2021年11月12日金曜日

神戸:西東三鬼

対面授業が始まってくれたおかげで,電車の中で読書する時間が戻ってきた。

西東三鬼(1900-1962)の神戸・続神戸を読了。これは,昔,NHKのドラマ人間模様で見た「冬の桃」(1977,脚本:早坂暁,演出:深町幸男,全7回)の原作である。早坂=深町コンビといえば,夢千代日記(1981)も新婚当時よく見ていたが,それと同じフレーバーの名作だった。

冬の桃は1977年の放送だったが,M2の頃に見ていたのではないかもしれない。とすると総合テレビで夜9:00に再放送された1990年だろうか。小林桂樹の渋い演技や,時々挟まる西東三鬼の俳句が,戦時中の神戸の怪しいホテル人々の様子と相まってとても印象的だった。

小説(著者はフィクションではないと書いている)の方も,小説より奇なりのエピソードが積み重ねられる。歯科医の著者が,弾圧によって俳句から距離を置いた,戦中戦後の生活模様が描かれる。

その後,1948年には山口誓子(1901-1994)を主宰とする雑誌「天狼」の編集にあたる。名前は耳にしたことがある雑誌だが,創刊時は奈良県丹波市町(現天理市)の養徳社から出版されている。西東三鬼が編集に携わっていた頃は先鋭的だったのが,後に微温的な雑誌になってしまったとのこと。

養徳社は,天理時報社の出版部門が1944年に株式会社として独立したもので,現在は,天理教関係の一般雑誌などを出版している(天理時報社=印刷会社には,個人の名刺を印刷してもらったことがある)。天理教の出版物といえば,天理道友社だが,こちらは宗教法人格を持っている。


写真:西東三鬼(津山市西東三鬼賞のページより引用)

[1]第三俳句集 今日(西東三鬼,青空文庫)
[2]西東三鬼賞(津山市)

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