2021年2月13日土曜日

ラジオの身体

 YouTubeで瀬戸弘司が「ラジオの身体」というワードで語っていた。瀬戸弘司のYouTubeは装飾過多なのでやや苦手だったのだけれど,ドリキンとの対談を見てから若干印象が変わった。瀬戸弘司は福井市出身で,藤島高校を出て東工大に進んだ劇団員だ。ユーチューバとしても2010年から活動している。ちなみに,同じ頃から活動しているユーチューバーのかずさん(カズチャンネル)も福井市在住で散財三兄弟の一角を構成している。

瀬戸弘司が,最近のYouTubeのトレンド変化を特徴づけるキーワードとして使ったのが「ラジオの身体」である。彼が舞台出身であって「舞台の身体」を持っていることに対する比較とした表現だ。ラジオの身体性は,ポッドキャストが2005年に登場してしばらく後,2010年前後に話題になりはじめ,日本のメディア研究者でいえば飯田豊や水越伸なども取り上げている。もちろん,瀬戸の着想はこれらとはまったく独立なものだと思う。

これとは別に,今年になってClubhouseが音のSNSとして流行をはじめた。Clubhouseについては様々な捉え方があるが,その中には音声メディアとしてラジオと比較したものもでてきている。インターネット空間にジャックインしながら生活するという状況を考えたときに,視覚と聴覚がどのようにその時間を専有されつつ,現実世界と切り結んでいくかというのは今後の議論の重要な鍵となるかもしれない。まあ,いきなりgoogle glassというわけには行かなかったわけだけれど。

2021年2月12日金曜日

ライブ・アンダー・ザ・スカイ

 チック・コリアが 79 歳でなくなったというニュースが飛び込んできた。MacBook Proに入っている リターン・トゥ・フォーエヴァーを聴いて追悼している。ライト・アズ・ア・フェザーもある。

1979年の7月25日(水)に大阪の万博記念公園特設屋外会場(エキスポランド側だった)で開催された,ライブ・アンダー・ザ・スカイには,チック・コリアも参加していた。調べたが,東京公演(雨の田園コロシアム)の話はみつかるが,大阪公演の情報はインターネット上にほとんどない。どういうこと。1979年はドクター2年のときで,吹田キャンパスの阪大核物理センターの大型計算機でひと仕事済ませた後の夕方,大切なチケットを手に,一人で歩いて会場に向かった記憶がある。

V. S. O. P. クインテット(ハービー・ハンコック,フレディ・ハバード,ウェイン・ショーター,ロン・カーター,トニー・ウィリアムス)と,ハービー・ハンコック=チック・コリアのデュオだったはずだ。チック・コリアのピアノも良かったが,その日一番凄かったのは,夕暮れの夏空に吸い込まれていくフレディ・ハバードのトランペットの音だった。

終演後のアンコール時の舞台でチック・コリアが踊っていたのも印象的だった。バスで千里中央・蛍池経由で帰宅した。


2021年2月11日木曜日

工業小学

 天野皎が教職を辞してまもなくの1882年に著した小学校向け教科書の一つに「工業小学(東京 晩翠書楼開板 明15.7)」がある。工業は正式には小学校の教科になっていないので,あくまでも一つの試みだと思う。国立国会図書館のライブラリでデジタル化版が公開されていのは巻一だけであり,巻二と巻三はあちこち探したけれど見つからない。

なにが書いてあるのか知りたかったので,目次と緒言と第一篇工業の総論,第二編原動力を写経してみた。漢字を簡約してカタカナをひらがなに変換しただけだが,読めない字があったので正確ではないかもしれない。それでも明治初期の小学生はこれが読めると想定されていたわけだ。この時期の教科書には句読点がないのが普通なのか。

19世紀末の日本の工業とは,蒸気力・水力などを原動力とした繊維産業と手工業(工業以前かもしれない)だけだった。いまではほとんどが伝統工芸として扱われる分野だ。自分は,1958年の小学校学習指導要領の理科に基づいた教科書で育った世代だが,これも当時の昭和中期の工業(産業)を背景としたかなり具体的な教材から成り立っていたのでどことなく親近感を覚える「工業小学」だった。

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天野皎 著  工業小学  東京 晩翠書楼開板 明15.7
工業小学目次
巻一
 第一編 工業の総論
 第二編 原動力
 第三編 工業制作及び製糸 (繭 糸 等)
 第四編 絹布 (絹 羅 錦 綺 綾 紬 甲斐絹 精好 金襴 緞子 繻子 綸子 縮緬 天鵞絨 □珀 等)
 第五編 綿糸,綿布 (雲齋 飛白 帆木綿 紋羽 唐桟 双子織 花布 寒冷紗 等)
 第六編 麻,麻布 (麻糸 幣 苧 布 飛白 亜麻布 芭蕉布 葛布 等)
 第七編 毛布 (羅紗 アルバカ フラネル 莫大小 等)
 第八編 染料,顔料,漂白剤 (青 黃 赤 紅 緑 紫 格羅爾 加爾基 等)
巻二
 第九編 製紙 (和紙 奉書 美濃紙 洋紙)
 第十編 漆器 (仮漆 ペンキ 等)
 第十一編 蒔絵
 第十二編 陶器 (七宝器 各国陶器 等)
 第十三編 玻瓈 (各色玻瓈 玻瓈器 等)
巻三
 第十四編 玉工 (硯 目鏡 玉 瑪瑙 水晶 珊瑚 金剛石 宝石 等)
 第十五編 彫工 (木偶 石像 玉石 玻瓈 木竹 金 銀 銅 骨 牙)
 第十六編 印刷 (木版 銅版 活版 鉛版 製本 等)
 第十七編 鉄工 (刃物 農具 家具 等)
 第十八編 金銀銅工 (飾屋 時計師 等)
 第十九編 建築 (家屋 橋梁 畳 建具 等)
 第二十編 家具 (桶 膳 椀 等)
 第廿一編 各種製造 (曹達 硫酸 塩 鍍金銀 鉛筆 墨汁 等)

緒言

一 本邦未だ工業書の小学に適当するものあるを見ず然れども工事たる甚浩大なるものにして且難事なれば児童の容易く之を了解すべきものにもあらず故に本書は勉めて其大要を挙ぐ決して高尚の域に渉るに非ず

一 児童の心性各種の作用其身体発育の時機に従ひ強弱一ならず故に本科の如きは其発育の能く此の難事に堪ふるに及びて之を授くべし彼米国の読本の如きも稍く高尚なる各学科を畢へて後之を教ふるの趣向なり児童の薄弱なる知力に難事を授るは猶駑馬に重荷を負はしむるに同じく却て発育を妨害するものなれば教師の尤も恐るべき処なり

一 此書は毎週一二時間位の科程にて三個年に畢るべき見込を以て編集セリ故に一巻を一年に畢へ三巻にして全備せり因て第一年より順次に児童の知力の度に従ひ強弱を量り其難易を斟酌せり是小学科程書を編する一大要訣なればなり

明治十五年三月 編 者 識

工業小学巻之一   天野皎 著

第一編 工業の総論

工業とは広き事にして今日人間の生活する所にて之を言はば衣食住とも皆工業を経ざるものなし衣は始めに糸に続き次に織り或は染め畢りに裁ち縫ひて始めて人の用となる此の用となるまでは幾許の手を経るや細かに之を数えなば指も屈するに遑まあらさるべし食といへども其食ふべきものは工を経ざるも其膳椀鍋釜箸茶碗包刀俎等に至るまで皆工業にあらざるなし又住居は言ふまでもなく悉く工業に非ざるなし

是を以て工業の事たる種々にして一々に之を習ふ能はざれども人として其大要を知らざる可らず工業の巧拙は其国の強弱貧富に拘はるものにして工業の盛大なる国に非ざれば商業も農業も進まず農商共に進まざれは何によりて富を致さんや国富まざれは何によりて海陸の軍備を盛大にするを得んや軍備盛大ならされは外国の侮を受け其人物は欺かはしき恥辱を承り遂には一国の滅亡に及ぶべし工業の関係大なりと云ふべし

工業は斯くまで一国の興敗存すにも係はる程のものなれば容易き事業にはあらじ故に之を習ふにも種々の術を知らざれば成る能はざるなり先第一に数学幾何化学理学画法を学ばざれば何れの工業も学ぶ能はず例へば大工の雨樋を作るに其屋根の面積を積もり其雨の量を測りて大小を定めざれば狭き屋根に大なる樋は空しき費にて広き屋根にて樋の小なる時は溢るるの患あり之を知るは数学なり又堅木細工師の種々の形ちの盆などを造るとき或は五角六角に木を截るは幾何の術に因らざれば精密ならず染工の善き色を染めんと欲するは化学なり種々の雛形を模し或は建築図等を書くは画学なり理学は何れにも広く渉るべき学科なり

工業は何事に因らず人力を省きて其品質を精良にするを第一とす故に此の力を省くに付き種々の工夫あり之を原動といふ原動とは一つの動力を生ずる所にして之を四方に移して人力を省く其種類三ツあり蒸気力水力風力是なり然れども極めて精良なる物に至りては悉く人力にあらざるなし今此の三原動より説き示すべし

第二編 原動力

原動力とは器械を運転するの本にて即ち蒸気水風は之を起すの本なり此の内広く行はるるは蒸気にして之に次くものは水なり風は其力弱けれは十分なる器械等を用うるを得ず水は何処にもあるものならず能く其水利を得ざれば之を使用する能はず若し其水利を得る時は費用少なきを以て甚利益あり蒸気は水風と異にして何処にても其気罐を装置するを得れは其費用の多きも勢ひ之を用うるもの多し又近来石炭瓦斯を以て蒸気に代ふるの発明あり

蒸気の理は甚解し難きものなれは理学器械学等にて能く研究すべし其理たるは水を沸騰して華氏の験温器の二百十二度に昇るときは変して蒸気となる此の蒸気は反発と膨張の性あるものなれは之を凝縮して其反発膨張する時に其力を追々に器械の緒部に伝ふるに過ぎず然れども其器械は大小種々あり又簡易なるものあり極めて繁雑なるものあり

水を以て器械を運転するは古へよりの発明なれとも近来は愈其器械等も精巧になりて紡績織物其外材木を截る等に用う是を水車といふ水車は車の上より水を注き掛くると車の中程に注き掛くると車の下を水の流過するとによりて其力に強弱あり又近来の発明なる渦旋水車といへるは車を平面に置き其車の外面を覆ひ其中に上ヨリ水を注き容るれは車輪に触れて之を運転する仕掛にて其力甚強し近来は追々に此の水車を用ふるものあり此水車は水源さへ高けれは水量多からすして強大の力を生すべし

風車は前にもいへる如く其力弱きを以て十分に器械を運転するの用をなさずといへども其力を多く要せざる所には之を用ゐは費用少なくして利益あるへし是を風車という右に示せる蒸気水車風車等は甚鮮し難き理あれは能く理学等にて研究すべし此の諸原動の力を量るは皆馬力と称して其力の強弱を算す

故に盛大なる器械を運転するには何れも数百馬力のものを用う若し人力にて為す時は千人二千人の職工に非ざれは為す能はざるものも蒸気又は水車等を用うれば僅か数人にて其工事を畢るべし

又人力を省くのみならす器械にて製する物は大小精粗とも一様にして其形ちに長短厚薄なく幾万を製するも差異なし且又人力にては数日を費すものも僅か一二時に成し遂くるの利あり



2021年2月10日水曜日

鐵腕 天野皎(あきら)

 牧野由里さん(美術教育)と有賀暢迪さん(科学史)が,「教育掛図《小学用博物図》の研究 ―天野皎と明治初期大阪の教育・出版文化―」という論文を出していて,有賀さんがTwitterで紹介していた。

天野皎(あきら)(1851-1897)[1]は,博物学を専攻した東京師範学校の一期生として1873年に卒業した。その後,官立の大阪師範学校(1873-1878)の教師となっている。やがて奈良五條師範や兵庫神戸師範の校長を経て,1878年には教育職を辞している。以下,1880年,大阪商法会議所の書記,1881年,大阪府御用掛・大阪測候所長,1885年,府立大阪博物場長および教育博物館長,1891年,大阪朝日新聞社編輯部,1897年,47歳で死去となっている。

天野が著した小学校の教科書や有賀さんらが議論している教育掛図(国立科学博物館で見つかった新出資料)についてはさきほどの論文に譲るとして,大阪つながりで近隣の大学の附属図書館に収集されている資料がないか調べてみた。

1982年に雄松堂書店から復刻された,明治初期教育稀覯書集成 / 唐沢富太郎編集「下等小學教授法略解 乙」と「博物小学金石篇」の2冊が,京都大学,京都教育大学,大阪大学,大阪教育大学,奈良教育大学の各附属図書館に収蔵されていた。CiNiiでは,アマノ・コウとかアマノ・キヨシになっているが違うんじゃないの。さらに,京都大学には,「商法會議所要覽(天野皎編 -- 鹿田靜七,1880)」,「入清日記その他 (鐵腕天野皎著;天野徳三編纂 -- 壺外書屋,1929)」の2冊があった。天野の号が「鐵腕」なのである。

一方,大阪教育大学には先の2冊の他に,「小學博物書天野皎譯 ;動物學第2,動物學第3 -- (天野皎,1877)」「師範學校掛圖童子訓 5巻 /井出猪之助, 天野皎輯 ; 巻之1 - 巻之5(文敬堂, 1875)」の2冊の教育書が所蔵されていた。後者は実際には,巻之2巻之4巻之5だけがあって,これらはデジタル資料として公開されている。

なお,国立国会図書館のNDLオンラインを調べると,こちらには17件の資料がみつかった

[1]「大臺原紀行」の作者である天野 皎あきらについてき坊のノート

【天野皎】(1851~1897)天野氏、名は皎、幼名祐太郎、別に鐵腕と号す、江戸の人、世々徳川幕府に仕ふ、幼より学を好みて業を長谷部甚弥に受け又書法を石川潭香に学ぶ、明治6年東京師範学校を卒業して大阪師範学校本科教師を命ぜらる、後ち奈良県五条師範学校校長・神戸師範学校校長等を歴任し、13年大阪商業会議所書記となる。14年大阪府御用掛となり大阪測候所長・大阪商業講習所長等を兼ね、明治18年「府立大阪博物場長」に専任せらる。是に於て専ら心を美術の奨励に致し、兼ねて薀蓄せる智職を以て「美術館」を創設す。又率先唱導して城南今宮村に「大阪商業倶楽部」の開設を企画する等大に浪華文化の発展に力を尽くせり。24年「大阪朝日新聞」に入りて編輯の事務に従い、25年臨時博覧会事務局監査官となり、26年閣龍世界博覧会事務の為に米国シカゴに赴き其博覧会の審査官に任ぜらる。27年日清戦役の起るや第ニ軍に従うて能く其任務に務む。30年遂に朝日新聞社を辞し、更に日本製鋼株式会社長となり、幾もなく病を獲て武庫郡住吉村の客舎に歿す。人と為り堅忍剛毅博学宏識、能く詩文を属し尤も書法に長ず。殊に美術に関する造詣深く斯道の為に貢献する所蓋し鮮少ならず、嗣子徳三嘗て職を大阪朝日新聞社に奉ぜり。著書:入清日記その他。歿年:明治30年10月16日47歳。(大阪人物誌続編より)

2021年2月9日火曜日

たまごかけごはん

 昨日のNHKの逆転人生で,丹波にある卵かけご飯のお店をはじめた人が紹介されていた。番組中に検索してみると,いくつかそれらしい店があった。こんなとき普通はアクセスが殺到してサーバーがダウンしてしまうところだが,そんなこともなく簡単に閲覧できてしまった。

(1) 但熊卵かけご飯(兵庫県豊岡市但東町)・・・逆転人生の西垣源生さんのお店

(2) たまごかけごはん玉の助(兵庫県篠山市今田町)・・・ウェブサイトがきれい

(3) 食堂かめっち岸田吟香(岡山県美咲町)・・・発案者の生地

そんなわけで今朝の朝食は卵かけご飯になった。


写真:玉の助ホームページより引用(2021.2.10)



2021年2月8日月曜日

角運動量代数(2)

角運動量代数(1)からの続き

Mathematicaの関数には,かなり昔からClebshGordan係数が含まれていた。さすがに素粒子物理を専攻していたウルフラムだと思った。Mathematicaには次の関数が実装されている。

ClebschGordan[{j1,m1},{j2,m2},{j,m}] |jm〉から|j1m1〉|j2m2〉への分解に対する,クレプシュ・ゴルダン係数を与える。
ThreeJSymbol[{j1,m1},{j2,m2},{j3,m3}] ウィグナーの3-jシンボルの値を与える(m1+m2+m3=0)。
SixJSymbol[{j1,j2,j3},{j4,j5,j6}] ラカーの6-jシンボルの値を与える。

Juliaではどうかというと,WingerSymbols.jlというパッケージがあり,以下の関数が使える。
wigner3j(j1,j2,j3,m1,m2,m3=-m1-m2),wigner6j(j1,j2,j3,j4,j5,j6),clebschgordan(j1,m2,j2,m2,j3,m3=m1+m2), racahV(j1,m2,j2,m2,j3,m3=-m1-m2),racahW(j1,j2,J,j3,J12,J23)

いずれにせよ9-j symbolは実装されていないのだった。一方,PythonのSymPyにあるWignerSymbolsには,Wigner 3-j,6-j,9-j,Clebsch-Gordan係数,Racah係数,Gaunt係数が含まれている。Gaunt係数という名前は知らなかったが,換算行列要素の形では頻出する係数だ。それより,JuliaのWignerFamilies.jlというパッケージで,3-j Symbolの配列が計算されてグラフ化されているのが印象的だった。 

using WignerFamilies
# wigner3j for all j fixing j2=100, j3=60, m2=70, m3=-55, m1=-m2-m3
w3j = wigner3j_f(100, 60, 70, -55)
js = collect(eachindex(w3j))
plot(js, w3j.symbols)


図 f(j) = w3j(j,100,60,-15,70,55) (JuliaPackageから引用)


2021年2月7日日曜日

角運動量代数(1)

大学院への進学が決まって,森田正人先生に最初に宿題として出されたのが,Roseの「角運動量の基礎理論(みすず書房)」 を読んでおくことだった。「Clebsh-Gordan係数の一般式を導出する必要がありますか」という質問に対する答えは,「まあできれば・・・」というようなものだったので,できなくてもよいと勝手に解釈してそこはサボることにした。

当時のベータ崩壊やミューオン捕獲の角度相関係数の計算や軽い核の原子核殻模型の計算には,Racah係数やWinger Symbols(3-j係数,6-j係数,9-j係数)が不可避であり,毎日のように戯れていた。

Fortranで自作したプログラムは,整数の階乗や二項係数を予め配列に保存しておいて,COMMON文で必要な関数で呼び出すという古典的な手法を使っていた。弱い相互作用の低エネルギー過程では,原子核反応などと違って,中間状態を含めてもあまり大きな角運動量が登場しないので,それでなんとかなっていた。

1998年のL. Weiの論文,"New formula for 9-j symbols and their direct calculation" (Computers in Physics, Vol. 12, No. 6, 632-634)では,この9-j symbolを高速に計算するアルゴリズムがあるということで読んでみた。なんのことはない,自分が1980年代に作ったコードとまったく同じ方法でしかなかった。6-j symbolの積和の表式を二項係数にまで落とし込んだだけなのだ。

2021年2月6日土曜日

インターネット白書アーカイブズ

 インターネット白書は,インプレスが1996年から発行している年鑑であり,2020年度版で25周年を迎える。

「インターネット白書」は1996年の創刊以来、日本のインターネットの成長や変化を毎年まとめてきたインターネットの書籍年鑑です。内容構成にあたっては、一般財団法人インターネット協会監修のもと専門家による寄稿と、市場動向調査により構成されてきました。現在は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)も加わり、3団体の協力のもと、「The Internet for Everything」というキャッチフレーズを掲げて、より広範なインターネットの可能性をレポートしています。

これまでのインターネット白書の記事のデジタルデータが,インターネット白書ARCHIVESとして公開されている。1996年のVol. 1の「インターネットと教育」という項目は,南山大学の後藤邦夫先生が執筆していた。引き続き1997年のVol. 2 から2002年のVol. 7までの間,私が執筆させていただいた。それ以後は,国際大学GLOCOMの豊福晋平さんなどが2009年頃まで担当していたと思う。

やがて,インターネット白書の中で,学校教育が話題としてとりあげられることもだんだん少なくなってきた。最近(2019年度)は,電通の人がEdTech,STEM,Society 5.0 がらみで儲け話がないかというような記事を書いていた。

2021年2月5日金曜日

PDCAサイクルに回されて(2)

 PDCAサイクルに回されて(1)からの続き

Wikipediaには「PDCA」が流行っているのは日本の特殊事情であると書いてあったので,各国政府の状況と比較してみた。前回と同様,政府関係のドメインで検索される総ページ数の内,PDCAというキーワードを含んだページ数の割合を%単位で求めたものである。

  domain URL  country  google (10^4 p)   +PDCA  ratio1(%)
 1  +site:gov      米 国     115000.0  15,700   0.001
 2  +site:gc.ca   カナダ        861.0       467   0.005
 3  +site:gob.mx  メキシコ      2840.0  15,900   0.056
 4  +site:gov.br  ブラジル     8500.0  15,300   0.018
 5  +site:gov.uk  英 国     7810.0       466   0.001
 6  +site:gouv.fr  フランス    2470.0      422   0.002
 7  +site:gov.it   イタリア       645.0   1,070   0.017
 8  +site:gob.es   スペイン     500.0       542   0.011
 9  +site:gov.ru   ロシア      654.0         83   0.001
10 +site:gov.cn  中 国     2970.0    5,730   0.019
11 +site:gov.tw  台 湾     2830.0    7,490   0.026
12 +site:go.kr    韓 国     3720.0  17,100   0.046
13 +site:gov.ph  フィリピン     921.0    6,620   0.072
14 +site:go.id    インドネシア   4850.0  67,900   0.140
15 +site:gov.in  インド      2440.0    1,180   0.005
16 +site:gov.au  オーストラリア  4790.0       934   0.002
17 +site:go.jp    日 本      4830.0 125,000    0.259

やはり,日本政府は飛び抜けて「PDCA」というキーワードの使用率が高かった。英米豪はきわめて低い。インドネシアとフィリピンを除くアジア各国でも日本よりは1桁小さくなっている。なお,ここでは,前回と同様だが,googleの使用言語を英語に設定した上で,各国の中央政府(州政府を含む)のものと思われるドメインについての検索を行なっている。

政策やプロジェクトが合理的に実施評価されていればわざわざ「PDCA」という言葉を持ち出す必要がない。そうでない場合は,「PDCA」という旗を振って合理的な政策実施を進めたくなるのだろうが,科学的・合理的・客観的な分析と反省への関心・意欲・態度が身体化されていない残念な国では,角運動量保存則で逆に自分が振り回される羽目に陥る旗を振り回そうとあがくことになるのかもしれない。

(注)主要国のうちではドイツが抜けていると思われるかもしれないが,ドイツの連邦政府と地方政府がそれぞれよくわからないドメイン名をバラバラと用いているように見えたために,まとめて投網にかけることができなかった。彼の国のインターネット名前空間はいったいどういう仕組みで構成されているのだろうか。誰か教えて下さい。

2021年2月4日木曜日

PDCAサイクルに回されて(1)

最近, PDCAサイクルでググると上位に出てくるのが,PDCAはもう古いとか,時代おくれだとかいうページである。それはそれで新しいコンサルビジネスの種なのかもしれないけれど,PDCAサイクル的なものには散々振り回され,振り回してきた苦い過去の経験があるので,いずれにせよもう勘弁してほしい。

「PDCA」という言葉がはやっているのは日本だけの特殊事情らしい。そこで,中央省庁のホームページのコンテンツ総ページ数に占める「PDCA」を含むページ数の比をgoogle検索を用いて眺めてみたところ,職員数最小の文部科学省が最悪であることがわかった。次の表を見てもらいたい。

  表 各省における「PDCA」を含むページの比率(google検索 2021.2.4)

  組織名   職員数 総ページ数(万)  +PDCA      比率(%)
 1  日本政府    275,000   5110.0    121,000   0.24
 2  内閣府       14,555       26.1       6,210   2.38
 3  総務省         4,798       70.8       5,220   0.74
 4  法務省       54,614         9.8          275   0.28
 5  外務省         6,351       28.2       2,320   0.82
 6  財務省       72,417         7.9       1,400   1.77
 7  文部科学省       2,150       39.4     12,300   3.12
 8  厚生労働省     33,103     251.0     12,300   0.49
 9  農林水産省     20,471       53.5       3,840   0.72
10  経済産業省      7,982       38.2       8,120   2.13
11  国土交通省     58,680    156.0       9,620   0.62
12  環境省         3,204      44.5       3,980   0.89
13  防衛省       20,924      19.0             274   0.14

文部科学省内閣府経済産業省は「PDCA」がお好きなようである。日本のシステムが壊れていくのが最も顕著に現れている分野を担当していることによる焦りなのだろうか。しかし「PDCA」にしがみついている限り,未来は暗そうな気がする。まあ,旗振りキーワードをIT改めDXにスイッチしても,仏作って魂入れず状態を繰り返すだけかもしれませんが。

なお,google検索は,使用言語を日本語にして,キーワードを +site:xx.go.jp とした件数と,
+site:xx.go.jp "PDCA" で表示される件数を用いている。日々の変動はかなりあるので,再現性をチェックする場合は注意したほうがよいかもしれない。日本政府とあるのはxx.を除いた+site:go.jpである。内閣だけでなく,国会や裁判所等も含まれている。

2021年2月3日水曜日

clubhouse と dabel

 セカイカメラからの続き

Clubhouseという言葉がちらちら聞こえ始めたのは1月の26,7日頃だったろうか。Hさんが1月28日のFacebookで,「話題のClubhouseで、貴重な2枠の「招待」を私に使ってくれるキトクな方がいらっしゃればぜひよろしくお願いします」といってたのをみて,はじめてClubhouseがなにものかを認識した。

Clubhouseは2020年の4月からサービスを開始しているが,アメリカでブレイクしたのは2020年の12月になってからだ。日本では2021年の1月23日にベータ版の運用が開始され,招待枠2名という希少価値が鍵になって急速に拡大しているようだ。

とりあえず,仮登録して名前空間だけは確保したものの,誰か友達を探して招待枠の提供をお願いするのは,引きこもりの自分にはハードルが高すぎて放置している。TwitterやFacebookで様子をみていると,アーリーアダプターの皆様方はどんどん参入しているようだ。

この「オーディオソーシャル」というコンセプトには既視感があると思っていたが,なんのことはない,セカイカメラ井口尊仁さんのダベルじゃないか。2019年の1月にear.lyとしてスタートしたダベルの前身のベイビー(2016)やボール(2017)などもチラチラと見ていたけれど,なかなかブレイクしなかった。そして,残念ながらダベルを差し置いてClubhouseがあっという間に広まってしまった。

音の文化というと,ラジオからポッドキャストだったが,いよいよSNSに移ってきた。テキストと時間差が鍵であるインターネットは,コミュニケーションが苦手だった自分にとってはある種の支援ツールになったが,これがリアルタイム音声コミュニケーションに回帰することによって,再び住みにくい世界に戻ってしまうのかもしれない。立食パーティは苦手なのであった。

[1]トレンドの最新SNS「clubhouse」に感じる違和感(阪本明日香,2021.1.28)
[2]『声のインターネット』がもたらすフラットな世界(井口尊仁,2020.9.16)
[3]Clubhouseだけじゃない。“音声SNS戦争”の行方はいかに?(Wired,2021.1.28)
[4]「Clubhouse」はソーシャルメディアなのだろうか?(遠藤諭,2021.2.3)


図 clubhouseで予約した名前空間の点(2021.1.31)




2021年2月2日火曜日

セカイカメラ

頓智ドット株式会社井口尊仁さんが赤松正行さんとつくったセカイカメラのプレゼンテーションは衝撃的だった。自分がはじめてiPhoneを入手したのは2008年の8月11日である。その約1か月後のTechCrunch50における井口さんの英語でのプレゼンテーションは,何のきっかけでいつ頃見たのかはっきり覚えていないが,爆笑の連続だった。

1年後の2009年9月24日にiPhoneのAppStoreで,Sekai Cameraがダウンロードできるようになったときは,やったーと思ったが・・・実際に使ってみるとそこまででもなかった。それでも,世界が情報ゴミであふれるのではないかとそのころは真剣に心配していた。

結局,当時のARやSNSの状況から,残念なことにセカイカメラは1年半ほどで潰れてしまった。いつかまたなんらかの形で復活してもらいたいものだけれど。井口さんは,その後,ウェラブルデバイスのテレパシージャンパーを作ったけどこれもうまく行かなかった。そして,2014年にはDOKI DOKI Inc. をつくって声のソーシャルを目指すことになる。

clubhouseとdabelに続く

2021年2月1日月曜日

CFR(致命率)(5)

 CFR(致命率)(4)からの続き

前回採用した致命率(CFR)の近似値。「致命率*=死亡数累計(t)/新規感染数累計(t-14)」と定義し,感染報告時に対して死亡報告時には2週間(14日)の遅延があると仮定した値を採用した。今回もこの定義を用いて,最新のデータを再分析してみる。各国の値は累計の効果で収束に向かっているが,優等生だと考えられてきたドイツが増加したのが目についた。東京は日本平均よりも小さいことにも注意したい(大阪は逆に大きい)。武漢と中国は当初の混乱の後にほとんど収束へ向かったために,インフレーションの記憶が凍結された値が残っている。

アジアの致命率*:

武漢 6.6%,中国 4.9%,イラン 4.4%,インドネシア 3.3%,フィリピン 2.1%,韓国 2.0%,香港 1.9%,日本 1.8%,インド 1.5%,東京 1.0%,台湾 0.9%(2021.1.31 現在)


図1 アジアの致命率*(2020.5.1〜2021.1.31

欧米の致命率*:

メキシコ 9.7%,イタリア 3.7%,英国 3.1%,ドイツ 2.8%,フランス 2.7%,ブラジル 2.7%,スペイン 2.6%,ロシア2.1%,米国 1.9%,トルコ 1.1%(2021.1.31 現在)


図2 欧米の致命率* (2020.5.1〜2021.1.31)


2021年1月31日日曜日

YouTube(6)

YouTube(5)からの続き

 例のスクレイパープログラムを動かしてみたところ,登録者数と再生回数の両対数グラフできれいに分離した2つの塊が見えた。おお,これはスゴイ発見をしたのかと思ったが,なんのことはない,単なるプログラムのバクだった。修正すると1つの塊に戻った。

ユーチュラから得られた登録済みランキングデータ(p=1からp=1500まで)のうち,登録者数非公開のものを除いた27,557個のデータについて,両対数グラフで散布図を書いてみた。

図1 YouTubeチャンネルの再生回数 vs 登録者数(2021.1)

図2 YouTubeチャンネルの再生回数/動画数 vs 登録者数/動画数(2021.1)

チャンネル再生回数を$y$,チャンネル登録者数を$x$とすると,次のような回帰式が得られる。
$\displaystyle \log_{10} y = 1.17 \log_{10} x +1.83 \ \rightarrow \ y = 67.6 x^{1.17}$

また,チャンネル再生回数/チェンネル動画数を$\bar{y}$,チャンネル登録者数/チャンネル動画数を$\bar{x}$とすると,次のような回帰式が得られる。
$\displaystyle \log_{10} \bar{y} = 1.00 \log_{10} \bar{x} +2.50 \ \rightarrow \  \bar{y} = 316 \bar{x}$


2021年1月30日土曜日

YouTube(5)

 YouTube(4)からの続き

ユーチュラのランキングからYouTuberの分析をするため,手動のデータスクレイパーをPerlで書いてみた。迷惑にならないように,1秒のsleepを入れながらHTMLファイルにアクセスしている。取得したデータを眺めてみた結果についてはもう少し考えてから報告する予定。

HTMLファイルから必要なデータだけ抜き出したCSVファイルを作るのだけれど,その後はExcelで解析する。面倒なのは,ExcelがUTF-8のCSVファイルを読んでくれないこと。ごちゃごちゃすれば回避できそうだが,それくらいなら事前にShift-JISに変換したほうが早い。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
#!/usr/local/bin/perl
# 1/30/2021 K. Koshigiri
# usage: yutura.pl 1 10
# extract data from p=1 to p=10
# original data = https://ytranking.net/ranking/?p=x

\$ytr = "https://ytranking.net/ranking/";

\$p1=$ARGV[0];
\$p2=$ARGV[1];
\$tmp="tmpy-\$p1-\$p2";
system("touch \$tmp");
\$out = "ytr-\$p1-\$p2.csv";

for(\$p=\$p1; \$p<=\$p2; \$p++) {
#  system("lynx -source \$ytr\?p=\$p | fsp -u >> \$tmp");
#  sleep 1;
print "\$p,\n";
}

open(OUT, ">\$out");
open(IN, "<\$tmp");
while(
) {

  if(/\t<p class="title">(.*)<\/p>\t<aside>/
) {

2021年1月29日金曜日

都道府県人口当たりのCOVID-19(3)

都道府県人口当たりのCOVID-19(2)からの続き

東北大学の大隅典子さんが,感染者に対する死亡率のデータがみつからないとおっしゃっていたので,前回のデータを1月28日版データに更新してみた。確かに宮城県はトップではないにせよ,その値がかなり低く抑えられていた(他の東北諸県と対比させるとよいかも)。

ある時点での死亡数累計/感染数累計は,致命率(CFR)の近似値だと考えられる。以下では直近3ヶ月の累計比(CFR-3m)と全期間の累計比(CFR-total)を,前者の降順に並べてみた。日本全国では,これらの値は1.4%前後であり,アジア各国の値とほぼ同水準である。欧米でも,その値は2-3%程度であり,本質的に大きな違いはないように見える。

一時的に医療崩壊に近い事象が起きているとき,この値は増大するので,第1波や第2波を除く直近3ヶ月では,過去のこの部分を差し引いた現在の状況がわかりやすい。北陸三県や徳島県では過去の死亡数急増時の部分を除けば,現在は相対的に落ち着いていることがわかる。

宮城県を除く東北地方ではそもそもの感染数の絶対値が大きくないので,大阪府,兵庫県,広島県などで高い値を示していることとは違う環境的な原因で"CFR"が大きいのかもしれない。

東京都や沖縄県は人口あたりの感染数や死亡数の人口比は大きな値を示しているが,感染者に対しては適切な処置が施されているの"CFR"は大きくない。


都道府県名 CFR-3m CFR-total
 岩手県  5.77%  5.45%
 北海道  3.38%  3.43%
 山形県  3.05%  2.71%
 福島県  2.76%  2.48%
 兵庫県  2.48%  2.37%
 福井県  2.40%  3.36%
 香川県  2.33%  2.27%
 青森県  2.26%  1.86%
 大阪府  2.16%  2.09%
 広島県  2.11%  1.92%
 熊本県  2.03%  1.79%
 静岡県  1.91%  1.69%
 徳島県  1.83%  3.40%
 長崎県  1.79%  1.70%
 群馬県  1.72%  1.82%
 愛知県  1.67%  1.64%
 岐阜県  1.66%  1.66%
 長野県  1.56%  1.51%
 高知県  1.45%  1.68%
 愛媛県  1.41%  1.86%
 三重県  1.40%  1.36%
 石川県  1.40%  4.01%
 大分県  1.36%  1.43%
 京都府  1.32%  1.37%
 新潟県  1.27%  1.01%
 鳥取県  1.25%  1.01%
 滋賀県  1.25%  1.35%
 栃木県  1.25%  1.11%
 山口県  1.23%  1.18%
 埼玉県  1.21%  1.36%
 奈良県  1.19%  1.24%
和歌山県  1.19%  1.26%
 宮崎県  1.12%  0.95%
 茨城県  1.09%  1.30%
 山梨県  1.02%  1.45%
 千葉県  0.91%  1.06%
神奈川県  0.89%  1.12%
 岡山県  0.82%  0.87%
 沖縄県  0.78%  1.22%
 宮城県  0.75%  0.66%
 福岡県  0.72%  1.12%
 東京都  0.59%  0.87%
 佐賀県  0.58%  0.43%
鹿児島県  0.54%  1.14%
 秋田県  0.52%  0.39%
 富山県  0.23%  3.13%
 島根県  0.00%  0.00%

 全 国  1.34%  1.45%

(情報:NHKまとめ 2021/1/28現在)

2021年1月28日木曜日

YouTube(4)

 YouTube(3)からの続き

NHK夕方の番組シブ5時で,教育系YouTuberの特集をやっていた。ヨビノリたくみさんと,葉一(はいち)さんが取り上げられ,葉一さんがオンラインインタビューに答えていた。たくみさんは,横国大の物理工学から東大工学研究科の沙川研(修士)だが,葉一さんは東京学芸大学の初等数学のひとなのか。コロナ禍にともなうオンライン授業の普及や,GIGAスクール構想の展開などから,教育系YouTuberに注目が集まっている。ただ,それにしては日本の教育系YouTubeのコンテンツはほとんど未開拓だ。まあ,塾・予備校などのクローズドコンテンツはたくさんあるのだろう。

Webhackによれば,教育系YouTuberにもいくつかのカテゴリがある。(1) スキル・教養・ビジネス,(2) 本・書籍の要約,(3) 学生向け,(4) クイズ・脳トレ,(5) 英語・英会話 である。ユーチューブチャンネル登録数順に代表的な教育系ユーチューブを並べてみた。受験メタ知識が中心のものは除外している。大学や教育委員会(細々としたものはあるが)がもっと力を入れてもよいかもしれないが,そういうのはたいていおもしろくないので難しいところ。

1 とある男が授業をしてみた(129万人)

2 予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」(61万人)

3 授業映像TryIT(47万人)

4 Stardy -河野玄斗の神授業(35万人)

5 PASSLABO in 東大医学部発「朝10分」の受験勉強cafe(25万人)

6 「ただよび」文系チャンネル(18万人)

7 超わかる!授業動画(18万人)

8 鈴木貫太郎(13万人)

9 Historia Mundi(10万人)

10 eboard channel(8万人)

番外 中田敦彦のYouTube大学(351万人)




2021年1月27日水曜日

趣味

 趣味は何ですかと問われて困ることが多い。しばらく前は,「文楽鑑賞」と「読書」だったはずなのだが,コロナの影響で観劇もままならず,かといって読書力が筋力に比例して衰えているため,鉄棒にぶら下がっても1回も懸垂ができないようなざまである。

昨日,YouTubeではどんな内容が多いのか,はたまたYouTubeを教育で利用することができるのかどうかを調べるために,ランキングサイトであるユーチュラのタグをざっとながめていた。趣味でいうと,音楽と鉄道と料理と車とスポーツが目についた程度であり,どうも,まだ見残しがあるような気がしてならない

そもそも世の中の趣味にはどんなものがあるのだろう。ググっていると「趣味探し図鑑」にたどり着いた。しかし,どうもYouTubeにはここにでてくる趣味に該当する大きな集団は(先程の例以外では)見当たらなかった。

さて,その趣味探し図鑑に,60代男性のおすすめ趣味ランキングなるものがあったので,ここに紹介する。うーん,なんだかとても微妙なのだ。趣味の「数学」のランクの高さと,よくわからない「大人の塗り絵」に驚いてしまった(塗り絵会社の宣伝だろう)。10代女性のおすすめとかになると,かなり雰囲気が違うのだけれども,ついていけない感は,60代男性のおすすめの場合と大差はない。

1 ひとり旅
2 楽器演奏
3 ツーリング・バイク
4 歴史
5 大人の塗り絵
6 電子工作○
7 数学○
8 絵画
9 彫刻
10 散歩・ウォーキング○
11 貯金・節約
12 家庭菜園・ベランダ菜園
13 レザークラフト
14 写真・カメラ
15 登山・トレッキング
16 ドライブ
17 プラモデル○
18 パークゴルフ
19 習字・書道
20 漬物づくり
21 ドローン・レース
22 DIY
23 株式投資
24 語学(英語以外)
25 アーチェリー
26 陶芸
27 麻雀
28 天体観測
29 釣り
30 料理
31 筋力トレーニング
32 コーヒー(珈琲)
33 瞑想・座禅
34 蕎麦打ち
35 ガーデニング
36 ゴルフ
37 温泉巡り
38 ペン字
39 読書○
40 盆栽
41 ボウリング
42 日本酒・地酒○
43 果実酒づくり
44 作曲・DTM
45 自動車競技
46 競馬
47 卓球
48 ファッション
49 マスターズ陸上
50 海外ドラマ鑑賞
51 クロスワードパズル
52 LEGO(レゴ)○
53 ヨガ
54 乗馬
55 小説執筆
56 熱帯魚飼育
57 テレビゲーム
58 日記
59 スキューバダイビング
60 俳句・川柳・短歌○
61 ボードゲーム
62 水泳
63 国内旅行・海外旅行
64 世界遺産巡り
65 Q&Aサイト回答
66 社交ダンス
67 合唱
68 劇団・舞台演劇
69 ダーツ
70 映画館・映画鑑賞
71 MMORPG
72 動画編集○
73 囲碁
74 FX
75 競艇
76 ドッグスポーツ
77 将棋
78 昆虫飼育
79 ワイン
80 科学・科学実験○
81 ビリヤード
82 トライアスロン
83 ミュージカル鑑賞
84 アニメ鑑賞
85 ゲートボール
86 トレーディングカード
87 野球
88 スポーツ観戦
89 オートレース
90 競輪
91 チェス
92 サッカー
番外 プログラミング○
(丸印○は自分が興味を持ったもの)

2021年1月26日火曜日

YouTube(3)

YouTube(2) からの続き

YouTubeチャンネルのコンテンツについて,タグをざっと眺めてみた。

1位 ゲーム実況(5994),2位 音楽(3111),3位 女性(2519),4位 やってみた(1761),5位 芸能人(1477),6位 企業(1149),7位 鉄道(748),8位 商品レビュー(665),9位 スポーツ(626),9位 Vocaloid(573),10位 お笑い芸人(557)だったが,十分検索しきれていない可能性はある。ここには現れていないが,子ども・おもちゃ関係も関連も合計すれば735以上,その他では,料理が495,車が458などが目立つかもしれない。

一方,YouTubeの教育利用可能性はどうだろうか。同じくタグ数を数えてみた。勉強(178),教育(88),受験(50),プログラミング(44),大学(23),学校(22),資格(20),学習(10),授業(6)など。また,STEAM関係キーワードでいえば,数学(30),科学(28),実験(24),宇宙(23),化学(10),哲学(8),物理(5),統計(5),天文(4),生物(3)。まだまだ開拓されつくしていないようにもみえる。

2021年1月25日月曜日

YouTube(2)

 YouTube(1)からの続き

昨日のチャンネル登録者人数で気持ちがわるかったのは,両対数グラフの順位がユーチュラ掲載数の上限近くで急速に減少していることである。普通ならば,ジップの法則が当てはまりそうなもので,両対数グラフではほぼ直線となり,なんらかの冪乗則が成立してもよいところだ。直感的には,登録者数の少ないチャンネルもある程度の数が存在しているが,これらはユーチュラへの登録動機がないため,ロストされているからと考えられる。実際,ユーチューブチャンネル人気ランキングを出しているTUBERS(ユーチューブ活動支援コンサルティング)では,13万件の日本語チャンネルが存在すると書いているのでユーチュラの捕捉率は1/4程度なのかもしれない。

さて今日は,ユーチュラにおける日本のユーチューブチャンネルの累計動画再生回数である。1位は,Fisher's −フィッシャーズ− (110億回),2位:キッズライン♡Kids Line,3位:avex(88億回),4位:HikakinTV(79億回),5位:はじめしゃちょー(hajime)(78億回)などとなっている。

(1位,110億回),(18位,30億回),(107位,10億回),(506位,3億回),(1514位,1億回),(3923位,3千万回),(7123位,1千万回),(12590位,3百万回),(16760位,百万回),(20794位,30万回),(23690位,10万回),(26107位,3万回),(27708位,1万回),(28720位,3千回),(29262位,1千回)


図1 日本のユーチューブチャンネル累計再生数分布(片対数)



図2 日本のユーチューブチャンネル累計再生数分布(両対数)




2021年1月24日日曜日

YouTube(1)

 ベネッセの「小学生がなりたい職業ランキング2020」では男子小学生の1位が「ゲームクリエータ・プログラマ」,2位が「ユーチューバー」,女子小学生の1位が「芸能人」,4位が「ユーチューバー」ということだ。もっとも,クラレの調査「小学生の将来就きたい職業」ではようやく男子の10位に顔を出している程度。

テレビはつまらないし,読書エネルギーにも欠けるため,最近は自分がユーチューブにハマった。そこで,ユーチューブランキングサイトのユーチュラを使って少し調べてみた。なお,googleのYouTubeヘルプをみれば,自分のチャンネルの作成方法その他がわかる。

まずは,ユーチュラにおける日本のユーチューブチャンネルの登録者数である。YouTubeランキングには,約33,000のチャンネルが登録されている。登録数非公開のチャンネルが1200弱あるので,それ以外のチャンネルを,登録者数と順位で並べてみた。なお,1位は,キッズライン♡Kids Line(登録者数1220万人),2位:せんももあいし−Ch Sen, Momo, Ai & Shii(939万人),3位:はじめしゃちょー(hajime)(906万人),4位:HikakinTV(884万人),5位:タキロン Takilong Kids' Toy(712万人)などとなっている。

(1位,1220万人),(38位,300万人),(304位,100万人),(1434位,30万人),(4169位,10万人),(8915位,3万人),(13863位,1万人),(18923位,3千人),(23196位,1千人),(26549位,300人),(29071位,100人),(30477位,30人),(31265位,10人)


図1 日本のユーチューブチャンネル登録者数分布(片対数)


図2 日本のユーチューブチャンネル登録者数分布(両対数)


2021年1月23日土曜日

開催都市契約

 7月23日まであと半年になった。大栄翔は12勝,正代が照ノ富士に負けて3敗となった。負け越している遠藤が久々に御嶽海に勝っている。いや,相撲の話ではなくて,正代と同様にふらふらの低空飛行を続けている東京五輪の話だ。

開催都市契約によれば,国際オリンピック委員会(IOC)と東京都(開催都市)と日本オリンピック委員会(NOC)の間で契約が締結されている。で,この契約を厳守するオリンピック大会組織委員会(OCOG)の組成(formation)が義務付けられている。

開催都市、NOC(前述の開催都市および OCOG の財務上の責務に関しては除く)、および OCOG は、いかなる性質であっても、また、直接または間接を問わず、本契約の規定違反に起因する、すべての損害、費用および責任について連帯責任を負う。IOC は開催都市、NOC、および/または OCOG に対して、IOC の単独の裁量にて、IOC が適当とみなす場合、訴訟を起こすことができる。

いきなりこれなのであった。で,これである。

いわゆる「ニューメディア」権(インターネットによるダウンロードまたはストリー ミング、IPTV、ホームビデオ、ビデオオンデマンド、モバイル・プラットフォームの権利など)を含む(ただし、それらには限定されない)、既存のまたは将来生まれる あらゆる形態の放送、上映メディアを手段とする、本大会および本大会関連イベントの放送、上映、送信、配信に関するすべての契約(以下、「放送契約」という)は、 IOC が独占的に交渉、締結するものとする。 

なんだか悪質な詐欺のように見えてしまうのは気のせいだろうか。 

本大会開催の結果として生じた剰余金があれば、以下のとおり配分するものとする。
a) NOC に 20%
b) OCOG に 60%。NOC と協議のうえで OCOG が決定する開催国におけるスポーツの全般的利益のために使用することを目的とする
c) IOC に 20%

 

2021年1月22日金曜日

赤いシリウス

 NHKのコズミックフロント☆NEXTは,非常にためになる科学番組である。先日放映された,「天狼星 シリウスのミステリー」もとても刺激的な内容だった。

シリウスは,オリオン座の三つ星を左に伸ばしたところのおおいぬ座にあり,太陽を除いて全天で最も明るい恒星(一等星)だ。地球から8.6光年の距離にあり,シリウスA(太陽と同程度の半径で太陽の約2倍の質量)とシリウスB(地球と同程度の半径で太陽と同程度の質量)からなる連星であり,明るい方のシリウスAは青白く光る主系列星である。シリウスBは非常に暗い白色矮星だ。

そのシリウスが,2千年前には赤く輝いていたという歴史的な文書がある。古代ローマの天文学者プトレマイオス(トレミー)のアルマゲストにその記載がある。超新星を除く普通の天文現象が数千年の時間スケールで起こるわけがないので,これはなんらかの比喩表現ではないかというのが定説らしい。

番組では,赤いシリウスが見えたのは事実であるという,科学的に根拠のあるいくつかの説が紹介されていた。シリウスにはシリウスCという別の三重連星があって,これがシリウスAに接近していたときに放出された物質が光を遮っていたという説や,桜井天体のように白色矮星であるシリウスBがヘリウムフラッシュによって一時的に赤くなったという説である。

シリウスは古代エジプトにおける暦の始まりを特徴づける天体であり,クフ王のピラミッドの南の回廊がシリウスが観測できる方向に伸びていたなど,いろいろとワクワクする話題が多いのだった。

2021年1月21日木曜日

直木賞

芥川賞からの続き

 ついでに,直木賞についても調べてみたところ,6冊/202冊=3.0%であった。芥川賞の半分の割合である。自分の主な読書領域はSFなので,純文学系の方がオーバーラップが大きいからだろうか。※印は受賞作は読んでいないが,それ以外の著書を複数冊読んだ作家。

第42回(1959年下半期) - 司馬遼太郎※
第47回(1962年上半期) - 杉森久英『天才と狂人の間』
第56回(1966年下半期) - 五木寛之※
第67回(1972年上半期) - 井上ひさし※
第72回(1974年下半期) - 半村良※
第80回(1978年下半期) - 宮尾登美子※
第109回(1993年上半期) - 高村薫『マークスの山』
第114回(1995年下半期) - 藤原伊織『テロリストのパラソル』
第117回(1997年上半期) - 篠田節子※
第119回(1998年上半期) - 車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』
第120回(1998年下半期) - 宮部みゆき『理由』
第121回(1999年上半期) - 桐野夏生『柔らかな頬』
第151回(2014年上半期) - 黒川博行※

なお,1970年代芥川賞の受賞数はインフレ気味だったが,直木賞の受賞数の方は逆に凹んでいる。文化的相転移はこのへんから始まって,80年代には完成したということなのだろうか。また,受賞者中に女性作家が占める割合は,直木賞の場合も芥川賞と同様で80年代に入ってから相転移したようにみえる。ただし,女性作家の割合は芥川賞では約1/2になっているのに対し,直木賞では約1/3にとどまっている。下記のテーブルは各年代の受賞者数(カッコ内は女性受賞者の内数)。

1930年代 7(0)
1940年代 19(2)
1950年代 26(4)
1960年代 24(5)
1970年代 18(1)
1980年代 30(7)
1990年代 26(8)
2000年代 27(9)
2010年代 23(9)
2020年代   2(1)

2021年1月20日水曜日

芥川賞

 第164回の芥川賞が,宇佐見りん「推し、燃ゆ」に決まった。「かか」で2019年の文藝賞と2020年の三島由紀夫賞を受賞したのに続くもので,なかなか凄そうである。

そもそも最近はほとんど本を読まなくなってしまった。情報の入力はインターネット(TwitterやYouTubeやFacebookなど)が中心になってしまい,極めて偏っている。ほとんどがデコレーションされた事実の集積物であり,創られた作品にふれる機会が激減している。あ,映画とかドラマはちょっと見ているかもしれないけれど。

そこで,自分がこれまでの芥川賞作品をどれほど読んできたのかをチェックしたところ,13冊/175冊=7.4%であった。ほとんど読んでいませんでした。なお,※は受賞作は読んでいないものの受賞作以外の作品を複数冊読んだ作家である。1970年代はほぼ立ち読みであったが,三田誠広のものはちょっとひどい作品だったと思う。1970年代は受賞者のインフレも起こってるし,選考委員どうなんだよ状態である。

第4回(1936年下半期) - 石川淳※
第25回(1951年上半期) - 安部公房「壁 S・カルマ氏の犯罪」
第28回(1952年下半期) - 松本清張※
第32回(1954年下半期) - 小島信夫※
第39回(1958年上半期) - 大江健三郎「飼育」
第43回(1960年上半期) - 北杜夫「夜と霧の隅で」
第51回(1964年上半期) - 柴田翔「されどわれらが日々──」
第56回(1966年下半期) - 丸山健二※
第61回(1969年上半期) - 庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」
第64回(1970年下半期) - 古井由吉「杳子」
第75回(1976年上半期) - 村上龍「限りなく透明に近いブルー」
第77回(1977年上半期) - 三田誠広「僕って何」
第84回(1980年下半期) - 尾辻克彦「父が消えた」
第98回(1987年下半期) - 池澤夏樹「スティル・ライフ」
第110回(1993年下半期) - 奥泉光「石の来歴」
第115回(1996年上半期) - 川上弘美「蛇を踏む」
第123回(2000年上半期) - 町田康「きれぎれ」
第146回(2011年下半期)- 円城塔※

なお,受賞者中に女性作家が占める割合は80年代に入ってから相転移したようだった。かつては男性作家が受賞者のほとんどを占めていたが,いまではほぼ半数が女性である。下記のテーブルは各年代の受賞者数(カッコ内は女性受賞者の内数)。なお,1945年から1948年は終戦前後の混乱のために中止されている。

1930年代 12(1)
1940年代 13(2)
1950年代 17(0)
1960年代 18(4)
1970年代 27(6)
1980年代 16(8)
1990年代 22(8)
2000年代 22(9)
2010年代 25(12)
2020年代   3(2)


2021年1月19日火曜日

PHITS

 PHITS(Partcle and Heavy Ion Transport code System)は,「あらゆる物質中での様々な放射線挙動を核反応モデルや核データなどを用いて模擬するモンテカルロ計算コードです」ということで,さらに「物質や人体内での放射線の動きをシミュレーションする計算コードです。原子力だけでなく,医学や理学など様々な分野で活用されています」なので,開発者の仁井田浩二さんは,とうとうCOVID-19のモンテカルロシミュレーションに踏み出した。

酔歩するエージェントと散乱断面積の概念はおもしろいけれど,地理状況が人口密度しか反映されていないのであれば,本質的には,微分方程式と変わらないのではないか。それにしても,中野さんといい大西さんといい原子核物理屋のコロナ好きはどこから来るのだろうか。放射性崩壊系列によく似ていて,ちょうど手頃な複雑さを持ったシミュレーションの対象だということなのかな。

2021年1月18日月曜日

日本語版ウィキペディア(2)

 北村紗衣(saebou)さんが,佐藤由美子さんの意見に若干の反論をしていた。彼女のウィキペディアンとしての経験に基づくものであって,事実としては概ね問題ないと思われる。が,本質はやはり歴史修正主義の跋扈である。

2001年1月15日にスタートしたウィキペディアは,今年で開設20周年を迎えることになる。記念イベントとしてオフラインミーティングが東京+サテライト会場で催されるようだ。

退職前の数年の大学院の授業では,ウィキペディアの教育利用を話題にしたことがあって,2008年頃からの動きは少しだけ眺めたことがあるが,その後はほとんど盛り上がらないまま推移していたようだった。

2021年1月17日日曜日

日本語版ウィキペディア(1)

 佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで歴史修正主義が広がる理由と解決策」という記事を見たが,まったくそのとおりだと思われる。自然科学の分野でも日本語版ウィキペディアの記事にムラがあると同時に,英語版と比較して非常に内容が薄いことが気になっていた。オープン性に欠けるコミュニティがディスインフォメーション(故意に流す虚偽情報)の温床になっているということだが,右派(あるいは準政府団体)の組織的な活動がSNSに加えてウィキペディアをターゲットにしているということだろう。

2021年1月16日土曜日

都道府県人口当たりのCOVID-19(2)


昨日のデータの全体。総人口と65歳以上は単位が1000人であることに注意する。人口密度は,人/平方キロメートル,感染率と死亡率は,感染数と死亡数を各都道府県の総人口で割ったもの。

都道府県 総人口 65歳以上 高齢化率(%)人口密度 感染数 死亡数 感染率(ppm) 死亡率(ppm)
北海道  5,286  1,656  31.3    69  15,300  521  2,894  99
青森県  1,263  412  32.6  136  607      8  481  6
岩手県  1,241  403  32.5    84  449    25  362  20
宮城県  2,316  643  27.8  321  2,813    17  1,215  7
秋田県  981  357  36.4    88  181      1  185  1
山形県  1,090  358  32.9  121  438    12  402  11
福島県  1,864  576  30.9  139  1,337    30  717  16
茨城県  2,877  833  28.9  478  3,458    41  1,202  14
栃木県  1,946  546  28.0  308  2,916    16  1,498  8
群馬県  1,952  574  29.4  310  3,066    57  1,571  29
埼玉県  7,330  1,934  26.4  1,913  19,277  258  2,630  35
千葉県  6,255  1,721  27.5  1,207  15,868  160  2,537  26
東京都  13,822  3,189  23.1  6,169  80,068  707  5,793  51
神奈川県  9,177  2,305  25.1  3,778  30,690  340  3,344  37
新潟県  2,246  716  31.9  183  739      5  329  2
富山県  1,050  336  32.0  251  768    26  731  25
石川県  1,143  334  29.2  276  1,267    53  1,108  46
福井県  774  234  30.2  188  411    12  531  16
山梨県  817  248  30.3  187  816    11  999  13
長野県  2,063  651  31.5  155  1,819    21  882  10
岐阜県  1,997  595  29.8  191  3,288    52  1,646  26
静岡県  3,659  1,081  29.5  476  3,654    59  999  16
愛知県  7,537  1,875  24.9  1,447  20,399  305  2,707  40
三重県  1,791  527  29.4    31  1,672    23  934  13
滋賀県  1,412  363  25.7  352  1,661    17  1,176  12
京都府  2,591  749  28.9  566  6,463    78  2,494  30
大阪府  8,813  2,420  27.5  4,640  36,434  714  4,134  81
兵庫県  5,484  1,577  28.8  659  12,978  298  2,367  54
奈良県  1,339  413  30.9  370  2,430    31  1,815  23
和歌山県  935  306  32.7  204  819      9  876  10
鳥取県  560  177  31.6  164  173      2  309  4
島根県  680  231  34.0  104  231      0  340  0
岡山県  1,898  571  30.1  270  1,967    16  1,036  8
広島県  2,817  817  29.0  335  4,271    66  1,516  23
山口県  1,370  465  33.9  230  760      5  555  4
徳島県  736  243  33.1  182  272      9  370  12
香川県  962  303  31.5  520  477      4  496  4
愛媛県  1,352  441  32.6  244  762    13  564  10
高知県  706  245  34.8  103  757    12  1,072  17
福岡県  5,107  1,408  27.6  1,023  12,349  136  2,418  27
佐賀県  819  244  29.7  341  698      3  852  4
長崎県  1,341  429  32.0  333  1,157    10  863  7
熊本県  1,757  537  30.6  241  2,732    36  1,555  20
大分県  1,144  371  32.4  184  885      9  774  8
宮崎県  1,081  342  31.7  143  1,426    11  1,319  10
鹿児島県  1,614  506  31.4  179  1,318    14  817  9
沖縄県  1,448  313  21.6  628  6,107    86  4,218  59
                 
全 国  126,443 35,575 1,414 30,517 308,428 4,339  2,439  34

(情報:NHKまとめ 2021/1/15現在)

2021年1月15日金曜日

都道府県人口当たりのCOVID-19(1)

新型コロナウイルス感染症の死亡数で,大阪府がトップに立っている。 各都道府県の人口で規格化すると1/14/2021現在では次のようになっている。

1 北海道 99(31.3%)
2 大阪府 81(27.5%)
3 沖縄県 59(21.6%)
4 兵庫県 54(28.8%)
5 東京都 51(23.1%)
6 石川県 46(29.2%)
7 愛知県 40(24.9%)
8 神奈川県37(25.1%)
9 埼玉県 35(26.4%)
10 京都府 30(28.9%)
(100万人あたりの死亡数累計,全国平均は 34,カッコ内は65歳以上人口の比率)

このうち北海道,沖縄県,石川県が緊急事態宣言の対象区域に入っていない。それにしても,北海道と大阪府は群を抜いている。ニュースでは高齢者がどうこうという言い訳がされていたが,単純な高齢化率は,他の都道府県と比べても重要な因子とは思われない。高齢者に対する医療福祉体制が大阪府では極端に劣っているというのであれば,大阪維新のこれまでの政策から納得できる。

ところで,感染数の人口比や死亡数/感染数をみるとまた違った見え方があらわれる(奈良県危ないじゃないですか・・・)
1 東京都 5793(0.88%)
2 沖縄県 4218(1.41%)
3 大阪府 4134(1.96%)
4 神奈川県3344(1.11%)
5 北海道 2894(3.41%)
6 愛知県 2707(1.50%)
7 埼玉県 2630(1.34%)
8 千葉県 2537(1.01%)
9 京都府 2494(1.21%)
10 福岡県 2418(1.10%)
11 兵庫県 2367(2.30%)
12 奈良県 1815(1.28%)
(100万人あたりの感染数累計,全国平均は 2439,カッコ内は死亡率/感染率,全国平均は
1.41%)

さらに謎のデータが。ある時点での死亡率/感染率=死亡数累計/感染数累計は,CFR(致命率)の近似値と考えてもよいかもしれないが,全国平均の数倍に達する地域がある。北海道や石川県は一時感染者が急増して混乱状態になっていたような気もするが,岩手県や福井県など,そもそも感染数が少ないところでこの値というのはどういうことなのだろうか。感染者が十分に補足できていないということなのかもしれない。

1 岩手県 5.57%
2 石川県 4.18%
3 北海道 3.41%
4 富山県 3.39%
5 徳島県 3.31%
6 福井県 2.92%
7 山形県 2.74%
8 兵庫県 2.30%
9 福島県 2.24%
10 大阪府 1.96%
(先のカッコ内と同様の死亡率/感染率=死亡数累計/感染数累計,全国平均は1.41%)

(情報:NHKまとめ 2021/1/15現在)・・・NHKのクレジット表示の指示がちょっといまいち。


2021年1月14日木曜日

中性子寿命問題

「物質の科学2」の 演習課題に関わって,日本の加速器でもっともエネルギーの高いものは何かを調らべてみた。筑波のKEKの加速器だろうと思っていたが,このメインマシンはCP非保存検証のためのBファクトリーであって,大強度ビームを追求するものだった。このKEKBは電子8GeV,陽電子3.5GeVのコライダーでウプシロン粒子(b\bar{b})を生成して,崩壊するB中間子と反B中間子の崩壊モードを比べている。なお,増強されたSuperKEKBはルミノシティが40倍になる電子7GeV,陽電子5GeVのコライダーだ。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が茨城県大洗で共同運用しているのが,大強度陽子加速器施設(J-PARC)である。J-PARCの加速器は,線形加速器(400MeV),陽子シンクロトロン(3GeV),陽子シンクロトロン(50GeV)のメインリングからなる。50GeVのPSは今のところ30GeVで運用しているようだ。

さて,中性子寿命問題である。これまでの中性子寿命の実験的検証方法にはビーム法とボトル法の2種類があり,ビーム法では888秒,ボトル法では879秒で,9秒という有意の差があり,これが埋まっていない。前者はビームが通過しながら崩壊する際の陽子をカウントし,後者は閉じ込めた中性子の数の変化をカウントしている。もしこれが正しいのであれば,ビーム法で観測されているモード(n→p+n+ν)以外の遷移があることになる,

理論的な可能性として,ミラー中性子(mirror matter)の存在が示唆され,ミラー物質はダークマターの候補にもなっているようだがまだまだわからない。J-PARCにおけるKEKグループの実験は,第3の測定方法を定義するものであり,パルス中性子が崩壊する際の電子をカウントする。ただし,まだ実験誤差が大きすぎてこれから詰めていく段階である。



2021年1月13日水曜日

寒中見舞い

 寒中見舞いは,二十四節気の小寒と大寒の間に出す見舞い。定年退職を期に年賀状はやめることにしたのだけれど,親戚についてはまだ完全にはストップできない。それでも年々これが最後ですという年賀状が届くようになってきた。なお,年賀状をいただいた知人には,寒中見舞いを出すことにした(が,いつまで続くだろう・・・)。ちなみに今年の年賀状(親戚分)のデザインは下記のとおりであった。


写真:奈良市の植村牧場にて


2021年1月12日火曜日

Alfred(2)

Alfred(1)からの続き

というわけで,とりあえずできたのだけれど・・・微妙に動作が思ったとおりにならない。内部で呼び出していると思われるSiri のデータに問題があるのだろうか。試行錯誤の結果とりあえず下記のやりかたでできたのだが,実際に試してみるとなんだか検索漏れがある・・・

(1) AlfredのPreferenceでWorkFlowを選択する。

(2) 画面左下の+ボタンで新しいBlankWindowを作成する。名前をつけて,説明を加え,CategoryはUncategorizedにする。Bundle IDとCreated ByとWebsiteは適当でよいのかもしれない。

(3) できた新規Workflowの画面で黒い画面を右クリック(Ctrl+クリック)して,InputsからFile Filterを選択する。

(4) keywordは コマンドをキックする短い文字列としてwith spaceにチェックしておけば良い。Placeholder titleとPlaceholder subjectも適当でよいのかもしれない。Filetypeにpdfとdjvとpublic.folderを指定したが,これは見本をdrag&dropすればよろしい。

(5) scopeには検索対象のfolderを指定するとこれでできあがり。



2021年1月11日月曜日

外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律

 論理的には,この「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」の逆過程なので,そこで主張の妥当性が判断されるのがひとつ。さらには,国際的にはどのような原則が確立されているかということだが,「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約」についてという文書が外務省にある。この国連国家免除条約本体はこちら

報道では,かつての絶対免除主義「国及びその財産については,すべて無条件に他の国の裁判所の裁判権からの免除を認めること」が,現在でも国際的な原則であるかのような印象を与える説明がなされているが,そうでもないかもしれない。なお,条約の締約国は19カ国なので,まだ発効されていない。

2021年1月10日日曜日

人工血液

 新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなって,献血機会が減少し,日本の医療活動に必要な血液が確保できないのではないかというニュースが流れていた。そこで,人工血液というのはまだ開発されていないのかどうか調べてみた。

日本血液代替物学会が存在するくらいなので,研究は進んでいると考えられる。学会誌の「人工血液」は会員以外の誰でも自由にpdfファイルで読むことができるのがありがたい。奈良県立大学の酒井宏水先生が現在の学会長だ。

人工血液の1つとして,赤血球の酸素運搬機能を代替する人工の微粒子である人工赤血球がある。日赤や医療機関で発生する期限切れ非使用赤血球(検査済み)から,酸素を結合するタンパク質ヘモグロビン(Hb)を精製分離し,これを濃度高くリポソームに封入した微粒子であり,ヘモグロビンベシクル(Hb-V)とよばれるものがその一例だ。

また,血小板輸血に関しては,室温保存による細菌繁殖に起因する感染症を防止する目的で,法制上,血小板製剤の保存期間が4日以内に限定されており,血小板輸血に対する抜本的な供給システムの構築が喫緊の課題である。このため,iPS細胞から血小板を大量に生産するための方法が研究されている。

白血球は難しいのではないかと思ったが,逆にこれは薬で代替することができて,赤血球や血小板の方が残念ながら今の医療技術では作れないので献血してほしいとのことだった。

2021年1月9日土曜日

パルスオキシメーター

ついこの間まで,パルスオキシメーターのことを「パルスオキシメーター」 とよぶのだと勘違いしたままだった。テレビのニュースで,ようやく誤った知識が訂正された。

パルスオキシメーターは光を使って血液の酸素飽和度を測る装置である。新型コロナウィルス感染症において,無症状の段階でもその兆候を捉えるために用いられるというニュースだったような気がする。

酸素飽和度(SaO2)は,血液中のヘモグロビンが酸素と結合している割合を表す量であり,ヘモグロビンをHbと書くと,[HbO2] = HbO2 / (HbO2+Hb)として,実際には,(HbO2) = [HbO2]/ [HbO2]max で与えられる。maxは最大酸素飽和度の場合の値を意味しているので,(HbO2)の最大値は100%になる。なお,酸素飽和度には,SvO2(静脈酸素飽和度),StO2(組織酸素飽和度),SpO2(末梢酸素飽和度)があって,パルスオキシメータで測定されるのはSpO2である。

パルスオキシメータの原理については,コニカミノルタのページが詳しい(1977年に世界で最初に商品化した)。Hbは赤色光をよく吸収するが,HbO2は赤い光を透過するので血液が赤く見える。一方,HbとHbO2はともに赤外光はあまり吸収しない。そこで,赤外光IRを基準とした赤色光Rの強度,R/IRがわかれば,HbO2/Hbがわかることになる。パルスオキシメータでは脈動する血液についてのR/IRの変化成分を測定するため動脈血を見ていることに対応する。

SpO2が95%以上であれば正常,90-95%で注意,90%未満ではなんらかの処置が必要となる。ただ,新型コロナウイルス感染症の低酸素症では,よくわからないことが起きているようだ。

なお,ヒトのヘモグロビンは,ヘムとよばれる鉄原子を中心とした錯体をかこむ4ユニットから成る分子量64500のタンパク質分子である。

2021年1月8日金曜日

合衆国憲法修正第25条

 アメリカ合衆国憲法修正第25条は,アメリカ合衆国大統領の承継方法や,大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができない場合の対処法を規定している。


修正第25条[大統領の地位の継承] [1967 年成立]

第1項 大統領が免職され、死亡しまたは辞任した場合には、副大統領が大統領となる。

第2項 副大統領が欠けたときは、大統領が副大統領を指名し、指名された者は、連邦議会の両院の過半数の承認を経て、副大統領の職に就く。

第3項 大統領が、上院の臨時議長および下院の議長に対し、その職務上の権限および義務を遂行することができない旨を書面で通告したときは、その後大統領が権限および義務を遂行することができる旨を書面で通告するまで、副大統領が臨時大統領としてかかる権限および義務を遂行する。

第4項[1号] 副大統領、および行政各部の長または連邦議会が法律で定める他の機関の長のいずれかの過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限および義務を遂行できな い旨を書面で通告したときは、副大統領は、直ちに臨時大統領として、大統領職の権限および義務を遂行するものとする。

[2号]その後、大統領が上院の臨時議長および下院議長に対し、職務遂行不能状態は存在しない旨を書面で通告したときは、大統領はその職務上の権限および義務を回復する。但し、副大統領および行政各部の長または連邦議会が法律で定める他の機関の長のいずれかの過半数が、4 日以内に、上院の臨時議長と下院議長に対し、大統領がその職務上の権限および義務を遂行できない旨を書面で通告したときは、この限りでない。この場合には、連邦議会は、開会中でないときには48 時間以内にその目的のために集会し、問題を決定するものとする。連邦議会が、大統領が職務上の権限および義務を遂行することができない旨を通告する書面を受理してから21 日以内に、または、連邦議会が開会中でないときは、集会の要請があってから21 日以内に、両議院の3 分の2 の投票により、大統領はその職務上の権限および義務を遂行することができない旨を決議したときは、引き続き副大統領が臨時大統領としてかかる権限および義務を遂行する。 かかる決議がなされなかった場合には、大統領はその職務上の権限と義務を回復するものとする。

 

アメリカ合衆国憲法

第2章[執行部]

第1条[大統領と副大統領、選出方法]

[第6項]大統領が罷免され、死亡し、辞職し、またはその職権および義務を遂行する能力を失ったときは、副大統領が、大統領の職務を行う。連邦議会は、大統領と副大統領がともに罷免され、死亡し、辞職し、または執務不能に陥った場合について、法律により、いかなる官吏に大統領の職務を行わせるかを定めることができる。この官吏は、執務不能の状態が解消される時または大統領が選出される時まで、大統領の職務を行う。



2021年1月7日木曜日

逆順と平方(3)

逆順と平方(2)からの続き

9桁までの範囲で考えるとしても,3億個のデータのうち条件を満足するのが高々7000個なので,ほとんど無駄な計算をしていることになる。そこで,プログラムは汚くとも,もう少し計算を簡略化できないかと考えた結果,12桁までの計算が数分程度で可能になった。2〜3桁分をまとめてループをまわしているが,この範囲でよいという証明はしたわけではなく,直感に頼っているのだった。


function reverse(n,m)
  nun=zeros(Int,m)
  nre=0
  for k in 1:m
    nun[k] = n % 10
    nre = nre + nun[k]*10^(m-k)
    n = div(n - nun[k],10)
  end
  return nre
end

function counter(n)
  a = [0 1 2 3 10 11 12 13 20 21 22 23 30 31 100 101 102 103 110 111 112 113 120 121 122 123 130 131 200 201 202 203 210 211 212 213 220 221 222 223 230 231 300 301 302 303 310 311 312 313]
  b = [50 4 14]
  c = [10^3 10 10^2]
  cnt=1
  kk = c[n%3+1]
  k1max = b[n%3+1]
  k2max = 1 + div(n+10,14)*49
  k3max = 1 + div(n+10,17)*49
  k4max = 1 + div(n+10,20)*49
  for k1 in 1:k1max
    for k2 in 1:k2max
      for k3 in 1:k3max
        for k4 in 1:k4max
          k=a[k1]+a[k2]*kk+a[k3]*kk*10^3+a[k4]*kk*10^6
          if(k!=0)
            m=Int(ceil(log10(k)+10^(-9)))
            kj=BigInt(k)^2
            mj=Int(ceil(log10(kj)+10^(-9)))
            kr=reverse(k,m)
            krj=BigInt(kr)^2
            if(reverse(kj,mj)==krj)
# println(k,":",kr,":",kr^2,":",reverse(k^2,mj))
              cnt=cnt+1
            end
          end
        end
      end
    end
  end
  return cnt
end

for i in 1:12
  @time println(i," : ",counter(i))
end


1 : 4
0.000491 seconds (176 allocations: 6.000 KiB)
2 : 13
0.000551 seconds (765 allocations: 22.258 KiB)
3 : 37
0.002469 seconds (3.68 k allocations: 96.281 KiB)
4 : 100
0.005823 seconds (18.99 k allocations: 466.195 KiB)
5 : 253
0.021409 seconds (81.69 k allocations: 1.886 MiB)
6 : 615
0.091992 seconds (346.74 k allocations: 7.780 MiB)
7 : 1434
0.441439 seconds (1.61 M allocations: 35.324 MiB, 11.21% gc time)
8 : 3244
1.616126 seconds (6.39 M allocations: 138.140 MiB, 11.31% gc time)
9 : 7116
6.780644 seconds (25.58 M allocations: 546.322 MiB, 13.04% gc time)
10 : 15200
28.310428 seconds (113.32 M allocations: 2.337 GiB, 13.25% gc time)
11 : 23284
108.389549 seconds (437.13 M allocations: 8.934 GiB, 13.71% gc time)
12 : 31368
417.966111 seconds (1.71 G allocations: 34.604 GiB, 14.30% gc time)

2021年1月6日水曜日

逆順と平方(2)

逆順と平方(1)からの続き

中嶋慧さんのpythonによる逆順関数がスマートだったので Juliaでも試してみた。数値を文字列に変換して,逆順にしたものをもういちど数値に戻すというものだ。プログラムとしてはスッキリしたけれど,実行時間が倍になってしまった。


function rev(n)
  b = string(n)
  c = b[end:-1:1]
  d = parse(Int,c)
  return d
end

function counter(m,j)
  cnt = 1
  kmax = Int(ceil(10^(m-1)*sqrt(10)))
  for k in 10^(m-1)+1:kmax
    kr = rev(k)
# kj = BigInt(k)^j
# krj = BigInt(kr)^j
    kj = k*k
    krj = kr*kr
    if(rev(kj)==krj)
# if(2000<=k<=2299)
# println(k,":",kr,":",kr^j,":",rev(k^j))
# end
      cnt = cnt + 1
    end
  end
  return cnt
end

function list(l,j)
  sum=1
  for i in 1:l
    @time sum = sum + counter(i,j)
    println(i," **",j," = ",sum)
  end
end


list(9,2)
0.000010 seconds (36 allocations: 1.781 KiB)
1 **2 = 4
0.000015 seconds (264 allocations: 13.062 KiB)
2 **2 = 13
0.000138 seconds (2.60 k allocations: 128.844 KiB)
3 **2 = 37
0.001734 seconds (25.96 k allocations: 1.254 MiB)
4 **2 = 100
0.016847 seconds (259.48 k allocations: 12.538 MiB)
5 **2 = 253
0.224788 seconds (2.59 M allocations: 125.376 MiB, 12.69% gc time)
6 **2 = 615
2.393325 seconds (25.95 M allocations: 1.224 GiB, 12.89% gc time)
7 **2 = 1434
26.113517 seconds (259.47 M allocations: 12.244 GiB, 11.55% gc time)
8 **2 = 3244
284.531202 seconds (2.59 G allocations: 128.882 GiB, 11.40% gc time)
9 **2 = 7116

2021年1月5日火曜日

逆順と平方(1)

 中嶋慧さんが,次のようなプログラムについての話題を提供していた。ある数nの逆順に並べた数をrev(n)とする。例えば,rev(123)は321である。このとき,rev(n^2)=rev(n)^2を満たすm桁の数nは,何個あるかという問題だ。pythonでは時間がかかるので,juliaにするとよいのではないかという提案だったが,残念ながら,工夫に乏しい10^8個の計算はやたら時間を食うだけだった(追伸:条件が rev(rev(k)^2) = k^2 であると誤解していたので,その後訂正したところ,中嶋さんの結果と一致した)。


function reverse(n,m)
  nun = zeros(Int,m)
  nre = 0
  for k in 1:m
    nun[k] = n % 10
    nre = nre + nun[k]*10^(m-k)
    n = div(n - nun[k],10)
  end
  return nre
end

function counter(m)
  cnt = 1
  kmax = Int64(ceil(10^(m-1)*sqrt(10)))
  for k in 10^(m-1)+1:kmax
    kr = reverse(k,m)
    m2 = Int(ceil(log10(k*k)))
    if(reverse(k*k,m2)==kr*kr)
# if(2000<=k<=2299)
# println(k,":",kr,":",kr^2,":",reverse(kr^2,m2),":",k^2)
# end
      cnt = cnt+1
    end
  end
  return cnt
end

function list(l)
  sum = 0
  for i in 1:l
    @time sum = sum + counter(i)
    println(i," : ",sum)
  end
end

list(9)
0.000003 seconds (6 allocations: 576 bytes)
1 : 4
0.000009 seconds (44 allocations: 4.469 KiB)
2 : 13
0.000097 seconds (434 allocations: 50.859 KiB)
3 : 37
0.000901 seconds (4.33 k allocations: 540.750 KiB)
4 : 100
0.011719 seconds (43.25 k allocations: 5.939 MiB)
5 : 253
0.145435 seconds (432.46 k allocations: 62.688 MiB, 12.05% gc time)
6 : 615
1.100731 seconds (4.32 M allocations: 692.869 MiB, 17.40% gc time)
7 : 1434
11.497505 seconds (43.25 M allocations: 7.088 GiB, 16.11% gc time)
8 : 3244
132.445766 seconds (432.46 M allocations: 77.329 GiB, 16.48% gc time)
9 : 7116

2021年1月4日月曜日

2021年1月2日土曜日