2019年8月28日水曜日

ニューヨーク公共図書館

平日に妻と行く映画シリーズその2。制限時間30分で,梅田スカイビルから中津まで走り,阪急宝塚線一駅のって十三の第七芸術劇場に向う。開演5分前に到着し,整理番号は56と57。平日このテーマにもかかわらず,結構お客さんが入っている。12:00から15:35の長丁場なので途中に休憩が入る。

さて,タイトルは「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス(Ex Libris: The NewYork Public Library)」で,フレデリック・ワイズマン監督の2017年米国ドキュメンタリー映画(205分)である。3時間を越えるドキュメンタリーってどんなものかと思ったが,妻の予想だったシックでクラシックな建物を中心とした紹介などではまったくなかった。

ニューヨーク公共図書館(NYPL NewYork Public Library 1895-)は,国,州,市などの行政が設置した図書館ではなく,カーネギーの寄付などをもとにした私立(だがパブリック)の図書館であり,ニューヨーク市からの公的資金と民間からの寄付によって運営される。マンハッタン,ブロンクス,スタテンアイランドに92の分館を設置し,5300万冊の図書・資料を所蔵し,年間350万人が利用している。クイーンズとブルックリンには運営が別組織である公共図書館がそれぞれにある。

映画は,レファレンスサービスでの電話のやりとりから始まったが,1つのエピソードが長い。しかもほとんどが言葉や対話の積み重ねだ。図書館のプログラムで社会的な問題についての話をする講師や,芸術的な対話の数々。黒人文化に関するショーンバーグ研究図書館も大きなテーマとして,黒人差別の問題と関って取り上げられていた。また,NYPLの運営にかかわる委員会での議論がたびたび登場する。全編の3割以上を占めていたのではないか。予算獲得の問題。インターネットアクセスの問題。図書館の教育機能にかかわる問題。ホームレスへの対応の問題。などなど,多様な問題についての議論の様子が克明に記録されている。日本のオリンピック委員会も見習ってほしい。

予想とは異なっていたが,とても楽しく3時間半を過ごすことができた。さまざまな病巣をかかえる国であるにしろ,民主主義の基本となる言葉がしっかりと生きている場所がある安心感。翻って,日本の政治家やマスコミやTV知識人の細切れで歴史を無視した表層的な議論の数々を対比させたとき,なんともいえない虚脱感に襲われる。

あるいは,大阪では,児童図書館や公共的な文化施設が破壊されただけでなく,公共交通,病院,公園,大学が次々とターゲットとなり,公共から営利への流れができている。そして,それを推進する政治勢力がマスコミによって擁護され,さらに多くの市民・住民の支持を得ていくという,公共性の喪失の危機が進行している。

この映画は,民主主義の本質を支える言葉(Speech)の映画だった。

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