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2019年10月15日火曜日

台風の運動エネルギー

台風の重さからの続き)

前回は台風の質量と並進運動エネルギーを求めた。次に,台風の重心に対する風の回転運動エネルギーを見積もってみる。そのために,台風の風速分布を調べてみると,中心から50kmあたりをピークとして台風の外側に向けて緩やかに,中心側にむけて急速に減少している。そこで,半径 $R$[m],高度 $h$[m]の台風の平均風速を中心からの距離$ r$[m] の関数として,$v(r)=60(1-r/R) $[ m/s]とモデル化する。中心では過剰に,周辺では過小に評価している。

これを用い,空気の密度を $\rho = 1$ [ kg/m^3] とすると,回転の運動エネルギー$T_R$は,$\int_0^R \rho \pi h r v(r)^2 dr = 5 \pi h R^2 $[J]より,R=500km  h=10km の場合,$T_R$=4×10^16 [J]となり,前回求めた並進運動エネルギー5×10^16 [J]と同じオーダとなった,というかかなり粗い見積もり。これらを加えた台風の風の運動エネルギーは 10^17[J]である。

さて,インターネットでこれがリーズナブルかどうか調べてみようとしたが,台風の運動エネルギーについてのわかりやすい情報はほとんどない。どういうことか。日本科学協会立方体地球には台風ができるの?に,台風の運動エネルギーは10^18[J]とあった。まあまあ正しかった。

Wikipediaにはエネルギーの比較というページがある。日本語版には地震の記述はあるが,台風はない。しかし英語版の Orders of magnitude (energy) には,"Energy released in 1 day by an average hurricane in producing rain (400 times greater than the wind energy)" が 5×10^19 [J]とあるので,風のエネルギーは 10^17 [J] でほぼほぼあっているのかもしれない。

2019年10月14日月曜日

台風の重さ

台風とは,熱帯の海上で発生する低気圧(熱帯低気圧)のうち
(1)北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し,(2)低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s以上のものを指す。

気象庁の台風の大きさと強さの解説ページによれば,最大風速の大きさの範囲によって,台風は,無印(17m/s以上33m/s未満),強い(33m/s以上44m/s未満),非常に強い(44m/s以上54m/s未満),猛烈な(54m/s以上)の4段階に分類される。また,風速15m/s以上の半径を基準とする大きさは無印(500km未満),大型=大きい(500km以上800km未満),超大型=非常に大きい(800km以上)の3段階に分類される。

そこで,台風の半径を500km高さを10kmとすると,その体積は,10^6 km^3となる。空気は1Lで1.25gだから1m^3で約1kg 1km^3で10^9 kgであるから,台風の領域に含まれる空気の全質量は10^15 kgとなる。1辺が10kmの水の質量と同じくらいだ。

実際には空気だけの塊でなく凝結した水蒸気(雲)混じりの流体だが,飽和水蒸気圧は気圧の数%のオーダーなので,ほぼ空気の塊とした質量と変わりがないと思われる。台風の中心が時速36kmで運動しているならば,台風の重心の並進運動の運動エネルギーは5×10^16 Jとなる。

台風の運動エネルギーに続く)

2019年10月3日木曜日

phyphox

2010年に市川忠樹君といっしょに「携帯端末の加速度センサーによる実感をともなった運動の理解」という論文を書いた。iPhoneが日本に上陸したのが2008年であり,翌2009年の彼の修士論文にもとづくものである。2000年ごろのインターネットの教育利用運動のピーク時にも,モバイル学習端末をテーマにしてはどうかと芳賀さんに水を向けたこともあったけれど・・・,まあ,その時はそれどころではなかった。

その当時から様々なアプリが登場していたが,今日見つけた,ドイツのアーヘン工科大学で開発されたphyphoxはその決定版のような印象だ。日本語化されていて次のようなメニューがみられる。阪大の橋本幸士さんがTwitterで宣伝していたのだった。

写真:phyphoxのメニュースクリーンショットから(引用)