2022年10月28日金曜日

キュリー夫人

あんまり好きじゃない藤原帰一が,NHK BSのニュース番組キュリー夫人の映画を紹介していた。さっそく,京都アップリンクに見に行く。烏丸御池駅下車2分の新風館地下の便利なところにあるこじんまりとした映画館だ。40席弱のシアターが4つあり,入館チケット販売が全自動化されている。

これは2019年のイギリスの伝記映画,ハンガリーやスペインで撮影・制作されている。登場人物は英国系なので,フランスっぽさがあまり感じられない。アングロサクソンの気の強い女性とヒゲのおじさんたちが登場し,途中にイメージ映像とか時空を超えたカットバックシーンがいくつか挿入されている。誰かの映画批評にもあったけれど脚本がちょっとイマイチだったかもしれない。監督は,マルジャン・サラトビ,イラン出身のフランスの漫画家だ。

科学者の伝記映画といえば,10年ほど前に見た,高峰譲吉の「さくら、さくら 〜サムライ化学者・高峰譲吉の生涯〜」以来になる。これは主演が加藤雅也だったのか。映画だと短時間に最小限必要なエピソードを網羅しようということになって,どうしても物語がぎくしゃくする。やはり,人物の歴史を軸にする場合はNHK大河ドラマくらいの時間が必要なのかもしれない。

映画「キュリー夫人」の場合は,ピエールとマリーの出会いから始まり,ラジウムの発見,降霊会への参加,ノーベル賞,ピエールの死,ポール・ランジュバンとの恋愛騒動,第一次世界大戦,娘のイレーヌなどのエピソードが重ねられ,そこに,加速器によるガン治療,ヒロシマの原爆,第二次世界大戦後の原爆実験,チェルノブイリ原発事故などのシーンが挿入されていた。

放射能の発見は授業で取り上げたところだったので,もう少し新しい情報が得られるかと思ったが,(1) ピエールが開発して研究の切り札になったピエゾ電位計の実体イメージ,(2) ピエールが降霊会にはまっていたこと,(3) マリーとイレーヌが第一次世界大戦中にレントゲン車を作って治療にあたったこと,などか。なお,1903年のノーベル賞授賞式には夫婦揃って参加していないようだ。

20年ほど前に,黒柳徹子主演で「喜劇キュリー夫人」という舞台を梅田でみたが,こちらの方はもっとマイルドな味付けだった。いずれの場合も,3トンのピッチブレンドを大釜で炊いてポロニウムやラジウムを生成する過程が印象深く描かれていた。キュリー夫妻の実験室も,ほとんど化学の実験室として描かれていた。まあ1911年にはノーベル化学賞を受賞したのだからそうなのかもしれない。

なお,ピエールマリー・キュリーとその娘夫婦のノーベル賞受賞理由はそれぞれ次のようになっていた。

The Nobel Prize in Physics 1903 was divided, one half awarded to Antoine Henri Becquerel "in recognition of the extraordinary services he has rendered by his discovery of spontaneous radioactivity", the other half jointly to Pierre Curie and Marie Curie, née Sklodowska "in recognition of the extraordinary services they have rendered by their joint researches on the radiation phenomena discovered by Professor Henri Becquerel"

The Nobel Prize in Chemistry 1911 was awarded to Marie Curie, née Sklodowska "in recognition of her services to the advancement of chemistry by the discovery of the elements radium and polonium, by the isolation of radium and the study of the nature and compounds of this remarkable element"

The Nobel Prize in Chemistry 1935 was awarded jointly to Frédéric Joliot and Irène Joliot-Curie "in recognition of their synthesis of new radioactive elements"



写真:ピエゾ電位計とマリー&イレーヌ・キュリー(Wikipediaから引用)

[1]キュリー夫人(石原純)
[2]ラジウム発見100年(環境研ミニ百科)

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