2024年3月7日木曜日

日本SFシリーズ

世界SF全集(2)からの続き

早川書房は,世界SF全集(1968.10-1971.8)が刊行される前に,日本SFシリーズ(1964.8−1969.7)を刊行していた。自分の手元にあるのは,第1巻の復活の日小松左京)と第11巻の百億の昼と千億の夜光瀬龍)だけだ。その一覧は次のようになる。なお,このうち,2,5,8,9,10,は世界SF全集にも採用された。
1 復活の日(小松左京:人類破滅テーマ)1964年 ◎1
2 たそがれに還る(光瀬龍:宇宙テーマ)1964年
3 夢魔の標的(星新一:侵略テーマ)1964年
4→地球強奪計画(都筑道夫:スペースオペラ)1967年12月刊 ×※1
4 EXPO'87(眉村卓:?)1968年
5 人間そっくり (安部公房:宇宙人テーマ)1967年
6 透明受胎(佐野洋:突然変異テーマ)1965年
7 エスパイ(小松左京:超能力テーマ)1966年
8 48億の妄想(筒井康隆:架空事件テーマ)1965年
9 幻影の構成(眉村卓:未来社会テーマ)1966年
10 果てしなき流れの果てに(小松左京:宇宙・時間テーマ)1966年
11 百億の昼と千億の夜(光瀬龍:宇宙破滅テーマ)1967年 ◎2
12 モンゴルの残光(豊田有恒:時間テーマ)1967年
13 馬の首風雲録(筒井康隆:宇宙戦争テーマ)1967年10月刊
14→なすよしもがな(福島正実:次元テーマ)1968年2月刊 ×※2
14 メガロポリスの虎(平井和正:?) 1968年
15 イブの時代(多岐川恭:?) 1969年
○ SF入門(福島正実) 1966年
○ SF英雄群像(野田昌宏) 1969年
※1 ついに太陽系をねらう超人類との対決の時がきた。大宇宙を股にかけて展開される虚々実々のスパイ合戦の結末はいかに?スペース・オペラの決定版!
※2 にくみぬいていたその男に我知らず打ってかかってから気がついた—その男はつい最近,病気で死んでいたはずなのだ!現実と非現実のダブルイメージか?
これは,1967年10月に発行された ハヤカワSFシリーズ 3159 泰平ヨンの航星日記(スタニスラフ・レム) の巻末の広告に掲載されていたものである。このうち,4の都筑道夫と14の福島正実の本は刊行されないままであった。前者は眉村卓の「EXPO'87」に替わり,後者は平井和正の「メガロポリスの虎」と多岐川恭の「イブの時代」に変わった。同様に,世界SF全集で予定されていた別巻のSF講座(多分,福島正実が書くはずだった)も未刊行のままで終ってしまっている。 なお,シリーズ番外扱いの「SF入門」は買っていたがどこかのタイミングで処分したように思う。

これらの件と直接に関係があるのかどうかわからないが,1969年2月号(1968年12月)のSFマガジンの「覆面座談会 日本のSF '68~'69」に起因する覆面座談会事件による福島正実の失脚があった。ちょうどSFマガジンを定期購読しだして半年ぐらいの出来事だったが,その後も影響は続いていた。

福島正実のSFは何冊か買ったのだが,やや苦い味がしてそれほど好きにはなれなかった。ジュビナイルは一定の評価がされていたし,SFマガジンの編集長としての存在感も大きかった。1976年に47歳の若さでなくなってしまったが,日本の主要なSF作家達との関係を壊してしまっていたので,十分な弔いもできなかった。


写真:古書として流通している日本SFシリーズのセット

P. S. 
日本SFシリーズ(ショートショートの…)によると,日本SFシリーズ初版の「百億の昼と千億の夜」には,編集ミスで元原稿からごっそり脱落している章があるようだ。どうりで話がつかめなかった。

P. P. S. 
・1969年02月号 (通巻117号) 覆面座談会『日本のSF '68~'69』
・1969年05月号 (通巻120号) 矢野徹『架空匿名座談会「SF界に新風よ吹け!」』
・1969年06月号 (通巻121号) 山野浩一『SF論壇 日本SFの原点と指向』
・1969年08月号 (通巻123号) 福島正実『それでは一応さようなら』
・1969年12月号 (通巻128号) 福島正実『特別日記』
・1970年01月号 (通巻129号) 豊田有恒『福島正実氏に答える』

[1]覆面座談会事件(しろくま日記)

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