彼の定義によれば,AGI(Artificial General Intelligence)は人間と同等の知能をもつAIであり,2-3年後に実現する。ASI(Artificial Super Intelligence)は人間の1万倍の知能を持つAIであり,10年以内に実現する。そのASI(人工超知能)は,人工超知性へと進化するというのがそのビジョンである。下図の1-5はAGIの進化レベルを表しており,6-8はASIの進化レベルに対応している。人間の脳にある神経細胞ニューロンは1000億個あり,それらが接続するシナプスは100兆個ある。しかしこれは20万年前から変化しておらず,また今後も増えることはない。一方,これに対応する大規模言語モデルのパラメタは数兆個のオーダに達しており,さらに増える可能性がある。こうした前提のもとに,情報を検索する(Google)→知識として理解する(GPT)→知能により推論する(o1)→知性で調和させる(ASI+)という一連のAIの進化の流れを想定している。まず,最近のo1が,複数の分野の博士レベルの能力を持つに至ったことを紹介し,AIが速さから深さ(Chain of Though)の段階に移行しているとする。その例として,o1-preveiwに「一千万円を一億円にするための戦略とメカニズムは?」と聞いて回答に75秒かかって感動したということを披露していた(自分でも同様に試してみたが,あっという間に答えが出てしまった。どうやら知識不足で設問の表現が単純すぎたようだ)。次に,(広義の)強化学習が,並列に動作する数千エージェントの数十億回の試行によるQ関数(行動価値関数)の進化を促すことを示し,自分でモデルを考えることができるAIへの進化が鍵となることを説明した。さらに,個人によりそったAI=パーソナルエージェント(PA)の時代が来ることを予測し,人や物に対応した人工知能エージェント同士がやりとりするA to Aの時代が来るとした。ソフトバンクがほぼ所有しているARMのチップは年間320億個出荷されていて,世界人口1人当たりにすれ4個になる。このようにすべての人や物(AoT = Agent of Things)にAIが行き渡る。パーソナルエージェントとは,個人のライフログを分析するようになるが,そのためには,感情,重要度,時間帯等から評価される感情インデックスにあわせた情報の記憶が重要になってくる。高いスコアのものは動画や音声で,中程度は静止画で,低スコアならばテキストで保存されるというわけだ。大切な想い出や日常の記憶が長期に保存される。こうして,人工知能は人間の感情を理解して長期記憶を持ち,最終的には,PAはパーソナルメンターに進んでいく。そして,人工知能は自らの意思を持つ人工知性の段階に到達する。その際のQ関数の最大の報酬は,自分の喜びファーストではなく,あなたの喜び,あなたの幸せ,家族の幸せ,社会の人々の幸せとなって,調和のとれた超知性が実現する。それをソフトバンクは目標にするというものだった。なかなかここまで大風呂敷を展開できる日本人の現実の経営者はいない。小規模LLMや省電力LLMをディスりすぎているきらいはあり,ソフトバンク自身のLLMが3000億パラメタ程度しか実現できていないので,どうよとは思うけれど,各地にデータセンターを構築しながら,ロボティックスや自動運転も視野に入れながら着実に前進しているので目が離せない。
図:孫正義によるAIの進化のイメージ(SowfBank World 2024 から引用)
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