2021年8月27日金曜日

稼げる大学

日本学術会議に取って代わろうとしている総合科学技術・イノベーション会議の第56回本会議が8月26日に開催された。その議事は,大学改革の方向性について(世界と伍するトップ研究大学の在り方について,地域中核大学の在り方について)である。

なぜかマスコミ(時事通信)は,「稼げる大学」へ外部の知恵導入という見出しで報道していた。案の定,ネット上では批判殺到である。ただ,会議の配布資料をみると稼げる大学という直接的表現はないにせよ,一方で外部の知恵どころの話でもない

諸外国の大学は,長期の成長(次世代の研究や若手研究者へ投資)が大前提

1 意思決定:長期に渡って一貫した成長戦略を実施できるよう,大学の長ではなく,ステークホルダ ーを入れた合議体が最終意思決定

2 大学の長:自律的な活動により,成長を達成できるマネジメントを実現 → 学内外から経営的資質を踏まえて合議体が選考・監督

3 執行機関:規模の成長や専門性に対応できるよう,大学の長を支える経営幹部の充実 →教学担当役員や事業財務担当役員を配置し,責任体制を明確化

「世界と伍する研究大学」に求められるコミットメント(成長と改革にコミットした数大学を支援

1 ミッションの見直し(人類経済社会への貢献)= 研究力の飛躍的伸長

2 潤沢な外部資金の確保と毎年 3% 以上の事業成長 

3 成長を可能にするガバナンスシステムの導入 最高意思決定機関としての合議体設置/学長の経営資質を重視/学長を支える経営幹部の充実 

国立大学の法人化以降,日本の大学のパフォーマンスが海外の大学に比べて圧倒的に遅れてしまったのは,ガバナンス改革と「選択と集中」政策によるものだというのが, 多くの関係者や識者の分析するところだ。しかしながら,この国は大学ファンドを導入した上で,更なる権力集中と大学選抜を進めようとしている。

P. S. この結論は,今年3月に開催された第1回世界と伍する研究大学専門調査会で出てしまっている。資料では各分野の国別論文ランキングで日本の大学が2004年以降急速にランクダウンしていることを象徴的にとりあげている。これはほぼ国立大学法人化の副作用であることがわかっているが,現状についての分析や反省なしにいきなり英米の大学システムを参照してそれにむけて舵を切ってしまっている。

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