あいちトリエンナーレ2019は,愛知県で開催される現代美術の国際芸術祭である。2010年から3年おきに開催されており,今回が4回目になる。芸術監督はツダるでおなじみの津田大介。2015年1月18日〜2月1日に東京練馬のギャラリー古藤で「表現の不自由展」という企画が開催された。これまで,組織的な検閲や忖度によって展示を拒否あるいは撤回された作品を集めたもので,澤地久枝さんのトークなどもあった。
あいちトリエンナーレ2019では,この「表現の不自由展」の続きとして,「表現の不自由展・その後」が企画された。慰安婦問題を契機とする少女像,昭和天皇の肖像を燃やす映像,安倍政権への警鐘を掲げるかまくら等を展示していた。これに対して抗議や脅迫が殺到するとともに,松井大阪市長に教唆された河村名古屋市長や,菅官房長官の企画に対する否定的発言が,抗議・脅迫側を支持して煽っために,企画は8月3日に中止に追い込まれてしまった。
日本には,安倍政権の中核に存在する極右的(含むネトウヨ)な見解に反対する表現の自由(特に戦時の性暴力や徴用や虐殺等に関して)の余地が極めて乏しいことが改めてはっきりと可視化されてしまった。また,それを補完するように,脅迫側の存在や警察による不対応を所与の前提として出典企画側の非をとなえる江川紹子のような言論が幅をきかせている。表現の自由をあからさまに攻撃することはまずいと考える手合は,一定の集団に不快を催す企画を公金でまかなうことについて異を唱えるという作戦に出ている。
なお,表現の自由は無制限・無限定に認められるとは考えない。生存に関る人権と抵触する場合は認められるべきではないと思う。つまり,国際人権規約の次の条項が議論の出発点になるということ。その上で今回の抗議・脅迫・弾圧側にはなんの理も認められない。
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自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約 B規約)
第十九条
1 すべての者は,干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は,表現の自由についての権利を有する。この権利には,口頭,手書き若しくは印刷,芸術の形態又は自ら選択する他の方法により,国境とのかかわりなく,あらゆる種類の情報及び考えを求め,受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって,この権利の行使については,一定の制限を課すことができる。ただし,その制限は,法律によって定められ,かつ,次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全,公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
第二十条
1 戦争のためのいかなる宣伝も,法律で禁止する。
2 差別,敵意又は暴力の扇動となる国民的,人種的又は宗教的憎悪の唱道は,法律で禁止する。
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[1]自由権規約委員会 一般的意見34(仮訳)(日本弁護士連合会)
[2]あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」をめぐって起きたこと−事実関係と論点の整理(明戸隆浩)
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