2024年12月7日土曜日

自宅でできる運動教室

しばらく前に天理市の保健医療課から,自宅でできる運動教室のアナウンス(対象はおもに65-74歳)があった。先着80名ということでさっそく電話予約しておいた。

当日,13:30に到着するとすでに24番,たぶん定員の80名には達しているようだ。14:00の開始前に血管年齢の測定がある。左手人さし指の脈動の応答時間を赤外線で測定するものらしい。前に並んだおじさんおばさんは,若いですねー15歳もとか,10歳もとかいう声が聞こえてきた。期待していたら,自分の結果は48点で74歳相当(実年齢+3歳)でがっくり。まあ普通なんですけどね。

トータルフィットの梅田陽子さんが講師で,天理市の保健医療課でまとめた高齢者健康データの説明からはじまって,ウォーキングの話が前半,後半は座席で足の運動と簡易スクワットの実技を行った。天理市民は奈良県民や全国平均と比べてウォーキングの数値が低くて,つまづいて転倒する率がかなり高くなっている。だからもっと歩いてほしいのだけれど,天候や安全の問題があるので,自宅でできる運動教室ということらしい。



写真:自宅でできる運動教室

2024年12月6日金曜日

デ・キリコ展

神戸市立博物館で開催中のデ・キリコ展のチケットをいただいていたので,朝から神戸に向かう。

12月8日までの開催で,もしかして混むかと思っていたけれどそんな気配は全くなし。それはそうか。入口の前に,写真1のようなお知らせがあった。「お名前に「きり」が付くご本人とその同行者1名まで,非売品のポストカードをプレゼントいたします。」

おーぅっ,ビンゴ!私の名前は越「桐」です。さっそく,その辺にいた係のお姉さんに申告して,ポストカードを2枚ゲットした。なかなか珍しいプレゼント当選だった。桐竹勘十郎一門とか桐野夏生とか皆来たら良いのに。

デ・キリコ展は昔京都で妹と一緒にいった。発掘してみると,1974年の2月10日-3月24日京都国立近代美術館の展覧会だった。春休みで金沢からこちらに出てきていたのか。ジョルジュ・デ・キリコ(1888-1979)の自選回顧展という位置づけという大規模な展覧会だった。



写真1:デ・キリコ展の特典(2024.12.3撮影)



写真2:デ・キリコ展で撮影許可の9枚(2024.12.3撮影)


2024年12月5日木曜日

天理大学

とてもきれいに晴れていたので銀杏並木を見ようと天理市中心部に向かった。雲一つない青空で,天理教本部前の道路の銀杏並木には撮影しているグループを沢山みかけた。

さて,昼ご飯をどうしようということになったが,なかなか適当なところがない。で,行ったことはないけれど天理大学の学食はどうかと。Google Mapで検索するとすぐそばじゃないですか。指示通りに進むと遠回りして鍵のかかった裏口に誘導された。インドのケースのように建設中の橋を示され落下して死ぬよりはマシだ。

11時30分だというのに,広い食堂には学生がだれもいない。どうなっているのでしょう。営業はしていたので,カツカレーと天大がっつりセットを注文して1300円。食べ始めたら三々五々と学生さんがやってきた。レジには野球部と寮生の名簿があって,彼らはチェックするだけで食べられるらしい。

天理大学の杣之内キャンパスは天理教の建物や天理図書館が建ち並ぶ敷地内にあって幹線道路も通っているため,とてもオープンな環境になっていてよろしい。もちろん,食堂は一般の人も自由に利用できるわけだ。

食後,天理大学で韓国語の公開講座があるのか確かめに行こうと,事務室のある建物に向かった。そこには学生支援課と教務課しかなかったので,教務課で尋ねたところ,公開講座という言葉がまったく通じない。かろうじて科目等履修生の手続きは教えてもらえたが,どうなっているのでしょう。

家に帰ってから調べると,公開講座は2,3のごく限られたものだけであり,韓国語はなかった。たぶん,社会連携室あたりに問い合わせなければならなかったのだ。なお,奈良新聞社が主催し,天理大学と連携して開講している語学講座があることがわかった。



写真:天理大学の食堂(左)と講義棟(右)(2024.12.2 撮影)

2024年12月4日水曜日

非常戒厳

昨日の夜,宙わたる教室の第9回を見終わって,午後11:00ごろさあ寝ましょうとおふとんに潜り込んで,Blueskyを眺めていたら,韓国で戒厳令という記事が目についた。えっ!フェイクニュース?

さっそく,ネット上をいろいろ調べるとどうやら本当かもしれない。BBC,CNN,アルジャジーラ皆報じている。しかし,テレビをつけてみると,まったくニュース速報が流れてくる気配もない。NHK,朝日新聞などのウェブ版をみても全く情報がない。むむむ。

午後11時23分になって,はじめて日本語でニュースが流れたのはLINEニュース(聯合ニュースから)のもので,「尹大統領が非常戒厳令発令 従北勢力を撲滅し憲政秩序守る」というタイトルの記事だった。

時系列は概ね次のようになっている。

12/03 22:22 尹錫悦 非常戒厳を宣言(YTV 全国放送)
12/03 23:00 陸軍参謀総長戒厳司令官 戒厳司令部布告
 1.国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁止する。
 2.自由民主主義体制を否定したり、転覆を企図する一切の行為を禁止し、フェイクニュース、世論操作、虚偽の扇動を禁止する。
 3.すべての報道と出版は戒厳司令部の統制を受ける。
 4.社会混乱を助長するストライキ、怠業、集会行為を禁止する。
 5.専攻医をはじめ、ストライキ中または医療現場を離脱したすべての医療人は48時間以内に本業に復帰して忠実に勤務し、違反時は戒厳法によって処断する。
 6.反国家勢力など体制転覆勢力を除いた善良な一般国民は、日常生活の不便を最小限にできるように措置する。  
12/03 23:48 国会敷地内に軍230人が進入
12/04 01:00 韓国国会 非常戒厳の解除要求決議案(190名全員賛成/定員300名)
  →国会議員の過半数の賛成=戒厳の宣布の無効化
12/04 02:03 韓国軍戒厳投入兵力の原隊復帰
12/04 02:30 採決後の国会議員はそのまま議会に待機
12/04 04:20 尹錫悦 非常戒厳解除方針を発表

尹錫悦が非常戒厳を宣告したのが午後22時22分,BBCが初報を出したのが30分後の午後22時50分,NHKはそれからさらに40分以上遅れてようやく報じていた。どうなってるの。あまり重要ではないと思われる北朝鮮のミサイル発射のときは,はりきってニュース速報を出し回るのに,肝腎なときは,他国主要報道機関よりずっと遅れを取ってしまっている。



写真:国会前に集まった市民と警官隊(聯合ニュース・ロイターから引用)

この時間に数千人の市民が抗議の意思表示をして警察によって封鎖された国会前に集結している。韓国はすごい。日本では到底無理な光景かもしれない。このおかげで国会決議が可能になったのかもしれない。

2024年12月3日火曜日

物理AI基盤モデル

AI Feynman(4)からの続き

世の中のあらゆる“未知の物理現象”を予測できるAI」というおどろおどろしいタイトルの記事がITメディアに掲載されていた。えええっ,これはなんだ。

ということで,原論文「A Phenomenological AI Foundation Model for Physical Signals」を読んでみた・・・というか,NotebookLMに読ませてみた(^_^;;;)。いろいろ質問したところ,こんなことかなというのがわかってきた。と思ったけど,読解力が不足していた。これは,生成AIに頼りすぎて読み解く力が衰えてきたためだ。知能のフレイル現象

Q(koshix):
論文の内容を以下のようにまとめましたが,不正確な部分を修正してください。

「ある特定の物理現象の解析にAIを用いることはよく行われている。今年のノーベル化学賞のタンパク質構造予測もその一例だろう。太陽系外惑星の探索に深層学習を利用する場合のように,大量のデータから特徴をつかみ出すことができる。あるいは大量のデータの中に潜む法則性=方程式を導くこと,さらには方程式を経由せずにデータから直接別のデータを予測することなどなどがある。

今回の論文では,複数の物理現象にまたがって,背景となる物理法則を与えずに,AIによって新しい予測を可能にするというものだ。その結果,単独の現象だけでAI予測をする場合よりも精度が上がる場合があるというのだ。たぶん,複数の減少をまたぐことで,物理法則による制限がインプリシットに含まれているのではないかと思われる。

5.1億個のデータを分析しているというが,何種類の実験を対象にしているのかが必ずしもはっきりしなかった。論文で例示されていたのは,減衰調和振動子でカオス的な振舞いをするもの,電流エネルギーの熱エネルギーへの転化やその逆過程,都市や国レベルの電力消費や気象データなど,複数種類のセンサーの測定値の時系列の関係を表現するものだ。

測定値の時系列データは適当な時間幅に区切られて数値化し,それらの生成順序を含めたデータにすることで,大規模言語モデルのトークンのように扱うことができる。とNotebookLMは説明してくれた。なるほどもっともらしい話だ。あとは通常のLLMの手法が使えるということか。」

A(NotebookLM):
ご指摘いただいた論文内容のまとめについて、ソースに基づいて修正点を以下に示します。

(1)物理法則を用いないAI予測:論文で提案されているAIモデルは、複数の物理現象にまたがるというよりも、物理法則に関する事前知識や帰納的バイアスを導入せずに、様々な物理現象を扱うことができる点が新しいです。このモデルは、単一の現象に特化したAI予測よりも精度が向上する場合があることが示されています。これは、多様な物理データで学習することで、物理法則による制約が暗黙的にモデルに組み込まれているためと考えられます。

(2)データ分析の対象:論文では、5.1億個のデータを用いてAIモデルを学習させています。このデータは、41種類の公開データセットから収集されており、河川流量、太陽光発電量、降水量、太陽活動など、様々な現象、物理量、センサーが含まれています。論文では、減衰調和振動子、熱電変換、都市や国レベルの電力消費、気象データなどを例として挙げて、モデルの性能を検証しています。

(3)時系列データの扱い:論文では、測定値の時系列データを一定の時間幅で区切り、数値化し、生成順序を含めたデータとして扱っています。これは、大規模言語モデルのトークンと同様に扱うことができるとのことですが、この記述はソースには見当たりません。NotebookLMの説明とのことですが、ソースの情報からは、このモデルが通常のLLMの手法と全く同じであるとは断言できません。

(4)モデルの構造:論文で提案されているモデルは、センサーデータを入力として、それを時系列の1次元パッチに分割し、Transformerベースのエンコーダネットワークを用いて共通の埋め込み空間に射影します。このエンコーダは、多様なセンサーデータで学習することで、特定のセンサーの種類に依存しない、様々な物理現象の根底にある時間的パターンを効果的に学習します。その結果得られるコンパクトな表現は、現象論的デコーダと組み合わせて、軌跡予測や再構成などのタスクに使用されます。

重要なポイント
・論文では、物理法則を明示的に与えることなく、多様な物理データから学習することで、様々な物理現象を予測できるAIモデルを提案しています。
・モデルは、ゼロショット学習が可能であり、学習データに含まれていない現象に対しても予測を行うことができます。
・論文では、このモデルが、大規模言語モデルと類似した能力を持っている可能性を示唆しています。
ご指摘いただいた内容とソースを比較検討することで、論文への理解が深まることを期待します。



図:物理AI基盤モデルの概念(A Phenomenological AI Foundation Model for Physical Signals から引用)

[3]AI for Science とデータ駆動科学(五十嵐康彦・竹中光・永田賢二・岡田真人)
[4]人工知能の弱点を補う物理学(高安秀樹)
[5]物理法則を組み込んだ深層学習(雪島正敏・清水浩之)

2024年12月2日月曜日

生成AI利用ガイドライン

生成AI利用の基本方針からの続き

文部科学省からは,生成AIの利用について各種の文書がでている。11月26日には,初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議から,初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン(素案)が出てきた。このファイルをChatGPT-4oに分析させた結果が次のものである。
Q(koshix):
この文章を普通の学校教員が読んだとします。
(1) 必ずしもAIやITの専門でないはずの教員たちが,理解困難な用語や文をリストアップしてください。
(2) 教員たちがAIの活用にしり込みしてしまう,あるいは圧力を感じてしまう,あるいは反発を感じてしまうような部分をリストアップしてください。

A(CahtGPT-4o):
(1) 教員たちが理解困難だと感じる可能性のある用語や文
以下のような専門用語や複雑な表現は、必ずしもITやAIの専門知識を持たない教員にとって理解が難しいと考えられます:

1.生成AI:特に「マルチモーダル化」「AIエージェント」「追加学習の手法」などの技術的な説明。
2.ハルシネーション:AIの誤った出力を指すが、一般には馴染みがない用語。
3.ファクトチェック:情報の真偽を確認する具体的な手法についての言及が不足している可能性。
4.情報セキュリティポリシー:専門的なガイドラインが前提となっており、教員が即座に内容を理解するのは難しい。
5.オプトアウト設定:生成AIが個人情報を学習しない設定についての説明不足。
6.ライセンスの所在:生成物に関する権利や使用条件について、具体例が少ない。
7.著作権法第35条:法律の専門的な適用範囲を具体的に理解するのが難しい。

(2)教員がAI活用にしり込み、圧力、反発を感じる可能性のある部分
以下のポイントが、教員の不安や抵抗感を生む可能性があります:
1.「AIリテラシーの要求」
 ・教師が「一定のAIリテラシーを求められる」と記載されており、技術的な負担が増えると感じる可能性。
 ・新しい技術に慣れるための時間や研修が不十分である場合、抵抗感を抱く。
2.「人間中心の原則」に基づく対応
 ・「AIは人間の能力を拡張する道具」と強調されているが、それを実現するための具体的な手順が示されていないため、教師自身が責任を負わされるとの印象を持つ。
3.「生成AIによる業務効率化」
 ・業務の効率化を期待される一方で、AIによる出力の確認や修正といった作業負担が実際には増えるのではないかと懸念。
4.「リスクへの対応義務」
 ・個人情報やプライバシー、著作権の問題に対する配慮が求められており、これらに関連するリスクの責任が教員にあると感じる可能性。
5.「児童生徒への影響」
 ・AIを児童生徒に利用させる際のリスクや、教育目的との整合性の確保が求められており、これをどのように管理すべきか分からない場合、負担感を感じる。
6.「評価基準の曖昧さ」
 ・AIによる生成物の正確性や適切性を評価する責任が教員に課されており、それに対応する基準や研修が不明確。
7.「技術的な進化への対応」
 ・「生成AIは急速に進化している」と記載されており、教師がその変化についていくことに不安を感じる可能性。

これらの要因を解消するには、研修やサポート体制の充実、具体例を交えた実践的なガイドラインの提示が求められます。 
素案自体はどうでもよいというか余り気にしていないのだけれど,検討委員の一人である言語学者の今井むつみさんからでていたコメントがおもしろかった。要は,いつものようなお役所仕事的な文書に対する苦情であり,教育のICT業界あるあるの「余りよく知らないのに聞きかじった知識を知ったかぶりで操って自分を大きく見せようとする習慣への警鐘である。自分にもそっくりそのまま当てはまりなので,へへーっと土下座してしまった。


図:生成AIの教育利活用ガイドラインのイメージ(DALL-E3による)


2024年12月1日日曜日

Contract for the Web

World Wide Web からの続き

今日も歩けば犬棒にあたる。
Q(koshix):
Contract for the Web について日本語で解説してください。

A(Claude 3.5 Sonnet):
Contract for the Webは、ティム・バーナーズ・リー(インターネットとWorld Wide Webの発明者)が提唱した、インターネットをより公正で安全、そして誰もが利用できる場所にするための基本的な原則と契約です。
この契約は、2019年11月にWorld Wide Web Foundationによって発表され、主に3つの主要な関係者(政府、企業、市民)に向けて、インターネットの健全な発展のための指針を示しています。
Contract for the Webの主な目的は以下のとおりです:

1.プライバシーとデータ保護の強化
・個人のデータを尊重し、保護すること
・ユーザーのプライバシー権を守ること

2.インターネットの開放性と中立性の維持
・インターネットを検閲や制限から守ること
・すべての人にとって包括的で平等なアクセスを確保すること

3.オンライン上の人権の保護
・オンラインでの表現の自由を守ること
・デジタル空間における差別や嫌がらせを防止すること

4.デジタル・リテラシーの向上
・インターネットを安全かつ建設的に利用するためのスキルを促進すること
・特に若い世代のデジタル教育を支援すること

5.インターネット企業の社会的責任の強化
・ユーザーの権利を尊重するビジネスモデルの推進
・透明性と説明責任の確保

具体的には、政府、企業、市民それぞれに対して以下のような行動を求めています:
政府:インターネットへのアクセス権を保障し、オンラインでの市民の権利を尊重すること
企業:ユーザーのプライバシーを尊重し、有害なコンテンツから人々を守るテクノロジーを開発すること
市民:お互いを尊重し、建設的で思いやりのあるオンラインコミュニケーションを心がけること

Contract for the Webは、デジタル時代における人権と社会正義を守るための重要な取り組みであり、インターネットをより良い、より公正な場所にするための青写真となっています。



図:Contract for The Web の表紙


2024年11月30日土曜日

古典籍OCR-Lite

NDLデジタルコレクションからの続き

NHK大河ドラマの「光る君へ」では毎回,出演者の努力の結晶である美しい筆運びが披露されている。古典籍のくずし字を読めたらいいなと思うことはしばしばで,教科書を買って積ん読状態にして挫折したことも何度もある。最近は,OCR技術が進んだのでその恩恵を被ることができるようになった。

NDL古典籍OCR-Liteは,GPUを持たないノートパソコンの環境で,江戸期以前の和古書,清代以前の漢籍といった古典籍資料のデジタル化画像からテキストデータが作成できる軽量なOCRだ。先日,NDLラボ公式GitHub公開されたところだ

Mac版のアプリケーションも公開されているので,怪しくないよとmacOSに宣言してあげれば使うことができる。早速試してみた。「古」を象ったアイコンのアプリケーションだ。

国立国会図書館デジタルコレクション枕草紙の最初の1ページを試しに与えてみたところ,
結果は次のようなテキストファイルで出力された。
枕草紙「阿波国81 
春はあけほのそらはいたくかろみにたるにやう〳〵
しろくなりゆく山きはのすこしつゝあかみて
むらさきたちたる雲のほそくたな引たる
なといとおかし
夏はよる月のころはさらなりやみもなをほたる
おほ〳〵とひちかひた又たゝ一二なとほのかに
うちひかりてゆくもいとおかし
雨のとやかにふりたるさへこそおかしけれ
秋は夕暮夕日のきはやかにさして山の葉ちかみ
あれ?普通の枕草子とは違うのかな?


写真:枕草紙のイメージ(NDLデジタルライブラリから引用)


2024年11月29日金曜日

人生会議

天理市の看護職連携会議が主催する人生会議アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の市民向け講演会に出席してきた。看護職連携会議(いちごの会)は,天理市の医療・介護関係の看護職で構成され2015年に発足している。

人生会議=アドバンス・ケア・プランニングとは,認知症や急な病気や事故で本人の意思が伝えられなくなる前に,将来の医療及びケアについて, 本人や家族や医療・ ケアチームが繰り返し話し合いを行い,本人の意思決定を支援する取り組みである。

最初に天理市の福祉政策課の人の話が10分(天理市の人口は2060年には半減する),昨日風邪で診てもらったばかりの宮城医院の宮城先生の講演が45分,ここまでが第一部だ。第二部は看護職連携会議の専門職の方から,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実際や,天理市で作成したACPのツールとしてのこれからノートの説明などがあった。最後の,宮城先生のまとめを含めて全体で2時間のプログラムだった。

講演会の出席者は,60名ほどであり,そのうち男性は6名だけ。しかし,質問というか発言したのは3名すべて男性(民生委員など)だった。うーむ,どういうことだろうか。

宮城先生の最後のまとめで,人生会議=アドバンス・ライフ・プランニング(ALP)という見方を加えて,高校生や大学生の教育の過程で取り入れてはどうかという提案がよかった。
  第一段階:健康状態 = ALP
  第二段階:フレイル状態 = ALP + ACP
  第三段階:要支援・要介護状態 = ACP + EOLD(End of Life Discussion)
第一段階+第二段階が健康寿命の範囲となる。


図:これからノート(天理市ホームページから引用)

[1]人生会議してみませんか(厚生労働省)

2024年11月28日木曜日

ロバート・オッペンハイマー:藤永茂


1984年に朝日選書から出版されたもの(1996)があったはずだと書棚を探したが見つからなかった。オッペンハイマーの映画をきっかけに,ちくま学芸文庫版(2024)を買い直したものを半年がかりでようやく読了した。

量子化学の藤永茂(1926-)さんは,岩波現代選書のおいぼれ犬と新しい芸(1984)というエッセイがかなり本音を書いていておもしろかった。九州大学からカナダのアルバータ大学に移り,ロスアラモス研究所の研究集会への参加をきっかけに,オッペンハイマーへの関心を深めた。

藤永さんは,量子力学や物理にも造詣が深く,オッペンハイマーの書簡集や多くの原文にあたって,この本を書いている。オッペンハイマーに添った観点から,悪魔に魂を売った科学者という単純な見方を退けている。彼はあくまでもひとりの愚者にしかすぎなかった。そして,それを戦争のために生産して配備したのは政治家や資本家 ≒ 愚者としての我々だった。

それにしても,ルイス・ストロース(1896-1974),レオ・シラード(1898-1964)やエドワード・テラー(1908-2003)は邪悪なのだった。


写真:ロバート・オッペンハイマーの書影(ちくま学芸文庫から引用)

[1]ベートーベン弦楽四重奏曲嬰ハ短調作品131(Jasper String Quartet,2013.11.24)

2024年11月27日水曜日

パルサー

聴力チェックからの続き

夕方,家人が「天理教のおつとめの拍子木の音が外から聞こえてこないか」という。私は高音はよく聞こえません。宙わたる教室第8回をみて,さあいつものように布団に入って寝ましょうというところで,再びご下問があった。確かにこの部屋からは隣の家の音がよく聞こえるかもしれない。うん,聞こえます。

天理教のおつとめは,朝夕の日の出日の入りの時間に行われる。朝の散歩で,6時ごろに教会の近くを通ると,拍子木や鉦や太鼓にあわせてみかぐら歌が聞こえてくることがある。しかし,夜の11時ということはない。

しばらく布団の中で耳をすますと,微かなピーンという短音がときどき響いてくる。ちょっとパルサーみたいなので,時間を測ってみてよとお願いした。しばらく観測してもらった結果,約50秒の周期で規則的に鳴っていることがわかった。何かおかしいぞ。さっそくインターネットで調べてもらったところ原因がわかった。火災報知器の電池切れだ。電池がなくなると,50秒おきのビープ音で知らせてくれるらしい。ちょうど同じ話をマンションの人が話題にしていたのこと。

さっそく,別の部屋にある住宅用防災警報器が犯人だと判明した。隣の家ではなくて自分の家に原因があった。蓋をあけると,CR-2/3AZというやや特殊なリチウム電池が入っていた。ホーチキの頁を検索するとその取り換え方などが動画で解説されている。この火災報知器の電池は10年くらいで取り換える必要があるらしい。早速アマゾンで注文した。


写真:電池切れのALSOK防災警報器(2024.11.26撮影)

2024年11月26日火曜日

ネガティブ・ケイパビリティ

フェイクの時代からの続き

ネガティブ・ケイパビリティという言葉を拾ったのは,社会学者の佐藤卓己(1960-)の書き物からだった。いや,その前にどこぞのブログで見かけたものを検索したら佐藤卓己にたどり着いたのかもしれない。岩波新書の「あいまいさに耐える ネガティブリテラシーのすすめ」をTo Read リストに加えておく。

ネガティブ・ケイパビリティとは,不確実なもの,未解決なもの,答えのでない状況を受け入れる能力だ。最近つくられた社会学・心理学的な用語ではない。19世紀初頭に英国の詩人のジョン・キーツ(1895-1821)がはじめて使った言葉であり,第二次世界大戦後に精神分析医のウィルフレッド・ビオン(1897-1979)が精神分析の文脈で使うようになった。そのため,精神科医で作家の帚木蓬生(1947-)が「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力(朝日選書)」を書いている。これもTo Read リスト入り。


そもそも,この言葉が気にとまった背景は兵庫県知事選挙にある。チーム斎藤説(NHK)か,SNS原因説(田中辰雄)か,関西TVメディア説(菅野完)か,これに折田楓問題がからまってもうグダグダなのである。立花孝志の斎藤支援デマ攻撃の問題性もどこかに霞んでしまうくらいだ。このデマ攻撃を無効化する古田大輔の議論にはほとんど賛成できない。


Q(koshix):
ネガティブ・ケイパビリティと最近のフェイクの時代の関係について考察したいので,対話的な問答につきあっていただけますか?なるべく簡潔に,しかし場合によっては深く答えてください。
A(ChatGPT-4o):
(回答略)

Q(koshix):
ネガティブ・ケイパビリティという概念は有用だと思いますけれども,議論の公平性や客観性というタームが判断保留を沢山生み出してしまって,結局議論を封殺してしまう場合のように,「ネガティブ・ケイパビリティ」を持ち出すこと自身が,フェイクへの対抗的な議論を抑圧することにつながらないでしょうか。(ネガティブ・ケイパビリティ的意見がまずい典型的な例:水野義之さん:兵庫県の県知事選の解釈について11/27...orz)
A(ChatGPT-4o):
(回答略)

Q(koshix):
では,どうすればよいのでしょうか。目的はフェイク議論を多くの人が信じてしまうことをどう防ぐかです。具体例としては,「兵庫県知事選挙における,斎藤元彦は既得権益者達の罠によってはめられた悲劇のヒーローであり,本当はまじめな良い改革者なのだ」というものです。これが,N国党の立花孝志や,斎藤の選挙参謀の明石倫理法人会の朝比奈の作戦によって広く拡散され,関西のテレビマスコミでその下地をつくられていた有権者に軽々と浸透していき,斎藤の当選につながりました。
A(ChatGPT-4o):
(回答略)

Q(koshix):
その回答において,ネガティブ・ケイパビリティはどのような役割を果たし得るのですか? 
A(ChatGPT-4o):
1.ネガティブ・ケイパビリティの役割
(1) 情報の検証と解釈のプロセスでの活用
ネガティブ・ケイパビリティは、曖昧で不確実な状況に耐える能力です。これにより、次のような貢献が期待されます:
感情的反応の抑制:感情的なフェイク議論に触れたとき、即座に信じたり否定したりせず、一歩引いて状況を冷静に見つめることができる。
急ぎすぎない判断:複雑な背景や利害関係が絡む議論(例えば、斎藤元彦氏が本当に「改革者」かどうか)について、急いで結論を出さないことで、誤情報に基づく行動を防ぐ。
(2) 対話の促進
曖昧な部分を受け入れることで、敵対的な議論を回避し、建設的な対話の余地を残します。
・例えば、「斎藤氏の改革性」について賛否が分かれる場合、対立する意見を即座に否定せず、「その意見の根拠は何か?」と問いかける態度を持つことができます。
(3) 長期的な視点の保持
短期的な結果や感情的な満足に流されることなく、長期的な視点で議論を考える余裕を生みます。
・例: 「既得権益者の罠」という説が感情的に訴えるものであっても、その根拠や実際の影響を冷静に検討し続ける。

2.限界とリスク
ネガティブ・ケイパビリティの欠点や限界にも注意する必要があります。
(1) 行動の遅延
判断を保留しすぎると、フェイク議論の拡散を許してしまう可能性があります。
・対策:判断保留のタイミングを「完全な確信」ではなく、「合理的に行動可能な段階」と設定する。
(2) フェイク拡散者の戦略に利用される
フェイクを広める側が「真実はまだ不明だ」といった曖昧な姿勢を利用して、議論を引き延ばし、混乱を助長することがあります。
・対策:不確実性を受け入れると同時に、明確なエビデンスに基づく部分を迅速に共有する。

3.実際の応用例
(1) 有権者への啓発
・ネガティブ・ケイパビリティを促す教育:フェイクニュースを見た際に「これは本当なのか?」と即座に疑問を持つ習慣を育てる。
・判断を急がない文化の普及:SNSやメディアでの情報に対して、「結論を急がないことは強みである」という価値観を広める。
(2) 対話の場での利用
・斎藤氏を支持する人々との対話において、「完全な否定」ではなく、「あなたの主張の根拠を一緒に検討しよう」という姿勢で接する。
(3) 情報発信の戦略
・例えば、ファクトチェックにおいても、「すべてが分かったわけではないが、これまでに明らかになっている事実はこうだ」と曖昧な部分を認めつつ、具体的な事実を提示する。

4.結論
ネガティブ・ケイパビリティは、感情的反応や過度な確信を避けることで、フェイク議論の影響を軽減する助けになります。ただし、それが議論や行動を不当に遅らせたり、フェイク拡散者に利用されたりしないよう、以下のような「バランス的な運用」が求められます:
(1) 不確実性を受け入れる一方で、行動可能な事実に基づいて動く。
(2) 相手を否定するのではなく、対話を通じて曖昧さを解消する努力をする。
(3) 判断保留を過度に引き延ばさない。
フェイクニュース時代の課題において、ネガティブ・ケイパビリティは他のスキルや手段と補完的に活用されるべきです。



図:DALL-E3によればこれがネガティブ・ケイパビリティのイメージらしい
[4]SNSと選挙鳥海不二夫・中村佳美,MBS)

2024年11月25日月曜日

袖振り合うも他生の縁

Facebookで辰巳さんが,「袖振り合うも他生の縁」といってたので,『はて』となった。「袖擦りあうも多少の縁」じゃなかったっけ?

調べてみると,袖振り合うが正しいけれど,袖擦り合うでも間違いではない。他生の縁は,多生の縁でも構わないが,多少の縁は誤りということになった。この調子で間違ったまま定着している自分の知識が沢山埋もれている。

どの解説もいきなり,袖振り合う=袖が触れ合う,であるという前提で話を進めているので今一つ納得できなかった。昼寝から醒めると,すれ違う人の互いの袖同士が接触することで,袖が振れる=振動するという状況を表しているわけだと気がついて腑に落ちた。

相互作用によって,並進運動エネルギーの一部が振動エネルギーに転換したということか。その相互作用は,広い宇宙の中の自分と他者の関係にとってはレアイベントなのである。でエンタングルメントが発生するということ「袖振り合うも多少のエンタングルメント」。

(1)「袖振り合うも他生の縁」という言葉のイメージをください。
江戸時代の昼間,町中に通行人が少しだけいて,偶然に互いの着物の袖と袖をわずかに触れるような場面です。→左上
(2)これだと二人は意図的に手をつないで同じ方向をあるいていることになります。まったくランダムな方向をあるいている複数の通行人がいて,そのうちの全く関係ない他人である二人が違う方向を歩いているにもかかわらず,その着物の袖だけが偶然にちょっとだけかすってしまった場面に修正してください。→右上 
(3)いやいや,やはりこれは手をつないで同じ方向に歩いていますよね。そうではないのです。少なくとも二人の進行方向は別になるようにしてください。→左下 
(4)手をつなぐような表現はやめてください。歩いていて,手はつながずに,袖だけが振れてしまう状況なのです。→右下


図:いくらがんばってもうまくイメージが生成されないDALL-E3

[1]四分岐ポリマーからなる Tetra-PEGゲルの網目構造解析(酒井崇匡・松永拓部,2010)
   (多少のエンタングルメントの用例)

2024年11月24日日曜日

朝永振一郎

科学者の墓からの続き

朝永振一郎の墓の話から繋がって,昔の週刊朝日がやってきた。1965年の10月21日に朝永振一郎(1906-1979)が「繰り込み理論の発明による量子電磁力学の発展への寄与」でノーベル物理学賞を取ったという連絡があった。「中間子理論の提唱」による湯川秀樹のノーベル物理学賞に次いで日本人で二番目である。

当時,小学校6年生だった自分は,朝日新聞と北國新聞の大きな見出しを見て,「量子電磁力学なにそれ,そんなもんきいたこともないわ」と思った。科学の児童書を沢山読んでいて何でも知っていると勘違いした小学生は,自分が何も知らないことが〈山〉のように控えていることに気づかなかったのである。まあ,60年後の今でもほとんどそのままなんだけどね。

週刊朝日では,「『ノーベル賞』の素顔」というタイトルの6pの記事が,6pのグラビア写真と共に掲載されている。門下生の伊藤大介の戦後すぐの話に「まるで人間の生活できるところじゃなかったが,研究ができる喜びは大きかった。私はこんな研究室に,馬場一雄さん(現奈良女子大教授)と一緒に寝泊まりしていたが,朝永先生も一緒に泊まり配給の酒を三人でチビチビ飲んだこともあった」とある。

森田研の先輩の久米健次さんが奈良女子大学の馬場一雄先生の研究室に助手として就職したのは,1976年ごろだったろうか。研究室にくるたびに馬場先生の話題が出ていたような。



写真:1965年11月5日号の週刊朝日の表紙を引用

2024年11月23日土曜日

いろは札


仮名手本忠臣蔵の仮名手本というのは,いろは四十七文字と赤穂四十七士をかけたものだ。それだけかと思っていたら,どうやら各義士は討ち入りの際に番号認識票のような,いろは札というのを身に付けていたらしい。ということは,四十七士といろは四十七文字の対応が問題になるのだが,い=大星由良助,ろ=大星力弥,は=原郷右衛門,後は適当に,ということらしい。

そもそも,六段目早野勘平腹切りの段で,「ホホ,徒党の人数は四十五人。何時が心底見届けたれば,その方を差し加え一味の義士四十六人,これを冥土の土産にせよ。」とあって,早野勘平は四十六番目。七段目祇園一力茶屋の段の展開から,たぶん,寺坂平右衛門が四十七番目になるわけだ。

史実では,早野勘平に対応する萱野三平(箕面市萱野のあたりは昔よく通ったところ)は討ち入り前に事情で自刃しており四十七士に含まれない。足軽の寺坂平右衛門に対応する寺坂吉右衛門は四十七士に含まれていて,ひとりだけ生き延びたことになっている。

さらに,いろは歌と忠臣蔵の関係として,いろは歌を七文字ずつ並べた末尾が「とがなくてしす」とあって,大石内蔵助が自分たちの未来を暗示するものとして受取ったという話があった。
いろはにほへ
ちりぬるをわ
よたらそつね
らむうゐのお
やまけふこえ
あさきゆめみ
ゑひもせ
これにくわえて,六段目の床本の中には,「金」の文字が四十七個含まれているということだった。さっそく先日買ったパンフレットの別冊の床本で数えてみた。身売りの段に20個,早野勘平切腹の段に27個,確かに47個ある。



写真:歌舞伎のいろは札(市川猿三郎オフィシャルブログから引用)

[2]NHK大河ドラマに見る忠臣蔵

2024年11月22日金曜日

置換可能素数

レピュニットからの続き

プログラミングの例題として次のようなことを考えた。「ある素数があって,その各桁を入れ換えてできる全ての数が素数になるものを考える。その最大の素数はどんなものだろうか。」

で,実際に自分でプログラムを書くかというと,それは面倒なので,いつものようにAIに頼ることにする。軟弱だ。脳細胞のフレイルだ。OpenAI o1とかPerlexity Proに頼ってみたが,正しい答えがでない。PythonをJuliaに書き換えても,さらにドツボにはまるだけ。

一度リセットしてから,再度挑戦した。

Q(koshix):
n桁の素数が与えられたとき,その各桁の数字を入れ替えてできるすべての数が再び素数になるようなもので,できるだけ大きな数を探したい。桁数nを与えたときに,この条件を満たす最大の数を求めるプログラムを作成してください。

A(Perplexity Pro):
この問題を解決するために、以下のようなプログラムを作成しました。このプログラムは、与えられた桁数nに対して、条件を満たす最大の素数を見つけます。

import itertools
from sympy import isprime

def find_large_permutational_prime(n):
    lower_bound = 10**(n-1)
    upper_bound = 10**n
    primes = [p for p in range(lower_bound, upper_bound) if isprime(p)]
    largest_permutational_prime = -1
    for prime in primes:
        permutations = set(int(''.join(p)) for p in itertools.permutations(str(prime)))
        if all(isprime(p) for p in permutations):
            largest_permutational_prime = max(largest_permutational_prime, prime)
    return largest_permutational_prime

そして,ChatGPT-4oでJuliaに変換したものが次の通りである。
using Primes
using Combinatorics

function find_large_permutational_prime(n)
    lower_bound = 10^(n - 1)
    upper_bound = 10^n - 1
    largest_permutational_prime = -1
    
    for prime in primes(lower_bound, upper_bound)
        perms = Set(parse(Int, join(p)) for p in Combinatorics.permutations(string(prime)))
        if all(isprime(p) for p in perms)
            largest_permutational_prime = max(largest_permutational_prime, prime)
        end
    end
    
    return largest_permutational_prime
end
これを実行すると,n=3で991が得られる。n=4,5,6では結果なしということになった。これから,nが4以上では条件を満たす素数が存在しないと証明できないかと考えたけれど,そんな簡単な話ではなかった。もちろん,現在の生成AIでは証明できない。

調べてみるとこのような素数は,置換可能素数として既によく知られているものだった。911の上にある素数はレピュニット素数だった。これは無限個あると推定されているがまだよくわかっていないのだ。もちろん,3,7,9 の1種類だけが並んだ数は素数にはならない。

2024年11月21日木曜日

138億光年の孤独

谷川俊太郎からの続き

昔から,20億光年というのは詩の都合で適当に 設定されたそれらしい大きな数字だと思っていたが,そうではなかった。「20億光年の孤独」が出版された1952年当時の最新の科学知識に基づいている。まだビッグバン理論が誕生して間もない頃だ。

「20億光年の孤独」に採録されている「運命について」にも,プラットフォームに並んでいる天使たちが〈たった五十年と五億平方粁さ〉というところがある。たしかに地球の表面積は,4×3.14×(6556 km )^2  = 5.075億 km² である。


Q(koshix):
谷川俊太郎の「20億光年の孤独」は,この詩集が書かれた1952年当時,観測された最も遠方の星雲が20億光年のかなたにあったことから,宇宙の大きさを象徴する単位としてタイトルに使われました。このことや,現在の宇宙の年齢が138億年であることを踏まえて,膨張宇宙の大きさがこれに対応するX億光年になったとして,それを象徴するタイトルでかつ,この事実を説明しながら,谷川俊太郎の表現を尊重した内容の詩を書いてください。
Q(koshix):
谷川俊太郎の「20億光年の孤独」はより簡潔で諧謔的で象徴的でエレガントでした。そんなふうに改善できますか?


A(ChatGPT-4o):

宇宙がふくらむたび、
孤独は遠ざかる。

星々は語らず、
闇だけが歌う。

138億光年の向こうに、
誰かが笑っている気がした。

それも、ただの錯覚。

光も、言葉も、
追いつけない速さで
世界は拡がっていく。

それでも、ここにいる私を、
私だけが知っている。



図:「20億光年の孤独」だけで得られたイメージ(DALL-E3より)


P. S.  NASAのサイト[3]によれば,1955年で宇宙の年齢は60億年,サイズは40億光年とされていたらしい。まあまあそんなものか。


[2]観測可能な宇宙(CMBR球体の最大直径=780億光年が答えらしい,Wikipedia)

2024年11月20日水曜日

谷川俊太郎


11月13日,谷川俊太郎(1931-2024)が92歳で亡くなった。

最初に谷川俊太郎を意識したのは,世界SF全集の第35巻「日本のSF現代編」が配本された1969年4月なので高校1年になったばかりだった。と思う。この巻に採録されているのは「21世紀の教養」というものだ。内容はまったく覚えていない。そのとき,彼の最初の詩集のタイトルが「20億光年の孤独」であることを知ったのだろう。いつか読んでみたいと思っていた。

手元には,角川文庫の谷川俊太郎詩集(大岡信解説,1972年4月30日初版第七刷)と谷川俊太郎詩集Ⅱ(北川透解説,1985年10月30日再版)がある。前者は大学に入学してまもなく手に入れたもの。後者は古本の値段があるので,子どもが二人産まれた後に買ったのかもしれない。谷川の処女詩集,「20億光年の孤独」は20編の詩集として文庫の谷川俊太郎詩集のほうに採録されている。タイトルにもなっている本編自身はちょっと拍子抜けするような軽いものなのだ。

阪大のマンドリンクラブに入部して間もない合宿で,緑地公園かどこかのユースホステルに泊まったとき,二段ベッド寝そべって谷川俊太郎詩集を読んでいた。セロの先輩の近藤さんが顔をのぞかせ「何読んでるの」といって手に取りパラパラと頁をめくって「ソネットか,14行詩だね」と。ソネットが14行の定型詩だということもわからずにありがたがって谷川俊太郎を読んでいた一回生なのだった。

谷川俊太郎は「にほんご」で子育て時代に大変お世話になった。いまや孫のすーちゃんが,きっときってかってきて,きっときってかってはってきて,を小学校1年の国語の教科書で勉強する時代になった。


写真:本棚にあった谷川俊太郎詩集とそのⅡの書影を引用

P. S. 
2013年に,岩波書店から自選 谷川俊太郎詩集がでていた。全2千数百編から173編を厳選したというものだ。その目次には採録した詩集のリストがある。これを年代順に並べ替えて,手持ちの角川文庫に収録されている詩集を◎でチェックしたリストはつぎのとおり。

◎『二十億光年の孤独』 (創元社 1952)
◎『六十二のソネット』 (創元社 1953)
◎『愛について』 (東京創元社 1955)
◎『絵本』 (的場書房 1956)
◎『あなたに』 (東京創元社 1960)
◎『21』 (思潮社 1962)
◎『落首九十九』 (朝日新聞社 1964)
 『谷川俊太郎詩集』 (思潮社 1965)
 『谷川俊太郎詩集』 (河出書房 1968)
◎『旅』 (求龍堂 1968)
◎『谷川俊太郎詩集』 (角川文庫 1968)
 『谷川俊太郎詩集』 (現代詩文庫 1969)
◎『うつむく青年』 (山梨シルクセンター出版部 1971)
 『谷川俊太郎詩集』 (角川書店 1972)
 『ことばあそびうた』 (福音館書店 1973)
◎『空に小鳥がいなくなった日』 (サンリオ出版 1974)
◎『定義』 (思潮社 1975)
◎『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』 (青土社 1975)
 『タラマイカ偽書残闕』 (書肆山田 1978)
 『谷川俊太郎詩集 続』 (思潮社 1979)
◎『そのほかに』 (集英社 1979)
◎『コカコーラ・レッスン』 (思潮社 1980)
◎『ことばあそびうた また』 (福音館書店 1981)
◎『わらべうた』 (集英社 1981)
◎『わらべうた 続』 (集英社 1982)
◎『みみをすます』 (福音館書店 1982)
◎『日々の地図』 (集英社 1982)
◎『どきん』 (理論社 1983)
◎『対詩 1981.12.24~1983.3.7』 (書肆山田 1983)
 『手紙』 (集英社 1984)
 『日本語のカタログ』 (思潮社 1984)
 『詩めくり』 (マドラ出版 1984)
 『よしなしうた』 (青土社 1985)
 『いちねんせい』 (小学館 1988)
 『はだか』 (筑摩書房 1988)
 『メランコリーの川下り』 (思潮社 1988)
 『魂のいちばんおいしいところ』 (サンリオ 1990)
 『女に』 (マガジンハウス 1991)
 『詩を贈ろうとすることは』 (集英社 1991)
 『十八歳』 (東京書籍 1993)
 『子どもの肖像』 (紀伊國屋書店 1993)
 『世間知ラズ』 (思潮社 1993)
 『ふじさんとおひさま』 (童話屋 1994)
 『モーツァルトを聴く人』 (小学館 1995)
 『真っ白でいるよりも』 (集英社 1995)
 『クレーの絵本』 (講談社 1995)
 『谷川俊太郎詩集』 (ハルキ文庫 1998)
 『みんなやわらかい』 (大日本図書 1999)
 『クレーの天使』 (講談社 2000)
 『minimal』 (思潮社 2002)
 『夜のミッキーマウス』 (新潮社 2003)
 『シャガールと木の葉』 (集英社 2005)
 『すき』 (理論社 2006)
 『私』 (思潮社 2007)
 『62のソネット+36』 (集英社文庫 2009)
 『子どもたちの遺言』 (佼成出版社 2009)
 『トロムソコラージュ』 (新潮社 2009)
 『詩の本』 (集英社 2009)

2024年11月19日火曜日

仮名手本忠臣蔵(第二部)

仮名手本忠臣蔵(第一部)からの続き

国立文楽劇場の11月文楽公演で仮名手本忠臣蔵の大序から七段目まで上演しているのは,前回紹介した通りだ。第一部の大序から四段目まで見た日,いつもの幕見席以外に当日指定席というのを半額程度で設定しているのに気づいた。よほど客の入りが悪いのかもしれないという説が出たので,第二部も行こうとなった。ちょうど,先月の文楽の集いで織太夫から七段目の演出についての紹介があったところだ。正月には続きの八段目九段目もあり,全段コンプリートできる。それはそれでよし。

四時から始まった第二部の最初は靭猿だ。これは昼寝の時間に当てることにして,本編に集中する。山崎街道出会いの段は若手の竹本碩太夫(千歳太夫の弟子)と鶴澤寛太郎(寛治の孫)コンビでなかなか良かったのではないか。次の二つ玉の段は,御簾内から聞こえる胡弓とその後の三味線が哀愁をさそう。よく知らない鶴澤清方の担当だ。三味線の物悲しい音がほとんど動いていない団七の手元から響くのかとびっくりしたけどそうではなかった。勘市の与市兵衛と玉勢の斧定九郎もいい感じ。この二人は昔近鉄の仕立てた文楽電車で奈良の文楽名所巡りをしたときにいっしょに参加していたので親近感がある。

早野勘平腹切りの段は,錣太夫と宗助。あいかわらず宗助の三味線はうまい。予習であらすじを理解していたけれど,与市兵衛の死骸を誰が持ってくるのかとか,斧定九郎との関係をどうやって説明するのかとか,疑問点はスイスイと解決して結論に導かれていった。

いよいよ七段目の祇園一力茶屋の段。最初に昼寝したおかげで,今夜は全編ついていくことができた。寺坂平右衛門の竹本織太夫が,舞台下手で見台も床本もなしで語る理由を説明している。顔世御前から大星由良之助にあてた手紙を手鏡で見てしまったおかるだが,昭和30年の古いNHK録画DVDでは,梯子を降りる前後で吉田文五郎から桐竹亀松に交替していた。今回は吉田一輔が一人でがんばっている。おかるが兄の寺坂平右衛門に気づく前にしたためていた手紙の説明がないので,ChatGPTに聞いてみたところ,どうやら家族宛の文らしい。ほんとかな。
Q(koshix):
文楽の仮名手本忠臣蔵の七段目祇園一力茶屋の段で質問があります。
おかるが由良之助から身請け話を出された後で,由良之助が引っ込んだ後,なにやら書状に書き物をしています。そこに兄の寺坂平右衛門がくるのですが,おかるは誰宛に何を書いていたのですか。

A(CHatGPT-4o):
文楽『仮名手本忠臣蔵』七段目「祇園一力茶屋の段」において、おかるが由良之助から身請けの話をされた後のシーンについてお答えします。

おかるが書状を書いている場面は、彼女の心情や立場を表現する重要な場面です。この書状の内容と宛先は作品の解釈による部分もありますが、以下のように考えられています:

宛先:おかるが書いていた書状の宛先は、一般的な解釈では彼女の母親または家族であるとされています。これは、身請け話を受けて、家族に自分の気持ちや状況を伝えようとする意図があるからです。
内容:書状の内容については具体的な台詞で明かされるわけではありませんが、由良之助の身請けの提案についての自身の心情や、今後の自分の運命についての思いが書かれていると考えられます。また、家族への感謝や別れの言葉が含まれている可能性もあります。
この後、兄の寺坂平右衛門が登場することで、おかるが置かれた状況がさらに劇的になります。寺坂の登場により、忠臣蔵全体の筋書きにおける陰謀や義士の計画が絡み合い、この場面が一層緊張感を増す構造になっています。

作品の詳細な解釈については、上演時の演出や注釈書による違いがあるかもしれませんが、家族に宛てた書状という解釈が一般的です。
あと,今回気になった点三つ。

おかると由良之助のからみのところで,斧九太夫の主遣いの桐竹勘壽がこそこそと帰っていった。あれ,九太夫はまだ縁の下に潜んでいるはずなのにどうするのと思っていたら,最後に由良之助に刺されたあとは九太夫は二人遣いのままで,平右衛門に担がれて終幕となった。なかなか珍しいパターンだ。

もう一つは,おかるが斧九太夫を討取るのかと見ていたら,由良之助が自身で畳の下の九太夫を刀で刺していた。おかるはその横にいたのだろうか。由良之助が自分で刺したらまずくないか?となってしまった(昭和30年のビデオではおかるの刀を由良之助が添えるのがはっきりとわかる)。単に自分が見逃しているだけかもしれない。

最後に,兄の平右衛門がおかるに勘平の切腹を告げた後,動転して気を失うおかるにひしゃくで水を飲ませるのだけれど,平右衛門が一口目を自分で呑んでしまうというチャリ場的な演出が入っていて,それはそれでおもしろいのだけれど,ええっ!となってしまった。さすがに,昭和30年の吉田玉男はそうではなかった。



写真:国立文楽劇場のチラシから引用


2024年11月18日月曜日

ピタゴラスの定理(2)

ピタゴラスの定理(1)からの続き

新しいピタゴラスの定理を発見した女子高校生チームが,新論文を出していた。さらに5つの新しい証明方法を見つけたというものだ。さっそく確認してみる。


図:ピタゴラスの定理の証明


図の3つの三角形に正弦定理(この名前がすでに思い出せない)を当てはめると次の六つの関係式が得られる。
$\triangle {\rm ABC : \quad}  \dfrac{a}{\sin \alpha} = \dfrac{b}{\sin \beta} = \dfrac{c}{\sin \pi/2}$
$\triangle {\rm ADC : \quad}  \dfrac{a+d}{\sin 2 \alpha} = \dfrac{b}{\sin (\beta-\alpha)} = \dfrac{x}{\sin \pi/2}$
$\triangle {\rm ADB : \quad}  \dfrac{d}{\sin \alpha} = \dfrac{c}{\sin (\beta-\alpha)} = \dfrac{x}{\sin \beta}$
$x$の項は不要だとすれば四式が残る。これから,$\alpha,\ \beta,\ d\ $を消去すると $\ a,\ b,\ c\ $の関係式が得られる。すなわち,$(a+d)\sin (\beta-\alpha)  = b \sin 2 \alpha, \quad d \sin (\beta-\alpha)  = c \sin \alpha $ から$\ d\ $を消去して,$\sin \alpha = \dfrac{a}{c}, \ \sin \beta = \dfrac{b}{c},\ \cos \alpha = \dfrac{b}{c}, \ \cos \beta = \dfrac{a}{c} \ $を代入する。
$a \dfrac{b^2-a^2}{c^2} + c \dfrac{a}{c} = b \dfrac{2 a b}{c^2} $ となり,$a^2+b^2=c^2$ が導かれる。