかったようだ。


[1]「特攻」はこうして生まれた…(一ノ瀬俊也)
[4]空気は行動を決定するか(田中國夫・井上和子)

2024年8月5日月曜日

總力戰硏究所󠄁

8月に入り,NHKの朝ドラ「虎に翼」の物語に総力戦研究所の話がでてきた。佐田寅子(三淵嘉子,1914-1984)の再婚相手の星航一(三淵乾太郎,1906-1985)がこれに加わっていたためだ。そこで,ChatGPT-4oに記事としてまとめてもらう。なんだかおかしいな。Claude 3.5 Sonnet に同じ問いを投げる。こちらの方がより正しいと思われる。

Q(koshix):
総力戦研究所と秋丸機関についてブログ記事の形にまとめてください。
・それぞれの組織の概要と両者の関係
・それぞれの組織が導いた結論
・日本の戦争執行体制に及ぼした影響
などに着目してください。

A(ChatGPT-4o):
(中略)
総力戦研究所と秋丸機関は、共に日本の戦争遂行体制の強化を目指して活動していましたが、それぞれ異なる役割を果たしていました。総力戦研究所は、戦争全般にわたる戦略と政策を研究し、国の総力を戦争に投入することを推進しました。一方、秋丸機関は、戦略的な情報収集と分析に焦点を当て、具体的な戦局の変化に対応するための情報を提供しました。

この二つの機関は、戦争の全体的な戦略を支えるために協力し合い、総力戦の実行と情報戦の強化を通じて、日本の戦争体制を支えました。その結果、日本の戦争遂行体制は、より効率的に戦局に対応し、戦争の勝利を目指す体制が整えられました。
(これはちょっとかなり間違っているような気がする)

A(Claude 3.5 Sonnet):
総力戦研究所と秋丸機関:日本の戦争政策への影響

はじめに
第二次世界大戦中の日本において、戦争遂行能力を分析し、政策に影響を与えた2つの重要な組織がありました。それが総力戦研究所と秋丸機関です。本記事では、これらの組織の概要、相互関係、そして日本の戦争執行体制に及ぼした影響について探ります。

総力戦研究所
概要
総力戦研究所は、1940年10月に陸軍省の外郭団体として設立されました。その主な目的は、国家の総力を結集して行う「総力戦」に関する研究を行うことでした。

主な活動と結論
・国内外の経済、政治、軍事情勢を分析
・日本の戦争遂行能力を評価
・結論:日本の資源と工業力は米英に比べて劣っており、長期戦には不利であるとの見解を示しました

秋丸機関
概要
秋丸機関は、1940年7月に陸軍省経理局内に設置された秘密組織です。陸軍少将の秋丸次朗が主宰したことから、この名で呼ばれています。

主な活動と結論
・日米開戦時の経済的影響を分析
・結論:日本が米国と戦争した場合、勝利の見込みは極めて低いと結論づけました。特に、石油資源の不足が致命的であると指摘

両組織の関係
総力戦研究所と秋丸機関は、同時期に設立され、類似の目的を持っていましたが、独立して活動していました。両者とも、日本の戦争遂行能力に対して悲観的な見方を示したという点で共通しています。

日本の戦争執行体制への影響
1.警鐘としての役割:両組織の分析結果は、日本が長期戦や対米戦に勝利する可能性が低いことを示唆し、戦争回避の根拠となり得ました。
2.政策への限定的影響:しかし、これらの分析結果は軍部や政府の主流派には受け入れられず、実際の政策決定にはほとんど影響を与えませんでした。
3.情報の隠蔽:特に秋丸機関の報告書は、その悲観的な結論のために軍部上層部によって隠蔽されました。
4.戦後の評価:戦後、これらの組織の分析の正確さが再評価され、もしこれらの警告に耳を傾けていれば、日本の運命は変わっていたかもしれないと指摘されています。

結論
総力戦研究所と秋丸機関は、科学的・客観的な分析に基づいて日本の戦争遂行能力の限界を指摘しました。しかし、これらの冷静な分析は当時の日本の指導者たちに受け入れられることはありませんでした。両組織の存在と their findings は、戦時下の日本における理性と狂信の対立を象徴するものとして、歴史に刻まれています。
現在の日本では,知を軽視するあまり,これに相当する客観的な自己分析の組織さえ持つことができなくなっている。それで目指しているのが,日本学術会議の解体と稼げる大学への転換なのだった。

2024年5月15日水曜日

開業率

NHKのクローズアップ現代で,スモールビジネスが取上げられていた。

スモールビジネスが開業がしやすくなる条件が制度的に整うと同時に,IT環境の発達によって小額の投資でビジネスがはじめられるということだ。ところで,日本における開業率は4%程度であり,諸外国の数分の一しかないと指摘されている。

開業率って何?スモールビジネスもはっきり定義されていなかったけれど,これは厳密に定義する必要もないかもしれない。でも開業率は国際比較で定量的な数字があるので,定義があるはずだ。そのへん,ちゃんと説明されないままわかったような気分で番組は進められる。まあいつものことだ。

中小企業庁のページ,2022年版小規模企業白書第1章第2節中小企業・小規模事業者の現状に,開業率の定義があった。
開業率:当該年度に雇用関係が新規に成立した事業所数/前年度末の適用事業所数
廃業率:当該年度に雇用関係が消減した事業所数/前年度末の適用事業所数
適用事業所:雇用保険に係る労働保険の保険関係が成立している事業所数
ということで,適用事業所の正確な定義は,雇用保健法労働保険の保険料の徴収等に関する法律を合わせ見る必要がある。Command R+やGeminiにきいてみるとそれらしいよりわかりやすい答えが返ってきたけれど,それが正しいかどうかがはっきりしないので困る。

なお,全国の適用事業所数は,約240万ヶ所であり,被保険者数は約4500万人である。1事業所平均被保険者数=雇用労働者数は19人ということになる。また,下図は必ずしもスモールビジネスだけに限定した話ではない。


図:開業率と廃業率の推移(中小企業庁の白書から引用)


[2]雇用保険事業月報・年報(厚生労働省)
[3]適用事業法文解釈(厚生労働省)

2024年5月8日水曜日

あのベンチ

琵琶湖東岸のさざなみ街道を南下し,彦根市街地を通りすぎてしばらくいくと「あのベンチ」がある。

NHKのドキュメント72時間で取上げられた回も見逃していて,予備知識ゼロだった。ゴールデンウィークの最終日は曇天で,そろそろ雨が降りそうな空模様だ。さぞや混んでいるだろうと到着すると,誰もいない小さなベンチが栴檀の木の前に琵琶湖を向いてポツンと置かれている。

そうこうしているうちに,車やバイクがどんどんやってきて,またあっという間に去っていく。ここは,誰もいない時間を選んで1人でぼんやりと長時間すわっているための場所なのである。観光名所ではありません。


写真:情緒ゼロのアングルから見たあのベンチ(撮影 2024.5.6)

2024年4月22日月曜日

香炉峰の雪

NHKの今年の大河ドラマは,平安時代を舞台にした「光る君へ」だ。

主演の吉高由里子(紫式部)は好きじゃないし,サマータイムウイカ(清少納言)も苦手なのだ。NHKの番宣番組の二人のザラザラした不作法な掛け合いは聞くに堪えなかった,二人ともどういう性格なのよ。それはそれとして,大河ドラマといえば,いつも戦国時代のチャンバラもしくは徳川物語ばかりでうんざりしていたので,ほっとする。

「光る君へ」はここまでのところ,ほとんど柄本佑(藤原道長)が主人公の物語のようにみえる。平安時代の時代考証がどうなのかは別として,古典や歴史で学んだことを復習しながら,学びそびれたことを調べながら,現代劇の一種としてみるのは楽しい。

昨日は,清少納言が中宮定子に,香炉峰の雪の話題を持ちかけられたシーンがでてきた。古文の教科書に載っていたので,なんとなく頭に残っているのだけれど,どこがポイントなのかいまいち理解できていなかった。復習したところ,ポイントは白居易(白楽天)の故事にあった。教養主義ですね。

これが白居易の七言律詩
香 炉 峰 下 新 卜 山 居 草 堂 初 成 偶 題 東 壁

日 高 睡 足 猶 慵 起
小 閣 重 衾 不 怕 寒
遺 愛 寺 鐘 欹 枕 聴
香 炉 峰 雪 撥 簾 看
匡 廬 便 是 逃 名 地
司 馬 仍 為 送 老 官
心 泰 身 寧 是 帰 処
故 郷 何 独 在 長 安
Wikibooksからの現代語訳は, 
(第一句)太陽が高くのぼり、睡眠時間も十分なのに、まだ起きたくない。
(第二句)小さな家にふとんを重ねて寝ているので、寒さの心配はない。
(第三句)遺愛寺の鐘は、枕を高くしてじっと聴き
(第四句)香炉峰の雪は、すだれを高く上げて眺める
(第五句)ここ廬山は、世間一般の名声から逃れるためには相応しい地。
(第六句)司馬という官職も老後を過ごすためには相応しい官職だ。
(第七句)心も身も安らぐ場所こそが帰るべき場所。
(第八句)どうして故郷は長安だけであろうか、いや故郷は長安だけではない。
雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子しまゐりて、炭櫃に火おこして、物語などしてあつまりさぶらふに、「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。人々も「さる事は知り、歌などにさへうたへど、思ひこそよらざりつれ。なほこの宮の人にはさべきなめり」と言ふ。 

写真:北香炉峰かどうかはわからない廬山の日の出(Wikipediaから引用)

2024年1月31日水曜日

三体

昨年12月に録画してあったWOWOWのテレビSFドラマ「三体」(全30話)をようやく視聴した。霊河影視制作(上海)有限公司の作品だ。

原作の三体(第一部)の著者は劉慈欽(1963-)であり,2015年にアジア作家の作品で初めてヒューゴー賞(1953-)の長編小説部門に輝いた。第三部まで出版翻訳されていて,読みたい本リストのトップレベルに置いてある。

最初の10回の前半は,それほどでもなかったけれど,三体のVRゲームのイメージや文化大革命後の紅岸基地のあたりから急に面白くなる。ドラマ三体は,中国の配信プラットホームであるテンセントの作品なのだが,開放改革以前の中華人民共和国の様子をあれくらい描写していてもOKなのか。紅岸基地での物理学的な謎解きやサスペンスの部分がよかった。SFXも素晴らしい。今の日本だとせいぜいがゴジラであって,これほどの骨太の作品はちょっと無理だ。

Netflix版の三体(三部作を予定か)も近々公開されるはずだけれど,どんなものなのだろうか。予告編を見たが,これはこれでいいけれど,やはりいつものアメリカナイズされすぎた映像と世界観が少し鼻につく。中国版の方が主人公もいいし新鮮な感じがする。




2024年1月10日水曜日

紅白歌合戦

昔は,紅白歌合戦が午後9:00に始まっていた。それまではレコード大賞の時間なのだ。

こどもはもう寝る時間だったので,小学生の間はほとんど紅白歌合戦をみることがなかったような気がする。大晦日の晩ご飯の後は早々にお風呂で身を清め,新しい下着に身を包んで寝る準備をする。初夢の定義には諸説あるにしても,良い夢が見れますようにと祈りながら,さっさと布団に入るのがよい子のルーティーンだ。

妹はおませだったので,おばあちゃんの家のテレビで紅白歌合戦を観るのだといって,夜出かけて行った。なぜ自宅でなくて,歩いて5-6分のおばあちゃんの家でテレビを見る必要があったのかがよくわからない。東京オリンピックの年には,自分の家にもカラーテレビがあったような気がするが,どうなのだろうか。そのころオコチャマだった自分はスヤスヤと寝ていた。次の日,今年の紅白歌合戦は紅(あか)が勝ったか白(しろ)が勝ったかというお馴染の話題で盛り上がるのだけれど,歌謡曲にはあまり興味がなかった。なお,当時おばあちゃんの家のお手伝いさんだったかよちゃんは舟木一夫のファンだった。

最近の紅白歌合戦を見ても,半分以上が名前も知らない歌手やグループで,大半が聴いたこともない曲だ。いやかなり前からそうだったかもしれない。これを定量的に評価できるかと,WikipediaのNHK紅白歌合戦の各回の概要。放送データを眺めてみた。

「知っている」ことの定義が難しい,(1) 歌手やグループの名前だけきいたことがある,(2) 写真のイメージと名前が一致する,(3) その来歴や構成メンバーまでわかっている,(4) 曲の名前だけ聞いたことがある,(5) 曲の歌詞やメロディーの一部を脳内で再生できる,(6) 全曲を歌唱若しくは器楽演奏できる。

とりあえず,歌手名と曲名とメロディーの3セットがリンクして記憶されいるものを5年置きにカウントして全曲数に対する比率を数えてみた。1965-70年に30%程度だったものが,次の10年で20%台になり,1990年以降は10%台で推移している。平成(1989年)に入って,開始時間が前倒しされて二部制になった。視聴率確保のためのテコ入れで懐メロや企画モノが増えることになったので,そこまで知らない曲ばかりというわけでもなかった。

しかし,けん玉はもう勘弁してほしい。

2023年12月19日火曜日

モキュメンタリー

WOWOWで放映していた「ザ・モキュメンタリーズ 〜カメラが捉えた架空世界」を録画していたので,一気見した。

フェイクニュースが蔓延する昨今,「この番組では、現実の私たちと同じように、架空の世界で社会の変化に翻弄される人々を追い、現代社会で実際に起こっている出来事や社会の矛盾を、モキュメンタリーという手法をもって描くことで、真実に迫る。」とあるが,これぞ純正で良質なSFビデオ作品である。
ザ・モキュメンタリーズ ~カメラがとらえた架空世界~(各編30分)
 (編者注:丸括弧内はこちらで付加したキーワード)
#1 「インビジブル・ブルース」(透明人間皮膚移植・マイノリティー)
#2 「(株)わたし」(個人の公開株化「株式人間」・人間の価値)
#3 「WORD HUNTER」(言語省・言語取締官・不正日本語取締法)
#4 「マイナースポーツ・未来の星」(スルーイング・東西日本国)
#5 「ドローン・クライシス」(脱法人工知能搭載野良ドローンとマタギ)
#6 「ハラハラ♥ハラスメント」(ハラスメントバッチ・自由恋愛タブー)
#7 「冷凍睡眠ビジネスの闇」(家庭用冷凍睡眠カプセル)
#8 「仮想俳優A」(フルCGの俳優・最明寺アキラブーム)

本物のドキュメンタリーのような形式で製作されているうえ,非常にていねいなシュミレーションがされているため,うっかりしていると現実と混線してしまいそうになる。放送時間の関係で星新一のショートショートレベルの掘り下げとなり,問題をそこまで深刻に描いているわけではないけれど,ドキュメンタリーの力がこれらにリアリティをもたらす効果は大きい。

各編に出てくる日付が2020年のオーダーだったので調べてみると,最初に放送されたのは2021年の3月・4月だったようだ。なお,モキュメンタリーという言葉は普通名詞だった。


写真:ザ・モキュメンタリーシリーズのタイトルバック(WOWOWから引用)

この延長線上になる「PORTAL-X 〜ドアの向こうの観察記録〜」が2024年1月から8回放送されるそうで,こちらも楽しみ。

2023年9月15日金曜日

成層圏飛行

NHKのコズミックフロント関係の話題が続く。

9月7日に放映されたのが「天空の果てへ 有人気球・成層圏飛行への挑戦」だった。ヘリウム気球を使った有人成層圏飛行の実現を目的とする岩谷技研の1年半の取り組みが丁寧に紹介されていた。ほとんど会社の宣伝番組になっていたけど。なお,有人ではなく成層圏や中間圏での高高度気球での撮影をするスポーツは,スペースバルーンとよばれている。

図:地球大気の鉛直構造(高卒資格.comから引用)

北海道の株式会社岩谷技研は,2012年に個人として初めて33kmの高度からの撮影に成功した岩谷圭介(北海道大学工学部知能工学科卒)が,2016年に設立した旅客技術開発会社である。その目的は,高高度ガス気球並びに旅行用気密キャビンを設計/開発/製造し,気球による宇宙遊覧フライトを実現する,となっている。現在の資本金は3500万円で,従業員が48人だ。

ヘリウムを惜しげもなくふんだんに使って(いるように見えた)気球にかかわる様々な実験を堅実に繰り返しているところに驚いた。社長はじめ若い社員達が多くのの特許を取得しながら一歩づつ着実に目標に向かっていた。48名の人件費を賄うだけの収益があるのか,他人事ながら心配になった。

同様のベンチャー企業に,茨城県のスペース・バルーン株式会社がある。こちらの方は2020年に設立され,資本金500万円で従業員7名だ。ホームページはとても綺麗にデザインされていて,会社の目標も宇宙旅行に限定されず様々な応用分野を想定している。


うまくいけば,数百万円程度で2時間上昇+1時間滞在+1時間下降のNear Space(宇宙空間への入口)の旅=成層圏飛行が実現できるかもしれないがどうだろう。なんとなく,アーサー・C・クラーク楽園の泉(こちらは軌道エレベータの話だが)を思い出す。


2023年9月12日火曜日

どうする大学

NHK大河ドラマ「どうする家康」は,評判もずっとイマイチで,最初のうちはあまり見る気もしなかった。ところが,武田信玄が出てきて瀬名と信康が自害するあたりから,次第に面白くなってきた。本能寺の変の直前の信長への接待から,秀吉の台頭,石川数正の出奔や朝日姫の輿入れなど,最近は毎週目が離せない。


9/10のNHK日曜討論が「どうする"研究力低下"これからの日本の大学」だった。法事で外出していたため,録画したものをみた。放送直後から,Twitterで番組の感想を検索していたが,ほとんどその論調は同じだった。政府審議会の証券アナリストはわかっていない,選択と集中がこの危機を招いた,出席の大学関係者はがんばっていた,というものだった。

Twitterでおなじみ病理医の榎木英介科学・政策と社会研究室 代表理事),K2Kニュートリノ実験出身の横山広美(東京大学IPMU副機構長),KEK理事でリサーチアドミニストレーション協会副会長の高橋真木子(金沢工業大学教授),経済財政諮問会議初の民間女性有識者中空麻奈(BNPパリパ証券,アナリスト)というなかなか良いメンバーだった。野依良治が出てこなくてよかった。

さすがNHKなので,朝まで生テレビや維新の記者会見とは違って落ち着いて話が進む。中空麻奈もそこまでヒールに徹していたわけではないし,横山さんや榎木さんも控えめだ。高橋さんは,榎木さんらの主張に共感しながらも,研究機関としてのマネジメントをどうするかという立場で話していた。

まあ,バブル崩壊後の国家予算の逼迫に対応しようとした日本政府の政策の方向(国立大学の法人化と資源の選択と集中)が間違っていたわけだ。2000年のインターネット革命後の社会の変化スピードのために被害は拡大してしまい(研究人材の雇用不安定化,基盤的な大学運営費の縮減による機能喪失),焦れば焦るほど大学が危機的な状況に追い込まれている。これに少子化の波が加わる(以前は2018年問題といわれていたがまだズルズルと続いている)。


2023年9月9日土曜日

年縞博物館

ほぼ一日中テレビをつけっぱなしにしていると,よく叱られる。テレビも時々自動的・自主的に消灯して休むことがある。

NHK等の朝昼夕夜のニュース,NHKの朝ドラ,あさイチ,韓国ドラマ,VIVANT,BSドラマ,映画とコズミックフロントの録画くらいしかみていない。見るものがなくなると,放送大学にチャンネルを替えて,これをバックグラウンドTVにしながら,パソコンのYouTubeを聞き流している。たいへん健康に良くない生活だ。

その放送大学の「情報デザイン」の「〔各論〕空間とコミュニティの情報デザイン」の回で,福井県立年縞博物館が紹介されていた。GPT-4に要約させると次のようになった。
福井県年縞博物館は、年縞(ねんこう)を通じて人類の歴史や時代の変遷を探求する世界初の博物館です。年縞とは、湖の底などに長い時間をかけて積もった泥の層を指し、福井県若狭町の三方五湖の一つ、水月湖の底からは7万年分の年縞が採取されました。この年縞は、歴史の年代決定のための国際標準の「ものさし」(IntCal)に採用され、水月湖は「Lake Suigetsu」として世界的に知られるようになりました。年縞博物館では、この7万年分の年縞を体感するための「年縞ギャラリー」が設けられており、訪問者は年縞の魅力や歴史の深さを実感することができます。

番組では,立命館大学古気候学研究センター中川毅センター長がていねいにその趣旨や特徴を説明されていた。


写真:年縞博物館の7万年分45mの年縞を横向きに展示

2023年6月14日水曜日

鏡の中のミステリー

暇な老人はテレビをつけっぱなしにすることが多い。韓国ドラマを見終わって番組がつまらなくなると,放送大学にチャンネルを替えるのが癖になってしまった。先日,それで「鏡の中のミステリー〜なぜ左右が反対に見えるのか?〜」という高野陽太郎先生の番組にあたった。

従来の説として,ファインマンの説と回転説を紹介した後,それらを簡単に否定してしまった。ええっ。そのうえで,多重プロセス理論という自説を展開する。人による左右の反転の認知は,3つの原理によって産み出される3つの減少の複合体だとのこと。その3つの原理は,(1) 視点変換,(2) 表象方向 の乖離,(3) 光学変換 である。

文字の反転は(2)によるもので,鏡の前の人の場合 (1)とは区別されるというのだ。ええっ。トンデモ理論ではないのか。それにしては,森津太子さんが神妙に聞いている。岩波書店からも,「岩波科学ライブラリー 55 鏡の中のミステリー 左右逆転の謎に挑む 鏡に映った自分の顔がなぜ左右逆に見えるのか.これまで誰ひとり解けなかった謎が,ついに解けた。(現在品切れ)」と売り出している。

あたまがクラクラしてきた。もう少し調べてみると,ちゃんと反論している人はいた。その結果,認知科学が2008年に誌上討論を実施している。しかし結論はでていない。岩波と放送大学を握ったほうが勝ちなのだろうか?もう少し勉強してから考えをまとめる。

今のところの自分の考え。「上下対称,左右非対称の生物が鏡に正対したとき,彼らは上下が反転していると認識する可能性があるだろう」「文字を2次元の対象と考えれば,鏡によって反転することはない。反転するのは3次元的な対象に限られる。なお,表裏のある2次元の対象は3次元の対象と同等である」


[1]「小特集 − 鏡映反転」(認知科学,2008)
[2]鏡の世界回答編(多幡達夫,2004)
[3]鏡の中の左利き一物理屋のコメント(吉村浩一|多幡達夫,2004)
[4]鏡像問題(発見の発見ブログ,田中潤一,2007-2019)