2024年3月17日日曜日

ハヤカワ・SF・シリーズ(2)

ハヤカワ・SF・シリーズ(1)からの続き

ハヤカワ・SF・シリーズの中でも,特別な思い入れがあるのが,SFマガジンベスト No.1 から No.4 である。1960年から1963年のSFマガジンに掲載された短編中で,その年のベスト作品を集めた年刊傑作集である。当時SFマガジンの編集長だった福島正実が次の方針で編集したものだ。
1. 作家別で,同一年に1作家だけ
2. 編集部の評価,読者の感想,海外の評価をこの順に勘案して洗濯
3. ある程度長いものは割愛
4. 翻訳権の関係で収録できないものもあった
5. 他の短編集やアンソロジーなどが予定されるものはそちらにまかせる

SFマガジン・ベスト No.1(1960)
太陽系最後の日, Rescue Party, アーサー・C・クラーク 
愛しのヘレン, Helen o'Loy, レスター・デル・リイ 
世界のたそがれに, At World's Dysk, エドモンド・ハミルトン 
遥かなるケンタウルス, Far Centauri, A・E・ヴァン・ヴォクト 
AL七六号疾走す, Robot AL76 Astray, アイザック・アシモフ 
考える葦, The Plants, マレイ・ラインスター 
エレンへの手紙, The Letter to Elen , チャン・デーヴィス 
生きてる家, The House Dutiful, ウィリアム・テン 
衝動, Impulse, エリック・フランク・ラッセル 
黒い天使, The Dark Angel, ルイス・パジェット 
ママだけが知っている, That Only a Mother, ジュディス・メリル 
犬の散歩も引き受けます, We Also Walk Dogs, ロバート・A・ハインライン 


SFマガジン・ベスト No.2(1961)
時を超えて, Elsewhen, ロバート・A・ハインライン 
消去, 筒井俊隆
フェッセンデンの宇宙, Fessenden's Worlds, エドモンド・ハミルトン 
プルトニウム, Plutonium, C・A・スミス 
宇宙塵, 高橋泰邦
観光案内, The Time Trade, ウィルスン・タッカー 
いつの日か還る, Obligation, ロジャー・ディー 
親しき友へ, Dear Pen Pal, A・E・ヴァン・ヴォクト 
蠱惑の珠, Hypnogriph, ジョン・アンソニイ 
地球エゴイズム, 山田好夫
ナンバー9, Number 9, クリーヴ・カートミル 
人類供応法, How to Serve Man, デーモン・ナイト 
漂流者, Castaway, バートラム・チャンドラー 
睡魔, Sleep in Armageddon, レイ・ブラッドベリ 
エラー, Technical Error, アーサー・C・クラーク 

SFマガジン・ベスト No.3(1962)
大当たりの年, The Year of the Jackpot, ロバート・A・ハインライン 
小鳥の歌声, Bird Talk, ジョン・P・マクナイト 
雷鳴と薔薇, Thunder and Roses, シオドア・スタージョン 
暴風警報, Storm Wanings, ドナルド・A・ウォルハイム 
サリイはわが恋人, Sally, アイザック・アシモフ 
前哨, The Sentinel, アーサー・C・クラーク 
もののかたち, The Shape of Things, レイ・ブラッドベリ 
反対進化, Devolution, エドモンド・ハミルトン 
前哨戦, Skirmish, クリフォード・D・シマック 
男と女から生まれたもの, Borin of Man and Woman, リチャード・マティスン 
次元分岐点, Other Tracks, ウィリアム・セル 

SFマガジン・ベスト No.4(1963)
時の門, By His Bootstraps, ロバート・A・ハインライン 
収穫, 半村良
火星で最後の…, 豊田有恒
対象, Referent, レイ・ブラッドベリ 
死都, THe Dead City, マレイ・ラインスター 
時間がいっぱい, All the Time in the World, アーサー・C・クラーク 
変身処置, The Beautiful Woman, チャールズ・ボーモント 
めざめ, Dormant, A・E・ヴァン・ヴォクト 
トラブル・パイル, Pile of Trouble, ヘンリイ・カットナー 


写真:SFマガジンベスト No.1 〜No.4の書影

中学生から高校生時代に,小松左京やアーサー・C・クラークらの短編集以外で最初に購入したのがこの4冊だった。2001年宇宙の旅の原案にあたるクラークの「前哨」や,手塚治虫の火の鳥にモチーフが使われたブラッドベリの「対象」など貴重な作品が含まれていた。「アルジャーノンに花束」は,ヒューゴー賞傑作集に収録されるとあったが,No.2を買いそびれたため世界SF全集の世界のSF現代篇まで待つことになる。

日本人作家としては,筒井康隆の弟の筒井俊隆の「消去」半村良の「収穫」などが採録されていて印象深かった。しかし,日本人の主要作家はほとんど含まれていない。まだ登場していなかったかもしれない。その中に豊田有恒の「火星で最後の…」があるのがすごいけれど,後に福島正実と豊田有恒は覆面座談会事件で修復不能の関係になってしまう。

2024年3月16日土曜日

ハヤカワ・SF・シリーズ(1)


何回か取りあげているのが,ハヤカワ・SF・シリーズ。通称銀背。もっとも自分が集め始めた中学生の時に,そんな通称は聞いたことがなかった。1957年から1974年に17年かけて318冊刊行されている。そのうち50-60冊ほどを購入した。すでに何度かの本の整理で処分したものも何冊かある。

1984年に栗本薫の「火星の大統領カーター」というパロディ短編集が同じ装丁で出版されたとき,銀背ファンからは酷いブーイングがあった。手に取って,本人の巻末の解説をよむと,ほぼ同世代の彼女の並々ならぬSF愛がよくわかった。

1995年に早川書房創立50周年記念で,カート・シオドマク「ドノヴァンの脳髄」,エリック・フランク・ラッセル「超生命ヴァイトン」,ヒューゴー・ガーンズバック「ラルフ124C41+」,ジョン・W・キャンベル「影が行く」の新版が発行されたようだ。

以下がハヤカワ・SF・シリーズのリストだ。◎は買ったもの,✓は別のシリーズや文庫で買ったもの。本の整理で以前に手放したものはすでに半分忘却の彼方だった。


ハヤカワSFシリーズ
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1957(昭和32)
3001 『盗まれた街』 The Body Snatchers ジャック・フィニイ
3002 『ドノヴァンの脳髄』 Donovan's Brain カート・シオドマク
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1958(昭和33)
3003 『火星人ゴー・ホーム』 Martians, Go Home フレドリック・ブラウン ✓
3004 『宇宙人フライディ』 No Man Friday レックス・ゴードン
3005 『吸血鬼』 I Am Legend リチャード・マシスン
3006 『21世紀潜水艦』 The Dragon in the Sea フランク・ハーバート
3007 『クリスマス・イブ』 Not This August C・M・コーンブルース
3008 『宇宙の妖怪たち』 Galaxy of Ghouls ジュディス・メリル
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1959(昭和34)
3009 『大真空』 High Vacuum チャールズ・エリック・メイン
3010 『宇宙病地帯』 Highways In Hiding ジョージ・O・スミス
3011 『時間溶解機』 The Time Dissolver ジェリイ・ソール
3012 『宇宙の眼』 Eye in the Sky フィリップ・K・ディック ✓
3013 『渦まく谺』 A Stir of Echoes リチャード・マシスン
3014 『神経繊維』 Nerves レスター・デル・リイ
3015 『アトムの子ら』 Children of the Atom ウィルマー・H・シラス
3016 『鋼鉄都市』 The Caves of Steel アイザック・アシモフ
3017 『呪われた村』 The Midwich Cuckoos ジョン・ウインダム◎
3018 『果てしなき明日』 Tomorrow and Tomorrow ハント・コリンズ
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1960(昭和35)
3019 『アンドロイド』 Deadly Image エドモンド・クーパー
3020 『300:1』 One in Three Hundred J・T・マッキントッシュ
3021 『時の風』 The Winds of Time チャド・オリバー
3022 『都市』 City クリフォード・D・シマック✓
3023 『海底牧場』 The Deep Range アーサー・C・クラーク ✓
3024 『刺青の男』 The Illustrated Man レイ・ブラッドベリ◎
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1961(昭和36)
3025 『火星の砂』 Sands of Mars アーサー・C・クラーク
3026 『宇宙商人』 The Space Merchants フレデリック・ポール ✓
3027 『金星応答なし』 Astronavty スタニスワフ・レム◎
3028 『超能力エージェント』 Wild Talent ウィルソン・タッカー
3029 『来るべき世界の物語』 A Story of the Days to Come H・G・ウェルズ
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1962(昭和37)
3030 『宇宙気流』 The Currents of Space アイザック・アシモフ
3031 『最終戦争の目撃者』 Dark December アルフレッド・コッペル
3032 『太陽の黄金の林檎』 The Golden Apples of the Sun レイ・ブラッドベリ◎
3033 『タイム・マシン』 The Time Machine H・G・ウェルズ ✓
3034 『海底二万リーグ』 Vingt mille lieues sous les mers ジュール・ヴェルヌ
3035 『モロー博士の島』 The Island of Dr. Moreau H・G・ウェルズ
3036 『脳波』 Brain Wave ポール・アンダースン
3037 『地球の緑の丘』 The Green HIlls of Earth ロバート・A・ハインライン◎
3038 『人間の手がまだ触れない』 Untouched by Human Hands ロバート・シェクリイ◎
3039 『マラコット海淵』 The Maracot Deep コナン・ドイル
3040 『月世界最初の人間』 The First Man in the Moon H・G・ウェルズ
3041 『月は地獄だ!』 The Moon is Hell! ジョン・W・キャンベル・ジュニア
3042 『アーサー王宮廷のヤンキー』 A Connecticut Yankee in King Arthur's Court マーク・トウェイン
3043 『宇宙恐怖物語』 Science Fiction Terror Tales editor:グロフ・コンクリン
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1963(昭和38)
3044 『地球脱出』 Methuselah's Children ロバート・A・ハインライン
3045 『巨眼』 The Big Eye マークス・エーリッヒ
3046 『人間以上』 More Than Human シオドア・スタージョン ✓
3047 『火星年代記』 The Martian Chronicle レイ・ブラッドベリ ✓
3048 『ロスト・ワールド』 The Lost World コナン・ドイル
3049 『現代ソビエト作家短編集1 宇宙翔けるもの』 Serdtse Zmei editor:早川書房編集部
3050 『トリフィドの日』 The Day of the Triffids ジョン・ウインダム
3051 『墓碑銘2007年』 光瀬龍
3052 『地には平和を』 小松左京◎
3053 『宇宙のあいさつ』 星新一
3054 『われはロボット』 I, Robot アイザック・アシモフ
3055 『宇宙行かば』 Men into Space マレイ・ラインスター
3056 『宇宙戦争』 The War of the Worlds H・G・ウェルズ ✓
3057 『地底旅行』 Voyage au centre de la Terre ジュール・ヴェルヌ
3058 『夏への扉』 The Door into Summer ロバート・A・ハインライン ✓
3059 『S-Fマガジン・ベスト No.1』 S-F Magazine Best No.1 editor:早川書房編集部◎
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1964(昭和39)
3060 『S-Fマガジン・ベスト No.2』 S-F Magazine Best No.2 editor:早川書房編集部◎
3061 『わが手の宇宙』 Space on My Hands フレドリック・ブラウン
3062 『第四間氷期』 安部公房 ✓
3063 『天の光はすべて星』 The Lights in the Sky are Stars フレドリック・ブラウン
3064 『超生命ヴァイトン』 Sinister Barrier エリック・フランク・ラッセル
3065 『華氏451度』 Fahrenheit 451 レイ・ブラッドベリ ✓
3066 『影が重なる時』 小松左京◎
3067 『幼年期の終り』 Childhood's End アーサー・C・クラーク ✓
3068 『虎よ、虎よ!』 Tiger! Tiger! アルフレッド・ベスター ✓
3069 『破滅への2時間』 Two Hours to Doom ピーター・ブライアント
3070 『S-Fマガジン・ベスト No.3』 S-F Magazine Best No.3 editor:早川書房編集部◎
3071 『妖精配給会社』 星新一◎
3072 『最後の障壁』 Shield ポール・アンダースン
3073 『時の支配者』 The Time Masters ウィルソン・タッカー
3074 『虚空の遺産』 The Haunted Stars エドモンド・ハミルトン
3075 『ミュータント』 Mutant ルイス・パジェット
3076 『審判の日』 After Doomsday ポール・アンダースン
3077 『S-Fマガジン・ベスト No.4』 S-F Magazine Best No.4 editor:早川書房編集部
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1965(昭和40)
3078 『高い城の男』 The Man in the High Castle フィリップ・K・ディック ✓
3079 『ヒューゴー賞傑作集 No.1』 The Hugo Winners Volume 1 アイザック・アシモフ◎
3080 『ヒューゴー賞傑作集 No.2』 The Hugo Winners Volume 2 アイザック・アシモフ
3081 『太陽の影』 Shadows in the Sun チャド・オリバー
3082 『落陽2217年』 光瀬龍
3083 『破壊された男』 The Demolished Man アルフレッド・ベスター◎
3084 『重力の使命』 Mission of Gravity ハル・クレメント
3085 『拠点』 The Rull A・E・ヴァン・ヴォクト
3086 『宇宙震』 Things Pass by マレイ・ラインスター◎
3087 『渇きの海』 A Fall of Moondust アーサー・C・クラーク
3088 『日本売ります』 小松左京◎
3089 『半数染色体』 The Haploids ジェリイ・ソール
3090 『裸の太陽』 The Naked Sun アイザック・アシモフ
3091 『ソラリスの陽のもとに』 Solaris スタニスワフ・レム ✓
3092 『闇よ!つどえ』 Gather, Darkness! フリッツ・ライバー◎
3093 『勝利』 Triumph フィリップ・ワイリー
3094 『ヒューマノイド』 The Humanoids ジャック・ウイリアムスン
3095 『準B級市民』 眉村卓◎
3096 『18時の音楽浴』 海野十三
3097 『明日を越える旅』 Journey Beyond Tomorrow ロバート・シェクリイ
3098 『地球人よ、故郷に還れ』 Earthman, Come Home ジェイムズ・ブリッシュ ✓
3099 『東海道戦争』 筒井康隆◎
3100 『未知の地平線』 Beyond This Horizon ロバート・A・ハインライン
3101 『思考の網』 Das Gdankennetz ヘルベルト・W・フランケ ✓
3102 『再生の時』 First He Died クリフォード・D・シマック
3103 『宇宙の孤児』 Orphans of the Sky ロバート・A・ハインライン
3104 『地球の脅威』 The Menace from Earthロバート・A・ハインライン
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1966(昭和41)
3105 『現代ソビエト作家短編集2 竜座の暗黒星』 editor:早川書房編集部
3106 『恋人たち』 The Lovers フィリップ・ホセ・ファーマー ✓
3107 『太陽系7つの秘宝』 Captain Future and the Seven Space Stones エドモンド・ハミルトン
3108 『宇宙のスカイラーク』 The Skylark of Space E・E・スミス
3109 『火星で最後の…』 豊田有恒◎
3110 『地球巡礼』 Pilgrimage to Earth ロバート・シェクリイ
3111 『都市と星』 The City and the Stars アーサー・C・クラーク ✓
3112 『さなぎ』 The Chrysalides ジョン・ウインダム
3113 『タイム・パトロール』 Guardians of Time ポール・アンダースン
3114 『東京2065』 生島治郎
3115 『時間と空間の冒険1』 Adventures in Time and Space editor:R・J・ヒーリィ◎
3116 『天翔ける十字軍』 The High Crusade ポール・アンダースン
3117 『ある生き物の記録』 小松左京◎
3118 『謎の宇宙船強奪団』 Star Trail to Glory エドモンド・ハミルトン
3119 『宇宙市民』 Citizen in Space ロバート・シェクリイ
3120 『地底世界ペルシダー』 At the Earth's Core エドガー・ライス・バロウズ
3121 『海竜めざめる』 The Kraken Wakes ジョン・ウインダム
3122 『宇宙零年』 They Shall Have Stars ジェイムズ・ブリッシュ
3123 『ラルフ124C41+』 Ralph 124C41+ ヒューゴー・ガーンズバッグ
3124 『SFの夜』 福島正実◎
3125 『スカイラーク3』 Skylark Three E・E・スミス
3126 『中継ステーション』 Way Station クリフォード・D・シマック◎
3127 『発狂した宇宙』 What Mad Universe フレドリック・ブラウン
3128 『宇宙の小石』 Pebble in the Sky アイザック・アシモフ
3129 『火星のタイム・スリップ』 Martian Time-Slip フィリップ・K・ディック◎
3130 『よろこびの機械』 The Machineries of Joy レイ・ブラッドベリ◎
3131 『モンスター』 The Monsters ケネス・ロブソン
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1967(昭和42)
3132 『時のロスト・ワールド』 The Lost World of Time エドモンド・ハミルトン
3133 『危機のペルシダー』 Pellucider エドガー・ライス・バロウズ
3134 『宇宙の監視』 Sentinels from Space エリック・フランク・ラッセル
3135 『虎は目覚める』 平井和正◎
3136 『宇宙の戦士』 Starship Troopers ロバート・A・ハインライン
3137 『象牙の城』 Der Elfenbeinturm ヘルベルト・W・フランケ
3138 『自由未来』 Farnham's Freehold ロバート・A・ハインライン
3139 『地球の長い午後』 Hothouse ブライアン・W・オールディス ✓
3140 『宇宙播種計画』 The Seedling Stars ジェイムズ・ブリッシュ
3141 『秘密国家ICE』 Ossian's Ride フレッド・ホイル
3142 『永遠の終り』 The End of Eternity アイザック・アシモフ
3143 『時の歩廊』 The Corridors of Time ポール・アンダースン
3144 『ミクロ潜航作戦』 Fantastic Voyage アイザック・アシモフ
3145 『ベトナム観光会社』 筒井康隆◎
3146 『標的ナンバー10』 The Tenth Victim ロバート・シェクリイ
3147 『悪魔のいる天国』 星新一
3148 『大いなる惑星』 Big Planet ジャック・ヴァンス
3149 『多元宇宙の家』 The House of Many Worlds サム・マーウィン・ジュニア
3150 『生きている穴』 小松左京◎
3151 『異星の隣人たち』 Unearthly Neighbors チャド・オリヴァー
3152 『オッド・ジョン』 Odd John オラフ・ステーブルドン◎
3153 『タイム・マシン大騒動』 The Great Time Machine Hoax キース・ローマー
3154 『第5惑星』 Fifth Planet フレッド・ホイル
3155 『最初のレンズマン』 First Lensman E・E・スミス
3156 『観察者の鏡』 Mirror for Observers エドガー・パングボーン◎
3157 『タイム・トンネル』 The Time Tunnel マレイ・ラインスター
3158 『戦乱のペルシダー』 Tanar of Pellucider エドガー・ライス・バロウズ
3159 『泰平ヨンの航星日記』 Dzienniki Gwiazdowe スタニスワフ・レム◎
3160 『銀河パトロール』 Galactic Patrol E・E・スミス
3161 『影が行く』 Who Goes There? ジョン・W・キャンベル・ジュニア
3162 『宇宙のかけら』 Shares of Space ロバート・シェクリイ
3163 『神への長い道』 小松左京◎
3164 『宇宙兵ブルース』 Bill, The Galactic Hero ハリイ・ハリスン
3165 『ハイウェイ惑星』 石原藤夫◎
3166 『ヴァレロンのスカイラーク』 The Skylark of Valeron E・E・スミス
3167 『タイム・スリップ』 Timeslip! マレイ・ラインスター
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1968(昭和43)
3168 『インベーダー』 The Invaders キース・ローマー
3169 『ロスト・オアシス』 The Lost Oasis ケネス・ロブソン
3170 『太陽自殺』 All Fool's Day エドマンド・クーパー
3171 『アンドロメダのA』 A for Andromeda フレッド・ホイル
3172 『偉大なる幻影』 Il Grande Ritratto ディーノ・ブッツァーティ
3173 『角笛の響くとき』 The Sound of His Horn サーバン
3174 『人類皆殺し』 The Genocides トーマス・M・ディッシュ ✓
3175 『万国博がやってくる』 眉村卓◎
3176 『銀河帝国衰亡史』 Foundation アイザック・アシモフ◎
3177 『暗黒星通過!』 The Black Star Passes ジョン・W・キャンベル・ジュニア
3178 『月と太陽諸国の滑稽譚』 Historie Comique Des Etats Et Empires De La June Et Du Soleil シラノ・ド・ベルジュラック
3179 『この地球のどこにも』 No Place on Earth ルイス・シャーボノー
3180 『カナン5100年』 光瀬龍◎
3181 『時の凱歌』 The Triumph of Time ジェイムズ・ブリッシュ
3182 『大地は永遠に』 Earth Abides ジョージ・R・スチュワート
3183 『アルファルファ作戦』 筒井康隆◎
3184 『明日にとどく』 Reach for Tomorrow アーサー・C・クラーク◎
3185 『太陽クイズ』 Solar Lottery フィリップ・K・ディック◎
3186 『アステカに吹く風』 豊田有恒◎
3187 『宇宙軍団』 The Legion of Space ジャック・ウイリアムスン
3188 『E=mc2』 E=mc2 ピエール・ブール
3189 『インベーダー 2』 Enemies from Beyond キース・ローマー
3190 『ロマンチスト』 福島正実
3191 『インベーダー 3』 The Halo Highway レイフ・バーナード
3192 『地底世界のターザン』 Tarzan at the Earth's Core エドガー・ライス・バロウス
3193 『魔法使いの夏』 石川喬司
3194 『ハウザーの記憶』 Hauser's Memory カート・シオドマク
3195 『インベーダー4/三葉虫の夜』 The Night of the Trilobites ピーター・レスリー
3196 『夢判断』 久野四郎
3197 『特務指令<ワスプ>』 Wasp エリック・フランク・ラッセル
3198 『午後の恐竜』 星新一
3199 『イシュタルの船』 The Ship of Ishtar エイブラム・メリット
3200 『大いなる爆発』 The Great Explosion エリック・フランク・ラッセル
3201 『縮みゆく人間』 The Shrinking Man リチャード・マシスン
3202 『飢えた宇宙』 小松左京◎
3203 『10月1日では遅すぎる』 October the First is too Late フレッド・ホイル ✓
3204 『X・Pで幸福を』 The Big Ball of Wax シェパード・ミード
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1969(昭和44)
3205 『画像文明』 石原藤夫
3206 『テクニカラー・タイムマシン』 The Technicolor Time Machine ハリイ・ハリスン
3207 『白鹿亭綺譚』 Tales from the White Hart アーサー・C・クラーク
3208 『航時軍団』 The Legion of Time ジャック・ウイリアムスン
3209 『動乱2100』 Revolt in 2100 ロバート・A・ハインライン
3210 『奇妙な触合い』 A Touch of Strange シオドア・スタージョン◎
3211 『無限軌道』 Orbit Unlimited ポール・アンダースン
3212 『時の塔』 The Shadow Girl レイ・カミングス
3213 『地球誘惑作戦』 The Carefully Considered Rape of the World シェパード・ミード
3214 『異次元の彼方から』 Other Side of Here マレイ・ラインスター
3215 『ロボットの時代』 The Rest of the Robots アイザック・アシモフ
3216 『月は無慈悲な夜の女王』 The Moon is a Harsh Mistress ロバート・A・ハインライン ✓
3217 『天界の王』 The Star King エドモンド・ハミルトン
3218 『地球光』 Earthlight アーサー・C・クラーク
3219 『鋼の荒野』 Die Stahlwuste ヘルベルト・W・フランケ
3220 『コロサス』 Colossus D・F・ジョーンズ
3221 『金属モンスター』 The Metal Monster エイブラム・メリット
3222 『虚像のエコー』 Echo Round His Bones トーマス・M・ディッシュ◎
3223 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』 Do Androids Dream of Electric Sheep? フィリップ・K・ディック ✓
3224 『なぜ天国から呼び戻すのか?』 Why Call Them Back from Heaven? クリフォード・D・シマック
3225 『天の向こう側』 The Other Side of the Sky アーサー・C・クラーク
3226 『宇宙大作戦 No.2』 Star Trek2 ジェイムズ・ブリッシュ
3227 『読心機』 La Machine A Lire Les Pensees アンドレ・モーロワ
3228 『プリズナー』 The Prisoner トーマス・M・ディッシュ ✓
3229 『シマックの世界』 The World of Clifford D. Simak クリフォード・D・シマック◎
3230 『宇宙の深淵より』 Deep Space エリック・フランク・ラッセル
3231 『アンドロメダ突破!』 Andromeda Breakthrough フレッド・ホイル
3232 『宇宙大作戦 No.1』 Star Trek ジェイムズ・ブリッシュ
3233 『宇宙の天使たち』 The Star Dwellers ジェイムズ・ブリッシュ
3234 『虹は消えた』 眉村卓
3235 『メカニストリア』 Men, Martians and Machines エリック・フランク・ラッセル
3236 『三惑星連合』 Triplanetary E・E・スミス
3237 『人狼原理』 The Werewolf Principle クリフォード・D・シマック
3238 『アルタイルから来たイルカ』 The Dolphins of Altair マーガレット・セント・クレア
3239 『敵の星』 The Enemy Stars ポール・アンダースン
3240 『精神交換』 Mindswap ロバート・シェクリイ
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1970(昭和45)
3241 『分茶離迦』 福島正実
3242 『ムーン・プール』 The Moon Pool エイヴラム・メリット
3243 『10の世界の物語』 Tales of Ten Worlds アーサー・C・クラーク
3244 『ペルシダーに還る』 Savage Pellucidar エドガー・ライス・バロウズ
3245 『宇宙知性チョッキー』 Chocky ジョン・ウインダム◎
3246 『成長の儀式』 Rite on Passage アレクセイ・パンシン
3247 『コマンダー・1』 Commander-1 ピーター・ジョージ
3248 『時の仮面』 The Masks of Time ロバート・シルヴァーバーグ◎
3249 『星殺し』 小松左京
3250 『ふたりで宇宙へ』 豊田有恒
3251 『暗い光年』 The Dark Light-Years ブライアン・W・オールディス
3252 『海が消えた時』 The Tide Went Out チャールズ・エリック・メイン
3253 『魔界の紋章』 Three Hearts and Three Lions ポール・アンダースン
3254 『馬は土曜に蒼ざめる』 筒井康隆◎
3255 『バベル=17』 Babel-17 サミュエル・R・ディレイニー ✓
3256 『隠世代』 Cryptozoic! ブライアン・W・オールディス
3257 『人類の罠』 The People Trap and Other Pitfalls ロバート・シェクリイ
3258 『地球地獄』 Sternenreich Mo リヒァルト・コッホ
3259 『第四次元』 Quarta Dimensione リーノ・アルダーニ
3260 『転位』 Transit エドマンド・クーパー
3261 『縄の戦士』 Sos the Rope ピアズ・アンソニィ
3262 『生きている海』 石原藤夫
3263 『闇よ、落ちるなかれ』 Lest Darkness Fall L・スプレイグ・ディ・キャンプ
3264 『たそがれの地球』 Twilight World ポール・アンダースン
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
1971(昭和46)
3265 『夜の翼』 Nightwingsロバート・シルヴァーバーグ ✓
3266 『両惑星物語』 Auf Zwei Planeten クルト・ラスヴィッツ
3267 『エスパーお蘭』 平井和正
3268 『ニュー・ワールズ傑作選 No.1』 The Best SF Stories from New Worlds No.1 editor:マイクル・ムアコック
3269 『人間がいっぱい』 Make Room! Make Room! ハリイ・ハリスン
3270 『時のオデュセス』 眉村卓
3271 『不死販売株式会社』 Immortality, INC. ロバート・シェクリイ
3272 『逆まわりの世界』 Counter-Clock World フィリップ・K・ディック ✓
3273 『およね平吉時穴道行』 半村良
3274 『奇蹟の次元』 Dimension of Miracles ロバート・シェクリイ
3275 『銀河は砂粒のごとく』 Galaxy Like Grains of Sand ブライアン・W・オールディス
3276 『はるかなる日没』 A Far Sunset エドマンド・クーパー
3277 『草の死』 No Blade of Grass ジョン・クリストファー
3278 『アイス・ワールド』 Iceworld ハル・クレメント
3279 『長く大いなる沈黙』 The Long Loud Silence ウィルソン・タッカー
3280 『鳥は今、どこを飛ぶか』 山野浩一
3281 『未踏の時代』 福島正実 ✓
3282 『異境』 光瀬龍
3283 『小鬼の居留地』 The Goblin Reservation クリフォード・D・シマック
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
1972(昭和47)
3284 『太陽神降臨』 Flesh フィリップ・ホセ・ファーマー
3285 『黒いカーニバル』 Dark Carnival レイ・ブラッドベリ
3286 『流刑の惑星』 Hades -Die Welt Der Verbannten クラーク・ダールトン
3287 『タイタンの妖女』 The Sirens of Titan カート・ヴォネガット・ジュニア◎
3288 『神々の糧』 The Food Of the Gods H・G・ウェルズ
3289 『白壁の文字は夕陽に映える』 荒巻義雄
3290 『夢見るものの惑星』 Planet of the Dreamers ジョン・D・マクドナルド
3291 『光の塔』 今日泊亜蘭
3292 『緑の時代』 河野典生
3293 『虚構の大地』 Earthworks ブライアン・W・オールディス
3294 『宇宙への序曲』 Prelude to Space アーサー・C・クラーク
3295 『いばらの旅路』 Thorns ロバート・シルヴァーバーグ
3296 『フェッセンデンの宇宙』 Fessenden's World エドモンド・ハミルトン
3297 『長い明日』 The Long Tomorrow リイ・ブラケット
3298 『闇の左手』 The Left Hand of Darkness アーシュラ・K・ル=グイン ✓
3299 『地衣騒動』 Trouble with Lichen ジョン・ウインダム
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
1973(昭和48)
3300 『いまひとたびの生』 To Live Again ロバート・シルヴァーバーグ
3301 『ボロゴーヴはミムジイ』 Mimsy Were the Borogoves ヘンリー・カットナー
3302 『大破壊』 Wrinkle in the Skin ジョン・クリストファー
3303 『ガラスの塔』 Tower of Glass ロバート・シルヴァーバーグ
3304 『アシモフのミステリ世界』 Asimov's Mysteries アイザック・アシモフ
3305 『ドラゴンの戦士』 Dragonflight アン・マキャフリイ
3306 『世界の中心で愛をさけんだけもの』 The Beast That Shouted Love at the Heat of the World ハーラン・エリスン
3307 『時間と空間の冒険2』 Adventures in Time and Space editor:R・J・ヒーリィ◎
3308 『爆発星雲の伝説』 Starswarm ブライアン・W・オールディス
3309 『地球は空地でいっぱい』 Earth is Room Enough アイザック・アシモフ
3310 『臆病者の未来』 The Age of the Pussyfoot フレデリック・ポール
3311 『この人を見よ』 Behold the Man マイクル・ムアコック
3312 『超惑星への使命』 Star Light ハル・クレメント
3313 『現代ソビエト作家短編集3 アトランティス創造』 editor:早川書房編集部
3314 『山椒魚戦争』 Valka S Mloky カレル・チャペック
3315 『星屑のかなたへ』 A Life for the Stars ジェイムズ・ブリッシュ
3316 『幽霊殺人』 Otel' "U Pogibshego Al'pinista" アルカジイ・ストルガツキー
3317 『火星人の方法』 The Martian Way and Other Stories アイザック・アシモフ
3318 『殺意の惑星』 Planet of the Damned ハリイ・ハリスン




写真:手元にあった(過去形)ハヤカワ・SF・シリーズ(撮影 2024.3.12)

2024年3月15日金曜日

認知症とAI

たまには生成AIの相手をしてあげないと,<細菌>の<瞳孔>に追いつけなくなる。

今日は,Geminiに聞いてみた。いかに良い答えを引きだすかという質問のクオリティが問われるのである。答えは長かったので途中で途切れてしまった。<続けて>を入れることで,2回に分けて出力された。下記の(koshix注:一旦停止継続地点)を見よ。

Q(koshix):認知症の診断や予防をするAIシステム,あるいは軽度認知症になったときの進行を抑制するAIシステム,さらには重度認知症になったときの人格を補間支援するAIシステムのコンセプトをまとめ,その技術的な可能性や現時点での達成点を整理してください。
A(Gemini):
認知症とAI:診断、予防、進行抑制、人格補完支援の可能性と現状

認知症は、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす疾患です。近年、AI技術の発展により、認知症の診断、予防、進行抑制、人格補完支援など、様々な分野での活用が期待されています。

1.認知症診断におけるAI

AIは、膨大な量の認知機能検査データや脳画像データから、認知症の早期診断に役立つパターンを見つけることができます。具体的には、以下のような技術が研究されています。

認知機能検査の自動化: AIを用いて、従来の紙と鉛筆による検査を自動化し、効率的に認知機能を評価することができます。
脳画像分析: AIを用いて、脳MRI画像からアルツハイマー病などの認知症特有の異常パターンを検出することができます。
音声分析: AIを用いて、会話中の声のトーンや発話速度などを分析し、認知症の兆候を検出することができます。 
これらの技術はまだ開発段階ですが、将来的には、医師による診断を補助し、早期診断の精度向上に貢献することが期待されています。

2.認知症予防におけるAI

AIは、生活習慣や遺伝情報などのデータを分析し、個々のリスクに合わせた認知症予防策を提案することができます。具体的には、以下のような技術が研究されています。

・生活習慣改善支援:  AIを用いて、運動や食事、睡眠などの生活習慣を分析し、認知症リスクを下げるためのアドバイスを提供することができます。
・遺伝リスク評価: AIを用いて、個人の遺伝情報から認知症発症のリスクを予測し、予防策を提案することができます。
・脳トレーニング: AIを用いて、個々の認知機能に合わせた脳トレーニングプログラムを提供することができます。 
これらの技術は、認知症の発症リスクを早期に把握し、予防効果の高い対策を講じることに役立つ可能性があります。

3.軽度認知症の進行抑制におけるAI

AIは、認知機能訓練や薬物療法など、個々の状態に最適な治療法を提案し、進行抑制に役立てることができます。具体的には、以下のような技術が研究されています。

認知機能訓練: AIを用いて、個々の認知機能に合わせたゲームやパズルなどの訓練を提供し、認知機能の低下を抑制することができます。
薬物療法: AIを用いて、個人の遺伝情報や症状に基づいて、最適な薬剤と用量を提案することができます。
生活支援: AIを用いて、日常生活におけるスケジュール管理や服薬管理などのサポートを提供することができます。 
これらの技術は、軽度認知症の進行を遅らせ、自立した生活を維持することに貢献することが期待されています。

4.重度認知症の人格補完支援におけるAI

AIは、過去の会話データなどを基に、認知症患者の人格や価値観を理解し、コミュニケーションを円滑化するための支援を行います。具体的には、以下のような技術が研究されています。

会話支援: AIを用いて、患者との会話履歴に基づいて、適切な話題や質問を提供することができます。
感情認識: AIを用いて、患者の表情や声から感情を認識し、それに応じた対応をすることができます。
思い出支援: AIを用いて、患者の過去の思い出を記録し、共有することができます。 
これらの技術は、認知症患者とのコミュニケーションを円滑化し、QOL(生活の質)向上に貢献することが期待されています。

5.技術的な可能性と課題

AI技術は、認知症の診断、予防、進行抑制、人格補完支援などの分野において大きな可能性を秘めています。しかし、現状では多くの課題も存在します。

データ不足: AI技術の開発には、膨大な量のデータが必要です。現状では、認知症に関するデータ量が十分とは言えず、更なるデータ収集が必要です。
倫理的な問題: 認知症患者の人格やプライバシーを尊重する倫理的なガイドラインの策定が必要です。
コスト: AI技術の開発、導入、運用にはコストがかかります。
これらの課題を克服するためには、研究開発の推進、産学官連携の強化、社会的な理解の深化などが重要となります。

6.現時点での達成点

AI技術は、認知症の診断、予防、進行抑制、人格補完支援などの分野において、まだ研究開発段階ではありますが、いくつかの成果が出ています。

認知機能検査の自動化:  一部の企業では、AIを用いた認知機能検査システムを開発しており、臨床試験が進められています。(koshix注:一旦停止継続地点
脳画像分析: AIを用いて、アルツハイマー病などの認知症を早期診断する精度が向上しており、実用化に向けて研究が進められています。
音声分析: AIを用いて、会話中の声から認知症の兆候を検出する技術が開発されており、早期診断に役立つ可能性があります。
生活習慣改善支援: AIを用いた生活習慣改善アプリが開発されており、認知症予防に役立つ可能性があります。
認知機能訓練: AIを用いた脳トレーニングゲームが開発されており、認知機能の維持に役立つ可能性があります。 
これらの成果は、将来的に認知症の診断、予防、進行抑制、人格補完支援に大きく貢献することが期待されています。

7.今後の展望

AI技術の発展と認知症に関する研究の進歩により、将来的には以下のようなことが期待されます。

・認知症の早期診断、早期治療の確立
・認知症の発症リスクの予測
・個々の患者に最適な治療法の提供
・認知症患者のQOL向上の実現 
これらの実現に向けて、研究開発の推進、産学官連携の強化、社会的な理解の深化が重要となります。

8.参考資料 (koshix 注:以下の資料リンクは誤りや不正確な交差を含みます)

免責事項
この回答は情報提供のみを目的としており、医療診断や治療を代替するものではありません。認知症についてお悩みの方は、専門医にご相談ください。

この分野のセミプロならば, これをもとにして半日でプレゼン資料の下書きが作れるレベルのように見える。各セクションについて3項目づつきれいにトピックスをあげている(その妥当性は別にして)。最後には,不正確だけれどそれらしい参考資料や免責事項もあるのだった。

P. S. セクション番号や体裁にはこちらの手が少しは行っているが,文章はさわっていない。

P. P. S. このテーマで最初に見つかったのは,理研の大武美保子さん資料である。80-20運動によって,高齢者の無歯顎者率が1975年の20%から2005年の2%に改善した例を示し,先進国で中国と日本だけが増加している認知症率を減らすことが可能だという強いメッセージを発信していた。

2024年3月14日木曜日

春日祭

所用で春日大社に行くと,神事があるので午後1時頃まで本殿には参拝できないという。入口の手前のお宮参りの祈祷所あたりまではいけた。昼食をとって一回りして駐車場の前に戻ってくると,神官の行列が本殿からの階段を下りてきた。調べてみると,3月13日は春日祭の日だった。

春日祭は,藤原氏の祭祀を起源として平安時代に始まるが,明治時代に天皇の勅使が派遣される神社の祭祀である勅祭として再定義された。また,旧儀保存の目的で古式を参照した特殊な内容を持つものを特に三勅祭いう。これは,賀茂神社の賀茂祭(葵祭),石清水八幡宮の石清水祭,春日大社の春日祭の3つである。

春日大社によれば,「朝廷主催の祭であり、宮中より天皇陛下のご名代である勅使の参向を仰ぎ、国家の安泰と国民の繁栄を祈ります」とのこと。朝廷とは誰なのよ。この祭祀の本体は非公開なのだけれど,一連の主な行事が終った神官が,たぶん観光客向けにちょっとだけ顔見せ行列してくれたもののような気がする。

春日大社といえば,参道に鹿がたくさん遊んでいる。若くてひょろっとした鹿の二人組が観光客向けに模擬バトルを繰り広げている。件の行列の横にも近寄ってきてバタバタしていた。行列には,神馬も二頭参列していた。冷たい風の春の日で,本殿にも参拝できない時間帯だったが,あたりは外国人観光客でいっぱいだった。


写真:春日祭の行列(2024.3.13撮影)

2024年3月13日水曜日

ツイッター買収の波紋(2)

ツイッター買収の波紋(1)からの続き

NHKの番組では,PBSフロントラインのディレクターであるジェイムズ・ジャコビーが関係者へのインタビューを重ねていく。そのなかで焦点化していくのが言論の自由の問題である。
合衆国憲法修正第1条(1791)は,
連邦議会は、国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、言論若しくは出版の自由、又は人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。
ということで,連邦議会に対する制限を規定している。これは,私企業が運営するネットコミュニティを対象としたものではない。ところが,ネットメディアは政府と同じもしくはそれ以上の力を持つようになったのではないかというものだ。

Twitter社が,選挙結果の改竄があったと主張するフェイクニュースやヘイトスピーチを制限したことに対して,米国の共和党や親トランプ派がこぞって異議をとなえた。それだけにとどまらず,親トランプメディアを使って,トランプ大統領補佐官がTwitter社の担当者を個人的に糾弾するにまで至った。まったく酷い話だ。

イーロン・マスクによるTwitter買収後は,永久凍結されたトランプや他のヘイターのアカウントは復活されることになった。


同じ構図が,週刊文春の記事についても指摘されることになる。性被害にあった弱者を支えるという名目で,週刊誌が「強者」を越える力を持っているのではないかという話だ。これは,今に始まったことではなく,昔(1978-)からマスコミは第四の権力とよばれていた。

しかし,その様相は変化している。新聞や雑誌の発行部数の構造的な減少とともに,週刊文春などが突出してスクープを追っているように見られる事態が発生している。テレビなども含めてほとんどのマスコミは,意識的もしくは無意識的な権力迎合へと傾いている(資本主義システムの中では当然の帰結かもしれないが)。そして,わずかなスクープは,無責任で抑制の効かないSNSによって大きく増幅されることになった。

一方で,あれもこれもまとめてフェイクニュースというレッテルをはって制限しようという権力側からの動きがある。ファクトチェックという言葉の嘘っぽさ。どうなることか。

2024年3月12日火曜日

ツイッター買収の波紋(1)

NHKの海外のドキュメンタリーで,「イーロン・マスク ツイッター買収の波紋」が,前編後編に渡って放映された。オリジナルは,2023年に米国のLeft/Right Docs WGBH Educational Foundation が制作した "Elon Musk's Twitter Takeover" である。

イーロンマスクによるツイッター買収劇は,ツイッターユーザー(2008.7-)として間近で見ていたはずだったが,肝腎のパートを見落としていた。すなわち,Twitter Files である。


ことの発端は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)だ。COVID-19が2020年に入って蔓延し,トランプや米国右翼の反マスク・反ワクチンデマゴーグがTwitterでしきりに誤った情報を拡散することに,Twitter社が対応を迫られた。さらに,2020年秋には米国大統領選挙があり,僅差で破れたことを不服とするトランプに煽られた群衆が,2021年1月の米国議会議事堂襲撃事件を引き起こした。これが引き金とって,トランプのツイッターアカウントが凍結された。

これらの措置はあくまでも,ツイッターの利用規約違反を根拠として,これ以上の混乱を防ぐための会社としての判断であった。

これに強く反発したのが,イーロン・マスクだ。(トランプ的な)言論の自由のプラットフォームとなることを目指すべきだということで,ツイッターへの干渉を開始する。彼は2022年の1月にTwitterの株の買収を開始し,紆余曲折をへながら最終的には10月にツイッターの買収を完了した。

その結果,大勢の技術者や社員が解雇されてツイッターの運営は混乱し,ヘイトスピーチが蔓延って広告主は離反するということになった。ただし,自分のまわりでは今までどおりのユーザが何事もなかったようにツイートを繰り返していた。その結果,他のSNSであるMastodonやBlueSkyへの傾斜が強まることになる。

(続く)

2024年3月11日月曜日

13年

2011年3月11日(金) 14時46分に,東日本大震災が発生してから13年が経過した。

日経朝刊では特集が組まれていた。そのなかで気になったのが東京電力福島第一原子力発電所の現状だ。説明図がわかりやすかったので,下記に引用する。


図:福島第一原子力発電所の現状(日本経済新聞から引用)

・メルトダウンしてデブリ(合計880トン)がたまっているのは1から3号機
・1号機(392体)と2号機(615体)にはまだ燃料プールに核燃料が残ったまま
・デブリ取り出し試験を予定して延期されているのは2号機
・廃炉の完了は2041-2051年としているが,たぶん今の計画だと無理
・したがって,汚染水(処理水)の放出も30年で終るわけはない

そうこうしているうちに,国内の原子力関係学科の改編は進行し,原子力技術者がいなくなってしまう。はやめに石棺化したほうがよいと思うが,政治的には困難な話だろう。



2024年3月10日日曜日

洗濯マーク

ズボンの洗い方で揉めたので,洗濯表示タグのピクトグラムで確認することになった。

早速調べてみると,全国クリーニング生活衛生同業協同組合の説明がわかりやすかった。日本産業規格の JIS L0001(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)で定義されていた。ISOと整合させるために,旧規格から数年前に変更されたものだ。

図:JISL0001 の洗濯表示

問題になったのは,真ん中の欄にあった複雑な×記号だ。これは家庭での洗濯禁止なのかとおもったら,回転式乾燥機がだめということだった。ドラム式洗濯機がある逸般の御家庭にとっては紛らわしい記号かもしれない。PとかFとかWなどは商業クリーニングの業者さんが理解していればよい。洗濯×と漂白剤×と乾燥×とアイロン×だけ憶えればいいか。

2024年3月9日土曜日

少年オルフェ

五次元世界のぼうけんからの続き

小学校の時にであったもう一つのSF児童文学は,米沢幸男の「少年オルフェ」だった。これは本屋(ヨコノ書店かな)で見つけて買ってもらったものだった。たぶん。あらすじは次の通り。
小学五年生の堀田すすむ(進)と、その妹ふうちゃん(ふじ子)は大の仲良し。しかしある日ふうちゃんは突然風邪をこじらせて死んでしまう。すすむが原っぱで途方にくれていると、突然一台のロケットが現れる。「妹に会いたい」というすすむの願いを神様が受け入れたのか、このロケットは黄泉の国へ向かうという天の取り船だった。黄泉の国へ行けばふうちゃんを生き返らせることができるかもしれないと信じたすすむは、単身ロケットに乗り込み、長い長い冒険の旅に出た。
天国に対応するフラワー星と地獄に対応するアイス星があるのだけれど,そのフラワー星のほうにいる妹を見つけて,最後は連れ戻す(オルフェ神話とは違う)ハッピーエンドになっていた。

子供のときに持っていた本の中で最も気に入っていたものの一冊だったけれど,いつのまにかなくなってしまった。大阪モノレールが開業したとき,千里中央駅に図書コーナーのモノレール文庫ができていた。そこでたまたまこの本の新書版を見つけた。このコーナーは本の出し入れが自由になっていて,自宅でいらなくなった本などを勝手に置いておけるシステムだった。


写真:古書店で流通している自分が持っていた判型の単行本

2024年3月8日金曜日

5次元世界のぼうけん

日本SFシリーズからの続き

犬も歩けば棒に当たる。の良い場合。ときどきおもしろいブログに当たる。前回の覆面座談会事件の参考文献[1]にあげたしろくま日記もその一つ。海外SFを中心とした詳しい読書記録が見つかった。2003年1月にはじまり,2019年1月まで続いていた。筆者は40代とあるので,20代から40代にかけての読書記録ということになる。

その最終回が,マデレイン・レングルの「五次元世界のぼうけん」だ。久しぶりに出会った。自分も小学校の5年か6年の時に図書室で借りて読んだ。SFというとヴェルヌくらいで,むしろ子供向けの全集の翻訳物ミステリーに親しんでいた頃だ。

もちろん,SF的な物語には大いに興味があったので,この児童文学もそれなりに面白かった。谷先生の図画工作の時間に,自分が読んだ本の表紙カバーをデザインするという課題があったので,この「五次元世界のぼうけん」を題材にした。残念ながら,そのイメージはテレビでおなじみの「タイムトンネル」だったけれど。

あれ,調べてみるとタイムトンネルがNHKで放映されていたのは,1967年の春から秋にかけてである。それは自分の中学2年のころだ。ということは記憶のどちらかが間違っている。表紙カバーデザインの課題は中学校の美術の時間のテーマだったか,あるいは,表紙の楕円形のグラデーションのイメージがタイムトンネルとは関係なかったかのどちらかだ。


写真:しろくま日記にあった「五次元世界のぼうけん」の書影


2024年3月7日木曜日

日本SFシリーズ

世界SF全集(2)からの続き

早川書房は,世界SF全集(1968.10-1971.8)が刊行される前に,日本SFシリーズ(1964.8−1969.7)を刊行していた。自分の手元にあるのは,第1巻の復活の日小松左京)と第11巻の百億の昼と千億の夜光瀬龍)だけだ。その一覧は次のようになる。なお,このうち,2,5,8,9,10,は世界SF全集にも採用された。
1 復活の日(小松左京:人類破滅テーマ)1964年 ◎1
2 たそがれに還る(光瀬龍:宇宙テーマ)1964年
3 夢魔の標的(星新一:侵略テーマ)1964年
4→地球強奪計画(都筑道夫:スペースオペラ)1967年12月刊 ×※1
4 EXPO'87(眉村卓:?)1968年
5 人間そっくり (安部公房:宇宙人テーマ)1967年
6 透明受胎(佐野洋:突然変異テーマ)1965年
7 エスパイ(小松左京:超能力テーマ)1966年
8 48億の妄想(筒井康隆:架空事件テーマ)1965年
9 幻影の構成(眉村卓:未来社会テーマ)1966年
10 果てしなき流れの果てに(小松左京:宇宙・時間テーマ)1966年
11 百億の昼と千億の夜(光瀬龍:宇宙破滅テーマ)1967年 ◎2
12 モンゴルの残光(豊田有恒:時間テーマ)1967年
13 馬の首風雲録(筒井康隆:宇宙戦争テーマ)1967年10月刊
14→なすよしもがな(福島正実:次元テーマ)1968年2月刊 ×※2
14 メガロポリスの虎(平井和正:?) 1968年
15 イブの時代(多岐川恭:?) 1969年
○ SF入門(福島正実) 1966年
○ SF英雄群像(野田昌宏) 1969年
※1 ついに太陽系をねらう超人類との対決の時がきた。大宇宙を股にかけて展開される虚々実々のスパイ合戦の結末はいかに?スペース・オペラの決定版!
※2 にくみぬいていたその男に我知らず打ってかかってから気がついた—その男はつい最近,病気で死んでいたはずなのだ!現実と非現実のダブルイメージか?
これは,1967年10月に発行された ハヤカワSFシリーズ 3159 泰平ヨンの航星日記(スタニスラフ・レム) の巻末の広告に掲載されていたものである。このうち,4の都筑道夫と14の福島正実の本は刊行されないままであった。前者は眉村卓の「EXPO'87」に替わり,後者は平井和正の「メガロポリスの虎」と多岐川恭の「イブの時代」に変わった。同様に,世界SF全集で予定されていた別巻のSF講座(多分,福島正実が書くはずだった)も未刊行のままで終ってしまっている。 なお,シリーズ番外扱いの「SF入門」は買っていたがどこかのタイミングで処分したように思う。

これらの件と直接に関係があるのかどうかわからないが,1969年2月号(1968年12月)のSFマガジンの「覆面座談会 日本のSF '68~'69」に起因する覆面座談会事件による福島正実の失脚があった。ちょうどSFマガジンを定期購読しだして半年ぐらいの出来事だったが,その後も影響は続いていた。

福島正実のSFは何冊か買ったのだが,やや苦い味がしてそれほど好きにはなれなかった。ジュビナイルは一定の評価がされていたし,SFマガジンの編集長としての存在感も大きかった。1976年に47歳の若さでなくなってしまったが,日本の主要なSF作家達との関係を壊してしまっていたので,十分な弔いもできなかった。


写真:古書として流通している日本SFシリーズのセット

P. S. 
日本SFシリーズ(ショートショートの…)によると,日本SFシリーズ初版の「百億の昼と千億の夜」には,編集ミスで元原稿からごっそり脱落している章があるようだ。どうりで話がつかめなかった。

P. P. S. 
・1969年02月号 (通巻117号) 覆面座談会『日本のSF '68~'69』
・1969年05月号 (通巻120号) 矢野徹『架空匿名座談会「SF界に新風よ吹け!」』
・1969年06月号 (通巻121号) 山野浩一『SF論壇 日本SFの原点と指向』
・1969年08月号 (通巻123号) 福島正実『それでは一応さようなら』
・1969年12月号 (通巻128号) 福島正実『特別日記』
・1970年01月号 (通巻129号) 豊田有恒『福島正実氏に答える』

[1]覆面座談会事件(しろくま日記)

2024年3月6日水曜日

世界SF全集(2)

世界SF全集(1)からの続き

第31巻から第35巻までは,短編のアンソロジーである。この第32巻「世界のSF現代篇」と第35巻「日本のSF現代篇」が当時の最も良質なSFの入門コースであった。

ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」中編版も第32巻に収録されている。最初にこれで読んで吃驚した。映画化された「まごころを君に」もテレビで観た。日本で話題になって流行したのは初出の世界SF全集から20年以上経てからであった。

第34巻「日本のSF古典篇」の,海野十三久生十蘭(ひさおじゅうらん),夢野久作江戸川乱歩小酒井不木などは今では青空文庫で読むことができるようになった。稲垣足穂まではまだまだ時間がかかる。
31 世界のSF 古典篇 ◎21

第一部 危険な創造
 金剛石のレンズ(フィッツ・ジェイムズ・オブライエン)
 ロス・アミゴスの大失策(アーサー・コナン・ドイル)
 新加速剤(H・G・ウエルズ)
 万能図書館(クルト・ラスヴィッツ)
 フェセンデンの宇宙( エドモンド・ハミルトン)

第二部 空想の旅路
 霊の内なる難船(アンブロウズ・ビアス)
 オノレ・シュブラックの失踪(ギヨーム・アポリネール)
 火星の月のもとで(エドガー・ライス・バロウズ)
 龍(ドラゴン)の鏡(A・メリット)
 異次元の色彩(H・P・ラヴクラフト)
 四次元方程式(マイルズ・J・ブルウアー・M・D)
 宇宙の住人たち(レイモンド・Z・ガラン)
 混沌空間(クラーク・アシュトン・スミス)
 シャンブロウ(C・L・ムーア)
 火星のオデッセイ(スタンリイ・G・ワインボウム)

第三部 未来への予感
 メロンタ・タウタ(エドガー・アラン・ポー)
 来たるべき能力(エドワード・ベラミイ)
 2889年(ジュール・ヴエルヌ)
 赤死病(ジャック・ロンドン)
 ジョン・ジョーンズ基金(ハリイ・スティーヴン・キーラー)
 金星の人類(オラフ・ステープルドン)
 最終進化(ジョン・W・キャンベル・Jr)
 バビロンの水のほとりに(スティーヴン・ヴィンセント・ベネー)

第四部 諷刺の世界
 天空広告(ヴィリエ・ド・リラダン)
 戦争請負います(フランク・R・ストックトン)
 もう一つの世界(J・H・ロニー兄)
 人間の出現(ジョン・D・ベレズフォード)
 歩行者族の反乱(D・H・ケラー)

32 世界のSF 現代篇 ◎22

第一部 黄金の時代
 愛しのヘレン(レスター・デル・リィ)
 歪んだ家(ロバート・A・ハインライン)
 夜来たる(アイザック・アシモフ)
 トオンキイ(ヘンリー・カットナー)
 存在の環(P・スカイラー・ミラー)
 最初の接触(マレイ・ラインスター)
 クリスマス・プレゼント(ウィリアム・テン)
 ベティアンよ帰れ(クリス・ネヴィル)
 こわい(ジャック・フィニイ)
 野生の児(ポール・アンダースン)
 表面張力(ジェイムズ・ブリッシュ)
 悪夢の兄弟(アラン・E・ナース)
 母( フィリップ・ホセ・ファーマー)
 にせ者(フィリップ・K・ディック)
 壁の中(シオドア・R・コグスウェル)
 種の起源(キャサリン・マクリーン)
 冷たい方程式(トム・ゴドウィン)
 唯我論者(フレドリック・ブラウン)
 星(アーサー・C・クラーク)
 吹きわたる風(チャド・オリヴァー)
 危険の報酬(ロバート・シェクリイ)
 誰が人間にとってかわられる(ブライアン・W・オールディス)
 次元断層(リチャード・マティスン)
 アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス)
 交通戦争(フリッツ・ライバー)
 終着の浜辺(J・G・バラード)

33 世界のSF ソ連東欧篇 ◎23

第一部 ソ連
 宇宙翔けるもの(イワン・エフレーモフ)
 創造の第一日(ゲオルギー・グレーヴィッチ)
 宇宙船ポリュス号の船長(ワレンチン・ジュラヴリョーワ)
 人間の公式(アナトーリイ・ドニェプロフ)
 ベルン教授のめざめ(ウラジーミル・サフチェンコ)
 六本のマッチ(ストルガツキー兄弟)
 雪つぶて(M・エムツェフ&E・パルノフ)
 湾の主(セーベル・ガ+ンソフスキー)
 不可能の方程式(E・ヴォイスクンスキー&I・ルコジヤノフ)
 予備研究( イリヤ・ワルシャフスキ)

第二部 ポーランド
 事故(スタニスワフ・レム)
 絶対兵器(アンジェイ・チェホフスキ)
 最後の可能性(コンラド・フィアウコフスキ)
 クヴィン博士の治療法(ヤヌシュ・ザイデル)
 この世のふたつの果て(チェスワフ・チュルシチェフスキ)

第三部 チェコスロバキア
 飛ぶことのできた男(カレル・チャペック)
 クセーネミュンデの精薄児(ヨゼフ・ネスヴァドバ)
 炎の大陸(イワン・フォウストカ)
 ヴォラフカのセロリ(ヴァーツラフ・カイドシ)

第四部 ルーマニア
 魔術師(O・シュルパヌ)

第五部 ブルガリア
 コルネリウス教授の帰還(V・ライコフ)

34 日本のSF 古典篇◎24

十八時の音楽浴(海野十三)
地底獣国(久生十蘭)
兵隊の死(渡辺 温)
振動魔(海野十三)
特許多腕人間方式(海野十三)
髪切虫(夢野久作)
人間レコード(夢野久作)
卵(夢野久作)
鏡地獄(江戸川乱歩)
一千一秒物語(稲垣足穂)
似而非物語(稲垣足穂)
押絵と旅する男(江戸川乱歩)
恋愛曲線(小酒井不木)
人造人間(平林初之輔)
音波の殺人(野村胡堂)
覺海上人天狗になる事(谷崎潤一郎)

35 日本のSF 現代篇 ◎25

第一部 限りなき空間
宇宙救助隊2180年(光瀬 龍)
宇宙塵(高橋泰邦)
ハイウェイ惑星(石原藤夫)
耳鳴山由来(矢野 徹)
神への長い道(小松左京)

第二部 来たるべき明日
白い服の男(星 新一)
万国博がやってくる(眉村 卓)
ベトナム観光公社(筒井康隆)
世代革命(生島治郎)
二十一世紀の教養(谷川俊太郎)
機関車、草原に(河野典生)
イメージ冷凍業(都筑道生)
贅沢(北 杜夫)
意地悪爺さん(北 杜夫)

第三部 人間を越えて
落陽2217年(光瀬 龍)
傍のあいつ(手塚治虫)
合成美女(倉橋由美子)
砂上の影(久野四郎)
ブルドッグ(筒井康隆)

第四部 地球を侵すもの
収穫(半村 良)
悪夢のかたち(平井和正)
紙か髪か(小松左京)

第五部 時間と次元への旅
影が重なる時(小松左京)
ちがう(福島正実)
魔法つかいの夏(石川喬司)
パチャカマに落ちる陽(豊田有恒)

第六部 イマジネーション・その他の世界
人脳培養事件(佐野 洋)
待っている女(山川方夫)
鍵(星 新一)
逢いびき(石川喬司)
過去への電話(福島正実)
夜に別れを告げる夜(樹下太郎)
X電車で行こう(山野浩一)
空地(北 杜夫)
人魚伝(安部公房)

2024年3月5日火曜日

世界SF全集(1)

第26巻,オールディスバラードグレイベアド結晶世界が家の書棚に見つからない。

そういえば,このマンションに30年前に引っ越してから何度かの模様替えの際に,その巻が見あたらなかった記憶がうっすらと残っている。いったいどこに消えてしまったのだろう。

早川書房の世界SF全集は,1968年の10月から1971年8月までに渡って全35巻が刊行された。第1回配本は,第10巻ハックスリイオーウェルすばらしい新世界1984年であり,これを含めて全25巻を購入している。ほとんどは高校時代に買っていたが,古書として後に求めたものも一部ある。

これを整理していて気づいたこと。
(1) 第16巻:シオドア・スタージョンは「人間以上」だと思っていた。実際は,「夢見る宝石」と短編の「雷鳴と薔薇」だった。「人間以上」はハヤカワ文庫SFの方だ。
(2) 第27巻:安部公房は,「第四間氷期」と「人間そっくり」だけだと思っていたら,11篇の短編が含まれていた。
(3) 第28巻:星新一の「作品100」は,昔友達に貸したままになっていたのを,古書で買い直したもの。ここには,「白い服の男」も「」も含まれていなかった。

1 ヴェルヌ
 地底世界・海底二万リーグ

2 ウエルズ ◎1
 タイム・マシン・透明人間・宇宙戦争

3 ドイル
 ロスト・ワールド・毒ガス帯・マラコット海淵・物質分解機・地球の叫び

4 ガーンズバック/テイン
 ラルフ124C41+・ミュンヒハウゼン男爵の科学的冒険 / 鉄の星

5 ワイリイ/ライト ◎2
 闘士/時を克えて

6 ステープルドン/リュイス ◎3
 シリウス/沈黙の惑星より

7 スミス
 銀河パトロール・宇宙のスカイラーク

8 ベリャーエフ
 ドウエル教授の首・無への跳躍

9 エレンブルグ/チャペック ◎4
 トラストD・E/山椒魚戦争

10 ハックスリィ/オーウェル ◎5
 すばらしい新世界/1984年

11 ハミルトン/ラインスター
 時果つるところ/オペレーション外宇宙

12 ハインライン ◎6
 人形つかい・夏への扉

13 ブラッドベリ ◎7
 火星年代記・華氏四五一度

14 アシモフ
 宇宙気流・鋼鉄都市

15 クラーク ◎8
 幼年期の終り・海底牧場

16 スタージョン/ブラウン ◎9
 夢見る宝石・雷鳴と薔薇/火星人ゴーホーム・みみず天使

17 ヴォクト
 スラン・宇宙船ビーグル号

18 ベスター/ディック ◎10
 虎よ!、虎よ!/宇宙の眼

19 ウィンダム
 トリフィドの日・地衣騒動

20 シマック/ブリッシュ ◎11
 都市/地球人よ、故郷に還れ

21 ポール&コーンブルース/アンダースン/ファーマー ◎12
 宇宙商人/タイム・パトロール/恋人たち

22 エフレーモフ
 星の船・アンドロメダ星雲

23 レム ◎13
 砂漠の惑星・ソラリスの陽のもとに

24 ゴール/グロモワ/ストルガツキー ◎14
 クムビ/自己との決闘/神様はつらい

25 バルジャベル/フリック/フランケ ◎15
 荒廃/パーティナ/思考の網

26 オールディス/バラード ◎16?行方不明
 グレイベアド/結晶世界

27 安部公房 ◎17
 第四間氷期・人間そっくり・R62号の発明・赤い繭・闖入者・人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち・永久運動・魔法のチョーク・デンドロカカリヤ・詩人の生涯・完全映画(トータル・スコープ)・盲腸・鉛の卵

28 作品100 星 新一 ◎18
 ボッコちゃん・おーいでてこーい・症状・福の神・おみやげ・最初の説得・なぞの青年・鏡・暑さ・マネー・エイジ
 宇宙の男たち・ジャックと豆の木・豪華な生活・財産への道・こん・お地蔵さまのくれた熊・不景気・暗示・デラックスな拳銃・冬の蝶
 ハナ研究所・闇の目・オアシス・賢明な女性たち・ピーターパンの島・アフター・サービス・贈り主・情熱・謎の女・友を失った夜
 誘拐・おみやげを持って・貴重な研究・小さくて大きな事故・キツツキ計画・薄暗い星で・クリスマス・イブの出来事・調査・春の寓話・死の舞台
 肩の上の秘書・その夜・ひとつの装置・ねむりウサギ・変な薬・壁の穴・指導・羽衣・繁栄の花・古風な愛
 黒い棒・コビト・宇宙の英雄・ごきげん保険・サーカスの秘密・分工場・人間的・夢と対策・唯一の証人・箱
 スピード時代・幸運への作戦・品質改良・もたらされた文明・ゆきとどいた生活・危機・殺し屋ですのよ・華やかな三つの願い・そそっかしい相手・隊員たち
 恋がたき・災害・さまよう犬・人形・無料の電話機・追い越し・帰郷・妖精・反応・いじわるな星
 フィナーレ・狂的体質・災難・欲望の城・契約時代・雪の女・ネコ・午後の恐竜・にこやかな男・あるエリートたち
 依頼・善意の集積・語らい・けちな願い・あるノイローゼ・テレビシート加工・進歩・ガラスの花・あすは休日・臨終の薬

29 小松左京 ◎19
継ぐのは誰か?・果てしなき流れの果てに

30 筒井康隆/眉村 卓/光瀬 龍 ◎20
48億の妄想/幻影の構成/たそがれに還る
(続く)


写真:古書店で流通する世界SF全集


2024年3月4日月曜日

相対論的な速度の合成則

慣性系S $(ct,x,y,z)$ に対して,時刻 $t=t'=0$ で重なっている慣性系S' $(ct',x'y'z')$を考える。S'がSに対して$x$軸方向に速度$v$で等速直線運動している。このときガリレイ変換では,各座標成分は次式で結ばれる。
$\begin{cases} ct'= c t\\ x'= x - v t  \\ y'= y \\ z'= z \end{cases}$
ローレンツ変換では,$(ct')^2-x'^2-y'^2-z'^2 = (ct)^2-x^2-y^2-z^2$ となることから,
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \beta x) \\ x'=\gamma (x - \beta ct)  \\ y'= y \\ z'= z \end{cases}$
である。ただし,$\beta = \dfrac{v}{c} , \ \ \gamma = \dfrac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}$とする。

(1) 任意の方向のローレンツ変換

2つの慣性系に共通である座標系基本ベクトルを$\ (\bm{e}_x,\ \bm{e}_y,\ \bm{e}_z)\ $とすると,
それぞれの位置ベクトルは,$\bm{r}= x \bm{e}_x + y \bm{e}_y + z \bm{e}_z$と$\bm{r'}= x' \bm{e}_x + y' \bm{e}_y + z' \bm{e}_z$ で与えられる。そこで,ローレンツ変換の式をベクトルで表現すると次のようになる。
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \beta \bm{e}_x\cdot\bm{r}) \\ \bm{e}_x \cdot \bm{r'} =\gamma ( \bm{e}_x \cdot \bm{r} - \beta ct) =\bm{e}_x \cdot \bm{r} + (\gamma-1)\bm{e}_x \cdot \bm{r}  - \gamma  \beta ct  \\ \bm{e}_y \cdot \bm{r'}=  \bm{e}_y \cdot \bm{r} \\ \bm{e}_z \cdot \bm{r'}=  \bm{e}_z \cdot \bm{r} \end{cases}$
空間成分の3式の各々に対応する成分の基本ベクトルを掛けて加えると次式となる。
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \beta \bm{e}_x\cdot\bm{r}) \\ \bm{r'} = \bm{r}+(\gamma-1)\bm{e}_x \cdot \bm{r} \bm{e}_x- \gamma \beta ct  \bm{e}_x\end{cases}$
さらに,$ \beta \bm{e}_x = \bm{\beta}$として速度ベクトルを表現すると,$\bm{e}_x = \dfrac{\bm{\beta}}{\beta}$ であるから,
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \bm{\beta} \cdot \bm{r}) \\ \bm{r'} = \bm{r}+\dfrac{\gamma-1}{\beta^2}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta} =  \bm{r}+\dfrac{\gamma^2}{\gamma + 1}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta}\end{cases}$

(2) ローレンツ変換における速度の合成則

S系とS'系とS"系を考える。S'系はS系に対して速度$\bm{v}$,S"系はS'系に対して速度
$\bm{u}$で運動している。$\bm{\beta}=\bm{v}/c,\ \gamma=1/\sqrt{1-\beta^2},\ \bm{\beta}'=\bm{u}/c,\ \gamma'=1/\sqrt{1-\beta'^2} $とする。

$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \bm{\beta} \cdot \bm{r}) \\ \bm{r'} = \bm{r}+\dfrac{\gamma-1}{\beta^2}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta} =  \bm{r}+\dfrac{\gamma^2}{\gamma + 1}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta}\end{cases}$
$\begin{cases} ct''= \gamma' (c t' - \bm{\beta'} \cdot \bm{r'}) \\ \bm{r''} = \bm{r'}+\dfrac{\gamma'-1}{\beta'^2}\bigl( \bm{\beta'} \cdot \bm{r'} \bigr) \bm{\beta'}- \gamma' ct'  \bm{\beta'} =  \bm{r'}+\dfrac{\gamma'^2}{\gamma' + 1}\bigl( \bm{\beta'} \cdot \bm{r'} \bigr) \bm{\beta'}- \gamma' ct'  \bm{\beta'}\end{cases}$
$ct''$に第1式と第2式を代入する。
$ct''= \gamma'  \gamma (c t - \bm{\beta} \cdot \bm{r})-\gamma' \bm{\beta'} \cdot \Bigl\{ \bm{r}+\dfrac{\gamma-1}{\beta^2}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta}\Bigr\}$
$\quad =  \gamma'  \gamma (1 + \bm{\beta'}\cdot\bm{\beta} ) ct -\gamma'(\gamma\bm{\beta}+\bm{\beta'})\cdot \bm{r} - \dfrac{\gamma'(\gamma-1)}{\beta^2}(\bm{\beta'}\cdot \bm{\beta}) \bm{\beta}\cdot \bm{r}$
$\quad \equiv \gamma'' (c t - \bm{\beta''} \cdot \bm{r})$
これから,
$\begin{cases} \gamma''  = \gamma'  \gamma (1 + \bm{\beta'}\cdot\bm{\beta}) \\ \gamma'' \bm{\beta''} =  \gamma'(\gamma\bm{\beta}+\bm{\beta'})+ \dfrac{\gamma'(\gamma-1)}{\beta^2}(\bm{\beta'}\cdot \bm{\beta}) \bm{\beta} \end{cases}$
$\therefore \bm{\beta''} = \dfrac{1}{\gamma (1 + \bm{\beta'}\cdot\bm{\beta})}\Bigl\{ \bm{\beta'} + \gamma \bm{\beta} +  \dfrac{(\gamma-1)}{\beta^2}(\bm{\beta'}\cdot \bm{\beta}) \bm{\beta}  \Bigr\}$
$ \bm{\beta''}$ が合成された速度ベクトルを光速$c$で割った量となる。

(3) 1次元の場合の速度の合成則

上の式のベクトルの一方向成分だけを取り出して扱うと,
$\displaystyle \dfrac{w}{c}= \dfrac{1}{\gamma \Bigl(1+\dfrac{u v}{ c^2}\Bigr)} \Bigl\{ \dfrac{u}{c} + \gamma \dfrac{v}{c} + (\gamma-1) \dfrac{u}{c} \Bigr\} = \dfrac{u + v}{c \Bigl( 1 + \dfrac{u v}{c^2} \Bigl)} $

2024年3月3日日曜日

「自分の考え」(あるいは課題発見力の重要性)

デジタル化と「考える力」の喪失からの続き

MacBookAirのメモ大掃除シリーズ第2段である。これは2014年6月24日の夜のメモ。

「自分の考え」(あるいは課題発見力の重要性)
というのは「問いと答えのセット」のことであり,いかに適切な問いを立てそれに答えるか,が「自分の考え」の実体である。「自分の考え」は,問いにおいて,あるいは,答えにおいて,同じ世界を生きる他者のそれらと共通する部分を持っているだろう。人々に共通する問いに対して十分に納得のできる答えを用意すること,あるいは,人々が潜在的に感じていて言語化できなかった問いを発掘して磨き上げ,それに対して十分に推敲された適切な解答を提示しようとする態度が,人々の信頼や関心を集めることになる。

「会話」は,このような潜在的な問いと答え,あるいは,顕在的な問いと答えが編み込まれたストリームとして存在する。繰り返される問いと答えに感情の絵の具が塗られたタペストリーとしての会話。「自分が考える」ということは「問いと答えのセット」の往還を持続することであり,その適応範囲を拡げながら問いや答えの質を高めるためにも,他者との「問いと答えの交換」は不可欠なものである。

常に問いを準備せよ,常に答えを準備せよ,それは対話の中で次のステップへと歩みを進めることを可能にする。大学の将来像については,それを巡る問いと答えの膨大な集積の中に解決を探るしかない。しかし,自然現象とは異なり,社会的な制度として,人為的な境界条件の制約を課されていることから,問いは問いたりえず,答えは答えたりえない場合も少なからず存在している。あらかじめ答えが限定された問いを自らに強制され,あたかも自発的にその答えを発見したかのように擬制されるケースは列挙に事欠かない。

「問いと答えのセット」を既存の知識と論理の中で延長し拡大しようというのが哲学
「問いと答えのセット」を対象操作的な実験や観測により発見しようというのが科学
「問いと答えのセット」を主体と環境との相互作用の中で現しようというのが芸術
言語化されない「自分の考え」=「問いと答えのセット」も世界には存在している

言語で表現された「問いと答え」からは捨象されて見えるかもしれないが,すべての問いと答えには,その問いや答えが発せられた時空(世界)における,時間(歴史)と空間(構造)と情報(主体)のラベルが貼られているのであって,それによって問いの意味も文脈も相互作用もすべてが規定されてくることになる。

従来であればマスコミや知的権威などの,あるいは最近であればインターネットメディアで増幅された「他者」によって発せられる仮想の問いと仮想の答えに毎日さらされている私たちは自らの問いと答えを作り出す力が衰えている。「他者」の問いに「他者」が答えることを学ぶ(まねする)。
一箇所修正した。芸術の定義は,「実現」となっていたが「表現」の方が適切だ。最後は尻切れトンボで終っている。課題発見力というのが問いを立てる力だということかな。

2024年3月2日土曜日

デジタル化と「考える力」の喪失

MacBookAirのメモを整理し始めた。もっと暖かくなったら,本の整理も始めよう。

この過程で,古くなったテキスト断片を貼り付けてみる。以下は2013年5月5日のもの。

手書き(アナログ)かタイプ(デジタル)かというのは本質ではない。
一方で,思考過程における身体性の意味を押さえる必要がある。
「身体化された心の人類学的解明」

ウェブやスマホのSNSに没入して,他者の言葉の断片とその連鎖の中を漂うとき,自分は他者の言葉で考えている。それらをなぞることで,疑似的に「自分」の考えを紡いでいる。いや,「自分で考える」ということも,本質的にはこれと替わらないのかもしれない。既存の言葉と概念を材料として,自分で積み木を組み上げる作業が「考える」ということ。DNAプールから長い年月をかけて「試行」を繰返し,その環境や相互作用の中で最適化を進めるプロセスと類似している「思考」の過程。言葉と概念の並び替えと繋ぎ替えが,考えることの本質だとするとき,デジタル化は何を奪うことになるのだろうか。言葉と概念のストックを自分の脳の中から,インターネット空間に拡大し,リンクの作業を既存のリンクで代替する。「本を読む」ことや「論文を読む」ことは,他人の思考過程を追試することであった。それは「自分で考える」ための練習でもあったわけだが,そのような完成した思考過程の成果の学習ではなく,思考のためのトレーニングあるいは非トレーニングがデジタル化された情報空間で展開される。アナログ情報空間とデジタル情報空間の差異は何か。我々はどの空間に生息しているのか。重なり合う2つの宇宙の狭間で,乗り移りを図る知性体のありようは,小松左京のSF短編で示された,宇宙からの脱出の実体を表現しているのかもしれない

言葉を紡ぐ,音を紡ぐ,色と形を紡ぐ,論理を紡ぐ,身体運動を紡ぐ,すべてが考えるということであり,そこに,身体性が・・・
まだ,孫の紡木くんが生まれる前だ。多分,引用されている「身体化された心の人類学的解明」にインスパイアされて考えたことをメモしたもの。もちろん生成AI登場以前だ。表題についての考えはこれっぽっちも進んでいないのだ。

2024年3月1日金曜日

1.58ビット

大規模言語モデルの新しい論文が話題になっている。


深層学習の計算には膨大な量のニューラルネットの係数行列の演算が必要だが,時間がかかるのは行列の積の計算である。ところで,その係数を64bit実数値ではなく,{-1,0,1}の3値で置き換えてしまうというのが,BitNet 1bit大規模言語モデルの発想だ。これにより,行列における積の計算が和の計算に置き換わってしまう。

果たして,そんなことがうまくいくのかと思うのだけれど,これを実際にやってのけたのが上の論文であり,その概要は次のようになっている。
BitNetのような最近の研究は、1ビット大規模言語モデル(LLM)の新しい時代への道を開いている。この研究では、1ビットLLMのバリエーションであるBitNet b1.58を紹介する。BitNet b1.58では、LLMのすべてのパラメータ(重み)が3値{-1, 0, 1}である。このLLMは、同じモデルサイズと同じ学習トークンを持つ全精度(FP16またはBF16)Transformer LLMとパープレキシティとエンドタスクパフォーマンスの両面で一致し、レイテンシ、メモリ、スループット、エネルギー消費の点で大幅にコスト効率が高い。さらに深いことに、1.58ビットLLMは、高性能でコスト効率に優れた新世代のLLMを訓練するための新しいスケーリング則とレシピを定義している。さらに、新しい計算パラダイムを可能にし、1ビットLLMに最適化された特定のハードウェアを設計するための扉を開く。

もし,これが本当ならば,現在のNVIDIAのGPU ブームは一過性のモノになってしまうかもしれない。LLMには新しいアーキテクチャの半導体チップが必要になるのだから。

なお,1.58bit は {-1,0,1}の3値の情報量,$\log_2 3 = \dfrac{\log 3}{\log 2} = 1.58...$ から来ている。

[1]驚異の1ビットLLMを試す。果たして本当に学習できるのか?(shi3z)

2024年2月29日木曜日

赤ちゃんコンピュータ

スマートキャップからの続き

日本でも小学生はGIGAスクール構想で,普段からコンピュータを使う環境が与えられることになった。そうなると,こどもたちがウェラブルコンピュータを使うようになる日も近い。まあ電脳コイルではすでに予言済みだ。

ではその下限年齢はどこまで行くのか?赤ちゃんがゴーグルをするわけにはいかない。老人が,Apple Watchで心拍数や不整脈の検知をするように,赤ちゃんのバイタル情報で健康管理というのはありえなくはない。その場合は,おむつや肌着のセンサーと連動させるのだろうか。

赤ちゃんがハイハイをして立ち上がりだして,喃語を発する頃には,スマートベビーサークルで活動ログをとり,これをAIで分析するというようなこともできそうだ。お金持ちはベビーシッターを雇うことになるので,普通の保育所での異常検知サポート用システムのほうがリアリティがあるかもしれない。

こんな想像は,開発途上国には縁のない,"先進国"のお遊びにすぎないものだろうか。

Q(自分):赤ちゃんや幼児がウェラブルデバイスを身に付けて,健康情報の取得や,成長支援等に使うような時代はくるでしょうか。

A(Gemini):はい、将来的には、赤ちゃんや幼児がウェアラブルデバイスを身に付けて、健康情報の取得や成長支援に活用する時代が到来する可能性が高いです。以下、その可能性について詳しく考察するとともに、具体的なユースケースや課題についてご紹介します。

1. 健康情報の取得

体温、心拍数、呼吸数、睡眠状態などの生体情報をリアルタイムでモニタリング
収集したデータを分析することで、病気の早期発見・早期治療に役立てる
発熱や脱水症状などの異常を早期に検知し、保護者に通知
アレルギー症状の出現を予測し、予防措置を講

2. 成長支援

運動量や睡眠時間の記録
発達段階に合わせた育児アドバイスの提供
乳児の泣き声の分析によるニーズの推測
親子間のコミュニケーション促進

3. 具体的なユースケース

スマートおむつ:おむつ濡れ検知だけでなく、体温や皮膚の状態もモニタリング
ベビー服に内蔵されたセンサー:体の動きを記録し、発育状況を分析
スマートおもちゃ:遊びを通して、赤ちゃんの知育を促進

4. 課題

デバイスの小型化、軽量化、安全性
プライバシー保護
データの正確性
ユーザーインターフェースの開発

5. 技術開発の進展

近年、ウェアラブルデバイスの技術は目覚ましい進歩を遂げており、小型化、軽量化、高機能化が進んでいます。また、センサー技術や人工知能(AI)技術の発展により、より精度の高いデータ収集と分析が可能になりつつあります。

6. 社会的な受容

将来的には、これらの技術開発の進展と社会的な受容が進み、赤ちゃんや幼児向けのウェアラブルデバイスが広く普及していく可能性があります。

7. まとめ

赤ちゃんや幼児向けのウェアラブルデバイスは、健康情報の取得や成長支援など、様々な可能性を秘めています。課題を克服し、技術開発と社会的な受容が進めば、将来的な育児のあり方を変える革新的なツールとなる可能性を秘めています。

写真:赤ちゃんがセンサーをつけるときのイメージ(Natureから引用[1])

写真の話は,直接関係ない件なのだけど,斜め右上で近い話なのかもしれない。

[1] This AI learnt language by seeing the world through a baby’s eyes(Nature)

2024年2月28日水曜日

束縛力のする仕事

束縛された質点の運動において,その進行方向と垂直な抗力(束縛力)が働いているとき,位置ベクトル$\bm{r}$にある質点に対して,束縛力$\bm{F}_R$がする仕事$W$はゼロになる。これは,$\displaystyle W=\int \bm{F}_{R}\cdot dr = 0\ $からくる。


図:束縛運動をするバネで結ばれた2質点系とその重心

上図のように,2つの質点がバネで結ばれ互いに内力を及ぼしている系を考える。それぞれの質点は原点を通る2本の直線上を運動するように束縛されている。2つの質点の質量が等しく,初期位置として原点から等距離に静止していたとする。このときのバネの長さが自然長より短ければ,$x$軸方向に弾性力(斥力)が働く。この斥力(内力)の直線方向の成分によって,質点は$y$軸正方向の運動成分を持つことになる。

一方,束縛された質点が直線方向に運動するのは,各質点に働く束縛力(外力)とバネの弾性力(内力)の合力が直線方向を向くからである(摩擦力はないとする)。ところで,この外力(束縛力)は,質点の移動において仕事をすることはない。仕事をするのは,内力(バネの弾性力)である。

この系における質点の重心の運動を考えてみる。重心の運動には系の内力(弾性力)は寄与せず,外力の和だけが運動を決定する。ところで,先ほど見たように外力(束縛力)は仕事をしないはずだ。それにもかかわらず重心は$y$軸方向に運動し,運動エネルギーを持つことになる。これはなぜかというのが,よく問われる定番の問題だ。

外力と内力が働く質点系の運動方程式は次のようになる。
$\displaystyle m_i \dfrac{d^2 \bm{r}_i}{dt^2} = \bm{F}^{ex}_i + \sum_{j=1}^{N} \bm{F}^{in}_{ji} \quad (i = 1 \cdots N)$
すべての粒子に対して加えると,内力が作用反作用の法則から打ち消しあうので,重心座標($\bm{r}_G = (1/M) \sum_{i=1}^N \bm{r}_i, \quad M=\sum_{i=1}^N m_i$)と相対座標($\bm{\tilde{r}}_i = \bm{r}_i -\bm{r}_G$)に対する運動方程式が得られる。
$\displaystyle M \dfrac{d^2 \bm{r}_G}{dt^2} = \sum_{i=1}^N \bm{F}^{ex}_i = \bm{F}^{ex}$,$\displaystyle m_i \dfrac{d^2 \bm{\tilde{r}}_i }{dt^2} = \bm{F}_i^{ex} +\sum_{j=1}^N\Bigl( -\dfrac{m_i}{M} \bm{F}_j^{ex} + \bm{F}_{ji}^{in} \Bigr)\ \  (i = 1 \cdots N)$
それぞれの式の両辺に,重心の速度や相対速度をかけて積分することによって,運動エネルギー(全体は$T$,重心運動は$T_G$,相対運動は$\tilde{T}$)の変化と仕事$W$の関係を表わす式(エネルギー保存則につながるもの)が得られる。

$ \displaystyle T(t_2)-T(t_1)= \sum_{i=1}^N \int_{t_1}^{t_2} \bm{F}_i^{ex}\cdot \dfrac{d\bm{r}_i}{dt} dt + \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N  \int_{t_1}^{t_2} \bm{F}_{ij}^{in} \cdot \dfrac{d\bm{r}_i}{dt} dt $
$\displaystyle \hspace{2.5cm} = \sum_{i=1}^N W_i^{ex}(t_1 \rightarrow t_2) + \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N W_{ij}^{in}(t_1 \rightarrow t_2)$
$\displaystyle \hspace{2.5cm} = W^{ex}(t_1 \rightarrow t_2) + W^{in}(t_1 \rightarrow t_2)  $
$ \displaystyle T_G(t_2)-T_G(t_1)  = \int_{t_1}^{t2}\bm{F}^{ex}\cdot \dfrac{d \bm{r}_G}{dt} dt = \overline{W}_G(t_1 \rightarrow t_2) $
$ \displaystyle \tilde{T}(t_2)-\tilde{T}(t_1) = W^{ex}(t_1 \rightarrow t_2) - \overline{W}_G(t_1 \rightarrow t_2) + W^{in}(t_1 \rightarrow t_2)$ 

ここで,$\overline{W}_G^{ex} =  \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N \dfrac{m_i}{M} \bm{F}_{j}^{ex} \cdot \dfrac{d\bm{r}_i}{dt} dt$ は外力に由来しているが,各要素に分解してみると仕事の形はしておらず(作用する外力と座標の番号は等しくない$\ i \neq j\ $の$\ \bm{F}_{j}^{ex} \cdot d\bm{r}_i\ $が含まれる),このため擬仕事(pseudo work)とよばれることがある。

これらの式を今の問題に当てはめるとどうなるか。束縛力(外力)の和は,重心に対して仕事$\overline{W}_G^{ex}$をする。しかし,束縛力(外力)によって各粒子がなされる仕事の和$W^{ex}$は0である。重心の運動エネルギーの増加に寄与するのは,$W^{ex}$ではなく,$\overline{W}_G^{ex}$であり,これは必ずしもゼロにならないのだ。$\overline{W}_G^{ex} =\dfrac{1}{2} \Bigl( \int  \bm{F}_1^{ex}\cdot d\bm{r}_2 + \int \bm{F}_2^{ex}\cdot d\bm{r}_1 \Bigr)$

問題の設定では,束縛条件から,外力(束縛力)と内力(弾性力)の間に条件式が課されるため,外力を内力によって表すことができる。これによって,擬仕事を内力の仕事の形で表せるのだが,一般的には重心の運動エネルギーの増加を各粒子に対する内力による仕事だけで表すことはできない。

2024年2月27日火曜日

人民の敵

今日,YouTubeのお奨めに現れたのは,外山恒一のチャンネル「人民の敵」だった。

外山恒一のYouTubeというと,我々団ものがあったはずだ。今回のはプロの手が入ったのか,標準的できれいな仕上げになっておりたいへん見やすい。

2007年春の東京都知事選における外山恒一の政見放送は生テレビで見て,いたく感動したのを覚えている。これまでも,東郷健とかありましたが,外山のそれは群を抜いた仕上がりだった。彼の新しいYouTubeチャンネルではその制作裏話を聞くことができた。

(1) あの原稿は,外山が最初に鹿児島県隼人町議会議員選挙に立候補したときに原付街宣用に制作したもので,ほとんどその内容が都知事選で使われることになった。
(2) 都知事選でその原稿を政見放送に使うということは,当初は考えていなかったが後で思いついたことだった。
(3) 原稿の読み方は,カラオケボックスで一文一文周到に吟味しながら,もっとも笑える表現をつなぎあわせたものだった。ものすごい回数練習している。
(4) 政見放送の収録は,NHKと民放1社(2007年はテレビ朝日)の2つ行われ,それぞれ放送される。NHKバージョンとテレビ朝日バージョンは微妙に違うところがある。
(5) 両バージョンの前に東京で行った選挙出馬を模索する集会で試行版のVHSビデオを放映している。それによってようやく供託金の目処がつき始めた。
(6) 政見放送のインパクトは大きかったが,これによって彼の狙っていた対話が拡がることはなかった。ミーハーが集まっただけ。しかし後の教養強化合宿には繋がっていく。

久しぶりに,教養強化合宿の募集案内を眺めていた。過去の学生さん達の体験記が沢山掲載されていて,それらを眺めているとなんだか懐かしい気持ちになってくる。9泊10日正味8日×8時間=64時間講義(+2-3時間/日のメディア視聴)のテキストは,外山恒一『マルクス主義入門』,立花隆の『中核vs革マル』(上),笠井潔の『ユートピアの冒険』,絓秀実の『1968年』である。

外山恒一の政見放送におけるあのような表現が公共の電波に乗せられることが,日本の民主主義の健全性の現れだという言説がよくみられる。ファシストを自称する外山恒一にいわせれば,それはまったく逆だ。今や,日本では選挙制度の中(内側)でしか自由な言論や表現は保障されていない。日常的な活動においてある特定の組織がちょっとビラ撒きをしただけで,選択的に検挙される時代だ。もちろん選挙演説で外からやじるだけでも警察権力によって排除されてしまうのだ。