フリッシュ=パイエルズの覚書からの続き
比較のために,DeepLの助けを借りて訳出してみた(ときどき重要な部分がとばされているので注意が必要)。核分裂連鎖反応に必要なウランは数トンであるという知識の段階で出された手紙である。
連鎖反応は,1933年にレオ・シラード(1898-1964)によって初めて理論的に予言され,1939年に,フレデリック・ジョリオ=キュリー(1900-1958),エンリコ・フェルミ(1901-1954),シラードの3グループによって実験的に検証された。その直後の手紙である。
村上陽一郎が,そのマッチポンプ的な振る舞いに目をつぶっておかしいくらいに美化していたシラードだが,藤永茂が指摘していたように,彼の複合的な野心というものがもろに表現された手紙だと思う。残念ながら,その大半は空振りに終ってしまったが,原爆への道は開かれた。
アルバート・アインシュタイン
オールドグローブ・ロード
ナッソーポイント
ロングアイランド州ペコニック1939年8月2日
F. D. ルーズベルト
アメリカ合衆国大統領
ホワイトハウス
ワシントンD. C.
閣下
エンリコ・フェルミとレオ・シラードの最近の研究は,原稿で私に伝えられましたが,私は,ウランという元素が近い将来,新しい重要なエネルギー源になる可能性があると予想しています。このような状況の発生は,米国政府の側で注意深く観察し,必要であれば迅速な行動をとることを要求しているように思われる部分があります。そこで私は,以下の事実と勧告に注意を喚起することが,私の義務であると考えます。
この4ヵ月の間に,フランスのジョリオ,アメリカのフェルミとシラードの研究により,大量のウランで核連鎖反応を起こすことが可能であることが判明しました。これにより,膨大なエネルギーと大量のラジウム元素のような放射性物質が生成されます。現在では,これが近い将来に実現できるということはほぼ確実と思われます。
この現象は,爆弾の製造にもつながり,極めて強力な新型爆弾が製造される可能性があります(絶対ではありませんが)。この種の爆弾を一つ,船で運んで港で爆発させれば,港全体とその周辺の領土の一部を破壊することは大いに可能です。しかしながら,このような爆弾は,空輸するには重すぎることがわかっています。
米国には,中程度の量の非常に質の悪いウランの鉱石しかありません。カナダと旧チェコスロバキアに良質の鉱石がありますが,ウランの最も重要な供給源はベルギー領コンゴです。
このような状況を考えると,米国で連鎖反応を研究している物理学者グループと米国政府との間に何らかの恒常的な接触を維持することが望ましいと思われるでしょう。これを実現する一つの方法は,あなたの信頼が厚く,おそらく非公式な立場で奉仕できる人物にこの仕事を任せることかもしれません。その人の任務は次のようなものです。
a) 政府諸官庁に働きかけ,今後の開発状況を知らせるとともに,米国へのウラン鉱石の供給確保という問題に特に注意を払いながら,政府の対応について勧告を行うこと。
b) 現在,大学の研究所の予算の範囲内で行われている実験的研究を,資金が必要であれば,この目的のために寄付をする意思のある個人との接触を通じて,また,おそらく必要な設備を持つ産業研究所の協力を得ることによって,加速すること。
ドイツは,占領したチェコスロバキアの鉱山からのウランの販売を実際に停止したと聞いています。ドイツのヴァイツゼッカー国務次官の息子がベルリンのカイザーヴィルヘルム研究所に所属しており,そこでアメリカのウランに関する研究の一部が繰り返されていることを考えると,ドイツがこのような早い行動を取った理由が理解できるかもしれません。
本当にありがとうございました。
アルバート・アインシュタイン
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