2021年11月13日土曜日

準衛星

準衛星とは,小惑星のうち,ある惑星を周回している衛星のように見えるもの。衛星と準衛星の区別は,惑星の重力圏にあるかどうかで判定され,ヒル圏の内側ならば衛星であり,外側ならば準衛星となる。

ヒル圏(ヒル半径)は,質量の大きな天体$M_1$と小さな天体$M_2$が,距離$r$で周回している時に,非常に軽い天体$m$が天体$M_2$からヒル半径$a (a \ll r)$の距離にあるとして,この$a$に対する条件から決まるものだ。

そのヒル半径 $a$ の位置にある小天体$m$には,天体$M_2$からの重力と,$M_2$に固定された$M_1$の周りの回転系における遠心力が$m$に加わるとして足したものが,天体$M_1$からの重力と釣り合うという条件から求める。

$\dfrac{G M_1 m}{(r-a)^2} = \dfrac{G M_2 m}{a^2}  + m (r-a) \omega^2 , \ \ \ \omega = \sqrt{\dfrac{G M_1}{r^3}}$

この式で,$\dfrac{1}{(r-a)^2} \simeq \dfrac{1}{r^2}(1+\dfrac{2 a}{r})$と近似すれば,$\dfrac{3 a^3}{r^3} = \dfrac{M_2}{M_1}$が得られ,ヒル半径は,$a=r \sqrt[3]{\dfrac{M_2}{3 M_1}}$と求まる。

大陽質量を $M_1=2 \times 10^{30} {\rm kg}$,地球質量を $M_2=6 \times 10^{24} {\rm kg}$,地球の公転軌道半径を $r = 1.5 \times 10^{11} {\rm m}$ とすると,ヒル半径は $a=1.5 \times 10^9 {\rm m}$となり,月の公転半径の約4倍になる。

地球の準衛星の1つ((469219) 2016 HO3)が月のかけらではないかというアリゾナ大学の論文のが今日のポイントだ。2024年の打ち上げが計画されている中国の小惑星探査機鄭和がサンプルリターンに成功すればこの問題を検証することができるかもしれない。


図:2016HO3 の軌道(NASAから引用)

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