2024年5月5日日曜日

オッペンハイマー

日下周一からの続き

毎日のように新ノ口に通っている気がする今日この頃(先週の話)。

オッペンハイマー」の上映がそろそろ終りそうなので(一日の上映回数が減って,一番小さい部屋が割り当てられる),先週のゴジラ -1.0 に続いて,ユニバーサルシネマ橿原に足を運んだ。

映画オッペンハイマーのカラーパートは,核分裂,モノクロパートには,核融合という名前が付けられている。名前の説明なしで物理学者が沢山登場して,カラーとモノクロのバートが時間順序を無視してやってくるので,相当予習していかないと理解できないとの前評判だった。クリストファー・ノーラン脚本・監督作品は,TENETをテレビでみたけれど,時間逆行と巡行の物語が並行して進むのでなかなか複雑な話だった。


物語は,ロバート・オッペンハイマーの学生時代から,マンハッタン計画における原爆開発の中心地,ロスアラモス研究所の所長としてトリニティ実験に成功するまでがひとつ,戦後,プリンストン高等研究所や原子力委員会でルイス・ストローズ(1896-1976)と関わり,1954年のオッペンハイマー聴聞会で国家機密に関する要職から追放されたオッペンハイマー事件がひとつ,この2つの流れが,カラーパートで表される。

モノクロパートの主人公は,ルイス・ストローズである。1953年から1958年まで原子力委員長をつとめた投資銀行家のストローズは,アイゼンハワー政権の商務長官に推挙される。そのための公聴会の部分がオッペンハイマーと絡めながら描かれている。結局,1959年に上院の反対によって,ストロースの商務長官就任は拒否された。それは歴史的な出来事だった。

こうしてモノクロパートと2つのカラーパートが絡まりながら物語は進んでいく。ノーランの脚本はとてもわかりやすく,すべての人物や出来事を把握できなくても,話の筋道は追うことが出来た。オッペンハイマーや妻のキティはやや複雑に描かれているが,悪役ははっきりしている。ストローズとその陰謀に加担した者たち,そしてエドワード・テラーか。

物理学者は,アインシュタインとニールス・ボーアと核磁気共鳴のイジドール・ラビとサイクロトロンのアーネスト・ローレンスと理論核物理のハンス・ベーテがわかっていれば話はつながるのだ。ボンゴをたたいていた若きファインマンは何の役割も果たしていない。


写真:J. ロバート・オッペンハイマー(Wikipediaから引用)

P. S. オッペンハイマーの物理は,1939年にPhysical Reviewに載ったブラックホールの着想が取り上げられていた。日本語訳の物理監修は橋本幸士さんだったが,1ヶ所,原子がふさわしいところが分子のままになっていた。

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