ハヤカワ・SF・シリーズの中でも,特別な思い入れがあるのが,SFマガジンベスト No.1 から No.4 である。1960年から1963年のSFマガジンに掲載された短編中で,その年のベスト作品を集めた年刊傑作集である。当時SFマガジンの編集長だった福島正実が次の方針で編集したものだ。
1. 作家別で,同一年に1作家だけ2. 編集部の評価,読者の感想,海外の評価をこの順に勘案して洗濯3. ある程度長いものは割愛4. 翻訳権の関係で収録できないものもあった5. 他の短編集やアンソロジーなどが予定されるものはそちらにまかせる
SFマガジン・ベスト No.1(1960)
太陽系最後の日, Rescue Party, アーサー・C・クラーク
愛しのヘレン, Helen o'Loy, レスター・デル・リイ
世界のたそがれに, At World's Dysk, エドモンド・ハミルトン
遥かなるケンタウルス, Far Centauri, A・E・ヴァン・ヴォクト
AL七六号疾走す, Robot AL76 Astray, アイザック・アシモフ
考える葦, The Plants, マレイ・ラインスター
エレンへの手紙, The Letter to Elen , チャン・デーヴィス
生きてる家, The House Dutiful, ウィリアム・テン
衝動, Impulse, エリック・フランク・ラッセル
黒い天使, The Dark Angel, ルイス・パジェット
ママだけが知っている, That Only a Mother, ジュディス・メリル
犬の散歩も引き受けます, We Also Walk Dogs, ロバート・A・ハインライン
SFマガジン・ベスト No.2(1961)
時を超えて, Elsewhen, ロバート・A・ハインライン
消去, 筒井俊隆
フェッセンデンの宇宙, Fessenden's Worlds, エドモンド・ハミルトン
プルトニウム, Plutonium, C・A・スミス
宇宙塵, 高橋泰邦
観光案内, The Time Trade, ウィルスン・タッカー
いつの日か還る, Obligation, ロジャー・ディー
親しき友へ, Dear Pen Pal, A・E・ヴァン・ヴォクト
蠱惑の珠, Hypnogriph, ジョン・アンソニイ
地球エゴイズム, 山田好夫
ナンバー9, Number 9, クリーヴ・カートミル
人類供応法, How to Serve Man, デーモン・ナイト
漂流者, Castaway, バートラム・チャンドラー
睡魔, Sleep in Armageddon, レイ・ブラッドベリ
エラー, Technical Error, アーサー・C・クラーク
SFマガジン・ベスト No.3(1962)
大当たりの年, The Year of the Jackpot, ロバート・A・ハインライン
小鳥の歌声, Bird Talk, ジョン・P・マクナイト
雷鳴と薔薇, Thunder and Roses, シオドア・スタージョン
暴風警報, Storm Wanings, ドナルド・A・ウォルハイム
サリイはわが恋人, Sally, アイザック・アシモフ
前哨, The Sentinel, アーサー・C・クラーク
もののかたち, The Shape of Things, レイ・ブラッドベリ
反対進化, Devolution, エドモンド・ハミルトン
前哨戦, Skirmish, クリフォード・D・シマック
男と女から生まれたもの, Borin of Man and Woman, リチャード・マティスン
次元分岐点, Other Tracks, ウィリアム・セル
SFマガジン・ベスト No.4(1963)
時の門, By His Bootstraps, ロバート・A・ハインライン
収穫, 半村良
火星で最後の…, 豊田有恒
対象, Referent, レイ・ブラッドベリ
死都, THe Dead City, マレイ・ラインスター
時間がいっぱい, All the Time in the World, アーサー・C・クラーク
変身処置, The Beautiful Woman, チャールズ・ボーモント
めざめ, Dormant, A・E・ヴァン・ヴォクト
トラブル・パイル, Pile of Trouble, ヘンリイ・カットナー
写真:SFマガジンベスト No.1 〜No.4の書影
中学生から高校生時代に,小松左京やアーサー・C・クラークらの短編集以外で最初に購入したのがこの4冊だった。2001年宇宙の旅の原案にあたるクラークの「前哨」や,手塚治虫の火の鳥にモチーフが使われたブラッドベリの「対象」など貴重な作品が含まれていた。「アルジャーノンに花束」は,ヒューゴー賞傑作集に収録されるとあったが,No.2を買いそびれたため世界SF全集の世界のSF現代篇まで待つことになる。
日本人作家としては,筒井康隆の弟の筒井俊隆の「消去」や半村良の「収穫」などが採録されていて印象深かった。しかし,日本人の主要作家はほとんど含まれていない。まだ登場していなかったかもしれない。その中に豊田有恒の「火星で最後の…」があるのがすごいけれど,後に福島正実と豊田有恒は覆面座談会事件で修復不能の関係になってしまう。
0 件のコメント:
コメントを投稿