2022年2月20日日曜日

スターリングの公式

 d次元球の体積からの続き

統計力学をはじめるには,スターリングの公式が必須なので菊池誠のテキストで復習する。

ガンマ関数$\Gamma(x)$は,階乗の実数への拡張と考えることができる関数である。$x$が自然数$n$のときに$\Gamma(n+1)=n!$を満足し,次の積分で定義されている。

$\Gamma(x)=\int_0^\infty t^{x-1} e^{-t} dt ,\quad \Gamma(1)=1,\quad  \Gamma(1/2)=\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2} dx = \sqrt{\pi}$

ここで,階乗の雰囲気をただよわせる漸化式が成り立つ。$\Gamma(x+1) = \int_0^\infty t^x e^{-x} dt = \bigl[ (-1) t^x e^{-x}\bigr]_0^\infty + \int_0^\infty x t^{x-1} e^{-x} dt = x \Gamma(x)$

引数$x$に,後にアボガドロ数オーダーの非常に大きな数になる予定の$N$を入れてみる。

$N!= \Gamma(N+1) = \int_0^\infty t^{N} e^{-t} dt = \int_0^\infty t^{N} e^{N\log t -t} dt $

指数関数の肩の項$N\log t -t$を微分して極値を探すと,$t=N$で極大値が$N\log N -N$となる。そこで,この$t=N$の周りで$N\log t-t$をテイラー展開して2次の項まで残す。

$N\log t-t \simeq N\log N - N -\frac{1}{2N}(t-N)^2$

指数関数の肩にある$t$の2次の項をほとんど寄与がない積分領域である$\int_{-\infty}^0$まで拡張した上でガウス積分すると,$N!= \int_0^\infty t^{N} e^{N\log N -N -\frac{1}{2N}(t-N)^2} dt = N^N e^{-N} \int_{-\infty}^\infty e^{-\frac{1}{2N}(t-N)^2} = \sqrt{2\pi N} \bigl( \dfrac{N}{e}\bigr)^N$

これから,スターリングの公式,$\log N! = N \log N -N + \log  \sqrt{2\pi N}$ が得られる。

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