第7回金沢の景観を考える市民会議〜みんなで描く景観のミライ〜のオンライン中継を途中からみた。金沢工業大学の水野一郎先生(谷口吉郎・吉生記念金沢建築館館長)の基調講演『「令和」の時代へ継承し,そして創出し続ける,金沢の景観』は,昭和40年頃からはじまった景観保全についての市民の取り組みの重要性をわかりやすく説明していた。例えば,ひがし茶屋街の木虫籠(きむすこ)と呼ばれる格子がそのまま保存されていることを強調されていた。他の伝統的景観を売り物にしている地域では,高山も倉敷も白川郷もすべて通りに面したところがお土産物屋の店頭になっているが,金沢ではそうでないというところが非常に貴重であるとの指摘だった。
金沢の都心部は公園と緑と文化施設で構成されている。1970年代に,兼六園の近くに新しく建てられた「旅館さいとう」が物議を醸したことがある。周辺とは違和感のある若草色の奇抜なデザインの建物で,旅館名の大胆なひらがなも気になった記憶がある。やがて,いつの間にかこれはなくなっていた。水野さんはこの事例の具体には触れなかったが,金沢では景観を壊す建物の禁止ではなく,景観を良くする建物を推奨する方向を選んだということだ。全国的にも非常に早い時期から43年にも渡って金沢都市美文化賞によって景観を良くする建物の表彰をつづけている。
歴史的・地理的な背景を持つ文化的景観を守り育てるために,金沢市は昭和43年(1968)に,全国に先駆けて「伝統.環境保存条例」を制定している。この条例制定50周年を記念して,2018年には「金沢景観五十年のあゆみ」という記念冊子が刊行されている。
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