奥泉光(1956-)の「ビビビ・ビ・バップ」 を読了。奥泉光は「石の来歴」で1994年の芥川賞を受賞している。受賞後に出版された文春文庫で読み今一つピンとこなかったが,どこか惹かれるものがあって結局あれこれと7冊買ってしまっていた。「葦と百合」,「ノヴァーリスの引用」,「バナールな現象」,「グランド・ミステリー」,「鳥類学者のファンタジア」,「モーダルな事象」,「神器」である。「雪の階」も読みたいけれどまだ買っていない。
彼は,ミステリーやSFの色彩の濃い作品も書いているが,特に「ビビビ・ビ・バップ」はSF+ミステリのど真ん中だった。大森望の解説から引用すれば,
AI,仮想現実,アンドロイド,テレロボティックス,人格のデジタル化,コンピュータ・ウィルスなど,いまどきのSFネタを全部盛りにした上に,古今東西の実在有名人をよりどりみどりにトッピングする,ぜいたくきわまりない近未来冒険SFエンターテインメント小説
というわけだ。また,これは「鳥類学者のファンタジア」 のフォギーの物語の続編にもなっている。
これまでに読んでいた7冊のうちで最も印象深かったのが,「鳥類学者のファンタジア」のおまけの部分である「終曲,ないしはニューヨーク・オプショナル・ツアー」の章だ。主人公達が時間を超えて1945年のニューヨーク,ハーレムでジャズセッションをするというものであり,ジャズでフルートを演奏する奥泉光の趣味が濃厚に反映されていた。そしてこの著者の気分が「ビビビ・ビ・バック」の主題に見事に引き継がれていた。
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