2024年4月10日水曜日

鉄の星:テイン

早川書房世界SF全集の第4巻はガーンズバック/テインのラルフ124C41+/鉄の星だ。

ラルフ124C41+は小学校時代に友達に借りた学習雑誌の付録で読んだだけ。世界SF大会で毎年選ばれるヒューゴー賞は,1953年に創設された由緒正しいものだが,アメリカSF界の初期の功労者であり,ラルフ124C41+の著者ヒューゴー・ガーンズバック(1884-1967)にちなんで名付けられている。

問題はそちらではなく併録されている「テイン」の「鉄の星」のほうだ。そのころから今に至るまでテインが誰かもよくわからなかったし,鉄の星にもまったく興味がわかなかったので第4巻は買わずにいた。ところがです。この度調べてみると,鉄の星(Iron Star)の著者ジョン・テイン=John Taine は,数学者 Eric Temple Bell (1883-1960)のペンネームだった。


数学者のE. T. ベルの方はよく知っていた。ハヤカワ文庫の「数学を作った人々」の著者である。その3冊組は自分の本棚に並んでいる。E. T. ベルはジョン・テインのペンネームでいろいろとSFを書いているようだ。物理学者でいえば,フレッド・ホイルに少し似ている。

そのベルが数学者としてどんな仕事をしているのかというと,ベル数ベル多項式を考えた人だった。ベル数$B_n$とは異なった$n$個の対象を分割する方法の数である。異なった$n$個の対象を$r$個のグループに分割するのは第2種スターリング数$_nS_r$であり,その和がベル数になる。

$n=5$のベル数は,$B_5=52$となるが,これは源氏香の数に等しい。源氏香という香道の遊び方は,本質的に異なった5種の香の分類の問題=ベル数5の問題だった。


図:五種の香をかぎ分ける源氏香の52パターン(Wikipediaから引用)

E. T. ベル=ジョン・テインのSFは,日本では前述の鉄の星を除いて出版されていない。カナダのGutenbergプロジェクトにはかろうじて,The Iron Star が公開されていた

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