2024年5月1日水曜日

皆勤の徒:酉島伝法

大森望(1961-)の解説はけっこう信頼している。以前,日経新聞で酉島伝法(Torishima Dempow,1970-)を滅法褒めていた。

早速,短編集の「皆勤の徒」をkindleで購入した。ついでに,皆勤の徒の設定資料集「隔世遺傳」もあわせてゲットする。

いきなり,隷重類(れいちょうるい),香水(ようすい),製臓物(せいぞうぶつ),念菌(ねんきん)と,漢字とよみがなと意味の混濁がはじまって,未来世界の蟹工船的な状況が描写されていく。

なんだこれ。短編集の中の4作品,皆勤の徒,洞の街,泥海の浮き城,百似隊商と,これまでのSFでもお目にかかったことのない世界が新しい言葉で展開される。英語や彿語にも翻訳されている。全滅領域のジェフ・ヴァンダーミアによれば(大森望訳),
わお。酉島伝法の『皆勤の徒』はすごいぞ。画期的な作品だ。おそらく、この十年で初めての、百パーセント独創的なSFだろう」と絶賛し、以下のように評している。「『流刑地』と『変身』のカフカが、フィリップ・K・ディックとスティパン・チャップマンとレオノーラ・キャリントンの霊を呼び出して、不気味な地球生物学と遠未来とブラザーズ・クエイをミックスしたコンテクストに放り込んだら?(中略)アンジェラ・カーターがシュールリアリズムに手綱をつけて、プロットのあるストーリーをぎりぎり語れるようにしたのと同様、酉島は、異形の未来に移植されたこの地球で、人間の奇天烈な生態と有機体の奇天烈なライフサイクルをどうにか物語として成立させている。つまり、おそろしく風変わりで先鋭的ではあっても、本書は実験的ではない。実験的な部分があるとすれば、それは、ライフサイクルや生物組織をプロットに組み込む、そのやりかたにある」
自分の感想は,筒井康隆の幻想の未来+ブライアン・オールディスの地球の長い午後+フランク・ハーバートのDUNE+・・・。主題として「宇宙」「意識」「生命」「進化」「情報」「ナノテク」「AI」がてんこ盛りで近江町市場の2700円海鮮丼状態だった。



写真:創元SF文庫「皆勤の徒」の書影


[2]棺詰工場のシーラカンス(酉島伝法)


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