霊長類研究所はチンパンジーのアイちゃん(1976-)でおなじみだ。童謡のアイアイは,アイちゃんの歌だと思っていたけれど,どうやらマダガスカルのアイアイのことだったらしい。松沢哲郎(1950-)のチンパンジーの知能の研究が有名で,NHKでも何度か特集が組まれていた。
2019年に研究資金の不正使用が報道され,2020年に京都大学の調査委員会は5億円の不正使用があったことを認めた。この結果,2022年3月に霊長類研究所の組織は解体され,一部がヒト行動進化研究センターとして再編された。
その事情を分析した霊長類研究所解体の経緯を考える(杉山幸丸,相見満,黒田末寿,佐倉統,2024)という論文があった。その結論は次のとおりであった。
第1に、ことの発端は飼育チンパンジーを収容する大型の檻2基の設置工事をめぐる業者とのトラブルであるが、事態をここまで悪化させずに収束させられたかもしれないと考えられる時点が複数存在したこと。第2に、このような大型工事が可能になったのは霊長類研究所のA教授とそのグループが霊長類学としては巨額の研究資金獲得に成功したからであり、その背景要因のひとつとして文部科学省による「選択と集中」政策があったこと。これらの構造的要因を踏まえて再発を防ぐには、教育研究組織のリーダーや運営責任者は、単に研究教育面だけでなく、組織の経営管理についても高い見識を有することが求められ、そのような研修をリーダーに義務づける必要があると思われる。
てこと〜(へライザー総統口調で)。日本の研究環境の格差拡大と研究力の疲弊化を招いたことを含め,どう考えても文部科学省の「選択と集中」は誤った政策だった。
写真:チンパンジーのアイちゃん(問題の発端である読売新聞から引用)
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