松崎有理(1972-)の名前は,書店の本棚のシュレーディンガーの少女で見かけている。東北大学理学部(生命科学がバックグラウンドという話なのでたぶん生物学科?)の出身のエンタメ(SF)作家である。
タイトルが面白かったので,Kindleで入手してみた。短編集であり,6つの作品が収録されている。そのうち,山手線が加速器に転生する話は2編あるが,それぞれの話は独立だが,一つの仮想歴史世界線上(経済学者の目から見た人類史:行方ユクエ)に位置づけられている。
パンデミックによって,東京から人間が退避してしまった世界で,山手線が,周長34kmの自律運転ミューオンコライダーに,立川−三鷹−新宿の中央線が,全長13km+14kmの自律運転電子陽電子リニアコライダーに転用されたという話だ。これに,高度2000kmの地球周回軌道上の基線長100mのレーザー干渉計宇宙アンテナ自律型観測施設(宇宙重力波望遠鏡)が加わる。
この2編はちょっと状況設定の説明だけで話が空振りに終ってしまい消化不良だった。それ以外の話は軽いけれど,サイエンスの背景があればそこそこ楽しく読める。食べ物の描写と子どもへの視線が印象的だ。あとは,フェルミのパラドックスへの強い思い入れかな。仮想歴史中には,ChatGPTに相当するAIアシスタントが2025年に登場していて,その名称がモラベックである。ハンス・モラヴェックは実在の人物であり,モラヴェックのパラドックスで有名らしい。知らんかったわ。
写真:山手線が転生して加速器になりました。(光文社文庫の書影から引用)
[2]ハンス・モラヴェック(Wikipedia)
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