2022年1月22日土曜日

COCOAログチェッカー

 2020年の7月に厚生労働省の接触確認アプリCOCOAをインストールして568日目になる。COCOAは2020年の6月19日にリリースされており,現在までに2400万件ダウンロードされた。最初からアプリのトラブルが続き,開発の責任問題などを巡りゴタゴタしたことから普及が進まず,現時点でも全国民の20%程度というなさけない状況だ。

登録された陽性者と1m以内の距離に15分間以上の接触をしたというアラームは,まだあがってきたことがない。COCOAには,さらに詳しい接触通知ログ情報が14日間分,スマートフォンに記録される仕組みがある。このログを解析するツールが,COCOAログチェッカーというウェブアプリだ。

iOSの場合は設定に「接触通知」という項目があり,その中の「接触チェックの記録」に過去14日間の接触ログデータが格納されている。その一番下にある「接触チェックの記録を書き出す」がある。これを選んでコピーボタンを押すとログデータがクリップボードに保存される。そこで,先ほどのCOCOAログチェッカーの入力欄にこれをペーストしてチェックボタンを押せばOKだ。

早速やってみると,自分の場合,3件の新規陽性登録者が近くにいた記録が確認された。昨日は天王寺キャンパスの夜間の対面授業(次回はオンラインにする)があったので大阪に出たのだった。近鉄,上本町,地下鉄,天王寺地下街,大阪教育大学,天王寺駅などと16:00から21:30まで周回してきたので危ない危ない。15分以上は接触していないのでまあ大丈夫だとは思う。COCOAの普及率が20%だったから,一度大阪に出ただけで(先週は大学入学共通テストのため休講だから),この5倍の15人の陽性者と接触したことになる。


図:COCOAログチェッカーの画面


2022年1月21日金曜日

民藝

 NHKの「かわ善い民藝 いとお菓子」の録画を見ているのを聞いていたら,「‾ン_ゲ_イ_」というアクセントが飛び込んできた。夫婦揃ってゲゲゲの鬼太郎になってしまった。おかしいやろ。民藝は「ミ_ン_ゲ_イ_」という平板なアクセントのはずだ。

調べてみると,広辞苑無料検索という名前の統合検索サイトにあるNHK日本語発音アクセント辞典の例があった。はい,「ミ_ン‾ゲ‾イ‾」であり,にアクセントはなかった。いったいどうなっているのかと少しあたってみると・・・

2013年にYahoo 知恵袋ですでに問題になっていた。「今日のNHKで 民芸のミンの方にアクセントが強い発音をナレーターが発音していましたが,どうなんでしょう。ミンゲイ すべて平なアクセントが普通ではないでしょうか?」。これに対する回答は,「NHK発音アクセント辞典では,低高高高 (平板というアクセント)しか載っていません。長いことアクセントに関わっていますが,頭高の「民芸」は聞いたことがなく, 多数派も断然平板だと思います」であった。

一方,2018年に鞍田崇は次のように語っている。「たしかにアクセント辞典には平板に発音すると書かれています。でも,「民藝」という言葉を作った柳宗悦らに始まる民藝運動の関係者は「みん↗︎げい」と発音されることが多く,実際当の柳自身そのように言っていました。駒場の日本民藝館には彼の肉声録音が残されていて,そこでは,「みん→げい」ではなく「みん」にアクセントを置いています」。で,その後全国に普及する過程で平板化されたのでどちらでもよいとしている。

実際,YouTubeの最近のものでは,「‾ン_ゲ_イ_」が多いような気がする。うーん,もやもやが晴れない。

なお,NHKといえば,昼のニュースでシドニー・ポアチエが亡くなったことを報じた際,アナウンサーが「‾ド_ニ_ー・ポ_‾」と発音したのでびっくりたまげた。おかしいやろ。「‾ニ‾ー・ポ_‾チ_エ_」くらいじゃないのか。

2022年1月20日木曜日

大学入学共通テスト(4)

A日程とB日程で混乱していた共通一次をリニューアルしたのが,センター試験(大学入試センター試験)だった。これは, 1990年度から2020年度まで,約30年にわたって,31回実施された。大きな問題もなく安定して運用してきたが,いいがかりをつけられて共通テスト(大学入学共通テスト)に衣替えさせられた。

2006年度にリスニングが導入されるまでは平和な時代だったが,その後は,細かな不祥事が発生するたびに,これに対処するための試験の注意事項が単調増加していき,監督者マニュアルを読み通すのが大変なことになってきた。事情がある受験生や,突発事態に対応するための別室受験の準備もふえ,試験監督や警備のための教員の出動が半端ないことになった。

かつては,監督に当たる大学教員は,50代の後半くらいでセンター試験の業務からは解放されていた。そうはいっても,個別学力検査では出題もしているため,この時期は監督業務や質問対応業務で忙殺されることにはなる。自分がその年代にさしかかっても業務免除対象になることはなかった。

自分の在職期間に経験した29回のセンター試験を通じて,試験監督をした年よりも裏方の入試管理部業務などに携わった年の方が多かったかもしれない。拘束時間や労働内容は試験監督より量的に多いが肉体労働が中心であり,試験時間の間はピリピリと張りつめることなしに過ごすことができる。

2004年に国立大学が法人化されるまでは,2日目の後片づけが終わった後に,管理部スタッフや警備スタッフの教職員が集まって,準備していたおでんを囲んで歓談したものだった。リスニングが導入される頃には,リスニングの再試験対応などもある関係で,終了時間も遅くなってしまうため,業務が終わると解散ということになった。

2022年1月19日水曜日

大学入学共通テスト(3)

大学入試センターから,今回の令和4年度大学入学共通テストの平均点の中間集計結果が公表されている。ほとんどの科目は昨年とおなじくらいだが,数学Ⅰ・Aが,57.7点から40.3点へ17.4点下がり,数学Ⅱ・Bが,59.9点から45.9点への14点ダウンだ。読解力という謎のキーワードに振り回されて,どう考えても作問に失敗しているようにみえる。

大学入学試験の共通化は,1979年の共通一次(大学共通第1次学力試験)からはじまった。これは,1989年まで約10年にわたり11回実施された。その共通一次の監督業務が当たるようになったのは,1982年に大阪教育大学の助手になってからだ。池田分校や,天王寺分校,平野分校などで監督に当たったが,年配の先生の指導の元,教室で受験生への説明をすることもあった。

当時は,いまよりもずっとのんびりしていて,事前の監督者説明会もなかったし,現場では多少の融通もきいた。自分で問題を解いてみたり,欠席者の席にすわってあたりを監督したり,場合によっては読書も可能だったが,今となっては全て禁止でまったく考えられない。

池田分校の門から玄関に至る道では焚き火をしており,焼き芋を焼くのが通例になっていた。天王寺分校で一二度,管理部要員にあたったことがある。用務員さんがトラクターのようなものを運転して,試験問題を1Fにあった管理部の窓から搬入していた。天王寺分校の校舎はかつての師範学校の教室であり,教室の横には銃剣が並んでいたとのことだった。その話をしてくれた当時の天王寺分校の岡森博和主事(数学教育)の部屋で,試験日程終了後にささやかな食事が振る舞われた。

岡森先生には後にコンピュータ教育の科研費の協力者に誘われて,情報処理センター設置のために準備していた資料を提供したことがある。共同研究者ではなかったが,寺田町の安い中華料理屋で開かれた宴会に誘われてご馳走になった。退官後の学長選にも立候補されていたが残念な結果だった。

2022年1月18日火曜日

大学入学共通テスト(2)

 大学入学共通テスト(1)からの続き

数学IAの問題について批判ばかりしていてもしょうがないので,時間を決めて解こうとした。問題と解答は公表されており,次のようなものだ。

70分で4問(必答2問,選択2問)
第1問 必答:[1]対称式,[2]三角関数,[3]円と三角形
第2問 必答:[1]2次方程式の解と集合・論理,[2]統計処理
第3問 選択(2/3)[1]場合の数と確率
第4問 選択(2/3)[1]不定方程式と剰余
第5問 選択(2/3)[1]三角形の重心
スタート早々につまづいた。第1問の[1]の問題の条件が(1)だけでなく,(2)に及ぶことが読み取れずに全く進まない。なんとかクリアしたら[3]の問題が解けない。うーん,円周角の定理と三角関数はどういう関係になっていたっけ・・・,とりあえずおいて第2問に進むと,簡単な2次方程式の話なのだが頭に入ってこない。

というわけで30分経っても1/3もできずに脱落してしまった。チーン。不定方程式はなおさらだし,統計や幾何の問題は頭に入ってこないのであった。時間制限にあわてると平均点もとれないかもしれない。むしろこれで40点も取れるほうがすごい。

共通一次試験やセンター試験のころは,監督の時間に問題をパラパラと見て,これなら解けそうだと思ったものだ。いまでは新聞に掲載されている問題の字が小さすぎて読むことすらできない。ネットに掲載されている問題ならば字が大きいので大丈夫かと思ったら,共通テストになって読解力重視になったせいで,文章が多すぎてこれまた最後まで読み通せないのだった。

2022年1月17日月曜日

大学入学共通テスト(1)

 今年の大学入学共通テストはたいへんだった。オミクロン株の感染者数が急上昇するなか,1月15日(土)には東大の試験会場前で傷害事件があり,1月16日(日)にはトンガの海底火山の爆発にともなう津波警報で試験ができなかった会場がでた。

大学入試センター試験が,いろいろあって,大学入学共通テストに模様替えしたときに「思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視した」結果,今年の問題は読解力を必要とする部分が増えて,難易度があがったらしい。

そんなわけで,数学の試験を眺めてみたら,あら,防衛省の不祥事をヒントとしたようにみえる問題があるではないか。2019年にイージス・アショア配備の調査にかかわって露呈した事件だ。配備地の設定根拠を説明する資料において,Google Earthを使って水平方向と鉛直方向の縮尺比を考慮せずに山の俯角を導いて,判断のための重要なデータにしたというお粗末な(悪質な)ものだった。

今回の問題では,水平10万分の1と鉛直2万5千分の1の縮尺比を考慮せずに図を読み取った結果,キャンプ地から山頂を見込む俯角が16度になったのを検証するというものだ。三角関数表からこの16度に対応する正接を読み取り,これを1/4した値を解答し,さらに,この正接値から逆引して真の俯角(4度〜5度)を導くというものだ。

はい,いい問題ですね。しかし,平均点は数学I・数学Aで20点,数学II・数学Bで18点も下がった

図:朝日新聞2019年6月記事と大学入学共通テスト数学I・A問題の比較

P. S. Twitterの感想によれば,第2問のデータ処理,第4問の整数問題はかなり評判悪い。やはり,その出発点が利権がらみ(後に消失か)だった共通テストは失敗で,センター試験のほうが良質だったようだ。

2022年1月16日日曜日

Cityroam

 eduroamは,欧州の教育研究のためのネットワークコミュニティGEANTで開発された,高等教育機関や研究機関のための無線LAN相互利用のための仕組み(ローミングサービス)である。日本では,国立情報学研究所が運用している。

大阪教育大学もeduroamに参加していて(国内では323機関が参加),cc.osaka-kyoiku.ac.jpアカウントを持っている自分もその恩恵を受けることができる。といっても,他の大学や研究機関を訪問する機会はほとんどない。2016年からは初等中等教育機関にも対象が拡大され,大阪教育大学の附属学校10校が国内の最初の事例となった(尾崎先生と佐藤先生のおかげだ)。なお,初等中等教育機関については,学校無線LAN連携コンソーシアムによる実証実験という形で進んでいくことになる。

Cityroamとは,「プロバイダや電話会社,学校またはゲスト用のアカウントを用いて,各種施設や市街地において安全で自動接続可能な公衆無線LANサービスを実現する,無線LANローミング・フェデレーション(連合)です。利用者は,ひとつのアカウントを持つだけで,国内外の様々な場所でシームレスに,公衆無線LANを利用できます」というのが,その説明であり,eduroamもcityroamを構成する認証基盤の1つになっている。つまり,eduroamアカウント(自分の場合は,大阪教育大学のアカウント)があれば,cityroamの範囲で,自由に無線LANをつかえるようになる。

いまでも,FreeWifiのスポットは沢山あるのだが,そのたびにユーザ登録が必要であり,シームレスではない。また情報通信の安全性についても必ずしも保証されていない。おまけに,G4でつながっているときに,softbankのFreeWifiスポットに割り込まれて作業が中断したりするので困る。

さて,cityroamはどこまで使えるかというと,残念ながらまだまだだ。奈良県には0ヶ所,大阪府で3ヶ所しかないのだから。


図:大阪府の cityroam スポット(cityroamのgoogle mapから引用)

2022年1月15日土曜日

めった汁

テレビアニメの「舞子さんちのまかないさん」で,郷土料理の紹介リストに,石川のめった汁という言葉が出てきた。めった汁は全国に通用する普通名詞ではないのか。小学校の給食では定番のメニューだったが,そういえば,この50年ほとんど聞いたことがなかった。

めった汁ってどんなものと聞かれて返事に困った。普通に自宅の晩ご飯にでてくる豚汁と同じもので,野菜やいもが沢山入ったみそ汁だ。早速確認すると,農林水産省の「うちの郷土料理」というサイトには石川県の郷土料理として採用されており,次のような定義があった。「めった汁とは,さつまいもや大根、人参といった根菜類を使った具だくさんの豚汁のこと。従来の豚汁と異なるのは,じゃがいもではなくさつまいもを使う点にある」。

この農水省サイトは親切なので,著作権表示をすれば画像コンテンツを比較的自由に利用できる。下記写真の画像提供元は青木クッキングスクールだが,うーん,微妙に具が大きすぎて違う気がする。むしろ,いつもの夕食に出てくる豚汁の方が,追想/幻想の「めった汁」に近い。


写真:めった汁(出典:農林水産省Webサイト

P. S.  うちの郷土料理のページはよくできている。石川県,福井県,奈良県,京都府,宮城県など27府県分はあるが,富山県,大阪府,兵庫県,静岡県,東京都など20都道府県分は未作成で,令和3年度末にできることになっているけれど,間に合うのかしら。

2022年1月14日金曜日

公用文(2)

公用文作成の考え方(建議)」を踏まえた,内閣からの指示文書はまだこれからということだろう。高等学校の「現代の国語」が実用文にこだわるのならば,半分はこれをやったらどうか。

そこで(どこで?),文章校正ツールに,公用文作成に特化したものがないか調べてみた。マーケティングの観点からは,公用文に特化するメリットがないので,そうしたものはなかった。有料の文章校正ツールの中では,文賢がめだった。クラウド型のアプリだが,SafariではだめでChromeのダウンロードが必要。

また,一太郎でおなじみジャストシステムのJust Right!6というソフトウェアは,4.5万円程度。なお,ATOK Passportプレミアムを契約していれば,クラウド型のATOKクラウドチェッカーが利用できる。

無料版の文章校正ツールとしては,PRUV(プルーフ)Ennoがある。前者は登録なしで400字,ユーザー登録すれば無料で2万字までの文書を扱える。後者は,ユーザ登録不要であり明示的な字数制限はない。非公開の文書,顧客取引先の文書,試験問題・模範解答,個人情報を含む文書を入れるなとしている。Ennoの作者による「日本語エラーチェックサイトenno.jpを作った理由」が公開されている。

[1]現代仮名遣い(昭和61年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/gendaikana/index.html
[2]公用文における漢字使用等について(平成22年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/kanji/index.html
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/sanko/koyobun/pdf/kunrei.pdf
[3]常用漢字表(平成22年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf
[4]法令における漢字使用等について(平成22年)
https://www.clb.go.jp/files/topics/3485_ext_29_0.pdf
[5]表外漢字字体表(平成12年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/22/tosin03/index.html
[6]公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について(令和元年)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/seimei_romaji/pdf/moshiawase.pdf

2022年1月13日木曜日

公用文(1)

 「公用文作成の考え方」について(建議)という文書が,1月7日に文部科学省の文化審議会から出ている。各省庁の審議会は,所管大臣からの諮問を受けて答申するのが普通だと思っていたので,建議という言葉が新鮮だった。

法的根拠は何かを調べてみた。文部科学省設置法の第13条で外局としての文化庁を置くこと,第20条で文化庁に文化審議会を置くこと,第21条の3項と4項で,旧国語審議会(現国語分科会)に対応する業務が規定されている。

三 文部科学大臣又は文化庁長官の諮問に応じて国語の改善及びその普及に関する事項を調査審議すること。

四 前号に規定する事項に関し、文部科学大臣、関係各大臣又は文化庁長官に意見を述べること。

したがって,前者が諮問に対する答申,後者が建議だと考えられる(建議:① 意見を役所、上位の人、機関などに申し述べること。また、その意見。建白。(小学館日本国語大辞典より))。 

公用文作成の考え方は6ページほどにまとめられているが,これに対する解説があるので,全体では36ページのpdfファイルとして公開されている。これまでは,昭和26年(1951年)に文部省の国語審議会の建議「公用文作成の要領」が,昭和27年4月に内閣から「公文書改善の趣旨徹底について」として各省庁次官宛てに出されていた。

1952年の要領では,「句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。」となっていたものが,2022年の考え方では,「句読点に「。」(マル)読点には「、」(テン)を用いることを原則とする。横書きでは読点に「,」(コンマ)を用いてもよい。」になった。

Wikipediaの公用文作成の要領をみるとこれはなかなか面倒な話がたくさんあるものと想像される。

[1]公用文の書き方資料集三訂版(文化庁,1960)

[2]公用文の書き表し方の基準資料集

2022年1月12日水曜日

メトロポリタン美術館展

 NHKの日曜美術館の新年スペシャル#アートシェア2022で,メトロポリタン美術館展を紹介していた。ラ・トゥール(1593-1652)の「女占い師」について,「傑作中の傑作だと思う。これが日本で見られるというのは世紀の大事件だと思います」と荒木飛呂彦が語っている。あら,ルーブル美術館にもある「いかさま師」の作者だったのか。

家人によれば,日経新聞紙面では毎日のようにこの美術展の大きな広告をうっていたとのこと。大阪市立美術館の最終日が1月16日ということで,ちょっと迷ったがオンライン予約して,今日の午前中の授業が終わってから出かけることになった。

天王寺駅で待ち合わせ,大阪維新によって無残に改造されてしまった天王寺公園を通り抜けて大阪市立美術館に向かう。雪交じりの寒い日だったが,当日券や予約時間なしチケットのための長い行列ができていた。その列を横目にスイスイ進んで検温後,QRコードの入場券を見せると,入場口付近はかなりの人で混みあっている。それでも,会場内ではわりとスムーズに観客が流れていた。

メトロポリタン美術館(MET)の館長やスタッフによる作品のビデオ紹介(13分)によれば,西洋絵画の建物に改修工事がはいるため(2023年オープン),これまで館外に出されることになかった作品を含み,65点(うち46点が日本初公開)が大阪市立美術館(天王寺)と東京の国立新美術館(六本木・乃木坂)で公開されることになった。

印象派を含む有名どころの画家の小品が1-2点づつまんべんなく網羅されていたがスルスルと通り抜けた。印象に残ったのは,(1) ラ・トゥール「女占い師」,(2) フェルメール「信仰の寓意」,(3) ターナー「ヴェネツィア,サンタ・マリア・デッラ・サールテ聖堂の前廊から望む」くらいか。

ターナーの明るく光ただようヴェネツィアは,グアルディの写実的で遠くまでピントがあう「サンマルコ湾から望むヴェネツィア」と対照的だった。

写真:メトロポリタン美術館のロゴ(YouTubeチャンネル The Met から引用)

2022年1月11日火曜日

ドローン操縦士資格

 奈良自動車学校でドローン操縦士資格がとれるという広告が目に飛び込んできた。確かに車の操縦とドローンの操縦には共通点があるかもしれない。

最初は,自分が38歳ごろに免許を取得した奈良交通自動車教習所かと思ったが,スクールバスの経路がなんだか奈良県北部に偏っていてどうもおかしい。もう一度確かめてみると,近鉄奈良線の学園前あたり見える奈良自動車学校だった。自分がもう少し若くてお金と時間に余裕があればドローン教習に通ったかもしれない。

ドローン操縦技能+安全運航管理者コース講習は,3日間の学科9時間,実技11時間で25万円だ。日本でのドローン規制はますます強まるので,こうした講習が成り立つのかもしれない。奈良交通自動車教習所でもやっているかと思ったが,こちらは,大型1種や大型2種などの方を売りにしていた。

もしかして,全国の自動車教習所で同じような動きがあるのではと思って調べてみた。案の定,一般社団法人全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)という業界団体ができていて,30校ほどが加盟している。自動運転の時代には,自動車教習所の性格も変化するだろうから,こうした対応が必要なのだろう。


写真:ドローンのイメージ(奈良自動車学校から引用)

2022年1月10日月曜日

四項間漸化式

 三項間漸化式からの続き

前回の問題を次のように修正する。2次方程式$\ x^2-p x + q = 0\ $の解を$\alpha, \beta$として,$a_n = \alpha^n +\beta^n$と定義する。ただし,$a_0=2,\  a_1 =\alpha + \beta = p,\  a_{-1}=\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \frac{\alpha + \beta}{\alpha \beta} = \frac{p}{q}$である。

このとき,次の漸化式,$a_{n+1}=p\ a_{n}-q\ a_{n-1}, \ (n=0,1,2 \cdots)$が成り立つ。

また,数列の一般項は $a_n = \alpha^n + \beta^n = \Bigl( \dfrac{p + \sqrt{p^2-4q}}{2} \Bigr)^n +  \Bigl(\dfrac{p - \sqrt{p^2-4q}}{2} \Bigr)^n$ で与えられる。

これを3次方程式に拡張すると次のようになる。3次方程式$\ x^3-p x^2 + q x -r = 0\ $の解を$\alpha, \beta, \gamma$として,$b_n = \alpha^n + \beta^n + \gamma^n$と定義する。ただし,$b_0=3,\  b_1 =\alpha + \beta + \gamma = p,\  b_{-1}=\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} +\frac{1}{\gamma} = \frac{\alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha}{\alpha \beta \gamma} = \frac{q}{r}$である。

このとき,漸化式は,$b_{n+2}=p\ b_{n+1}-q\ b_{n}+r\ b_{n-1}, \ (n=0,1,2 \cdots)$となる。

さらに,数列の一般項は $b_n = \alpha^n + \beta^n + \gamma^n$なので,基本対称式の値,$p=\alpha+\beta+\gamma,\ q=\alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha,\ r=\alpha \beta \gamma$の多項式になる。2次方程式の場合のように,3次方程式の一般解を代入してもよいが,非常に煩雑な表現になってしまい,Mathematicaを持ってしてもExpandとSimplifyを組み合わせて n=8で行き詰まってしまった。もちろん,漸化式を使えば大丈夫なのだが。

a = x /. Solve[x^3 - p x^2 + q x - r == 0, x];

b[n_] := a[[1]]^n + a[[2]]^n + a[[3]]^n

Table[Expand[b[i]] // Simplify, {i, 1, 8}]

{p, p^2 - 2 q, p^3 - 3 p q + 3 r, p^4 - 4 p^2 q + 2 q^2 + 4 p r, p^5 - 5 p^3 q + 5 p q^2 + 5 p^2 r - 5 q r, p^6 - 6 p^4 q + 9 p^2 q^2 - 2 q^3 + 6 p^3 r - 12 p q r + 3 r^2, p^7 - 7 p^5 q + 14 p^3 q^2 - 7 p q^3 + 7 p^4 r - 21 p^2 q r + 7 q^2 r + 7 p r^2, p^8 - 8 p^6 q + 20 p^4 q^2 + 8 p^5 r - 32 p^3 q r + 24 p q^2 r + 2 q (q^3 - 4 r^2) - 4 p^2 (4 q^3 - 3 r^2)}

2022年1月9日日曜日

寒中見舞い

 2019年3月に定年退職したのを機に,2019年の正月から年賀状をやめて3年目になる(あれ,4年目かな,あるいは2020年の正月からかな・・・)。このように人間(老人)の記憶はあやふやなものだ。

世間のしがらみからは完全に逃れるだけの勇気がないので,親戚の一部には今でも年賀状を出している。出していない友人などからの年賀状を受け取った場合には,なるべく寒中見舞いを出す。記憶回路が劣化しつつあるのでときどき忘れるかもしれない。

寒中見舞いはいつ出すものかと,早速インターネットで確認してみた。二十四節気小寒から大寒にかけてということで,1月5日ごろから2月4日ごろとなる。これが過ぎればもう立春だ。そうすると暑中見舞いは,立秋まえの小暑から大暑にかけての7月7日ごろから8月6日ごろなので,前半は梅雨がまだ明けていないわけか。

さらに,立秋は残暑見舞い,立春には余寒見舞いと続くが,これは出したことがない。と思う。

ところで,年賀はがきの発行枚数は年々減少している。ピーク時の2003年には44億枚だったものが,2021年には18億枚であり,最近5年間では,平均2.9億枚づつ(-12%)減っている。2011年から2016年までは平均1.2億枚(-3.6%)でなので,発行枚数の減少は加速化している。この調子だと2028年(ちょうど自分が後期高齢者の75歳に差しかかるころ)には,年賀はがきの発行は0となってしまう計算だ。我々昭和世代とともに,はがき・手紙・新聞などの文化は消えていくのかもしれない。


図:年賀葉書発行枚数の推移(Yahoo Newsから引用)

2022年1月8日土曜日

三項間漸化式

鈴木貫太郎のチャンネルで, $p = a+\dfrac{1}{a}\ $が与えられたときに,$a^6+\dfrac{1}{a^6}\ $を求める問題があった。これを一般化して,$b_n \equiv a^n+\dfrac{1}{a^n}\ $を求める問題を考えた。

ここで,$b_{n+1}=p\ b_n- b_{n-1}$ が成り立つ。これは三項間漸化式なので,このあたりに一般解法がある。漸化式の特性方程式 $x^2 - p\ x + 1 = 0$の解を$\alpha=\frac{p + \sqrt{p^2-4}}{2},  \beta=\frac{p - \sqrt{p^2-4}}{2}$とする。このとき,$b_n = A \alpha^n + B \beta^n \ $で一般解が与えられることにより,$b_0=2, b_1=p\ $の初期条件から$A, B$を決定すると $A=B=1$となる。

つまり,$b_n = \Bigl( \frac{p + \sqrt{p^2-4}}{2} \Bigr)^n +  \Bigl(  \frac{p + \sqrt{p^2-4}}{2} \Bigr)^n$ となる。例えば,$b_{10} = -2 + 25 p^2 - 50 p^4 + 35 p^6 - 10 p^8 + p^{10}$ だ。

これをMathematicaでプロットしたら,こんな感じのグラフが出てきた。ただし,$a$が実数ならば,$| p | \ge 2$ なのだ。


図:Plot[b[10], {p, -2.4, 2.4}]のグラフ

2022年1月7日金曜日

絵本太功記

 昨日は授業がなかったので(曜日振り替えの日),国立文楽劇場の初春文楽公演(文楽座命名150年)の第二部「絵本太功記」を見に行った。

最近は,コロナ対策のため上演時間を短くした三部制となっている。パンフレットにある竹澤宗助の談によれば,演者は自分の舞台が終わるとすぐ帰ることになっていて,先輩の舞台を見て勉強する機会が減っているとのこと。

実際,第二部は14:15から16:40までの2時間半弱とかなり短くなっている。2011年の夏休み特別公演では,「二条城配膳の段」「千本通光秀館の段」「妙心寺の段」「夕顔棚の段」「尼ヶ崎の段」で3時間50分あったのに。それでも,午前中から久々に大阪に出てデパート巡り(といってもなんばの高島屋だけなのだが)をして疲れていたので,早々に寝てしまう始末だった。

今回は,「二条城配膳の段(太夫5名−勝平)」と「夕顔棚の段(藤大夫−團七)」と「尼ヶ崎の段(呂勢太夫−清治,呂太夫−清介)」という配役だった。そうか,咲寿太夫が森蘭丸だったのか,その辺は夢の中でよくわかっていなかった。最後の呂太夫−清介でようやく目覚めることができた。

今日は,呂太夫も声がでていたし,清介は太棹三味線の糸を切る迫力だったのでなかなかよかった。「夕顔棚のこなたよりあらわれ出でたる武智光秀」で有名な尼崎の段は,以前,清介が素人向けの浄瑠璃教室の練習テーマにとりあげてやっているのをネットで見たことがある。ただ,この物語はどうにも感情移入しにくくて苦手である。


写真:尼ヶ崎の段の床本(国立国会図書館から引用)


2022年1月6日木曜日

2022年1月5日水曜日

2022年1月4日火曜日

2022年1月3日月曜日

2022年1月2日日曜日

2022年1月1日土曜日

2021年12月31日金曜日

2021年12月30日木曜日

2021年12月29日水曜日

2021年12月28日火曜日

2021年12月27日月曜日

2021年12月26日日曜日

2021年12月25日土曜日

教養強化合宿(3)

 教養強化合宿(2)からの続き

外山恒一の第15.9999...回「教養強化合宿」が12/24〜1/3という日程で実施されている。弘前大,鳥取大,九大,北九州市立大,大阪芸大予備,福岡教育大,埼玉大,早大2,中大,立教大,一橋大,国際基督教大,京大,華中科技大など15名が集まった。恒例の合宿初日交流会の余興の教養チェックの結果(集合時の12名)が報告されているので確認してみる。

宮崎滔天を知ってた人0,不破哲三8,蜷川幸雄2,石川一雄0,日比野克彦0,森恒夫1,田中美津1,児玉誉士夫3,沢木耕太郎3,香山リカ11,花田清輝3,秋田明大1,西尾幹二2,伊藤野枝6,白井聡6,加藤登紀子2,チャールズ・マンソン1,ロバート・ジョンソン0,ゴダール6,グラムシ8」

自分の場合:ウーマンリブの田中美津は記憶から飛んでいた。白井聡は白井佳夫のイメージを浮かべながらよく名前を聞く評論家かなと思ったが,調べてみると顔は見たことがあって,なんのことはない白井克彦の息子なのか。シャロン・テート事件のチャールズ・マンソンとブルース歌手のロバート・ジョンソンは全く手が出なかった。

地元だからなのか意外に伊藤野枝の認知率が高い。

2021年12月24日金曜日

新規感染者数の増減率

 NHKが毎日発表している都道府県別の新規感染数・死亡数のデータがある。これから東京都と大阪府の数値を取り出して,新規感染者数の対前週比率の常用対数を日毎に求めて整理している。簡易実行再生産数も別に計算しているが,それより直接的に感染者数の動向をみることができる。

これによれば,11月末まで減少を続けてきた感染者数は東京では12月第1週から,大阪では12月の第2週ころから増加に転じた。12月下旬の現在では,週平均値で1.6倍〜1.7倍近くの増加傾向を示している。オミクロン株の影響が見えてきたのかもしれない。

これまでの例では,市中感染が見つかってから4ヶ月ほどで新規感染者数がピークを迎えているので,これから年末・年度末にかけて再び感染の波がやってくるのかもしれない。それにしても,空港検疫でPCR検査をせずにすませるという考えが理解しがたいのだった。




図:新規感染者数の対前週比率の常用対数の推移

2021年12月23日木曜日

リアプノフ指数

 橋本幸士さんの論文,A bound on energy dependence of chaos がarxivに掲載された。本編はわずか2ページ少々の短い論文(7ページのsupplementがついている)だが,非常に普遍的な内容を持っている。

我々の推測(conjecture)の主張は以下の通りである。ハミルトニアンが座標や場の変数の有限多項式で作られた任意のハミルトン系について,高エネルギー極限のエネルギー$E$ で測定した古典/量子リアプノフ指数 $\lambda (E)$は,エネルギー依存性において以下の上界を満たす。

 $c \le 1 {\ \rm for\ }  \lambda (E)\  \propto E^c \ ( E \rightarrow \infty )$ (1)

より正確には,与えられた系に対して,十分に大きなEに対して $|\lambda (E)|\le C E|$となる$C \gt 0$ が存在する。(1)をカオスエネルギー限界とよぶ。

そこで,リアプノフ指数を調べてみたら,意外にもWikipedia日本語版の記述がたいへんわかりやすく書かれていた。 リアプノフ指数  $\lambda$ は初期値がわずかだけ異なった2つの軌道が時間とともにどのように離れていくかを示す指標であり,1次元の場合は,$\|{\boldsymbol  {\delta }}(t)\|\approx \|{\boldsymbol  {\delta }}(0)\|e^{{\lambda t}}$ となっている。

1次元離散力学系が,写像 $x_{n+1} = f(x_n)$で与えられる場合のリアプノフ指数は,

$\lambda =\lim _{{n\to \infty }}{\frac  {1}{n}}\sum _{{i=0}}^{{n-1}}\ln |f'(x_{i})|$

で与えられる(Wikipediaで数式をコピペするとlatex ソースがコピーできるのが有難い)。

図:リアプノフ指数の意味(Wikipediaより引用)

2021年12月22日水曜日

振り子の振れ幅

 小学校理科5年に「振り子の運動」の単元がある。振り子の等時性を,条件制御した実験によって明らかにするというのが目的である。その条件としては,振り子のおもりの重さ,振り子の長さ,振り子の振れ幅(振れ角の初期値の大きさ)の3つが設定されている。

実験で使う安価なデジタルストップウォッチでも100分の1秒まで測れるものが普通なので,小学生による実験でもそれなりの精度が出てしまうわけだ。そういうわけで,丁寧な実験をすると振り子の周期の振れ幅依存性が見えてしまう。単振動の一定周期$T=2 \pi \sqrt{\frac{L }{g}} \approx 2 \sqrt{L}$からのずれ,楕円積分から出てくる効果だ。振れ幅が大きいほど周期が単振動の場合より大きくなる。

これを,実験誤差だからといって無視したり抑え込んでしまうのか,あるいは,将来の学習への含みを残すのかは難しいところである。けれども,とりあえず小学校教員(理科系でないとしても)の豆知識としては,この事実を理解しておくことは必要だと思うので,授業でも取り上げることにしている。


近似式が転がっていたので,Mathematicaで計算してみた。振れ幅(片側)は30度以下が推奨となる。
k[s_] := Sin[s Degree/2]
t[s_] := 1 + k[s]^2/4 + 9*k[s]^4/64 + 225*k[s]^6/2304
Plot[{1.0, t[s]}, {s, 0, 90}, Frame -> True, GridLines -> Automatic]
Table[{s, "->", t[s]}, {s, 0., 90, 15}]
{{0., "->", 1.}, {15., "->", 1.0043}, {30., "->", 1.01741}, {45., "->", 1.03993}, {60., "->", 1.07281}, {75., "->", 1.11693}, {90., "->", 1.17236}}

 図:振り子の周期の振れ幅(振幅)依存性

2021年12月21日火曜日

新型コロナワクチン接種証明書アプリ

 12月20日,厚生労働省じゃなかった,デジタル庁による新型ワクチン接種証明書アプリがリリースされた。

早速インストールしてみる。手順は以下のとおり,

(1)  アプリをダウンロードする(iOSの場合

(2) アプリを起動して,これからの操作を選択

(3) マイナンバーカード取得時の4桁の暗証番号を入れる(そもそも何種類も番号あるのがおかしいわけだけれど)

(4) スマホ(iPhone)をマイナンバーカードの上において情報を読み取り

(5) パスポートを用意して画面撮影により情報を読み取り

(6) 接種した自治体を選択

(7) 以上で出来上がり(これで2次元QRコードが生成されるようになる)

マイナンバーカードに旧姓併記がある方(※近日中に対応予定),パスポートに旧姓・別姓・別名の併記がある方は利用できないというトンデモ仕様になっていた。面倒なこと夥しいので,さっさと選択的夫婦別姓制度を実現したら良いものを。3回目の接種分の証明は自動的に追加されるのだろうか?

図:新型コロナワクチン接種証明書アプリのアイコン



2021年12月20日月曜日

メタバース(3)

メタバース(2)からの続き

metaverseというキーワードを全文に含む論文は,arXivには13本しかない。その中で,最も重要なのは,All One Needs to Know about Metaverse: A Complete Survey on Technological Singularity, Virtual Ecosystem, and Research Agenda(2021 Nov)である。そこで,そのアブストラクトの訳(DeepL supported)を紹介する。

[要旨] 1990年代にインターネットが普及して以来,サイバースペースは進化を続けている。私たちは,ソーシャルネットワーク,ビデオ会議,仮想3D世界(例:VRChat),拡張現実アプリケーション(例:ポケモンGO),非代替性トークン・ゲーム(例:アップランド)など,コンピュータを介したさまざまな仮想環境を作り出してきた。

このような仮想環境は,非永続的で相互に接続されていないとはいえ,さまざまな程度のデジタルトランスフォーメーション(DX)を私たちにもたらしてきた。「メタバース」という言葉は,私たちの物理的生活のあらゆる側面における DX をさらに促進するために創り出された。メタバースの中核には,巨大で統一された永続的な共有領域としての没入型インターネットというビジョンがある。メタバースは,拡張現実(XR),5G,人工知能(AI)などの新しい技術に牽引され,未来的なものに見えるかもしれないが,サイバースペースのデジタル「ビッグバン」はそう遠くはない。

この総括論文は,最新のメタバース開発を最先端技術とメタバースエコシステムの次元で検証し,デジタル「ビッグバン」の可能性を示す包括的なフレームワークを提供する初めての試みである。まず,現在のインターネットからメタバースへの移行を推進する技術として,1) 拡張現実,2) ユーザーインターフェイス (Human-Computer Interaction),3) 人工知能,4) ブロックチェーン,5) コンピュータビジョン,6) IoTとロボティクス,7) エッジとクラウドコンピューティング,8) 未来のモバイルネットワークという8つの実現技術を厳密に検討する。

アプリケーションの面では,メタバースエコシステムは,人間のユーザーが自立的,持続的,かつ共有された領域内で生活し,遊ぶことを可能にする。そこで,1) アバター,2) コンテンツ作成,3) 仮想経済,4) 社会的受容性,5) セキュリティとプライバシー,6) 信頼と説明責任という6つのユーザー中心的な要因について議論する。最後に,メタバースの発展のための具体的な研究課題を提案する。

[索引語]メタバース,没入型インターネット,拡張/仮想現実,アバター,人工知能,デジタルツイン,ネットワーキングとエッジコンピューティング,仮想経済,プライバシーと社会的受容性。

もう少し短かくて技術よりでないのは,A Survey on Metaverse: the State-of-the-art, Technologies, Applications, and Challengesである。

2021年12月19日日曜日

メタバース(2)

メタバース(1)からの続き

1992年にスノウ・クラッシュで誕生し,2003年にSecond Lifeとして実体化し,2007年ごろに第1次ブームを迎えて消え去ったメタバースである。2021年に第2次ブームが立ち上がるかどうかの時期に差し掛かっている。コロナ禍とそれにともなう在宅勤務が追い風になっていることは間違いない。

この様子を,論文について調べてみた。1つは日本語の論文であり,これはCiNiiのキーワード検索(メタバース OR metaverse)による。もう1つは英語の科学系の論文であり,これはarXivのキーワード検索による。後者では13本しか見つからなかった。案外少ないので学術用語としては十分定着していないのかもしれない。

2007  2
2008  10  (1)
2009  15  (6)
2010  9  (2)
2011  8  (5)
2012  7  (5)
2013  0
2014  0
2015  1
2016  0
2017  2
2018  1
2019  1  (1)
2020  2
2021  8  (2)
これは前者のCiNiiでヒットした文献の数(合計66件)である。2008年から2009年にピークがあり,2021年に再び増大している。なお,括弧内はタイトルに(メタバース OR metaverse)を含むもの。

P. S. CiNiiは,もうすぐ(2022年4月から)CiNii Researchに移行する。すでに試運転は始まっているので,こちらでも試してみたが,あまりクリアな結果は得られなかった。


写真:スノウ・クラッシュ下の書影(amazonから引用)


2021年12月18日土曜日

メタバース(1)

いろいろと問題を抱えていた FaceBook(2004-2021) が Meta に社名を変更したのが,2021年の10月28日だった。その理由として,今後の成長が見込まれるメタバースの開発を事業の中核に向けるということだった。

機が熟していたからなのか,それ以来メタバースの話題をあちこちでよく目にするようになった。ポッドキャストのbackspace.fmでも,2週連続でVRChatの関係者,クレマさんぴちきょさんが登場していた。

「メタバース」は,ニール・スティーヴンスン(1959-)がSF小説「スノウ・クラッシュ(1992)」の中で初めて用いた造語である。ニール・スティーヴンスンといえば,「ダイヤモンド・エイジ(1995)」であり,この中に出てくるプリマーのイメージはこれからのデジタル化された教育のモデルとして欠かせないものだと思えた。ハヤカワ文庫SFに収録されてすぐのころに両方とも読んでいる。

2003年にはSecond Lifeがスタートし,2007年ごろには日本でも一時かなり流行って注目を集めた(なにせ電通が乗り込むくらいだから)のだが,評判倒れになってしまった。グーグルグラスが潰れたこともあり,XRやメタバースはまだまだ先のことだと思っていた。なにしろ,Appleが本気を出していないので,macOS上ではまともなVR対応アプリが動かないのだ。

さて,この度はどうなることだろうか。どう考えてもVRゴーグルをつけっぱなしで半日過ごすとかいうのは無理のような気がするのだけれど・・・。


写真:スノウ・クラッシュ上の書影(amazonから引用)

[1]ソーシャルVR国勢調査2021(バーチャル美少女ねむ)
[2]いまこそ知りたいVRとメタバース第1回〜これから起きる未来とは〜
[3]いまこそ知りたいVRとメタバース第2回


2021年12月17日金曜日

新型コロナワクチン接種予約(3)

 新型コロナワクチン接種予約(2)からの続き

天王寺キャンパスの非常勤授業から帰ってきたら,天理市から新型コロナワクチン接種予約追加(3回目)の接種券が届いていた。6月5日に1回目,6月26日に2回目の接種をしているので,2022年1月17日(月)から予約受付開始,2月26日(土)以降に接種可能になる。

これはちょうど8ヶ月の間隔を空けたことに対応しているが,2ヶ月の前倒しが必要な場合はまた連絡があるとのこと。電話予約の場合は,年齢ごとに受付曜日が決まっているが,オンライン予約は24時間無休でいつでも可能である。

予診票に,ファイザーかモデルナかを選ぶ欄がないなあ(あると混乱するだけなのだが)と思っていたが,ファイザー社ワクチンであるという説明書が入っていた。前回の接種時とは異なり,高齢者接種でのファイザーワクチン数が足りなくて,テレビではさかんに交互接種のメリットを宣伝していた。接種者の希望でということにすれば混乱するのにと思っていたが,天理市ではそれはないかもしれない。


2021年12月16日木曜日

現代の国語(2)

 現代の国語(1)からの続き

「現代の国語」の教科書を巡って,何やらややこしいことになっている。

先の学習指導要領の改定で設けられた「現代の国語(2単位)」では,論理的な文章や実務的な文章を扱うが,文学的な文章は扱わず,これは「言語文化(2単位)」の方に委ねられるとされた。というわけで(これが良いかどうかは別として),現代の国語の教科書には「文学作品」は登場しないものと思われていた。

ところが,第一学習社が検定に提出した4種類の現代の国語の教科書のうちの「現代の国語」では,羅生門(芥川龍之介),砂に埋もれたル・コルビュジェ(原田マハ),夢十夜(夏目漱石),鏡(村上春樹),城の崎にて(志賀直哉)の5つの文学作品が取り上げられ,文学のしるべというコラムまであった。

他社の現代の国語の教科書では,文学作品を掲載したものは全くなかったので,これが物議を醸すこととなった。

8月13日:一般社団法人教科書協会が「現代の国語」の検定について文部科学省の見解を明らかにするよう要望する

8月24日:文部科学大臣(萩生田光一)が,教科用図書検定調査審議会に,第一学習社の現代の国語の問題を踏まえて,今後の高等学校「現代の国語」の検定における小説の取扱いに関する考え方を示すよう検討依頼する。

8月24日:教科用図書検定調査審議会が,「高等学校「現代の国語」の教科書の検定においては、小説教材を扱うことについて、学習指導要領の趣旨に照らし、より一層厳正な審査を行うこととする。」という回答を返す(はやい)。

8月25日:文部科学省初等中等教育局 教科書課・教育課程課が,都道府県などの高等学校の設置者の教科書担当部署に,高等学校「現代の国語」に関する教科書検定の考え方についてという説明を送る。

9月27日:文部科学省初等中等教育局 教科書課・教育課程課が,都道府県などの高等学校の設置者の教科書担当部署に,高等学校「現代の国語」における指導上の留意事項についてというダメおしの文書を送る。

1 学習指導要領上、「読むこと」の教材として小説等の文学的な文章を取り扱うことはできないこと。

2 「読むこと」以外の領域の教材として小説等の文学的な文章を取り扱う場合であっても、〔知識及び技能〕の指導事項との関連を図りつつ、当該領域の指導事項を身に付けさせるためにどのような言語活動を設定することが適当か、という観点から、当該領域に関する指導の配当時間も考慮して、当該教材の適切な取扱い方を検討する必要があること。

3 上記2の適切な取扱いについて、あくまで設定した言語活動を行うために必要な範囲で当該教材を読むことが想定され得るものであり、当該教材を読む活動が中心となるような取扱いは不適切であること。

4 なお、もとより小説等の文学的な文章を取り扱うことが想定されている「言語文化」において、「読むこと」の近代以降の文章に関する指導に20単位時間程度を配当することとされていること。

12月8日:文部科学省が2022年度の高校1年生が使う教科書の採択結果を発表し,科目「現代の国語(2単位)」では,第一学習社が16.9%(19.6万冊)のシェアでトップになった(東京都のデータ)。現場では,昔のタイプの文学こみの教科書が支持されたということだ。

まあ,教科書検定に失敗しているというのか,学習指導要領の改定に失敗しているというのかなんといいましょうか・・・

P. S. 高校のとき,全く得意ではなかったが,一番好きで授業に集中していたのが,現代国語だった。山月記,舞姫,城の崎にて,こころなどが掲載されていて,真剣に先生の話を聞いていた。1年がみーちゃん美谷先生で,2年が小浦場先生,3年が普神先生だった,多分。

2021年12月15日水曜日

現代の国語(1)

夏井いつきからの続き 

夏井いつき俳句チャンネルを最初の方から順番に見て学習している。助詞の使い方ひとつで句の意味が大きく変わることなど,文法にしたがって論理的に説明している回が面白い。

高等学校の教科の国語は,必履修科目の「現代の国語(2単位)」,「言語文化(2単位)」と,選択科目の「論理国語(2単位)」,「文学国語(2単位)」,「国語表現(2単位)」,「古典探究(2単位)」から成り立っている。

学習指導要領には現代の国語について次のような記述がある。

ア 論理的な文章や実用的な文章を読み,本文や資料を引用しながら,自分の意見や考えを論述する活動。

「ここでの論理的な文章とは,現代の社会生活に必要とされる,説明文,論説文や解説文,評論文,意見文や批評文などのことである。一方,実用的な文章とは,一般的には,実社 会において,具体的な何かの目的やねらいを達するために書かれた文章のことであり,新 聞や広報誌など報道や広報の文章,案内,紹介,連絡,依頼などの文章や手紙のほか,会議や裁判などの記録,報告書,説明書,企画書,提案書などの実務的な文章,法令文, キャッチフレーズ,宣伝の文章などがある。また,インターネット上の様々な文章や電子メールの多くも,実務的な文章の一種と考えることができる。論理的な文章も実用的な文章も,小説,物語,詩,短歌,俳句などの文学的な文章を除いた文章である

「これまでの国語は文学作品偏重であり,それが若者の言語能力の低下を招く」のだという,「野党は批判ばかりしている」と同じレベルの印象論によって,現代の国語が作られた。これを根拠に文学ディスの人が盛んに発言している。

俳句の分析の方がよっぽど論理的思考力を高めるのだと,夏井いつきとその息子の家藤正人の話を聞いていて思う。夏井いつきや家藤正人の声は聞き取りやすく,内容をわかりやすく丁寧に伝える能力が高い。つまり,言葉を扱う技術に優れているということなのだ。

2021年12月14日火曜日

中村仲蔵

 さて今日は12月14日。元禄15年12月14日(1703年1月30日)に赤穂四十七士が吉良上野介邸に討ち入りした日を記念し,兵庫県赤穂市の赤穂大石神社では赤穂義士祭が行われる。昨年はコロナ感染症蔓延のため中止されたが,今年は規模縮小の上2年ぶりの開催となった。

俳句の春の季語にも義士祭というのがある,こちらの方は赤穂浪士の墓がある東京都港区高輪の泉岳寺で4月1日から7日まで行われるので春の季語になっている。赤穂浪士がそれぞれの大名屋敷で切腹させられたのは,元禄16年2月4日(1703年3月20日)なので,そのへんからきているのかもしれない。なお,泉岳寺義士祭は12月14日にも行われている。

この赤穂事件から45年後の寛延元年8月14日(1748年9月6日)に,人形浄瑠璃の仮名手本忠臣蔵が大阪の竹本座で初演された。その五段目の話である中村仲蔵を初めて聞いたのは,立川志の輔の落語だった。忠臣蔵や歌舞伎の解説から入って,グングンと引き込まれる話だった。神田伯山の講談(張り扇がうるさい)はネット上に映像があるが,志の輔の方は残念ながら見当たらなかった。

その中村仲蔵の話が,NHKで忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段(なかむらなかぞう しゅっせのきざはし,外題は奇数でないと・・・)として2週に渡ってドラマ化されていた。主演は六代目中村勘九郎だ。先代の勘九郎はNHKの大河ドラマ元禄繚乱で大石内蔵助だったが,これは見ていなかった。

NHKのドラマはなかなか豪華なメンバーで面白かった。そうそう,上白石萌音の三味線も良かった。それでも志の輔の落語の方が印象的だったかもしれない。


写真:勝川春章による初代中村仲蔵の斧定九郎(Wikipediaより引用)

2021年12月13日月曜日

嗚呼黎明

旧制大阪高等学校(2)からの続き

旧制大阪高等学校の全寮歌が「嗚呼黎明」だ。大正12年に作られた曲だが,面倒なことに歌詞・楽曲ともにJASRAC管理の下にある。なわけで,歌詞を全文引用することは憚られる。前詞はいいのかな。歌詞本文は,岡林信康の「友よ夜明け前の闇の中で・・・夜明けは近い」と同じ趣旨に違いない。

東天紅を染むる金剛の峯にこれを嘯かば
  天下の惰眠一時に破れ,
夕陽沈む茅渟(ちぬ)の海にこれを叫ばゝ
  魑魅魍魎も影を潜めん。
     (大正十五年三月佐々木喜市
当時の体育会系の部活動か応援団ならばこれを歌っていたのかもしれないが,なぜか我々昭和47年入学の阪大理学部物理学科のクラス(定員40名)の2年の研修旅行(赤目四十八滝)ではみんなで肩を組んで歌うことになった。引率は,クラス担任である教養部数学の水野克彦先生だった。多分,それ以前のコンパなどで「これくらいはちゃんと歌えるようにしておかないと」というアドバイスがあったからのような気もする。

そんなわけで,研修旅行には,歌の栞を作ってバスの中で練習していたのではないか。この辺の記憶もほとんど曖昧なので単なる幻想かもしれない。高校の修学旅行で歌の栞を作ったこと(挿絵を担当したら隣のクラスにパクられてしまった)や,小学校の修学旅行では歌の栞なしにアニメソングを歌いまくっていたのは確かな記憶だと思われる。

大学のクラスで作ったその歌の栞に掲載したかどうかは定かでないが,当時クラスのみんな(一部かもしれない)でよく歌っていた,「嗚呼黎明は近づけり」や流行歌(主にフォークソング系)以外の曲といえば,「インターナショナル」「ワルシャワ労働歌」「原爆を許すまじ」「差別裁判打ち砕こう」というラインナップなのであった。時代を感じさせる。

[1]インターネットや携帯電話等 音楽利用の手引き(JASRAC 送信部ネットメディア課)

2021年12月12日日曜日

旧制大阪高等学校(2)

旧制大阪高等学校(1)からの続き

 戦後新制大学が発足する際に,旧制高等学校は新制大学の教養部として組み込まれることになった。阪大は,ナンバースクールの対応物がなくて,官立の大阪高等学校(旧制)と府立の浪速高等学校(旧制)がその役割を果たした。他の旧帝国大学は,北海道大学と九州大学を除いて,一高二高三高八高などがこれに相当している。四高五高六高七高は,旧帝大以外の新制大学の教養部を形成した。

東京大学
1877 東京大学
   開成学校(1872-),東京医学校(1874-)
1877 工部大学校
1886 帝国大学
1890 東京農林学校(1886-)
1897 東京帝国大学
1949 東京大学
   第一高等学校(1886-),東京高等学校(1921-)

京都大学
1897 京都帝国大学
1949 京都大学
   第三高等学校(1894-)

東北大学
1907 東北帝国大学
1912 仙台医学専門学校(1901-),仙台高等工業学校(1907-)
1949 東北大学
   第二高等学校(1887-),仙台工業専門学校(1906-),
   宮城師範学校(1943-),宮城青年師範学校(1944-)

九州大学
1903 福岡医科大学
1911 九州帝国大学
1949 九州大学
   福岡高等学校(1921-),久留米工業専門学校(1939-)

北海道大学
1876 札幌農学校
1907 東北帝国大学農科大学
1918 北海道帝国大学
1949 北海道大学
   函館水産専門学校(1935-)

大阪大学
1919 大阪医科大学
   大阪府立大阪医科大学(1915-)
1931 大阪帝国大学
1933 大阪工業大学(1929-)
1949 大阪大学
   大阪薬学専門学校(1917-),大阪高等学校(1921-),浪速高等学校(1926-)

名古屋大学
1931 名古屋医科大学
   愛知県立愛知医科大学(1920-)
1939 名古屋帝国大学
1949 名古屋大学
   第八高等学校(1908-),名古屋高等商業学校(1920-)
   岡崎高等師範学校(1945-)

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
金沢大学
1949 金沢大学
   第四高等学校(1887-),金沢高等工業学校(1920-),金沢医科大学(1923-),
   石川師範学校(1943-),金沢高等師範学校(1944-)

熊本大学
1949 熊本大学
   第五高等学校(1887-),熊本高等工業学校(1906-),熊本医科大学(1929-),
   熊本薬学専門学校(1925-),熊本師範学校(1943-),熊本青年師範学校(1944-)

岡山大学
1949 岡山大学
   第六高等学校(1900-),岡山医科大学(1922-),岡山農業専門学校(1946-),
   岡山師範学校(1943-),岡山青年師範学校(1944-)

写真:旧制大阪高等学校の跡地の石碑(2021.11.21撮影)


2021年12月11日土曜日

旧制大阪高等学校(1)

安倍晴明からの続き

 11月21日に大阪の阿倍野あたりに散歩に出かけてからはや三週間経った。北畠のあたりから阿部野神社をまわり,安倍晴明神社にいたるコースだった。

その北畠の東を走るあべの筋の脇にURの阪南団地がある。ここはかつての旧制大阪高等学校の跡地である。それほど広いわけではない。大高跡地であることを示す石碑と,当時からあるチシャノキとその説明を書いた記念碑があった。青春の像もあるというので探したが見つからなかった。後で調べると阪大豊中キャンパスの大高の森に移設されていた。

天理大学の創設者で,天理教第二代真柱の中山正善(1905-1967)は,旧制大阪高等学校から東京帝国大学文学部宗教学宗教史学科に進んでいるが,その縁から旧制大阪高等学校の学生集会所であった黎明館を天理大学に移築して今に至っている。

大阪帝国大学から新制の大阪大学へ移行する際に,旧制大阪高等学校(官立,1921-1950)と旧制浪速高等学校(府立,7年制,1926-1950)がその後の教養部を形成した。石橋から坂道を上ってきて最初に見える,街兼山の古い大学の建物(イ号館,ハ号館)などはその旧制浪速高等学校の建物だった。

かつて教養部長を務めた物性物理実験の大塚穎三先生(1929-2013,中田博保さんの師匠)は,旧制浪速高等学校の出身であり,「大塚穎三名誉教授に聞く : 大阪大学の思い出」というインタビュー記事の中に当時の話がでてくる。


写真:旧制大阪高等学校跡地のチシャノキ(2021.11.21撮影)

2021年12月10日金曜日

夏井いつき

 NHKのプロフェッショナル仕事の流儀夏井いつきをやっていた。なんだかんだって,結局民放(BSを除く)はほとんど見ずに,NHKばかり見ている。NHKがおかしくなっているのはニュースや報道番組なので,それ以外はEテレ含めて受信料を払う価値があるものも多い。

ただ,科学報道番組だからといっても安心はできない。マスメディアの機能とは本質的に情報の増幅作用(煽り)に過ぎないからだ。科学的な根拠や正確性や客観性やバランスよりも,いかに耳目を集めるか,情報量としてのニュース価値が優先された構成になってしまう。温暖化問題しかり,コロナ問題しかり。それが,ニュース報道系では中立性という幻想のもとに,ジャーナリスティックな批判色が抜けてしまい,単なる政府与党の主張の広報宣伝機能に終始することになってしまった。

話がそれた。夏井いつきは,毎日放送のプレバトで出演者の芸能人が作る俳句を辛口に添削することで一躍有名になったようだが,そもそもこの番組は一度も見たことがない。ただ,NHKの俳句番組にもたまに出てきて,同じような俳句批評をするのを見たことがあったので,面白いというのは理解できる。

そこで,YouTubeの夏井いつき俳句チャンネルで勉強することにしたら,最初からとてもためになるではありませんか。五・七・五の正しい数え方というタイトルで,「チューリップ」を理解すれば良いというのが結論だった。拗音(ゃゅょ)を含む音・促音(っ)・長音(ー)・撥音(ん)はそれぞれ一音と数えるということだ。したがって,「チュ・ー・リ・ッ・プ」は五音になる。

2021年12月9日木曜日

女系家族

 しばらく前に,映画版の女系家族(大映 1963)をみたが,最近テレビ朝日で二夜連続のドラマスペシャルで女系家族(2時間×2)をやっていた。

山崎豊子(1924-2013)の原作で,大阪船場の商店の婿養子の旦那が亡くなった後の遺産相続を巡るややこしい話だ。新しいテレビドラマの方も,宮沢りえと寺島しのぶががんばっていたけれど,何といっても昔の映画は,当時の時代の空気が感じられておもしろい。

番頭役の中村鴈治郎(二代目)のいやらしい目とか,主人公三人姉妹の叔母役の浪花千栄子の雰囲気がたまりませんね。ストーリー展開はほとんど(多分原作通りなのだろう)同じだった。二号さん役は,宮沢りえの方が若尾文子より,途中からの変貌ぶりがきわだっていたかもしれない。

2021年12月8日水曜日

日米開戦80周年

日米開戦80周年を迎えるが, 日中開戦90周年満州事変 1931.9.18)ではないのか。インターネットで検索しても前者は35件,後者は1件しか見つからない。岩波新書の日本の歴史(井上清)で,15年戦争というコンセプトを学んだような気がしていたが(日中15年戦争と読んだ),そんな章や節の題目はなかった。またもや自分の記憶が溶けているのかもしれない。

2019年12月8日に「真珠湾攻撃から77年」の記事でこのブログをスタートしてから3周年を迎えた。その1周年は「12月8日(Blogger 1周年)」であり,この時の全期間ページビュー(PV)は4867だった。統計情報によれば,現在の全期間PVが23363,過去12ヶ月PVが1.31万である。ということで,2019年:0.49万PV=13pv/d,2020年:1.42万PV=39pv/d,2021年:1.31万PV=36pv/dとなる。昨年は,コロナ感染症の話題で盛り上がっていたので,こんな結果になった。

これまでの全期間アクセスランキングでも,(1)「オーバーシュート」の見分け方(2020.4.2, 1798 PV),(2) 各国の感染者比(1)(2020.3.10, 1204 PV),(3) 感染症の数理シミュレーション(2)(2020.2.25, 1068 PV),(4) 児童生徒の自殺(2019.10.19, 779 PV),(5) 感染症の数理シミュレーション(1)(2020.2.24, 344 PV)となっている。

また,コロナの話題が落ち着いてしまった過去12ヶ月間のアクセスランキングでは,(1)「オーバーシュート」の見分け方(2020.4.2,  277 PV),(2) ab+bc+cd=n(2020.1.13,  88 PV),(3) 教育ビッグデータ(2)(2019.6.27,  77 PV),(4) TikZの円弧(2021.3.12,  63 PV),(5) 都道府県人口当たりのCOVID-19(3)(2021.3.19,  56 PV)であった。

新しい記事一本を投稿した直後の平均PV(7pv/d)の5倍程度の全PV(35pd/d)が1日にあるので,過去の記事がごくわずかづつでも参照されていることになる。さて,親戚縁者以外の誰がどこからアクセスしているのだろうか?(Twitterに放流すると,面白ければPVを10-20くらい稼げることは分かっている)


図:koshix.blogspot.com のページビュー(全期間)

15年という短いスパンで,国家は簡単に滅びてしまう。仮に平均寿命まで生きたとしても,あと12年,こんな風にブログを書き続けることができるのだろうか。


[1]日中戦争(1931-1937-1945)1937.9 支那事変閣議決定
[2]第二次世界大戦(1939-1945)1939.8 独ソ不可侵条約・1939.9 ポーランド侵攻
[3]太平洋戦争(1941-1945)1941.12.8 米國及英國ニ對スル宣戰ノ詔書
[4]大東亜戦争(1941-1945)1941.12.10 大本営政府連絡会議,12.12 閣議決定

2021年12月7日火曜日

インフルエンザの予防接種

 天理市からインフルエンザの予防接種の案内があったので(個別ではなくて広報誌なのだが),しばらく前に予約していたら,間の悪い事に久々の雨降りの午後が予約と重なってしまった。仕方がないので,車で天理市メディカルセンターに向かった。

これは高齢者(65歳以上)向けに,インフルエンザ予防接種の助成をするもので,2021年10月1日から2022年1月31日迄の期間,1500円で1回接種できるというものだ。

予約した1時30分の30分前にセンターに着いたが,もう15名くらいが椅子に座って待っている。体温を測って問診票を受付に出すと14番の書類が渡された。時間が来たらスイスイと接種が終了していく。これも痛くはありませんでした。

次は,コロナワクチンの3回目で,こちらの方は12月接種券配布,1月予約,2月接種というスケジュールになりそうだ。

2021年12月6日月曜日

宣伝大臣ゲッベルス

NHK映像の世紀プレミアムの第18集が「ナチス狂気の集団」だった。国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)は1919年にその前身が,反ユダヤ主義・社会主義・右翼の性格を持ったミュンヘンの酒場の鉄道員の集まりから始まっている。ヒトラーはその年に入党し,1920年にナチスと改名してハーケンクロイツをシンボルにしたころには主要なメンバーとなり,1921年には党首(総統)になっている。

その後,クーデター未遂事件のミュンヘン一揆(1923.11.8-9)を経て,1928年には初めて12名の国会議員を送り出し,世界大恐慌の中で党勢を拡大し,1930年には107名が当選して第2党に躍進する。1932年には第1党の座を確保し,1933年1月にヒトラーが首相に就任する。

1933年2月にはドイツ国会議事堂放火事件が起こって共産主義者がスケープゴートとされ,同3月には全権委任法が成立して,立法権が国会から一党独裁のナチス政府に移ってしまう。あっというまですね。日本の改憲勢力もその類似物を目指していると疑われても仕方がない。

1934年の長いナイフの夜で,政敵である突撃隊のレームを粛清し,1938年の水晶の夜で,反ユダヤ主義暴動によるユダヤ人の迫害がピークに達して,その後ヒムラーが主導したホロコーストへの扉が開かれる。1939年9月には,ドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦の火蓋が切られた。

これらの流れをドイツ国民の多くは支持したが,そこには,1933年に設置された国民啓蒙・宣伝省を使って,知識人であったゲッベルス宣伝大臣(ではなくてだった)が繰り広げたプロパガンダ国民ラジオ)が非常に重要な役割を果たしている。

振り返って現在の日本では,宣伝省を作るまでもなく,電通とその傘下のマスメディアが,自ら進んで権力への忖度に勤しんでいる。発祥の地のミュンヘンならぬ大阪でもテレビ新聞が総動員で大阪維新を宣伝し,日本共産党をディスり,民族差別を煽るタレント(大阪府知事を含む)を重宝しているのであった。

そんなことは考えていなかったが,92歳まで生きると1945年8月15日から100周年ということになる。1941年12月8日だと88歳,1937年7月7日だと84歳,1931年9月18日だと78歳。歴史は繰り返すのか?
ヘルマン・ゲーリング(1893-1946.10.15)国家元帥
ルドルフ・ヘス(1894-1987.8.17)ナチス総統代理
エルンスト・レーム(1887-1934.7.1)突撃隊幕僚長
ヨーゼフ・ゲッベルス(1897-1945.5.1)宣伝大臣
アドルフ・ヒトラー(1889-1945.4.30)ドイツ国総統(指導者兼首相)
ハインリヒ・ヒムラー(1900-1945.5.23)親衛隊全国指導者・全ドイツ警察長官
アドルフ・アイヒマン(1906-1962.6.1)親衛隊・ゲシュタポユダヤ人移送長官

2021年12月5日日曜日

ヨビノリ(3)

ヨビノリ(2)からの続き 

教育系YouTuberにならない方がいい7つの理由」というタイトルで,東大駒場祭でヨビノリたくみの講演があった。2017年から教育系ユーチューバとして,予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」というチャンネルを公開し,4年半になった。現在までに83万人が登録し,動画本数は700本,総再生回数が1.5億回,1日平均20万回再生に達している。

その7つの理由だが,(1) 視聴者の母数が少ない,(2) ライバルが多い,(3) 撮影がシンプルにつらい,(4) ミスが許されない,(5)  誰かに嫌われる,(6) 生活できない,(7) 仕事とプライベートの境目がなくなる。というものだった。受験に役立つ教育系ユーチューバの主なチャンネルだけでも120あって,そのうち収益が上がって運営できているのは5本程度だとのこと。

YouTubeは既にレッド・オーシャンになっているが,VR(メタバース)はブルー・オーシャンなのだろうか。そこで教育系のVRチャンネルが成立するのだろうか。思い至ったのが,情報のストック(リソース)情報のフロー(コミュニケーション)の違いだ。1990年代半ばにインターネットの商業化が始まって,インターネットの教育利用が話題になったときに,このキーワードで説明することがよくあった。

YouTubeはその基本機能が動画コンテンツ(リソース)の蓄積と配信であり,VR Chatのようなメタバースの特徴はアバターを通じたコミュニケーションの場というところにあるのではないか。メタバースにおける講義を収録したものがメタバース上で簡単に使えるならば,現在のYouTubeコンテンツと同様に扱えるのかもしれない。しかし,それはYouTubeと本質的には違わないような気がする。


2021年12月4日土曜日

夜間の授業(2)

 夜間の授業(1)からの続き

夕食をとって本屋や文房具屋を回ってもまだ1時間半あるので,MIOの11階のオープンスペースにあるガーデンカフェで時間を潰すことにする。

天王寺キャンパスで,出勤簿への押印や事務手続きを済ませて,2階の教室へ向かう。ここは以前デジタル教材シンポジウムを開いた部屋だった。教室のAV設備へは簡単にアクセスできるので,iPadの画面を表示できるのは助かった。

授業が始まって,聞いてみれば受講者のほとんどが文系で,高等学校理科は基礎科目しかやっていないようだ。授業中に自分の体調不良でトイレ休憩してしまうという災難があったが,なんとか終了。次回以降が心配だわ。

天王寺キャンパスの道路側のフェンスに,建築計画のお知らせと地元説明会のお知らせが貼り出されていた。大阪教育大学(天王寺)合築施設ができるということで,地上10階で延面積6000平米の建物が本館と西館の間にできる。2022年9月着工で,完成は2年後の2023年12月だ。

これは,大阪市教育委員会の新・大阪市総合教育センターが6-10階を,大阪教育大学の教職大学院が1-5階を使うというもので,栗林学長肝煎りの計画だ。現役時代その検討チームからは完全に外されていたのだが,施設課から内々に具体的なイメージのポンチ絵などを描いてと頼まれてこっそり作ったことがあった。もちろん今のプランにその痕跡はかけらもない。

大阪市の教育センターは,現在の10,000平米から3,000平米へと大幅なダウンサイジングになるので,組織もシュリンクするのだろう。大阪維新の考えそうな,喜びそうなプランである。

2021年12月3日金曜日

夜間の授業(1)

 天王寺キャンパスの初等教育教員養成課程の夜間コース後期の非常勤の授業が始まった。小学校教員を目指す学生(主に2回生)の理科の授業で,理科Ⅰが生物と化学の分野,理科Ⅱが地学と物理の分野に相当する内容を扱っている。

諸般の事情で,後半の物理分野のピンチヒッターで登板することになった。夜間コースの平日の授業は,18:00-19:30の6限と19:40-21:10の7限から成り立っていて,理科Ⅱは7限であり,受講者は30名程度である。

現役のときも,夜間の授業(コンピュータ演習など)の手伝いをしたことは何度かあったけれど,7限目は初めてかもしれない。午後一番には柏原キャンパスで非常勤の授業があるので,それが終わってから久しぶりに大阪に向かった。授業が始まるまで4時間以上あるので,どうやって過ごすかが問題だ。

上本町の近鉄百貨店のジュンク堂や天王寺MIOの紀伊國屋書店を回ったが,久しぶりに普通の本屋にいくと面白そうな本がたくさん並んでいる。やはりネットでは出会うことができなかった。あとはメタバースの本屋・読書ワールドができるの(あるのかもしれない)を待つだけかもしれない。

夕食は,阿倍野地下のラーメンと餃子の古潭に入る。1968年にオープンしているが,大学に入った1972年ごろに柳田さんに美味しいラーメン屋があるということで初めて連れて行ってもらった懐かしい店だ。当時はいつも行列ができるほど繁盛していたが,コロナのせいか,時間のせいか,場所柄のせいか店はとても空いていた。普通の味噌ラーメンと餃子にしたが,次は彩菜麺にしてみよう。

2021年12月2日木曜日

Connected Papers

30周年を迎え arxivの機能がいろいろと整備されてきたが,そのすべての機能にアクセスすることはなかなかできない。その中で,ひとつ目に付いたのが Connected Papersである。個別の論文の最下段のタブの一つが Related Papersであり,この中にConnected Papersがある。

How to read the graph
Each node is an academic paper related to the origin paper.
・Papers are arranged according to their similarity (this is not a citation tree)
・Node size is the number of citations
・Node color is the publishing year
・Similar papers have strong connecting lines and cluster together
論文の引用関係ではなくて,論文の類似度がベースになっている。実際には,キーワードで類似論文をまとめてサーベイすることの方が多いけれど,使いこなすことができれば便利かな。


図:arxivのConnected Papersの実例


2021年12月1日水曜日

Julia 1.7.0

11月30日にJulia 1.7.0がリリースされた。普段は,しばらく様子を見てからインストールするのだけれど,macOS Apple Siliconにネイティブ対応したようなので,早速試してみる。

メジャーバージョンアップの際には,いつも困ってしまうのだが,今回もすんなりとはいかなかった。とりあえず手順を書いてみるが,何度もやり直しているので,ヒステリシスがあるかもしれない。

 (1) julia 1.7.0 packege ダウンロード&インストール
 (2) .zshrcのパス変更 % cat .zshrc
export PATH=/Applications/Julia-1.7.app/Contents/Resources/julia/bin
 (3) ln -s /Applications/Julia-1.7.app/Contents/Resources/julia/bin/julia julia
 (4) julia -> using Pkg -> Pkg.add(“IJulia”) -> Pkg.build(“IJulia”)
 (5) brew install jupyter
 (6) jupyter kernetspec list -> jupyter kernetspec uninstall julia1.6.0
 (7) jupyter notebook -> OK
 (8) pip3 uninstall jupyterlab -> pip3 install jupyterlab
 (9) jupyter lab build -> OK


とりあえず,jupyter notebook も jupyter lab も動いたが,パッケージの整合性などからか,これまでのコードがすべてそのまま動くというわけにはいかなかった。ボチボチ様子見よう。

P. S. とりあえず,Plots 周りの不整合はなんとかなった。たいした処理をしていなくても,ときどきカーネルが死んでしまうのが問題だ。

2021年11月30日火曜日

防災省

 NHK午前の「みみより暮らし解説」で,富士山噴火における火山灰被害が取り上げられていた。首都圏の人にとっては非常に重要なテーマだ。調べてみると,NHKではしばらく前から,富士山噴火のリスクについての番組が多くなっている。どんな意図なのかわからないが(改憲時の緊急事態条項がらみか)キャンペーンを繰り広げている。

2001年の中央省庁再編の際に,運輸省,建設省,北海道開発庁,国土庁が統合して国土交通省ができたが,このときに国土庁にあった防災局が内閣府に移管されている。その内閣府の防災情報の火山対策のページの中に,2020年3月まで設けられていた大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループの資料がある。

これによれば,風向きにもよるが首都圏では最大10cmの降灰が数日でおこる。桜島の近くの鹿児島市の場合でもここ10年間の1月あたりの最大値が1650g/m^2なので(火山灰の平均密度を1g/cm^3として)高々1 mmの降灰である。その100倍のオーダーの火山灰が首都圏の4000万人に降りかかることになる。

その結果,(1) 電力網の漏電,(2) 火力発電所のエアフィルタ詰まり,(3) 上水道の汚染,(4) 下水道の詰まり,(5) 電車・列車運行の停止,(6) 自動車交通の渋滞・停止,(7) 航空機の停止,(8) 呼吸器などへの健康被害,(9) 火山性ガスによる金属腐食 などなど,社会生活への致命的ダメージが懸念される。沖縄などの軽石被害もたいへんだが,その比ではない。

どう考えても,防衛省の5兆や6兆の防衛費は,災害防衛費(感染症対策含む)に統合(組織も含めて)したほうが,日本の国土とそこに住む人々を守るにふさわしいような気がして,防災省で検索したところ,関西広域連合や石破茂によってそんな話題がすでに出ているのだった。


写真:1707年の宝永噴火絵図(NHK 富士山噴火降灰シミュレーションから引用)

2021年11月29日月曜日

スマートヘルメット

NHKスペシャル「中国新世紀(3)実験都市深圳 メイドインチャイナの行方」を見た。流通用AIロボットの会社である,Dorabot(ドラえもんにインスパイアされている)もすごかったけれど,びっくりしたのはスマートヘルメットだった。

スマートフォンの次に来る新しいイノベーションツールは何かとずっと考えていた。時代はズレるがストリンガーに潰されたSONYの旧AIBO(1999-2005)や,電脳コイル(2007)の電脳メガネが実体化したようなGoogleグラス(2013-2015)はその候補だった。けれど,いまだに登場していない。

いや,ドローンバーチャルリアリティヘッドセットのように,それは既に登場しているのかもしれない。しかし,スマートウォッチは,それだけでは完結しないものなので違うような気がする。やはり,スマートフォンを代替する単一のウェラブルデバイスが必要だ。

視覚や聴覚へのアクセスと常時身に付けられるという条件で思い浮かんだのが帽子である。スマートキャップ ,これならば常時装着することが可能だ。バイザーのところを工夫すればディスプレイにもなるし,将来的には脳インターフェースをとることもできる。

表面に可塑性を持つ太陽電池をコートすれば,充電もより容易になる。計算すると太陽定数から数Wというオーダーになったが,晴れた日に外にいる時間は短いだろうから現実的ではなかった。そもそも事故の時のスマートキャップのバッテリー破損の問題をクリアするほうが大変だろうか。それはスマートフォンでも同じか。

そんなところに,スマートヘルメットがでてきたので,先を越されたかと思った次第。紹介されていた自転車用のものはたいした機能はなかったが,バイク用は,日本製のCROSS HELMETもオーストラリア製のForciteも,それなりのポテンシャルを秘めているように見える。ヘッドアップディスプレイには,速度やルート,さらには後方の映像などの補助情報を準視線上に投影でき,外音取り込み可能なインナーイアーヘッドセットも使える。


写真:NSウェスト&SHOEIのスマートヘルメット(NSウェスト株式会社から引用)

2021年11月28日日曜日

中村歌右衛門

人間国宝の歌舞伎の中村歌右衛門(六代目:1917-2001)といえば,文化勲章受章者でもあり女形の最高峰として過去の映像をみるくらいなのだが,初代の中村歌右衛門(1714-1791)は,医師の子として金沢に生まれた。そんなわけで,屋号は加賀屋だったのが,四代目のときに成駒屋にかえている。

その初代中村歌右衛門の墓所が金沢にある。知りませんでした。東山寺院群の一角にある日蓮宗の真成寺(しんじょうじ)は,鬼子母神が祀られていることで有名とのこと。寺町寺院群にも浄土真宗の寺はなかったが,このあたりもそうなのか。


写真:金沢東山の真成寺(@19960912_maruさんのtwitterから引用)

2021年11月27日土曜日

21世紀への旅行

1960年代前半,自分が子供のころは日本の高度経済成長の時代と重なっていて,未来への夢や希望が色濃く感じられたものだ。やがて,万博が終わりオイルショックや不況を迎える1970年代にはその反動からか「モーレツからビューティフルへ」というCMが流れ,地球の寒冷化が話題になる短調の時代だった。

1962年(小学校3年のころ)に刊行された読売新聞科学報道本部と手塚治虫による「21世紀への旅行」は,鉄腕アトムのノンフィクション版のような趣があって,むさぼるように読んだものだ。

リアルな社会予想に基づく未来の世界のイメージは,小学館の科学図説シリーズの「未来の世界」でも読むことができた。まあ,台風の進路をコントロールするとか,原爆で運河を掘るとか,ベーリング海峡をつないでダムにするというたいそうな話も満載。

その科学図説シリーズは,ちょっと大人びたデザインで文字による情報量の多い図鑑であり,これも何冊か買ってもらって愛読した。たぶん太字のものは持っていたはずだがこの記憶にも若干微妙なところがある。

1) 動物の世界 (科学図説シリーズ ; 1) / 高島春雄, 今泉吉典 著[他] (小学館, 1960)
2) 昆虫と植物 (科学図説シリーズ ; 2) / 古川晴男, 矢島稔 著[] (小学館, 1962)
3) 生命のふしぎ (科学図説シリーズ ; 3) / 八杉竜一, 大滝哲也, 日高敏隆 著[他] (小学館, 1961)
4) 人類の誕生 (科学図説シリーズ ; 4) / 石田英一郎, 寺田和夫 著[他] (小学館, 1960)
5) 人体のすべて (科学図説シリーズ ; 5) / 岡本彰祐, 岡本歌子 著[他] (小学館, 1964)
6) 宇宙のすがた (科学図説シリーズ ; 6) / 畑中武夫 等著[他] (小学館, 1960)
7) 地球の科学 (科学図説シリーズ ; 7) / 畠山久尚 等著[他] (小学館, 1962)
8) 宇宙旅行 (科学図説シリーズ ; 8) / 原田三夫 著[他] (小学館, 1961)
9) 数の世界 (科学図説シリーズ ; 9) / 矢野健太郎 著[他] (小学館, 1963)
10) エネルギーと原子力 (科学図説シリーズ ; 10) / 崎川範行, 遠藤一夫, 島田豊治 著[他] (小学館, 1962)
11) 科学の歴史 (科学図説シリーズ ; 11) / 菅井準一 等著[他] (小学館, 1961)
12) 未来の世界 (科学図説シリーズ ; 12) / 高木純一, 岸田純之助 著[他] (小学館, 1963)


写真:21世紀への旅行の書影(復刻版しかみつからなかった)

2021年11月26日金曜日

世界の都市総合力ランキング

 最初に竹中平蔵の顔写真が出てきて辟易するのだが,森記念財団 都市戦略研究所が出している世界の都市総合力ランキング(GPCI)の2021年度版が公開された。

ここで注目したいのが,大阪維新に牛耳られるようになった大阪市の凋落ぶりである。橋下徹が2008年から2011年まで大阪府知事,2011年から2015年まではスイッチした大阪市長として君臨し,松井や吉村に引き継がれた時代である。世界の他の都市には類を見ないようなランキングの低下(2012年の17位から2021年の36位までの19ランクダウン)が認められる。

大阪のマスコミは完全に維新と一体化しているため,こうした状況やコロナの死亡数対人口比が全国でダントツであることは報じられず,吉村知事礼賛に終始するのであった。

2012->2021
1->1 London
2->2 New York
4->3 Tokyo
3->4 Paris
5->5 Singapore

7->6 Amsterdam
8->7 Berlin
6->8 Seoul
22->9 Madrid(+13)
14->10 Shanghai

xx->11 Melbourne
15->12 Sydney
9->13 Hong Kong
xx->14 Dubai
20->15 Copenhagen

23->16 Los Angels
11->17 Beijing
13->18 Barcelona
10->19 Vienna(-9)
21->20 Toront

18->21 Zurich
16->22 Stockholm
31->23 San Francisco
19->24 Brussels
12->25 Frankfurt(-13)

28->26 Chicago
27->27 Boston
xx->28 Dublin
24->29 Vancouver
xx->30 Helsinki

26->31 Geneva
37->32 Moscow
29->33 Mikan
25->34 Istanbul(+9)
35->35 Bangkok

17->36 Osaka(-19)
30->37 Washington, DC
32->38 Taipei
34->39 Kuaka Lumpur
xx->40 Buenos Aires

2021年11月25日木曜日

六人部暉峰

 日本経済新聞朝刊の文化欄に六人部暉峰(1879-1956)の話があった。他に情報がないかと探してみると,京大人文科学研究所の論文で「六人部暉峰について --竹内栖鳳門の女性画家--(2021)」が見つかった。著者は向日市文化資料館の里見徳太郎さんで,何のことはない日経文化欄の記事を書いた本人だった。

六人部暉峰は,京都の向日神社の神職の娘であり,10代前半に竹内栖鳳(1862-1942)に弟子入りして本格的に日本画を学び始めた。15歳から各種展覧会に出品し,パリ万博に出展された京都の女性画家の3名に,上村松園(1875-1949)と並んで選ばれるほど高い評価を得ていた。1898年から7人の竹内栖鳳の子供を産み,20代半ばにはその活動を終息させている。

栖鳳は,1942年に湯河原で最期を迎えるが,暉峰は晩年まで湯河原の栖鳳のそばで彼を支えていたようだ(京都の本邸には本妻の奈美がいる)。熱海の保善院には,栖鳳の筆塚や爪塚があり,暉峰の代表作である「白川殿攻落」が所蔵されている。


写真:六人部暉峰白川殿攻落」(向日市文化資料館ポスターより引用)

2021年11月24日水曜日

天狗刺し

 NHKの新人落語大賞NHK新人演芸大賞から派生している。今年は奇数年なので,大阪のNHKホールで開催された。東西107名の参加者から勝ち抜いた6名のファイナリストの中に,笑福亭松鶴(六代目)の弟子の笑福亭松喬(六代目)の弟子の笑福亭生喬の弟子の笑福亭生寿が出るというので珍しく落語の録画を見ていた。

抽選で最後になった,桂米朝(三代目)の弟子の桂米二の弟子の桂二葉が「天狗刺し」で大賞を獲得した。5名の審査員の評価は納得のいくもので,二葉は全員から満点の10点を得て,女性初の大賞となった。なお,笑福亭生寿は第2位の得点だった。

主人公が,新しい商売としててんすき屋(天狗のすき焼き屋)を始めるといって,材料の天狗を捕獲する(刺す)ために鞍馬山へ行く。奥の院の坊さんを天狗と間違えて捕まえた主人公は,京都の町に下りてくる。

さて,米朝の話では次のような下げになる。向うから大きな青竹を10本ばかり担いで来る奴がある。男はもう真似する奴が現れて天狗を捕まえに行くとのかと思い,商売仇を呼び止める。男「お前も鞍馬の天狗さしか」竹を持った男「いやあ、わしは五条の念仏ざしじゃ」

念仏尺(ねんぶつざし)とは,「近江の伊吹山から念仏塔婆が掘り出され,それに精確な尺度が刻んであったので,これを模して念仏尺と名づけた」あるいは「西本願寺大谷本廟のあたりで採れる竹を使っていたことから「念仏」の名称になったという。精密、精巧であったため、緒方洪庵もメートル法を尺貫法に換算する際、基準として用いた」という竹の物差しのことだ。しかし,今では誰も知らないので,これでは落ちない。そこで,二葉は,坊主の衣と天ぷらの衣をかけた下げにうまくアレンジしていた。


写真:鞍馬の天狗像(京都旅屋のページから引用)

2021年11月23日火曜日

三角関数の積

その鈴木貫太郎の問題で次の式の値を求めよというのがあった。

$\cos{\dfrac{\pi}{33}}\cos{\dfrac{2\pi}{33}}\cos{\dfrac{4\pi}{33}}\cos{\dfrac{8\pi}{33}}\cos{\dfrac{16\pi}{33}}$

三角関数の積和の式を繰り返し使うのか,それにしても面倒だろう,どうするのかなあと解答を見ると,$\sin{\dfrac{\pi}{33}}$をかけて倍角の公式からドミノ倒しのようにしてあっという間に解けてしまった。なるほどね。

そこでMathematicaで一般化してみた。

f1[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n + 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g1[j_] := Table[f1[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g1[5]
{1/32, -(1/1024), 1/32768, -(1/1048576)}

f2[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n - 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g2[j_] := Table[f2[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g2[5]
{-(1/32), -(1/1024), -(1/32768), -(1/1048576)}


2021年11月22日月曜日

フェルマーの小定理

フェルマーの小定理は,素数を$p$とし,$p$とは互いに素な整数を$a$として,$a^{p-1} \equiv 1 \quad (\mod p \ ) $というものである。

頭の体操のためによく見ている鈴木貫太郎の YouTubeチャンネルでは,ちょっと目には解きにくそうな整数問題に,縦横無尽にmodを使って条件を絞り込んでいくというパターンがよく見られる。自分が,高校生のときには,こんなふうにしてmodを活用するということがなかったので,新鮮な感じがしている。ここまで自由に使えれば便利には違いない。

そんなわけで,フェルマーの小定理あるいは,その他のmod問題の勘を養成するための1行コードをMathematicaで書いてみた。

f[n_] := Table[ Table[Mod[i^k, Prime[n]], {i, 1, Prime[n]}], {k, 1, Prime[n] - 1}]
g[n_] := Table[Table[Mod[i^k, n], {i, 1, n}], {k, 1, n - 1}]

Do[{Print[g[i], " "]}, {i, 2, 7}]
{{1,0}}
{{1,2,0},{1,1,0}}
{{1,2,3,0},{1,0,1,0},{1,0,3,0}}
{{1,2,3,4,0},{1,4,4,1,0},{1,3,2,4,0},{1,1,1,1,0}}
{{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0}}
{{1,2,3,4,5,6,0},{1,4,2,2,4,1,0},{1,1,6,1,6,6,0},{1,2,4,4,2,1,0},{1,4,5,2,3,6,0},{1,1,1,1,1,1,0}} 


2021年11月21日日曜日

安倍晴明

安倍晴明(921-1005)といえば,先日はライバルの道魔法師(蘆屋道満)が活躍する芦屋道満大内鑑を国立文楽劇場で見たところだ。桜井市にある安倍文殊院を訪ねたとき,お堂の中に安倍晴明の坐像があったので,ここが出身地かと思っていたがそうではなかったようだ。

阪堺電車に乗って,大阪阿倍野の北畠あたりに散歩に行った帰りに,安倍晴明神社を発見した。それによると,出身地には諸説あるが(大和は含まれていない),大阪説が一番有力と主張している。その根拠は「葛の葉伝説」なのだが,それでいいのか。なお,京都の晴明神社は,安倍晴明の没後に邸跡に御霊を鎮めるために設けられたので,生誕地とは関係ない。

日曜午後の安倍晴明神社は,お参りの人や学習ツアーの団体などでかなり賑わっていた。よくわからないが,社務所の横にちょっと怪しい占いコーナというのがあって日替わりで相談に応じていた。

P. S. 神社の近所には,The MARKET Grocery というお店がオープンしたばかりで,美味しいリンゴとミカンを試食させてもらった。ミカンを買ってしまったのは,もしかすると葛の葉の狐に化かされたからかもしれない。


写真:安倍晴明神社の石碑(撮影 2021.11.21)


2021年11月20日土曜日

ギリシャ文字の斜体

統計力学のテキストつながりで,冨田博之先生のウェブサイトを見ていると,2021年度の大学入試共通テストの「物理」「物理基礎」の話題が出てきた。

数年前の阪大・京大の個別学力検査の物理で,波動(音)の問題の出題ミスが話題になった。その当時,日本物理教育学会の近畿支部長だったので,あれやこれやの対応に追われたような,それほどでもなかったような。

その出題ミスを指摘した人の一人が予備校講師の吉田弘幸さんであり,これが契機となって,入試制度や社会問題などにも関わって広く発言されている。

その吉田さんが,2021年度の共通テストの物理の問題の問題点を指摘した。特に,薄膜干渉の問題が出題ミスであると指摘しているのだが,これに対して冨田さんが反論している。これは,冨田さんの方に分があるわ。

ところで,吉田さんの些細な指摘の方が気になった。「数学や物理では変数 $X$ の変化を $\varDelta X$ で表します。$\varDelta$ はギリシャ文字の $\Delta$ を斜体で表したものです。ところが,この問題(第1日程)では斜体でない $\Delta$ を使っています」

これまで,自分がLaTeXで $\Delta$を出力する際は,斜体かどうかなんて気にしていなかったのだ。この点は吉田さんが正しいかもしれない。ということで,確かめてみると,ちょっと面倒なことになっていた。

\begin{equation} \alpha \ \beta \ \gamma \ \delta \ \epsilon (\varepsilon) \ \zeta \ \eta \ \theta (\vartheta) \ \iota \ \kappa \ \lambda \ \mu (\umu) \ \nu \ \xi \ o \ \pi \ \rho (\varrho) \ \sigma (\varsigma) \ \tau \ \upsilon \ \phi (\varphi) \ \chi \ \psi \ \omega (\varpi)\end{equation}

\begin{equation} {\rm A} \ {\rm B} \ \Gamma \ \Delta (\varDelta) \ {\rm E} \ {\rm Z} \ {\rm H} \ \Theta \ {\rm I} \ {\rm K} \ \Lambda \ {\rm M} \ {\rm N} \ \Xi \ {\rm O} \ \Pi \ {\rm P} \ \Sigma \ {\rm T} \ \Upsilon \ \Phi \ {\rm X} \ \Psi \ \Omega \end{equation}

\begin{equation} A \ B \ \mathit{\Gamma} \ \ \mathit{\Delta} \ \ E \ Z \ H \ \mathit{\Theta} \ \ I \ K \ \mathit{\Lambda} \ \ M \ N \ \mathit{\Xi} \ \ O \ \mathit{\Pi} \ \ P \ \mathit{\Sigma} \ \ T \ \mathit{\Upsilon} \ \ \mathit{\Phi} \ \ X \ \mathit{\Psi} \ \ \mathit{\Omega} \end{equation}

P. S. \umu は,単位のミクロン(μ)で使うための立体のミュー(オイラーフォント)であるが,blogspotの環境では出力できない。

2021年11月19日金曜日

少年少女ものがたり百科

偕成社の「少年少女ものがたり百科」のシリーズは,子供の頃に何冊か買ってもらった。調べてみると次のリストのようなタイトルが並んでいる。出版されたのが,1961年から1963年ということは,自分が小学校2年から4年のころにかけてだ。

当時は,夕方になると毎日のように父親に本屋(十一屋のヨコノ書店)に連れて行ってもらったので,本を買ってもらう機会も多かった。太字の本は家にあって読んだ記憶がある。下線の本は,もしかしたらあったかもしれないし,なかったかもしれない,というわけで60年前の記憶のほぼ50%くらいは不確かで怪しいのだった。

三石巌さんの「発明とくふうの光」はアマゾンの中古書で 12,990円もする。


写真:発明とくふうの光の書影(amazonから引用)

1) 日本のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 1) / 宮下正美 著[他] (偕成社, 1961)
2) 世界のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 2) / 中山光義 著[他] (偕成社, 1961)
3) 発明とくふうの光 (少年少女ものがたり百科 ; 3) / 三石巌 著[他] (偕成社, 1961)
4) 十二人の探検家 (少年少女ものがたり百科 ; 4) / 野田開作 著[他] (偕成社, 1961)
5) 星と伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 5) / 野尻抱影 著[他] (偕成社, 1961)
6) 日本の英雄 (少年少女ものがたり百科 ; 6) / 中沢巠夫 著[他] (偕成社, 1961)
7) 世界の英雄 (少年少女ものがたり百科 ; 7) / 浅野晃 著[他] (偕成社, 1961)
8) 偉人の光 (少年少女ものがたり百科 ; 8) / 久保喬 著[他] (偕成社, 1961)
9) 宇宙のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 9) / 日下実男 著[他] (偕成社, 1962)
10) 数のふしぎ・形のなぞ (少年少女ものがたり百科 ; 10) / 宮下正美 著[他] (偕成社, 1962)
11) 日本の伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 11) / 山本和夫 著[他] (偕成社, 1962)
12) 世界の伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 12) / 小出正吾 著[他] (偕成社, 1962)
13) 偉人の少年時代 (少年少女ものがたり百科 ; 13) / 二反長半 著[他] (偕成社, 1962)
14) 日本一・世界一 (少年少女ものがたり百科 ; 14) / 中山光義 著[他] (偕成社, 1962)
15) 動物のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 15) / 小林清之介 著[他] (偕成社, 1962)
16) 植物のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 16) / 真船和夫 著[他] (偕成社, 1962)
17) 日本歴史のひかり (少年少女ものがたり百科 ; 17) / 中沢巠夫 著[他] (偕成社, 1962)
18) 世界歴史のひかり (少年少女ものがたり百科 ; 18) / 浅野晃 著[他] (偕成社, 1962)
19) 理科のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 19) / 三石巌 著[他] (偕成社, 1963)
20) 世界のオリンピック (少年少女ものがたり百科 ; 20) / 大島鎌吉 著[他] (偕成社, 1963)
21) 日本をめぐる (少年少女ものがたり百科 ; 21) / 本木修次 著[他] (偕成社, 1963)
22) 世界をめぐる (少年少女ものがたり百科 ; 22) / 飛田正夫 著[他] (偕成社, 1963)

2021年11月18日木曜日

お化け煙突

 NHKの映像の世紀プレミアムの再放送,第15回の「東京 夢と幻想の1964年」では,オリンピック前後の東京の様子が映し出されていた。もちろんオリンピックの話題が中心なのが,その前後には意外な都市の表情があった。

1つは,当時の東京が非常に汚かったということだ。家庭のゴミはその辺の道路や川に無造作に捨てられて,街中に腐臭が漂っているようだ。また,血液銀行という名の売血制度があった時代でもあり,日銭を稼ぐための建設労働者が行列していた。その中で,首都高速道路が建設され,東海道新幹線が開業している。

エピソードの一つにお化け煙突の解体というのがあった。隅田川沿いの足立区にあった東京電力の千住火力発電所の4本の煙突のことだ。もちろん現物を見たことはないが,子供のころから知っていた。

それは,偕成社の少年少女ものがたり百科(10)「数のふしぎ・形のなぞ」で取り上げられていたからだ。お化け煙突は,4本の煙突が2本づつ平行に配置されていて,見る方向によって,1本,2本,3本,4本に見えるというものだ。

この他にも,曽呂利新左衛門の褒美の話(等比数列の和),地球の鉢巻の話(円周と半径の関係),一億まで数えるのにかかる時間の話,ガウスのレンガ積みの話(等差数列の和),アルキメデスの原理の話,パスカルの三角形の内角の和の話などが印象深かった。

1962年の出版で,小学校低学年で買ってもらったお気に入りの本の一つで何度も何度も繰り返して読んでいた。


写真:「数のふしぎ・形のなぞ」の書影(日本の古本屋から引用)