2021年1月14日木曜日

中性子寿命問題

「物質の科学2」の 演習課題に関わって,日本の加速器でもっともエネルギーの高いものは何かを調らべてみた。筑波のKEKの加速器だろうと思っていたが,このメインマシンはCP非保存検証のためのBファクトリーであって,大強度ビームを追求するものだった。このKEKBは電子8GeV,陽電子3.5GeVのコライダーでウプシロン粒子(b\bar{b})を生成して,崩壊するB中間子と反B中間子の崩壊モードを比べている。なお,増強されたSuperKEKBはルミノシティが40倍になる電子7GeV,陽電子5GeVのコライダーだ。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が茨城県大洗で共同運用しているのが,大強度陽子加速器施設(J-PARC)である。J-PARCの加速器は,線形加速器(400MeV),陽子シンクロトロン(3GeV),陽子シンクロトロン(50GeV)のメインリングからなる。50GeVのPSは今のところ30GeVで運用しているようだ。

さて,中性子寿命問題である。これまでの中性子寿命の実験的検証方法にはビーム法とボトル法の2種類があり,ビーム法では888秒,ボトル法では879秒で,9秒という有意の差があり,これが埋まっていない。前者はビームが通過しながら崩壊する際の陽子をカウントし,後者は閉じ込めた中性子の数の変化をカウントしている。もしこれが正しいのであれば,ビーム法で観測されているモード(n→p+n+ν)以外の遷移があることになる,

理論的な可能性として,ミラー中性子(mirror matter)の存在が示唆され,ミラー物質はダークマターの候補にもなっているようだがまだまだわからない。J-PARCにおけるKEKグループの実験は,第3の測定方法を定義するものであり,パルス中性子が崩壊する際の電子をカウントする。ただし,まだ実験誤差が大きすぎてこれから詰めていく段階である。



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