2022年4月13日水曜日

摂州合邦辻

国立文楽劇場の四月文楽公演には,豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念・文楽座命名150年のタイトルがついていた。第一部が義経千本桜,第二部が摂州合邦辻,第三部が嬢景清八嶋日記と契情倭荘子だ。コロナ流行が始まってからは,以前のような三部通しの観劇がしんどいので,今回は第二部を見ることに。

住吉大社万代池や天王寺界隈が舞台である摂州合邦辻。その万代池の段は,三輪太夫,希太夫,南都太夫,津國太夫,咲寿太夫,清友が並ぶ。公演記録の録画カメラが入っていたので,皆さん気合が入っていたようだ。最後に,吉田玉也の合邦道心によって,高安次郎丸の鬼若が,万代池に投げ込まれるのだが,池から可愛らしい顔を覗かせながら幕となる。

合邦住家の段は,中:睦太夫・清馗,前:呂勢太夫・清治,切:呂太夫・清介だった。今日は睦太夫が良かったと,家人と意見が一致した。声もはっきりと大きく変な癖がない。呂勢太夫と清治のコンビはうまいのだろうが,どうも自分にはピンとこない。一番良かったのは,呂太夫と清介だった。三味線の迫力やテクニックもすごくて(三の糸が切れた?),呂太夫も清介も熱演だった。

後半の玉手御前と浅香姫の激しいバトルでのキックには思わず笑ってしまった。この段は何度か見ているはずだけれど,百万遍の大数珠のイメージはすっかり消えていた。奴入平の吉田玉勢が,玉手御前の肝を取り出すのをビビって拒む当たりも面白い。

物語では,寅年,寅の月,寅の日,寅の刻に生まれた女の生肝の血が俊徳丸の毒を消すための薬になるという設定になっている。今年は寅年である。寅の月は旧暦の正月であり,2022年では,2月4日から3月4日までだ。寅の日は,12日ごとに巡ってきて,この度では,2月6日(日),2月18日(金),3月2日(水)。寅の刻は,24時間を12で割った3番目なので,午前3時から5時となる。


写真:浪速区下寺西方寺にある合邦辻閻魔堂(Wikipediaより引用)

2022年4月12日火曜日

真木悠介

 4月10日の夜7:00のNHKニュースで,見田宗介(1937-2022)の訃報が流れた。そういえば昔よく読んだものだと本棚を探したけれど見あたらなかった。何度か本の断捨離をしたときに,寄付に回してしまったようだ。

テレビでは,「現代社会の理論 −情報化・消費化社会の現在と未来−」を見田の代表作の一つとしてあげていた。調べてみたらこれは1995年の岩波新書であり,そのころには読む気がしなくなっていたので買わなかった・・・たぶん。大学1,2年の頃に,筑摩書房の箱入りのシリーズで,真木悠介名義の「人間解放の理論のために」とか,見田宗介名義の「現代日本の心情と論理」を買って愛読していた。いずれも,1971年の出版である。

当時は,ディヴィッド・リースマンの「孤独な群衆」から始まって,社会学の本を何冊か読んでいた。大学の教養の人文科学・社会科学では,哲学,倫理学,心理学,政治学,経済学は履修したが,社会学は取らなかったので,その埋め合わせもあり,「社会学のすすめ」から始まって色々と読みあさった・・・たぶん。

社会学といえば,1972年に阪大教養部の助教授だった井上俊(1938-)の「死にがいの喪失(1973)」はまだ本棚で生き延びていた。当時は真木悠介の本の方が良いと思っていたはずなのだけれど。

2022年4月11日月曜日

Wordle(8)

Wordle(7)からの続き

Wordle支援プログラム word.py を改良して,出現しない文字を含む単語をとり除く処理を1行加えた。第3引数に出現しない文字を連結して並べたものを与える。

# usage: warp.py w.txt a.b.c def

import sys
import re

f = open(sys.argv[1], 'r')
datalist = f.readlines()
arg1 = sys.argv[2]
arg2 = sys.argv[3]

for data in datalist:
  if(re.search(r'\d* '+arg1, data) != None):
    if(re.search('['+arg2+']', data) == None):
      print(data, end="")

f.close()

2022年4月10日日曜日

Wordle(7)

Wordle(6)からの続き

wiki-5.txtは,WIkipediaデータセットのWikiText-103 word から5文字単語を取り出したものだった。これに対して,n-gramの出現頻度を,1-gram, 2-gram, 3-gramに対して求めるpythonプログラム ngrm.py を作る。1-gramはアルファベット1文字,2-gramは連続するアルファベット2文字,3-gramは連続するアルファベット3文字を表している。

ngrm.pyの出力結果は , を区切り文字として,出現回数とn-gramパターンの組なので,sort で区切り文字を , 数値として解釈した逆順をリダイレクトして適当なファイルに格納すると,1-gramから3-gramまで混ぜた出現頻度順のファイルが出来上がる。
# usage: ngrm.py wiki-5.txt | sort -n -r -t , >! alphabet 
import sys

a=[0 for i in range(26)]
b=[[0 for i in range(26)] for j in range(26)]
c=[[[0 for i in range(26)] for j in range(26)] for k in range(26)]

def n_gram(target, n):
  return [ target[idx:idx + n] for idx in range(len(target) -n + 1) ]

f = open(sys.argv[1], 'r')
datalist = f.readlines()

for data in datalist:
  for l in range(5):
    x = data[l]
    i = ord(x) - 97
    a[i] = a[i] + 1
    if l in range(4):
      y = data[l+1]
      j = ord(y) - 97
      b[i][j] = b[i][j] + 1
      if l in range(3):
        z = data[l+2]
        k = ord(z) -97
        c[i][j][k] = c[i][j][k] + 1

for i in range(26):
  if a[i] > 49:
    print(a[i],",",chr(i + 97))

for l in range(26*26):
  i = l // 26
  j = l % 26
  if b[i][j] > 49:
    print(b[i][j],",",chr(i+97)+chr(j+97))

for l in range(26*26*26):
  i = l // (26*26)
  j = (l // 26) % 26
  k = l % 26
  if c[i][j][k] > 49:
    print(c[i][j][k],",",chr(i+97)+chr(j+97)+chr(k+97))

f.close()
wiki-5.txtにおけるベスト50は次のとおりであった(数字は出現数)。

5730707 , e

4092848 , r

3965317 , a

3759319 , t

3424032 , s

3108801 , o

3068296 , i

2603632 , h

2600893 , l

2398537 , n

1734820 , d

1574948 , c

1501211 , u

1291809 , w

1195832 , m

1086248 , g

1076779 , er

964115 , f

962898 , th

882193 , b

801081 , p

746024 , te

729576 , y

674447 , he

651813 , ou

636278 , st

604734 , ar

563176 , hi

559096 , re

556926 , v

556020 , or

533535 , in

521374 , k

521197 , es

519713 , ch

518219 , ir

514744 , al

514410 , wh

493762 , the

473288 , ea

427832 , le

417701 , ic

412433 , whi

412193 , an

409812 , il

384013 , la

372098 , at

369592 , se

364056 , ed

362684 , ter


2022年4月9日土曜日

Wordle(6)

 Wordle(5)からの続き   

Wordleを解くための支援プログラムを次のようなものとする。「5文字単語のデータベースを用意して,ワイルドカードを含む与えられた候補にマッチする単語を全て選び出して表示する」。perlでプログラムを組みたいところだったが,pythonの練習をすることにした。

5文字単語データベースとしては,前回示した WikiText-103 word Level からwords.shで処理したものを用いる。その後は,久々の python プログラミングなので,よちよち歩きながら試行錯誤する。

(1) コマンドラインの引数は,sysモジュールをimportすれば,sys.argv[n]でアクセスできる。sys.argv[0]はpythonスクリプト名,sys.argv[1] 以下で複数の引数を受け渡す。
(2) ファイルのオープンとクローズの方法は記載の通り。第1引数は先に求めてある5文字単語データファイル名である。
(3) テキストファイルを1行づつ分割して読み込むには,datalist=f.readlines() などとするとその結果のリストが 得られる。
(4) perlのようにdatalistから1行づつ取り出して処理をするのが,for data in datalist: である。
(5) 正規表現によるマッチングには,re モジュールをimportしたうえで,re.search(r'正規表現' , 原データ) という形式による。これが Noneでなければマッチしていることになる。
(6) 第2引数で入力する5文字のワイルドカードをピリオド(. )にしておけばそのまま正規表現として使えてるので便利である。
(7) データファイルは,wc -l で生成しているので,頭に頻度を表した数桁の数字が空白を区切りに付加されているため,'\d* '+arg としている。文字列の結合には,プラス(+)演算子を用いる。
(8) print文で余分の改行を削除するには,end="" をつければよい。
# usage: word.py w.txt a.b.c
import sys
import re

f = open(sys.argv[1], 'r')
datalist = f.readlines()
arg = sys.argv[2]

for data in datalist:
# print(arg, data, re.search(r'\d* '+arg, data))
  if(re.search(r'\d* '+arg, data) != None):
    print(data, end="")

f.close()

2022年4月8日金曜日

Wordle(5)

Wordle(4)からの続き

前回の復習:英文のテキストデータセットと単語の文字数 n が与えられたとする。文字数がnの単語を1行とした一時ファイルを作る。大文字は小文字に変換している。次に,wc -l によって一時ファイルの行数=n文字単語数を出力したものを並べたファイルを作る。また,上記の wc -l の前にsort | uniq フィルターをかけてユニークな n文字単語数についても同様のファイルを作る。これが,前回のwords.shプログラムのアルゴリズムだった。

具体例として,最初は手元にある数冊の英書の数千ページ(80MB)のpdfファイルからユニークにソートされた5文字単語(3万4千語)を抽出したものでテストした。もう少し大きなデータがないかと,オープンコーパスを色々探してみたが,なかなか適当なものがない。

最終的に,Wikipediaの記事を使ったデータセットにたどり着いた。多言語のWIki-40Bが前処理済で良さげだったが,TensorFlowを使えという指示が面倒であり,英語データで340万ページ2GBは大きすぎる。WikiText-103 Word Levelの方は,圧縮後181MBでそのままダウンロードできそうなので,こちらを使うことにした。

WikiText-103 Word Levelの解凍後のテキストデータは539MBあった。これをwords.shにかけると,1-20文字の単語(うちユニークな語)が約8300万語(約21万語),このうち5文字の単語(うちユニークな語)が約960万語(約2万4千語)であった。

WikiText-103 Word Level における,n文字単語(うちユニークな語)の出現頻度を下図に示す(オレンジが総語数の出現頻度,ブルーがユニーク語数の出現頻度)。n文字単語の出現ピークはn=3にあって約20%,ユニークなn文字単語の出現ピークはn=7にあって,約16%となった。5文字単語の場合は,ともに約11%となっている。


図:WikiText-103 Word Levelにおける単語出現頻度(横軸は文字数)

2022年4月7日木曜日

2022年4月6日水曜日

2022年4月5日火曜日

2022年4月4日月曜日

2022年4月3日日曜日

2022年4月2日土曜日

2022年4月1日金曜日

2022年3月31日木曜日

2022年3月30日水曜日

Wordle(4)

Wordle(3)からの続き

Wordleをやっていると,そもそも英語の文章で出てくる単語のうち5文字である確率はどんなものか,また,最もよく出現するのは何文字の単語なのか,などなどが気になるようになった。

これを調べるために,与えられたテキストファイルやpdfファイルから単語を切り出して,その文字数の分布を調べるためのシェルスクリプトを作ってみた。

case \$3 in
"txt")
echo "txt";
;;
"pdf")
echo "pdf";
pdftotext \$2.pdf;
;;
*)
echo "undefined";
;;
esac

for ((i=1 ; i<=\$1 ; i++))
do
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$i \$2.txt | tr A-Z a-z > tmp.txt
cat tmp.txt | wc -l >> \$2-\s1.txt;
cat tmp.txt | sort | uniq | wc -l >> \$2-\s2.txt;
rm tmp.txt
done
昨日のスクリプトを少しだけ修正すればよかったが,ポイントは,シェルスクリプト中の反復の記述法である。繰り返し変数は$をつけて,perlのワンライナーに受け渡すことができた。あとはこれを使って実験してみれば良いのだが,それはまた次回のお楽しみ。

2022年3月29日火曜日

Wordle(3)

Wordle(2) からの続き

Wordleは英語の勉強になる。簡単な5文字の英単語でも知らないものがたくさんあって,自分の語彙力はやはり10歳並みだということが確かめられる。そのため,辞書の助けがないと5-6回で答えに辿り着くことは出来ない。

巷には,Wordle Word Finderなどというツールも登場しているが,これでは英語学習の役には立たない。それでも,5文字の英単語のリストを収集したいという目的のために,次のようなツールを作った。与えられたテキストファイルあるいはpdfやhtmlファイルをテキストに変換したものから,perlのワンライナーで n 文字の単語を切り出すものだ。

pandocは汎用の文書型変換ツールだけれど,pdfやhtmlからテキストを取り出すという想定がない。あくまでも整形された文書変換ツールだからだ。そこでテキストファイルの取り出しには,pdftotextやtextutilなどのコマンドに任せることにした。また,シェルスクリプトの引数はperlのワンライナーにそのまま送れないので, -- -perl_var=\$shell_varとして,perlの中で\$perl_varによって引用することになる。
#! /bin/zsh
# usage: word.sh 5 sample pdf (tst, txt, pdf, html)
# output sample-5.txt

case \$3 in
"tst")
pwd;
ls -al \$1.txt;
ls -al \$2.*;
;;
"txt")
echo "txt";
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$1 \$2.txt | tr A-Z a-z > \$2-\$1.txt;
;;
"pdf")
echo "pdf";
pdftotext \$2.pdf;
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$1 \$2.txt | tr A-Z a-z > \$2-\$1.txt;
;;
"html")
echo "html";
textutil -convert txt \$2.html;
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$1 \$2.txt | tr A-Z a-z > \$2-\$1.txt;
;;
*)
echo "undefined"
;;
esac

2022年3月28日月曜日

ロフテッド軌道(3)

 ロフテッド軌道(2)からの続き

初速度を第1宇宙速度$v=\sqrt{\frac{GM}{R}}$に固定した場合,Mathematicaによるプロットを試みる。このとき,$u(\varphi)=A(\theta) \cos \varphi + B(\theta) \sin \varphi +\frac{GM}{h^2}$,$A(\theta)= - \frac{1}{R \tan^2 \theta }$,$B(\theta) = -\frac{1}{R \tan \theta}$,$\frac{GM}{h^2}=\frac{1}{R \sin^2 \theta}$ であり,Mathematicaのコードは以下のとおり。

In[1]:= {G, R, M} = {6.67*10^-11, 6.37*10^6, 5.97*10^24}
Out[1]= {6.67*10^-11, 6.37*10^6, 5.97*10^24}
In[2]:= {g, v} = {G M /R^2, Sqrt[G M/R]}
Out[2]= {9.81344, 7906.43}

In[3]:= A[t_] := 1/R*(1 - 1/Sin[t]^2)
In[4]:= B[t_] := -1/(R*Tan[t])
In[5]:= GM[t_] := 1/(R Sin[t]^2)
In[6]:= r[s_, t_] := 1/(A[t] Cos[s] + B[t] Sin[s] + GM[t])
In[7]:=
Table[f1[i] = Plot[{r[s, i]/R, 1}, {s, 0, Pi},
GridLines -> Automatic, PlotRange -> {0, 2.0}];, {i, 0.1, 1.5, 0.2}];
In[8]:= Show[Table[f1[i], {i, 0.1, 1.5, 0.2}]]
In[9]:=
Table[f2[i] = PolarPlot[{r[s, i]/R, 1}, {s, 0, Pi},
GridLines -> Automatic, PlotRange -> {0, 2.0}];, {i, 0.05, 1.5, 0.2}];
In[10]:= Show[Table[f2[i], {i, 0.05, 1.5, 0.2}]]

In[11]:= f[t_] :=
NIntegrate[ 1/Sqrt[G M R Sin[t]^2] *1/(A[t] Cos[s] + B[t] Sin[s] + GM[t])^2, {s, 0.001, Pi/30}]
In[12]:= Plot[f[t], {t, 0, Pi/8}]



図1:ロフテッド軌道(横軸$\varphi$ラジアン,縦軸$r/R$)


図2:ロフテッド軌道(上記と同じものを極座標表示)

この近似のもとでは,6500kmの高度に達する弾道ミサイルはほぼ地球を半周するところまで到達できるので,北朝鮮から米国本土全体が射程に入ることになる。鉛直上方から60度の角度で射出すれば,地球を1/4周するので1万kmまで到達できる。

実際には,空気抵抗があることや,初速度はロケットエンジンによる一定時間の加速によって獲得されることなどから,もう少し真面目な計算をする必要がある。

[1]ロケットの運動と人工衛星の打ち上げ(冨田信之)

2022年3月27日日曜日

ロフテッド軌道(2)

ロフテッド軌道(1)からの続き

重力場中の質点に対する2次元極座標系$(r(t), \varphi(t))$でのニュートンの運動方程式は次のとおり。

$ \quad \quad m \bigl( \ddot{r} -r \dot{\varphi}^2 \bigr) = F_r = \frac{G M m}{r^2}$

$ \quad \quad  m \frac{d}{dt} \bigl( r^2 \dot{\varphi} \bigr)  = F_\varphi = 0$

第2式は角運動量保存則に対応しており,$r^2 \dot{\varphi} = h$ (一定) が成り立つ。

これを第1式に代入して,$ \dot{\varphi}$ を消去すると,$  \ddot{r} -\frac{h^2}{r^3}  =\frac{G M}{r^2} $となる。そこで,$u(\varphi) =\frac{1}{r(\varphi)}$と置き,$\dot{\varphi} =h u^2$に注意して,運動方程式を,軌道の形を定める$\varphi$に関する微分方程式に書き換える。

$\dot{r} = \frac{d}{d\varphi} \bigl( \frac{1}{u} \bigr ) \dot{\varphi}= -\frac{1}{u^2} \frac{du}{d\varphi} \ h u^2 =  -h \frac{du}{d \varphi}$

$\ddot{r} = \frac{d}{d\varphi} \bigl( -h \frac{du}{d \varphi} \bigr ) \dot{\varphi}= - h \frac{d^2 u}{d\varphi^2}  \ h u^2 =  -h^2 u^2 \frac{d^2 u}{d \varphi ^2}$

$\dot{\varphi}$を消去した運動方程式に代入すると, $-h^2 u^2 \frac{d^2 u}{d \varphi ^2} -h^2 u^3 = -GM u^2$,つまり,$\dfrac{d^2 u}{d \varphi^2} + u = \dfrac{GM}{h^2}$であり,一般解は,$u = A \cos \varphi + B \sin \varphi + \frac{GM}{h^2}$ である。

初期条件から$A,\ B$を定めるには,$\dot{r} = -h \frac{du}{d \varphi}$の表式が必要となる。一般解を右辺に代入すると,$\dot{r} = h (A \sin \varphi - B \cos \varphi )$

半径$R$の地球の中心Oを原点にとった座標系において,$(x,y)=(R,0); (r,\varphi)=(R,0)$から鉛直上方($x$軸正方向)となす角度$\theta$の方向に,初速度$v$で質量$m$の質点を投射する。このとき $r(0)=R$,$\dot{r}(0)=v_r=v \cos \theta$,$h = r(0)^2 \dot{\varphi}(0) = R v_\theta = R v \sin \theta$である。

これらから,$\frac{1}{R} = A+ \frac{g}{(v \sin \theta ) ^2}$,$v \cos \theta = - B R v \sin \theta$であり,$A=\frac{1}{R} - \frac{g}{(v \sin \theta ) ^2}$,$B = -\frac{1}{R \tan \theta}$となる。

なお,到達時間のオーダーは,$\frac{R \Delta \varphi}{v \sin \theta}= 800 \frac{ \Delta \varphi}{\sin \theta} $[s]となる。

図:ロフテッド軌道の例


2022年3月26日土曜日

ロフテッド軌道(1)

北朝鮮の火星17号弾道ミサイル実験でのロフテッド軌道は,高度6250kmで水平飛距離 1090km 飛行時間 67分というものだったと北朝鮮の労働新聞が報じたことをNHKが伝えている。地球の半径が6370kmだから,国際宇宙ステーション軌道の15倍以上の宇宙空間まで達している。

これを初速度 $v$を与えた鉛直投射によって地球半径$R$の高度まで達したと近似する。エネルギー保存則から,$\frac{1}{2}m v^2 - \frac{GMm}{R} = 0 -  \frac{GMm}{2R} $より,$v=\sqrt{\frac{GM}{R}}$ となる(第1宇宙速度 7.9 km/s に一致するのか)。

地球半径のオーダの高度では,投射体に働く万有引力は地表の1/4まで減少するが,これを無視した$g=\frac{GM}{R^2}$の一様重力場とした。空気抵抗も無視して地球を平面と見なす。このとき,初速度が第1宇宙速度$ v $のミサイルを45度で斜方投射すると,最高度までの到達時間が $t=\frac{v}{\sqrt{2}g}$であり,水平到達距離$d$は,$d = 2 \frac{v}{\sqrt{2}} t = \frac{v^2}{g} = \frac{GM}{R} \frac{R^2}{GM} = R$ = 6400 km となる。飛行時間は,$2 t = \frac{\sqrt{2}v}{g} = 10^3\ {\rm s}$ = 17分。

この近似では,平壌からワシントンまでの11000 km には足りないのだった。もう少し真面目な計算をする必要がある。

2022年3月25日金曜日

Jxiv

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が,3月24日から日本発のプレプリントアーカイブサービス,Jxivの運用を始めた。コーネル大学が運用している arxiv の二番煎じだけれど,何もないよりはマシかもしれない。なお,arxivでも一応日本語の投稿はできるのをみたことがあるし,論文の定義も比較的緩く感じる。

Jxivには,研究者IDである,ORCIDまたはresearchmapのアカウントがあれば登録できる。ただ,researchmapは微妙に面倒なことになっている。そもそもユーザ名が自分では指定できない記号数字の組み合わせだ。所属機関からも登録できるようにするためには仕方ないのかもしれない。

まだ,どの分野の論文も登録されていない。投稿規定やガイドラインを見ると,なんとなく面倒臭そうな雰囲気が満ちているのであった。日本のお役所仕事はどうしてこんなにガードが固くなるのだろうか。そうでなければ利権まみれとかグダグダとかになってしまうのだ。

図:Jxivのトップ画面

2022年3月24日木曜日

pandoc(3)

pandoc(2)からの続き

引き続き,markdown ファイル の活用例として,プレゼンテーション用のスライド作成に取り掛かる。見本(英文)は簡単に見つかって実行できたものの,日本語対応が面倒だと書いてある。あれこれ探してみても,出発点が RStudioの R Markdownというものが多いのだ。結局,日本語Markdownからスライド資料を作成する(Rcmdnk's Blog 2015)とBeamerスライドをMarkdownで簡単に作成(Tomokazu NOMURA's Web Page)を参考にした。

% kpsewhich beamerthemeSingapore.sty

% /usr/local/texlive/2021/texmf-dist/tex/latex/beamer/beamerthemeSingapore.sty

beamerのテーマファイルを上記のkpsewhichコマンド探し,これを編集して末尾に, \usepackage{luatexja} を加えることで日本語対応するということだった。設定ファイルに直接手を入れるのは気が進まないが,元のmarkdownファイルの1ページ目の yaml ヘッダで定義すれば十分であり,styファイルの修正は不要だった。その結果,次のコマンドで memo.md から memo.pdf というbeamerによるプレゼンテーションスライドが生成される。

pandoc -t beamer -o memo.pdf memo.md --pdf-engine=lualatex

memo.mdの1ページ目の yaml ヘッダは次のとおりであり,スライドの改ページは --- である。

---
title: "MarkdownからBeamer"
subtitle: "Pandocで変換"
author: "大阪教育大学 越桐國雄"
date: 2022/03/24
output:
beamer_presentation:
keep_tex: yes
latex_engine: lualatex
header-includes:
- \usepackage{bookmark}
- \usepackage{luatexja}
- \usetheme{Singapore}
---


図:mdファイルから生成したbeamerスライド

2022年3月23日水曜日

pandoc(2)

pandoc(1)からの続き

とりあえず,markdown ファイルから pdf ファイルが生成できるようになった。tex ファイルや html ファイルも生成できるので,その手順をまとめてみる。

(1) tex ファイルの場合

pandoc -s test.md -o test.tex

このtexファイルに対して,ドキュメントクラスを日本語対応に変更する。すなわち,\documentclass[]{article} → \documentclass[]{ltjarticle}として,コマンドラインから,lualatex test.tex とすれば,test.pdf が得られる。

置き換えを perl のワンライナーで実行すれば,シェルスクリプトに落とし込むことができる。

perl -pi -e 's/{article}/{ltjarticle}/' test.tex

(2) htmlファイルの場合

pandoc -s test.md -o test.html --mathml

pandoc -s test.md -o test.html --mathjax

どちらでもよいのだが,数式のまわりのhtmlは,mathjaxの方が少しだけスッキリしているかもしれない。

そこで,これらを zsh のスクリプトとしてまとめたものが次である。md.sh input option とすればよい。optionには{pdf, tex, html}のいずれかが入る。入力ファイルは input.md であり,拡張子より前の部分を引数に取ればよい。以下は md.sh の内容である。

#! /bin/zsh
case \$2 in
  "pdf")
    echo "pdf";
    iconv -f UTF-8-MAC -t UTF-8 \$1.md | pandoc -f markdown -o \$1.pdf -V documentclass=ltjarticle --pdf-engine=lualatex
  ;;
  "tex")
    echo "tex";
    pandoc -s \$1.md -o \$1.tex;
    perl -pi -e 's/{article}/{ltjarticle}/' \$1.tex
  ;;
  "html")
    echo "html";
    pandoc -s \$1.md -o \$1.html --mathjax
  ;;
*)
  echo "undefined"
  ;;
esac

2022年3月22日火曜日

pandoc(1)

マークダウン(2)からの続き

マークダウンの使い方をみていると,コマンドラインベースで各種のドキュメントを相互に変換することができる,pandocとの相性が良いらしい。ということで,pandoc をインストールしようとしたら,すでに homebrew で導入済みだった。念のために,brew reinstall pandocで,pandoc 2.17.1.1が入った。

変換できるファイルの種類のカテゴリーは,次のように多岐に渡る。Lightweight markup (.md),HTML (.html),Ebooks (.epub),Documentation,Roff,TeX (.tex),XML,Outline,Word processor (.docx), Interactive notebook (.ipynb),Page layout,Wiki markup (MediaWiki),Slide show (beamer),Data (.csv),Custom,PDF (.pdf)

厄介なことにマークダウンに関しては微妙に異なった方言が存在するのでなんだか意図した結果が出てこないと思っていたが,記法のミスだった。(1) 見出し,(2) 箇条書き,(3) 番号付き箇条書き,(4) 書体,(5) コード,(6) 数式,(7) 表,(8) 画像,(9) リンク,(10) 脚注 などが概ね機能している。見出しのレベルがまだはっきりわからない。番号付きリストの半角空白は3個にした。

iconv -f UTF-8-MAC -t UTF-8 test.md | pandoc -f markdown -o test.pdf -V documentclass=ltjarticle --pdf-engine=lualatex

上記が,macOS での pandoc の使用例である。入力ファイルは test.md,出力ファイルは test.pdf である。pdf 出力のためには lualatex を通す必要があることと,ファイルは標準の(macOS標準ではなく)UTF-8 形式にしておく必要があるのでiconvで漢字変換したものをpandocに食わせている(pdfファイルで濁点が分離してしまうのを防ぐらしい)。

.zshrcにパスを通して,md2pdf.sh という実行可能なシェルスクリプトを作ったので,引数を1つ指定すると,md2pdf.sh test1 のようにmdファイルからpdfファイルが生成できるようになった。

以下が,マークダウンファイル,test1.md の内容である。

# 見出し1(Title)
ここが段落の文章になる改行しても無視される 
空行があるためこの文章は第二段落となる

## 見出し2(Chapter)
これでは
あれでは

### 見出し3(Section)

#### 見出し4(Subsection)

- リストA
- リストB
  - 子リストB-a
    - 孫リストB-a-a
- リストC

- リストの文章1です。

  行の頭に半角スペースが二つあるので,
  リストの内部要素です。

- リストの文章2です。

行の頭に半角スペースがないので新しい段落です。

1. 番号付きリスト A
   1. 番号付き子リスト A-a
   1. 番号付き子リスト A-b
      1. 番号付き孫リスト A-b-α
      1. 番号付き孫リスト A-b-β
      1. 番号付き孫リスト A-b-γ
   1. 番号付き子リスト A-c
1. 番号付きリスト B

*italic* **bold** ***italic+bold***

\`inline_code\`

\`\`\`
display style code block
function test(a,b) {
return a+b;
}
\`\`\`
\$\int_{-\infty}^\infty e^{-\alpha x^2}dx = \sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}\$

\$\$
\int_{-\infty}^\infty e^{-\alpha x^2}dx = \sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}
\$\$

|項目1|項目2|項目3|
|---|---|---|
|りんご| 10円| 3個|
|みかん| 50円|10個|
|いちご| |売り切れ|
|バナナ|100円| 2本|

[リンク先 https://pandoc.org/ をクリック](https://pandoc.org/)

画像![ALT これはアイコンです](sample.png)も表示させられます。

Markdown エディタ NowType は Ito によって作られ た。 [^1]

NowTypeにおいては、次のような入力支援を行います。

[^1]: Atsushi M. Ito, プラズマ・核融合学会誌, vol. X, No. Y, 2020.

2022年3月21日月曜日

知の対価のデフレ

 東北大学の堀田昌寛さんがTwitterで「知の対価のデフレ」について発言したことが波紋を広げている。

インターネット上に無償の(物理や数学などの)専門知識コンテンツが溢れていることによって知の対価がデフレになっているとして,無償で学術コンテンツを公開している研究者やアマチュアに対して苦言を呈している。その趣旨は2つある。

(1)知識はタダで手に入るものという誤った考えが浸透することになり,知識生産(科学研究とその成果の解説や普及)やそれに携わる人たちの努力が報われなくなってしまう。これは,最終的に知的生産活動を毀損する方向に働くだろう。現に,専門書の市場がかなり縮小してしまい,売れなくなったとのことだ。

(2)人気のある無償コンテンツによって,量子力学の解問題などで典型的にみられる間違った知識が広がってしまう。なお,堀田さん自身のコペンハーゲン解釈の理解と解釈は正しいと主張している。無償コンテンツの流通が情報の質を低下させることに問題がある。

まあ,著作権法の精神がかなりビジネスサイドに歪められている状況で,著作権管理団体が主張している方向性に親和性のある発言である。彼自身が,投げ銭システムを使おうが,有償コミュニティを作ろうがそれはよろしいのだけれど,問題はこれまで無償で良質なコンテンツを公開してきた人に批判の矢を向けていることだ。実際,批難された人たちが様々なリアクションをしている。

堀田さんの量子力学の新しいタイプの教科書「入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として」は,Twitterでの宣伝も功を奏してとても評判になったし,自分も購入している。それ以前の「量子情報と時空の物理」も買っており,量子力学の認識論的解釈という言葉に目を開かれる思いだった。

インターネットの黎明期から始まった知識情報やソフトウェア・データの民主化と公開化の流れや精神に自分は基本的に賛成であり,それらに非常に大きな恩恵を受けている。また,その結果として新しいビジネスモデルが展開されて,お金が動き始めることには全く問題はないと思う。しかし,原点である情報のオープン化に障害となるような発言を繰り返されるのは,影響力の大きな人だけに気になってしまう。なんだかなあ。

P. S. 1 Twitterでの堀田さんの発言はずっとウォッチしてきているが,微妙に道徳・宗教的なところや,変な理由で谷村省吾さんがサイエンス社のサイトで補足情報を出したことに噛み付いたりと,あまり良い印象のない部分がある。

P. S. 2 arxivやWikipediaやWeb Archiveにもお世話になっていて,わずかながら寄附したことはあるので,全くただノリをしているつもりはない。また,YouTubeには収益化機構があるので,これもOKだろう。

P. S. 3 堀田さん自身もお世話になっているはずの,オープンソースソフトウェアについて,彼はどう考えているのだろう。

2022年3月20日日曜日

マークダウン(2)

 マークダウン(1)からの続き

markdownを使うためのエディタとして何がいいのかを調べてみた。【2022年版】Markdown(マークダウン)エディタ厳選まとめなど色々ある。

一つは,Visual Code StudioAtom などの高機能プログラム開発用ソースコードエディタである。元々日常的に使っているのであればこれで良いのだけれど,このためだけに大掛かりな道具立てを持ってくるのは,ちょっと本末転倒な感じがして,markdown の簡素さと相容れない。

そうなると,ウェブアプリとかローカルアプリになる。Boostnote,Joplin,Bear,Quiverなどを眺めてみたけれど,どれも面倒な印象だ。その中では,有償ではあるが Typoraがデザインもすっきりしていて相対的にマシなように感じた。$14.99なのでそれほど高額ではない。とりあえず,3週間は無料でお試しできるので導入してみた。

一通りのことはできるが,inlineの数式ができない。調べてみると,環境設定に1つチェックをすればOKなので,これでほぼ目的は達成できそうだ。使い込んではいないので,もう少し様子を見ることに。

そうこうしていたら,なんのことはない,Jupyter notebookに Code モードとMarkdown モードがあることがわかった。モードを切り替えてみれば,簡単な数式入力は問題なかった。これでいいのだ。最も,その先のことや pdf 出力のことを考えると,Typoraの方が良いかもしれない。


図:Typoraの購入画面 (3端末で使えるよ)

2022年3月19日土曜日

マークダウン(1)

湯川諭さんの 統計力学の本を読んでいたら,カノニカル集団の章で,ラプラス逆変換の式が重要なポイントとして出てきた。フーリエ変換は教えているけれど,ラプラス変換の方は長い間ご無沙汰だったので,復習することにした。

YouTubeで探してみると,量子アニーリングで有名な大関真之さんの授業動画が見つかった。これについての紹介は別にするとして,その中でマークダウン(markdown)への言及があり,数式も使えるよということだった。

Githubを見ていると,コードのドキュメントは必ずmarkdownで書かれたファイル(readme.mdなど)だったので,存在は知っていたが,数式が扱えることまでは知らなかった。そこで,ちょっと試してみるべく色々探してみた。なんだかどこかで見たような・・・うーん・・・なかなか思い出せなかったが,Wikiにおけるマークアップ構文と同じ類ではないか。

昔,本家のMediaWikiはデータベースが必要で重すぎたので,PukiWiki(PHPベース)やFSWiki(Perlベース)などの軽量Wikiを自分のサーバにインストールしてあれこれ試用していた時代があった。特にFSWikiが軽くてよかった。


図:なつかしのFSWikiのトップ(右上)画面

[1]日本Markdownユーザ会

[2]新入生のためのMD(マークダウン)入門(矢根真二)

2022年3月18日金曜日

pdfファイルの結合

(以下はMac環境でのお話)

作業していると,複数のpdfファイルを結合する必要が生ずることが多い。例えば,プレビューを使って左側にサムネールを表示させると,任意のポイントに別のpdfファイルをドラッグ&ドロップして1つのファイルに結合することができる。この方法では,ファイル数が増えページ数が多くなると面倒だし上手くいかないことも多い。

そこで,これまでは,Autometerが内部で使っているpythonスクリプトである join.py をコマンドラインに引っ張り出して使ってきた。 "/System/Library/Automator/Combine PDF Pages.action/Contents/Resources/join.py"により,~/join.py -o x.pdf ~/Downloads/y-*.pdf などとしていた。

これが,この度のOSアップグレードで使えなくなってしまった。python2.7系列が存在しない。python3になっている。スクリプトのヘッダを#! /usr/bin/python3とするだけでいけるかと思ったが,そんな甘くはなくて,エラーだらけになってしまう。

そこで,別解を探してみたが,これがなかなか面倒だった。

(1) ImageMagickのconvertを用いると良いという話があった。ImageMagickをhomebrewで再インストールすると,convertが使えるようになった。試してみると直ぐに結果が出たので,これで解決と思ったら,結合前のpdfファイルに比べ,結合後のものは画像が荒すぎる。確かに上の参考リンク先にもこのことが書いてある。そこで,dpiを400とか300にして試したところ,処理時間やファイルサイズが10倍以上になってしまって使えない。

(2) pdf 結合 コマンドラインで探してみると,popplerというpdfレンダリングライブラリに,pdfファイルを複数結合するコマンドである,pdfuniteというのがあるということだ。これも早速インストールして実行してみると,エラーが出て進めない。

(3) さらに他のものをということで検索すると,pdftkというコマンドが見つかった。brew install pdftkではヒットしないので,brew search pdftkとすると,pdftk-javaが出てきたので,これをインストールしたところ,pdftkコマンドが使えるようになった。使い方の例は次の通り。pdftk input?.pdf cat output out.pdf である。outputという指示を加えることを忘れないようにしよう。ファイルサイズも問題なしだ。これでとりあえず問題は解決か。

2022年3月17日木曜日

メディア・ポートフォリオ(4)

 メディア・ポートフォリオ(3)からの続き

話を元に戻して,昨今の世界情勢や社会情勢を理解するためのメディア選択における自分の現下の偏ったメディア・ポートフォリオについて振り返りながら反省する。

(1)旧メディアの新聞・テレビ:日本経済新聞はほぼ惰性で購読しているけれど,政治欄はあまり信用しない。NHKのニュースや報道番組は眉に唾をつけながら見続けているが,キッチリ洗脳されている。民放には,報道特集とサンデーモーニングくらいしかないが,後者はかなり微妙でおかしい場合も多い。

(2)YouTubeチャンネル:外国特派員協会(*)・日本記者クラブ(話を聞いてみたい人がときどきでてくる),一月万冊(同じネタを同じメロディーで繰り返しているので最近見なくなりつつある),菅野完(かなりバイアスがかかっているが,ときどき必要な視点を提供してくれる),じゅんちゃん(菅野完のパクリ的要素が見られるが,専門家に果敢にアクセスしている),横川圭希(DELIさんの番組で話がきける),町山智弘(バークレー在住,ほぼ納得できる)。

(3)Twitter,ブログ:コロラド先生(情報分析はまじめにやっている),なすこ(話題になる事象を的確にとらえて表現している),外山恒一(まともなことを話している場合が多い),小田嶋隆(文章の技術はすごいかも),孫崎享(外務省OBで金沢大学附属高出身)。

問題ごとに最適化された専門家を探して,プッシュ型で更新情報を取り入れる仕組みができればいいが,それを自動化するのは難しそうだ。本来はそれがマスメディアの機能なのだが,日本では壊滅状態かもしれない。ニュース番組は,自力での取材能力が欠如して思いの外ネット情報に依存してしまっている。だから怪しい専門家も平気で登場させている。となると,BBCやCNNなどの記事リストが一番ということになるのだろうか。

そういう意味で,ソーシャルニュースサイトのRedditには関心があるが,日本語コミュニティが形成されているのかどうか。いずれにせよ,インターネットの情報チャンネルは英米圏に極端に偏ってしまうのが難点だ。

P. S.  3月17日11:00-12:00,ウクライナでの核使用可能性(Ukraine and the Scourge of Nuclear Weapons)に関して,元広島市長の秋葉忠利(1942-)さんが,外国特派員協会に招かれて非常に流暢な英語で質疑応答に対応していた。MITの大学院で数学を学び,アメリカの大学で20年近く教鞭をとっていたのか。

2022年3月16日水曜日

メディア・ポートフォリオ(3)

 メディア・ポートフォリオ(2)からの続き

メディア・ポートフォリオと他のポートフォリオを比較して,共通にある基本概念を簡単にスケッチしてみた。まだ,十分に考えを練っているわけではないので,あくまでも議論の端緒に過ぎないことに注意する。

図:各ポートフォリオの概念スケッチ

ポートフォリオを作成して保持する主体として,個人や法人がある。それらが一定の目的でポートフォリオを作成すると,これらが重みづけられたチャンネルとなって外界(世界,顧客,教師,雇主など)との相互作用(情報,マネー,製品・商品の移動)が生ずる。それによって,主体の価値評価関数の最適化を図るように,ポートフォリオのスペクトルを時系列や空間=対象集合の変化に応じて決定することになる。

図では相互作用によるマネーや情報などの流れを一意的に示しているが,これはまだ十分に吟味できているわけではない。ポートフォリオの実体はアルゴリズムやデータの場合もあるし,マネーの契約物の場合もあるし,実際の制作物や商品や学習成果などを示す場合もある。

2022年3月15日火曜日

メディア・ポートフォリオ(2)

 メディア・ポートフォリオ(1)からの続き

こんなことは誰でも思いつくことだし,現に,FeedlyなどのRSSリーダーはそれに近いコンセプトだろう。そこで,ネットで「メディア・ポートフォリオ」を検索してみると,面倒なことに異なった意味で使われる場合がほとんどだった。

(1)ビジネス分野におけるマーケティング用語:例えば,リード・ジェネレーション(見込み顧客)を獲得するための広報活動では,どのようなメディアを組み合わせて用いるのが有効かという考え方だ。ここでは,ターゲットのボリュームや心理に応じたメディアの選択などが例示されている。

(2)教育分野におけるポートフォリオ評価用語:ポートフォリオ+ルーブリック評価は,このところの流行であったが,動画や音声などのマルチメディアをどうやってうまくこれに組み込むかという論文が出ていた(保健体育教育の人なのか)。マルチメディア・ポートフォリオとして使われることが多い。

ポートフォリオを直訳すると「紙挟み」「書類いれ」であり,本来は,アート・デザイン・建築などの創作分野で,クリエイターが自分の作品を常に準備していて,新しい仕事の獲得のために自分の力量を示すものという意味で使われていた。それが,教育分野に転用された際に,クリエイターは児童・生徒に置き換わり,教師によって評価される対象としての学習記録総体を表わすこととなる。一方で,企業や個人の資産・投資分野では,リスクヘッジのために複数の金融商品や資産などを組み合わせて保持・運用することを意味している。

あ,忌まわしい,そして今はなき,Japan e-Portfolioを思い出してしまった。左記リンク先のコメントを書いた半年後の2020年8月に,野党の批判などを受けた文部科学省が「利用する大学が少なく,債務超過に陥り,今後の事業運営に必要な資産がない。プライバシーマークなど運営要件を満たす資格を取得していない」などの理由によって,Japan -Portfolioは運営の許可が取り消されている

2022年3月14日月曜日

メディア・ポートフォリオ(1)

 ウクライナのニュースを見ていて,「メディア・ポートフォリオ」という言葉が頭に浮かんだ。

民放の情報番組(ニュースバラエティ)では,過激なお笑いタレントや芸能事務所所属のご意見番が,勝手な妄想を垂れ流しているらしい。というのも,そんな番組を見る気力がないので,Twitterなどの間接情報で聞き及んでいるだけだから。NHKやTBSの報道系番組でも問題によってはひどく偏った情報やプロパガンダで満ちている。

どうすればよりましな専門家や専門的知識を理解したジャーナリストの発信する情報を選択的に得ることができるのか。それについての一つの答えを,あまり信用できない佐々木俊尚が語っていた。それは,少数のこれはという専門家から出発して,その発信情報からのリンクをたどって,良質な情報発信者の集団を求めるというものだった。

佐々木がそこで例示している3人をみると,1人は東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠であった。日本記者クラブでの3月9日のウクライナに関する会見を見たが,確かに話を聞く価値はある。ところが後の2人は佐々木の好きそうな怪しい雰囲気が満載であり,これではだめだ。結局自分のバイアスは必ず入らざるを得ない。

結局,社会的な問題について相対的に適切な情報を得るためには,問題に応じて信頼度の高い複数のメディアの集合を用意してそれらの比較からよりましな真実に近づく必要があるという考えに至った。これは,メディア・ポートフォリオと呼べるものではないか。日本記者クラブもその一つだし,BBCやCNNなどもこれを構成する要素になるだろうが,すべてのニュースに目を通しているわけにも行かない。一月万冊の平田悠貴による海外ニュースダイジェストは少し近いかもしれない。

2022年3月13日日曜日

ペントハウス

WOWOWの朝の韓国ドラマである。ペントハウス(21話)・ペントハウス2(13話)・ペントハウス3(14話)が終って,オッケー!グァン姉妹(50話)がはじまった。それぞれ 1話がコマーシャル無しで75分程度あるので日本でいえば90分ドラマ,大河ドラマの2話分に相当する。

韓国ドラマの現代物で最近見たものは,誰も知らない(16話),VIP(16話),夫婦の世界(16話),一度行ってきました(50話)など,どれもおもしろかったが,ペントハウスもなかなかインパクトが大きかった。

伏線のはり方や,手品のように視聴者を騙すトリックや,とんでもない設定や,激しい登場人物など,フラフラになりながら見ていた。第3シリーズの最終回までくると,さすがに制作側も疲れてきたのか,なんとなくハッピーエンド?風に終ってしまった。日本のドラマ(といってもほとんど見ていないが)のチマチマした作りと比べるとお金の掛け方が違うような気もする。


2022年3月12日土曜日

デジタル地域通貨

 天理市がデジタル地域通貨を始めるというニュース。

天理市の並河健市長は若くて頭がいいので,新しいことにいろいろと取り組んでいる。自民党に近いし,師匠が北岡伸一なのだけれど,これまでの市長としての発言内容にはおおむね好感が持てる。昨年のコロナワクチン接種開始時の対応もスムーズで,奈良県の他市町村と比べても接種率が高い状態をずっと維持していた。最近では,PCR検査体制も整えてた。

高市早苗に対抗して2012年に日本維新の会から衆議院選挙に出馬したが,その後離党している。そんなこともあるので,市立図書館をカルチュア・コンビニエンス・クラブ(TSUTAYA)に売り渡さないかだけが心配だ。

さて,そのデジタル地域通貨だが,朝日新聞によると次のようなものらしい。

第1段階:コロナ禍で低迷する地元の消費喚起で市内事業者の支援を図るため,5月から6月にかけて各世帯にアプリのダウンロード方法やデジタル地域通貨を得られるQRコードを載せたお知らせを送付(1ポイントは1円相当,ポイント名は未定。夏ごろから市内の加盟店舗で使える予定)。

第2段階:市民の地域貢献活動や健康増進活動への参加に応じて市からポイントを付与。市民活動に対して新たな価値を付加することで,まちづくりへの市民参加を促す。

第3段階:市民が自らポイントをチャージできるようにする。店舗で使用されたポイントの一部を福祉関係の施設に助成する流れも作り,地元消費に新たな価値を加える。

デジタル市役所もはじまったことであり,今後の展開にちょっと期待できるかどうか。 

2022年3月11日金曜日

ロシアの非友好国

 ロシアの非友好国,48カ国・地域のリストを眺めてみた。ロシアの債務者が「非友好国リスト」の債権者にドルなどの外貨ではなくルーブルで相当額を支払えば,債務を履行したとみなすとしている。ルーブルの価値はどんどん下がっているので,債権者はたいへんだ。

アメリカ合衆国,カナダ,※EU加盟全27カ国,英国,ウクライナ,モンテネグロ,スイス,アルバニア,アンドラ,アイスランド,リヒテンシュタインモナコ,ノルウェー,サンマリノ,北マケドニア,日本,韓国,オーストラリア,ミクロネシア,ニュージーランド,シンガポール,台湾。

(※EU加盟国:アイルランド,イタリアエストニア,オーストリア,オランダ,キプロス,ギリシャクロアチア,スウェーデン,スペインスロバキアスロベニアチェコデンマークドイツハンガリー,フィンランド,フランスブルガリアベルギーポーランドポルトガル,マルタ,ラトビアリトアニアルーマニアルクセンブルク

一方で,NATO(北大西洋条約機構)の加盟国(全30カ国)のリストは次の通りである。

アイスランド,アメリカ合衆国,イタリア,英国,オランダ,カナダ,デンマーク,ノルウェー,フランスベルギーポルトガルルクセンブルク(以上原加盟国),ギリシャ,トルコ(以上1952年2月),ドイツ(1955年5月当時「西ドイツ」),スペイン(1982年5月),チェコハンガリーポーランド(以上1999年3月),エストニアスロバキアスロベニアブルガリアラトビアリトアニアルーマニア(以上2004年3月),アルバニア,クロアチア(以上2009年4月),モンテネグロ(2017年6月)北マケドニア(2020年3月)

(1)NATO加盟国で,EU非加盟国(9):アイスランド,アメリカ合衆国,英国,カナダ,ノルウェー,トルコ,アルバニア,モンテネグロ,北マケドニア 

(2)EU加盟国で,NATO非加盟国(6):アイルランド,オーストリア,キプロス,スウェーデン,フィンランド,マルタ

(3)NATO加盟国またはEU加盟国以外の非友好国(12):スイス,アンドラ,リヒテンシュタイン,モナコ,サンマリノ,日本,韓国,オーストラリア,ミクロネシア,ニュージーランド,シンガポール,台湾

(4)NATO加盟国であり非友好国でない国(1):トルコ


図:EU加盟国一覧(Wikipediaから引用)

2022年3月10日木曜日

フラッグシップ大学(3)

フラッグシップ大学(2)からの続き

3月9日に,文部科学省から教員養成フラッグシップ大学の指定についての報道発表があった。15大学14件(国立大学13,私立大学2)の申請があり,7大学がヒアリングされ,4件が指定された。

指定されたのは,東京学芸大学,福井大学,大阪教育大学,兵庫教育大学の4件である。ヒアリングまで通過した他の3件は,北海道教育大学,上越教育大学,愛媛大学である。なお,教員養成系単科大学(11校)のうち,愛知教育大学はヒアリングを通過せず,宮城教育大学,京都教育大学,奈良教育大学,鳴門教育大学,福岡教育大学の5校は申請していない。

基本的には高等教育や学術研究予算の選択と集中の教員養成系版であり,複雑化した教員免許状の課程認定制度に特区的な要素を盛り込んでさらにカオスな体系にするものだ。企業との連携も必須条件であり,どうしても利権の影がちらついてみえる。まあ,今のGIGAスクール構想全体からみれば,微々たるものかもしれない。

それでも,大阪教育大学が選ばれたことは,例え毒饅頭だとしても関係者は喜んでいるのだろう。あるいは既定路線だったのかもしれないが,申請書をざっと眺めこれまでの歴史的経緯を考えれば,まあ妥当な4大学の指定だと思われる。

この間の経緯はおよそ以下のとおりである。途中で新型コロナウィルス感染症問題のために非常に急ピッチでスタートしたものが1年間遅れることになった。

2019年1月18日 教育再生実行会議提言中間報告(技術の進展に応じた教育の革新ほか)教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループでの検討部分,ここに東京学芸大学の松田恵示と東北大学の堀田龍也がワーキンググループの有識者として加わっている。

2019年3月20日 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループの設置について(上記の中間報告提言を受けたものだが最終報告を待たないのか・・・)

2019年5月17日 教育再生実行会議第十一次提言(技術の進展に応じた教育の革新ほか)

2019年5月23日 教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループ第1回会議

2019年12月19日 教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループ第7回会議 Society5.0時代に対応した教員養成を先導する「指定教員養成大学(フラッグシップ大学)」の在り方について(最終報告 案)

2020年1月23日 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(兵庫教育大加治佐学長=部会長)で上記WGの最終報告を承認

2021年6月28日 中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会 ここには,兵庫教育大学の加治佐哲也に加え,福井大学の松木健一が入っている。教員養成フラッグシップ大学の今後の進め方について教員養成フラッグシップ大学推進委員会の設置について,が議論されている。

2021年7月30日 中教審初等中等教育分科会教員養成部会の教員養成フラッグシップ大学推進委員会第1回会議,東京学芸大学の高橋純とキャリアリンクの若江眞紀が臨時委員として加わっている。主査は

2021年8月4日 教育職員免許法施行規則等の一部を改正する省令の施行等について(文部科学省総合政策局長)

2021年8月6日 教員養成フラッグシップ大学の公募について(文部科学省総合教育政策局長)

2021年12月29日 教員養成フラッグシップ大学推進委員会第2回会議ヒアリング対象大学の選定

2022年1月18日〜20日 ヒアリング対象大学のヒアリング日程

2022年2月12日 教員養成フラッグシップ大学推進委員会第3回会議指定大学の選定

2022年2月22日 中央教育審議会教員養成部会【非公開】秋田主査から審議結果報告

なんだかんだいっても,東京学芸大学と兵庫教育大学の加治佐さんが中心となって(福井大学の松木さんの影の下)この問題が回っていった。出発点は,教育再生実行会議の技術の進展に応じた教育の革新 というピンポイントのテーマだったのが,いつの間にか,

「令和の日本型学校教育」を担う教師の育成を先導し,教員養成の在り方自体の変革を牽引するため,1 先導的・革新的な教員養成プログラム・教職科 目の研究・開発,2 全国的な教員養成ネットワークの構築と成果の展開,3 取組の検証を踏まえた教職課程に関する制度の改善への貢献等

という大風呂敷に変貌してしまった。そして,教職大学院の雄である福井大学と兵庫教育大学の得意分野のレトリックでべたべたと塗りたくられたグロテスクな提案書が並ぶことになってしまった。


図:日本の国立教員養成大学マップ(惜しかった愛媛大学提案書資料から引用)

P. S. 松木健一さんは福井大学の企画担当の理事だし,若江眞紀さんは兵庫教育大学の特命戦略理事になっていた。

2022年3月9日水曜日

Apple Event 2022 March

  日本時間3月9日午前3時(米国時間 3月8日午前10時),Apple Event 2022 March が開かれた。

最近は1時間でさらっと終るEventが中心になっているようなイメージだ。超強力な新しいM1 Ultra チップの紹介では,登場する開発者たちがすべて女性だった。ティム・クックは青いシャツに黄色いバンドのApple Watchをはめている。今回のプレゼンテーションは全体に地味な感じに抑えられていた。戦争中なのであまり浮かれて騒ぐこともできない。さて,今回の目玉は次のとおり。

(1)iPhone SE3: 大変魅力的なのだけれど,自分の生活圏がソフトバンクの5Gサービスエリアになるのは当分先のようなので,それまでは機種更新することはない。SE2とSE3の比較をすると,サイズは全く同じ,A13 BionicからA15 Bionicへ,RAMは3Gが4G,セルラーは4Gが5Gになり,バッテリは13hから15h。12MP(フロント7MP)のカメラの機能はほぼ同じだが,Deep Fusionが加わった,何それおいしいの?指紋認証があるのがありがたいが,あいかわらずLightningコネクタのままだった。

(2)iPad Air: いま,自分が持っているiPad Pro 11" (第1世代)との違い。チップがA12XBionic からM1へ,セルラーモデルでは5Gが可能,12MPと7MPのカメラはフロントだけ広角12MPに。Apple Pencil 2 はともに使える。Proである必要はない

(3)Mac Studio: Mac Studio M1 Max のほぼ最小モデルは,M1 Maxの10コアCPU+24コアGPU+16コア NeuralEngine,32GBメモリ,1TBストレージで,27万円(同じ構成で MacBook Pro 14" = 36.5万円)。一方,Mac Studio M1 Ultra の最小モデルは,M1 Ultraの20コアCPU+48コアGPU+32コア NeuralEngine,64GBメモリ,1TBストレージで,50万円。

MacBook AirのM1チップ(8コアCPU+8コアGPU)の8倍の面積を持つのが M1 Ultraチップである。M1 Ultraの処理性能はM1の数倍以上で旧MacProを越えているのだった。これに27インチのApple Studioディスプレイが20万円か。研究費が潤沢だった25年前ならばたぶん買っていた。コンパクトなのがなにより。

P. S. 1 : その後,ベンチマークの情報も出てきたが,まだ,WindowsのゲーミングPCの最上位機レベルには達していないようだ。シングルコアの性能は,自分のM1 MacBook Airと同じだし。さらに,これは,次のMacProへの伏線であるという噂だった。あとM2との整合性や整理をどうするか問題とか。

P. S. 2 : macOS 12.3(Monterey),iPad OS 15.4,iOS 15.4 のアップグレードが引き続いてやってきた。目玉は,マスクをつけたままのFace ID認証と,Mac-iPad間のユニバーサルコントロールだ。前者は使わないし,後者は試してみたののの,サイドカーの場合と同様に今ひとつピンとこないのであった。


2022年3月8日火曜日

三次方程式の解(3)

三次方程式の解(2)からの続き

三次方程式 $\ x^3+p x + q=0\ $の解は,$x=y+\frac{p}{3y},\quad  y^3 = t\ $と変数変換すると,$\ t\ $の二次方程式$\ t^2+q t -\frac{p^3}{27}=0\ $の解から逆にたどって求めることができた。このとき,$x^3=1\ $の解,$\{1,\ \omega=\frac{-1+\sqrt{3} i}{2}, \omega^2=\frac{-1-\sqrt{3} i}{2} \}$ を活用した。

上記の2次方程式が2つの実数解を持つ場合の求解手順を前回示したので,ここでは2つの複素数解$\ t_1=-\frac{q}{2} + \sqrt{q^2/4 + p^3/27}, \ t_2=-\frac{q}{2} - \sqrt{q^2/4 + p^3/27} \ $の場合(根号の中身が負の場合)を考えてみる。

(2) $\ t_1,\ t_2\ $が複素数の場合:

この場合,$\alpha=t_1^{1/3}, \ \beta=t_2^{1/3}\ $は複素数となる。前回と同様に,$ \alpha^3 \beta^3 = t_1 t_2 =  -\frac{p^3}{27}$であるが,$\alpha, \beta$が複素数であることから,$\alpha \beta = -\frac{p}{3},\ \alpha \beta \omega = -\frac{p}{3},\ \alpha \beta \omega^2 = -\frac{p}{3}\ $のいずれかが成立する。

6次方程式の解が,$y_1 = \{ \alpha,\ \alpha \omega,\ \alpha \omega^2 \},\quad  y_2 = \{ \beta,\ \beta \omega,\ \beta \omega^2 \} \ $であり,三次方程式の解が$\ x=y -\frac{p}{3 y}\ $によって得られることは前回と同じだ。そこで,複素数(実数を含む)である$\ \beta$を含む解が,複素数(実数を含む)である$\ \alpha$を含む解に帰着することが示せればよいことになる。

$\alpha \beta$の積に対する3つの条件のうち,最初のものは実数の場合と同じなので,前回の議論をそのままつかうことができる。残りの2つの条件を当てはめると次のようになる。

$\{ \beta,\ \beta \omega,\ \beta \omega^2 \} /.  \beta \rightarrow -\frac{p}{3 \alpha \omega}  =  \{\ \alpha \omega  - \frac{p}{3 \alpha \omega},\ \alpha -\frac{p}{3 \alpha},\ \alpha \omega^2 - \frac{p}{3 \alpha \omega^2}\}$,

また,$\{ \beta,\ \beta \omega,\ \beta \omega^2 \}/. \beta \rightarrow -\frac{p}{3 \alpha \omega^2}  = \{ \alpha \omega^2 - \frac{p}{3 \alpha \omega^2},\ \alpha \omega - \frac{p}{3 \alpha \omega} ,\ \alpha -\frac{p}{3 \alpha }\}$

なお,条件の代入にはMathematicaのルール [元の表式/. 変数→変換式]を用いた。こうして,一組の6次方程式の解$ \ y_1=\{ \alpha,\ \alpha \omega,\ \alpha \omega^2 \} $ から3次方程式の一組の解 $\ x= y_1- \frac{p}{3 y_1}\ $が得られる。

2022年3月7日月曜日

三次方程式の解(2)

 三次方程式の解(1)からの続き

大学入試問題で扱われるような三次方程式$\ x^3 + p x + q =0\ $の解についての別のアプローチがあった。まず,$\ x=y+\frac{a}{y}\ $とおいて, $ y $の6次方程式に変換すると,$\ y^3+3a (y+\frac{a}{y}) +\frac{a^3}{y^3} + p (y+\frac{a}{y}) + q = 0\ $が得られる。これが$\ t=y^3\ $の2次方程式になるように,$\ 3a+p=0\ $という条件をつければ,$ a=-\frac{0}{3} $となる。このとき,$\ t^2 + q t -\frac{p^3}{27}=0\ $が成り立つ。

この2次方程式の解は,$\ t_1=-\frac{q}{2} + \sqrt{q^2/4 + p^3/27}, \ t_2=-\frac{q}{2} - \sqrt{q^2/4 + p^3/27} \ $となる。また,6次方程式の解は,$y_1^3=t_1, \ y_2^3=t_2$を満足している。ここで,$x^3=1$の解を,$ \{ 1, \ \omega=\frac{-1+\sqrt{3} i}{2}, \ \omega^2=\frac{-1-\sqrt{3} i}{2} \} $とする。

(1) $\ t_1,\ t_2$が実数の場合:

$\alpha=t_1^{1/3},\ \beta=t_2^{1/3}$を実数とすると,$y_1 = \{ \alpha,\ \alpha \omega,\ \alpha \omega^2 \},\quad  y_2 = \{ \beta,\ \beta \omega,\ \beta \omega^2 \}\ $となる。この6つの解からそれぞれ,$\ x=y -\frac{p}{3 y}\ $によって,もとの三次方程式の解がえられるので,解の組が過剰に存在するようにみえるが,$y_2$のセットは,$y_1$のセットと同じになることが確かめられる。

$ \alpha^3 \beta^3 = t_1 t_2 =  -\frac{p^3}{27}$で,$\alpha, \beta$がともに実数であることから,$\alpha \beta = -\frac{p}{3}$である。

これから,$x_2 = y_2 - \frac{p}{3 y_2} = \{ \beta-\frac{p}{3\beta},\ \beta \omega - \frac{p}{3 \beta \omega},\ \beta \omega^2 - \frac{p}{3 \beta \omega^2} \} $

$ = \{ -\frac{p}{3\alpha} + \alpha,\ -\frac{p}{3 \alpha \omega}+ \alpha \omega ,\ - \frac{p}{3 \alpha  \omega^2} +\alpha \omega^2  \} =  y_1 - \frac{p}{3 y_1} = x_1$

つまり,$\beta $からくる解はすべて$\alpha$からくる解の三つ組に帰着する。

三次方程式の解(3)に続く。


2022年3月6日日曜日

ルーシと日本

ウクライナからの続き

ウクライナを考えるときに,その地理的なサイズを日本と比べることで,イメージをつかみやすくなる。日本は人口1億2600万人,面積37万㎢ であり,一方ロシアは人口1億4600万人,面積1713万㎢ ,ウクライナは人口4400万人,面積60万㎢ ,ベラルーシは人口940万人,面積21万㎢ などである。

カスピ海やウラル山脈以東の広大な大地はとりあえずおいて,ロシアの中で,ベラルーシやウクライナと国境を接している中央連邦管区(首府モスクワ,人口3910万人,面積65㎢ )と南部連邦管区(首府ロストフ・ナ・ドヌ,人口1640万人,面積45万㎢ )だけを取り出してみる。この中南部ロシアとウクライナとベラルーシを加えた,旧キエフ大公国+αの部分(以下ルーシとよぶ)を日本と比べてみよう。

日本:人口1億2600万人,面積37万㎢ に対して,ルーシ:人口1億900万人,面積190万㎢ となる。面積はルーシが5倍だが人口はほぼ等しく,ともに半径1000kmの円内にほぼおさまる。さて,モスクワとキエフの距離が,仙台と大阪の距離にほぼ等しく800-900kmある。そこで,それぞれの中点を中心に半径500kmと半径1000kmの円を書いたものを図に示した。

ルーシにおけるウクライナは,人口が40%,面積が30%とかなりのウエイトを占めている。日本でこの割合を占める部分というと,九州+四国+中国+近畿(以下西日本とよぶ)であり,人口が4560万人(日本全体の36%),面積が12万㎢ (日本全体の32%)である。キエフの人口は,288万人でありウクライナの北端にある。大阪市の人口は,275万人であり,西日本の東端にある。いい感じでよく似た地理的集合が取り出せた。

図:ルーシの1000km圏内におけるウクライナと日本の1000km圏内における西日本

ようは,東京の人口を「仙台」に持ってくれば,西日本(大阪)/日本(「仙台」)≒ウクライナ(キエフ)/ルーシ(モスクワ)と考えて良いわけだ(人口密度だけルーシは日本の1/5なのだが)。で,次のような(顰蹙ものの)サイエンス・フィクションを想定することになる。

『第二次世界大戦後に,もとは同じ民族で言語もよく似た西日本と東日本は別の国になった。西日本では,これまでの親東日本的な政権が倒れて,中華帝国を中心とする西太平洋軍事同盟に加入したがる維新政権ができた。西太平洋軍事同盟は,北朝鮮,韓国,ベトナムとその領域を次第に南に拡大していた。東日本は,そんなことをされて核シェアリングされたミサイルが生駒山あたりに配備されるのはかなわないので,西日本を侵略する決断をした』

それでも侵略が一ミリたりとも正当化できないのは当然のことである。ただし,状況の多角的な視点からの理解は必要だと思われる。

[1]プーチンを無理筋の軍事的侵攻に踏み切らせた背景とは(videonewscom:河東哲夫)

2022年3月5日土曜日

Wordle(2)

 Wordle(1)からの続き

Wordleは5文字の英単語をあてるゲームだった。日本語でもできるのではと調べてみると,いくつか紹介されていた。アルファベットは26文字に限定されるので,単語成立条件を問わなければ5回でほぼすべての文字が含まれるかどうかが判定できる。しかし,日本語のかなでは,濁音,半濁音,拗音,撥音などもあるため,約80文字くらい必要である。したがって,16回≈3倍ほどの手間をかける必要があることになる。

(1)WORDLE ja(aseruneko):入力するのが辞書にない言葉でもかまわない。試行回数にも制限がない。ということでゲームとしてのおもしろさに欠けるかもしれない。

(2)ことのはたんご(大西力登):試行回数は10回までで,外来語も含まれる。辞書が弱いと感じたが,作者はそのあたりも考えた上で1万語の辞書を用いている。noteに詳しい経緯があるのがありがたい。

(3)ことばであそぼう(Desmond Lee):4文字で試行回数は12回にしてある。これも辞書が弱い。ただ,回数が少ない分,ヒントモードを加えることで日本語化した場合の難点を回避する作戦か。

(4)漢字ル(大坪弘尚):四字熟語版である。部首の共通点が指摘されるようになっている。漢字変換入力のインターフェースがちょっと気になる。試したところいきなりホールインワンになってしまった。

日本語のかなの出現頻度表はあるが,あまり絞り込みの役には立たない。支援ツールとしては,精選版日本国語大辞典を使ったが,これだけではちょっと難しい。○○から始まる、○○で終わる言葉一覧とか,ことばさあちとかあるにはあるがどんなものだろうか。

ことのはたんご 第43回 5/10
   ⬜⬜⬜⬜⬜ 20426
   ⬜⬜⬜⬜🟩 1476
   ⬜⬜⬜🟨🟩 40
   ⬜🟨⬜⬜🟩 29
   🟩🟩🟩🟩🟩 1
   図:ことのはたんごの実行例

2022年3月4日金曜日

Wordle(1)

最近,Twitterで流行るもの。緑色と黄色と灰色の四角形が5列×(〜5,6)行並んだ図のようなものをよく見かけるようになった。Wordleとあるので調べたところ,NewYork Timesについているオンラインゲームらしい。1回終ると何時間か待たされるので,1日に1回程度遊べるような気がする。

   Wordle 258 4/6
   🟨🟨⬜⬜🟨
   🟨🟨🟨🟨⬜
   🟩⬜🟨🟨🟩
   🟩🟩🟩🟩🟩
図:Wordleのtwitter出力の例

ワードル(Wordle)のルールは簡単である。アルファベット5文字の英単語を当てればよいのだ。ゲーム名は,Redditのソフトウェアエンジニアだった開発者のJosh Wardleの名前から来ているのか。

最初はノーヒントなので適当な5文字を入れる。ただし,辞書にあるような英単語でなければならない。正解の単語と同じ位置に同じ文字がある部分がグリーンで示される。この文字は確定だ。正解の単語に含まれてはいるが,位置が間違った文字は黄色で示される。次の推測では,この文字は別の位置に動かさなければならない。正解の単語に含まれていない文字は灰色で示される。これは次回以降の候補からは排除される。

この条件の元に,次の推測候補となる単語を考える。すると新しい判定結果が得られるので,この情報に基づいて修正する。正解にたどり着くまでこれを繰り返せばよい。ベイズ推定の精神ですね。

問題の鍵は,自分が持っている英単語のボキャブラリー数にあり,5文字で辞書に載っている単語をどれだけ準備できるかが重要だ。前に試したボキャブラリのテストで,自分には英語圏の10歳児並のボキャブラリーしかないことがわかっていたので,ここはちょっとチートを使うことにした。

bestwordlistのサイトでは,任意の文字数の英単語のリストを得ることができる。さらに,その単語の先頭の文字,末尾の文字,含まれる複数の文字などを指定することができるので,このゲームの目的にはまさにぴったりなのである。

戦略としては,まず出現頻度の高い文字晴耕雨読より)から攻略することが考えられる。1文字の出現確率は,{E} → 13%,{T, A, O, N, I, R, S, H} → 9%〜6%,{D, L, U, C, M} → 4%〜3%,{P, F, Y, W, G, B, V} → 2%〜1%,{K, X, J, Q, Z} → 0.5%〜0.1%となっている。また,2文字の出現頻度準のリストは,{TH, HE, IN, ER, AN, RE, ED, ON, ES, ST, EN, AT, TO, NT, HA, ND, OU, EA, NG, AS, OR, TI, IS, ET, IT, AR, TE, SE, HI, OF}である。

これらを利用して頻度が高い単語から攻めるのがよいと思われる。

2022年3月3日木曜日

水平社宣言

1922年の3月3日に,京都市の岡崎公会堂で,全国水平社の創立大会が開かれ,そこで, 水平社宣言が採択された。その100周年になる。奈良県御所市にある水平社博物館もリニューアルされて,3月3日にオープンする。

全國に散在する吾が特殊部落民よ團結せよ。

 長い間虐められて來た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によつてなされた吾らの爲めの運動が、何等の有難い効果を齎(もた)らさなかつた事實は、夫等のすべてが吾々によって、又他の人々によつて毎に人間を冒涜されてゐた罰であつたのだ。そしてこれ等の人間を勦(いたは)るかの如き運動は、かへつて多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によつて自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。

 兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、實行者であつた。陋劣なる階級政策の犠牲者であり、男らしき産業的殉教者であつたのだ。ケモノの皮剝ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剝取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖い人間の心臟を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあつた。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が來たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が來たのだ。

 吾々が穢多である事を誇り得る時が來たのだ。

 吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行爲によつて、祖先を辱しめ、人間を冒瀆してはならぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦る事が何なんであるかをよく知つてゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃(がんぐらいさん)するものである。

 水平社は、かくして生れた。

 人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光あれ。    

大正十一年三月


写真:水平社創立の綱領と宣言(水平社博物館から引用)

2022年3月2日水曜日

クリミア

ロシアによる ウクライナ侵略問題の前にあったのが,ロシアによるクリミアの併合だった。高校のときに世界史を履修していたにも関わらず,世界史の常識に欠けているので,復習することに。

(1)ロシア帝国は1721年から1917年まで続き,その首都は,バルト海に面したサンクスペテルブルグ=ペトログラードだった。バルト海といえば,バルチック艦隊の母港は,かつては現在のラトビアにあるリバウ。現在は,リトアニアとポーランドに挟まれたロシアの飛び地であるカリーニングラードオイラーの橋の問題で有名なケーニヒスベルク)。なぜか,ロシア帝国の第8代皇帝のエカチェリーナ二世が,ポプラ社のコミック版世界の伝記にあって,小学生の人気ベスト10に入っている。どういうことなの?

(2)エカチェリーナ二世が1784年にクリミア半島をロシアに編入した。クリミア戦争は1853年から1856年にわたり,ロシア帝国とオスマン帝国の間でクリミア半島の周辺などで戦われた。黒海周辺をロシア帝国が支配することで,海軍力が増強されることに危惧をいだいたイギリスとフランスがオスマン帝国側に参戦する。クリミア半島南部の黒海艦隊の母港のセヴァストポリが陥落し,クリミア戦争はロシア帝国の敗北で終る。1905年のロシア第一革命が戦艦ポチョムキンの反乱につながる。

(3)1917年のロシア革命後,ボリシェヴィキがロシア帝国の各地の内戦を制圧する。その過程で誕生したクリミア・ソビエト社会主義共和国はロシア共和国に帰属するものとなり,1921年に,ロシア・ソビエト社会主義共和国(ロシア),ザカフカース社会主義連邦ソビエト共和国(アゼルバイジャン・アルメニア・グルジア),ウクライナ社会主義ソビエト共和国白ロシア・ソビエト社会主義共和国(ベラルーシ)の4ヵ国によってソビエト社会主義共和国連邦が成立した。1945年の国際連合の原加盟国51カ国には,ロシア連邦に加え,ベラルーシ,ウクライナが入っている。

(4)1954年,当時のフルシチョフソビエト連邦共産党中央委員会第一書記(1958年のソビエト連邦第4代閣僚会議議長=首相就任より前)は,ウクライナ融和策として,ペレヤスラフ協定300周年を記念し,ソ連の領土内の管轄変更としてクリミア半島をロシア・ソビエト連邦社会主義共和国からウクライナ・ソビエト社会主義共和国に移管させた。なお,フルシチョフはウクライナ人であり,ウクライナのとの国境付近のロシアで生まれ,その後,ウクライナに移住している。

(5)1991年のソビエト連邦の解体後,クリミア半島の帰属や国境線の確定を巡って,ロシア,ウクライナ,ベラルーシの協議が行われたが,ロシアは,ウクライナの核兵器廃棄の方を優先して,クリミア半島をウクライナの領土と認めた。ただし,セヴァストポリの黒海艦隊の母港としての租借権や,クリミア半島東部のケルチ海峡の自由航行権,海底資源の共同開発を条件とした。

(6)このような歴史的経緯から,クリミア半島にはロシア系住民が多いため,ウクライナ国内におけるクリミア自治共和国としての位置を確立する。これが,住民投票などを経て,ロシアへの帰属を決議することになるのが,2014年のクリミア危機である。ロシア軍の装備を持つ,リトル・グリーンメンとよばれる覆面の武装集団がこの過程で暗躍している。



写真:クリミア半島の周辺(世界史の窓より引用)

[1]ウクライナ情勢から見た地域と国家(塩川伸明,2014)

[2]クリミアの歴史(Wikipedia)


2022年3月1日火曜日

丸山レクチャー

 統計力学の準備でエントロピーを検索していたら,Maruyama Lecturesの情報とエントロピー入門Part 1というコンテンツが網にかかってきた。内容は確かに面白そうで大部の講演資料もついていたけれど,ちょっと詰めが甘いというか,話題網羅主義でストーリーができていないような感じだった。

ただし,タイトルには自分の中2ごごろをくすぐる興味深いものが並んでいるではないか。ジャンル一覧は,エンタングルメント,エントロピー,量子論と量子コンピュータ,計算科学と複雑性,認識の理論,プログラムと論理,人工知能,言語理論というもので,最新のレクチャーは,「Bob Coeckeの “Picturing Quantum Processes”に依拠して、量子過程を図解する手法としてのString Diagramを学びます」なのだから。

いったいどこのおじさんがこれを作っているのかと調べてみると,丸山不二夫(1948-)さんだった。どこかで見たことがある名前だと思ったら,稚内北星学園大学の初代学長であり,たぶん黎明期のパソコン雑誌で連載を持っていたので知っていたのだと思う。それがちょっと見当たらない。

丸山さんの経歴によれば,東京大学教育学部の出身で,一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了,指導教官は岩崎允胤となっている。岩崎さんはマルクス主義哲学の御大であり,「現代自然科学と唯物弁証法」は大学生のときの必読書(ホント?)だった。それがMaruLaboのマルレクにつながっていると考えればなんと納得が行く話だ。


写真:圏論的量子力学の書影(Amazonから引用)


2022年2月28日月曜日

オデッサ

ウクライナからの続き

黒海沿岸の港湾都市オデッサは ,人口100万人のウクライナの第三の都市。ちなみに首都キエフは人口300万人弱なので,大阪と同じ規模だ。北130kmのところにチェルノブイリ原子力発電所があり,事故を起こしたチェルノブイリ4号炉への観光ツアーもあるらしい。

そのオデッサが出てくるのが,セルゲイ・エイゼンシュテイン(1898-1948)の映画「戦艦ポチョムキン(1925)」だ。大学に入って,休日には映画を見ることが多かったが,岩波新書の「映画の理論(岩崎昶)」などを読んでいると,モンタージュ理論を確立したエイゼンシュテインは必見ということだ。それで,戦艦ポチョムキンを見に行くことに。

1905年のポチョムキン号における水兵の反乱は歴史的な事件である。オデッサの階段での虐殺シーンは史実ではないらしいが,印象的だったし,全体のモノクロームのロシア革命前夜的なイメージはよかった。後に,1917年のロシア革命がテーマであり,「俺達に明日はない」のウォーレン・ベイティが監督主演した「レッズ」を見たけれど,エイゼンシュタインの迫力には及ばなかった。


写真:オデッサの階段(Wikipediaから引用)

2022年2月27日日曜日

ウクライナ

 ウクライナへロシアの侵略が起こったのは,ウクライナへのNATOの拡大にたいする強い拒否反応を誘導し,ドイツとロシアの間の天然ガスパイプライン,ノルドストリーム2を妨害するための米国の思惑による部分があるという話があった。事の真偽はわからないが,日本のメディアはアメリカからの情報だけでまわっている。いや,だからといって,プーチンの行動はまったく正当化できないが。ウクライナが,グルジアのようになるのか,クリミアのようになるのかはまだわからない。

ロシアとウクライナの前身が1つの国であった,キエフ大公国(882-1240)の時代から考えれば,キエフが京都でモスクワが鎌倉のようなものなのだ。ロシアという名称自体が,キエフ大公国の正式名称であるルーシから来ている。自分たちのルーツが奪われて敵側軍事同盟に参加することへの圧倒的な拒否感ということか。

ウクライナといえば,中学校の社会科の時間に学んだ,肥沃な大地(黒土)と小麦というイメージだった。また,京都市の姉妹都市のキエフといえば,ムソルグスキーの「展覧会の絵(1874)」の「キエフの大門」か。

それ以外で,記憶にあるのは,ビージーズが1969年に発表したアルバムの「オデッサ」だ。1899年に遭難した架空の船の物語というコンセプトアルバムで,当時はビートルズの「ホワイトアルバム(1968)」に相当するというイメージだった。オデッサの収録曲「若葉のころ」と「メロディフェア」が,それぞれ映画「小さな恋のメロディ(1971)」の音楽として少し流行った。なぜ,オデッサという名前だったのか,本当に黒海に面したオデッサのことなのかどうかも確かではなく,当時も謎のままだった。


図:ウクライナの地図(AFP通信記事から引用)

P. S. Wikipedia 大鵬幸喜の項目から引用:「1940年(昭和15年),ウクライナ人の元コサック騎兵将校、マルキャン・ボリシコの三男として,日本の領土である樺太の敷香町(ロシアの呼び名サハリン州ポロナイスク)に生まれた。マルキャンはロシア革命後に日本に亡命した,所謂白系ロシア人であった。」

[1]満州事変(1931年)・・・柳条湖事件後,関東軍による占領,傀儡国家樹立

[2]イラク戦争(2003年)・・・虚偽事実による米英豪軍の侵攻と政権の転覆

[3]南オセチア紛争(2008年)・・・グルジア(ジョージア)が2州の支配権を喪失

[4]クリミア危機(2014年)・・・クリミア共和国の一方的独立宣言後,ロシアによる併合


2022年2月26日土曜日

関係量子力学(2)

Relational Quantum Mechanicsを関係量子力学と訳したけれどこれでよかったのか気になる。Relationalは形容詞なので ,関係的とかではないのかと思った。考えてみれば,リレーショナル・データベースの場合もカタカナでなければ関係データベースなわけで,英和辞典の例をみれば,ほとんどの場合,関係+名詞でよかった。

Relational Quantum Mechanics(RQM)の日本での評判を調べてみた。CiNiiではゼロでした。つまりは,ほとんど問題にもされていないということか。

Twitterでは2件ある。1つは東北大学の堀田昌寛さんで,RQMは標準コペンハーゲン解釈(フォン・ノイマン=ウィグナー流,量子力学=情報理論)とほとんど同じだが,意識を表わす直交基底系の選択ができない不良設定問題に陥っていると断じている(2021年11月)。堀田流解釈では意識が公理として定義(設定)できているということなのか。

もう1つは高知工科大学の全卓樹さんと阿蘇の史(Jimmy Ames)さんのTwitter上での議論だ(Carlo Rovelliの関係的量子力学をめぐって)。全さんの否定的評価を中心とした対話が続いていた(2017年)。まあ,最終的な落とし所はそこまででもなかったのかもしれない。

堀田さんは(あるいは皆さんは),簡単に人間の意識状態や宇宙の状態を1つのケットベクトルで表現している。フォン・ノイマンやウィグナーはそういう議論をしていたのかもしれない。抵抗はないものの,普通の教科書には書いていないのでちょっと気持ち悪い。

量子力学の解釈問題の歴史に関するオックスフォードのハンドブックが来月にも出版されそうだ。ちょっと高いので購入はためらわれるが,目次だけ整理してみた。

The Oxford Handbook of the History of Quantum Interpretations
Full Professor of Physics and History of Physics Olival Freire Jr
Oxford University Press, 2022/03/07 - 1312p
Introduction 1 

Part I Quantum Physics - Scienftific and Philosophical Issues Under Debate
1. Quantum Mechanics is Routinely Used in Laboratories with Great Success, but No Consensus on its Interpretation has Emerged 7
2. Philosophical Issues Raised by Quantum Theory and its Interpretations 53

Part II Historical Landmarks of the Interpretations and Foundations of Quantum Physics
3. Quantization Conditions, 1900-1927 77
4. Of Weighting and Counting: Statistics and Ontology in the Old Quantum Theory 95
5. Dead as a Doornail? Zero-Point Energy and Low-Temperature Physics in Early Quantum Theory 117
6. The Early Debates about the Interpretation of Quantum Mechanics 135
7. Foundations and Applications: The Creative Tension in the Early Development of Quantum Mechanics 173
8. The Statistical Interpretation: Born, Heisenberg, and von Neumann 1926-27 203
9. A Perennially Grinning Cheshire Cat? Over A Century of Experiments on Light Quanta and Their Perplexing Interpretations 233
10. The Evolving Understanding of Quantum Statistics 255
11. The Measurement Problem 281
12. Einstein's Criticism of Quantum Mechanics 303
13. Tackling Loopholes in Experimental Tests of Bell's Inequality 339
14. The Measuring Process in Quantum Field Theory 371
15. The Interpretation Debate and Quantum Gravity 393
16. Quantum Information and the Quest for Reconstruction of Quantum Theory 417
17. Natural Reconstructions of Quantum Mechanics 437
18. The Axiomatization of Quantum Theory through Functional Analysis: Hilbert, von Neumann, and Beyond 473
19. Tony Leggett's Challenge to Quantum Mechanics and its Path to Decoherence 495

Part III Places and Contexts Relevant for the Interpretations of Quantum Theory
20. The Copenhagen Interpretation 521
21. Copenhagen and Niels Bohr 543
22. Grete Hermann's Interpretation of Quantum Mechanics 567
23. Instrumentation and the Foundations of Quantum Mechanics 587
24. Early Solvay Councils: Rhetorical Lenses for Quantum Convergence and Divergence 615
25. The Foundations of Quantum Mechanics in Post-War Italy's Cultural Context 641
26. Foundations of Quantum Physics in the Soviet Union 667
27. Early Japanese Reactions to the Interpretation of Quantum Mechanics 1927-1943 687
28. Form and Meaning: Textbooks, Pedagogy, and the Canonical Genres of Quantum Mechanics 709
29. Chien-Shiung Wu's Contributions to Experimental Philosophy 735
30. On How Epistemological Letters Changed the Foundations of Quantum Mechanics 755
31. Quantum Interpretations and 20th Century Philosophy of Science 777

Part IV Historical and Philosophical Theses
32. Bohr and the Epistemological Lesson of Quantum Mechanics 797
33. Making Sense of the Century-Old Scientific Controversy over the Quanta 825
34. Orthodoxy and Heterodoxy in the Post-war Era 847
35. The Reception of the Forman Thesis in Modernity and Postmodernity 871
36. Quantum Historiography and Cultural History: Revisiting the Forman Thesis 887
37. The Co-creation of Classical and Modern Physics and the Foundations of Quantum Mechanics 909
38. Interpretation in Electrodynamics, Atomic Theory, and Quantum Mechanics 937

Part V The Proliferation of Interpretations
39. Hidden Variables 957
40. Pure Wave Mechanics, Relative States, and Many Worlds 987
41. Is QBism a Possible Solution to the Conceptual Problems of Quantum Mechanics? 1007
42. Agential Realism -- A Relation Ontology Interpretation of Quantum Physics 1031
43. The Relational Interpretation 1055
44. The Philosophy of Wholeness and the General and New Concept of Order: Bohm's and Penrose's Points of View 1073
45. Spontaneous Localization Theories Quantum Philosophy between History and Physics 1103
46. The Non-Individuals Interpretation of Quantum Mechanics 1135
47. Modal Interpretations of Quantum Mechanics 1155
48. A Brief Historical Perspective on the Consistent Histories Interpretation of Quantum Mechanics 1175
49. Einstein, Bohm, and Bell: A Comedy of Errors 1197
50. The Statistical Ensemble Interpretation of Quantum Mechanics 1223
51. Stochastic Interpretations of Quantum Mechanics 1247
Index 1265


写真:The History of Quantum Interpretationの書影(amazonより引用)

2022年2月25日金曜日

関係量子力学(1)

 関係量子力学について,Stanford Encyclopedia of Philosophy で勉強してみる。Copyright © 2019 by Federico Laudisa, Carlo Rovelli で本人が書いているので安全なやつだ。

関係量子力学(Relational Quantum Mechanics)

関係量子力学(RQM)は,現在まで議論されている量子力学の解釈の中で,最も新しいものである。RQMは,1996年に量子重力を研究していたロベリによって導入されたが(Rovelli 1996),この十年の間にしだいに,しかし着実に関心が高まってきた。RQMは,本質的に教科書的な「コペンハーゲン」解釈の改良版であり,観測者の役割を担えるのは古典的な系に限定されず,あらゆる物理系が担うことができるとされている。RQMは,波動関数(より一般的には量子状態)の存在論解釈を否定している。波動関数や量子状態は,古典力学のハミルトン=ヤコビ関数と同様の意味で,補助的な役割しか果たしていない。これは,存在論的な言及の否定を意味するわけではない。RQMは,古典力学と同様に,物理変数によって記述される物理系によって与えられる存在論に基づいている。古典力学との違いは,(a)変数は相互作用のときだけ値をとること,(b)変数のとる値は相互作用の影響を受ける(他の)システムに対して相対的にのみ決まることである。ここでいう「相対的」とは,古典力学において速度が他の系に対する系の性質であるのと同じ意味である。したがって,RQMでは,世界は,物理変数の時間的な相対値によって記述される,疎な相対的事象の発展的なネットワークとして記述される。

RQMの基礎となる物理的仮定は次のようなものである。S'に対する相対的変数の(未来の)値に対する確率分布は,S′に対する相対的な変数の(過去の)値に依存するが,別のシステムS″に対する相対的な変数の(過去の)値には依存しない。

この解釈では,定式化されるべき古典的世界の存在や,特別な観測者系を想定する必要はなく,測定に特別な役割を与えることもない。そのかわり,任意の物理システムがコペンハーゲン解釈における観測者の役割を果たすことができ,任意の相互作用が測定と見なされることを仮定している。これは,上記の物理的仮定により,量子論の予言を変えることなく可能である。なぜならば,S′によって観測される干渉効果は,別のシステムS″と相対的な変数の実現によって消去されることがないからだ(もちろんデコヒーレンスによって抑制されることはある)。このように,RQMは,隠れた変数,多世界,波束の収縮機構,あるいは,心・意識・主観性・エージェントなどの特別な役割を必要とせずに,完全に量子力学的な世界を理解することができる。

このような簡略化の代償として,物理変数が非相関的な値を持ち,すべての時間に存在するとされる古典力学の強い実在論が否定される。変数が相互作用時にのみ値をとるという事実は,疎な事象(または閃光する)の存在論を与える。変数が参照する系によってラベル付けされるという事実は,世界の表現に指標性の段階概念を追加することになる。

RQMは形而上学的に中立であるが,以下に詳述する意味で,強い実在論(Laudisa 2019)に疑問を示す強い関係性の立場にある。このように実在論に障るため,RQMは,構成的経験主義(van Fraassen 2010),新カント主義(Bitbol 2007, Bitbol 2010),最近では反一元論(Dorato 2016),構造実在論(Candiotto 2017)など様々な哲学的観点の文脈で順々に嵌められてきた(Brown 2009, Wood 2010)。この解釈は,量子ベイズ主義(Fuchs 2001, 2002),ヒーリーのプラグマティズム的アプローチ(Healey 1989),特にザイリンガーとブルックナーによって論じられた量子論の見解と共通する面がある(Zeilinger 1999, Brukner & Zeilinger 2003)。

たぶん,弱測定や弱値,圏論,ベイズ推定などとも相性が良さそうな 雰囲気がただよう。そういえば,圏論的量子力学という本も出版されていたが,これは正確には,Categories for Quantum Theory: An Introductionなので少し違うかもしれない。いやいや,Categorical Quantum Mechanicsもあった。

圏論的量子力学は,圏論を利用した図式的表現にポイントがあって,解釈問題とはあまり近接しない話題のようだ。量子計算への応用があるとかなんとか。arxivで調べてみると,"Categorical Quantum Mechanics"が63件,"Relational Quantum Mechanics"が43件で,どちらも流行っていません。

[1]Fantastic Quantum Theories and Where to Find Them (Stefano Gogioso)・・・怪しい量子力学のオンパレード

2022年2月24日木曜日

平方完成

 平方完成は,入試問題を解くときなど,条件設定の場面でたいへん重宝する技法だ。ちょっと手計算が面倒な式がでてきたので,Mathematicaに任せようと思った。

ところが,探してみてもMathematicaで平方完成する関数が組み込まれていないようなのだ。もしかしたら調べ方が足りないのかもしれないが,普通に考えるとイの一番に出てきても良さそうな機能なのだが。

それらしいユーザ定義関数がいくつか見つかったけれど,2変数の整式を代入しても思ったような変形ができず,望みのものではなかった。しかたがないので,自分で関数パーツを考えることにした。これを一般化するには,Mathematicaプログラミングにおける文法の知識が足りなさすぎる。

ここで考えたのは,ある変数の二次式を与えたときに,平方完成された部分と残余部分のリストを返すユーザ定義関数 sq[式, 変数]だ。変数がn個ある場合は,n回繰り返して使う必要があるという残念なコード素片だ。

sq[f_, v_] :=
 Module[{a, b},
  a = Coefficient[f, v^2];
  b = Coefficient[f, v];
  {a (v + b /(2 a))^2,
  c = f - a (v + b /(2 a))^2}] // Simplify
これを使って次のような計算ができる。
In[1]:= sq[2 x^2 - 4 x y + 2 y^2 + 24 x - 24 y + 288 + 3 x y, x] 
Out[1]= {1/8 (-24 - 4 x + y)^2, 216 - 18 y + (15 y^2)/8}
In[2]:= sq[%[[2]], y] 
Out[2]= {3/40 (24 - 5 y)^2, 864/5}