2022年2月9日水曜日

乗法的積分

新型コロナウィルス感染症のオミクロン株の感染者数を見ている。かつては,実行再生産数が話題になることが多かった。いまは,前週との感染者数の比較によって増加や減少の傾向が議論されている。その場合でも,指数関数的(等比級数的)な振る舞いかどうかをみるには,曜日による変動を除くために,前週の感染者数との比率が重要になる。

例えば,東京と大阪の各曜日の前週に対する感染者数比率の相乗平均を週ごとに計算してプロットすると次のようになる。増加率のピークで6倍になったのは1月の初旬である。この比率は1.0に近づいているので,感染者数のピークアウトがそろそろ視野に入ってきた。


図:東京・大阪の感染者数前週比の推移

この比率関数のモデル化が容易ならば,逆算して一日当たり感染者数関数を求めることができる。もっとも,大阪維新によって破壊されている行政統計は出鱈目なので,そもそも意味があるかという問題は残るのだが。

さて,増加比率$r(t)$からもとの関数$f(t)$を求める問題を$f(t+h)/f(t) =r(t)^h$と定式化した。$\lim h \rightarrow 0$で両辺は1になる。この両辺の対数をとると,$\log f(t+h) - \log f(t) = h \log r(t)$ であるから,$\lim_{h \to 0} \dfrac{\log f(t+h) - \log f(t) }{h} = \dfrac{d}{dt} \log f(t) = \log r(t) $ が得られる。

これから,$\log f(t) = \int_c^t \log r(t') dt'$ となり,$f(t) = e^{\int_c^t \log r(t') dt'}$ が得られる。適当な関数を使って試してみたが,比率のピーク関数を時間方向に対称にとれば,感染者数の関数は対称ではなく,後方に広がるといった程度の定性的なイメージしか得られなかった。

ところが,こうした関数の比率についての解析的な議論は,乗法的積分のうちの幾何積分としてすでに知られていることがわかった。数列の和から普通の積分が導かれるように,数列の積から乗法的積分が得られるのだった。なるほど,数学の奥は深い。

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