ウィーンの変位則は,黒体放射のエネルギーがピークとなる電磁波(光)の波長$\ \lambda_m \ $と黒体の温度$\ T \ $との間に $\lambda_m = \dfrac{b}{T}$という反比例の関係があるというものだ。例えば,高温の物体からの電磁波は短波長側にシフトすることになり,溶鉱炉中の鉄の色は温度が上昇するとともに,赤から黄に変化する。温度の低い星は赤く,温度の高い星は青いのもこのためだ。
古典電磁気学と熱力学だけから導いた黒体放射のスペクトルは,レイリー・ジーンズの法則を満たすが,これはウィーンの変位則を満足しない。黒体放射スペクトルの短波長側によく当てはまり,ウィーンの変位則が成り立つのはヴィーンの放射法則だ(慣用的に同じ人名をウィーンとヴィーンで使い分けるのはなんとかならんのか)。これら両者を統合して電磁波の全波長領域のスペクトルを再現したのがプランクの法則で,量子の発見につながった。
授業の演習課題で,プランクの法則からウィーンの変位則を導く問題をつくったところ,面倒なことに,指数関数を含んだ非線形の方程式がでてきた。そういえば,ランベルトのW関数というのは見覚えがあった。しかたがないので,ヴィーンの法則に置き換えたが,こんどは,振動数$\ \nu \ $の関数にするか,波長$\ \lambda \ $の関数にするかで,ピークは変わってくる。$\nu_{\rm max} \cdot \lambda_{\rm max}=c\ $が満たされないのを見落としていた。
そういえば,昔,岩波の「現代物理学の基礎」で量子力学の勉強を始めようとしたときに,黒体放射の式がよくわからずにいきなり挫折したことを思い出した。$d\nu = -\frac{c}{\lambda^2}\ d\lambda \ $を忘れてはいけない。
(1) ウィーンの放射法則
$u(\nu) = \dfrac{8\pi h}{c^3}\nu^3 e^{-h\nu / kT}$より,$\dfrac{du(\nu)}{d\nu} =0 \rightarrow \nu = \frac{3kT}{h}$
$w(\lambda) = \dfrac{8\pi hc}{\lambda^5} e^{-h / kT \lambda}$より,$\dfrac{dw(\lambda)}{d\lambda} =0 \rightarrow \lambda = \frac{hc}{5kT}$
(2) プランクの法則
$u(\nu) = \dfrac{8\pi h}{c^3}\nu^3 \dfrac{1}{e^{h\nu / kT}-1}$より,$\dfrac{du(\nu)}{d\nu} =0 \rightarrow (3-x) e^x = 3 \quad (x=\frac{h\nu}{kT}=2.821= 3. + {\rm ProductLog[-3 E\hat{}-3]})$
$w(\lambda) = \dfrac{8\pi hc}{\lambda^5} \dfrac{1}{e^{h / kT \lambda}-1}$より,$\dfrac{dw(\lambda)}{d\lambda} =0 \rightarrow (5-x) e^x=5 \quad (x=\frac{h}{kT\ \lambda}=4.965=5. + {\rm ProductLog[-5 E\hat{}-5]})$
図:ランベルトW関数の例,$(n-x)e^x=n$の逆数の図($n=3,5$)
[1]物理授業におけるランベルトのW関数の活用法(伊東正人)
0 件のコメント:
コメントを投稿