英語版Wikipediaによれば,電子の異常磁気能率は,$a_e = \dfrac{g_e - 2}{2} $として以下のとおりであり標準模型(Standard Model)を用いた理論計算値と実験値に矛盾はなく,有効数字10桁の範囲で一致している。
\begin{equation} \begin{aligned} a_e^{SM} &= 0.\ 001\ 159\ 652\ 181\ 643 (764) \\ a_e^{exp} &= 0.\ 001\ 159\ 652\ 180\ 73 (28) \end {aligned} \end{equation}
一方,Fermilabの最新データを加味したミューオンの異常磁気能率は,$a_\mu = \dfrac{g_\mu - 2}{2} $として次のようになっている。
\begin{equation} \begin{aligned} a_\mu^{SM} &= 0.\ 001\ 165\ 918\ 10(43) \\ a_\mu^{exp} &= 0.\ 001\ 165\ 920\ 61(41) \end {aligned} \end{equation}
これは,理論値と実験値が $4.2\sigma$もずれていることを示しており,標準理論の綻びを示す重要な実験的データが明らかになったという論調が見られた。
しかし,質量の大きなミューオンの理論計算には,量子電磁力学による相互作用の計算方法が確定しているレプトンだけでなく,ハドロンを構成するクォークやグルーオンの粒子・反粒子対の効果が,不確定要素として現れてくる。これに対しては,最新の格子QCDの計算が,理論値と実験値の食い違いをかなり縮めるという議論もあるため,まだどうなるかわからない。
[1]ミュオン異常磁気能率 g–2 の超精密測定(三部勉)
[2]The anormalous magnetic moment of the muon in the Standard Model(arXiv:2006.04822v2 )
[3]First results from Fermilab's Muon g-2 experiment strengthen evidence of new physics (Fermilab)
[4]Leading hadronic contribution to the muon magnetic moment from lattice QCD(arXiv:2002.12347)
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