2025年11月13日木曜日

微弱放射能測定

すぐにわかる微弱放射能測定ー時を超えた加賀藩遺産との融合ー(井上睦夫)というタイトルのYouTubeが見つかった。なんだろう。国立大学共同利用・共同研究拠点協議会の知の拠点【すぐわかアカデミア】における講演である。

石川県の小松に尾小屋銅山(1878-1971)の跡地がある。高校時代にESSの倉橋君が尾小屋の跡地を訪れた話をしていた。ちょうど閉山したころだったかも知れない。その廃鉱の中に金沢大学の環日本海域研究センター低レベル放射能実験施設の尾小屋地下実験室がある。

神岡鉱山の坑道跡にカミオカンデが設置されているように,宇宙線(ミューオン等)による環境放射線の影響を最小化(1/100)することができる。銅山跡のため周囲の岩石のウランなどによる放射線も小さいらしい。これによって微弱な放射能が測定可能な実験室環境が得られるわけだ。

それに加えて,測定資料をいれるゲルマニウム検出器の遮蔽に使う鉛と鉄がユニークだ。鉛は加賀藩が金沢城に屋根瓦とし用いたものを使っている。金沢城の屋根瓦の鉛は精製してから数百年が経過しており,混在している放射性鉛の半減期より十分長い時間経過して減衰したことが保証されている。

また,瀬戸内海に沈没していた戦艦陸奥の一部が1971年に引き揚げられ,その船体の鉄が放射線の遮蔽材に使われている。陸奥を製造していた当時の鉄は放射性コバルトがほとんど含まれていないため,全国の研究所などで放射線遮蔽のために利用されているらしい。

こうした環境と材料の組み合わせによって,金沢大学の尾小屋地下実験室は日本国内でも有数の微弱放射能測定が可能な実験サイトとなっている。

明治時代に尾小屋銅山を開発して財を築いたのは,加賀藩前田家の家老横山家の横山隆平(たかひら,1845-1903)だ。金沢の実家の近くにある辻家庭園は,北陸冷蔵の社長だった辻儀重郎さんの家の跡地。そもそもは加賀藩家老横山家迎賓館だった。







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