2021年2月7日日曜日

角運動量代数(1)

大学院への進学が決まって,森田正人先生に最初に宿題として出されたのが,Roseの「角運動量の基礎理論(みすず書房)」 を読んでおくことだった。「Clebsh-Gordan係数の一般式を導出する必要がありますか」という質問に対する答えは,「まあできれば・・・」というようなものだったので,できなくてもよいと勝手に解釈してそこはサボることにした。

当時のベータ崩壊やミューオン捕獲の角度相関係数の計算や軽い核の原子核殻模型の計算には,Racah係数やWinger Symbols(3-j係数,6-j係数,9-j係数)が不可避であり,毎日のように戯れていた。

Fortranで自作したプログラムは,整数の階乗や二項係数を予め配列に保存しておいて,COMMON文で必要な関数で呼び出すという古典的な手法を使っていた。弱い相互作用の低エネルギー過程では,原子核反応などと違って,中間状態を含めてもあまり大きな角運動量が登場しないので,それでなんとかなっていた。

1998年のL. Weiの論文,"New formula for 9-j symbols and their direct calculation" (Computers in Physics, Vol. 12, No. 6, 632-634)では,この9-j symbolを高速に計算するアルゴリズムがあるということで読んでみた。なんのことはない,自分が1980年代に作ったコードとまったく同じ方法でしかなかった。6-j symbolの積和の表式を二項係数にまで落とし込んだだけなのだ。

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