1984年に朝日選書から出版されたもの(1996)があったはずだと書棚を探したが見つからなかった。オッペンハイマーの映画をきっかけに,ちくま学芸文庫版(2024)を買い直したものを半年がかりでようやく読了した。
量子化学の藤永茂(1926-)さんは,岩波現代選書のおいぼれ犬と新しい芸(1984)というエッセイがかなり本音を書いていておもしろかった。九州大学からカナダのアルバータ大学に移り,ロスアラモス研究所の研究集会への参加をきっかけに,オッペンハイマーへの関心を深めた。
藤永さんは,量子力学や物理にも造詣が深く,オッペンハイマーの書簡集や多くの原文にあたって,この本を書いている。オッペンハイマーに添った観点から,悪魔に魂を売った科学者という単純な見方を退けている。彼はあくまでもひとりの愚者にしかすぎなかった。そして,それを戦争のために生産して配備したのは政治家や資本家 ≒ 愚者としての我々だった。
写真:ロバート・オッペンハイマーの書影(ちくま学芸文庫から引用)
[1]ベートーベン弦楽四重奏曲嬰ハ短調作品131(Jasper String Quartet,2013.11.24)
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